説明

作業用車両のドア施錠装置

【課題】 作業装置からトラック車両の施錠操作を行うことができる作業用車両のドア施錠装置を提供する。
【解決手段】 内部に搭乗する乗降口に取り付けられたドア2bおよびこのドア2bを施錠する施錠部11を有する運転キャビン2aが形成された車体2上に、高所作業装置8が配設された高所作業車1のドア施錠装置20を、高所作業装置8に配設され、施錠部11の操作を行う施錠操作スイッチ22と、運転キャビン2aに配設され、施錠部11を駆動してドア2bを施錠若しくは解錠する施錠駆動部24と、施錠操作スイッチ22の操作に応じて施錠駆動部24の作動を制御するコントローラ30とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用車両のドア施錠装置に関し、特に詳細には、この作業用車両に搭載された作業装置から運転キャビンに取り付けられたドアの施錠および解錠を行うことができるドア施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック車両をベースにして高所用の作業装置を搭載した高所作業車(いわゆる「トラックマウント式高所作業車」)のような作業用車両において、作業装置を駆動する動力は、例えば、トラック車両のエンジンに搭載されたパワーテイクオフ(PTO)装置から取り出される。そのため、作業装置はトラック車両のシャシ・キースイッチ(イグニッションキー)がオンされないと作動させることができないように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−46997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業装置を使用しているときは、シャシ・キースイッチがオンされている状態、すなわち、運転キャビン内のシャシ・キーシリンダに鍵が差し込まれたままの状態であり、通常、運転キャビンに搭乗するためのドアは解錠されたままとなる。そのため、このような状態では、第三者が運転キャビン内に自由に出入りすることができ、シャシ・キースイッチがオフされると、作業者が意図しないタイミングで作業装置が停止してしまう虞があり、また、運転キャビン内の車載品が盗難に遭う虞があるという課題があった。特に、高所作業車の作業装置に設けられた作業台に作業者が搭乗して高所作業を行う場合には、作業台からトラック車両側(運転キャビン)の監視をすることは困難である。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、作業装置からトラック車両の施錠操作を行うことができる作業用車両のドア施錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る作業用車両のドア施錠装置は、乗降口を開閉自在に覆って取り付けられたドアおよびこのドアを施錠する施錠部を有する運転キャビンが設けられた車体上に、作業装置(例えば、実施形態における高所作業装置8)が配設されて構成される作業用車両(例えば、実施形態における高所作業車1)に用いられるものであり、作業装置に配設され、施錠部を施錠または解錠作動させるための操作を行う施錠操作スイッチと、運転キャビンに配設され、施錠部を駆動してドアを施錠若しくは解錠する施錠駆動部とを有し、施錠操作スイッチの操作に応じて施錠駆動部の作動を制御する。
【0007】
このとき、運転キャビンに配設され、作業装置の電源をオン・オフするシャシ・キースイッチと、このシャシ・キースイッチがオンのときに、作業装置の電源をオン・オフする電源投入手段(例えば、実施形態における作業装置電源スイッチ26)とを有し、電源投入手段がオンされているときに、施錠操作スイッチの操作に応じて施錠駆動部の作動が制御されるように構成されることが好ましい。
【0008】
また、作業装置が作業状態であるか否かを検出する作業状態検出手段(例えば、実施形態におけるブーム格納検出器23)と、この作業状態検出手段により作業装置が作業状態になったと検出されたときに、施錠駆動部を制御して施錠部によりドアを施錠するコントローラとを有することが好ましい。
【0009】
あるいは、作業装置が格納状態であるか否かを検出する格納状態検出手段(例えば、実施形態におけるブーム格納検出器23)と、格納状態検出手段により作業装置が格納状態になったと検出されたときに、施錠駆動部を制御して施錠部によりドアを解錠するコントローラとを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る作業用車両のドア施錠装置を以上のように構成すると、運転キャビンのドアの施錠を作業装置からの操作により行うことができるため、作業装置の操作中に運転キャビン内に第三者が入ることを防止することができ、さらに、運転キャビン内の車載品の盗難を防止することができる。
【0011】
また、車体に設けられたシャシ・キースイッチがオンされたときに、コントローラに電源が投入されてドアの施錠を作業装置側から行えるように構成することにより、運転キャビン内に配設されたシャシ・キースイッチを第三者に操作されることを防止することができる。
【0012】
さらに、作業装置が作業状態であることを検出してドアを施錠し、格納状態であることを検出してドアを解錠するように構成することにより、作業装置の操作時にドアの施錠を忘れることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、本発明に係るドア施錠装置が搭載される作業用車両の一例として車体に高所作業装置が搭載された高所作業車1について図1を用いて説明する。この高所作業車1は、車体2の前方に運転キャビン2aを有し、前後輪3a,3bで走行可能なトラック車両をベースに構成される。運転キャビン2aの後方の車体2には、旋回モータにより駆動されて旋回動可能に構成された旋回台4が取り付けられている。そして、この旋回台4の上部に基部が枢結されて起伏シリンダの伸縮作動により垂直面内で起伏動可能にブーム5が取り付けられている。このブーム5は、複数の部材が入れ子式に組み合わされて内蔵の伸縮シリンダにより伸縮動可能に構成されている。
【0014】
ブーム5の先端部には、ブーム5の起伏作動面と同一面内(垂直面内)において揺動可能に垂直ポスト(図示せず)が枢結されており、この垂直ポストはレベリングシステムによってブーム5の起伏角度に拘わらず常に垂直に延びて位置するようにレベリング制御される。そして、このように垂直保持される垂直ポストに、首振りモータによって水平旋回自在に作業台7が取り付けられており、この作業台7の床面はブーム5の起伏状態に拘わらず常に水平に保持される。なお、以降の説明においては、旋回台4、ブーム5および作業台7をまとめて「高所作業装置8」と呼ぶ。作業台7には上部操作装置9が取り付けられており、作業台7に搭乗した作業者はこの上部操作装置9を操作して高所作業装置8を作動させる。
【0015】
また、車体2の前後左右の4箇所に、下方に伸縮自在なアウトリガジャッキ10a,10bが設けられている。高所作業装置8を作動させて高所作業を行うときには、周囲の障害物との相対位置関係に応じて作業者が左右のアウトリガジャッキ10a,10bをそれぞれ下方に張り出させて車体2を持ち上げ支持する。このアウトリガジャッキ10a,10bの操作は車体2に設けられたジャッキ操作装置により行う。
【0016】
なお、この高所作業車1は、例えば運転キャビン2a内の運転席側に設けられた施錠スイッチにより、この運転キャビン2aに取り付けられたドア2bの施錠部11を駆動して、ドア2bを施錠若しくは解錠できるように構成されている。
【0017】
それでは以上のように構成された高所作業車1に用いられるドア施錠装置20について図2を用いて説明する。ドア施錠装置20は、コントローラ30、施錠操作スイッチ22、ブーム格納検出器23、施錠駆動部24、および、施錠状態表示部25とから構成される。
【0018】
コントローラ30には、運転キャビン2a内に設けられたシャシ・キースイッチ21が接続されており、このシャシ・キースイッチ21がオンされるとこのコントローラ30に電源が投入されて起動するように構成されている。また、コントローラ30には上述の上部操作装置9が接続されており、コントローラ30は、この上部操作装置9から出力される操作信号を受けて、高所作業装置9の作動を制御する制御信号を油圧ユニット40に出力し、高所作業装置9を駆動するアクチュエータ(例えば、上述の旋回モータ、起伏シリンダ、伸縮シリンダ等)50への作動油の供給を制御する。ここで、油圧ユニット40は、油圧ポンプ41、オイルタンク42、アクチュエータ50を制御するコントロールバルブ43等から構成され、オイルタンク42から油圧ポンプ41により吸い上げられて吐出された作動油をコントロールバルブ43でアクチュエータ50に供給制御するように構成されている。なお、油圧ポンプ41は、車体2を走行させるエンジン12に取り付けられたPTO装置13から動力が取り出されて駆動される。
【0019】
施錠操作スイッチ22は、作業台7に取り付けられており、この作業台7に搭乗した作業者が操作することにより、操作信号がコントローラ30に出力される。また、施錠駆動部24は運転キャビン2aのドア2bに取り付けられた施錠部11を駆動するものであり、コントローラ30からの制御信号に基づいて作動して、この施錠部11を駆動させることによりドア2bを施錠・解錠する。さらに、施錠状態表示部25は作業台7に取り付けられており、上述の施錠部11の状態(施錠状態若しくは解錠状態)が表示される。
【0020】
このように構成されたドア施錠装置20において、作業台7に搭乗した作業者が施錠操作スイッチ22を操作することにより、この作業台7から運転キャビン2aのドア2bの施錠および解錠操作をすることができる。そのため、高所作業装置8により高所作業をしている場合において、運転キャビン2a内のシャシ・キースイッチ21に鍵が差し込まれたままの状態でも、作業台7からドア2bを施錠して第三者にこの鍵を操作されることを防止することができる。
【0021】
ところで、作業台7に設けられた施錠操作スイッチ22からドア2bの施錠・解錠を操作するように構成すると、作業者がドア2bの施錠を忘れて高所作業装置8により作業を開始してしまう場合がある。そのため、本実施例に係るドア施錠装置20では、高所作業車1の高所作業装置9が作業状態にあるか格納状態にあるかを検出し、自動的にドア2bの施錠・解錠を行うように構成されている。すなわち、コントローラ30に接続されたブーム格納検出器23により、ブーム5が格納状態にあるか否かを検出し、ブーム5が格納状態でないときは高所作業装置9が操作されていると判断するように構成されている。なお、ブーム格納検出器23は、例えば、図示しないブーム受けにリミットスイッチを設け、このブーム受けにブーム5が格納されたときに、このリミットスイッチがオンされ、ブーム受けにブーム5が格納されていないときはオフされるように構成されている。
【0022】
具体的には、コントローラ30により次のような制御が行われる。作業者が作業台7に搭乗して上部操作装置9を操作して高所作業装置9を作動させると、ブーム5が作動してブーム格納検出器23からブーム5が格納されていないという信号がコントローラ30に出力される。するとこのコントローラ30は高所作業装置8が作業状態になったと判断し、施錠駆動部24に制御信号を出力して運転キャビン2aのドア2bを施錠するとともに、施錠状態表示部25に施錠されていることを表示する。
【0023】
一方、高所作業装置8による高所作業が終了し、ブーム5がブーム受けに格納されると、ブーム格納検出器23からブーム5が格納されているという信号がコントローラ30に出力される。すると、コントローラ30は高所作業装置8が格納状態になったと判断し、施錠駆動部24に制御信号を出力して運転キャビン2aのドア2bを解錠するとともに、施錠状態表示部25に解錠されていることを表示する。
【0024】
このように、高所作業装置8の状態に応じてドア2bの施錠・解錠をコントローラ30により自動的に行うことにより、作業者によるドア2bの施錠操作忘れを防止することができる。このとき、施錠状態表示部25により、作業台7からドア2bの施錠状態を確認することができる。
【0025】
なお、高所作業装置8が格納状態にあるのか作業状態にあるのか(以下、「状態」と呼ぶ)を検出する手段としては、ブーム格納検出器23に限られない。例えば、アウトリガジャッキ10a,10b(以下まとめて「アウトリガジャッキ10」と呼ぶ)に、このアウトリガジャッキ10が下方に伸張されて接地されたことを検出するジャッキ接地検出器を設け、その信号をコントローラ30に入力することにより、高所作業装置8の状態を判断することができる。また、アウトリガジャッキ10が全縮された状態を検出するリミットスイッチからなるジャッキ格納検出器を設け、この信号をコントローラ30に入力することによっても、高所作業装置8の状態を判断することができるし、アウトリガジャッキ10の伸縮を操作するジャッキ操作装置(車体2上に設けられる)が操作されたことを検出して高所作業装置8の状態を判断することもできる。また同様に、作業台7が車体2の所定の位置に格納されたことを検出するリミットスイッチからなる作業台格納検出器を設けることでも高所作業装置8の状態を検出することができる。あるいは、ブーム5の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器を設け、この起伏角度が所定の大きさ以上になったときに、高所作業装置8が作業状態となったと判断するように構成することもできる。
【0026】
また、以上の実施例においては、施錠操作スイッチ22を作業台7に設けた場合について説明したが、この施錠操作スイッチ22を車体2(例えば、車体2上に設けられ、ブーム5等の操作を行う下部操作装置やアウトリガジャッキ10の操作を行うジャッキ操作装置の近傍)に設けることも可能である。この場合は、上述のブーム格納検出器23等により高所作業装置8が作業状態になっているとコントローラ30が判断したときは、施錠操作スイッチ22の操作による施錠部11の解錠操作を規制し、施錠部11が解錠状態にならないように構成することが好ましい。高所作業中にドア2bの施錠部11が解錠されて運転キャビン2a内に第三者が侵入してシャシ・キースイッチ21がオフされたり、運転キャビン2a内の車載品が盗難されたりするのを防止するためである。
【0027】
また、以上の実施例においては、コントローラ30の電源はシャシ・キースイッチ21に連動して投入されるように構成された場合について説明したが、本発明がこれに限定されることはなく、このシャシ・キースイッチ21の投入に加えて、例えば、PTO装置13を作動させるスイッチに連動してコントローラ30の電源が投入されるように構成しても良いし、高所作業装置8を作動させるための電源を投入する作業装置電源スイッチ26と連動させてコントローラ30の電源が投入されて、施錠操作スイッチ22から施錠部11の施錠・解錠操作が可能となるように構成しても良い。さらに、以上の実施例においては、高所作業装置8の状態に応じてドア2bの施錠・解錠を自動的に行っていたが、このような制御の代わりに、ドア2bが施錠されていない状態で高所作業装置8が作業状態になった場合に、コントローラ30が作業者に警告を発する(警報音を発する等)ように構成することも可能である。
【0028】
なお、ドア2bの施錠・解錠をコントローラ30により自動的には行わず、作業台7に配設された施錠操作スイッチ22の操作に応じて施錠部11を直接施錠・解錠するように構成する場合には、施錠操作スイッチ22から直接施錠駆動部24を作動させるように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るドア施錠装置が搭載される高所作業車の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るドア施錠装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
1 高所作業車(作業用車両)
2 車体
2a 運転キャビン
2b ドア
8 高所作業装置(作業装置)
11 施錠部
20 ドア施錠装置
21 シャシ・キースイッチ
22 施錠操作スイッチ
23 ブーム格納検出器(作業状態検出手段、格納状態検出手段)
24 施錠駆動部
26 作業装置電源スイッチ(電源投入手段)
30 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口を開閉自在に覆って取り付けられたドアおよび前記ドアを施錠する施錠部を有する運転キャビンが設けられた車体上に、作業装置が配設されて構成される作業用車両のドア施錠装置であって、
前記作業装置に配設され、前記施錠部を施錠または解錠作動させるための操作を行う施錠操作スイッチと、
前記運転キャビンに配設され、前記施錠部を駆動して前記ドアを施錠若しくは解錠する施錠駆動部とを有し、
前記施錠操作スイッチの操作に応じて前記施錠駆動部の作動を制御するようにしたことを特徴とする作業用車両のドア施錠装置。
【請求項2】
前記運転キャビンに配設され、前記作業装置の電源をオン・オフするシャシ・キースイッチと、前記シャシ・キースイッチがオンのときに、前記作業装置の電源をオン・オフする電源投入手段とを有し、
前記電源投入手段がオンされているときに、前記施錠操作スイッチの操作に応じて前記施錠駆動部の作動が制御されるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の作業用車両のドア施錠装置。
【請求項3】
前記作業装置が作業状態であるか否かを検出する作業状態検出手段と、
前記作業状態検出手段により前記作業装置が作業状態になったと検出されたときに、前記施錠駆動部を制御して前記施錠部により前記ドアを施錠するコントローラとを有することを特徴とする請求項1または2に記載の作業用車両のドア施錠装置。
【請求項4】
前記作業装置が格納状態であるか否かを検出する格納状態検出手段と、
前記格納状態検出手段により前記作業装置が格納状態になったと検出されたときに、前記施錠駆動部を制御して前記施錠部により前記ドアを解錠するコントローラとを有することを特徴とする請求項1または2に記載の作業用車両のドア施錠装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−249727(P2006−249727A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65731(P2005−65731)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】