説明

作業車のクローラ走行装置

【課題】本発明では、左右のクローラ走行装置を支持するトラックフレームを簡単な構造で構成し、このトラックフレームとローリング機構のリンクとの枢支部を出来るだけ地面から高い位置にすることで、枢支部に泥土が侵入し難くしてローリング機能を良好に働かせることを課題とする。
【解決手段】クローラ走行装置1の接地転輪3を枢支する前後に長いトラックフレーム5を角パイプ5a,5bを上下に重ねて一体的に溶接し、このトラックフレーム5の上側にローリング機構Aを構成するリンク23の一端を枢支する軸支持ブラケット19を設けて作業車のクローラ走行装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クローラ走行装置を備えたコンバインや運搬車等の作業車において、走行機体に対してクローラ走行装置を接近・離間させることで傾斜した地面を走行しても走行機体を左右水平に保持するローリング機構を備えた作業車のクローラ走行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クローラ走行装置を備えた作業車のローリング機構は、例えば、特開平5−328828号公報に記載されているように、左右のクローラ走行装置を支持するトラックフレームと走行機体を支持する機体フレームをリンクで連結してこのリンクを動作して機体フレームに対してクローラ走行装置を接近・離間させることで機体の左右水平を維持出来るようにしている。
【特許文献1】特開平5−328828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クローラ走行装置は、湿田などの軟らかい地面を走行することが目的で装備されるために、泥土にまみれても支障が無いように考慮されているが、左右のクローラ走行装置を支持するトラックフレームと走行機体を支持する機体フレームをリンクで連結したローリング機構の構造では、リンクの連結部に泥土が付着するとローリング機能が働き難くなり、好ましくない。
【0004】
そこで、本発明では、左右のクローラ走行装置を支持するトラックフレームを簡単な構造で構成し、このトラックフレームとローリング機構のリンクとの枢支部を出来るだけ地面から高い位置にすることで、枢支部に泥土が侵入し難くしてローリング機能を良好に働かせることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、以下のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明では、クローラ走行装置(1)の接地転輪(3)を枢支する前後に長いトラックフレーム(5)を、複数の角パイプ(5a,5b)を上下に重ねて一体的に溶接して形成し、このトラックフレーム(5)の上側にローリング機構(A)を構成するリンク(23)の一端を枢支する軸支持ブラケット(19)を設けたことを特徴とする作業車のクローラ走行装置とした。
【0006】
この構成で、トラックフレーム5を上下に重ねた角パイプ5a,5bで構成することでその上面が高くなり、さらにその上面上にリンク23の軸支持ブラケット19を設けることで、軸支持ブラケット19が地面から高い位置になる。
【0007】
請求項2記載の発明では、軸支持ブラケット(19)をトラックフレーム(5)上に戴置する六角材としこの六角材にリンク(23)と連結する枢支ピン(20)の枢支孔(22)を形成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車のクローラ走行装置とした。
【0008】
この構成で、六角材をトラックフレーム5上に置いて溶接することによって軸支持ブラケット19を構成でき、軸支持ブラケット19がトラックフレーム5に強固に固着される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、地面側になるトラックフレーム5の上面が二段重ねの角パイプ5a,5bの上面で比較的地面から高い位置になり、さらにその上に軸支持ブラケット19を設けることでリンク23との枢支部が地面から高い位置になって、泥土がリンク23との枢支部に侵入することが少なくなってローリング機構Aの動作に支障を与えにくくなる。これにより、軟弱地での走行性能を向上させることができる。
【0010】
請求項2記載の発明によると、軸支持ブラケット19の構成が角パイプ5a,5bからなるトラックフレーム5上に六角材を置いて溶接したものであるから、軸支持ブラケット19の溶接が容易で強固にトラックフレーム5へ固定出来、剛性不足による変形や破損を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
本明細書では、左側及び右側とは作業車が前進する方向に向いたときの方向を言う。
【0012】
図1は、クローラ走行装置1の全体を示す側面図で、前後に長いトラックフレーム5は、二本の角パイプ5a,5bを上下に重ねて一体的に溶接している。(図2参照)
このトラックフレーム5の下側には4個の転輪3を軸支部材で枢着し、上側に1個の転輪3を別の軸支部材で枢着し、後端には後方へ向けて付勢して誘導輪4を装着している。このトラックフレーム5の転輪3と誘導輪4及びミッションケースの出力軸に固着した駆動スプロケット2を囲んで、クローラベルト6を巻き掛けている。
【0013】
機体フレーム7は、前後方向の縦フレーム7aと横方向の横フレーム7bを格子状に組んで構成されコンバインの脱穀装置などの機体が搭載される。この機体フレーム7と前記左右のトラックフレーム5が、前後の揺動アーム8,9と前後の作動アーム10,11からなるリンク23と両作動アーム10,11を連結する連動ロッド12及び後側の作動アーム11に作用する油圧シリンダ13とから成るローリング機構Aによって連結され、機体フレーム7と左右のトラックフレーム5が相対的に上下動自在である。
【0014】
縦フレーム7aの下側に溶接したブラケット16に対してボルト18で固定した軸支持ブラケット17に枢支した軸14,15に作動アーム10,11と揺動アーム8,9を固定している。揺動アーム8,9の下端は、トラックフレーム5の上側に溶接した軸支持ブラケット19に枢支ピン20で枢着している。
【0015】
軸支持ブラケット19は、トラックフレーム5の角パイプ5aを挟んでようせつしたステー19a,19bとこのステー19a,19bに設ける嵌合孔21に六角軸19cを嵌合してその六角軸19cの側面を角パイプ5aの上面と嵌合孔21に溶接して構成している。
【0016】
なお、軸支持ブラケット17の軸支持ボス17aの長さL2を軸支持ブラケット19の六角軸19cの長さL1より長くして、機体の安定化を図っている。(図2参照)
後側の作動アーム11に連結した油圧シリンダ13を縮めると前後の作動アーム10,11が連動ロッド12で連結しているので共に回動し、軸14,15で連結した前後の揺動アーム8,9が回動して左右のトラックフレーム5を下方へ押し下げるように作用する。
【0017】
ローリング機構Aは、機体フレーム7に設ける傾斜センサ(図示省略)が左右の傾きを検出すると、低い側のトラックフレーム5を押し下げるようにリンク23を作用して機体フレーム7の左右水平を保持するのである。
【0018】
次に、作業車としてのコンバインにおいて、その機体前部に設ける刈取装置の昇降とグレンタンクに収穫した籾を排出するオーガの昇降を制御する油圧駆動回路を図7で説明する。
【0019】
オイルタンク30から吸い上げられたオイルがオイルポンプ31で加圧されてフィルタ45を通って、固定オリフィス32へ送られる流れと比例分配型分流弁38へ送られる流れに分岐される。固定オリフィス32を通る回路は、メインリリーフ弁33で圧力を一定以下に調整され、チェック弁46を介してシャトル弁39と連結される。比例分配型分流弁38ではパワーステアリング回路44への流れと刈取昇降シリンダ43の電磁切換弁40への流れに分岐される。前記シャトル弁39にはパワーステアリング回路44と刈取昇降シリンダ43の電磁切換弁40への回路が接続され、どちらかの圧が高くなるとチェック弁46を介してメインリリーフ弁33に圧が加わり、リリーフ圧を越えるとオイルがタンク30へ戻される。
【0020】
パワーステアリング回路44は、操向プッシュシリンダ47とパワステリリーフバルブ48と操向クラッチ切換弁49で構成されている。
刈取昇降シリンダ43への流れは、電磁切換弁40を介してオーガ昇降シリンダ37へも供給される。
【0021】
刈取昇降シリンダ43は、電磁切換弁40とチェック弁41と絞り弁42を通って圧油が供給され、オーガ昇降シリンダ37は、電磁切換弁34とチェック弁35と絞り弁36を通って圧油が供給される。また、チェック弁35,41は、固定絞り弁50,51を設けたパイロット路52,53を電磁切換弁34,40のパイロットスプール29の油室に繋ぎ、シリンダ37,43の下げ時の急激の圧力変動を抑え、パイロットスプール29の動きを滑らかにする。(図8参照)
この回路構成では、比例分配型分流弁38で分岐したパワーステアリング回路44か刈取昇降とオーガ昇降の回路のどちらか或いは全ての回路に故障などでブロックが生じたら、その圧がシャトル弁39とチェック弁46を介してメインリリーフ弁33に加わって過大な圧を逃がし、ブロックが生じていない回路が動作できることになる。
【0022】
図9は、図8の固定絞り弁50,51に代えて、電磁切換弁34,40のソレノイドスプール28に直接絞り孔55を設けた実施例で、電磁切換弁34の中立時に僅かなオイルをタンク30側へ戻すことで、シリンダ37,43を下げから中立にすることを滑らかに行えるようにし、大流量の切り替えを容易にする。
【0023】
図10の実施例は、電磁切換弁34,40のパイロットスプールの油室27にリリーフバルブ54を繋ぎ、シリンダ37,43の下げ時に油室に加わる過大な圧をオイルタンク30へ逃がして、シリンダ37,43の下げ時の急激の圧力変動を抑え、パイロットスプールの動きを滑らかにする。
【0024】
図11は、オーガ昇降回路の代わりに刈取スライド回路を連結した油圧回路で、刈取昇降回路の電磁切換弁40を組み込んだ油圧ブロック56に刈取スライド回路の電磁切換弁61を組み込んだ油圧ブロック57を油路を連結して一体的に組み付け、電磁切換弁40が中立時に圧油を電磁切換弁61へ送り、刈取スライドシリンダ62を作動させる。
【0025】
図12は、図11の刈取スライド回路の油圧ブロック57に代えて旋回力制御回路を組み込んだ油圧ブロック58で、固定オリフィス32の前で比例分配型分流弁38に向かう流れを分岐してリリーフ弁63へ流し、このリリーフ弁63から絞り64とフィルタ68と電磁可変リリーフ弁65及び絞り66を介して旋回力制御シリンダ67へ流すようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施例のクローラ走行装置の側面図
【図2】本実施例のクローラ走行装置の部分拡大側面図
【図3】本実施例のクローラ走行装置の部分拡大平断面図
【図4】本実施例のクローラ走行装置の部分拡大側面図
【図5】本実施例のクローラ走行装置の部分拡大平面図
【図6】本実施例のクローラ走行装置の部分拡大側面図
【図7】コンバインの部分油圧回路図
【図8】コンバインの油圧マニホールドの平断面図
【図9】コンバインの油圧マニホールドの平断面図
【図10】コンバインの油圧マニホールドの平断面図
【図11】別実施例のコンバイン部分油圧回路図
【図12】別実施例のコンバイン部分油圧回路図
【符号の説明】
【0027】
A ローリング機構
1 クローラ走行装置
3 接地転輪
5 トラックフレーム
5a,5b 角パイプ
23 リンク
19軸支持ブラケット
20 枢支ピン
22 枢支孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラ走行装置(1)の接地転輪(3)を枢支する前後に長いトラックフレーム(5)を、複数の角パイプ(5a,5b)を上下に重ねて一体的に溶接して形成し、このトラックフレーム(5)の上側にローリング機構(A)を構成するリンク(23)の一端を枢支する軸支持ブラケット(19)を設けたことを特徴とする作業車のクローラ走行装置。
【請求項2】
軸支持ブラケット(19)をトラックフレーム(5)上に戴置する六角材としこの六角材にリンク(23)と連結する枢支ピン(20)の枢支孔(22)を形成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車のクローラ走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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