説明

作業機械の駆動制御装置

【課題】第1電動発電機とは別の第2電動発電機により生成された電力のうち蓄電装置に対し過剰な電力を、第1電動発電機に消費させてエンジンの回転の助勢を行う場合に、エンジン回転数が過剰になることを防止することができる作業機械の駆動制御装置の提供。
【解決手段】旋電動旋回モータ(第2電動発電機)により生成された電力のうちバッテリに対し過剰な電力をアシストモータ(第1電動発電機)に消費させるアシスト要求出力Waとし、このWaをメインポンプの推定出力Wpから減算して過剰要求出力ΔWを得、このΔWとエンジン回転数Rの検出値とが条件(ΔWが基準過剰要求出力Wscより大きく、かつRが作業機械による作業に必要な最低の回転数として予め設定された基準回転数Rc以上であること)を満たした場合に制御モードを回転数降下モードに切り替え、手段114bでRcより低い所定の低回転数Rlを目標回転数に決定し燃料噴射量制御装置130に指令する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの回転を助勢する第1電動発電機としてのアシストモータとは別に、所定の可動部の駆動および制動を行う第2電動発電機を備え、これら第1,第2電動発電機により生成される電力を蓄電装置に蓄える作業機械の駆動制御装置であって、第2電動発電機により生成された電力のうち蓄電装置に蓄えきれない電力を、第1電動発電機に供給してエンジンの回転の助勢で消費させる作業機械の駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業機械の駆動制御装置は、蓄電装置の蓄電残量に応じて、アシストモータによるエンジンの回転の助勢を制限するようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−83242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業機械の駆動制御装置には、エンジンの回転を助勢する第1電動発電機としてのアシストモータとは別に、所定の可動部の駆動および制動を行う第2電動発電機を備えたものがある。作業機械の一種である油圧ショベルの駆動制御装置には、所定の可動部としての旋回体の駆動源となる旋回モータとして、第2電動発電機を備えたものである。以下、第2電動発電機である旋回モータを「電動旋回モータ」と呼称する。この電動旋回モータは旋回体に対し回生制動を行うことで電力を生成する。この電力は、アシストモータにより生成される電力と同じく蓄電装置に蓄電されるようになっている。蓄電装置の充電量に余裕がない場合、または、電動旋回モータにより単位時間当たりに生成される電力が、蓄電装置が単位時間当たりに吸収できる電力を超えている場合、電動旋回モータにより生成された電力はバッテリに対して過剰となる。その過剰な電力が無駄にならないよう、その過剰な電力をアシストモータに供給し、このアシストモータでエンジンの回転を助勢させるによって消費させることが、従来から行われている。
【0005】
しかし、電動旋回モータにより生成された過剰な電力を用いてアシストモータにエンジンを助勢させた場合、助勢の域を超し、定格回転数を超えた過回転数でエンジンを動作させてしまうことがあり、物理的な限界に迫る、または超える過度な負荷をエンジンに掛けてしまうことが懸念される。
【0006】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、第1電動発電機とは別の第2電動発電機により生成された電力のうち蓄電装置に対し過剰な電力を、第1電動発電機に消費させてエンジンの回転の助勢を行う場合に、エンジン回転数が過剰になることを防止することができる作業機械の駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するために本発明は次のように構成されている。
【0008】
〔1〕 本発明に係る作業機械の駆動制御装置は、内燃機関からなるエンジンと、このエンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油を供給されて駆動する油圧アクチュエータと、前記エンジンに伝動可能に結合した第1電動発電機と、作業機械の所定の可動部の駆動、およびその可動に対して回生制動を行う第2電動発電機と、前記第1電動発電機により生成される電力、および、前記第2電動発電機により生成される電力を蓄える蓄電装置と、前記第2電動発電機により生成される電力のうち前記蓄電装置に対し過剰な電力を、前記第1電動発電機に供給して前記エンジンの回転の助勢で消費させるアシスト制御手段とを備えた作業機械の駆動制御装置において、前記エンジンの定格回転数を前記エンジンの上限回転数として指令する上限回転数指令手段と、単位時間当たりのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、前記油圧ポンプの推定出力を算出するポンプ出力推定手段と、前記第2電動発電機により生成された電力のうち前記蓄電装置に対し過剰な電力をアシスト要求出力として算出するアシスト要求生成手段と、前記推定出力に基づき前記エンジンの目標回転数を算出する目標回転数算出手段と、前記目標回転数に基づき前記エンジンの燃料噴射量を制御するエンジン制御手段と、前記アシスト要求出力から前記推定出力を減算して得られる過剰要求出力、および、前記エンジン回転数検出手段によるエンジン回転数の検出値に基づき、前記エンジン回転数制御手段の制御モードを切り替える制御切替手段とを備え、前記制御切替手段は、前記過剰要求出力が所定の基準過剰要求出力以下で、かつ、前記エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数が前記上限回転数よりも低い場合に、制御モードとして通常モードを選択し、前記過剰要求出力が前記基準過剰要求出力よりも大きく、かつ、前記エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数が、作業機械の作業に必要とされる最低のエンジン回転数として予め設定された基準回転数以上の場合に、制御モードとして回転数降下モードを選択し、前記エンジン回転数制御手段は、前記通常モードにおいて前記エンジン回転数を制御する通常手段と、前記回転数降下モードにおいて前記エンジン回転数を制御する回転数降下手段とを備え、前記通常手段は、前記アシスト要求出力に基づき前記第1電動発電機により前記エンジンが助勢されて得られる助勢回転数を、前記目標回転数から減算することでエンジン用目標回転数を得て、このエンジン用目標回転数に基づき燃料噴射量を制御するものであり、前記回転数降下手段は、前記エンジンの燃料噴射量を、前記基準回転数よりも低い所定の低回転数相当の燃料噴射量にステップ的に減少させることを特徴とする。
【0009】
この「〔1〕」に記載の作業機械の駆動制御装置においては、制御モードとして回転数降下モードが選択される条件は、過剰要求出力が基準過剰要求出力よりも大きく、かつ、エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数が基準回転数以上であることに設定されており、その基準回転数は作業機械の作業に必要とされる最低のエンジン回転数として予め設定されており、エンジン回転数制御手段の回転数降下手段は、エンジンの燃料噴射量を、基準回転数よりも低い所定の低回転数相当の燃料噴射量にステップ的に減少させる。これらによって、第1電動発電機とは別の第2電動発電機により生成された電力のうち蓄電装置に対し過剰な電力を、第1電動発電機に消費させてエンジンの回転の助勢を行う場合に、エンジン回転数が過剰になることを防止することができる。
【0010】
〔2〕 本発明に係る作業機械の駆動制御装置は、「〔1〕」に記載の作業機械の駆動制御装置において、前記エンジン制御手段は、前記エンジンの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御装置と、前記エンジン用目標回転数を前記燃料噴射量制御装置に指令するエンジン用回転数指令手段とを備え、前記エンジン用回転数指令手段は、前記燃料噴射量制御装置とともに前記通常手段を構成する通常指令手段と、前記燃料噴射量制御装置とともに前記回転数下降手段を構成する回転数降下指令手段を備え、前記通常指令手段は、前記助勢回転数を前記目標回転数から減算して得られるエンジン用目標回転数を前記燃料噴射量制御装置に指令するものであり、前記回転数降下指令手段は、前記低回転数をエンジン用目標回転数として前記燃料噴射量制御装置に指令するものであることを特徴とする。
【0011】
この「〔2〕」に記載の駆動制御装置において、エンジン用回転数指令手段の通常指令手段は、助勢回転数を目標回転数から減算して得られるエンジン用目標回転数を、燃料噴射量制御装置に指令し、この燃料噴射量制御装置は、その通常指令手段からのエンジン用目標回転数に基づきエンジンの燃料噴射量を制御する。これにより、通常モードの際のエンジン回転数の制御を実現できる。また、エンジン用回転数指令手段の回転数降下指令手段は、低回転数をエンジン用目標回転数として燃料噴射量制御装置に指令し、この燃料噴射量制御装置は、その回転数降下指令手段からのエンジン用目標回転数(所定の低回転数)に基づき、エンジンの燃料噴射量を制御する。これにより、回転数降下モードの際のエンジン回転数の制御を実現できる。
【0012】
〔3〕 本発明に係る作業機械の駆動制御装置は、「〔1〕」に記載の作業機械の駆動制御装置において、前記エンジン制御手段は、前記エンジンの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御装置と、前記エンジン用目標回転数を前記燃料噴射量制御装置に指令するエンジン用回転数指令手段とを備え、前記エンジン用回転数指令手段は、前記燃料噴射量制御装置とともに前記通常手段を構成するものであり、前記燃料噴射量制御装置は、前記回転数降下制御手段としての少噴射処理手段を備え、この少噴射処理手段は、前記エンジンの燃料噴射量を前記低回転数相当量に制御するものであることを特徴とする。
【0013】
この「〔3〕」に記載の駆動制御装置において、エンジン用回転数指令手段は、助勢回転数を目標回転数から減算して得られるエンジン用目標回転数を、燃料噴射量制御装置に指令し、この燃料噴射量制御装置は、そのエンジン用回転数指令手段からのエンジン用目標回転数に基づきエンジンの燃料噴射量を制御する。これにより、通常モードの際のエンジン回転数の制御を実現できる。また、燃料噴射量制御装置の少噴射量処理手段は、エンジンの燃料噴射量を低回転数相当量に制御する。これにより、回転数降下モードの際のエンジン回転数の制御を実現できる。
【0014】
特に「〔3〕」に記載の駆動制御装置においては、燃料噴射量制御装置の少噴射量処理手段がエンジンの燃料噴射量を低回転数相当量に制御するので、すなわち、「〔2〕」に記載の駆動制御装置のようにエンジン用回転数指令手段の回転数降下指令手段が低回転数をエンジン用目標回転数として燃料噴射量制御装置に指令する処理を行わずに済むので、エンジン回転数を所定の低回転数に制御することを、「〔2〕」に記載の駆動制御装置よりも迅速に実現できる。
【0015】
〔4〕 本発明に係る作業機械の駆動制御装置は、「〔1〕」〜「〔3〕」のいずれか1項に記載の作業機械の駆動制御装置において、前記制御切替手段は、制御モードを前記通常モードから前記回転数降下モードに移行させた後に、前記過剰要求出力が所定の基準過剰要求出力以下になり、かつ、前記エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数が前記上限回転数よりも低くなった場合に、制御モードを通常モードに戻すことを特徴とする。
【0016】
この「〔4〕」に記載の駆動制御装置においては、第2電動発電機により生成された電力のうち蓄電装置に対し過剰な電力を第1電動発電機に供給して消費させている最中に、エンジン回転数が上限回数を超えることを回避した後には、再び、過剰な電力を再び第1電動モータに消費させる状態に復帰させることができる。
【0017】
〔5〕 本発明に係る作業機械の駆動制御装置は、「〔1〕」〜「〔4〕」のいずれか1項に記載の作業機械の駆動制御装置において、前記アシストモータ制御手段は、前記アシスト要求出力が所定の基準要求出力よりも高いか否かの判定を行い、この判定の結果が真である場合に、前記アシスト要求出力から前記基準要求出力を減算することで前記アシスト要求出力を補正することを特徴とする。
【0018】
この「〔5〕」に記載の駆動制御装置において、アシストモータ制御手段は、通常モードにおいてアシスト要求出力が基準要求出力よりも高い場合に、アシスト要求出力から所定の基準要求出力を減算することで、アシスト要求出力を補正する。これにより、通常モードにおいてアシスト要求出力に基づき第1電動発電機によりエンジンの回転を助勢することに伴うエンジンの過回転を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る作業機械の駆動制御装置によれば、前述のように、第1電動発電機とは別の第2電動発電機により生成された電力のうち蓄電装置に対し過剰な電力を、第1電動発電機に消費させてエンジンの回転の助勢を行う場合に、エンジン回転数が過剰になることを防止することができる。この結果、物理的な限界に迫る、または超える過度な負荷をエンジンに掛けてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動制御装置が適用される作業機械である油圧ショベルを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る駆動制御装置を示す図である。
【図3】図2に示した駆動制御装置におけるエンジンの制御のための構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示した判定テーブルの詳細を示す図である。
【図5】図2,図3に示した車体コントローラにより行われる処理を示すフローチャートである。
【図6】図5に示した処理により得られるエンジン回転数の変化の一例を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る駆動制御装置におけるエンジンの制御のための構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る駆動制御装置について図1〜図6を用いて説明する。
【0022】
図1に示す油圧ショベル1は、履帯2aを駆動して走行する走行体2と、この走行体2に旋回ベアリング14を介して旋回可能に結合した可動部である旋回体3と、この旋回体3の前部に設けられたフロント作業装置6とを備えている。
【0023】
走行体2は、この走行体2の左側部の骨格を形成している左フレーム2bと、この左フレーム2bと並行に位置した右フレーム(図示してない)とを備えている。左フレーム2bには、減速機付きの左走行モータ20が設けられている。履帯2aは左フレーム2bに掛け回されており、左走行モータ20の出力がその履帯2aに伝達されることによって履帯2aが駆動するようになっている。走行体2の右フレーム側も同様に構成されている。右フレームに設けられている右走行モータ21については図2に記号で図示した。
【0024】
フロント作業装置6は、旋回体3の前部に起伏自在に結合したブーム7と、このブーム7に回動自在に結合したアーム8と、このアーム8に回動自在に結合したバケット9とを備えたバックホウタイプのフロント作業装置であり、ブームシリンダ7a(油圧シリンダ)、アームシリンダ8a(油圧シリンダ)およびバケットシリンダ9a(油圧シリンダ)の少なくとも1の油圧シリンダの収縮または伸長により駆動されるようになっている。
【0025】
旋回体3はフロント作業装置6の左側方にキャブ4を備え、このキャブ4の後方に機械室5を備えている。機械室5内には、内燃機関からなるエンジン10と、このエンジン10により駆動されるポンプユニット11、すなわちメインポンプ11a(可変容量形油圧ポンプ、図2に示す油圧記号で示す)およびパイロットポンプ11b(定容量形ポンプ、図2に油圧記号で示す)とが設けられている。メインポンプ11は、左走行モータ20、右走行モータ21、ブームシリンダ7a、アームシリンダ8a、バケットシリンダ9aに供給される油圧の油圧源である。
【0026】
旋回体3の機械室5内には、エンジン10と伝動可能に結合した第1電動発電機としてのアシストモータ12と、蓄電装置としてのバッテリ13とが設けられている。アシストモータ12はエンジン10により駆動された場合に発電機となって電力を生成するようになっており、その電力はバッテリ13に蓄えられるようになっている。また、アシストモータ12はバッテリ13から電力を供給された場合に電動機となって力行して、エンジン10の回転を助勢するようになっている。
【0027】
機械室内5にはさらに、第1電動発電機と別の第2電動発電機としての電動旋回モータ30が設けられている。この電動旋回モータ30は、バッテリ13から電力を供給された場合に電動機となって旋回体3を駆動するようになっており、また、旋回体3の旋回速度を減速する際に、旋回体3に対し回生制動を行う発電機となって電力を生成するようになっている。電動旋回モータ30により生成される電力はバッテリ13に蓄えられるようになっている。
【0028】
第1実施形態に係る駆動制御装置100は、図2に示すように、前出のエンジン10、前出のポンプユニット11(メインポンプ11aおよびパイロットポンプ11b)、前出のアシストモータ12、前出の電動旋回モータ30、前出のブームシリンダ7a、前出のアームシリンダ8a、前出のバケットシリンダ9a、前出の左走行モータ20、前出の右走行モータ21に加え、ブームシリンダ7aとバケット9の動作を指令するブーム・バケット操作レバー装置101、電動旋回モータ30の動作とアームシリンダ8aの動作を指令する旋回・アーム操作レバー装置102とを備えている。これらブーム・バケット操作レバー装置101はキャブ4内の運転席の右側に設けられており、旋回・アーム操作レバー装置102は、キャブ4内の運転席の左側に設けられている。
【0029】
ブーム・バケット操作レバー装置101は、中立位置から前後左右に傾倒操作可能な操作レバー装置101aと、この操作レバー装置101aの中立位置から前後左右のそれぞれの傾倒方向について傾倒量に応じたパイロット圧を、パイロットポンプ11bを油圧源として生成するパイロット弁(図示省略)を備えている。操作レバー装置101aの中立位置を中心として予め設定された傾倒量の微小範囲と、操作レバー装置101aの最大傾倒量の近傍から最大傾倒量までの予め設定された傾倒量の微小範囲とを除き、パイロット弁は、操作レバー装置101aの中立位置からの傾倒量が大きいほど高いパイロット圧を出力するようになっている。操作レバー装置101aの中立位置から前方向への傾倒操作によりブーム下げを指令するパイロット圧P1が出力されるようになっており、操作レバー装置101aの中立位置から後方向への傾倒操作によりブーム上げを指令するパイロット圧P2が出力されるようになっており、操作レバー装置101aの中立位置から左方向への傾倒操作によりバケットクラウド(キャブ4に近づく方向のバケット9の回動)を指令するパイロット圧P3が出力されるようになっており、操作レバー装置101aの中立位置から右方向への傾倒操作によりバケットダンプ(キャブ4から離れる方向のバケット9の回動)を指令するパイロット圧P4が出力されようになっている。
【0030】
旋回・アーム操作レバー装置102も、中立位置から前後左右に傾倒操作可能な操作レバー装置101aと、この操作レバー装置102aの中立位置から前後左右のそれぞれの傾倒方向について傾倒量に応じたパイロット圧を、パイロットポンプ11bを油圧源として生成するパイロット弁(図示省略)を備えている。旋回・アーム操作レバー装置102においても、ブーム・バケット操作レバー装置101と同様に、操作レバー装置102aの中立位置を中心として予め設定された傾倒量の微小範囲と、操作レバー装置102aの最大傾倒量の近傍から最大傾倒量までの予め設定された傾倒量の微小範囲とを除き、パイロット弁は、操作レバー装置102aの中立位置からの傾倒量が大きいほど高いパイロット圧を出力するようになっている。操作レバー装置102aの中立位置から前方向への傾倒操作によりアームダンプ(キャブ4から離れる方向のアーム8の回動)を指令するパイロット圧P5が出力されるようになっており、操作レバー装置101aの中立位置から後方向への傾倒操作によりアームクラウド(キャブ4に近づく方向のアーム8の回動)を指令するパイロット圧P6が出力されるようになっており、操作レバー装置102aの中立位置から左方向への傾倒操作により左旋回を指令するパイロット圧P7が出力されるようになっており、操作レバー装置102aの中立位置から右方向への傾倒操作により右旋回を指令するパイロット圧P8が出力されようになっている。
【0031】
走行モータ20,21のそれぞれの動作を指令するものは、左走行操作レバー装置および右走行操作レバー装置であるが、これらの図示は省略した。これら左走行操作レバー装置および右走行操作レバー装置はいずれも、中立位置から前後に傾倒操作可能な操作レバーと、この操作レバーの中立位置から前後のそれぞれの傾倒方向について傾倒量に応じたパイロット圧を、パイロットポンプを油圧源として生成するパイロット弁を備えたものであり、キャブ4内の運転席の前方に左右方向に並んで設けられている。左走行操作レバー装置および右走行操作レバー装置においても、ブーム・バケット操作レバー装置101と同様に、操作レバーの中立位置を中心として予め設定された傾倒量の微小範囲と、操作レバーの最大傾倒量の近傍から最大傾倒量までの予め設定された傾倒量の微小範囲とを除き、パイロット弁は、操作レバーの中立位置からの傾倒量が大きいほど高いパイロット圧を出力するようになっている。
【0032】
駆動制御装置100はさらに、ブームシリンダ7a、アームシリンダ8a、バケットシリンダ9a、左走行モータ20および右走行モータ21のそれぞれとメインポンプ11aとを接続する油圧管路に、油圧パイロット式の方向切換弁であるブーム用方向制御弁103、アーム用方向制御弁104、バケット用方向制御弁105、左走行用方向制御弁106および右走行用方向制御弁107のそれぞれを備えている。これら方向制御弁103〜107のそれぞれによって、メインポンプ11aからブームシリンダ7a、アームシリンダ8a、バケットシリンダ9a、左走行モータ20および右走行モータ21のそれぞれに供給される圧油の流れが制御されるようになっている。ブーム用方向制御弁130とバケット用方向制御弁105とに対するパイロット圧は、ブーム・バケット操作レバー装置101から供給されるようになっており、アーム用方向制御弁104に対するパイロット圧は、旋回・アーム操作レバー装置102から供給されるようになっており、左走行用方向制御弁106および右走行用方向制御弁107のそれぞれに対するパイロット圧は、左走行操作レバー装置(図示省略)および右走行操作レバー装置(図示省略)のそれぞれから供給されるようになっている。
【0033】
駆動制御装置100はさらに、バッテリ13の直流電力を交流電力に変換して電動旋回モータ30に供給するインバータ121と、旋回・アーム操作レバー装置102により生成されたパイロット圧を、電気信号である左旋回指令信号Sp7に変換して出力するパイロット圧センサ137と、旋回・アーム操作レバー装置102により生成されたパイロット圧を、電気信号である右旋回指令信号Sp8に変換して出力する圧力センサパイロット圧センサ138とを備えている。
【0034】
駆動制御装置100はさらに、車体コントローラ110を備えている。この車体コントローラ110は、CPU(Central Processing Unit)と、予め定められた制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、CPUにより行われる情報処理作業の記憶領域としてのRAM(Random Access Memory)等を備えたものであって、CPUでROMに格納された制御プログラムを実行することにより、油圧ショベル1の制御に係る種々の処理を行うものである。
【0035】
この車体コントローラ110は、制御プログラムにより設定された手段である電動旋回モータ制御手段111を備えている。この電動旋回モータ制御手段111は、パイロット圧センサ137,138のそれぞれからの左旋回指令信号Sp7および右旋回指令信号Sp8に基づきインバータ121を制御することで、電動旋回モータ30を制御するものである。より詳細に説明すると、電動旋回モータ30は、左旋回指令電気信号Sp7が車体コントローラ110に入力されると、その左旋回指令信号Sp7に示されるパイロット圧が高いほど、左旋回の速度が速くなるようインバータ121を制御するようになっており、右旋回指令信号Sp8が車体コントローラ110に入力されると、その右旋回指令信号Sp8に基づくパイロット圧が高いほど、右旋回の速度が速くなるようインバータ121を制御するようになっている。
【0036】
車体コントローラ110はさらに、制御プログラムにより設定された手段であるポンプ出力推定手段112を備えている。このポンプ出力推定手段112に関連して、駆動制御装置100は、メインポンプ11aの吐出管路にポンプ吐出圧センサ139を備えている。このポンプ吐出圧センサ139は、メインポンプ11aの吐出圧Pmを検出し、その吐出圧Pmに相応する電気信号である吐出圧検出信号Spmを出力するものである。駆動制御装置100はさらに、ポンプ出力推定手段112に関連して、パイロット圧センサ131〜136を備えている。これらパイロット圧センサ131,132はそれぞれ、ブーム・バケット操作レバー装置101からブーム用方向制御弁103にパイロット圧P1,P2を導くパイロット管路のそれぞれに設けられており、そのパイロット管路内のパイロット圧を検出し、そのパイロット圧に相応する電気信号であるパイロット圧検出信号Sp1,Sp2のそれぞれを出力するものである。つまり、これらパイロット圧センサ131,132はそれぞれ、ブーム7の動作の指令値を検出する手段である。パイロット圧センサ133,134はそれぞれ、ブーム・バケット操作レバー装置101からバケット用方向制御弁105にパイロット圧P3,P4を導くパイロット管路のそれぞれに設けられており、そのパイロット管路内のパイロット圧を検出し、そのパイロット圧に相応する電気信号であるパイロット圧検出信号Sp3,Sp4のそれぞれを出力するものである。つまり、これらパイロット圧センサ133,134は、バケット9の動作の指令値を検出する手段である。パイロット圧センサ135,136はそれぞれ、旋回・アーム操作レバー装置102からアーム用方向制御弁104にパイロット圧P5,P6を導くパイロット管路のそれぞれに設けられており、そのパイロット管路内のパイロット圧を検出し、そのパイロット圧に相応する電気信号であるパイロット圧検出信号Sp5,Sp6のそれぞれを出力するものである。つまり、これらパイロット圧センサ135,136は、アーム8の動作の指令値を検出する手段である。ポンプ吐出圧センサ139から出力される吐出圧検出信号Spm、および、パイロット圧センサ131〜136のそれぞれから出力されるパイロット圧検出信号Sp1〜Sp6はそれぞれ、車体コントローラ110に入力されるようになっている。ポンプ出力推定手段112は、パイロット圧検出信号Sp1〜Sp6に基づきメインポンプ11aの吐出流量を算出し、この吐出流量と、吐出圧検出信号Spmに示される吐出圧とに基づき、メインポンプ11aの推定出力Wpを算出するものである。
【0037】
車体コントローラ110はさらに、制御プログラムにより設定された手段である目標回転数算出手段113を備えている。この目標回転数算出手段は、ポンプ出力推定手段112により算出された推定出力Wpに基づき、エンジン回転数(単位時間当たりのエンジン10の回転数)の目標値、すなわち目標回転数Rtを算出するものである。エンジン10には、メインポンプ11a、アシストモータ12、パイロットポンプ11bの他、オイルクーラやラジエータ等の熱交換器を放熱させるための冷却ファン、インバータ121,122やアシストモータ12の冷却に用いられる冷却水を循環させるための冷却ポンプなどの補機が、伝動可能に結合している。このため、アシストモータ12の出力が0であり、かつメインポンプ11aの吐出流量が最小の状態において、それらメインポンプ11a、アシストモータ12、パイロットポンプ11bおよび補機とエンジン10との間には最小の引き摺り抵抗が生じる。エンジン10の最低出力Wminは、その最小の引き摺り抵抗に抗して動作するためたに必要な最小限の出力である。フロント作業装置6および走行体2を駆動させるためには、メインポンプ11aを最小吐出流量よりも大きくして駆動させることが必要であり、その必要に応えるエンジン10の出力は、メインポンプ11aの駆動に要する出力と最低出力Wminとの合計出力Wtである。前出の目標回転数Rtは、メインポンプ11aの推定出力Wpに基づき、エンジン10に合計出力Wt出力させることを目的として算出されるものである。
【0038】
車体コントローラ110はさらに、制御プログラムにより設定された手段であるエンジン用回転数指令手段114を備えている。このエンジン用回転数指令手段114は、前出の目標回転数算出手段113により算出された目標回転数Rtの一部または全てを、エンジン10の燃料噴射量の制御に用いられるエンジン用目標回転数Reとして燃料噴射量制御装置に指令するものである。この燃料噴射量制御装置130はCPU、ROM、RAMを備えたものであり、エンジン用回転数指令手段114により指令されたエンジン用目標回転数Reに基づき、エンジン10の燃料噴射量を制御するものである。これらエンジン用回転数指令手段114と燃料噴射量制御装置130は、エンジン10の燃料噴射量を制御するエンジン制御手段を構成している。
【0039】
車体コントローラ110はさらに、制御プログラムにより設定された手段であり、アシストモータ12を制御するアシストモータ制御手段115を備えている。このアシストモータ制御手段115は、バッテリ13に蓄えられた電気エネルギーを用いてアシストモータ12を駆動させる場合にインバータ121,122のうちのインバータ122を制御することでアシストモータ12制御するようになっており、電動旋回モータ30により生成された電力を用いてアシストモータ12を駆動する場合にインバータ121,122の両方を制御することでアシストモータ12を制御するようになっている。図2中の123は、バッテリ13からインバータ121,122のそれぞれに導かれる電力の電圧を安定させるチョッパ回路である。
【0040】
エンジン10には、磁気ピックアップ式のエンジン回転数センサ131が設けられている。このエンジン回転数センサ131は、実際のエンジン回転数を検出して、そのエンジン回転数に相応する電気信号であるエンジン回転数検出信号Srを出力するものである。エンジン回転数検出信号Srは、車体コントローラ110に入力されるようになっている。
【0041】
前出のエンジン用回転数指令手段114は、旋回体3に対し電動旋回モータ30による回生制動が行われていない場合、目標回転数算出手段113により算出された目標回転数Rtを、エンジン用目標回転数Reとして燃料噴射量制御装置130に指令するよう設定されている。この結果、燃料噴射量制御装置130は、エンジン用目標回転数Re(Re=Rt)に基づき、エンジン回転数検出信号Srに示される実際のエンジン回転数RがReまで上昇するよう燃料噴射量を制御する。実際のエンジン回転数Rがエンジン用目標回転数Re(Re=Rt)よりも低い状態において、前出のアシストモータ制御手段115は、インバータ122を制御してバッテリ13からアシストモータ12に電力を供給して、すなわち、アシストモータ12を電動機として力行させて、アシストモータ12にエンジン10の回転を助勢させるよう設定されている。
【0042】
旋回体3に対し電動旋回モータ30による回生制動が行われている状態において、バッテリ13の充電状態(蓄電量)が限界に達している場合、また、バッテリ13の単位時間当たりに充電できる電力が電動旋回モータ30により単位時間当たりに生成される電力よりも小さい場合、電動旋回モータ30により生成された電力はバッテリ13に対し過剰になり、この場合、アシストモータ制御手段115は、その過剰な電力をアシストモータ12に供給して、アシストモータ12にエンジン10の回転を助勢させるよう設定されている。このようにしてアシストモータ12にエンジン10の回転の助勢を行わせるための構成に、第1実施形態に係る駆動制御装置100は特徴を有する。その特徴について次に説明する。
【0043】
車体コントローラ110は、制御プログラムにより設定された手段であるアシスト要求生成手段116を備えている。このアシスト要求生成手段116は、電動旋回モータ30により生成される電力のうちバッテリ13に充電できない過剰な電力の全てを用いてアシストモータ12にエンジン10の回転を助勢させた場合のアシストモータ12の出力として、アシスト要求出力Waを算出するものである。アシスト要求生成手段116は、アシスト要求出力Waを算出する際、まず、回生制動に要する電動旋回モータ30の制動トルクと、回生制動中の電動旋回モータ30の単位時間当たりの回転数とに基づき、電動旋回モータ30により生成される電力を算出し、また、バッテリ13において既に行われた電力の出入りの経過とバッテリ13の端子電圧とに基づきバッテリ13の充電状態(蓄電量)を算出し、そして、それらの算出により得られた電力と充電状態とを用いて、電動旋回モータ30により生成された電力のうちバッテリ13に充電できない過剰な電力を算出し、この過剰な電力をアシスト要求出力Waとする。また、アシスト要求生成手段116は、電動旋回モータ30によって単位時間当たりに生成される電力から、バッテリ13が単位時間当たりに吸収できる電力を減算することによっても過剰な電力を得て、この過剰な電力をアシスト要求出力Waとする。なお、アシスト要求生成手段116によってアシスト要求出力Waの算出の際に用いられる各種情報、すなわち、回生制動に要する電動旋回モータ30の制動トルクと、回生制動中の電動旋回モータ30の単位時間当たりの回転数と、バッテリ13において既に行われた電力の出入りの経過と、バッテリ13の端子電圧と、電動旋回モータ30によって単位時間当たりに生成される電力と、バッテリ13が単位時間当たりに吸収できる電力は全て、車体コントローラ110がインバータ121,122の制御のために扱う情報であり、車体コントローラ110のRAMに一時的に保存されているものである。
【0044】
車体コントローラ110には、上限回転数入力装置140が設けられている。この上限回転数入力装置140は、ダイヤル操作型の入力装置であり、エンジン10の定格回転数をエンジン10の上限回転数Rlimとして車体コントローラ110に指令する上限回転数指令手段である。
【0045】
車体コントローラ110は、制御プログラムにより設定された手段である制御切替手段117を備えている。制御切替手段117は、駆動制御装置100の4種類の状態のそれぞれと、3種類の制御モード、すなわち通常モード、回転数降下モードおよびアシスト中止モードのそれぞれとの予め設定された対応関係に基づき、駆動制御装置の状態応じて制御モードを決定するものである。駆動制御装置100の状態と制御モードとの対応関係は図4に示す判定テーブル117aにより規定されている。この判定テーブル117aは、車体コントローラ110のROMに記憶されている。次に、通常モード、回転数降下モード、アシスト中止モードについて図4を参照しながら説明する。
【0046】
通常モードは、アシスト要求出力Waに基づきエンジン10の回転を助勢する制御モードであり、推定出力Wpに対するアシスト要求出力Waの過剰分である過剰要求出力ΔW、すなわち、アシスト要求出力Waから推定出力Wpを減算した値が、所定の基準過剰要求出力Wsc以下で、かつ、上限回転数入力装置140により入力された上限回転数Rlimよりもエンジン回転数Rが低い場合(ΔW≦Wc,R<Rlimの場合)に用いられる。第1実施形態において所定の基準過剰要求出力Wscは前出の最低出力Wminに設定されており、車体コントローラ110のROMに予め設定されている。
【0047】
また、この通常モードは、過剰要求出力ΔWが基準過剰要求出力Wscよりも高く、かつ、エンジン回転数Rが基準回転数Rcよりも低い場合(ΔW>Wc,R<Rcの場合)にも用いられる。基準回転数Rcは、フロント作業装置6による作業可能な最低限の回転数として予め設定されたものであり、車体コントローラ110のROMに記憶されている。
【0048】
回転数降下モードは、アシストモータ12によりエンジン10の回転が助勢されたことでエンジン10に過回転が生じることを防止する、すなわち、上限回転数入力装置140により入力された上限回転数Rlimを超えるエンジン10の回転を防止する制御モードである。この回転数降下モードは、過剰要求出力ΔWが基準過剰要求出力Wscよりも高く、かつ、エンジン回転数Rが基準回転数Rc以上の場合(ΔW>Wc,R≧Rcの場合)に用いられる。なお、この回転数降下モードにより過剰要求出力ΔWが基準過剰要求出力Wsc以下に低下すると、すなわち「ΔW≦Wc,R<Rlim」となると、制御モードは前述の通常モードに切り替えられることになる。
【0049】
アシスト中止モードは、アシストモータ12がエンジン10の回転を助勢することを中止する制御モードであり、過剰要求出力ΔWに関係なく、エンジン回転数Rが上限回転数Rlim以上の場合(R≧Rlimの場合)に用いられる。
【0050】
前出のエンジン用回転数指令手段114は、前述の通常モードにおいてエンジン用目標回転数Re(Re<Rt)を決定して燃料噴射量制御装置130に指令する通常指令手段114aと、前述の回転数降下モードにおいてエンジン用目標回転数Reを決定して燃料噴射量制御装置130に指令する回転数降下指令手段114bとを備えている。これら通常指令手段114aおよび回転数降下指令手段114bも制御プログラムにより設定された手段である。これら通常指令手段114aおよび回転数降下指令手段114bの詳細について次に説明する。
【0051】
通常モードにおいて、メインポンプ11aの出力(推定出力Wp)を保持するためのエンジン回転数Rの一部は、アシスト要求出力Waに相当する分だけアシストモータ12がエンジン10の回転を助勢したことによるものである。エンジン用回転数指令手段114の通常指令手段114aは、アシスト要求出力Wa相当の助勢回転数Raを目標回転数Rtから減算して得られるエンジン回転数をエンジン用目標回転数Reとして、燃料噴射量制御装置130に指令するようになっている。したがって、エンジン用目標回転数Reは目標回転数Rtよりも低い値である。
【0052】
旋回体3の駆動源は電動旋回モータ30であるので、フロント作業装置6が動作していない状態での旋回時にはメインポンプ11aの吐出油は不要であり、すなわち、推定出力Wpは最低であり、このときエンジン回転数Rは基準回転数Rc以上となっている必要はない。第1実施形態では、フロント作業装置6が動作していない状態においても電動旋回モータ30への電力の供給中、および電動旋回モータ30の回生制動中には、通常指令手段114aがエンジン用目標回転数Reを基準回転数Rc以上の範囲で決定するよう設定されており、これによって、油圧ショベル1での作業中にエンジン回転数Rが基準回転数Rcを下回らないようになっている。
【0053】
回転数降下指令手段114bは、エンジン用目標回転数Reを予め設定された低回転数Rlに決定し、燃料噴射量制御装置130に指令するものである。低回転数Rlは、基準回転数Rcよりも低い回転数であればよく、0であってもよいのだが、アシストモータ12によるエンジン10の助勢がなされなくなったときに、アイドル回転数Ri以下のエンジン回転数しか得られない状態になると、エンジン10が停止してしまう。これでは、アシストモータ12が何らかの異常で突然停止してエンジン10に対する助勢がなされなくなった場合、油圧ショベル1の動作中にエンジン10が停止することになり、安全上好ましくない。第1実施形態においては、エンジン10に対してのアシストモータ12の助勢が突然なされなくなってもエンジン10を停止させないために、低回転数Rlはアイドル回転数Riよりも高く設定されている。
【0054】
通常指令手段114aと燃料噴射量制御装置130は、通常モードにおいてエンジン回転数を制御する通常手段を構成している。回転数降下指令手段114bと燃料噴射量制御装置130は、回転数降下モードにおいてエンジン回転数を制御する回転数降下手段を構成している。
【0055】
前出のアシストモータ制御手段115は、前述の通常モードおよび前述の回転数降下モードにおいて電動旋回モータ30により生成された電力を消費してアシストモータ12がエンジン10を助勢する状態となるよう、すなわちアシスト要求出力Waに基づきインバータ121,122を制御する通常制御手段115aと、アシスト中止モードにおいてアシストモータ12による電動旋回モータ30の助勢が中止されるようインバータ121,122を制御するアシスト中止制御手段115bとを備えている。これら通常制御手段115aおよびアシスト中止制御手段115bも制御プログラムにより設定された手段である。通常制御手段115aの詳細について次に説明する。
【0056】
通常制御手段115aは、アシスト要求出力Waが所定の基準要求出力Wacよりも大きいか否かの判定を行い、この判定の結果が真である場合に、アシスト要求出力Waから基準要求出力Wacを減算することでアシスト要求出力Waを補正し、補正後のアシスト要求出力War(War=Wa−Wac)を消費してアシストモータ12がエンジン10を助勢する状態となるようインバータ121,122の制御を行う。
【0057】
第1実施形態に係る駆動制御装置100の動作のうち、電動旋回モータ30により旋回体3に対する回生制動を行った際の動作について、図5,図6を用いて説明する。
【0058】
車体コントローラ110は、エンジン回転数センサ131により検出されたエンジン回転数Rを取得し、また、パイロット圧センサ131〜136のそれぞれにより検出されたパイロット圧P1〜P6を取得し、また、ポンプポンプ吐出圧センサ139により検出されたメインポンプ11aの吐出圧Pmを取得する(ステップS1)。
【0059】
次に、車体コントローラ110のポンプ出力推定手段112は、パイロット圧P1〜P6と吐出圧Pmとに基づき推定出力Wpを算出する(ステップS2)。また、車体コントローラ110のアシスト要求生成手段116は、車体コントローラ110のRAMに保存されたインバータ121,122の制御に係る情報に基づき、アシスト要求出力Waとする(ステップS2)。また、車体コントローラ110の目標回転数算出手段113は、ポンプ出力推定手段112により算出された推定出力Wpに基づき、この推定出力Wpと最低出力Wminとの合計出力Wtをエンジン10に出力させる得るための目標回転数Rtを算出する(ステップS2)。
【0060】
次に、車体コントローラ110の制御切替手段117は、エンジン回転数R、推定出力Wpおよびアシスト要求出力Waに基づき、判定テーブル117aを参照して過剰要求出力ΔWおよびエンジン回転数Rが判定テーブル117a中のどの状態に該当するかを判定する(ステップS3)。その判定の結果が「ΔW≦Wsc,R<Rlim」の場合、制御切替手段117は制御モードとして通常モードを選択し(ステップS4)、また、その判定の結果が「ΔW>Wsc,R≧Rc」の場合、制御切替手段117は制御モードとして回転数降下モードを選択し(ステップS5)、また、その判定の結果が「ΔW>Wsc,R<Rc」の場合、制御切替手段117は制御モードとして通常モードを選択し(ステップS6)、また、その判定の結果が「R≧Rlim」の場合、制御切替手段117は制御モードとしてアシスト中止モードを選択する(ステップS7)。
【0061】
次に、車体コントローラ110のエンジン用回転数指令手段114は、ステップS4〜ステップS7のいずれか1のステップで選択された制御モードにおいて、目標回転数Rtの一部をエンジン用目標回転数Re(Re<Rt)に決定し、そのエンジン用目標回転数Reを燃料噴射量制御装置130に指令する。具体的には、通常モードにおいて、エンジン用回転数指令手段114は通常指令手段114aにより、アシスト要求出力Wa相当の助勢回転数Raを目標回転数Rtから減算して得られる残りのエンジン回転数を、エンジン用目標回転数Re(Re<Rt)に決定し、そのエンジン用目標回転数Reを燃料噴射量制御装置130に指令する。また、回転数降下モードにおいて、エンジン用回転数指令手段114は回転数降下指令手段114bにより、エンジン用目標回転数Reを低回転数Rlに決定する。また、アシスト中止モードにおいて、エンジン用回転数指令手段114は通常指令手段114aにより、アイドル回転数Rc以上で上限回転数Rlim以下の範囲にエンジン回転数が低下するよう目標回転数を決定する。
【0062】
これらエンジン用回転数指令手段114による処理と並行して、車体コントローラ110のアシストモータ制御手段115はアシストモータ12を制御する。つまり、アシストモータ制御手段115は、ステップS4〜ステップS7のいずれか1のステップで選択された制御モードに基づきインバータ121,122を制御することで、電動旋回モータ30からアシストモータ12に供給される電力を制御する。具体的には、通常モードおよび回転数降下モードにおいて、アシストモータ制御手段115は通常制御手段115aにより、電動旋回モータ30により生成された過剰な電力のうち、アシスト要求出力Waまたは補正後のアシスト要求出力Warに相当する電力を消費してアシストモータ12がエンジン10を助勢するようインバータ121,122を制御する。一方、アシスト中止モードにおいて、アシストモータ制御手段115はアシスト中止制御手段115bにより、電動旋回モータ30により生成される過剰な電力が全くアシストモータ12に供給されないようインバータ121,122を制御する。
【0063】
ステップS1からステップS4〜ステップS7のいずれか1のステップを経てステップS8を行うルーチンは、数ミリ秒の所定周期で繰り返される。その所定周期は、エンジン回転数Rの制御に対し十分な処理速度となるよう設定されたものである。
【0064】
ここで、制御モードが油圧ショベル1の動作に応じて通常モードと回転数降下モードとの間で切り替わることに伴う、エンジン回転数Rの変化の一例について図6を用いて説明する。
【0065】
図6(a)に折線201(実線)で示す過剰要求出力ΔWの変化は、メインポンプ11aの出力が一定の状態、すなわち推定出力Wpが一定の状態で、旋回体3の旋回速度を減速させたときに得られる。旋回速度を任意の速度まで減速させるために、電動旋回モータ30による回生制動の制動トルクは時間経過に伴って必要値まで上昇した後にその必要値に安定し、その後、回生制動を終了するために時間経過に伴って低下する。この制動トルクに連動してアシスト要求出力Waが変化する。今回は、推定出力Wpが一定であるので、過剰要求出力ΔWの変化はアシスト要求出力Waの変化と同様のものとなり、具体的には、W1から時間経過に伴ってW2まで上昇した後にそのW2に安定し、その後、W1まで時間経過に伴って低下する。
【0066】
過剰要求出力ΔWを図6(a)に示すように変化させる旋回速度の減速が行われている間、エンジン用回転数指令手段114は、電動旋回モータ30が回生制動中であることに基づき、目標回転数Rc以上のエンジン用目標回転数Reを燃料噴射量制御装置130に指令し、これによってエンジン回転数RはRc以上に制御される。
【0067】
過剰要求出力ΔWが基準過剰要求出力Wsc以下の状態、すなわち電動旋回モータ30による回生制動の制動トルクが立ち上がり始めた時間0から時間T1までの期間においては、アシストモータ制御手段115は通常制御手段115aにより、アシスト要求出力Waに基づきインバータ121,122を制御することによって、電動旋回モータ30からアシストモータ12に電力を供給し、アシストモータ12にエンジン10を助勢させる。
【0068】
これと並行して、エンジン用回転数指令手段114は通常指令手段114aにより、推定出力Wpと最低出力Wminとの合計出力Wtをエンジン10に出力させるための目標回転数Rtから、アシスト要求出力Wa相当の助勢回転数Raを減算することでエンジン用目標回転数Reを得て、このエンジン用目標回転数Reを燃料噴射量制御装置130に指令する。これにより、エンジン10の燃料噴射量は、エンジン用目標回転数Reの指令に対応した量に制御される。前述のようにアシスト要求出力Waは時間0から時間T1までの期間において時間経過に伴って上昇するので、エンジン用回転数指令手段114は、そのアシスト要求出力Waの上昇分相当の助勢回転数Raを目標回転数Rtから減算してエンジン用目標回転数Reを得る。これにより、アシストモータ12の助勢により助勢回転数Raが上昇する分だけ、燃料噴射によるエンジン回転数Reは低下し、この結果、図6(b)に折線202(実線)で示すようにエンジン回転数RはR1(R1>Rc)に安定する。なお、時間0から時間T1までの期間は常時「ΔW≦Wsc,R<Rlim」であるので、制御切替手段117は制御モードを通常モードに保持している。
【0069】
時間T1を経過すると、すなわち、電動旋回モータ30の回生制動の制動トルクの立ち上がりが半ばを過ぎると、エンジン回転数RがR1の状態で過剰要求出力ΔWが基準過剰要求出力Wscを超え、すなわち「ΔW>Wsc,R≧Rc」の状態となり、制御切替手段117は制御モードを通常モードから回転数降下モードに切り替える。これにより、エンジン用回転数指令手段114は回転数降下指令手段114bにより、エンジン用目標回転数Reを低回転数Rlに決定して燃料噴射量制御装置130に指令する。この結果、燃料噴射量がステップ的に減少し、これに伴ってエンジン回転数RはR1からR2に降下する。
【0070】
このエンジン回転数Rの降下以後においても、電動旋回モータ30からアシストモータ12に電力を供給することによるエンジン10の回転の助勢は継続して行われており、したがって、エンジン回転数Rの降下はR2から上昇し、最終的にR3に達する。このエンジン回転数R3は上限回転数Rlimよりも低い。
【0071】
その後、過剰要求出力ΔWがW2から低下し始めると、すなわちアシスト要求出力Waが低下し始めると、助勢回転数Raも低下し始める。このときは制御モードが回転数降下モードであり、目標回転数Reは低回転数Rlに保持されているので、すなわち燃料噴射のみにより得られるエンジン回転数ReがRlに安定する状態であるので、アシスト要求出力Wa相当の助勢回転数Raが低下することに伴って、エンジン回転数R(R=Ra+Re)も低下し始める。そして、過剰要求出力ΔWが基準過剰要求出力Wscまで低下したとき、エンジン回転数RはR1まで低下し、これによってアシスト要求出力ΔWとエンジン回転数Rの状態は「ΔW≦Wsc,R<Rlim」の状態に戻る。これに伴い、制御切替手段117は制御モードを回転数降下モードから通常モードに戻す。つまり、助勢回転数Raが低下する分だけ、燃料噴射量によるエンジン回転数Reが上昇し、この結果、エンジン回転数R(R=Ra+Re)は、図6(b)に折線202(実線)で示すようにR1(R1>Rc)に安定する。
【0072】
なお、「ΔW≦Wsc」(ΔW<0以下も含む)となりやすい状態は、フロント作業装置6が作業を行っている状態、すなわち、メインポンプ11aからブームシリンダ7a、アームシリンダ8a、バケットシリンダ9aのいずれか、または全てに圧油が供給されている状態で、電動旋回モータ30により回生制動が行われる場合である。また、推定出力Wpと最低出力Wminとの合計出力Wtが、アシスト要求出力Waよりも大きい場合に、制御モードは通常モードとなる。逆に「ΔW≧Wsc」となりやすい状態は、フロント作業装置6が作業を行っていない状態で電動旋回モータ30により回生制動が行われる場合である。この場合、エンジン10に要求される出力は最低出力Wmin、すなわちエンジン10に掛かる最小負荷に抗してエンジン10を動作させる最低出力であるため、アシストモータ12にエンジン10の回転を助勢させる出力を生じさせにくい。
【0073】
第1実施形態に係る駆動制御装置100によれば次の効果を得られる。
【0074】
第1実施形態に係る駆動制御装置100において、制御モードとして回転数降下モードが選択される条件は、過剰要求出力WΔが基準過剰要求出力Wscよりも大きく、かつ、エンジン回転数センサ131により検出されたエンジン回転数Rが基準回転数Rc以上であることに設定されており、その基準回転数Rcは油圧ショベル1の作業に必要とされる最低のエンジン回転数として予め設定されており、エンジン用回転数制御手段114の回転数降下指令手段114bは、エンジン10の燃料噴射量を、基準回転数Rcよりも低い所定の低回転数Rlを目標回転数として燃料噴射量制御装置130に指令し、これによってエンジン回転数は低回転数Rlにステップ的に減少する。これらにより、アシストモータ12とは別の電動旋回モータ30により生成された電力のうちバッテリ13に対し過剰な電力を、アシストモータ12に消費させてエンジン10の回転の助勢を行う場合に、エンジン回転数が過剰になることを防止することができる。この結果、物理的な限界に迫る、または超える過度な負荷をエンジン10に掛けてしまうことを防止することができる。
【0075】
なお、前述した第1実施形態に係る駆動制御装置100は、蓄電装置としてバッテリ13を備えていたが、本発明における蓄電装置はバッテリに限定されるものではなく、バッテリ13の替わりにキャパシタであってもよいし、バッテリとキャパシタの両方であってもよい。
【0076】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る作業機械の駆動制御装置について図7を用いて説明する。
【0077】
第2実施形態に係る駆動制御装置においては、エンジン用回転数指令手段114が、第1実施形態における通常指令手段114aおよび回転数降下指令手段114bのうち通常指令手段114aとしての機能のみを備え、回転数降下指令手段114bの替わりに燃料噴射量制御装置130が少噴射量処理手段130aを備えている。この少噴射量処理手段130aは、制御切替手段117により制御モードが回転数降下モードに切り替えられた場合に、エンジン10の燃料噴射装置に所定の少噴射量で燃料を噴射させるものである。所定の少噴射量は、燃料噴射量制御装置130が低回転数Rlと同等のエンジン用目標回転数Reを指令されたときにエンジン10の燃料噴射装置により噴射される燃料噴射量に設定されている。つまり、第2実施形態に係る駆動制御装置100では、通常モードにおいてエンジン回転数を制御する通常手段は、エンジン用回転数指令手段114と燃料噴射量制御装置130とから構成されている。回転数降下モードにおいてエンジン回転数を制御する回転数降下手段は、燃料噴射量制御装置130の少噴射量処理手段130aからなる。
【0078】
第2実施形態に係る駆動制御装置によれば、制御モードとして回転数降下モードが選択される条件は、過剰要求出力WΔが基準過剰要求出力Wscよりも大きく、かつ、エンジン回転数センサ131により検出されたエンジン回転数Rが基準回転数Rc以上であることに設定されており、その基準回転数Rcは油圧ショベル1の作業に必要とされる最低のエンジン回転数として予め設定されており、燃料噴射量制御装置130の少量噴射処理手段130aは、燃料噴射量を低回転数Rl相当に減少させて、エンジン回転数を低回転数Rlまでステップ的に減少させる。これらにより、アシストモータ12とは別の電動旋回モータ30により生成された電力のうちバッテリ13に対し過剰な電力を、アシストモータ12に消費させてエンジン10の回転の助勢を行う場合に、エンジン回転数が過剰になることを防止することができる。この結果、物理的な限界に迫る、または超える過度な負荷をエンジン10に掛けてしまうことを防止することができる。
【0079】
特に、第2実施形態に係る駆動制御装置によれば、エンジン用回転数指令手段114から燃料噴射量制御装置130に低回転数Rlをエンジン用目標回転数Reとして指令する処理を省くことができ、これによって、エンジン回転数RのR1からR2への降下を第1実施形態よりも迅速に実現できる。つまり、エンジン10の過回転を第1実施形態よりも迅速に回避することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 油圧ショベル(作業機械)
3 旋回体(可動部)
7a ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
8a アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
9a バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
10 エンジン
11a メインポンプ
12 アシストモータ(第1電動発電機)
20 左走行モータ(油圧アクチュエータ)
21 右走行モータ(油圧アクチュエータ)
30 電動旋回モータ(第2電動発電機)
13 バッテリ(蓄電装置)
100 駆動制御装置
110 車体コントローラ
111 旋回モータ制御手段
112 ポンプ出力推定手段
113 目標回転数算出手段
114 エンジン用回転数指令手段(エンジン制御手段)
114a 通常指令手段(通常手段)
114b 回転数降下指令手段(回転数降下手段)
115 アシスト要求生成手段
115a 通常制御手段
115b アシスト中止制御手段
116 アシスト要求生成手段
117 制御切替手段
117a 判定テーブル
130 燃料噴射量制御装置(エンジン制御手段、通所手段、回転数降下手段)
130a 少噴射処理手段(回転数降下手段)
131 エンジン回転数センサ(エンジン回転数検出手段)
140 上限回転数入力装置(上限回転数指令手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からなるエンジンと、このエンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油を供給されて駆動する油圧アクチュエータと、前記エンジンに伝動可能に結合した第1電動発電機と、作業機械の所定の可動部の駆動、およびその可動に対して回生制動を行う第2電動発電機と、前記第1電動発電機により生成される電力、および、前記第2電動発電機により生成される電力を蓄える蓄電装置と、前記第2電動発電機により生成される電力のうち前記蓄電装置に対し過剰な電力を、前記第1電動発電機に供給して前記エンジンの回転の助勢で消費させるアシスト制御手段とを備えた作業機械の駆動制御装置において、
前記エンジンの定格回転数を前記エンジンの上限回転数として指令する上限回転数指令手段と、
単位時間当たりのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
前記油圧ポンプの推定出力を算出するポンプ出力推定手段と、
前記第2電動発電機により生成された電力のうち前記蓄電装置に対し過剰な電力をアシスト要求出力として算出するアシスト要求生成手段と、
前記推定出力に基づき前記エンジンの目標回転数を算出する目標回転数算出手段と、
前記目標回転数に基づき前記エンジンの燃料噴射量を制御するエンジン制御手段と、
前記アシスト要求出力から前記推定出力を減算して得られる過剰要求出力、および、前記エンジン回転数検出手段によるエンジン回転数の検出値に基づき、前記エンジン回転数制御手段の制御モードを切り替える制御切替手段とを備え、
前記制御切替手段は、
前記過剰要求出力が所定の基準過剰要求出力以下で、かつ、前記エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数が前記上限回転数よりも低い場合に、制御モードとして通常モードを選択し、
前記過剰要求出力が前記基準過剰要求出力よりも大きく、かつ、前記エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数が、作業機械の作業に必要とされる最低のエンジン回転数として予め設定された基準回転数以上の場合に、制御モードとして回転数降下モードを選択し、
前記エンジン回転数制御手段は、
前記通常モードにおいて前記エンジン回転数を制御する通常手段と、前記回転数降下モードにおいて前記エンジン回転数を制御する回転数降下手段とを備え、
前記通常手段は、前記アシスト要求出力に基づき前記第1電動発電機により前記エンジンが助勢されて得られる助勢回転数を、前記目標回転数から減算することでエンジン用目標回転数を得て、このエンジン用目標回転数に基づき燃料噴射量を制御するものであり、
前記回転数降下手段は、前記エンジンの燃料噴射量を、前記基準回転数よりも低い所定の低回転数相当の燃料噴射量にステップ的に減少させる
ことを特徴とする作業機械の駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の駆動制御装置において、
前記エンジン制御手段は、前記エンジンの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御装置と、前記エンジン用目標回転数を前記燃料噴射量制御装置に指令するエンジン用回転数指令手段とを備え、
前記エンジン用回転数指令手段は、前記燃料噴射量制御装置とともに前記通常手段を構成する通常指令手段と、前記燃料噴射量制御装置とともに前記回転数下降手段を構成する回転数降下指令手段を備え、
前記通常指令手段は、前記助勢回転数を前記目標回転数から減算して得られるエンジン用目標回転数を前記燃料噴射量制御装置に指令するものであり、
前記回転数降下指令手段は、前記低回転数をエンジン用目標回転数として前記燃料噴射量制御装置に指令するものである
ことを特徴とする作業機械の駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械の駆動制御装置において、
前記エンジン制御手段は、前記エンジンの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御装置と、前記エンジン用目標回転数を前記燃料噴射量制御装置に指令するエンジン用回転数指令手段とを備え、
前記エンジン用回転数指令手段は、前記燃料噴射量制御装置とともに前記通常手段を構成するものであり、
前記燃料噴射量制御装置は、前記回転数降下制御手段としての少噴射処理手段を備え、この少噴射処理手段は、前記エンジンの燃料噴射量を前記低回転数相当量に制御するものである
ことを特徴とする作業機械の駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の作業機械の駆動制御装置において、
前記制御切替手段は、制御モードを前記通常モードから前記回転数降下モードに移行させた後に、前記過剰要求出力が所定の基準過剰要求出力以下になり、かつ、前記エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数が前記上限回転数よりも低くなった場合に、制御モードを通常モードに戻す
ことを特徴とする作業機械の駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の作業機械の駆動制御装置において、
前記アシストモータ制御手段は、前記アシスト要求出力が所定の基準要求出力よりも高いか否かの判定を行い、この判定の結果が真である場合に、前記アシスト要求出力から前記基準要求出力を減算することで前記アシスト要求出力を補正する
ことを特徴とする作業機械の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−158890(P2012−158890A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18258(P2011−18258)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】