説明

作業装置及びロボットによる作業方法

【課題】本発明は、簡便な構造をもち、低廉な費用で構成可能な作業装置及び作業方法を提供することを課題とする。
【解決手段】保護柵21で囲われ、第1ワーク15及びこの第1ワーク15とは別の第2ワーク18に作業を施すロボット11を中心とする作業装置10において、この作業装置10は、保護柵21に、第2ワーク18を載せ、保護柵21の外からロボット11の動作範囲へ移動させる第2ワーク移動機構19を付設する。第2ワーク移動機構19は、保護柵21に設けられている開口部22を貫通して敷設されたレール42と、このレール42に移動可能に載せられ、開口部22を塞ぐ大きさ及び形状に設定された前壁部44及び後壁部45を備えるトレイ43とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに作業を施すロボットが保護柵で囲われている作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットは、省力化が図れる有益な自動機械である。ところで、ロボットの動作範囲に人が立ち入るためには、ロボットを停止させることが条件となる。しかし、ロボットの停止は生産性の低下に繋がる。そこで、ロボットの停止頻度を下げる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−154916公報(図1、図2)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図5は従来の技術の基本構成を説明する図及びその作用図である。
(a)において、作業装置100は、ロボット101と、このロボット101の動作範囲Wに配置されワークを積載した第1及び第2コンテナ102、103と、この第1コンテナ及び第2コンテナ102、103の周囲に設ける保護柵104と、この保護柵104の一部に開閉可能に設けた第1扉104a及び第2扉104bと、これらの第1及び第2扉104a、104bの外側に設け、第1コンテナ及び第2コンテナ102、103を出し入れ可能にしたワーク供給エリア105、106とを備える。
【0004】
動作範囲Wにおいて、ロボット101と第1コンテナ102の間に第1センサ107が設けられ、ロボット101と第2コンテナ103の間に第2センサ109が設けられている。
また、第1扉104aに、第1扉104aの開閉を検出する第1開閉センサ111が設けられ、第2扉104bに、第2扉104bの開閉を検出する第2開閉センサ112が設けられている。113は第1扉の作業可能表示灯、114は第2扉の作業可能表示灯、115はワーク搬送手段としてのスライダである。
【0005】
(b)において、第1及び第2コンテナ102、103上に載せたワークは、ロボット101によって順次把持され、スライダ115へ搬送される。
【0006】
コンテナ102のワークが空になると、作業者Pは、作業可能表示灯113が点灯していることを確認した上で、第1扉104aを開け、ワーク供給エリア105から第1コンテナ102を出し入れする。
すなわち、半円状の動作範囲Wのうちの斜線を施していない領域には、作業員Pが立ち入ることができる。ロボットを止める必要がないので、生産性を高めることができる。
【0007】
しかし、特許文献1の技術では、第1及び第2扉104a、104bの開閉を検出する第1及び第2開閉センサ111、112、センサ107、109、及び作業可能表示灯113、114など多数の要素が必要となり、作業装置100は複雑なものにならざるを得ない。また、装置費用も嵩む。
簡便な構造で、設備費用の嵩まない作業装置及び作業方法が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、簡便な構造をもち、低廉な費用で構成可能な作業装置及び作業方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、第1ワーク及びこの第1ワークとは別の第2ワークに作業を施すロボットが保護柵で囲われている作業装置において、保護柵に、第2ワークを載せ、保護柵の外からロボットの動作範囲へ移動させる第2ワーク移動機構が付設されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、第2ワーク移動機構は、保護柵に設けられている開口部を貫通して敷設されたレールと、このレールに移動可能に載せられ、開口部を塞ぐ大きさ及び形状に設定された前壁部及び後壁部を備えるトレイとからなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、第1ワーク及びこの第1ワークとは別の第2ワークに作業を施すロボットによる作業方法において、第1ワークにロボットで作業を施す第1作業工程と、この工程に並行してロボットの動作範囲にある、処理済みの第2ワークを保護柵の外へ移動する第2ワーク取り出し工程と、保護柵の外から未処理の第2ワークをロボットの動作範囲へ移動する第2ワーク投入工程と、第1作業工程と重ならないときに、第2ワークにロボットで作業を施す第2作業工程とからなり、第1ワークと第2ワークを共通のロボットで連続的に処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、第2ワーク移動機構で、第2ワークを保護柵の外から内へ又は内から外へ移動させる。すなわち、人が保護柵内に入らないで、ロボットに第2ワークへ作業を行わせることができる。
人が保護柵内に入る必要がないので、人を検出するセンサやスイッチを省くことができ、簡便な構造をもち、低廉な費用で構成可能な作業装置を提供することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、第2ワーク移動機構に、開口部を塞ぐ大きさ及び形状に設定された前壁部及び後壁部を備えた。保護柵の開口部を、前壁部又は後壁部で塞げば、開口部から人が手などを保護柵内へ入れることができなくなる。
【0014】
請求項3に係る発明では、第1作業工程と重ならないときに、第2ワークにロボットで作業を施す第2作業工程を備え、第1ワークと第2ワークを共通のロボットで連続的に処理するようにしたので、ロボットの稼働率を向上することができ、ロボットを有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る作業装置の斜視図であり、作業装置10は、ロボット11と、ロボットアーム13の先端13aに取り付けるシール剤塗布ユニット14と、ロボット11の周囲に設け第1ワーク15を搬送する第1コンベヤ16と、同じく、ロボット11の周囲に設け第2ワーク18を取り出し又は取り入れる第2ワーク移動機構19と、ロボット11、第1コンベヤ16及び第2ワーク移動機構19を囲う保護柵21とを備える装置である。
【0016】
すなわち、作業装置10は、第1ワーク15及びこの第1ワーク15とは別の第2ワーク18に作業を施すロボット11が保護柵21で囲われている装置である。保護柵21には、第2ワーク18を載せ、保護柵21の外からロボット11の動作範囲へ移動させる第2ワーク移動機構19が付設されている。
【0017】
図2は本発明に係る作業装置の平面図であり、作業装置10は、ロボット11が作業可能な領域である動作範囲Kに第1ワーク15を搬送する第1コンベヤ16を設け、第1ワーク15とは別部品である第2ワーク18、18を動作範囲Kに移動させる第2ワーク移動機構19を設けるとともに、動作範囲Kを保護柵21で囲ってなる。
【0018】
ロボット11は、ロボット本体12と、このロボット本体12から延ばしたロボットアーム13と、このロボットアーム13の先端に設けるシール剤塗布ユニット14からなり、保護柵21内の動作範囲Kにおいて、ロボットアーム13を移動させながらシール剤塗布ユニット14からワークの表面にシール剤を塗布する。
【0019】
保護柵21は、ロボット11の周囲を囲うものであり、ロボット11の動作範囲Kは、保護柵21内側の範囲ということができる。保護柵21は、平面視長方形に形成し、第1柵〜第4柵21a、21b、21c、21dからなる。第1柵21aに対向させて第3柵21cを設け、第2柵21bに対向させて第4柵21dを設ける。
【0020】
第1柵21aと第3柵21cに第1コンベヤ16が通る第1開口24及び第2開口25を設け、第3柵21cに第2ワーク移動機構19が通る第3開口26を設け、第1及び第2ワーク15、18を動作範囲Kに出し入れ可能に構成する。
【0021】
第1コンベヤ16は、機体28と、この機体28上に複数配置するローラ部材29・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)を備える。ローラ部材29・・・は、図示せぬ駆動手段によって駆動され、ワークを載置する板状のパレット31・・・を図矢印S方向に移動させる。
【0022】
第2ワーク移動機構19は、第3開口26を貫通して設ける基台41と、この基台41上に敷設したレール42、42と、これらのレール42、42に沿って移動可能に設けるトレイ43とからなる。基台41は、第3開口26を横断して保護柵21の内側に張り出して設けるものである。
【0023】
トレイ43は、第3開口26を塞ぐ大きさ及び形状に設定された前壁部44及び後壁部45と、前壁部44の外側の面に設けトレイ43を操作する操作部48と、トレイ43の側方を塞ぐ左右の側壁部46L、46Rと、トレイ43上に2つ載せる第2ワーク18、18を仕切るとともにこれらの位置決めを行う仕切板47と、からなる。
【0024】
第2ワーク移動機構19は、レール42、42に移動可能に載せられ、開口部22の1つである第3開口26を塞ぐ大きさ及び形状に設定された前壁部44及び後壁部45を備えた。保護柵21の開口部22を、前壁部44又は後壁部45で塞げば、開口部22から人が手などを保護柵21内へ入れることができなくなる。
【0025】
以上に述べた作業装置の作用を次に述べる。
パレット31・・・に載置した第1ワーク15・・・が、第1開口24から保護柵21内に搬送され、第1コンベヤ16上の所定位置に到達する。そして、ロボット11が第1ワーク15表面の所定位置にシール剤の塗布を開始する。
【0026】
ロボット11が第1ワーク15にシール剤を塗布する間、保護柵21内に張り出して設ける基台41上に設定した範囲にロボット11はなく、作業者Pが第2ワーク移動機構19のトレイ43を移動させても、ロボット11は停止することなく、シール剤塗布作業を続ける。次図で、第2ワーク移動機構19の作用について説明する。
【0027】
図3は第2ワーク移動機構の作用説明図である。
(a)は、第1ワークにロボットで作業を施すときに、この作業に並行して、ロボットの動作範囲にある、処理済みの第2ワーク18b、18bを保護柵の外へ移動する第2ワーク取り出し工程を説明する図である。この工程において、作業者Pは、トレイ43の操作部48をつかんで引き出し、処理済みの第2ワーク18b、18bを取り出す。
【0028】
(b)は、保護柵の外から未処理の第2ワーク18a、18aをロボットの動作範囲へ移動する第2ワーク投入工程を説明する図である。この工程において、作業者Pは、未処理の第2ワーク18a、18aをトレイ43に入れ、この操作部48をつかんで押し、第2ワーク18a、18aをロボット11の動作範囲内に移動させる。
(c)は、第1作業工程と重ならないときに、第2ワーク18a、18aにロボットで作業を施す第2作業工程を説明する図である。
この工程において、ロボットで第2ワーク18a、18aにシール剤塗布作業を施す。
このとき、トレイ43が完全に閉じている条件にのみ、動作範囲Kで且つ保護柵21の基台41上に移動でき、それ以外の条件では、基台41上に侵入しないようにロボット11の動きを制御する。
【0029】
図4は本発明に係る作業装置のタイムチャートであり、横軸は時間を示す。
ロボットによる作業方法は、ロボットが第1ワークに作業を施す第1作業工程と、この工程に並行して処理済みの第2ワークを保護柵の外へ移動する第2ワーク取り出し工程と、保護柵の外から未処理の第2ワークをロボットの動作範囲へ移動する第2ワーク投入工程と、第1作業工程と重ならないときに、第2ワークに前記ロボットで作業を施す第2作業工程と、第2作業工程と並行して第1コンベヤでパレットを移動させ、加工済みの第1のワークを払い出すとともに未加工の第1のワークを動作範囲内における所定の位置に搬入するパレット移動工程とからなる。
【0030】
このような方法を採ることで、第1ワークの搬送時などロボットが第1ワークにシール剤塗布作業をしないときのロボットの待ち時間を、第2ワークの作業に振り向けることができる。
すなわち、第1作業工程と重ならないときに、第2ワークにロボットで作業を施す第2作業工程を備え、第1ワークと第2ワークを共通のロボットで連続的に処理するようにしたので、ロボットの稼働率を向上することができ、ロボットを有効に活用することができる。
【0031】
本実施例において、第1ワーク(図2の符号15)はエンジンのシリンダブロックであり、第2ワーク(図2の符号18)は同一のエンジンに用いる小物部品であり、これらを1つのシール剤塗布ユニットで処理することができる。また、シール剤を塗布した後のワークは、シール剤が固まる前に組み付けることが必要なものである。いわゆる、ワークの造り溜めは許されず、速やかに組付作業をさせる必要があった。本発明の作業装置は、このような条件の下での生産に好適である。
【0032】
図2に戻って、保護柵21に、第2ワーク18を載せ、保護柵21の外からロボット11の動作範囲Kへ移動させる第2ワーク移動機構19が付設されている。
仮に、ロボット11に人を介在させる作業を含んでいる場合、ロボット11の稼働率をできるだけ低下させないようにするため、扉の開閉検出手段及びロボット11の周囲にセンサなどの要素を設け、所定の条件を満たしたとき一部の範囲でのみ人を介在させる。このため、ロボット11の稼働率の低下は回避できるものの、作業者Pを保護する要素が増え、作業装置10は複雑なものにならざるを得ない。
【0033】
この点、本発明では、保護柵21に、第2ワーク18を載せ、保護柵21の外からロボットの動作範囲Kへ移動させる第2ワーク移動機構19を付設するので、ロボット11の動作範囲に作業者Pを介在させない作業装置を構成することが可能となる。動作範囲に作業者を介在させることのない作業装置を構成することができる。
【0034】
すなわち、人が保護柵21内に入らないで、ロボット11に第2ワーク18へ作業を行わせることができる。
作業者が保護柵内に入る必要がないので、作業者を検出するセンサやスイッチを省くことができ、簡便な構造をもち、低廉な費用で構成可能な作業装置を提供することができる。
【0035】
尚、本発明は、実施の形態ではシリンダブロックのシール剤塗布装置に適用したが、車体組立工程における、ドア部材及び小物部品へのシール剤塗布に適用可能であり、それ以外の一般の生産ライン上において、ワークにシール剤を塗布する工程に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、エンジンの製造工程における、シリンダブロックのシール剤塗布装置及びその作業方法に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る作業装置の斜視図である。
【図2】本発明に係る作業装置の平面図である。
【図3】第2ワーク移動機構の作用説明図である。
【図4】本発明に係る作業装置のタイムチャートである。
【図5】従来の技術の基本構成を説明する図及びその作用図である。
【符号の説明】
【0038】
10…作業装置、11…ロボット、15…第1ワーク、18…第2ワーク、19…第2ワーク移動装置、42…レール、43…トレイ、44…前壁部、45…後壁部、K…動作範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ワーク及びこの第1ワークとは別の第2ワークに作業を施すロボットが保護柵で囲われている作業装置において、
前記保護柵に、前記第2ワークを載せ、前記保護柵の外から前記ロボットの動作範囲へ移動させる第2ワーク移動機構が付設されていることを特徴とする作業装置。
【請求項2】
前記第2ワーク移動機構は、前記保護柵に設けられている開口部を貫通して敷設されたレールと、このレールに移動可能に載せられ、前記開口部を塞ぐ大きさ及び形状に設定された前壁部及び後壁部を備えるトレイとからなることを特徴とする請求項1記載の作業装置。
【請求項3】
第1ワーク及びこの第1ワークとは別の第2ワークに作業を施すロボットによる作業方法において、
前記第1ワークにロボットで作業を施す第1作業工程と、この工程に並行してロボットの動作範囲にある、処理済みの第2ワークを保護柵の外へ移動する第2ワーク取り出し工程と、保護柵の外から未処理の第2ワークをロボットの動作範囲へ移動する第2ワーク投入工程と、前記第1作業工程と重ならないときに、前記第2ワークに前記ロボットで作業を施す第2作業工程とからなり、前記第1ワークと前記第2ワークを共通のロボットで連続的に処理することを特徴とするロボットによる作業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−223002(P2007−223002A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48478(P2006−48478)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】