作業車の負荷制御構造
【課題】 作業条件によって異なるエンジン負荷に対して好適な負荷制御を行えるようにする。
【解決手段】 制御手段31が、設定回転数検出手段52の検出と回転数検出手段47の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量を算出し、その算出した低下量と、予め備えたエンジン回転数と無段変速装置10の変速操作位置との相関関係データとに基づいて、無段変速装置10の限界操作位置を設定し、その設定した限界操作位置と変速位置検出手段30の検出とに基づいて、無段変速装置10の変速操作位置が限界操作位置に位置するように、操作手段26の作動を制御するように構成し、制御手段31に、相関関係データの変更を指令する指令手段45,52を設けてある。
【解決手段】 制御手段31が、設定回転数検出手段52の検出と回転数検出手段47の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量を算出し、その算出した低下量と、予め備えたエンジン回転数と無段変速装置10の変速操作位置との相関関係データとに基づいて、無段変速装置10の限界操作位置を設定し、その設定した限界操作位置と変速位置検出手段30の検出とに基づいて、無段変速装置10の変速操作位置が限界操作位置に位置するように、操作手段26の作動を制御するように構成し、制御手段31に、相関関係データの変更を指令する指令手段45,52を設けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの設定回転数を検出する設定回転数検出手段と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、無段変速装置の変速操作位置を検出する変速位置検出手段と、前記無段変速装置を変速操作する操作手段と、この操作手段の作動を制御する制御手段とを備えた作業車の負荷制御構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車の負荷制御構造では、エンジン回転数の設定回転数からの低下に基づいて、制御手段が、無段変速装置を変速操作する操作手段の作動を制御して、その低下量に応じた変速位置まで無段変速装置を変速操作するように構成されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−22006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成では、単に、エンジン回転数の設定回転数からの低下量に応じた変速位置まで無段変速装置を変速操作する位置制御を行うだけであることから、作業条件によって異なるエンジン負荷に対して好適な負荷制御を行うことが難しくなっていた。
【0004】
本発明の目的は、作業条件によって異なるエンジン負荷に対して好適な負荷制御を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうちの請求項1に記載の発明では、エンジンの設定回転数を検出する設定回転数検出手段と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、無段変速装置の変速操作位置を検出する変速位置検出手段と、前記無段変速装置を変速操作する操作手段と、この操作手段の作動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出と前記回転数検出手段の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量を算出し、その算出した低下量と、予め備えたエンジン回転数と前記無段変速装置の変速操作位置との相関関係データとに基づいて、前記無段変速装置の限界操作位置を設定し、その設定した限界操作位置と前記変速位置検出手段の検出とに基づいて、前記無段変速装置の変速操作位置が前記限界操作位置に位置するように、前記操作手段の作動を制御するように構成し、前記制御手段に、前記相関関係データの変更を指令する指令手段を設けてある作業車の負荷制御構造。
【0006】
この構成によると、例えば、連結装備する作業装置や作業地などを変更することで、作業時に発生するエンジン負荷が大きくなる場合には、負荷制御の際に使用する相関関係データを重負荷に対応したものに変更すれば、その重負荷用の相関関係データに基づいて、制御手段が負荷制御を行うことから、重負荷に対する好適な負荷制御を行うことができる。
【0007】
逆に、連結装備する作業装置や作業地などを変更することで、作業時に発生するエンジン負荷が小さくなる場合には、負荷制御の際に使用する相関関係データを軽負荷に対応したものに変更すれば、その軽負荷用の相関関係データに基づいて、制御手段が負荷制御を行うことから、軽負荷に対する好適な負荷制御を行うことができる。
【0008】
従って、作業条件に応じた適切な負荷制御を行うことができ、結果、作業性の向上を図ることができる。
【0009】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、前記指令手段を前記設定回転数検出手段で構成し、前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出に基づいて、前記エンジンの設定回転数が小さいほど、エンジン回転数の変化量に対する前記無段変速装置の変速操作量が大きくなるように、前記相関関係データを変更するように構成してある。
【0010】
この構成によると、エンジンの設定回転数を変更すると、それに応じて選択される変更後の設定回転数を考慮した相関関係データに基づいて、制御手段が負荷制御を行うことから、エンジンの設定回転数を考慮した適切な負荷制御を行うことができる。
【0011】
従って、エンジンの設定回転数に応じた適切な負荷制御を、運転者が相関関係データを変更する手間を要することなく行える。
【0012】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、エンジンの設定回転数を検出する設定回転数検出手段と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、無段変速装置の変速操作位置を検出する変速位置検出手段と、前記無段変速装置を変速操作する操作手段と、この操作手段の作動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出と前記回転数検出手段の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量を算出し、その算出した低下量と、予め備えたエンジン回転数と前記無段変速装置の変速操作位置との相関関係データとに基づいて、前記無段変速装置の限界操作位置を設定し、その設定した限界操作位置と前記変速位置検出手段の検出とに基づいて、前記無段変速装置の変速操作位置が前記限界操作位置に位置するように前記操作手段の作動を制御するように構成し、前記無段変速装置の変速操作速度を設定する操作速度設定手段を備え、前記制御手段が、前記操作速度設定手段の設定に基づいて、その設定速度で前記無段変速装置が変速操作されるように、前記操作手段の作動を制御するように構成してある。
【0013】
この構成によると、例えば、連結装備する作業装置や作業地などを変更することで、作業時に発生するエンジン負荷が大きくなるほど、操作速度設定手段によって、負荷制御時での無段変速装置の変速操作速度が速くなるように設定すれば、重負荷作業時に比較的急激に上昇するエンジン負荷に対して、負荷制御時に制御手段が変速操作する無段変速装置の操作速度が速くなることから、エンジン負荷の上昇に対する制御の遅れに起因したエンジンストールを防止することができる。
【0014】
従って、作業条件に応じた適切な負荷制御を行うことができ、結果、作業性の向上を図ることができる。
【0015】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項3に記載の発明において、前記操作速度設定手段が、前記回転数検出手段の検出に基づいて、エンジン回転数の変化速度を算出し、その算出した変化速度が大きいほど前記無段変速装置の変速操作速度を速い速度設定するように構成してある。
【0016】
この構成によると、エンジン回転数の変化速度を考慮したより適切な負荷制御を行えることから、エンジン回転数の変化速度の変動にかかわらず、エンジン回転数が低下する際のドロップ感やエンジン回転数が復帰する際の復帰感を一定にすることできる。
【0017】
又、エンジン回転数の低下に対する無段変速装置の変速操作を応答性良く行うことができ、無段変速装置の操作遅れに起因したエンジンストールを防止することができる。
【0018】
従って、負荷制御時の操作フィーリングの向上を図れるとともに、エンジン回転数の変化速度を考慮した適切な負荷制御を、運転者が無段変速装置の変速操作速度を設定する手間を要することなく行える。
【0019】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項3又は4に記載の発明において、有段変速装置と、この有段変速装置の変速段を検出する変速段検出手段とを備え、前記操作速度設定手段が、前記変速段検出手段の検出に基づいて、前記変速段が低速側であるほど、前記無段変速装置を前記限界操作位置に向けて操作する際の操作速度が速くなるように、前記操作手段の作動を制御するように構成してある。
【0020】
この構成によると、作業負荷の大きい作業を行うほど低速側に変速操作される有段変速装置の変速段に基づいて、その変速段が低速側であるほど、操作速度設定手段が、エンジン回転数の変化速度に対する無段変速装置の変速操作速度を速くすることから、作業負荷の大きい作業での急激なエンジン回転数の低下に対しても、無段変速装置の変速操作を応答性良く速やかに行えるようになり、過負荷によるエンジンストールをより確実に防止することができる。
【0021】
従って、作業負荷の大きさを考慮した好適な負荷制御を、作業負荷の大きさに応じて運転者が無段変速装置の変速操作速度を設定する手間を要することなく行える。
【0022】
本発明のうちの請求項6に記載の発明では、上記請求項1〜5のいずれか一つに記載の発明において、前記制御手段が設定する前記無段変速装置の限界操作位置が中立位置に設定されないように構成してある。
【0023】
この構成によると、負荷制御において無段変速装置が中立位置まで戻されることを防止することができる。
【0024】
従って、登坂時の負荷制御で、無段変速装置が中立位置まで戻されて車体が不測に逆送する、といった不都合の発生を未然に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1には、作業車の一例であるトラクタの全体側面が示されている。このトラクタは、エンジン1を防振支持する前部フレーム2の左右に前輪3が配備され、エンジン1に連結されるフレーム兼用のミッションケース4の左右に後輪5が配備され、ミッションケース4の上方に、ステアリングホイール6や運転座席7などを配備して搭乗運転部8が形成されている。
【0026】
図2〜4に示すように、エンジン1からの動力は、乾式の主クラッチ9などを介して、主変速装置として機能する静油圧式無段変速装置(無段変速装置の一例)10に伝達される。静油圧式無段変速装置10から取り出された走行用動力は、高中低の3段に変速切り換え可能に構成された副変速装置として機能するギヤ式変速装置(有段変速装置の一例)11や、前輪用差動装置12又は後輪用差動装置13などを介して左右の前輪3及び左右の後輪5に伝達される。静油圧式無段変速装置10から取り出された作業用動力は、油圧式の作業クラッチ14などを介して動力取出軸15に伝達される。
【0027】
ミッションケース4は、主クラッチ9などを内装する第1ケーシング部4A、静油圧式無段変速装置10などを内装する第2ケーシング部4B、作業クラッチ14などを内装する第3ケーシング部4C、及び、ギヤ式変速装置11などを内装する第4ケーシング部4D、などを連結して構成されている。
【0028】
図2〜5に示すように、静油圧式無段変速装置10は、第2ケーシング部4Bに内装したアキシャルプランジャー型の可変容量ポンプ16やアキシャルプランジャー型の可変容量モータ17などを備え、可変容量ポンプ16からの非変速動力を作業用動力として出力し、可変容量モータ17からの変速動力を走行用動力として出力するように構成されている。
【0029】
可変容量ポンプ16と可変容量モータ17は、第1油路18及び第2油路19を介して接続され、その接続で形成された閉回路20に、エンジン動力で駆動されるチャージポンプ21からのチャージ油が、チャージ油路22やチェックバルブ23などを介して供給される。
【0030】
図1及び図4〜6に示すように、このトラクタには、搭乗運転部8に備えた中立復帰型の変速ペダル24の操作などに基づいて、可変容量ポンプ16の斜板(以下、ポンプ斜板と称する)16Aを操作するサーボコントロール機構25が装備されている。
【0031】
図4〜6に示すように、サーボコントロール機構25は、ポンプ斜板16Aを無段階に操作する油圧式のポンプ用シリンダ(操作手段の一例)26、ポンプ用シリンダ26に対する作動油の流動を制御するサーボバルブ27、サーボバルブ27などに対する油圧を設定圧に維持するレギュレータバルブ28、変速ペダル24の操作位置を検出するポテンショメータからなるペダルセンサ29、ポンプ用シリンダ26の操作量からポンプ斜板16Aの操作位置(斜板角)を検出するポテンショメータからなる斜板センサ(変速位置検出手段の一例)30、及び、ペダルセンサ29の検出や斜板センサ30の検出などが入力されるマイクロコンピュータを備えた制御装置(制御手段の一例)31、などを備えて構成されている。
【0032】
ポンプ用シリンダ26は、ポンプ斜板16Aを中立位置に復帰付勢する前進減速バネ32及び後進減速バネ33とともに第2ケーシング部4Bに内装されている。
【0033】
そして、その前進変速用の油室34に作動油が供給されることで、前進減速バネ32の付勢に抗してポンプ斜板16Aを前進増速方向に操作し、前進変速用の油室34から作動油が排出されることで、前進減速バネ32の付勢によるポンプ斜板16Aの前進減速方向への操作を許容する。
【0034】
又、その後進変速用の油室35に作動油が供給されることで、後進減速バネ33の付勢に抗してポンプ斜板16Aを後進増速方向に操作し、後進変速用の油室35から作動油が排出されることで、後進減速バネ33の付勢によるポンプ斜板16Aの後進減速方向への操作を許容する。
【0035】
サーボバルブ27は、ポンプ用シリンダ26の前進変速用の油室34に対する作動油の流動を制御する電磁式の前進用比例バルブ36や、ポンプ用シリンダ26の後進変速用の油室35に対する作動油の流動を制御する電磁式の後進用比例バルブ37などを備えて構成されている。
【0036】
レギュレータバルブ28は、パワーステアリング用の供給ポンプ38から圧送される作動油を、作業クラッチ14と油圧式のパワーステアリング装置39とに、それぞれの作動に適した設定圧で分配するように構成され、作業クラッチ14に対する供給油路40が接続されるレギュレータバルブ28の圧力ポート28Aに、サーボバルブ27に対する供給油路41が接続されている。
【0037】
図6及び図7に示すように、制御装置31には、変速ペダル24の操作位置とポンプ斜板16Aの操作位置との相関関係を示す相関関係データとしてのマップデータと、そのマップデータやペダルセンサ29の検出及び斜板センサ30の検出などに基づいて前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御することでポンプ斜板16Aを操作する制御プログラムとを記憶装備したポンプ斜板制御手段31Aが備えられている。
【0038】
ポンプ斜板制御手段31Aのマップデータは、変速ペダル24の中立位置から前進増速方向への操作量が大きくなるほど、ポンプ斜板16Aの中立位置から前進増速方向への操作量が大きくなり、変速ペダル24の中立位置から後進増速方向への操作量が大きくなるほど、ポンプ斜板16Aの中立位置から後進増速方向への操作量が大きくなるように、変速ペダル24の操作位置とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させたものである(図7参照)。
【0039】
ポンプ斜板制御手段31Aの制御プログラムは、記憶装備したマップデータとペダルセンサ29の検出とに基づいて、ペダルセンサ29が検出した変速ペダル24の操作位置に対応するポンプ斜板16Aの操作位置をポンプ斜板16Aの目標操作位置に設定し、その設定した目標操作位置と斜板センサ30の検出とに基づいて、ポンプ斜板16Aの目標操作位置と実際の操作位置とが一致するように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御するように構成されている。
【0040】
この制御作動によって、変速ペダル24の操作位置に応じた速度で車体を前進又は後進させることができる。
【0041】
そして、サーボコントロール機構25は、ペダルセンサ29の検出及び斜板センサ30の検出に基づいて、ポンプ斜板制御手段31Aが、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御することで、ポンプ用シリンダ26を作動させて静油圧式無段変速装置10のポンプ斜板16Aを操作する電子式で、かつ、レギュレータバルブ28の圧力ポート28Aを経由した前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の出力圧力でポンプ用シリンダ26をダイレクトに駆動する直動型に構成されている。
【0042】
これによって、静油圧式無段変速装置10の閉回路20での圧力変動やエンジン回転数の変動で圧力が変動するチャージ油路22からの出力圧力でポンプ用シリンダ26を駆動する場合に比較して、安定したサーボパイロット圧を得ることができ、ポンプ用シリンダ26の作動制御を精度良く行えるようになる。
【0043】
その結果、サーボコントロール機構25を安価な直動型に構成しながら、ペダルセンサ29の検出及び斜板センサ30の検出に基づいて、変速ペダル24の操作位置に応じた速度で車体を前進又は後進させる車速制御を精度良く行わせることができる。
【0044】
図6及び図8に示すように、制御装置31には、ポンプ斜板制御手段31Aで設定されたポンプ斜板16Aの目標操作位置と斜板センサ30の検出とに基づいて、ポンプ斜板16Aの目標操作位置と実際の操作位置との偏差を算出する演算プログラム、ポンプ斜板16Aの目標操作位置と実際の操作位置との偏差とポンプ斜板16Aの操作速度との相関関係を示す相関関係データとしての複数のマップデータ、及び、それらのマップデータと演算プログラムの算出結果とに基づいてポンプ斜板16Aの目標操作速度を設定する制御プログラム、を記憶装備した第1操作速度設定手段31Bが備えられている。
【0045】
第1操作速度設定手段31Bの各マップデータは、斜板センサ30で検出されるポンプ斜板16Aの実際の操作位置と、ポンプ斜板制御手段31Aで設定されるポンプ斜板16Aの目標操作位置との偏差が大きい場合に、ポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるように、又、後進時でのポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が、前進時でのポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度よりも遅くなるように、ポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたものである(図8参照)。
【0046】
第1操作速度設定手段31Bの制御プログラムは、記憶装備したマップデータと演算プログラムの算出結果とに基づいて、算出したポンプ斜板16Aの偏差に対応するポンプ斜板16Aの操作速度をポンプ斜板16Aの目標操作速度に設定し、その設定した目標操作速度をポンプ斜板制御手段31Aに出力するように構成されている。
【0047】
ポンプ斜板制御手段31Aの制御プログラムは、車速制御において、第1操作速度設定手段31Bで設定された目標操作速度でポンプ斜板16Aが操作されるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御するように構成されている。
【0048】
この制御作動によって、変速ペダル24の操作に対するポンプ斜板16Aの応答性を高めながらハンチングの発生を抑制することができ、結果、変速ペダル24の操作位置に応じた速度に、車速を迅速かつ正確に到達させることができる。
【0049】
又、後進時でのポンプ斜板16Aの操作速度が、前進時でのポンプ斜板16Aの操作速度よりも遅くなって、後進時での静油圧式無段変速装置10の変速操作が、前進時での静油圧式無段変速装置10の変速操作に比較して緩やかに行われることから、前進時に比較して速度感覚をつかみ難い後進時での静油圧式無段変速装置10の変速操作が行い易くなる。
【0050】
図6に示すように、制御装置31には、第1操作速度設定手段31Bが使用するマップデータを変更する制御プログラムを備えたデータ変更手段31Cが備えられている。
【0051】
データ変更手段31Cは、以下に示すように、種々の状況に応じて第1操作速度設定手段31Bが使用するマップデータを適切に変更するように構成されている。
【0052】
データ変更手段31Cは、搭乗運転部8に備えたポテンショメータからなる調節ダイヤル42の操作位置に基づいて、調節ダイヤル42の操作位置が基準位置からクイック側に大きく変更されるほど、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、使用するマップデータを、ポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0053】
又、調節ダイヤル42の操作位置が基準位置からスロー側に大きく変更されるほど、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、ポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0054】
つまり、調節ダイヤル42を操作することで、変速ペダル24で静油圧式無段変速装置10を変速操作する際の操作フィーリングを、運転者の好みに応じたものに変更することができ、操作フィーリングや変速操作性の向上を図ることができる。
【0055】
データ変更手段31Cは、レギュレータバルブ28に供給される作動油の温度を検出する油温センサ43の検出に基づいて、作動油の温度が低いほど、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、油温の低下に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0056】
つまり、作動油の温度が低下するほど、作動油の粘性が高くなって、油圧操作されるポンプ斜板16Aの応答性が低下することを考慮して、作動油の温度が低いほど、ポンプ斜板16Aの目標操作速度が遅い速度に設定されるようにするのである。
【0057】
その結果、作動油の温度を考慮しない場合には、作動油の温度が低下するほど招き易くなる、ポンプ斜板16Aの応答性の低下に起因したハンチングの発生を抑制することができる。
【0058】
データ変更手段31Cは、搭乗運転部8に備えた副変速レバー44の操作位置からギヤ式変速装置11の変速段を検出するポテンショメータからなる副変速センサ(変速段検出手段の一例)45の検出に基づいて、ギヤ式変速装置11の変速段が高速側であるほど、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、使用するマップデータを、ギヤ式変速装置11の変速段の上昇に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0059】
つまり、ギヤ式変速装置11の変速段が高速側に設定されるほど、ポンプ斜板16Aの目標操作速度が、ポンプ斜板16Aの操作に対する反応が遅くなることを考慮した速い速度に設定されるようになっている。
【0060】
これによって、ギヤ式変速装置11の変速段にかかわらず、変速ペダル24で静油圧式無段変速装置10を変速操作する際の操作フィーリングを同じにすることができる。
【0061】
データ変更手段31Cは、変速ペダル24の操作速度を検出する操作速度検出手段46の検出に基づいて、変速ペダル24の操作速度が遅くなるほど、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、変速ペダル24の操作速度の低下に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0062】
これによって、変速ペダル24が微速操作される場合であっても、ポンプ斜板16Aは、変速ペダル24の操作に遅れて変速ペダル24を追従するようになる。
【0063】
その結果、変速ペダル24の操作にポンプ斜板16Aの操作が追いついて、階段状に有段変速操作される虞を回避することができるようになり、もって、変速ペダル24の操作速度にかかわらず、変速ペダル24による静油圧式無段変速装置10の変速操作をスムーズに行わせることができる。
【0064】
尚、操作速度検出手段46は、ペダルセンサ29と、そのペダルセンサ29の検出に基づいて変速ペダル24の操作速度を算出するようにデータ変更手段31Cに備えた演算プログラムとから構成されている。
【0065】
データ変更手段31Cは、斜板センサ30の検出に基づいて、ポンプ斜板16Aの操作位置が中立位置又は中立位置の近傍であることが検出された場合には、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、ポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が低速側に制限されるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0066】
これによって、ポンプ斜板16Aが中立位置又は中立位置の近傍に位置する場合に、変速ペダル24の急激な踏み込み操作が行われたとしても、その踏み込み操作に伴ってポンプ斜板16Aが急速に増速操作されることはなく、ポンプ斜板16Aが緩やかに増速操作されることから、急発進や微速からの急加速が防止されたスムーズな発進や加速を行える。
【0067】
データ変更手段31Cは、エンジン回転数を検出する回転センサ(回転数検出手段の一例)47の検出と、ポンプ斜板制御手段31Aで設定されたポンプ斜板16Aの目標操作位置とに基づいて、エンジン回転数の低下時にポンプ斜板16Aの目標操作位置が低速側に設定された場合には、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、使用するマップデータを、エンジン回転数の低下に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0068】
又、エンジン回転数の上昇時にポンプ斜板16Aの目標操作位置が高速側に設定されたことを検知した場合には、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、エンジン回転数の上昇に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0069】
これによって、走行負荷などの増大に起因したエンジン回転数の低下時に変速ペダル24を減速側に操作すれば、その操作に基づくポンプ斜板16Aの減速方向への操作が速やかに行われて、エンジン負荷の軽減が促進されるようになる。
【0070】
その結果、変速ペダル24の減速操作を行ったにもかかわらず、その操作に連動した静油圧式無段変速装置10の減速操作によるエンジン負荷の軽減が遅れてエンジン1が停止する、といった不都合が生じる虞を抑制することができる。
【0071】
又、走行負荷などの減少によるエンジン回転数の上昇時に変速ペダル24を増速側に操作しても、その操作に基づくポンプ斜板16Aの増速方向への操作が緩やかに行われることから、エンジン回転数の上昇とともにポンプ斜板16Aの増速操作が速やかに行われることに起因した急激な車速の増速を回避することができる。
【0072】
つまり、エンジン回転数の変動にかかわらず、変速ペダル24による静油圧式無段変速装置10の変速操作を良好に行える。
【0073】
データ変更手段31Cは、搭乗運転部8に備えたブレーキペダル48の操作位置から制動装置(図示せず)の作動を検出するポテンショメータからなるブレーキセンサ49の検出に基づいて、制動装置が制動作動している場合には、ポンプ斜板16Aの減速方向への操作が速やかに行われるように、使用するマップデータを、制動装置の制動作動による車速の低下を考慮してポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0074】
これによって、変速ペダル24の踏み込み操作を解除してブレーキペダル48を踏み込み操作した制動作動時における静油圧式無段変速装置10と制動装置との干渉を抑制することができ、結果、静油圧式無段変速装置10及び制動装置の耐久性の向上を図ることができる。
【0075】
又、データ変更手段31Cとしては以下のように構成されたものであってもよい。
【0076】
データ変更手段31Cが、ギヤ式変速装置11の出力回転数から車速を検出する車速センサ50の検出に基づいて、車速が遅い場合には、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、車速の低下に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0077】
このように構成すると、低速走行時には、変速ペダル24の操作に対するポンプ斜板16Aの応答性が低下することになり、もって、低速走行時に要求される車速のインチング操作が行い易くなる。
【0078】
データ変更手段31Cが、斜板センサ30の検出と、ポンプ斜板制御手段31Aで設定されたポンプ斜板16Aの目標操作位置とに基づいて、ポンプ斜板16Aの目標操作位置が実際の操作位置よりも増速側に設定された場合には、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、又、ポンプ斜板16Aの目標操作位置が実際の操作位置よりも減速側に設定された場合には、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、更に、ポンプ斜板16Aの目標操作位置と実際の操作位置とが中立位置を挟む場合には、ポンプ斜板16Aの操作がより一層速やかに行われるように、使用するマップデータを、ポンプ斜板16Aの目標操作位置と実際の操作位置との位置関係に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が異なるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0079】
このように構成すると、変速ペダル24による静油圧式無段変速装置10の増速操作と減速操作とで操作フィーリングを換えることができる。
【0080】
又、静油圧式無段変速装置10の増速操作によるエンジン負荷の増大を抑制することができるとともに、静油圧式無段変速装置10の減速操作によるエンジン負荷の軽減を促進させることができ、結果、高負荷時での変速ペダル24による静油圧式無段変速装置10の変速操作に起因してエンジン1が停止する虞を軽減することができる。
【0081】
更に、変速ペダル24の操作に対するポンプ斜板16Aの操作遅れが抑制された違和感のない変速ペダル24による静油圧式無段変速装置10の前後進切り換え操作を行える。
【0082】
データ変更手段31Cが、斜板センサ30の検出と、ポンプ斜板制御手段31Aで設定されたポンプ斜板16Aの目標操作位置とに基づいて、ポンプ斜板16Aが中立位置から増速操作される走行開始時には、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、起動時に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0083】
又、ポンプ斜板16Aが増速位置から中立位置に減速操作される走行停止時には、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、使用するマップデータを、停止時に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0084】
このように構成すると、変速ペダル24の操作による走行開始時と走行停止時とで操作フィーリングを換えることができるとともに、走行開始時に急発進する虞を抑制することができる。
【0085】
第1操作速度設定手段31Bのマップデータとして、前進時の変速操作速度を設定するための前進用のマップデータと、後進時の変速操作速度を設定するための後進用のマップデータとを備え、データ変更手段31Cが、ペダルセンサ29の検出に基づいて、使用するマップデータを変更する。
【0086】
ところで、前進減速バネ32又は後進減速バネ33の付勢でポンプ斜板16Aの中立位置に向けた減速操作を行うように構成した場合には、トレーラ作業時の慣性などで、変速ペダル24の減速操作にかかわらず、ポンプ斜板16Aの中立位置に向けた減速操作が行われ難くなることがある。
【0087】
そこで、ポンプ斜板制御手段31Aは、ペダルセンサ29の検出と斜板センサ30の検出とに基づいて、変速ペダル24の減速操作にかかわらず、前進減速バネ32又は後進減速バネ33の付勢によるポンプ斜板16Aの減速操作が行われていないことを検知した場合には、ポンプ斜板16Aを現在の操作位置に増速操作する際に使用した側とは反対側の前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御して、ポンプ斜板16Aが中立位置に向けて減速操作される方向にポンプ用シリンダ26を強制作動させるように構成されている。
【0088】
これによって、トレーラ作業時の慣性などで、変速ペダル24の減速操作にかかわらずポンプ斜板16Aが減速操作されない場合であっても、ポンプ斜板制御手段31Aによる前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動制御で、ポンプ用シリンダ26を強制作動させることで、ポンプ斜板16Aを減速操作させることができる。
【0089】
図9には、静油圧式無段変速装置10を搭載した作業車のエンジンストール性能が示されている。このエンジンストール性能は、エンジン1の出力トルク、静油圧式無段変速装置10の圧力、ポンプ斜板16Aの操作位置(斜板角)によって決まるものである。
【0090】
図9に示すラインLは、走行負荷によって静油圧式無段変速装置10の高圧リリーフが噴くようになる静油圧式無段変速装置10の最大負荷時にエンジン回転数とポンプ斜板16Aの変速操作位置とがバランスするエンジンストール性能ラインである。
【0091】
尚、図9において、エンジン回転数は設定回転数を100%とするものであり、ポンプ斜板16Aの操作位置は最大増速位置(最大斜板角)を100%とするものである。
【0092】
図9に基づいて、静油圧式無段変速装置10を搭載した作業車のエンジンストール性能について説明すると、ポンプ斜板16Aをある操作位置に一定に保持した状態において、エンジン1に走行負荷以外の例えば作業装置を駆動するための作業負荷などがかかると、点aで示すように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とが、エンジンストール性能ラインLよりも内側の領域Zaに入ることがある。
【0093】
この場合、走行負荷以外の作業負荷などが安定している状態では走行負荷が増大してもエンジン回転数は低下しないが、走行負荷以外の作業負荷などが増大するとエンジン回転数が低下してエンジン1が停止(ストール)する。
【0094】
ポンプ斜板16Aをある操作位置に一定に保持した状態において、点bで示すように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とが、エンジンストール性能ラインLよりも外側の領域Zb,Zcのうちの領域Zbにある場合には、走行負荷が増大するとエンジン回転数が低下してエンジン1が停止する。
【0095】
ポンプ斜板16Aをある操作位置に一定に保持した状態において、点cで示すように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とが領域Zcにある場合には、走行負荷が増大すると、エンジンストール性能ラインLに到達するまでエンジン回転数が低下し、エンジンストール性能ラインLに到達するとともにエンジン回転数が安定する。
【0096】
尚、エンジンストール性能ラインLは、エンジン1の出力が低いほど、図9でのエンジン回転数に対するポンプ斜板16Aの操作位置が小さくなる。
【0097】
つまり、搭載するエンジン1の出力が低いほど、走行負荷の大きい作業走行や登坂走行において、変速ペダル24を大きく踏み込んだ増速操作を行った際に、過負荷によるエンジンストールを招き易くなる。
【0098】
そこで、図6に示すように、このトラクタにおいては、制御装置31に、エンジン負荷に基づいてポンプ斜板16Aの操作位置を変更する自動ポンプ斜板制御手段31Dを備えてある。
【0099】
図6及び図10に示すように、自動ポンプ斜板制御手段31Dは、搭乗運転部8に備えたアクセルレバー51の操作位置からエンジン1の設定回転数を検出するポテンショメータからなる設定回転センサ(設定回転数検出手段の一例)52の検出と、回転センサ47の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量(以下、エンジンドロップ量と称する)を算出する演算プログラム、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置との相関関係を示す複数のマップデータ(相関関係データの一例)、及び、その演算プログラムの算出結果とマップデータとに基づいて前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御することでポンプ斜板16Aを操作する制御プログラム、を記憶装備して構成されている。
【0100】
自動ポンプ斜板制御手段31Dの各マップデータは、エンジンストール性能ラインLに基づいて決定されるものであって、ここでは、予め設定したエンジン回転領域hまでエンジン回転数が低下した場合に、エンジン回転数が低下するほど、ポンプ斜板16Aの限界操作位置が中立位置に近づくように、又、ポンプ斜板16Aの限界操作位置が中立位置に設定されないように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させてある(図10参照)。
【0101】
詳述すると、図10に示すように、予め設定したエンジン回転領域のうち、エンジンドロップ量の小さい第1領域h1では、エンジン回転数の変化量に対してポンプ斜板16Aの変化量が大きくなるように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させてある。
【0102】
第1領域h1よりもエンジンドロップ量の大きい第2領域h2では、エンジン回転数の変化量に対してポンプ斜板16Aの変化量が小さくなるように、又、走行負荷ではエンジン回転数が低下しない安定点pを有するように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させてある。
【0103】
第2領域h2よりもエンジンドロップ量の大きい第3領域h3では、エンジン回転数の変化量に対してポンプ斜板16Aの変化量が大きくなるように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させてある。
【0104】
自動ポンプ斜板制御手段31Dの制御プログラムは、演算プログラムの算出結果とマップデータとに基づいて、演算プログラムが算出したエンジンドロップ量に対応するポンプ斜板16Aの操作位置をポンプ斜板16Aの限界操作位置に設定し、その設定した限界操作位置と斜板センサ30の検出とに基づいて、ポンプ斜板16Aの限界操作位置と実際の操作位置とが一致するように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御するように構成されている。
【0105】
つまり、自動ポンプ斜板制御手段31Dを備えたことで、エンジン負荷の上昇によってエンジン回転数が第1領域h1まで低下した場合には、ポンプ斜板16Aを減速方向に大きく戻してエンジン回転数の低下速度を低下させる、といったエンジンストールの防止を優先しながら駆動トルクを増加させる負荷制御を行える。
【0106】
又、この負荷制御にかかわらずエンジン回転数が第2領域h2まで低下した場合には、ポンプ斜板16Aの減速操作量を低下させて、運転者にエンジン負荷を体感させながら駆動トルクを増加させる、といった駆動トルクの増加を優先しながらエンジンストールを防止する負荷制御を行える。
【0107】
尚、このときのエンジン負荷が走行負荷であると、エンジン回転数は、安定点pへの到達に伴って、その安定点pに対応するエンジン回転数から低下しなくなる。
【0108】
そして、走行負荷以外の、例えば、駆動昇降可能に連結装備した作業装置の昇降操作などによる負荷で、エンジン回転数が第3領域h3まで低下した場合には、ポンプ斜板16Aを減速方向に大きく戻してエンジン回転数の低下速度を低下させる、といったエンジンストールの防止を優先しながら駆動トルクを確保する負荷制御を行える。
【0109】
その結果、このトラクタにフロントローダA(図6参照)を連結装備したローダ作業時や、トラクタに耕耘装置を連結装備した耕耘作業時などにおいて、運転者が作業負荷などを考慮した変速操作を行わなくても、過負荷によるエンジンストールを防止する負荷制御を行うことができ、もって、操作性や作業性の向上を図ることができる。
【0110】
又、この負荷制御では、ポンプ斜板16Aの限界操作位置が中立位置に設定されないことから、この負荷制御によってポンプ斜板16Aが中立位置まで戻されることがなく、もって、登坂時の負荷制御で、ポンプ斜板16Aが中立位置に戻されて車体が不測に逆送する、といった不都合の発生を未然に回避することができる。
【0111】
図6に示すように、制御装置31には、エンジン回転数の変化速度とポンプ斜板16Aの操作速度との相関関係を示す複数のマップデータと、それらのマップデータとエンジン回転数の変化速度を検出する変化速度検出手段53の検出とに基づいてポンプ斜板16Aの目標操作速度を設定する制御プログラムとを記憶装備した第2操作速度設定手段31Eが備えられている。
【0112】
第2操作速度設定手段31Eの各マップデータは、エンジン回転数の変化速度が速いほどポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるように、エンジン回転数の変化速度とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたものである。
【0113】
第2操作速度設定手段31Eの制御プログラムは、記憶装備したマップデータと変化速度検出手段53の検出とに基づいて、変化速度検出手段53が検出したエンジン回転数の変化速度に対応するポンプ斜板16Aの操作速度をポンプ斜板16Aの目標操作速度に設定し、その設定した目標操作速度を自動ポンプ斜板制御手段31Dに出力するように構成されている。
【0114】
自動ポンプ斜板制御手段31Dの制御プログラムは、第2操作速度設定手段31Eで設定された目標操作速度でポンプ斜板16Aが操作されるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御するように構成されている。
【0115】
これによって、エンジン回転数の変化速度を考慮したより良好な負荷制御を行えるようになって、エンジン回転数の変化速度の変動にかかわらず、エンジン回転数が低下する際のドロップ感やエンジン回転数が復帰する際の復帰感を一定にすることができる。
【0116】
又、エンジン回転数の低下に対するポンプ斜板16Aの減速操作を応答性良く行えることから、ポンプ斜板16Aの操作遅れに起因したエンジンストールを防止することができる。
【0117】
尚、変化速度検出手段53は、回転センサ47と、その回転センサ47の検出に基づいてエンジン回転数の変化速度を算出するように第2操作速度設定手段31Eに備えた演算プログラムとから構成されている。
【0118】
データ変更手段31Cには、自動ポンプ斜板制御手段31D及び第2操作速度設定手段31Eが使用するマップデータを変更する制御プログラムが備えられている。
【0119】
データ変更手段31Cは、設定回転センサ52の検出に基づいて、エンジン1の設定回転数が小さいほど、自動ポンプ斜板制御手段31Dが使用するマップデータを、エンジン回転数の変化量に対するポンプ斜板16Aの変速操作量が大きくなるようにエンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させたマップデータに変更する。
【0120】
これによって、エンジン1の設定回転数を変更すると、それに応じて選択される変更後の設定回転数を考慮したマップデータに基づいて、自動ポンプ斜板制御手段31Dが前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御することから、エンジンの設定回転数を考慮した適切な負荷制御を行うことができる。
【0121】
その結果、エンジン1の設定回転数にかかわらず、過負荷によるエンジンストールを防止することができる。
【0122】
そして、ここでは設定回転センサ52が、データ変更手段31Cに相関関係データの変更を指令する指令手段として機能する。
【0123】
又、データ変更手段31Cは、副変速センサ45の検出に基づいて、ギヤ式変速装置11の変速段が低速側であるほど、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、第2操作速度設定手段31Eが使用するマップデータを、ギヤ式変速装置11の変速段の下降に応じてエンジン回転数の変化速度に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにエンジン回転数の変化速度とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0124】
これによって、作業負荷の大きい作業を行うほど低速側に変速操作されるギヤ式変速装置11の変速操作を行うと、操作後の変速段が低速側であるほど、エンジン回転数の変化速度に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるように設定したマップデータに変更され、この変更後のマップデータに基づいて、自動ポンプ斜板制御手段31Dが前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御することから、作業負荷の大きい作業での急激なエンジン回転数の低下に対しても、ポンプ斜板16Aの減速操作を応答性良く速やかに行えるようになる。
【0125】
その結果、過負荷によるエンジンストールをより確実に防止することができる。
【0126】
そして、ここでは副変速センサ45が、データ変更手段31Cに相関関係データの変更を指令する指令手段として機能する。
【0127】
ちなみに、図示は省略するが、負荷制御時でのポンプ斜板16Aの目標操作速度を設定するポテンショメータ又はスイッチなどからなる手動式の操作速度設定器(操作速度設定手段)を備え、この操作速度設定器で設定した目標操作速度でポンプ斜板16Aが操作されるように、自動ポンプ斜板制御手段31Dが前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御するように構成して、連結装備する作業装置の種類によって異なる作業負荷を考慮したポンプ斜板16Aの目標操作速度の設定を行えるようにしてもよい。
【0128】
又、データ変更手段31Cに、自動ポンプ斜板制御手段31D又は第2操作速度設定手段31Eが使用するマップデータの変更を指令するポテンショメータ又はスイッチなどからなるデータ変更指令用の操作具(指令手段)を、搭乗運転部8に配備するようにして、連結装備する作業装置の種類に応じたマップデータの変更を行えるようにしてもよい。
【0129】
このトラクタには、可変容量モータ17の斜板(以下、モータ斜板と称する)17Aを高低2段に切り換え操作する切換機構54が装備されている。
【0130】
切換機構54は、モータ斜板17Aを操作する油圧式のモータ用シリンダ55、このモータ用シリンダ55に対する作動油の流動を制御する切換バルブ56、この切換バルブ56を操作する電磁式の制御バルブ57、この制御バルブ57に静油圧式無段変速装置10の閉回路20からの作動油の供給を可能にする高圧選択バルブ58、ステアリングホイール6の左下方に配備した切換レバー59、この切換レバー59の操作位置を検出するスイッチからなるレバーセンサ60、及び、このレバーセンサ60の検出に基づいてモータ斜板17Aの高低切り換え操作を行う制御プログラムとして制御装置31に備えたモータ斜板制御手段31F、などを備えて構成されている。
【0131】
モータ用シリンダ55は、ミッションケース4の第2ケーシング部4Bに、可変容量モータ17とともに着脱可能に内装されている。
【0132】
モータ斜板制御手段31Fは、レバーセンサ60の検出に基づいて、切換レバー59が低速位置に操作された場合には、モータ斜板17Aを高速位置から低速位置に切り換える高低切換制御を行うとともに、対応する表示灯61を点灯させる。又、切換レバー59が高速位置に操作された場合には、モータ斜板17Aを低速位置から高速位置に切り換える低高切換制御を行うとともに、対応する表示灯62を点灯させる。
【0133】
つまり、切換レバー59を高速位置に設定した登坂走行や作業走行における走行負荷の増大に起因して走行速度が大幅に低下する場合には、切換レバー59を高速位置から低速位置に切り換えることで、左右の前輪3及び左右の後輪5に対する駆動力を増大させることができ、もって、登坂走行や作業走行を継続させることができる。
【0134】
尚、表示灯61,62は、ステアリングホイール6の下方に配備された操作パネル63に配備されている。
【0135】
モータ斜板制御手段31Fの制御作動について詳述すると、モータ斜板制御手段31Fは、その高低切換制御では、先ず、斜板センサ30の検出に基づいて、ポンプ斜板16Aの現在の操作位置を記憶するとともに、ポンプ斜板16Aの減速目標操作位置を算出する。次に、その算出した減速目標操作位置までポンプ斜板16Aが予め設定した操作速度で減速操作されるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御する。そして、その制御作動でポンプ斜板16Aが減速目標操作位置に到達した後に、ポンプ斜板16Aの記憶した操作位置への予め設定した操作速度での復帰増速操作と、予め設定した操作速度でのモータ斜板17Aの高速位置から低速位置への切り換え操作とが同時に行われるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動と制御バルブ57の作動とを制御するように構成されている〔図11の(イ)参照〕。
【0136】
又、低高切換制御では、先ず、斜板センサ30の検出に基づいて、ポンプ斜板16Aの現在の操作位置を記憶するとともに、ポンプ斜板16Aの減速目標操作位置を算出する。次に、その算出した減速目標操作位置へのポンプ斜板16Aの予め設定した操作速度での減速操作と、予め設定した操作速度でのモータ斜板17Aの低速位置から高速位置への切り換え操作とが同時に行われるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動と制御バルブ57の作動とを制御する。その後、記憶した操作位置までポンプ斜板16Aが予め設定した操作速度で復帰増速操作されるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御する〔図11の(ロ)参照〕。
【0137】
つまり、モータ斜板17Aを高速位置から低速位置に切り換える際には、その切り換え操作だけでなく、ポンプ斜板16Aの増速操作が同時に行われることで、モータ斜板17Aの高速位置から低速位置への切り換え操作に伴って発生する可変容量モータ17での容量変化が、ポンプ斜板16Aの増速操作に伴って発生する可変容量ポンプ16での容量変化によって相殺されることになる。
【0138】
又、モータ斜板17Aを低速位置から高速位置に切り換える際には、その切り換え操作だけでなく、ポンプ斜板16Aの減速操作が同時に行われることで、モータ斜板17Aの低速位置から高速位置への切り換え操作に伴って発生する可変容量モータ17での容量変化が、ポンプ斜板16Aの減速操作に伴って発生する可変容量ポンプ16での容量変化によって相殺されることになる。
【0139】
その結果、モータ斜板17Aの高低切り換え操作によって発生する変速ショックを緩和することができる。
【0140】
尚、図示は省略するが、切換バルブ56に換えて高速応答バルブを採用し、モータ斜板制御手段31Fが、モータ斜板17Aの切り換え操作を行う場合には、モータ斜板17Aの操作速度が低下するように高速応答バルブをデューティ制御することで、モータ斜板17Aを切り換える際に発生する可変容量モータ17での容量変化を緩慢にして、可変容量モータ17での容量変化に起因した変速ショックを緩和するようにしてもよい。
【0141】
ちなみに、モータ斜板制御手段31Fを、モータ斜板17Aを高速位置に切り換えた走行状態においては、ブレーキセンサ49の検出に基づいて、制動装置の制動作動に連動して高低切換制御を行うように構成して、制動性の向上を図るようにしてもよい。
【0142】
又、モータ斜板制御手段31Fを、モータ斜板17Aを高速位置に切り換えた走行状態において、ペダルセンサ29の検出と斜板センサ30の検出とに基づいて、変速ペダル24の減速操作にかかわらず、前進減速バネ32又は後進減速バネ33によるポンプ斜板16Aの減速操作が行われていないことを検知した場合に、高低切換制御を行うように構成してもよい。
【0143】
このように構成すれば、トレーラ作業時の慣性などで、変速ペダル24の減速操作にかかわらずポンプ斜板16Aが減速操作されない場合には、高低切換制御による減速操作が行われることになる。
【0144】
更に、モータ斜板制御手段31Fを、モータ斜板17Aを高速位置に切り換えた状態において、操作速度検出手段46の検出に基づいて、変速ペダル24の操作速度が予め設定した操作速度よりも速いことを検知した場合に、高低切換制御を行うように構成して、急発進や急加速を防止するようにしてもよい。
【0145】
図1に示すように、切換レバー59は、その操作端がステアリングホイール6の左部近傍に位置するように延設されている。
【0146】
これによって、ステアリングホイール6から手を離すことなく、モータ斜板17Aの高低切り換え操作を行える。
【0147】
又、トラクタにフロントローダA(図6参照)を連結装備した場合には、ステアリングホイール6の右側に配備されるフロントローダ操作用の操作レバー(図示せず)から手を離すことなく、モータ斜板17Aの高低切り換え操作を行える。
【0148】
図6に示すように、制御装置31には、ペダルセンサ29の検出と、自動ポンプ斜板制御手段31Dの演算プログラムで算出されるエンジンドロップ量に基づいて、モータ斜板17Aの高低切り換え操作を行う自動モータ斜板制御手段31Gが制御プログラムとして備えられている。
【0149】
図4〜6に示すように、自動モータ斜板制御手段31Gは、ペダルセンサ29の検出に基づいて、変速ペダル24の操作位置が予め設定した操作位置又は操作領域まで操作されたことを検知している状態で、自動ポンプ斜板制御手段31Dの演算プログラムで算出されるエンジンドロップ量に基づいて、エンジン回転数が、そのときの変速ペダル24の操作位置に対応して予め設定した高低切り換え用の回転数以下まで低下したことを検知すると、その検知に伴って、モータ斜板17Aを高速位置から低速位置に切り換える自動高低変速制御を行うとともに、対応する表示灯61を点灯させる。
【0150】
又、エンジンドロップ量に基づいて、エンジン回転数が予め設定した低高切り換え用の回転数以上まで上昇したことを検知している状態で、ペダルセンサ29の検出に基づいて、予め設定された操作位置又は操作領域への変速ペダル24の操作を検知すると、その検知に伴って、モータ斜板17Aを低速位置から高速位置に切り換え操作する自動低高切換制御を行うとともに、対応する表示灯62を点灯させる。
【0151】
具体的には、例えば、最大踏み込み位置を100%とするペダル24の操作位置が50%以下の操作位置である場合には、設定回転数を100%とするエンジン回転数が85%以下の回転数まで低下するのに伴って、又、最大踏み込み位置を100%とするペダル24の操作位置が90%以上の操作位置である場合には、設定回転数を100%とするエンジン回転数が70%以下の回転数まで低下するのに伴って、自動高低切換制御を行う。
【0152】
又、設定回転数を100%とするエンジン回転数が90%以上の回転数まで上昇した場合には、最大踏み込み位置を100%とするペダル24の操作位置が80%以上の操作位置まで踏み込み操作されるのに伴って、自動低高切換制御を行う。
【0153】
つまり、変速ペダル24の踏み込み操作量が大きいときに、エンジンドロップ量が大きい場合は当然のことながら、変速ペダル24の踏み込み操作量が小さいときに、ある程度のエンジンドロップが発生する場合には、このときの状態が、変速ペダル24の踏み込み量を大きくすると、エンジンドロップ量も大きくなる重負荷状態であると推測できることから、エンジンドロップ量が小さくても、自動高低切換制御を行って駆動力を確保するようにしているのである。
【0154】
又、エンジン回転数が予め設定した設定回転数の近くまで回復した状態では、運転者が更に加速したいという意志が現れた場合に、自動低高切換制御を行って車速を上げるようにしてある。
【0155】
その結果、運転者が作業負荷などを考慮した変速操作を行わなくても、高い駆動力を要する重負荷作業を、過負荷によるエンジンストールを防止しながら継続することができる。又、負荷の軽減に伴って運転者が変速ペダル24の踏み込み量を減少させて減速させようとしているにもかかわらず、自動低高切換制御が行われて不測に加速される、といった不都合の発生を防止することができる。
【0156】
尚、高低切り換え用の回転数は、自動モータ斜板制御手段31Gによる自動高低変速制御が、エンジン回転数がエンジンストール性能ラインLに到達して安定する前の段階で必ず行われるように、エンジンストール性能ラインLよりも高い回転数に設定されている。
【0157】
ところで、自動モータ斜板制御手段31Gの自動高低切換制御において、その切り換え操作が行われる段階は、走行負荷によって車速が十分に低下していて変速ショックが小さいと想定される。
【0158】
そこで、自動モータ斜板制御手段31Gの自動高低切換制御においては、モータ斜板制御手段31Fの高低切換制御のような変速ショックを緩和するための制御は行わずに、予め設定された操作速度でモータ斜板17Aが高速位置から低速位置に切り換え操作されるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御し、モータ斜板17Aを低速位置に切り換えた後、その状態を所定時間(例えば2秒間)維持するようにしてある。
【0159】
一方、自動モータ斜板制御手段31Gの自動低高切換制御においては、モータ斜板制御手段31Fの低高切換制御と同様の制御作動を行って、モータ斜板17Aの低高切り換え操作によって発生する変速ショックを緩和し、モータ斜板17Aを高速位置に切り換えた後、その状態を所定時間(例えば2秒間)維持するようにしてある。
【0160】
ちなみに、自動モータ斜板制御手段31Gを、変速ペダル24の操作位置にかかわらず、自動ポンプ斜板制御手段31Dの演算プログラムで算出されるエンジンドロップ量に基づいて、エンジン回転数が、予め設定した高低切り換え用の回転数以下まで低下したことを検知した場合に、その検知に伴って、自動高低切換制御を行うとともに対応する表示灯61を点灯させるように構成してもよい。
【0161】
又、変速ペダル24の操作位置にかかわらず、自動ポンプ斜板制御手段31Dの演算プログラムで算出されるエンジンドロップ量に基づいて、エンジン回転数が予め設定した設定回転数近くの低高切換回転数又は低高切換回転数領域まで上昇したことを検知した場合に、その検知に伴って、モータ斜板17Aを低速位置から高速位置に切り換え操作する自動低高切換制御を行うとともに、対応する表示灯62を点灯させるように構成してもよい。
【0162】
制御装置31には、表示パネル63に備えた常開スイッチからなるモード設定器64の操作に基づいて実行する制御モードを切り換えるモード切換手段31Hが制御プログラムとして備えられている。
【0163】
モード切換手段31Hは、モード設定器64の押圧操作に伴ってオン信号が入力されるごとに、実行する制御モードを、手動制御モードと半自動制御モードと自動制御モードとに切り換えるとともに、各制御モードに対応する表示灯65〜67を点灯させる。
【0164】
そして、手動制御モードでは、ポンプ斜板制御手段31Aの制御作動を利用した車速制御と、モータ斜板制御手段31Fの制御作動を利用した切換制御とを行う。
【0165】
半自動制御モードでは、ポンプ斜板制御手段31Aの制御作動を利用した車速制御と、自動ポンプ斜板制御手段31Dの制御作動を利用した負荷制御と、モータ斜板制御手段31Fの制御作動を利用した切換制御とを、車速制御に対して負荷制御が優先されるように行う。
【0166】
自動制御モードでは、ポンプ斜板制御手段31Aの制御作動を利用した車速制御と、自動ポンプ斜板制御手段31Dの制御作動を利用した負荷制御と、自動モータ斜板制御手段31Gの制御作動を利用した自動切換制御とを、車速制御に対して負荷制御が優先され、かつ、負荷制御と自動切換制御とが適切に連動するように連係させた状態で行う。
【0167】
つまり、手動制御モードを選択した場合には、ポンプ斜板16Aが、変速ペダル24の操作位置などに基づいて、変速ペダル24の操作位置に対応する目標操作位置に目標操作速度で到達するように操作され、かつ、モータ斜板17Aが、切換レバー59の操作に基づいて、高低2位置に切り換え操作されることになる。
【0168】
又、半自動制御モードを選択した場合には、ポンプ斜板16Aが、変速ペダル24の操作位置などに基づいて、変速ペダル24の操作位置に対応する目標操作位置に目標操作速度で到達するように操作される一方で、エンジンドロップが発生した場合には、エンジンドロップ量などに基づいて、エンジンドロップ量に対応する限界操作位置に目標操作速度で到達するように操作され、かつ、モータ斜板17Aが、切換レバー59の操作に基づいて、高低2位置に切り換え操作されることになる。
【0169】
そして、自動制御モードを選択した場合には、ポンプ斜板16Aが、変速ペダル24の操作位置などに基づいて、変速ペダル24の操作位置に対応する目標操作位置に目標操作速度で到達するように操作される一方で、エンジンドロップが発生した場合には、エンジンドロップ量などに基づいて、エンジンドロップ量に対応する限界操作位置に目標操作速度で到達するように操作され、かつ、モータ斜板17Aが、変速ペダル24の操作位置やエンジンドロップ量などに基づいて、適切なタイミングで高低2位置に切り換え操作されることになる。
【0170】
これによって、例えば、移動走行や軽負荷作業を行う場合などにおいては手動制御モードを選択し、中負荷作業や勾配の比較的きつい場所で登坂走行を行う場合などにおいては半自動制御モードを選択し、重負荷作業や勾配のきつい場所で登坂走行を行う場合などにおいては自動制御モードを選択するようにすれば、運転者に与える負担の軽減を図りながら、それぞれの走行や作業を良好に行うことができる。
【0171】
ちなみに、自動制御モードでは、半自動制御モードの場合よりも、自動ポンプ斜板制御手段31Dによる負荷制御での制御感度が、エンジンドロップの発生し易い鈍感に設定されている。
【0172】
その結果、自動制御モードにおいては、自動モータ斜板制御手段31Gによる自動高低切換制御が行われ易くなっている。
【0173】
又、自動制御モードを選択した状態において、切換レバー59の操作に基づくモータ斜板17Aの低速位置への切り換え操作が行われた場合には、自動モータ斜板制御手段31Gによる自動高低切換制御が行えなくなることから、制御モードが、自動制御モードから半自動制御モードに自動的に切り換わるようになっている。
【0174】
図6に示すように、操作パネル63には、表示切換スイッチ68の操作に基づいて、車速表示状態や残留燃料表示状態などに表示状態が切り換えられる液晶表示器69が装備されている。
【0175】
図12に示すように、液晶表示器69は、表示切換スイッチ68の操作によってポンプ斜板位置表示モードが選択されると、時々刻々と変化するポンプ斜板16Aの目標操作位置69A又は限界操作位置69Bと現在位置69Cとを表示するように構成されている。
【0176】
つまり、ポンプ斜板位置表示モードを選択することで、ポンプ斜板16Aの動きを容易に確認することができ、メンテナンス性の向上を図れるようになる。
【0177】
ちなみに、図12の(イ)は、ポンプ斜板16Aに対する増速用の目標操作位置69Aが設定された状態を示すものであり、図12の(ロ)は、ポンプ斜板16Aが増速用の目標操作位置69Aに向けて操作されている状態を示すものである。又、図12の(ハ)は、ポンプ斜板16Aの減速用の目標操作位置69A又は限界操作位置69Bが設定された状態を示すものである。
【0178】
データ変更手段31Cは、フロントローダAなどの作業装置を昇降操作可能に連結装備した作業状態において、その作業装置の高さ位置を検出するポテンショメータからなる高さセンサ70を装備した場合には、高さセンサ70の検出に基づいて、作業装置が予め設定した高さ以上の高さ位置(例えば車高を越える高さ位置)まで上昇操作されるのに伴って、ポンプ斜板制御手段31Aが使用する変速ペダル24の操作位置とポンプ斜板16Aの操作位置との相関関係を示すマップデータを、ポンプ斜板制御手段31Aに記憶装備されている作業装置上昇時用のマップデータに変更するように構成されている。
【0179】
作業装置上昇時用のマップデータは、通常使用するマップデータに比較して、変速ペダル24の操作位置に対するポンプ斜板16Aの操作位置が低速側に設定されたものである(図7参照)。
【0180】
そして、このマップデータをポンプ斜板制御手段31Aが使用することで、車速が低速側に制限されることになり、作業装置を設定高さ以上に上昇させた不安定状態での高速走行が阻止されることになる。
【0181】
図4及び図5に示すように、サーボコントロール機構25は、サーボバルブ27とレギュレータバルブ28と斜板センサ30とが、油温センサ43とともに、ミッションケース4における第2ケーシング部4Bの右側部に着脱可能にボルト連結されるケーシング71に内装されて、電子式操作機構72として1ブロックにユニット化されている。
【0182】
図13及び図14には、変速ペダル24にメカ式の連係機構(図示せず)を介して操作連係される操作軸73や、ポンプ用シリンダ26に対する作動油の流動を制御するスプールからなるサーボバルブ74などを、ミッションケース4における第2ケーシング部4Bの右側部に着脱可能にボルト連結されるケーシング75に装備して、1ブロックにユニット化したメカ式操作機構76が示されている。
【0183】
つまり、電子式操作機構72をメカ式操作機構76と付け替えることで、電子式からメカ式に簡単に仕様変更できるようになっている。
【0184】
尚、図4及び図13に示す符号77は、電子式のサーボコントロール機構25においては、ポンプ用シリンダ26と斜板センサ30とにわたって架設されたフィードバックアームとして使用され、メカ式のサーボコントロール機構78においては、サーボバルブ74の操作が可能となるようにポンプ用シリンダ26と操作軸73とにわたって架設された操作・フィードバック兼用アームとして使用される連係アームである。
【0185】
又、図5及び図14に示す符号79,80は、第2ケーシング部4Bの右側部に電子式操作機構72をボルト連結した際に、第2ケーシング部4Bのケーシング71との接合面に形成された各連通口81,82に対応して接続されるように、ケーシング71の第2ケーシング部4Bとの接合面に形成された連通口である。
【0186】
図4及び図5に示すように、切換機構54は、切換バルブ56と制御バルブ57と高圧選択バルブ58とが、ミッションケース4における第2ケーシング部4Bの左側部に着脱可能にボルト連結されるケーシング83に内装されて、操作機構84として1ブロックにユニット化されている。
【0187】
この操作機構84を、図13、図15及び図16に示すように、プレート85に付け替えて、第2ケーシング部4Bの操作機構84との接合面に形成された各連通口86〜91を閉塞し、かつ、第2ケーシング部4B内の可変容量モータ17を固定容量モータ92に付け替えるとともに、モータ用シリンダ55を取り外すことで、可変モータ仕様から固定モータ仕様に比較的簡単に仕様変更することができる。
【0188】
尚、図5に示す符号93〜98は、第2ケーシング部4Bの左側部に切換機構54をボルト連結した際に、第2ケーシング部4Bの各連通口86〜91に対応して接続されるように、ケーシング83の第2ケーシング部4Bとの接合面に形成された連通口である。
【0189】
そして、上記の構成から、可変モータ仕様に電子式のサーボコントロール機構25を備えたもの(図5参照)と、可変モータ仕様にメカ式のサーボコントロール機構78を備えたもの(図14参照)と、固定モータ仕様に電子式のサーボコントロール機構25を備えたもの(図15参照)と、固定モータ仕様にメカ式のサーボコントロール機構78を備えたもの(図16参照)とに、簡単に仕様変更することができるとともに、部品の共通化によるコストの削減や部品管理の容易化などを図ることができる。
【0190】
図6に示すように、変速ペダル24の操作領域の両端側の領域を高速領域に設定し、それらの間を低速領域に設定し、モータ斜板制御手段31Fが、ペダルセンサ29の検出に基づいて、変速ペダル24が低速領域に操作された場合には、モータ斜板17Aが低速位置に切り換わり、変速ペダル24が高速領域に操作された場合には、モータ斜板17Aが高速位置に位置するように、制御バルブ57の作動を制御するように構成して、変速ペダル24を、可変容量モータ17の高低2位置切換用の操作具に兼用するようにしてもよい。
【0191】
又、変速ペダル24の操作領域の両端側の領域を高速領域に設定し、モータ斜板制御手段31Fが、ペダルセンサ29の検出に基づいて、変速ペダル24が高速領域に操作された場合に、モータ斜板17Aが高速位置に切り換わるように、制御バルブ57の作動を制御するように構成して、変速ペダル24を、可変容量モータ17の低高切換用の操作具に兼用するようにしてもよい。
【0192】
このように変速ペダル24を可変容量モータ17の切換用操作具に兼用する場合には、変速ペダル24の操作領域の境界を把握させるためのデテント機構(図示せず)を設けるようにしてもよい。
【0193】
〔別実施形態〕
【0194】
〔1〕作業車としては乗用型田植機や乗用型草刈機あるいはホイールローダなどであってもよい。
【0195】
〔2〕無段変速装置10としてはベルト式のものなどであってもよい。
【0196】
〔3〕有段変速装置11の代わりに遊星歯車変速装置を採用してもよい。
【0197】
〔4〕制御手段31としては、自動モータ斜板制御手段31Gを備えないものであってもよく、又、モータ斜板制御手段31Fと自動モータ斜板制御手段31Gとを備えないものであってもよい。
【0198】
〔5〕制御手段31に備える相関関係データとして、種々の条件に対応した複数の相関関係式を備えるようにしてもよく、又、相関関係式に種々の条件に対応した係数を与えるようにしてもよい。
【0199】
〔6〕図17に示すように、制御手段31における自動ポンプ斜板制御手段31Dの各相関関係データとしては、予め設定したエンジンドロップ量の小さい高回転領域haでは、エンジン回転数が低下するほど、ポンプ斜板16Aの限界操作位置が中立位置に近づくように、又、その高回転領域haよりもエンジンドロップ量の大きい低回転領域hbでは、ポンプ斜板16Aの限界操作位置が高回転領域haでの最小操作位置に維持されるように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させたものであってもよい。
【0200】
このような相関関係データを採用すると、高回転領域haにおいてエンジン回転数が低下している間は、ポンプ斜板16Aを減速方向に大きく戻してエンジン回転数の低下速度を低下させる、といったエンジンストールの防止を優先しながら駆動トルクを増加させる負荷制御が行われることになり、よって、エンジン1にねばりを持たせることができる。
【0201】
又、この負荷制御にかかわらずエンジン回転数が低回転領域hbまで低下すると、ポンプ斜板16Aが高回転領域haでの最小操作位置に維持されることで、エンジン回転数がエンジンストール性能ラインLに沿って低下することになり、よって、エンジンストールを確実に発生させることが可能になる。
【0202】
〔7〕操作手段55として電動シリンダや電動モータ又は油圧モータなどを採用してもよい。
【0203】
〔8〕変速操作具24としては変速レバーなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】トラクタの伝動構造を示す概略図
【図3】トラクタの伝動構造を示す要部の縦断側面図
【図4】トラクタの伝動構造を示す要部の横断平面図
【図5】油圧回路図
【図6】制御構造を示すブロック図
【図7】変速ペダルの操作位置とポンプ斜板の操作位置との相関関係を示す図
【図8】ポンプ斜板の偏差と目標操作速度との相関関係を示す図
【図9】静油圧式無段変速装置を搭載した作業車のエンジンストール性能を示す図
【図10】ポンプ斜板の操作位置とエンジン回転数との相関関係を示す図
【図11】モータ斜板切り換え操作時のポンプ斜板の動作を示す図
【図12】液晶パネルでのポンプ斜板位置の表示状態を示す図
【図13】メカ式のサーボコントロール機構の構成を示す要部の横断平面図
【図14】メカ式のサーボコントロール機構と切換機構とを装備した状態を示す油圧回路図
【図15】電子式のサーボコントロール機構のみを装備した状態を示す油圧回路図
【図16】メカ式のサーボコントロール機構のみを装備した状態を示す油圧回路図
【図17】別実施形態でのポンプ斜板の操作位置とエンジン回転数との相関関係を示す図
【符号の説明】
【0205】
1 エンジン
10 無段変速装置
11 有段変速装置
26 操作手段
30 変速位置検出手段
31 制御手段
31E 操作速度設定手段
45 変速段検出手段(指令手段)
47 回転数検出手段
52 設定回転数検出手段(指令手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの設定回転数を検出する設定回転数検出手段と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、無段変速装置の変速操作位置を検出する変速位置検出手段と、前記無段変速装置を変速操作する操作手段と、この操作手段の作動を制御する制御手段とを備えた作業車の負荷制御構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車の負荷制御構造では、エンジン回転数の設定回転数からの低下に基づいて、制御手段が、無段変速装置を変速操作する操作手段の作動を制御して、その低下量に応じた変速位置まで無段変速装置を変速操作するように構成されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−22006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成では、単に、エンジン回転数の設定回転数からの低下量に応じた変速位置まで無段変速装置を変速操作する位置制御を行うだけであることから、作業条件によって異なるエンジン負荷に対して好適な負荷制御を行うことが難しくなっていた。
【0004】
本発明の目的は、作業条件によって異なるエンジン負荷に対して好適な負荷制御を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうちの請求項1に記載の発明では、エンジンの設定回転数を検出する設定回転数検出手段と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、無段変速装置の変速操作位置を検出する変速位置検出手段と、前記無段変速装置を変速操作する操作手段と、この操作手段の作動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出と前記回転数検出手段の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量を算出し、その算出した低下量と、予め備えたエンジン回転数と前記無段変速装置の変速操作位置との相関関係データとに基づいて、前記無段変速装置の限界操作位置を設定し、その設定した限界操作位置と前記変速位置検出手段の検出とに基づいて、前記無段変速装置の変速操作位置が前記限界操作位置に位置するように、前記操作手段の作動を制御するように構成し、前記制御手段に、前記相関関係データの変更を指令する指令手段を設けてある作業車の負荷制御構造。
【0006】
この構成によると、例えば、連結装備する作業装置や作業地などを変更することで、作業時に発生するエンジン負荷が大きくなる場合には、負荷制御の際に使用する相関関係データを重負荷に対応したものに変更すれば、その重負荷用の相関関係データに基づいて、制御手段が負荷制御を行うことから、重負荷に対する好適な負荷制御を行うことができる。
【0007】
逆に、連結装備する作業装置や作業地などを変更することで、作業時に発生するエンジン負荷が小さくなる場合には、負荷制御の際に使用する相関関係データを軽負荷に対応したものに変更すれば、その軽負荷用の相関関係データに基づいて、制御手段が負荷制御を行うことから、軽負荷に対する好適な負荷制御を行うことができる。
【0008】
従って、作業条件に応じた適切な負荷制御を行うことができ、結果、作業性の向上を図ることができる。
【0009】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、前記指令手段を前記設定回転数検出手段で構成し、前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出に基づいて、前記エンジンの設定回転数が小さいほど、エンジン回転数の変化量に対する前記無段変速装置の変速操作量が大きくなるように、前記相関関係データを変更するように構成してある。
【0010】
この構成によると、エンジンの設定回転数を変更すると、それに応じて選択される変更後の設定回転数を考慮した相関関係データに基づいて、制御手段が負荷制御を行うことから、エンジンの設定回転数を考慮した適切な負荷制御を行うことができる。
【0011】
従って、エンジンの設定回転数に応じた適切な負荷制御を、運転者が相関関係データを変更する手間を要することなく行える。
【0012】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、エンジンの設定回転数を検出する設定回転数検出手段と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、無段変速装置の変速操作位置を検出する変速位置検出手段と、前記無段変速装置を変速操作する操作手段と、この操作手段の作動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出と前記回転数検出手段の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量を算出し、その算出した低下量と、予め備えたエンジン回転数と前記無段変速装置の変速操作位置との相関関係データとに基づいて、前記無段変速装置の限界操作位置を設定し、その設定した限界操作位置と前記変速位置検出手段の検出とに基づいて、前記無段変速装置の変速操作位置が前記限界操作位置に位置するように前記操作手段の作動を制御するように構成し、前記無段変速装置の変速操作速度を設定する操作速度設定手段を備え、前記制御手段が、前記操作速度設定手段の設定に基づいて、その設定速度で前記無段変速装置が変速操作されるように、前記操作手段の作動を制御するように構成してある。
【0013】
この構成によると、例えば、連結装備する作業装置や作業地などを変更することで、作業時に発生するエンジン負荷が大きくなるほど、操作速度設定手段によって、負荷制御時での無段変速装置の変速操作速度が速くなるように設定すれば、重負荷作業時に比較的急激に上昇するエンジン負荷に対して、負荷制御時に制御手段が変速操作する無段変速装置の操作速度が速くなることから、エンジン負荷の上昇に対する制御の遅れに起因したエンジンストールを防止することができる。
【0014】
従って、作業条件に応じた適切な負荷制御を行うことができ、結果、作業性の向上を図ることができる。
【0015】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項3に記載の発明において、前記操作速度設定手段が、前記回転数検出手段の検出に基づいて、エンジン回転数の変化速度を算出し、その算出した変化速度が大きいほど前記無段変速装置の変速操作速度を速い速度設定するように構成してある。
【0016】
この構成によると、エンジン回転数の変化速度を考慮したより適切な負荷制御を行えることから、エンジン回転数の変化速度の変動にかかわらず、エンジン回転数が低下する際のドロップ感やエンジン回転数が復帰する際の復帰感を一定にすることできる。
【0017】
又、エンジン回転数の低下に対する無段変速装置の変速操作を応答性良く行うことができ、無段変速装置の操作遅れに起因したエンジンストールを防止することができる。
【0018】
従って、負荷制御時の操作フィーリングの向上を図れるとともに、エンジン回転数の変化速度を考慮した適切な負荷制御を、運転者が無段変速装置の変速操作速度を設定する手間を要することなく行える。
【0019】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項3又は4に記載の発明において、有段変速装置と、この有段変速装置の変速段を検出する変速段検出手段とを備え、前記操作速度設定手段が、前記変速段検出手段の検出に基づいて、前記変速段が低速側であるほど、前記無段変速装置を前記限界操作位置に向けて操作する際の操作速度が速くなるように、前記操作手段の作動を制御するように構成してある。
【0020】
この構成によると、作業負荷の大きい作業を行うほど低速側に変速操作される有段変速装置の変速段に基づいて、その変速段が低速側であるほど、操作速度設定手段が、エンジン回転数の変化速度に対する無段変速装置の変速操作速度を速くすることから、作業負荷の大きい作業での急激なエンジン回転数の低下に対しても、無段変速装置の変速操作を応答性良く速やかに行えるようになり、過負荷によるエンジンストールをより確実に防止することができる。
【0021】
従って、作業負荷の大きさを考慮した好適な負荷制御を、作業負荷の大きさに応じて運転者が無段変速装置の変速操作速度を設定する手間を要することなく行える。
【0022】
本発明のうちの請求項6に記載の発明では、上記請求項1〜5のいずれか一つに記載の発明において、前記制御手段が設定する前記無段変速装置の限界操作位置が中立位置に設定されないように構成してある。
【0023】
この構成によると、負荷制御において無段変速装置が中立位置まで戻されることを防止することができる。
【0024】
従って、登坂時の負荷制御で、無段変速装置が中立位置まで戻されて車体が不測に逆送する、といった不都合の発生を未然に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1には、作業車の一例であるトラクタの全体側面が示されている。このトラクタは、エンジン1を防振支持する前部フレーム2の左右に前輪3が配備され、エンジン1に連結されるフレーム兼用のミッションケース4の左右に後輪5が配備され、ミッションケース4の上方に、ステアリングホイール6や運転座席7などを配備して搭乗運転部8が形成されている。
【0026】
図2〜4に示すように、エンジン1からの動力は、乾式の主クラッチ9などを介して、主変速装置として機能する静油圧式無段変速装置(無段変速装置の一例)10に伝達される。静油圧式無段変速装置10から取り出された走行用動力は、高中低の3段に変速切り換え可能に構成された副変速装置として機能するギヤ式変速装置(有段変速装置の一例)11や、前輪用差動装置12又は後輪用差動装置13などを介して左右の前輪3及び左右の後輪5に伝達される。静油圧式無段変速装置10から取り出された作業用動力は、油圧式の作業クラッチ14などを介して動力取出軸15に伝達される。
【0027】
ミッションケース4は、主クラッチ9などを内装する第1ケーシング部4A、静油圧式無段変速装置10などを内装する第2ケーシング部4B、作業クラッチ14などを内装する第3ケーシング部4C、及び、ギヤ式変速装置11などを内装する第4ケーシング部4D、などを連結して構成されている。
【0028】
図2〜5に示すように、静油圧式無段変速装置10は、第2ケーシング部4Bに内装したアキシャルプランジャー型の可変容量ポンプ16やアキシャルプランジャー型の可変容量モータ17などを備え、可変容量ポンプ16からの非変速動力を作業用動力として出力し、可変容量モータ17からの変速動力を走行用動力として出力するように構成されている。
【0029】
可変容量ポンプ16と可変容量モータ17は、第1油路18及び第2油路19を介して接続され、その接続で形成された閉回路20に、エンジン動力で駆動されるチャージポンプ21からのチャージ油が、チャージ油路22やチェックバルブ23などを介して供給される。
【0030】
図1及び図4〜6に示すように、このトラクタには、搭乗運転部8に備えた中立復帰型の変速ペダル24の操作などに基づいて、可変容量ポンプ16の斜板(以下、ポンプ斜板と称する)16Aを操作するサーボコントロール機構25が装備されている。
【0031】
図4〜6に示すように、サーボコントロール機構25は、ポンプ斜板16Aを無段階に操作する油圧式のポンプ用シリンダ(操作手段の一例)26、ポンプ用シリンダ26に対する作動油の流動を制御するサーボバルブ27、サーボバルブ27などに対する油圧を設定圧に維持するレギュレータバルブ28、変速ペダル24の操作位置を検出するポテンショメータからなるペダルセンサ29、ポンプ用シリンダ26の操作量からポンプ斜板16Aの操作位置(斜板角)を検出するポテンショメータからなる斜板センサ(変速位置検出手段の一例)30、及び、ペダルセンサ29の検出や斜板センサ30の検出などが入力されるマイクロコンピュータを備えた制御装置(制御手段の一例)31、などを備えて構成されている。
【0032】
ポンプ用シリンダ26は、ポンプ斜板16Aを中立位置に復帰付勢する前進減速バネ32及び後進減速バネ33とともに第2ケーシング部4Bに内装されている。
【0033】
そして、その前進変速用の油室34に作動油が供給されることで、前進減速バネ32の付勢に抗してポンプ斜板16Aを前進増速方向に操作し、前進変速用の油室34から作動油が排出されることで、前進減速バネ32の付勢によるポンプ斜板16Aの前進減速方向への操作を許容する。
【0034】
又、その後進変速用の油室35に作動油が供給されることで、後進減速バネ33の付勢に抗してポンプ斜板16Aを後進増速方向に操作し、後進変速用の油室35から作動油が排出されることで、後進減速バネ33の付勢によるポンプ斜板16Aの後進減速方向への操作を許容する。
【0035】
サーボバルブ27は、ポンプ用シリンダ26の前進変速用の油室34に対する作動油の流動を制御する電磁式の前進用比例バルブ36や、ポンプ用シリンダ26の後進変速用の油室35に対する作動油の流動を制御する電磁式の後進用比例バルブ37などを備えて構成されている。
【0036】
レギュレータバルブ28は、パワーステアリング用の供給ポンプ38から圧送される作動油を、作業クラッチ14と油圧式のパワーステアリング装置39とに、それぞれの作動に適した設定圧で分配するように構成され、作業クラッチ14に対する供給油路40が接続されるレギュレータバルブ28の圧力ポート28Aに、サーボバルブ27に対する供給油路41が接続されている。
【0037】
図6及び図7に示すように、制御装置31には、変速ペダル24の操作位置とポンプ斜板16Aの操作位置との相関関係を示す相関関係データとしてのマップデータと、そのマップデータやペダルセンサ29の検出及び斜板センサ30の検出などに基づいて前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御することでポンプ斜板16Aを操作する制御プログラムとを記憶装備したポンプ斜板制御手段31Aが備えられている。
【0038】
ポンプ斜板制御手段31Aのマップデータは、変速ペダル24の中立位置から前進増速方向への操作量が大きくなるほど、ポンプ斜板16Aの中立位置から前進増速方向への操作量が大きくなり、変速ペダル24の中立位置から後進増速方向への操作量が大きくなるほど、ポンプ斜板16Aの中立位置から後進増速方向への操作量が大きくなるように、変速ペダル24の操作位置とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させたものである(図7参照)。
【0039】
ポンプ斜板制御手段31Aの制御プログラムは、記憶装備したマップデータとペダルセンサ29の検出とに基づいて、ペダルセンサ29が検出した変速ペダル24の操作位置に対応するポンプ斜板16Aの操作位置をポンプ斜板16Aの目標操作位置に設定し、その設定した目標操作位置と斜板センサ30の検出とに基づいて、ポンプ斜板16Aの目標操作位置と実際の操作位置とが一致するように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御するように構成されている。
【0040】
この制御作動によって、変速ペダル24の操作位置に応じた速度で車体を前進又は後進させることができる。
【0041】
そして、サーボコントロール機構25は、ペダルセンサ29の検出及び斜板センサ30の検出に基づいて、ポンプ斜板制御手段31Aが、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御することで、ポンプ用シリンダ26を作動させて静油圧式無段変速装置10のポンプ斜板16Aを操作する電子式で、かつ、レギュレータバルブ28の圧力ポート28Aを経由した前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の出力圧力でポンプ用シリンダ26をダイレクトに駆動する直動型に構成されている。
【0042】
これによって、静油圧式無段変速装置10の閉回路20での圧力変動やエンジン回転数の変動で圧力が変動するチャージ油路22からの出力圧力でポンプ用シリンダ26を駆動する場合に比較して、安定したサーボパイロット圧を得ることができ、ポンプ用シリンダ26の作動制御を精度良く行えるようになる。
【0043】
その結果、サーボコントロール機構25を安価な直動型に構成しながら、ペダルセンサ29の検出及び斜板センサ30の検出に基づいて、変速ペダル24の操作位置に応じた速度で車体を前進又は後進させる車速制御を精度良く行わせることができる。
【0044】
図6及び図8に示すように、制御装置31には、ポンプ斜板制御手段31Aで設定されたポンプ斜板16Aの目標操作位置と斜板センサ30の検出とに基づいて、ポンプ斜板16Aの目標操作位置と実際の操作位置との偏差を算出する演算プログラム、ポンプ斜板16Aの目標操作位置と実際の操作位置との偏差とポンプ斜板16Aの操作速度との相関関係を示す相関関係データとしての複数のマップデータ、及び、それらのマップデータと演算プログラムの算出結果とに基づいてポンプ斜板16Aの目標操作速度を設定する制御プログラム、を記憶装備した第1操作速度設定手段31Bが備えられている。
【0045】
第1操作速度設定手段31Bの各マップデータは、斜板センサ30で検出されるポンプ斜板16Aの実際の操作位置と、ポンプ斜板制御手段31Aで設定されるポンプ斜板16Aの目標操作位置との偏差が大きい場合に、ポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるように、又、後進時でのポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が、前進時でのポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度よりも遅くなるように、ポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたものである(図8参照)。
【0046】
第1操作速度設定手段31Bの制御プログラムは、記憶装備したマップデータと演算プログラムの算出結果とに基づいて、算出したポンプ斜板16Aの偏差に対応するポンプ斜板16Aの操作速度をポンプ斜板16Aの目標操作速度に設定し、その設定した目標操作速度をポンプ斜板制御手段31Aに出力するように構成されている。
【0047】
ポンプ斜板制御手段31Aの制御プログラムは、車速制御において、第1操作速度設定手段31Bで設定された目標操作速度でポンプ斜板16Aが操作されるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御するように構成されている。
【0048】
この制御作動によって、変速ペダル24の操作に対するポンプ斜板16Aの応答性を高めながらハンチングの発生を抑制することができ、結果、変速ペダル24の操作位置に応じた速度に、車速を迅速かつ正確に到達させることができる。
【0049】
又、後進時でのポンプ斜板16Aの操作速度が、前進時でのポンプ斜板16Aの操作速度よりも遅くなって、後進時での静油圧式無段変速装置10の変速操作が、前進時での静油圧式無段変速装置10の変速操作に比較して緩やかに行われることから、前進時に比較して速度感覚をつかみ難い後進時での静油圧式無段変速装置10の変速操作が行い易くなる。
【0050】
図6に示すように、制御装置31には、第1操作速度設定手段31Bが使用するマップデータを変更する制御プログラムを備えたデータ変更手段31Cが備えられている。
【0051】
データ変更手段31Cは、以下に示すように、種々の状況に応じて第1操作速度設定手段31Bが使用するマップデータを適切に変更するように構成されている。
【0052】
データ変更手段31Cは、搭乗運転部8に備えたポテンショメータからなる調節ダイヤル42の操作位置に基づいて、調節ダイヤル42の操作位置が基準位置からクイック側に大きく変更されるほど、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、使用するマップデータを、ポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0053】
又、調節ダイヤル42の操作位置が基準位置からスロー側に大きく変更されるほど、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、ポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0054】
つまり、調節ダイヤル42を操作することで、変速ペダル24で静油圧式無段変速装置10を変速操作する際の操作フィーリングを、運転者の好みに応じたものに変更することができ、操作フィーリングや変速操作性の向上を図ることができる。
【0055】
データ変更手段31Cは、レギュレータバルブ28に供給される作動油の温度を検出する油温センサ43の検出に基づいて、作動油の温度が低いほど、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、油温の低下に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0056】
つまり、作動油の温度が低下するほど、作動油の粘性が高くなって、油圧操作されるポンプ斜板16Aの応答性が低下することを考慮して、作動油の温度が低いほど、ポンプ斜板16Aの目標操作速度が遅い速度に設定されるようにするのである。
【0057】
その結果、作動油の温度を考慮しない場合には、作動油の温度が低下するほど招き易くなる、ポンプ斜板16Aの応答性の低下に起因したハンチングの発生を抑制することができる。
【0058】
データ変更手段31Cは、搭乗運転部8に備えた副変速レバー44の操作位置からギヤ式変速装置11の変速段を検出するポテンショメータからなる副変速センサ(変速段検出手段の一例)45の検出に基づいて、ギヤ式変速装置11の変速段が高速側であるほど、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、使用するマップデータを、ギヤ式変速装置11の変速段の上昇に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0059】
つまり、ギヤ式変速装置11の変速段が高速側に設定されるほど、ポンプ斜板16Aの目標操作速度が、ポンプ斜板16Aの操作に対する反応が遅くなることを考慮した速い速度に設定されるようになっている。
【0060】
これによって、ギヤ式変速装置11の変速段にかかわらず、変速ペダル24で静油圧式無段変速装置10を変速操作する際の操作フィーリングを同じにすることができる。
【0061】
データ変更手段31Cは、変速ペダル24の操作速度を検出する操作速度検出手段46の検出に基づいて、変速ペダル24の操作速度が遅くなるほど、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、変速ペダル24の操作速度の低下に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0062】
これによって、変速ペダル24が微速操作される場合であっても、ポンプ斜板16Aは、変速ペダル24の操作に遅れて変速ペダル24を追従するようになる。
【0063】
その結果、変速ペダル24の操作にポンプ斜板16Aの操作が追いついて、階段状に有段変速操作される虞を回避することができるようになり、もって、変速ペダル24の操作速度にかかわらず、変速ペダル24による静油圧式無段変速装置10の変速操作をスムーズに行わせることができる。
【0064】
尚、操作速度検出手段46は、ペダルセンサ29と、そのペダルセンサ29の検出に基づいて変速ペダル24の操作速度を算出するようにデータ変更手段31Cに備えた演算プログラムとから構成されている。
【0065】
データ変更手段31Cは、斜板センサ30の検出に基づいて、ポンプ斜板16Aの操作位置が中立位置又は中立位置の近傍であることが検出された場合には、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、ポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が低速側に制限されるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0066】
これによって、ポンプ斜板16Aが中立位置又は中立位置の近傍に位置する場合に、変速ペダル24の急激な踏み込み操作が行われたとしても、その踏み込み操作に伴ってポンプ斜板16Aが急速に増速操作されることはなく、ポンプ斜板16Aが緩やかに増速操作されることから、急発進や微速からの急加速が防止されたスムーズな発進や加速を行える。
【0067】
データ変更手段31Cは、エンジン回転数を検出する回転センサ(回転数検出手段の一例)47の検出と、ポンプ斜板制御手段31Aで設定されたポンプ斜板16Aの目標操作位置とに基づいて、エンジン回転数の低下時にポンプ斜板16Aの目標操作位置が低速側に設定された場合には、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、使用するマップデータを、エンジン回転数の低下に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0068】
又、エンジン回転数の上昇時にポンプ斜板16Aの目標操作位置が高速側に設定されたことを検知した場合には、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、エンジン回転数の上昇に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0069】
これによって、走行負荷などの増大に起因したエンジン回転数の低下時に変速ペダル24を減速側に操作すれば、その操作に基づくポンプ斜板16Aの減速方向への操作が速やかに行われて、エンジン負荷の軽減が促進されるようになる。
【0070】
その結果、変速ペダル24の減速操作を行ったにもかかわらず、その操作に連動した静油圧式無段変速装置10の減速操作によるエンジン負荷の軽減が遅れてエンジン1が停止する、といった不都合が生じる虞を抑制することができる。
【0071】
又、走行負荷などの減少によるエンジン回転数の上昇時に変速ペダル24を増速側に操作しても、その操作に基づくポンプ斜板16Aの増速方向への操作が緩やかに行われることから、エンジン回転数の上昇とともにポンプ斜板16Aの増速操作が速やかに行われることに起因した急激な車速の増速を回避することができる。
【0072】
つまり、エンジン回転数の変動にかかわらず、変速ペダル24による静油圧式無段変速装置10の変速操作を良好に行える。
【0073】
データ変更手段31Cは、搭乗運転部8に備えたブレーキペダル48の操作位置から制動装置(図示せず)の作動を検出するポテンショメータからなるブレーキセンサ49の検出に基づいて、制動装置が制動作動している場合には、ポンプ斜板16Aの減速方向への操作が速やかに行われるように、使用するマップデータを、制動装置の制動作動による車速の低下を考慮してポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0074】
これによって、変速ペダル24の踏み込み操作を解除してブレーキペダル48を踏み込み操作した制動作動時における静油圧式無段変速装置10と制動装置との干渉を抑制することができ、結果、静油圧式無段変速装置10及び制動装置の耐久性の向上を図ることができる。
【0075】
又、データ変更手段31Cとしては以下のように構成されたものであってもよい。
【0076】
データ変更手段31Cが、ギヤ式変速装置11の出力回転数から車速を検出する車速センサ50の検出に基づいて、車速が遅い場合には、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、車速の低下に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0077】
このように構成すると、低速走行時には、変速ペダル24の操作に対するポンプ斜板16Aの応答性が低下することになり、もって、低速走行時に要求される車速のインチング操作が行い易くなる。
【0078】
データ変更手段31Cが、斜板センサ30の検出と、ポンプ斜板制御手段31Aで設定されたポンプ斜板16Aの目標操作位置とに基づいて、ポンプ斜板16Aの目標操作位置が実際の操作位置よりも増速側に設定された場合には、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、又、ポンプ斜板16Aの目標操作位置が実際の操作位置よりも減速側に設定された場合には、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、更に、ポンプ斜板16Aの目標操作位置と実際の操作位置とが中立位置を挟む場合には、ポンプ斜板16Aの操作がより一層速やかに行われるように、使用するマップデータを、ポンプ斜板16Aの目標操作位置と実際の操作位置との位置関係に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が異なるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0079】
このように構成すると、変速ペダル24による静油圧式無段変速装置10の増速操作と減速操作とで操作フィーリングを換えることができる。
【0080】
又、静油圧式無段変速装置10の増速操作によるエンジン負荷の増大を抑制することができるとともに、静油圧式無段変速装置10の減速操作によるエンジン負荷の軽減を促進させることができ、結果、高負荷時での変速ペダル24による静油圧式無段変速装置10の変速操作に起因してエンジン1が停止する虞を軽減することができる。
【0081】
更に、変速ペダル24の操作に対するポンプ斜板16Aの操作遅れが抑制された違和感のない変速ペダル24による静油圧式無段変速装置10の前後進切り換え操作を行える。
【0082】
データ変更手段31Cが、斜板センサ30の検出と、ポンプ斜板制御手段31Aで設定されたポンプ斜板16Aの目標操作位置とに基づいて、ポンプ斜板16Aが中立位置から増速操作される走行開始時には、ポンプ斜板16Aの操作が緩やかに行われるように、使用するマップデータを、起動時に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が遅くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0083】
又、ポンプ斜板16Aが増速位置から中立位置に減速操作される走行停止時には、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、使用するマップデータを、停止時に応じてポンプ斜板16Aの偏差に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにポンプ斜板16Aの偏差とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0084】
このように構成すると、変速ペダル24の操作による走行開始時と走行停止時とで操作フィーリングを換えることができるとともに、走行開始時に急発進する虞を抑制することができる。
【0085】
第1操作速度設定手段31Bのマップデータとして、前進時の変速操作速度を設定するための前進用のマップデータと、後進時の変速操作速度を設定するための後進用のマップデータとを備え、データ変更手段31Cが、ペダルセンサ29の検出に基づいて、使用するマップデータを変更する。
【0086】
ところで、前進減速バネ32又は後進減速バネ33の付勢でポンプ斜板16Aの中立位置に向けた減速操作を行うように構成した場合には、トレーラ作業時の慣性などで、変速ペダル24の減速操作にかかわらず、ポンプ斜板16Aの中立位置に向けた減速操作が行われ難くなることがある。
【0087】
そこで、ポンプ斜板制御手段31Aは、ペダルセンサ29の検出と斜板センサ30の検出とに基づいて、変速ペダル24の減速操作にかかわらず、前進減速バネ32又は後進減速バネ33の付勢によるポンプ斜板16Aの減速操作が行われていないことを検知した場合には、ポンプ斜板16Aを現在の操作位置に増速操作する際に使用した側とは反対側の前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御して、ポンプ斜板16Aが中立位置に向けて減速操作される方向にポンプ用シリンダ26を強制作動させるように構成されている。
【0088】
これによって、トレーラ作業時の慣性などで、変速ペダル24の減速操作にかかわらずポンプ斜板16Aが減速操作されない場合であっても、ポンプ斜板制御手段31Aによる前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動制御で、ポンプ用シリンダ26を強制作動させることで、ポンプ斜板16Aを減速操作させることができる。
【0089】
図9には、静油圧式無段変速装置10を搭載した作業車のエンジンストール性能が示されている。このエンジンストール性能は、エンジン1の出力トルク、静油圧式無段変速装置10の圧力、ポンプ斜板16Aの操作位置(斜板角)によって決まるものである。
【0090】
図9に示すラインLは、走行負荷によって静油圧式無段変速装置10の高圧リリーフが噴くようになる静油圧式無段変速装置10の最大負荷時にエンジン回転数とポンプ斜板16Aの変速操作位置とがバランスするエンジンストール性能ラインである。
【0091】
尚、図9において、エンジン回転数は設定回転数を100%とするものであり、ポンプ斜板16Aの操作位置は最大増速位置(最大斜板角)を100%とするものである。
【0092】
図9に基づいて、静油圧式無段変速装置10を搭載した作業車のエンジンストール性能について説明すると、ポンプ斜板16Aをある操作位置に一定に保持した状態において、エンジン1に走行負荷以外の例えば作業装置を駆動するための作業負荷などがかかると、点aで示すように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とが、エンジンストール性能ラインLよりも内側の領域Zaに入ることがある。
【0093】
この場合、走行負荷以外の作業負荷などが安定している状態では走行負荷が増大してもエンジン回転数は低下しないが、走行負荷以外の作業負荷などが増大するとエンジン回転数が低下してエンジン1が停止(ストール)する。
【0094】
ポンプ斜板16Aをある操作位置に一定に保持した状態において、点bで示すように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とが、エンジンストール性能ラインLよりも外側の領域Zb,Zcのうちの領域Zbにある場合には、走行負荷が増大するとエンジン回転数が低下してエンジン1が停止する。
【0095】
ポンプ斜板16Aをある操作位置に一定に保持した状態において、点cで示すように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とが領域Zcにある場合には、走行負荷が増大すると、エンジンストール性能ラインLに到達するまでエンジン回転数が低下し、エンジンストール性能ラインLに到達するとともにエンジン回転数が安定する。
【0096】
尚、エンジンストール性能ラインLは、エンジン1の出力が低いほど、図9でのエンジン回転数に対するポンプ斜板16Aの操作位置が小さくなる。
【0097】
つまり、搭載するエンジン1の出力が低いほど、走行負荷の大きい作業走行や登坂走行において、変速ペダル24を大きく踏み込んだ増速操作を行った際に、過負荷によるエンジンストールを招き易くなる。
【0098】
そこで、図6に示すように、このトラクタにおいては、制御装置31に、エンジン負荷に基づいてポンプ斜板16Aの操作位置を変更する自動ポンプ斜板制御手段31Dを備えてある。
【0099】
図6及び図10に示すように、自動ポンプ斜板制御手段31Dは、搭乗運転部8に備えたアクセルレバー51の操作位置からエンジン1の設定回転数を検出するポテンショメータからなる設定回転センサ(設定回転数検出手段の一例)52の検出と、回転センサ47の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量(以下、エンジンドロップ量と称する)を算出する演算プログラム、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置との相関関係を示す複数のマップデータ(相関関係データの一例)、及び、その演算プログラムの算出結果とマップデータとに基づいて前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御することでポンプ斜板16Aを操作する制御プログラム、を記憶装備して構成されている。
【0100】
自動ポンプ斜板制御手段31Dの各マップデータは、エンジンストール性能ラインLに基づいて決定されるものであって、ここでは、予め設定したエンジン回転領域hまでエンジン回転数が低下した場合に、エンジン回転数が低下するほど、ポンプ斜板16Aの限界操作位置が中立位置に近づくように、又、ポンプ斜板16Aの限界操作位置が中立位置に設定されないように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させてある(図10参照)。
【0101】
詳述すると、図10に示すように、予め設定したエンジン回転領域のうち、エンジンドロップ量の小さい第1領域h1では、エンジン回転数の変化量に対してポンプ斜板16Aの変化量が大きくなるように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させてある。
【0102】
第1領域h1よりもエンジンドロップ量の大きい第2領域h2では、エンジン回転数の変化量に対してポンプ斜板16Aの変化量が小さくなるように、又、走行負荷ではエンジン回転数が低下しない安定点pを有するように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させてある。
【0103】
第2領域h2よりもエンジンドロップ量の大きい第3領域h3では、エンジン回転数の変化量に対してポンプ斜板16Aの変化量が大きくなるように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させてある。
【0104】
自動ポンプ斜板制御手段31Dの制御プログラムは、演算プログラムの算出結果とマップデータとに基づいて、演算プログラムが算出したエンジンドロップ量に対応するポンプ斜板16Aの操作位置をポンプ斜板16Aの限界操作位置に設定し、その設定した限界操作位置と斜板センサ30の検出とに基づいて、ポンプ斜板16Aの限界操作位置と実際の操作位置とが一致するように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御するように構成されている。
【0105】
つまり、自動ポンプ斜板制御手段31Dを備えたことで、エンジン負荷の上昇によってエンジン回転数が第1領域h1まで低下した場合には、ポンプ斜板16Aを減速方向に大きく戻してエンジン回転数の低下速度を低下させる、といったエンジンストールの防止を優先しながら駆動トルクを増加させる負荷制御を行える。
【0106】
又、この負荷制御にかかわらずエンジン回転数が第2領域h2まで低下した場合には、ポンプ斜板16Aの減速操作量を低下させて、運転者にエンジン負荷を体感させながら駆動トルクを増加させる、といった駆動トルクの増加を優先しながらエンジンストールを防止する負荷制御を行える。
【0107】
尚、このときのエンジン負荷が走行負荷であると、エンジン回転数は、安定点pへの到達に伴って、その安定点pに対応するエンジン回転数から低下しなくなる。
【0108】
そして、走行負荷以外の、例えば、駆動昇降可能に連結装備した作業装置の昇降操作などによる負荷で、エンジン回転数が第3領域h3まで低下した場合には、ポンプ斜板16Aを減速方向に大きく戻してエンジン回転数の低下速度を低下させる、といったエンジンストールの防止を優先しながら駆動トルクを確保する負荷制御を行える。
【0109】
その結果、このトラクタにフロントローダA(図6参照)を連結装備したローダ作業時や、トラクタに耕耘装置を連結装備した耕耘作業時などにおいて、運転者が作業負荷などを考慮した変速操作を行わなくても、過負荷によるエンジンストールを防止する負荷制御を行うことができ、もって、操作性や作業性の向上を図ることができる。
【0110】
又、この負荷制御では、ポンプ斜板16Aの限界操作位置が中立位置に設定されないことから、この負荷制御によってポンプ斜板16Aが中立位置まで戻されることがなく、もって、登坂時の負荷制御で、ポンプ斜板16Aが中立位置に戻されて車体が不測に逆送する、といった不都合の発生を未然に回避することができる。
【0111】
図6に示すように、制御装置31には、エンジン回転数の変化速度とポンプ斜板16Aの操作速度との相関関係を示す複数のマップデータと、それらのマップデータとエンジン回転数の変化速度を検出する変化速度検出手段53の検出とに基づいてポンプ斜板16Aの目標操作速度を設定する制御プログラムとを記憶装備した第2操作速度設定手段31Eが備えられている。
【0112】
第2操作速度設定手段31Eの各マップデータは、エンジン回転数の変化速度が速いほどポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるように、エンジン回転数の変化速度とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたものである。
【0113】
第2操作速度設定手段31Eの制御プログラムは、記憶装備したマップデータと変化速度検出手段53の検出とに基づいて、変化速度検出手段53が検出したエンジン回転数の変化速度に対応するポンプ斜板16Aの操作速度をポンプ斜板16Aの目標操作速度に設定し、その設定した目標操作速度を自動ポンプ斜板制御手段31Dに出力するように構成されている。
【0114】
自動ポンプ斜板制御手段31Dの制御プログラムは、第2操作速度設定手段31Eで設定された目標操作速度でポンプ斜板16Aが操作されるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御するように構成されている。
【0115】
これによって、エンジン回転数の変化速度を考慮したより良好な負荷制御を行えるようになって、エンジン回転数の変化速度の変動にかかわらず、エンジン回転数が低下する際のドロップ感やエンジン回転数が復帰する際の復帰感を一定にすることができる。
【0116】
又、エンジン回転数の低下に対するポンプ斜板16Aの減速操作を応答性良く行えることから、ポンプ斜板16Aの操作遅れに起因したエンジンストールを防止することができる。
【0117】
尚、変化速度検出手段53は、回転センサ47と、その回転センサ47の検出に基づいてエンジン回転数の変化速度を算出するように第2操作速度設定手段31Eに備えた演算プログラムとから構成されている。
【0118】
データ変更手段31Cには、自動ポンプ斜板制御手段31D及び第2操作速度設定手段31Eが使用するマップデータを変更する制御プログラムが備えられている。
【0119】
データ変更手段31Cは、設定回転センサ52の検出に基づいて、エンジン1の設定回転数が小さいほど、自動ポンプ斜板制御手段31Dが使用するマップデータを、エンジン回転数の変化量に対するポンプ斜板16Aの変速操作量が大きくなるようにエンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させたマップデータに変更する。
【0120】
これによって、エンジン1の設定回転数を変更すると、それに応じて選択される変更後の設定回転数を考慮したマップデータに基づいて、自動ポンプ斜板制御手段31Dが前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御することから、エンジンの設定回転数を考慮した適切な負荷制御を行うことができる。
【0121】
その結果、エンジン1の設定回転数にかかわらず、過負荷によるエンジンストールを防止することができる。
【0122】
そして、ここでは設定回転センサ52が、データ変更手段31Cに相関関係データの変更を指令する指令手段として機能する。
【0123】
又、データ変更手段31Cは、副変速センサ45の検出に基づいて、ギヤ式変速装置11の変速段が低速側であるほど、ポンプ斜板16Aの操作が速やかに行われるように、第2操作速度設定手段31Eが使用するマップデータを、ギヤ式変速装置11の変速段の下降に応じてエンジン回転数の変化速度に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるようにエンジン回転数の変化速度とポンプ斜板16Aの操作速度とを対応させたマップデータに変更する。
【0124】
これによって、作業負荷の大きい作業を行うほど低速側に変速操作されるギヤ式変速装置11の変速操作を行うと、操作後の変速段が低速側であるほど、エンジン回転数の変化速度に対するポンプ斜板16Aの操作速度が速くなるように設定したマップデータに変更され、この変更後のマップデータに基づいて、自動ポンプ斜板制御手段31Dが前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御することから、作業負荷の大きい作業での急激なエンジン回転数の低下に対しても、ポンプ斜板16Aの減速操作を応答性良く速やかに行えるようになる。
【0125】
その結果、過負荷によるエンジンストールをより確実に防止することができる。
【0126】
そして、ここでは副変速センサ45が、データ変更手段31Cに相関関係データの変更を指令する指令手段として機能する。
【0127】
ちなみに、図示は省略するが、負荷制御時でのポンプ斜板16Aの目標操作速度を設定するポテンショメータ又はスイッチなどからなる手動式の操作速度設定器(操作速度設定手段)を備え、この操作速度設定器で設定した目標操作速度でポンプ斜板16Aが操作されるように、自動ポンプ斜板制御手段31Dが前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御するように構成して、連結装備する作業装置の種類によって異なる作業負荷を考慮したポンプ斜板16Aの目標操作速度の設定を行えるようにしてもよい。
【0128】
又、データ変更手段31Cに、自動ポンプ斜板制御手段31D又は第2操作速度設定手段31Eが使用するマップデータの変更を指令するポテンショメータ又はスイッチなどからなるデータ変更指令用の操作具(指令手段)を、搭乗運転部8に配備するようにして、連結装備する作業装置の種類に応じたマップデータの変更を行えるようにしてもよい。
【0129】
このトラクタには、可変容量モータ17の斜板(以下、モータ斜板と称する)17Aを高低2段に切り換え操作する切換機構54が装備されている。
【0130】
切換機構54は、モータ斜板17Aを操作する油圧式のモータ用シリンダ55、このモータ用シリンダ55に対する作動油の流動を制御する切換バルブ56、この切換バルブ56を操作する電磁式の制御バルブ57、この制御バルブ57に静油圧式無段変速装置10の閉回路20からの作動油の供給を可能にする高圧選択バルブ58、ステアリングホイール6の左下方に配備した切換レバー59、この切換レバー59の操作位置を検出するスイッチからなるレバーセンサ60、及び、このレバーセンサ60の検出に基づいてモータ斜板17Aの高低切り換え操作を行う制御プログラムとして制御装置31に備えたモータ斜板制御手段31F、などを備えて構成されている。
【0131】
モータ用シリンダ55は、ミッションケース4の第2ケーシング部4Bに、可変容量モータ17とともに着脱可能に内装されている。
【0132】
モータ斜板制御手段31Fは、レバーセンサ60の検出に基づいて、切換レバー59が低速位置に操作された場合には、モータ斜板17Aを高速位置から低速位置に切り換える高低切換制御を行うとともに、対応する表示灯61を点灯させる。又、切換レバー59が高速位置に操作された場合には、モータ斜板17Aを低速位置から高速位置に切り換える低高切換制御を行うとともに、対応する表示灯62を点灯させる。
【0133】
つまり、切換レバー59を高速位置に設定した登坂走行や作業走行における走行負荷の増大に起因して走行速度が大幅に低下する場合には、切換レバー59を高速位置から低速位置に切り換えることで、左右の前輪3及び左右の後輪5に対する駆動力を増大させることができ、もって、登坂走行や作業走行を継続させることができる。
【0134】
尚、表示灯61,62は、ステアリングホイール6の下方に配備された操作パネル63に配備されている。
【0135】
モータ斜板制御手段31Fの制御作動について詳述すると、モータ斜板制御手段31Fは、その高低切換制御では、先ず、斜板センサ30の検出に基づいて、ポンプ斜板16Aの現在の操作位置を記憶するとともに、ポンプ斜板16Aの減速目標操作位置を算出する。次に、その算出した減速目標操作位置までポンプ斜板16Aが予め設定した操作速度で減速操作されるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御する。そして、その制御作動でポンプ斜板16Aが減速目標操作位置に到達した後に、ポンプ斜板16Aの記憶した操作位置への予め設定した操作速度での復帰増速操作と、予め設定した操作速度でのモータ斜板17Aの高速位置から低速位置への切り換え操作とが同時に行われるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動と制御バルブ57の作動とを制御するように構成されている〔図11の(イ)参照〕。
【0136】
又、低高切換制御では、先ず、斜板センサ30の検出に基づいて、ポンプ斜板16Aの現在の操作位置を記憶するとともに、ポンプ斜板16Aの減速目標操作位置を算出する。次に、その算出した減速目標操作位置へのポンプ斜板16Aの予め設定した操作速度での減速操作と、予め設定した操作速度でのモータ斜板17Aの低速位置から高速位置への切り換え操作とが同時に行われるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動と制御バルブ57の作動とを制御する。その後、記憶した操作位置までポンプ斜板16Aが予め設定した操作速度で復帰増速操作されるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御する〔図11の(ロ)参照〕。
【0137】
つまり、モータ斜板17Aを高速位置から低速位置に切り換える際には、その切り換え操作だけでなく、ポンプ斜板16Aの増速操作が同時に行われることで、モータ斜板17Aの高速位置から低速位置への切り換え操作に伴って発生する可変容量モータ17での容量変化が、ポンプ斜板16Aの増速操作に伴って発生する可変容量ポンプ16での容量変化によって相殺されることになる。
【0138】
又、モータ斜板17Aを低速位置から高速位置に切り換える際には、その切り換え操作だけでなく、ポンプ斜板16Aの減速操作が同時に行われることで、モータ斜板17Aの低速位置から高速位置への切り換え操作に伴って発生する可変容量モータ17での容量変化が、ポンプ斜板16Aの減速操作に伴って発生する可変容量ポンプ16での容量変化によって相殺されることになる。
【0139】
その結果、モータ斜板17Aの高低切り換え操作によって発生する変速ショックを緩和することができる。
【0140】
尚、図示は省略するが、切換バルブ56に換えて高速応答バルブを採用し、モータ斜板制御手段31Fが、モータ斜板17Aの切り換え操作を行う場合には、モータ斜板17Aの操作速度が低下するように高速応答バルブをデューティ制御することで、モータ斜板17Aを切り換える際に発生する可変容量モータ17での容量変化を緩慢にして、可変容量モータ17での容量変化に起因した変速ショックを緩和するようにしてもよい。
【0141】
ちなみに、モータ斜板制御手段31Fを、モータ斜板17Aを高速位置に切り換えた走行状態においては、ブレーキセンサ49の検出に基づいて、制動装置の制動作動に連動して高低切換制御を行うように構成して、制動性の向上を図るようにしてもよい。
【0142】
又、モータ斜板制御手段31Fを、モータ斜板17Aを高速位置に切り換えた走行状態において、ペダルセンサ29の検出と斜板センサ30の検出とに基づいて、変速ペダル24の減速操作にかかわらず、前進減速バネ32又は後進減速バネ33によるポンプ斜板16Aの減速操作が行われていないことを検知した場合に、高低切換制御を行うように構成してもよい。
【0143】
このように構成すれば、トレーラ作業時の慣性などで、変速ペダル24の減速操作にかかわらずポンプ斜板16Aが減速操作されない場合には、高低切換制御による減速操作が行われることになる。
【0144】
更に、モータ斜板制御手段31Fを、モータ斜板17Aを高速位置に切り換えた状態において、操作速度検出手段46の検出に基づいて、変速ペダル24の操作速度が予め設定した操作速度よりも速いことを検知した場合に、高低切換制御を行うように構成して、急発進や急加速を防止するようにしてもよい。
【0145】
図1に示すように、切換レバー59は、その操作端がステアリングホイール6の左部近傍に位置するように延設されている。
【0146】
これによって、ステアリングホイール6から手を離すことなく、モータ斜板17Aの高低切り換え操作を行える。
【0147】
又、トラクタにフロントローダA(図6参照)を連結装備した場合には、ステアリングホイール6の右側に配備されるフロントローダ操作用の操作レバー(図示せず)から手を離すことなく、モータ斜板17Aの高低切り換え操作を行える。
【0148】
図6に示すように、制御装置31には、ペダルセンサ29の検出と、自動ポンプ斜板制御手段31Dの演算プログラムで算出されるエンジンドロップ量に基づいて、モータ斜板17Aの高低切り換え操作を行う自動モータ斜板制御手段31Gが制御プログラムとして備えられている。
【0149】
図4〜6に示すように、自動モータ斜板制御手段31Gは、ペダルセンサ29の検出に基づいて、変速ペダル24の操作位置が予め設定した操作位置又は操作領域まで操作されたことを検知している状態で、自動ポンプ斜板制御手段31Dの演算プログラムで算出されるエンジンドロップ量に基づいて、エンジン回転数が、そのときの変速ペダル24の操作位置に対応して予め設定した高低切り換え用の回転数以下まで低下したことを検知すると、その検知に伴って、モータ斜板17Aを高速位置から低速位置に切り換える自動高低変速制御を行うとともに、対応する表示灯61を点灯させる。
【0150】
又、エンジンドロップ量に基づいて、エンジン回転数が予め設定した低高切り換え用の回転数以上まで上昇したことを検知している状態で、ペダルセンサ29の検出に基づいて、予め設定された操作位置又は操作領域への変速ペダル24の操作を検知すると、その検知に伴って、モータ斜板17Aを低速位置から高速位置に切り換え操作する自動低高切換制御を行うとともに、対応する表示灯62を点灯させる。
【0151】
具体的には、例えば、最大踏み込み位置を100%とするペダル24の操作位置が50%以下の操作位置である場合には、設定回転数を100%とするエンジン回転数が85%以下の回転数まで低下するのに伴って、又、最大踏み込み位置を100%とするペダル24の操作位置が90%以上の操作位置である場合には、設定回転数を100%とするエンジン回転数が70%以下の回転数まで低下するのに伴って、自動高低切換制御を行う。
【0152】
又、設定回転数を100%とするエンジン回転数が90%以上の回転数まで上昇した場合には、最大踏み込み位置を100%とするペダル24の操作位置が80%以上の操作位置まで踏み込み操作されるのに伴って、自動低高切換制御を行う。
【0153】
つまり、変速ペダル24の踏み込み操作量が大きいときに、エンジンドロップ量が大きい場合は当然のことながら、変速ペダル24の踏み込み操作量が小さいときに、ある程度のエンジンドロップが発生する場合には、このときの状態が、変速ペダル24の踏み込み量を大きくすると、エンジンドロップ量も大きくなる重負荷状態であると推測できることから、エンジンドロップ量が小さくても、自動高低切換制御を行って駆動力を確保するようにしているのである。
【0154】
又、エンジン回転数が予め設定した設定回転数の近くまで回復した状態では、運転者が更に加速したいという意志が現れた場合に、自動低高切換制御を行って車速を上げるようにしてある。
【0155】
その結果、運転者が作業負荷などを考慮した変速操作を行わなくても、高い駆動力を要する重負荷作業を、過負荷によるエンジンストールを防止しながら継続することができる。又、負荷の軽減に伴って運転者が変速ペダル24の踏み込み量を減少させて減速させようとしているにもかかわらず、自動低高切換制御が行われて不測に加速される、といった不都合の発生を防止することができる。
【0156】
尚、高低切り換え用の回転数は、自動モータ斜板制御手段31Gによる自動高低変速制御が、エンジン回転数がエンジンストール性能ラインLに到達して安定する前の段階で必ず行われるように、エンジンストール性能ラインLよりも高い回転数に設定されている。
【0157】
ところで、自動モータ斜板制御手段31Gの自動高低切換制御において、その切り換え操作が行われる段階は、走行負荷によって車速が十分に低下していて変速ショックが小さいと想定される。
【0158】
そこで、自動モータ斜板制御手段31Gの自動高低切換制御においては、モータ斜板制御手段31Fの高低切換制御のような変速ショックを緩和するための制御は行わずに、予め設定された操作速度でモータ斜板17Aが高速位置から低速位置に切り換え操作されるように、前進用比例バルブ36又は後進用比例バルブ37の作動を制御し、モータ斜板17Aを低速位置に切り換えた後、その状態を所定時間(例えば2秒間)維持するようにしてある。
【0159】
一方、自動モータ斜板制御手段31Gの自動低高切換制御においては、モータ斜板制御手段31Fの低高切換制御と同様の制御作動を行って、モータ斜板17Aの低高切り換え操作によって発生する変速ショックを緩和し、モータ斜板17Aを高速位置に切り換えた後、その状態を所定時間(例えば2秒間)維持するようにしてある。
【0160】
ちなみに、自動モータ斜板制御手段31Gを、変速ペダル24の操作位置にかかわらず、自動ポンプ斜板制御手段31Dの演算プログラムで算出されるエンジンドロップ量に基づいて、エンジン回転数が、予め設定した高低切り換え用の回転数以下まで低下したことを検知した場合に、その検知に伴って、自動高低切換制御を行うとともに対応する表示灯61を点灯させるように構成してもよい。
【0161】
又、変速ペダル24の操作位置にかかわらず、自動ポンプ斜板制御手段31Dの演算プログラムで算出されるエンジンドロップ量に基づいて、エンジン回転数が予め設定した設定回転数近くの低高切換回転数又は低高切換回転数領域まで上昇したことを検知した場合に、その検知に伴って、モータ斜板17Aを低速位置から高速位置に切り換え操作する自動低高切換制御を行うとともに、対応する表示灯62を点灯させるように構成してもよい。
【0162】
制御装置31には、表示パネル63に備えた常開スイッチからなるモード設定器64の操作に基づいて実行する制御モードを切り換えるモード切換手段31Hが制御プログラムとして備えられている。
【0163】
モード切換手段31Hは、モード設定器64の押圧操作に伴ってオン信号が入力されるごとに、実行する制御モードを、手動制御モードと半自動制御モードと自動制御モードとに切り換えるとともに、各制御モードに対応する表示灯65〜67を点灯させる。
【0164】
そして、手動制御モードでは、ポンプ斜板制御手段31Aの制御作動を利用した車速制御と、モータ斜板制御手段31Fの制御作動を利用した切換制御とを行う。
【0165】
半自動制御モードでは、ポンプ斜板制御手段31Aの制御作動を利用した車速制御と、自動ポンプ斜板制御手段31Dの制御作動を利用した負荷制御と、モータ斜板制御手段31Fの制御作動を利用した切換制御とを、車速制御に対して負荷制御が優先されるように行う。
【0166】
自動制御モードでは、ポンプ斜板制御手段31Aの制御作動を利用した車速制御と、自動ポンプ斜板制御手段31Dの制御作動を利用した負荷制御と、自動モータ斜板制御手段31Gの制御作動を利用した自動切換制御とを、車速制御に対して負荷制御が優先され、かつ、負荷制御と自動切換制御とが適切に連動するように連係させた状態で行う。
【0167】
つまり、手動制御モードを選択した場合には、ポンプ斜板16Aが、変速ペダル24の操作位置などに基づいて、変速ペダル24の操作位置に対応する目標操作位置に目標操作速度で到達するように操作され、かつ、モータ斜板17Aが、切換レバー59の操作に基づいて、高低2位置に切り換え操作されることになる。
【0168】
又、半自動制御モードを選択した場合には、ポンプ斜板16Aが、変速ペダル24の操作位置などに基づいて、変速ペダル24の操作位置に対応する目標操作位置に目標操作速度で到達するように操作される一方で、エンジンドロップが発生した場合には、エンジンドロップ量などに基づいて、エンジンドロップ量に対応する限界操作位置に目標操作速度で到達するように操作され、かつ、モータ斜板17Aが、切換レバー59の操作に基づいて、高低2位置に切り換え操作されることになる。
【0169】
そして、自動制御モードを選択した場合には、ポンプ斜板16Aが、変速ペダル24の操作位置などに基づいて、変速ペダル24の操作位置に対応する目標操作位置に目標操作速度で到達するように操作される一方で、エンジンドロップが発生した場合には、エンジンドロップ量などに基づいて、エンジンドロップ量に対応する限界操作位置に目標操作速度で到達するように操作され、かつ、モータ斜板17Aが、変速ペダル24の操作位置やエンジンドロップ量などに基づいて、適切なタイミングで高低2位置に切り換え操作されることになる。
【0170】
これによって、例えば、移動走行や軽負荷作業を行う場合などにおいては手動制御モードを選択し、中負荷作業や勾配の比較的きつい場所で登坂走行を行う場合などにおいては半自動制御モードを選択し、重負荷作業や勾配のきつい場所で登坂走行を行う場合などにおいては自動制御モードを選択するようにすれば、運転者に与える負担の軽減を図りながら、それぞれの走行や作業を良好に行うことができる。
【0171】
ちなみに、自動制御モードでは、半自動制御モードの場合よりも、自動ポンプ斜板制御手段31Dによる負荷制御での制御感度が、エンジンドロップの発生し易い鈍感に設定されている。
【0172】
その結果、自動制御モードにおいては、自動モータ斜板制御手段31Gによる自動高低切換制御が行われ易くなっている。
【0173】
又、自動制御モードを選択した状態において、切換レバー59の操作に基づくモータ斜板17Aの低速位置への切り換え操作が行われた場合には、自動モータ斜板制御手段31Gによる自動高低切換制御が行えなくなることから、制御モードが、自動制御モードから半自動制御モードに自動的に切り換わるようになっている。
【0174】
図6に示すように、操作パネル63には、表示切換スイッチ68の操作に基づいて、車速表示状態や残留燃料表示状態などに表示状態が切り換えられる液晶表示器69が装備されている。
【0175】
図12に示すように、液晶表示器69は、表示切換スイッチ68の操作によってポンプ斜板位置表示モードが選択されると、時々刻々と変化するポンプ斜板16Aの目標操作位置69A又は限界操作位置69Bと現在位置69Cとを表示するように構成されている。
【0176】
つまり、ポンプ斜板位置表示モードを選択することで、ポンプ斜板16Aの動きを容易に確認することができ、メンテナンス性の向上を図れるようになる。
【0177】
ちなみに、図12の(イ)は、ポンプ斜板16Aに対する増速用の目標操作位置69Aが設定された状態を示すものであり、図12の(ロ)は、ポンプ斜板16Aが増速用の目標操作位置69Aに向けて操作されている状態を示すものである。又、図12の(ハ)は、ポンプ斜板16Aの減速用の目標操作位置69A又は限界操作位置69Bが設定された状態を示すものである。
【0178】
データ変更手段31Cは、フロントローダAなどの作業装置を昇降操作可能に連結装備した作業状態において、その作業装置の高さ位置を検出するポテンショメータからなる高さセンサ70を装備した場合には、高さセンサ70の検出に基づいて、作業装置が予め設定した高さ以上の高さ位置(例えば車高を越える高さ位置)まで上昇操作されるのに伴って、ポンプ斜板制御手段31Aが使用する変速ペダル24の操作位置とポンプ斜板16Aの操作位置との相関関係を示すマップデータを、ポンプ斜板制御手段31Aに記憶装備されている作業装置上昇時用のマップデータに変更するように構成されている。
【0179】
作業装置上昇時用のマップデータは、通常使用するマップデータに比較して、変速ペダル24の操作位置に対するポンプ斜板16Aの操作位置が低速側に設定されたものである(図7参照)。
【0180】
そして、このマップデータをポンプ斜板制御手段31Aが使用することで、車速が低速側に制限されることになり、作業装置を設定高さ以上に上昇させた不安定状態での高速走行が阻止されることになる。
【0181】
図4及び図5に示すように、サーボコントロール機構25は、サーボバルブ27とレギュレータバルブ28と斜板センサ30とが、油温センサ43とともに、ミッションケース4における第2ケーシング部4Bの右側部に着脱可能にボルト連結されるケーシング71に内装されて、電子式操作機構72として1ブロックにユニット化されている。
【0182】
図13及び図14には、変速ペダル24にメカ式の連係機構(図示せず)を介して操作連係される操作軸73や、ポンプ用シリンダ26に対する作動油の流動を制御するスプールからなるサーボバルブ74などを、ミッションケース4における第2ケーシング部4Bの右側部に着脱可能にボルト連結されるケーシング75に装備して、1ブロックにユニット化したメカ式操作機構76が示されている。
【0183】
つまり、電子式操作機構72をメカ式操作機構76と付け替えることで、電子式からメカ式に簡単に仕様変更できるようになっている。
【0184】
尚、図4及び図13に示す符号77は、電子式のサーボコントロール機構25においては、ポンプ用シリンダ26と斜板センサ30とにわたって架設されたフィードバックアームとして使用され、メカ式のサーボコントロール機構78においては、サーボバルブ74の操作が可能となるようにポンプ用シリンダ26と操作軸73とにわたって架設された操作・フィードバック兼用アームとして使用される連係アームである。
【0185】
又、図5及び図14に示す符号79,80は、第2ケーシング部4Bの右側部に電子式操作機構72をボルト連結した際に、第2ケーシング部4Bのケーシング71との接合面に形成された各連通口81,82に対応して接続されるように、ケーシング71の第2ケーシング部4Bとの接合面に形成された連通口である。
【0186】
図4及び図5に示すように、切換機構54は、切換バルブ56と制御バルブ57と高圧選択バルブ58とが、ミッションケース4における第2ケーシング部4Bの左側部に着脱可能にボルト連結されるケーシング83に内装されて、操作機構84として1ブロックにユニット化されている。
【0187】
この操作機構84を、図13、図15及び図16に示すように、プレート85に付け替えて、第2ケーシング部4Bの操作機構84との接合面に形成された各連通口86〜91を閉塞し、かつ、第2ケーシング部4B内の可変容量モータ17を固定容量モータ92に付け替えるとともに、モータ用シリンダ55を取り外すことで、可変モータ仕様から固定モータ仕様に比較的簡単に仕様変更することができる。
【0188】
尚、図5に示す符号93〜98は、第2ケーシング部4Bの左側部に切換機構54をボルト連結した際に、第2ケーシング部4Bの各連通口86〜91に対応して接続されるように、ケーシング83の第2ケーシング部4Bとの接合面に形成された連通口である。
【0189】
そして、上記の構成から、可変モータ仕様に電子式のサーボコントロール機構25を備えたもの(図5参照)と、可変モータ仕様にメカ式のサーボコントロール機構78を備えたもの(図14参照)と、固定モータ仕様に電子式のサーボコントロール機構25を備えたもの(図15参照)と、固定モータ仕様にメカ式のサーボコントロール機構78を備えたもの(図16参照)とに、簡単に仕様変更することができるとともに、部品の共通化によるコストの削減や部品管理の容易化などを図ることができる。
【0190】
図6に示すように、変速ペダル24の操作領域の両端側の領域を高速領域に設定し、それらの間を低速領域に設定し、モータ斜板制御手段31Fが、ペダルセンサ29の検出に基づいて、変速ペダル24が低速領域に操作された場合には、モータ斜板17Aが低速位置に切り換わり、変速ペダル24が高速領域に操作された場合には、モータ斜板17Aが高速位置に位置するように、制御バルブ57の作動を制御するように構成して、変速ペダル24を、可変容量モータ17の高低2位置切換用の操作具に兼用するようにしてもよい。
【0191】
又、変速ペダル24の操作領域の両端側の領域を高速領域に設定し、モータ斜板制御手段31Fが、ペダルセンサ29の検出に基づいて、変速ペダル24が高速領域に操作された場合に、モータ斜板17Aが高速位置に切り換わるように、制御バルブ57の作動を制御するように構成して、変速ペダル24を、可変容量モータ17の低高切換用の操作具に兼用するようにしてもよい。
【0192】
このように変速ペダル24を可変容量モータ17の切換用操作具に兼用する場合には、変速ペダル24の操作領域の境界を把握させるためのデテント機構(図示せず)を設けるようにしてもよい。
【0193】
〔別実施形態〕
【0194】
〔1〕作業車としては乗用型田植機や乗用型草刈機あるいはホイールローダなどであってもよい。
【0195】
〔2〕無段変速装置10としてはベルト式のものなどであってもよい。
【0196】
〔3〕有段変速装置11の代わりに遊星歯車変速装置を採用してもよい。
【0197】
〔4〕制御手段31としては、自動モータ斜板制御手段31Gを備えないものであってもよく、又、モータ斜板制御手段31Fと自動モータ斜板制御手段31Gとを備えないものであってもよい。
【0198】
〔5〕制御手段31に備える相関関係データとして、種々の条件に対応した複数の相関関係式を備えるようにしてもよく、又、相関関係式に種々の条件に対応した係数を与えるようにしてもよい。
【0199】
〔6〕図17に示すように、制御手段31における自動ポンプ斜板制御手段31Dの各相関関係データとしては、予め設定したエンジンドロップ量の小さい高回転領域haでは、エンジン回転数が低下するほど、ポンプ斜板16Aの限界操作位置が中立位置に近づくように、又、その高回転領域haよりもエンジンドロップ量の大きい低回転領域hbでは、ポンプ斜板16Aの限界操作位置が高回転領域haでの最小操作位置に維持されるように、エンジン回転数とポンプ斜板16Aの操作位置とを対応させたものであってもよい。
【0200】
このような相関関係データを採用すると、高回転領域haにおいてエンジン回転数が低下している間は、ポンプ斜板16Aを減速方向に大きく戻してエンジン回転数の低下速度を低下させる、といったエンジンストールの防止を優先しながら駆動トルクを増加させる負荷制御が行われることになり、よって、エンジン1にねばりを持たせることができる。
【0201】
又、この負荷制御にかかわらずエンジン回転数が低回転領域hbまで低下すると、ポンプ斜板16Aが高回転領域haでの最小操作位置に維持されることで、エンジン回転数がエンジンストール性能ラインLに沿って低下することになり、よって、エンジンストールを確実に発生させることが可能になる。
【0202】
〔7〕操作手段55として電動シリンダや電動モータ又は油圧モータなどを採用してもよい。
【0203】
〔8〕変速操作具24としては変速レバーなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】トラクタの伝動構造を示す概略図
【図3】トラクタの伝動構造を示す要部の縦断側面図
【図4】トラクタの伝動構造を示す要部の横断平面図
【図5】油圧回路図
【図6】制御構造を示すブロック図
【図7】変速ペダルの操作位置とポンプ斜板の操作位置との相関関係を示す図
【図8】ポンプ斜板の偏差と目標操作速度との相関関係を示す図
【図9】静油圧式無段変速装置を搭載した作業車のエンジンストール性能を示す図
【図10】ポンプ斜板の操作位置とエンジン回転数との相関関係を示す図
【図11】モータ斜板切り換え操作時のポンプ斜板の動作を示す図
【図12】液晶パネルでのポンプ斜板位置の表示状態を示す図
【図13】メカ式のサーボコントロール機構の構成を示す要部の横断平面図
【図14】メカ式のサーボコントロール機構と切換機構とを装備した状態を示す油圧回路図
【図15】電子式のサーボコントロール機構のみを装備した状態を示す油圧回路図
【図16】メカ式のサーボコントロール機構のみを装備した状態を示す油圧回路図
【図17】別実施形態でのポンプ斜板の操作位置とエンジン回転数との相関関係を示す図
【符号の説明】
【0205】
1 エンジン
10 無段変速装置
11 有段変速装置
26 操作手段
30 変速位置検出手段
31 制御手段
31E 操作速度設定手段
45 変速段検出手段(指令手段)
47 回転数検出手段
52 設定回転数検出手段(指令手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの設定回転数を検出する設定回転数検出手段と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、無段変速装置の変速操作位置を検出する変速位置検出手段と、前記無段変速装置を変速操作する操作手段と、この操作手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出と前記回転数検出手段の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量を算出し、その算出した低下量と、予め備えたエンジン回転数と前記無段変速装置の変速操作位置との相関関係データとに基づいて、前記無段変速装置の限界操作位置を設定し、その設定した限界操作位置と前記変速位置検出手段の検出とに基づいて、前記無段変速装置の変速操作位置が前記限界操作位置に位置するように、前記操作手段の作動を制御するように構成し、
前記制御手段に、前記相関関係データの変更を指令する指令手段を設けてある作業車の負荷制御構造。
【請求項2】
前記指令手段を前記設定回転数検出手段で構成し、前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出に基づいて、前記エンジンの設定回転数が小さいほど、エンジン回転数の変化量に対する前記無段変速装置の変速操作量が大きくなるように、前記相関関係データを変更するように構成してある請求項1に記載の作業車の負荷制御構造。
【請求項3】
エンジンの設定回転数を検出する設定回転数検出手段と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、無段変速装置の変速操作位置を検出する変速位置検出手段と、前記無段変速装置を変速操作する操作手段と、この操作手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出と前記回転数検出手段の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量を算出し、その算出した低下量と、予め備えたエンジン回転数と前記無段変速装置の変速操作位置との相関関係データとに基づいて、前記無段変速装置の限界操作位置を設定し、その設定した限界操作位置と前記変速位置検出手段の検出とに基づいて、前記無段変速装置の変速操作位置が前記限界操作位置に位置するように、前記操作手段の作動を制御するように構成し、
前記無段変速装置の変速操作速度を設定する操作速度設定手段を備え、
前記制御手段が、前記操作速度設定手段の設定に基づいて、その設定速度で前記無段変速装置が変速操作されるように、前記操作手段の作動を制御するように構成してある作業車の負荷制御構造。
【請求項4】
前記操作速度設定手段が、前記回転数検出手段の検出に基づいて、エンジン回転数の変化速度を算出し、その算出した変化速度が大きいほど前記無段変速装置の変速操作速度を速い速度設定するように構成してある請求項3に記載の作業車の負荷制御構造。
【請求項5】
有段変速装置と、この有段変速装置の変速段を検出する変速段検出手段とを備え、前記操作速度設定手段が、前記変速段検出手段の検出に基づいて、前記変速段が低速側であるほど、前記無段変速装置を前記限界操作位置に向けて操作する際の操作速度が速くなるように、前記操作手段の作動を制御するように構成してある請求項3又は4に記載の作業車の負荷制御構造。
【請求項6】
前記制御手段が設定する前記無段変速装置の限界操作位置が中立位置に設定されないように構成してある請求項1〜5のいずれか一つに記載の作業車の負荷制御構造。
【請求項1】
エンジンの設定回転数を検出する設定回転数検出手段と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、無段変速装置の変速操作位置を検出する変速位置検出手段と、前記無段変速装置を変速操作する操作手段と、この操作手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出と前記回転数検出手段の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量を算出し、その算出した低下量と、予め備えたエンジン回転数と前記無段変速装置の変速操作位置との相関関係データとに基づいて、前記無段変速装置の限界操作位置を設定し、その設定した限界操作位置と前記変速位置検出手段の検出とに基づいて、前記無段変速装置の変速操作位置が前記限界操作位置に位置するように、前記操作手段の作動を制御するように構成し、
前記制御手段に、前記相関関係データの変更を指令する指令手段を設けてある作業車の負荷制御構造。
【請求項2】
前記指令手段を前記設定回転数検出手段で構成し、前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出に基づいて、前記エンジンの設定回転数が小さいほど、エンジン回転数の変化量に対する前記無段変速装置の変速操作量が大きくなるように、前記相関関係データを変更するように構成してある請求項1に記載の作業車の負荷制御構造。
【請求項3】
エンジンの設定回転数を検出する設定回転数検出手段と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、無段変速装置の変速操作位置を検出する変速位置検出手段と、前記無段変速装置を変速操作する操作手段と、この操作手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段が、前記設定回転数検出手段の検出と前記回転数検出手段の検出とに基づいて、エンジン回転数の設定回転数からの低下量を算出し、その算出した低下量と、予め備えたエンジン回転数と前記無段変速装置の変速操作位置との相関関係データとに基づいて、前記無段変速装置の限界操作位置を設定し、その設定した限界操作位置と前記変速位置検出手段の検出とに基づいて、前記無段変速装置の変速操作位置が前記限界操作位置に位置するように、前記操作手段の作動を制御するように構成し、
前記無段変速装置の変速操作速度を設定する操作速度設定手段を備え、
前記制御手段が、前記操作速度設定手段の設定に基づいて、その設定速度で前記無段変速装置が変速操作されるように、前記操作手段の作動を制御するように構成してある作業車の負荷制御構造。
【請求項4】
前記操作速度設定手段が、前記回転数検出手段の検出に基づいて、エンジン回転数の変化速度を算出し、その算出した変化速度が大きいほど前記無段変速装置の変速操作速度を速い速度設定するように構成してある請求項3に記載の作業車の負荷制御構造。
【請求項5】
有段変速装置と、この有段変速装置の変速段を検出する変速段検出手段とを備え、前記操作速度設定手段が、前記変速段検出手段の検出に基づいて、前記変速段が低速側であるほど、前記無段変速装置を前記限界操作位置に向けて操作する際の操作速度が速くなるように、前記操作手段の作動を制御するように構成してある請求項3又は4に記載の作業車の負荷制御構造。
【請求項6】
前記制御手段が設定する前記無段変速装置の限界操作位置が中立位置に設定されないように構成してある請求項1〜5のいずれか一つに記載の作業車の負荷制御構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−120753(P2007−120753A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220425(P2006−220425)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]