説明

作業機械

【課題】ステップとサイドフレームとの間に泥土や砂利等が堆積することを確実に防止することができる作業機械の提供。
【解決手段】サイドフレーム15を有するトラックフレーム10と、駆動輪11と遊動輪12に巻回され、上ローラ13の係合を介して無端状に取り付けられた履帯14と、サイドフレーム15の側面に取り付けられた乗降用のステップ16とを備えた油圧ショベル1にあって、ステップ16は上部及び下部を開放した枠状体から成り、この枠状体に対向するサイドフレーム15の部分に切欠き部20を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドフレームを有するトラックフレームを備えた油圧ショベル等の作業機械に係り、特にサイドフレームの側面に取り付けられた乗降用ステップを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、サイドフレームを有するトラックフレームと、駆動輪と遊動輪に巻回され、上ローラの係合を介して無端状に取り付けられた履帯とを備えた作業機械、例えば油圧ショベルにはサイドフレームの側面に乗降用のステップが取り付けられており、作業者がこのステップを利用してキャブ内に乗り込むようになっている。
【0003】
この種の作業機械では、例えば泥寧地等を走行する際に、履帯に付着した泥土が走行時の振動等によってステップ上に落下し、ステップとサイドフレームとの間の間隙に侵入することでステップ上に堆積して固着するという問題がある。
【0004】
そこで、サイドフレームの外側面にそれぞれ接合されたステップ、すなわちそれぞれ前後方向に離間した一対の接合板部と、これら各接合板部間を前後方向で連結しサイドフレームの外側面に間隙をもって対面した連結板部とから構成し、この連結板部を間隙が上側から下側に向けて大きくなるように傾斜させたステップを備えた建設機械のトラックフレームが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−72615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された従来の建設機械のトラックフレームに備えられたステップでは、ステップの上部とサイドフレームとの間の間隔を狭くすることにより、ステップ上に落下する泥土がステップとサイドフレームとの間の間隙に侵入することを防止しているので、固形化した泥土や履帯によって跳ね上げられた砂利等がこのステップの上部とサイドフレームとの間の間隙に引っ掛かり、ステップ上に堆積する懸念がある。
【0007】
そして、これら泥土や砂利等がステップ上に堆積した場合には、作業機械の外観を損なうだけでなく、作業者がステップを利用してキャブ内に乗り込んだときに、泥土や砂利等が作業者の足に付着してキャブ内を汚してしまい、その度に煩雑な清掃作業が必要になる。また、特に寒冷地等においては、これらステップ上に堆積した泥土と砂利等が固まって一体となりやすく、これら固まった泥土と砂利等がステップ上部の近傍に位置する上ローラや履帯に当接した場合にこれら上ローラ及び履帯の破損を招く懸念がある。なお、泥土や砂利等のステップ上への堆積を防ぐために、ステップを外側に突出させてステップとサイドフレーム側面との間隔を大きくすることが考えられる。しかし、このようにステップを外側へ突出させると車体の幅方向の寸法が大きくなって輸送時に支障を来たす虞がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ステップとサイドフレームとの間に泥土や砂利等が堆積することを確実に防止することができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の作業機械は、サイドフレームを有するトラックフレームと、駆動輪と遊動輪に巻回され、上ローラの係合を介して無端状に取り付けられた履帯と、前記サイドフレームの側面に取り付けられた乗降用のステップとを備えた作業機械において、前記ステップは上部及び下部を開放した枠状体から成り、この枠状体に対向する前記サイドフレームの部分に切欠き部を形成したことを特徴としている。
【0010】
このように構成した作業機械は、上部及び下部を開放した枠状体に対向するサイドフレームの部分に切欠き部を形成することにより、ステップを外側に突出させることなくステップとサイドフレームとの間に広い間隔を保つことができるので、固形化した泥土や履帯によって跳ね上げられた砂利等がステップとサイドフレームとの間に引っ掛かることを防止し、これら泥土や砂利等をステップとサイドフレームとの間に容易に通過させることができる。このように、ステップを外側に突出させることなく、これら泥土や砂利等がステップ上に堆積することを確実に防止することができる。
【0011】
また、本発明に係る作業機械は、前記サイドフレームの前記切欠き部に前記サイドフレームを補強する補強板材を設け、この補強板材を下方に行くに従って前記サイドフレームの外側に向かうように傾斜状に配置したことを特徴としている。このように構成すると、補強板材によってサイドフレームの強度を高めることができると共に、ステップとサイドフレームとの間に侵入した上記泥土や砂利等を補強板材の傾斜上を滑らせてサイドフレームの外側へ排除することができる。
【0012】
また、本発明に係る作業機械は、前記サイドフレームと、前記補強板材の両側との間にそれぞれ形成された開口を塞ぐ接合板材を設けたことを特徴としている。このように構成すると、接合板材によってサイドフレームの強度をさらに高めることができると共に、ステップとサイドフレームとの間に侵入した上記泥土や砂利等がサイドフレーム内に侵入することを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の作業機械は、サイドフレームの側面に取り付けられた乗降用のステップが上部及び下部を開放した枠状体から成っており、この枠状体に対向するサイドフレームの部分に切欠き部を形成した構成にしてある。そのため、ステップを外側に突出させることなくステップとサイドフレームとの間に広い間隔を保つことができるので、固形化した泥土や履帯によって跳ね上げられた砂利等がステップとサイドフレームとの間に引っ掛かることを防止し、これら泥土や砂利等をステップとサイドフレームとの間に容易に通過させることができる。これにより、ステップを外側に突出させることなく、これら泥土や砂利等がステップ上に堆積することを確実に防止することができる。
【0014】
このように、固形化した泥土や履帯によって跳ね上げられた砂利等がステップ上に堆積することを防止することにより、作業機械の美観を維持することができると共に、作業者がステップを利用してキャブ内に乗り込む際にこれら泥土や砂利等が作業者の足に付着することを抑えることができ、清掃作業を簡便にすることができる。また、寒冷地等においても同様の効果が得られ、これら泥土と砂利等がステップ上で堆積することを防止することにより、ステップの上部の近傍に位置する上ローラや履帯の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る作業機械の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】本発明に係る作業機械の第1実施形態の要部構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る作業機械の第2実施形態の要部構成を示す斜視図である。
【図4】図3の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る作業機械を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は本発明に係る作業機械の第1実施形態を示す側面図、図2は本発明に係る作業機械の第1実施形態の要部構成を示す斜視図である。
【0018】
本発明に係る作業機械の第1実施形態は、例えば油圧ショベルに適用される。図1に示すように、この油圧ショベル1は、走行体2と、旋回輪3aを介して走行体2の上側に配置される旋回体3と、この旋回体3に取り付けられて上下方向に回動するフロント作業機4とを備えている。走行体2は、サイドフレーム15を有するトラックフレーム10と、駆動輪11と遊動輪12に巻回され、上ローラ13の係合を介して無端状に取り付けられた履帯14と、サイドフレーム15の側面に取り付けられた乗降用のステップ16とを備えている。また、旋回体3は、前方にキャブ7を備え、後方にカウンタウェイト6を備え、また、これらキャブ7及びカウンタウェイト6の間にエンジンルーム5を備えている。
【0019】
図2に示すように、ステップ16は上部及び下部を開放した枠状体から成り、この枠状体は、一端がサイドフレーム15の側面15Bに取り付けられて互いに対向する一対の支持板材16aと、これら支持板材16aを前後方向に連結する連結板材16bとから構成されている。また、連結板材16bは中央の上側部分に凹凸部16cを有しており、ステップ16は平面視がコ字形状となっている。
【0020】
さらに、連結板材16bに対向するサイドフレーム15の部分に切欠き部20を形成している。すなわち、切欠き部20は一対の支持板材16aの間でサイドフレーム15の上面15Aから側面15Bに渡って形成されている。
【0021】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、ステップ16が上部及び下部を開放した平面視がコ字形状の枠状体から成り、この枠状体に対向するサイドフレーム15の部分に切欠き部20を形成することにより、ステップ16を外側に突出させることなくステップ16とサイドフレーム15との間に広い間隔を保つことができるので、固形化した泥土や履帯によって跳ね上げられた砂利等がステップ16とサイドフレーム15との間に引っ掛かることを防止することができる。そのため、これら泥土や砂利等がステップ16とサイドフレーム15との間の開放空間を通り抜けることができるので、ステップ16上に堆積することを確実に防止することができる。
【0022】
このように、泥土や砂利等がステップ16上に堆積することを防止することにより、油圧ショベル1の美観を維持することができると共に、作業者がステップ16を利用してキャブ7内に乗り込む際にこれら泥土や砂利等が作業者の足に付着することを抑えることができ、清掃作業を簡便にすることができる。また、この油圧ショベル1を寒冷地等において使用する場合でも、堆積して固まった泥土と砂利等によってステップ16上部の近傍に位置する上ローラ13や履帯14が破損することを防止することができ、環境の影響を受けることなく使用することができる。
【0023】
また、ステップ16の連結板材16bの上側部分に凹凸部16cを形成していることにより、作業者がステップ16を踏む際に靴の裏に付着した泥土や砂利等をこの凹凸部16cで落とすことができ、キャブ7内が汚れることを防止することができる。また、この凹凸部16cが作業者の靴に対して滑り止めとなるので、作業者がステップ16上で滑ったり、あるいはステップ16を踏み外すことなくキャブ7内に乗り込むことができ、またキャブ7内から外に降りることができる。これにより、油圧ショベル1に乗降する際の安全性を高めることができる。
【0024】
[第2実施形態]
図3は本発明に係る作業機械の第2実施形態の要部構成を示す斜視図、図4は図3の要部断面図である。
【0025】
図3、図4に示すように、本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、サイドフレーム15の切欠き部20にサイドフレーム15を補強する補強板材17を設け、この補強板材17を下方に行くに従ってサイドフレーム15の外側に向かうように傾斜状に配置し、さらにサイドフレーム15と、補強板材17の両側との間にそれぞれ形成された開口を塞ぐ一対の接合板材18を設けたことであり、その他の構成は第1実施形態と同じである。なお、サイドフレーム15、補強板材17及び接合板材18はそれぞれサイドフレーム15の内側から溶接で接合されている。
【0026】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、サイドフレーム15の切欠き部20に補強板材17及び接合板材18を設けることにより、サイドフレーム15の強度を高めることができ、油圧ショベル1の耐久性を向上することができる。
【0027】
また、この補強板材17を傾斜上に配設していることにより、ステップ16とサイドフレーム15との間に侵入した泥土や砂利等を補強板材17の傾斜上を滑らせてサイドフレーム15の外側へ排除することができ、サイドフレーム15及びステップ16に付着する泥土や砂利等の排斥能力を向上することができる。
【0028】
また、サイドフレーム15と、補強板材17の両側との間にそれぞれ形成された開口を一対の接合板材18で塞ぐことにより、ステップ16とサイドフレーム15との間に侵入した泥土や砂利等がサイドフレーム15内に侵入することを防止することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 油圧ショベル
2 走行体
3 旋回体
3a 旋回輪
4 フロント作業機
7 キャブ
10 トラックフレーム
11 駆動輪
12 遊動輪
13 上ローラ
14 履帯
15 サイドフレーム
15A 上面
15B 側面
16 ステップ
16a 支持板材
16b 連結板材
16c 凹凸部
17 補強板材
18 接合板材
20 切欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドフレームを有するトラックフレームと、駆動輪と遊動輪に巻回され、上ローラの係合を介して無端状に取り付けられた履帯と、前記サイドフレームの側面に取り付けられた乗降用のステップとを備えた作業機械において、
前記ステップは上部及び下部を開放した枠状体から成り、この枠状体に対向する前記サイドフレームの部分に切欠き部を形成したことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、前記サイドフレームの前記切欠き部に前記サイドフレームを補強する補強板材を設け、この補強板材を下方に行くに従って前記サイドフレームの外側に向かうように傾斜状に配置したことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、前記サイドフレームと、前記補強板材の両側との間にそれぞれ形成された開口を塞ぐ接合板材を設けたことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−228662(P2010−228662A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80095(P2009−80095)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】