説明

作業車の走行制御装置

【課題】走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができ、しかも、そのことを的確に行うことができる作業車の走行制御装置を提供する。
【解決手段】走行用の静油圧式無段変速装置7の可変容量型の油圧モータ7Mにおける容量変更用の操作部7Maが低速側に移動するのを高速側に移動操作する操作力にて保持する保持手段56と、保持手段56の操作力を変更調整する操作力調整手段58と、操作部7Maを設定目標位置に維持させるように操作力調整手段に指令する指令値を変更調整する制御手段79とが設けられ、制御手段79が、操作部7Maを設定上限値を超えて指令値を増加させない形態で、操作力調整手段58に指令する指令値を変更調整し、且つ、基準走行状態であることを判別すると、操作部7Maを設定目標位置に維持させるときの指令値に基づいて設定上限値を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの動力が伝達される走行用の静油圧式無段変速装置を備えた作業車の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用の静油圧式無段変速装置を備えた作業車の走行制御装置の従来例として、静油圧式無段変速装置の可変容量型の油圧ポンプが、変速レバーにより変速操作されるように構成され、さらに、変速レバーを操作する電動モータ、エンジンの回転数を検出する回転数検出センサー、電動モータの作動を制御する制御装置が備えられ、制御装置が、エンジンの回転数の低下により、エンジン負荷が増大したと判別すると、電動モータにより変速レバーを低速側に操作するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
ちなみに、この特許文献1は、エンジンが、作業車としてのコンバインに搭載されて、そのエンジンの動力が、刈取処理部及び脱穀装置に伝達されており、エンジンの回転数は、走行負荷、及び、刈取処理部の負荷や脱穀装置の負荷の増減に応じて変化することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−159487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の作業車の走行制御装置は、エンジン負荷が増大すると、走行速度を低下させて、エンジン負荷を軽減させるものであるが、次のような不都合があった。
即ち、静油圧式無段変速装置の可変容量型の油圧ポンプを低速側に操作することは、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプの吐出量を少なくすることなので、機体の走行速度が低速になると同時に、走行用の駆動力(トルク)も小さくなる。これにより、走行抵抗の大きな軟弱な作業地において、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作すると、走行用の駆動力(トルク)が不足する状態になることが考えられる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができ、しかも、そのことを的確に行うことができる作業車の走行制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジンの動力が伝達される走行用の静油圧式無段変速装置を備えた作業車の走行制御装置であって、その第1特徴構成は、
前記静油圧式無段変速装置の可変容量型の油圧モータにおける容量変更用の操作部が低速側に移動するのを高速側に移動操作する操作力にて保持する保持手段と、
大小に変化する指令値が大であるほど前記保持手段の操作力を大きくする形態で前記保持手段の操作力を変更調整する操作力調整手段と、
前記操作部の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出情報に基づいて、前記操作部を設定目標位置に維持させるように、前記操作力調整手段に指令する指令値を変更調整する制御手段とが設けられ、
前記制御手段が、
前記操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、設定上限値を超えて前記指令値を増加させない形態で、前記操作力調整手段に指令する前記指令値を変更調整するように構成され、且つ、
基準走行状態であることを判別すると、前記操作部を前記設定目標位置に維持させるときの前記指令値に基づいて前記設定上限値を補正するように構成されている点にある。
【0007】
すなわち、静油圧式無段変速装置における可変容量型の油圧モータにおける容量変更用の操作部が、走行負荷により、設定目標位置から低速側に移動しようとするが、保持手段が、操作部が設定目標位置から低速側に移動するのを高速側に移動操作する操作力にて保持することになる。
そして、制御手段が、操作部の位置を検出する位置検出手段の検出情報に基づいて、操作部を設定目標位置に維持させるように、前記操作力調整手段に指令する指令値を変更調整することにより、走行負荷が増減しても、操作部が設定目標位置に維持されることになる。
さらに、制御手段が、操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、設定上限値を超えて前記指令値を増加させない形態で、操作力調整手段に指令する指令値を変更調整する処理を実行することになるため、走行負荷が増加して、指令値を設定上限値にまで増加させた状態において、さらに走行負荷が増加すると、操作部が低速側に移動して、可変容量型の油圧モータの回転速度が、操作部を設定目標位置に位置させるときの回転速度よりも低速側に操作されることになる。
【0008】
静油圧式無段変速装置の油圧モータの回転速度を、操作部を設定目標位置に位置させるときの回転速度よりも低速側に操作することは、静油圧式無段変速装置における可変容量型の油圧モータの容量を小さなものにすることなので、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプから油圧モータに作動油が十分に供給されても、静油圧式無段変速装置の油圧モータはあまり回転しなくてもよいことになる。これにより、静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作された場合、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプの吐出量が確保されていれば、静油圧式無段変速装置の油圧モータから伝動下手側に、十分な走行用の駆動力(トルク)を備えた低速の動力が伝達されることになる。
【0009】
このように走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作され、これによって、十分な走行用の駆動力(トルク)を備えた低速の動力が走行装置に伝達されることになるので、走行抵抗の大きな軟弱な作業地であっても、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができる。
【0010】
しかも、走行負荷が増大したときに、静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作することを、制御手段が、操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、設定上限値を超えて操作力調整手段に指令する指令値を増加させない形態で、操作力調整手段に指令する指令値を変更調整するものであるから、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることを、的確に行うことができるものとなる。
つまり、走行負荷が増大したときに、静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作する構成としては、例えば、油圧モータの駆動トルクを検出するトルク検出手段の検出情報に基づいて、操作部を低速側に操作するアクチュエータを作動させるようにする構成することが考えられるが、駆動トルクを検出してアクチュエータを作動させるには、応答遅れが生じるものとなる。
これに対して、本第1特徴構成によれば、制御手段が、操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、設定上限値を超えて指令値を増加させない形態で、操作力調整手段に指令する指令値を変更調整することにより、走行負荷が増加したときに、特別な操作を行うことなしに、可変容量型の油圧モータの回転速度を低速側にするものであるから、応答遅れを生じることなく、走行負荷が増大したときに、静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作することを的確に行えるものとなる。
【0011】
ところで、前記保持手段としては、例えば、操作力が供給される油圧の圧力にて変更される油圧シリンダが用いられる場合があり、前記操作力調整手段としては、油圧シリンダに供給する油圧の圧力を変更調整する電磁比例弁が用いられる場合があるが、このような電磁比例弁は、前記指令値として供給される電流値が大小に変化する状態で変更調整されることにより、油圧シリンダに供給する油圧の圧力を変更させるものである。そして、電磁比例弁に供給される電流値が大であるほど油圧シリンダに供給する油圧の圧力すなわち、保持力が大きくなるように構成されることになる。
【0012】
しかしながら、電磁比例弁のように大小に変化する指令値が大であるほど保持手段の操作力を大きくする形態で保持手段の操作力を変更調整するように構成されている操作力調整手段は、前記指令値と保持手段の操作力との相関を示す特性には、個体差に起因してバラツキが存在することになる(例えば、図13の複数の特性線L1,L2,L3参照)。このように、前記指令値と保持手段の操作力との相関を示す特性にバラツキがあるにもかかわらず、設定上限値を予め定めた値に設定しておくと、例えば設定上限値が適正な値よりも大きな値になることがある。そうすると、走行負荷が増加して指令値を設定上限値にまで増加させた状態において、走行負荷が大きくなり過ぎてエンジンの負荷が過大になる等の不利があり、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることを、的確に行うことができなくなるおそれがある。
【0013】
そこで、本第1特徴構成では、制御手段が、基準走行状態であることを判別すると、操作部を設定目標位置に維持させるときの指令値に基づいて設定上限値を補正するように構成されているから、前記指令値と保持手段の操作力との相関を示す特性の個体差に対応させて、前記設定上限値を適正な値に補正することが可能となるのである。
【0014】
説明を加えると、前記基準走行状態は走行負荷が予め想定できる走行状態であり、このような基準走行状態であるときに、操作部を設定目標位置に維持させるように操作力調整手段に指令する指令値は、操作力調整手段の上記したような個体差に起因する特性の指令値のバラツキの大きさに相当する量だけ異なる値になるものである。そこで、例えば、前記指令値と予め初期設定されている指令値との差の情報を用いて特性のバラツキを相殺する状態で設定上限値を補正することが可能となるのであり、上記したような特性のバラツキにかかわらず、設定上限値を適正な値に補正することができ、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることを、的確に行うことが可能となるのである。
【0015】
尚、上記したような構成に代えて、保持手段の操作圧を検出する圧力検出手段を設けて、その圧力検出手段の検出情報に基づいて、検出される圧力が設定上限値に対応する圧力を超えないように、操作力調整手段に指令する指令値を変更調整することも考えられるが、このようにすると、高価な圧力センサが必要となり、コスト高を招く不利があるが、上記構成によれば、このような不利がなく、簡素な構成で低コストにて対応できるものとなる。
【0016】
したがって、本発明の第1特徴構成によれば、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができ、しかも、そのことを的確に行うことができる作業車の走行制御装置を提供できる。
【0017】
本発明の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記設定目標位置として、異なる位置となる複数の設定目標位置が定められ、
前記複数の設定目標位置のいずれかを選択する選択手段が設けられ、
前記制御手段が、前記複数の設定目標位置のうちで、前記選択手段にて選択された設定目標位置に前記操作部を維持させるように、前記操作力調整手段に指令する指令値を変更調整するように構成されている点にある。
【0018】
すなわち、制御手段が、複数の設定目標位置のうち、選択手段にて選択された設定目標位置に操作部を維持させるように前記操作力調整手段に指令する指令値を変更調整することになる。
そして、操作部を異なる複数の設定目標位置に維持させることによって、油圧モータの回転速度を高低に変更することができるものであるから、地面の硬軟等の走行条件によって、走行速度を変更することができ、しかも、低速側の設定目標位置を選択すれば、大きな走行用の駆動力(トルク)を得ることができるものとなる。
【0019】
したがって、第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、地面の硬軟等の走行条件に応じた走行速度を選択できる作業車の走行制御装置を提供できる。
【0020】
本発明の第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、前記設定上限値が、前記複数の設定目標位置の夫々に対して、低速側の設定目標位置ほど低くする状態で定められている点にある。
【0021】
すなわち、複数の設定目標位置の夫々に対する設定上限値が、低速側の設定目標位置ほど低くする状態で定められているから、低速側の設定目標位置が設定されたときにも、高速側の設定目標位置が設定されたときにも、走行負荷の増加に応じて油圧モータの回転速度が低速側に操作することを適確に行えるものとなり、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることを的確に行えるものとなる。
【0022】
つまり、複数の設定目標位置のうちの低速側の設定目標位置を設定するときとは、地面が軟弱である等により、大きな走行用の駆動力(トルク)を必要とするときであるため、油圧モータを低速で回転させるにしても、エンジンに大きな負荷を掛ける状態が生じ易いものであるが、複数の設定目標位置の夫々に対する設定上限値が、低速側の設定目標位置ほど低くする状態で定められているから、油圧モータの駆動のためにエンジンに大きな負荷が掛かることを極力回避できるものとなる。
【0023】
従って、第3特徴構成によれば、上記第2特徴構成による作用効果に加えて、地面が軟弱である等により、大きな走行用の駆動力(トルク)を必要とするときにも、油圧モータの駆動のためにエンジンに大きな負荷が掛かることを極力回避できる作業車の走行制御装置を提供できる。
【0024】
本発明の第4特徴構成は、上記第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、
前記保持手段が、操作力が供給される油圧の圧力にて変更される油圧シリンダであり、
前記操作力調整手段が、前記指令値としての通電される電流値が大であるほど、前記保持手段の操作力を大きくする形態で前記油圧シリンダに供給する油圧の圧力を変更調整する電磁比例弁であり、
前記制御手段が、前記設定上限値に対応する設定上限電流値を超えて増加させない形態で前記電磁比例弁に通電する電流値を変更調整するように構成されている点にある。
【0025】
すなわち、保持手段として油圧シリンダを用い、操作力調整手段として電磁比例弁を用い、そして、制御手段が、保持手段の操作力に対応する電磁比例弁に通電する電流値を設定上限値に対応する設定上限電流値に超えて増加させない形態で電磁比例弁に通電する電流値を制御することにより、走行負荷が増減しても、操作部を設定目標位置に維持し、かつ、電磁比例弁に通電する電流値を設定上限電流値にまで増加させた状態において、さらに走行負荷が増加したときには、可変容量型の油圧モータの回転速度を、操作部を設定目標位置に位置させるときの回転速度よりも低速側に操作できることになる。
【0026】
従って、第4特徴構成によれば、油圧シリンダ及び電磁比例弁を用いた簡素な構成にて、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができる作業車の走行制御装置を提供できる。
【0027】
本発明の第5特徴構成は、上記第1特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、
前記エンジンが、作業車としてのコンバインに搭載されて、そのエンジンの動力が、刈取処理部及び脱穀装置に伝達されるものであり、
刈取作業状態であるか非刈取作業状態であるかを検出する作業状態検出手段が備えられ、
前記制御手段が、
前記作業状態検出手段にて前記刈取作業状態が検出されていると、前記基準走行状態であると判別するように構成され、且つ、
前記基準走行状態であると判別すると、前記作業状態検出手段にて前記刈取作業状態が検出されている状態から前記非刈取作業状態が検出される状態に切り換わる切り換わりタイミングよりも設定時間前から前記切り換わりタイミングまでの間に、前記操作部を前記設定目標位置に維持させるときの前記指令値に基づいて前記設定上限値を補正するように構成されている点にある。
【0028】
すなわち、制御手段は、作業状態検出手段にて刈取作業状態が検出されている状態から非刈取作業状態が検出される状態に切り換わる切り換わりタイミングよりも設定時間前から切り換わりタイミングまでの間に、操作部を設定目標位置に維持させるときの指令値に基づいて設定上限値を補正することになる。つまり、1つの作業行程での刈取作業を行っているときに、刈取が終了する直前の状態において設定上限値を補正することになるが、このように刈取が終了する直前の状態というのは、刈取作業を行うために、直進走行しており、しかも、車速も安定しており、刈取作業時における走行負荷として標準的な走行負荷であることが想定できるので、前記設定上限値を適切な値に補正することができる。
【0029】
又、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができるため、エンジンの回転速度の変動を抑制できるものとなり、刈取処理部や脱穀装置の駆動速度の変動を抑制して、刈取処理作業や脱穀処理作業を良好に行えるものとなる。
【0030】
従って、第5特徴構成によれば、上記第1〜第4特徴構成のいずかによる作用効果に加えて、設定上限値の補正を適正に行うことができ、コンバインにおける刈取処理作業や脱穀処理作業を良好に行える作業車の走行制御装置を提供できる。
【0031】
本発明の第6特徴構成は、上記第1特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記エンジンが、作業車としてのコンバインに搭載されて、そのエンジンの動力が、刈取処理部及び脱穀装置に伝達されるものであり、
刈取作業状態であるか非刈取作業状態であるかを検出する作業状態検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、直進状態であるか旋回状態であるかを検出する操向状態検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記作業状態検出手段にて前記刈取作業状態が検出されること、前記車速検出手段にて検出される車速が設定車速以上であること、及び、前記操向状態検出手段にて直進状態が検出されることの各条件が満たされると、前記基準走行状態であると判別するように構成され、且つ、
前記基準走行状態であると判別すると、その基準走行状態であると判別する状態が継続している間において、前記操作部を前記設定目標位置に維持させるときの前記指令値を平均処理した値に基づいて、前記設定上限値を補正するように構成されている点にある。
【0032】
すなわち、制御手段は、設定車速以上の車速で直進しながら刈取作業を行っていると、前記基準走行状態であると判別し、その基準走行状態であると判別する状態が継続している間において、操作部を設定目標位置に維持させるときの指令値を平均処理した値に基づいて設定上限値を補正するようにしたので、圃場を走行するときに走行負荷が変動することがあっても、前記指令値を平均処理した値を用いることで、標準的な刈取作業状態を行いながら安定走行している状態の走行負荷又はそれに近い走行負荷に対応する指令値に基づいて適正な設定上限値に補正することができる。
【0033】
従って、第6特徴構成によれば、上記第1〜第4特徴構成のいずかによる作用効果に加えて、設定上限値の補正を適正に行うことができ、コンバインにおける刈取処理作業や脱穀処理作業を良好に行える作業車の走行制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】ミッションケースの縦断正面図である。
【図3】油圧ユニットの油圧回路図である。
【図4】制御構成を示すブロック図である。
【図5】静油圧式無段変速装置の油圧回路図である。
【図6】移動走行状態、標準刈取状態及び低速刈取状態を示す図である。
【図7】制御作動を示すフローチャートである。
【図8】制御作動を示すフローチャートである。
【図9】制御作動を示すフローチャートである。
【図10】制御作動を示すフローチャートである。
【図11】制御作動を示すフローチャートである。
【図12】制御作動を示すフローチャートである。
【図13】電流値と操作力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔実施形態〕
図1に示すように、右及び左のクローラ式の走行装置1で支持された機体の前部に、刈取処理部としての刈取部2が昇降自在に支持され、機体の前部の右側に運転部3が備えられて、機体の後部の左側に脱穀装置4が備えられ、機体の後部の右側にグレンタンク5が備えられて、作業車の一例である自脱型のコンバインが構成されている。
【0036】
図2に示すように、運転部3の下側にエンジン6が備えられ、機体の前部の左右中央付近にミッションケース8が備えられて、静油圧式無段変速装置7がミッションケース8の右側部の上部に連結されており、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aとエンジン6の出力軸6aとに亘って、テンションクラッチ機能を備えたベルト伝動機構9が接続されている。
【0037】
前記刈取部2には、刈取作業状態検出手段としての株元センサ90が設けられている。この株元センサ90は、刈取穀稈が搬送されているときは穀稈が作用してオン状態(刈取作業状態)を検出し、刈取穀稈が存在しないときはオフ状態(非刈取作業状態)を検出するように構成されているる。
【0038】
図2に示すように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bが、ミッションケース8に挿入されて、スプライン構造により低速ギヤ10に連結されており、その低速ギヤ10が固定された伝動軸12に、高速ギヤ11が固定されている。出力軸13に低速ギヤ14及び高速ギヤ15が相対回転自在に外嵌されて、低速ギヤ10,14及び高速ギヤ11,15が咬合しており、シフト部材16がスプライン構造により出力軸13にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。出力軸13と刈取部2の入力軸2aとに亘って、伝動ベルトによりテンションクラッチ型式の刈取クラッチ17が備えられている。エンジン6の出力軸6aの動力が、テンションクラッチ型式の脱穀クラッチ4A(図4参照)を介して、脱穀装置4に伝達されるように構成されている。
【0039】
図2に示すように、シフト部材16を低速ギヤ14に咬合させると(低速位置)、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が低速ギヤ10,14及びシフト部材16を介して低速状態で刈取部2に伝達され、シフト部材16を高速ギヤ15に咬合させると(高速位置)、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が高速ギヤ11,15及びシフト部材16を介して高速状態で刈取部2に伝達される。以上のように、低速ギヤ10,14及び高速ギヤ11,15、シフト部材16等により、高低2段に変速自在な刈取変速装置18が構成されている。
【0040】
次に、ミッションケース8の伝動系(直進系)の構造について説明する。
図2に示すように、伝動軸20に伝動ギヤ19が相対回転自在に外嵌されて、伝動ギヤ19が低速ギヤ10に咬合しており、シフト部材21がスプライン構造により伝動軸20にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。伝動軸20に伝動ギヤ22,23が固定されており、伝動軸20の端部に多板摩擦式の駐車ブレーキ24が備えられている。
【0041】
図2に示すように、通常は、シフト部材21は伝動ギヤ19に咬合しており、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が低速ギヤ10及び伝動ギヤ19を介して、伝動軸20に伝達されている。故障等による機体の牽引時において、シフト部材21を伝動ギヤ19から離間させることにより、右及び左の走行装置1と静油圧式無段変速装置7とをシフト部材21の位置で遮断することができるのであり、静油圧式無段変速装置7の抵抗を受けることなく機体を牽引することができる。
【0042】
図2に示すように、伝動軸26に伝動ギヤ25が固定されて、伝動ギヤ22,25が咬合している。伝動軸26に右及び左の出力ギヤ27が相対回転自在に外嵌され、右及び左の出力ギヤ27の右及び左側に、右及び左の咬合部28がスプライン構造により伝動軸26にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。右及び左の車軸29が備えられ、右及び左の車軸29に固定された右及び左の伝動ギヤ30が、右及び左の出力ギヤ27に咬合しており、右及び左の車軸29の端部に右及び左の走行装置1のスプロケット1a(図1参照)が連結されている。
【0043】
図2に示すように、伝動軸26に固定された受け部材31と右の咬合部28との間にバネ32が備えられ、伝動ギヤ25と左の咬合部28との間にバネ32が備えられて、右及び左の咬合部28がバネ32により右及び左の出力ギヤ27の咬合側に付勢されている。右の出力ギヤ27と右の咬合部28との間に右の油室が形成され、左の出力ギヤ27と左の咬合部28との間に左の油室が形成されており、右及び左の油室に作動油を供給することにより、バネ32に抗して右及び左の咬合部28を右及び左の出力ギヤ27から離間させることができる。
【0044】
図2に示すように、右の出力ギヤ27と右の咬合部28との間で咬合式の右のサイドクラッチ33が構成され、左の出力ギヤ27と左の咬合部28との間で咬合式の左のサイドクラッチ33が構成されている。右(左)の咬合部28が右(左)の出力ギヤ27に咬合することにより、右(左)のサイドクラッチ33が伝動状態となり、右(左)の咬合部28が右(左)の出力ギヤ27から離間することにより、右(左)のサイドクラッチ33が遮断状態となる。
【0045】
以上の構造により図2に示すように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が、低速ギヤ10、伝動ギヤ19、伝動軸20、伝動ギヤ22,25、伝動軸26、右及び左の咬合部28、右及び左の出力ギヤ27、右及び左の伝動ギヤ30、右及び左の車軸29を介して、右及び左の走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0046】
次に、ミッションケース8の伝動系(旋回系)の構造について説明する。
図2に示すように、伝動軸34に相対回転自在に外嵌された伝動ギヤ35が、右の咬合部28の外周部のギヤ部に咬合しており、伝動軸34と伝動ギヤ35との間に緩旋回クラッチ36が備えられている。緩旋回クラッチ36は摩擦多板式に構成されて遮断状態に付勢されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。
【0047】
図2に示すように、伝動軸26に旋回クラッチケース37が相対回転自在に外嵌されており、伝動軸34に固定された伝動ギヤ38と旋回クラッチケース37の外周部のギヤ部とが咬合している。旋回クラッチケース37は左右対称に構成されており、旋回クラッチケース37と右の出力ギヤ27との間に右の旋回クラッチ39が備えられ、旋回クラッチケース37と左の出力ギヤ27との間に左の旋回クラッチ39が備えられている。右及び左の旋回クラッチ39は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作される。この場合、右及び左の旋回クラッチ39において、摩擦板が互いに密になるように配置されており、作動油が排出されても右及び左の旋回クラッチ39が半伝動状態となるように構成されている。
【0048】
これにより、図2に示すように、緩旋回クラッチ36が伝動状態に操作されると、伝動軸26の動力が右の咬合部28、伝動ギヤ35、緩旋回クラッチ36、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力として、旋回クラッチケース37に伝達される。緩旋回クラッチ36の伝動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力が右又は左の出力ギヤ27に伝達される。
【0049】
図2に示すように、伝動軸34の左側にブレーキ40が備えられている。ブレーキ40は摩擦多板式に構成されて、作動油が供給されることで制動状態に操作され、作動油が排出されることで解除状態に操作される。
これにより図2に示すように、ブレーキ40が制動状態に操作されると、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、旋回クラッチケース37が制動状態となる。ブレーキ40の制動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、右又は左の出力ギヤ27が制動状態となる。
【0050】
図2に示すように、伝動軸34に伝動ギヤ41が相対回転自在に外嵌されて、伝動ギヤ23,41が咬合しており、伝動軸34と伝動ギヤ41との間に、逆転クラッチ42が備えられている。逆転クラッチ42は摩擦多板式に構成されて遮断状態に付勢されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。
【0051】
これにより、図2に示すように、逆転クラッチ42が伝動状態に操作されると、伝動軸20の動力が伝動ギヤ23,41、逆転クラッチ42、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、伝動軸26と逆方向の動力として、旋回クラッチケース37に伝達される。逆転クラッチ42の伝動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、伝動軸26と逆方向の動力が右又は左の出力ギヤ27に伝達される。
【0052】
次に、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)、右及び左の旋回クラッチ39、緩旋回クラッチ36、ブレーキ40、逆転クラッチ42に作動油を給排操作する油圧ユニット59について説明する。
図2及び図3に示すように、油圧ユニット59がミッションケース8の左側部の下部に連結されている。静油圧式無段変速装置7の入力軸7aに油圧ポンプ60が接続され、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aにより油圧ポンプ60が駆動されるように構成されており、油圧ポンプ60から延出された油路61が油圧ユニット59に接続されている。
【0053】
図3に示すように、ミッションケース8と油圧ポンプ60とに亘って供給油路62が接続されて、供給油路62にオイルクーラー63が備えられており、供給油路62における油圧ポンプ60とオイルクーラー63との間の部分にフィルタ64が備えられている。ミッションケース8に貯留された潤滑油が作動油として、オイルクーラー63及びフィルタ64を通過して油圧ポンプ60に供給される。油圧ポンプ60の作動油が油路61を介して油圧ユニット59に供給されるのであり、後述するように油圧ユニット59の各部から排出された作動油がミッションケース8に戻される。
【0054】
図3に示すように、油圧ユニット59の内部に右旋回制御弁67、左旋回制御弁68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70、第2リリーフ弁76、比例制御弁71、旋回切換制御弁72、パイロット操作弁73,74が備えられている。油圧ポンプ60の油路61が油圧ユニット59に接続され、油路61に接続された油路66に右及び左旋回制御弁67,68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70が並列的に接続されている。
【0055】
図3に示すように、右旋回制御弁67が右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に接続されており、左旋回制御弁68が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に接続されている。右及び左旋回制御弁67,68は供給位置67a,68a及び排出位置67b,68bに操作自在な電磁操作型式に構成されて、排出位置67b,68bに付勢されている。アンロード弁70は遮断位置70a及び排出位置70bに操作自在な電磁操作型式に構成されて、遮断位置70aに付勢されている。
【0056】
図3に示すように、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)から分岐した油路75に、第2リリーフ弁76が接続され、油路75に比例制御弁71及び旋回切換制御弁72が直列的に接続されており、旋回切換制御弁72が緩旋回クラッチ36、ブレーキ40及び逆転クラッチ42に接続されている。比例制御弁71は電磁操作型式に構成されて、作動油の圧力制御が可能である。旋回切換制御弁72は、緩旋回位置72a、信地旋回位置72b及び超信地旋回位置72cに操作自在なパイロット操作型式に構成されており、緩旋回位置72aに付勢されている。この場合、第1リリーフ弁69のリリーフ圧が比較的高い値に設定され、第2リリーフ弁76のリリーフ圧が比較的低い値に設定されている。
【0057】
図3に示すように、油路75から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁72に供給して信地旋回位置72bに操作するように、パイロット操作弁73が構成され、油路75から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁72に供給して超信地旋回位置72cに操作するように、パイロット操作弁74が構成されている。油圧ユニット59とミッションケース8との連結面(合わせ面)に、ドレン油路(図示せず)が形成されており、右旋回制御弁67、左旋回制御弁68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70、第2リリーフ弁76、比例制御弁71、旋回切換制御弁72、パイロット操作弁73,74の作動油がドレン油路を介してミッションケース8に戻される。
右及び左旋回制御弁67,68、アンロード弁70、比例制御弁71、パイロット操作弁73,74は、図4に示すように、制御手段としての制御装置79によって、後述の如く操作される。
【0058】
次に、操向レバー77による直進状態について説明する。
図1及び図4に示すように、右及び左に操作自在な操向レバー77が運転部3に備えられ、操向レバー77の操作位置を検出する操作位置検出センサーQの検出情報が制御装置79に入力されており、操向レバー77は直進位置n、右及び左第1旋回位置R1,L1、右及び左第2旋回位置R2,L2に操作自在に構成されている。ダイヤル操作型式の旋回モードスイッチ78が運転部3に備えられ、旋回モードスイッチ78の操作情報が制御装置79に入力されており、旋回モードスイッチ78は緩旋回位置、信地旋回位置及び超信地旋回位置を備えている。
【0059】
図2,3,4に示すように、旋回モードスイッチ78の操作位置に関係なく、操向レバー77が直進位置nに操作されると、右及び左旋回制御弁67,68が排出位置67b,68bに操作され、アンロード弁70が排出位置70bに操作される。これにより、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)、右及び左の旋回クラッチ39から作動油が排出され、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)が伝動状態に操作されて、右及び左の旋回クラッチ39が半伝動状態に操作される。比例制御弁71により緩旋回及び逆転クラッチ36,42が遮断状態に操作され、ブレーキ40が解除状態に操作される。
【0060】
図2に示すように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が、低速ギヤ10、伝動ギヤ19、伝動軸20、伝動ギヤ22,25、伝動軸26、右及び左の咬合部28、右及び左の出力ギヤ27、右及び左の伝動ギヤ30、右及び左の車軸29を介して、右及び左の走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0061】
次に、操向レバー77による緩旋回状態について説明する。
図2〜4に示すように、旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が緩旋回位置72aに操作される。
これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。
【0062】
図2に示すように、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)の動力が、左の出力ギヤ27及び左の旋回クラッチ39から、右の旋回クラッチ39を介して右の出力ギヤ27に伝達され、伝動軸26と同方向で伝動軸26より少し低速の動力が右の出力ギヤ27に伝達される。これにより、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0063】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(緩旋回位置72a)を介して、緩旋回クラッチ36に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71により緩旋回クラッチ36の作動圧が昇圧操作される。
【0064】
図2,3,4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71により緩旋回クラッチ36の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸26の動力が右の咬合部28、伝動ギヤ35、緩旋回クラッチ36、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力として右の出力ギヤ27に伝達される。
【0065】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と緩旋回クラッチ36からの動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、緩旋回クラッチ36の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力が緩旋回クラッチ36からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより緩旋回クラッチ36の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0066】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、緩旋回クラッチ36の作動圧が高圧になると、図2に示すように、緩旋回クラッチ36からの動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、緩旋回クラッチ36からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。この状態において、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動されるよりも、緩旋回クラッチ36からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される方が、右の出力ギヤ27が低速で駆動されることになり、機体は右に緩旋回する。
【0067】
図2〜4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に緩旋回する。
【0068】
次に、操向レバー77による信地旋回状態について説明する。
図2〜4に示すように、旋回モードスイッチ78が信地旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が信地旋回位置72bに操作される。
これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、前項[13]に記載と同様に機体は緩やかに右に向きを変える。
【0069】
図2〜4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(信地旋回位置72b)を介して、ブレーキ40に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71によりブレーキ40の作動圧が昇圧操作される。
【0070】
図2〜4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71によりブレーキ40の作動圧が昇圧操作され、それに伴って、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、右の出力ギヤ27に制動力が掛かる。
【0071】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と、ブレーキ40の制動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、ブレーキ40の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力がブレーキ40の制動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより、ブレーキ40の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0072】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、ブレーキ40の作動圧が高圧になると、図2に示すように、ブレーキ40の制動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、ブレーキ40の制動力により右の出力ギヤ27が制動状態となり、機体は右に信地旋回する。
【0073】
図2〜4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に信地旋回する。
【0074】
次に、操向レバー77による超信地旋回状態について説明する。
図2〜4に示すように、旋回モードスイッチ78が超信地旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が超信地旋回位置72cに操作される。
これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0075】
図2〜4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(超信地旋回位置72c)を介して、逆転クラッチ42に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71により逆転クラッチ42の作動圧が昇圧操作される。
【0076】
図2〜4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71により逆転クラッチ42の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸20の動力が伝動ギヤ23,41、逆転クラッチ42、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、伝動軸26と逆方向の動力として右の出力ギヤ27に伝達される。
【0077】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と、逆転クラッチ42からの動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、逆転クラッチ42の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力が逆転クラッチ42からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより逆転クラッチ42の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0078】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、逆転クラッチ42の作動圧が高圧になると、図2に示すように、逆転クラッチ42からの動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、逆転クラッチ42からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。この状態において、左の出力ギヤ27に対して、右の出力ギヤ27が逆方向に駆動されて、機体は右に超信地旋回する。
【0079】
図2〜4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に超信地旋回する。
【0080】
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧回路構造について説明する。
図5に示すように、静油圧式無段変速装置7はアキシャルプランジャ型式の可変容量型の油圧ポンプ7P及びアキシャルプランジャ型式の可変容量型の油圧モータ7Mを備え、油圧ポンプ7P及び油圧モータ7Mを一対の油路7cで接続して構成されている。静油圧式無段変速装置7の入力軸7aにチャージポンプ44が接続されて、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aによりチャージポンプ44が駆動される。
【0081】
図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油路7cに亘ってバイパス油路83が接続され、チャージポンプ44から延出されたチャージ油路45がバイパス油路83に接続されており、チャージ油路45にフィルタ49が備えられている。バイパス油路83においてチャージ油路45が接続される部分と静油圧式無段変速装置7の油路7cとの間に、逆止弁84及び絞り部85、リリーフ弁86が備えられており、リリーフ弁86のリリーフ圧が、静油圧式無段変速装置7の全体として許容される最高圧力に設定されている。ミッションケース8とは別に備えられたオイルタンク46と、チャージポンプ44とに亘って、供給油路47が接続されており、供給油路47にフィルタ48が備えられている。
【0082】
図5に示すように、チャージ油路45にリリーフ弁50が接続されて、リリーフ弁50が静油圧式無段変速装置7を収容するケース51に接続されている。ケース51とオイルタンク46とに亘って油路52が接続され、油路52にオイルクーラー53が備えられている。以上の構造により、オイルタンク46の作動油が、フィルタ48、供給油路47、チャージポンプ44、チャージ油路45を介して静油圧式無段変速装置7の油路7cに供給されて、余剰の作動油がリリーフ弁50を介してケース51に排出される。静油圧式無段変速装置7の各部からの作動油がケース51に排出されるのであり、ケース51の作動油が油路52及びオイルクーラー53を通過してオイルタンク46に戻される。
【0083】
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pの操作構造について説明する。
図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pは中立状態、前進側及び後進側に無段階に変速自在に構成され、中立位置N、前進側F及び後進側Rに操作自在な変速レバー43(油圧ポンプ操作具に相当)が運転部3に備えられ、変速レバー43と静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pの斜板7Paとが、連係リンク80を介して機械的に連係されている。尚、例示はしないが、操作された変速レバー43をその位置で保持するための摩擦式保持機構が設けられている。
【0084】
図4に示すように、変速レバー43に操作力(アシスト力)を付加する電動モータ55と、変速レバー43が前進側F又は後進側Rに操作されようとしていることを検出する操作センサー(図示せず)とが備えられており、操作センサーの検出値に基づいて電動モータ55が制御装置79により以下のように操作される。
【0085】
図4に示すように、変速レバー43が前進側Fに操作されようとすると、この操作が操作センサーにより検出されて、電動モータ55が作動して前進側Fへの操作力を変速レバー43に与える。変速レバー43が後進側Rに操作されようとすると、この操作が操作センサーにより検出されて、電動モータ55が作動して後進側Rへの操作力を変速レバー43に与える。
【0086】
図4に示すように、変速レバー43により静油圧式無段変速装置7における油圧ポンプ7Pの斜板7Paを操作して、油圧ポンプ7Pの斜板7Paを中立位置N、前進側F及び後進側Rに操作するのであり、電動モータ55の操作力の付加によって、変速レバー43により、油圧ポンプ7Pの斜板7Paを前進側F及び後進側Rに楽に操作することができる。変速レバー43の前進側F及び後進側Rへの操作が止まると、電動モータ55も停止して、油圧ポンプ7Pの斜板7Paがその位置に保持される。
【0087】
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4A、刈取変速装置18の操作について説明する。
図4に示すように、変速レバー43の上部の握り部43aにおいて、変速レバー43の握り部43aの横面部の下部に、走行変速スイッチ81が備えられており、変速レバー43の握り部43aの後面部の上部に、刈取変速スイッチ82が備えられている。走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82は、戻り側(突出側)に復帰付勢された押しボタン型式に構成されており、走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82の操作信号が制御装置79に入力される。
【0088】
図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mは、高速位置H及び低速位置Lの範囲で無段階に変速自在に構成され、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの斜板7Ma(容量変更用の操作部に相当)が低速側に移動するのを高速側に移動操作する操作力にて保持する操作シリンダ56(保持手段に相当)が備えられている。
油圧モータ7Mの斜板7Maの位置として、操作シリンダ56のピストンの位置を検出するポテンショメータ89(位置検出手段に相当)が備えられて、ポテンショメータ89により操作シリンダ56のピストンの位置を検出することにより、油圧モータ7Mの斜板7Maの位置が検出されて、ポテンショメータ89の検出値Pが制御装置79に入力される。
【0089】
図4及び図5に示すように、チャージ油路45から油路57が分岐し、操作シリンダ56を高速側に作動させる油室56aに油路57が接続されており、操作シリンダ56を低速側に付勢するバネ56bが備えられている。操作シリンダ56の操作力を変更調整する操作力調整手段としての、電磁比例制御弁にて構成される圧力制御弁58が油路57に備えられており、操作シリンダ56の油室56aの圧力が上昇すると、走行負荷及びバネ56bの付勢力に抗して操作シリンダ56が油圧モータ7Mの斜板7Maを高速側に操作し、操作シリンダ56の油室56aの圧力が下降すると、油圧モータ7Mの斜板7Maが走行負荷及びバネ56bの付勢力により低速側に操作する。
説明を加えると、操作シリンダ56は、油圧モータ7Mの斜板7Maを高速側に移動操作する操作力が供給される油圧にて変更される油圧シリンダであり、圧力制御弁58が、操作シリンダ56に供給する油圧の圧力を変更調整するように構成されている。
【0090】
図4に示すように、車速を検出する車速検出手段としての車速センサ91が設けられており、この車速センサ91の検出値Pが制御装置79に入力され、後述するように、制御装置79は、この車速センサ91にて検出される車速が設定車速以上であるか否かを判別するように構成されている。尚、図示はしないが、この車速センサ91は、走行装置1を駆動するための駆動軸に設けられたギアに対して検出作用して車速に応じたパルスを発生するように構成されている。
【0091】
図4に示すように、操作モータ65が備えられて、操作モータ65と刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4A、刈取変速装置18とが機械的に連係されており、操作モータ65により刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4A、刈取変速装置18が操作される。操作モータ65により、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが遮断状態に操作されて刈取変速装置18が低速位置に操作された状態、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが伝動状態に操作されて刈取変速装置18が低速位置に操作された状態、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが伝動状態に操作されて刈取変速装置18が高速位置に操作された状態の3状態が現出される。
【0092】
図6に示すように、移動走行状態、標準刈取状態及び低速刈取状態が設定されており、移動走行状態、標準刈取状態及び低速刈取状態において、図4及び図6に示すように、制御装置79により圧力制御弁58及び操作モータ65、運転部3に備えられた表示部87が以下のように操作される。
【0093】
移動走行状態は、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maが移動走行用の高速位置Hに操作され、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが遮断状態に操作され、刈取変速装置18が低速位置に操作された状態であり、表示部87に高速位置Hが表示される。
標準刈取状態は、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maが刈取作業用の中速位置Mに操作され、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが伝動状態に操作され、刈取変速装置18が低速位置に操作された状態であり、表示部87に中速位置Mが表示される。
低速刈取状態は、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maが倒伏刈取作業用の低速位置Lに操作され、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが伝動状態に操作され、刈取変速装置18が高速位置に操作された状態であり、表示部87に低速位置Lが表示される。この低速刈取状態は、倒伏が激しい作物を刈り取るときに選択されることになる。
【0094】
図6に示すように、走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82の押し操作に基づいて、制御装置79が圧力制御弁58及び操作モータ65を以下のように作動させるように構成されている。
移動走行状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されると、標準刈取状態が設定され、標準刈取状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されると、移動走行状態が設定される。このように、走行変速スイッチ81が押し操作される毎に、移動走行状態及び標準刈取状態が交互に設定される。
この場合、移動走行状態が設定された状態において刈取変速スイッチ82が押し操作されても、この押し操作が無視されて移動走行状態が維持される。走行変速スイッチ81が押し操作されることにより、標準刈取状態が設定された状態において刈取変速スイッチ82が押し操作されると、低速刈取状態が設定される。
【0095】
標準刈取状態が設定された状態において、刈取変速スイッチ82が押し操作されると、低速刈取状態が設定される。低速刈取状態が設定された状態において刈取変速スイッチ82が押し操作されると、標準刈取状態が設定される。このように刈取変速スイッチ82が押し操作される毎に、標準刈取状態及び低速刈取状態が交互に設定される。
この場合、低速刈取状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されても、この押し操作が無視されて低速刈取状態が維持される。刈取変速スイッチ82が押し操作されることにより、標準刈取状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されると、移動走行状態が設定される。
【0096】
上述した通り、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maの設定目標位置として、高速位置H、中速位置M、及び、低速位置Lが定められることになり、走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82が、それらの設定目標位置のいずれかを選択する選択手段として機能することになる。
そして、制御装置79が、複数の設定目標位置のうちで、走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82にて設定された目標位置に油圧モータ7Mの斜板7Maを維持させるように、圧力制御弁58に通電する電流値を制御するように構成されている。
【0097】
さらに、制御装置79が、油圧モータ7Mの斜板7Maが設定目標位置よりも低速側に移動しても、設定上限値を超えて、油圧モータ7Mの斜板7Maを高速側に移動操作する操作力を増加させない形態で圧力制御弁58を制御するように構成されている。
説明を加えると、圧力制御弁58に通電する電流値は、操作シリンダ56により油圧モータ7Mの斜板7Maを高速側に移動操作する操作力に対応するものであり、図4に示すように、圧力制御弁58に通電される電流値aを検出する電流検出センサーD、及び、圧力制御弁58の駆動回路93が設けられている。
そして、油圧モータ7Mの斜板7Maを維持する設定目標位置としての、高速位置H、中速位置M、及び、低速位置Lの夫々に対応して、前記設定上限値に対応する設定上限電流値A1、A2、及び、A3が、低速側の設定目標位置ほど低くする状態で設定され、制御装置79が、電流検出センサーDの検出情報に基づいて、圧力制御弁58に通電する電流値aを設定上限電流値A1、A2、及び、A3を超えて増加させない形態で圧力制御弁58に通電する電流値aを制御するように構成されている。
【0098】
このように、圧力制御弁58に通電する電流値aを設定上限電流値A1、A2、及び、A3を超えて増加させない形態で圧力制御弁58に通電する電流値を制御することにより、エンジン6の負荷が過大となるのを抑制できることになる。
つまり、油圧モータ7Mの斜板7Maを高速位置Hに維持するときに、走行負荷が増加して、設定上限電流値A1に対応する操作力にては、油圧モータ7Mの斜板7Maを高速位置Hに維持できなくなると、油圧モータ7Mの斜板7Maが高速位置Hよりも低速側に移動することになり、走行速度が低速になり、エンジン6の負荷が増大するのを抑制することになる。
同様に、油圧モータ7Mの斜板7Maを中速位置Hに維持するときに、走行負荷が増加して、設定上限電流値A2に対応する操作力にては、油圧モータ7Mの斜板7Maを中速位置Mに維持できなくなると、油圧モータ7Mの斜板7Maが中速位置Hよりも低速側に移動することになり、走行速度が低速になり、エンジン6の負荷が増大するのを抑制することになる。
【0099】
尚、油圧モータ7Mの斜板7Maの設定目標位置としての低速位置Lは、斜板7Maの低速側への移動限度よりも少し高速側の位置に定められており、油圧モータ7Mの斜板7Maを低速位置Hに維持するときに、走行負荷が増加して、設定上限電流値A3に対応する操作力にては、油圧モータ7Mの斜板7Maを低速位置Lに維持できなくなると、油圧モータ7Mの斜板7Maが低速位置Lよりも低速側に移動することになるものの、その移動量はわずかであり、走行速度が少量だけ低速になるものであり、エンジン6の負荷を軽減することにはあまり有効でないものである。
ちなみに、油圧モータ7Mの斜板7Maの設定目標位置としての高速位置Hは、斜板7Maの高速側への移動限度よりも少し低速側の位置に定められている。
【0100】
上述の如く、走行負荷が増大したときには、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maを、設定目標位置としての高速位置H、中速位置M、及び、低速位置Lから低速側に移動させることにより、エンジン6の負荷を軽減させるものであるが、このように走行速度を減速させるのにも拘らず、エンジン6の負荷が過大であるときには、制御装置79が、静油圧式無段変速装置7における油圧ポンプ7Pの斜板7Paを電動モータ55により減速側に操作する減速操作処理を行うように構成されているが、この減速操作処理については詳細な説明は省略する。
【0101】
そして、制御装置79は、基準走行状態であることを判別すると、油圧モータ7Mの斜板7Maを設定目標位置としての中速位置Mに維持させるときの圧力制御弁58に通電される電流値aに基づいて、設定上限電流値A1、A2、及び、A3を補正する補正処理を実行するように構成されている。
すなわち、電磁比例制御弁にて構成される圧力制御弁58における電流値と操作シリンダ56に供給する油圧の圧力(操作力)との関係は、例えば図13に示すように、直線状に変化するような特性を有するものであるが、個体差に起因して図13の特性線L1、L2、L3に示すように、前記特性にはバラツキが存在することになる。その結果、操作シリンダ56にて同じ圧力(操作圧)(図13にてF1,F2,F3で例示している)を得るのに必要とされる電流値が互いに異なる値になる。
【0102】
そこで、走行負荷が比較的安定しており、しかも、走行負荷の大きさもある程度予測することが可能な基準走行状態であるときに、油圧モータ7Mの斜板7Maを設定目標位置としての中速位置Mに維持させるときの圧力制御弁58に通電される電流値aを利用して、このような個体差に起因した特性のバラツキによる誤差が少なくなるように、設定上限電流値A1、A2、及び、A3を適正な値に補正するのである。
【0103】
説明を加えると、制御装置79が、株元センサ90にて刈取作業状態が検出されること、車速センサ91にて検出される車速が設定車速以上であること、及び、操作位置検出センサーQにて直進状態が検出されることの各条件が満たされると、前記基準走行状態であると判別するように構成され、且つ、前記基準走行状態であると判別すると、その基準走行状態であると判別する状態が継続している間において、油圧モータ7Mの斜板7Maを中速位置Mに維持させるときの圧力制御弁58に通電される電流値aを平均処理した値に基づいて、設定上限電流値A1、A2、及び、A3を補正するように構成されている。
【0104】
以下、制御装置79の制御作動について、図7〜図11に示すフローチャートに基づいて説明を加える。
図7は、メインフローを示すものであり、電源が投入されると、先ず初期設定を行うことになる(#1)。この初期設定において、移動走行状態を設定する。
初期設定を行うと、次に、移動走行状態であるか否かを判別し(#2)、移動走行状態であるときには、走行変速スイッチ81が操作されたか否か、つまり、走行変速スイッチ81がONになったか否かを判別し(#3)、走行変速スイッチ81が操作されていなければ、刈取りクラッチ17及び脱穀クラッチ4Aを遮断状態とし、刈取変速装置18を低速にする移動走行状態用処理(#4)、及び、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maを高速位置Hに維持する高速操作処理(#5)を実行する。
次に、基準走行状態であることを判別すると、前記補正処理を実行し(#6)、その後、#2の移動走行状態であるか否かを判別する処理に戻ることになる。
【0105】
#3にて走行変速スイッチ81が操作されたことを判別されると、標準刈取状態への変更であるとして、刈取りクラッチ17及び脱穀クラッチ4Aを伝動状態とし、刈取変速装置18を低速にする標準刈取状態用処理(#10)、及び、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maを中速位置Mに維持する中速操作処理(#11)を実行し、その後、#6の補正処理に移行する。
【0106】
#2にて移動走行状態でないことを判別すると、標準刈取状態であるか否かを判別し(#7)、標準刈取状態である場合には、走行変速スイッチ81がONになったか否かを判別する(#8)。走行変速スイッチ81が操作されていなければ、刈取変速スイッチ82が操作されたか否か、つまり、刈取変速スイッチ82がONになったか否かを判別し(#9)、刈取変速スイッチ82が操作されていなければ、#10の標準刈取状態用処理に移行する。
【0107】
#8にて走行変速スイッチ81がONになったことを判別すると、移動走行状態への変更であるとして、#4の移動走行状態用処理に移行することになる。
#9にて刈取変速スイッチ82がONになったことを判別すると、低速刈取状態への変更であるとして、刈取りクラッチ17及び脱穀クラッチ4Aを伝動状態とし、刈取変速装置18を高速にする低速刈取状態用処理(#13)、及び、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maを低速位置Lに維持する低速操作処理(#14)を実行し、その後、#6の補正処理に移行する。
【0108】
#7にて標準刈取状態でないことを判別すると、つまり、低速刈取状態であることを判別すると、#12にて刈取変速スイッチ82がONになったか否かを判別し、刈取変速スイッチ82がONになったことを判別すると、標準刈取状態への変更であるとして、#10の標準刈取状態用処理に移行し、そして、#12にて刈取変速スイッチ82がONになったことを判別しないと、#13の低速刈取状態用処理に移行することになる。
【0109】
図8は、上述した高速操作処理の制御作動を示すものである。
先ず、操作シリンダ56のピストンの位置を検出するポテンショメータ89の検出値Pが高速位置Hに対応する位置であるか否かを判別し(#21)、検出値Pが高速位置Hに対応する位置である場合には、メインフローに戻ることになる。
#21にて検出値Pが高速位置Hに対応する位置でないことを判別した場合には、検出値Pが高速位置Hに対応する位置よりも高速側であるか否かを判別し(#22)、高速側であることを判別すると、現在の目標電流値Aから設定量αを減算した値を新たな目標電流値Aとして設定し(#23)、電流検出センサーDにて検出される電流値aが新たな目標電流値Aになるように駆動回路93に対して電流増減指令を指令する電流制御処理を実行し(#24)、その後、メインフローに戻ることになる。
【0110】
#22にて検出値Pが高速位置Hに対応する位置よりも高速側でないこと、つまり、検出値Pが高速位置Hに対応する位置よりも低速側であることを判別すると、目標電流値Aが高速位置Hに対応する設定上限電流値A1よりも小であるか否かを判別し(#25)、小であることが判別した場合には、#26にて現在の目標電流値Aから設定量αを加算した値を新たな目標電流値Aとして設定し、その後、#24の電流制御処理に移行することになる。
また、#25にて目標電流値Aが高速位置Hに対応する設定上限電流値A1よりも小でないことを判別した場合は、現在の目標電流値Aを設定上限電流値A1に設定して、#24の電流制御処理に移行することになる。
【0111】
図9は、上述した中速操作処理の制御作動を示すものである。
先ず、操作シリンダ56のピストンの位置を検出するポテンショメータ89の検出値Pが中速位置Mに対応する位置であるか否かを判別し(#41)、検出値Pが中速位置Mに対応する位置である場合には、メインフローに戻ることになる。
#41にて検出値Pが中速位置Mに対応する位置でないことを判別した場合には、検出値Pが中速位置Mに対応する位置よりも高速側であるか否かを判別し(#42)、高速側であることを判別すると、現在の目標電流値Aから設定量αを減算した値を新たな目標電流値Aとして設定し(#43)、電流検出センサーDにて検出される電流値aが新たな目標電流値Aになるように駆動回路93に対して電流増減指令を指令する電流制御処理を実行し(#44)、その後、メインフローに戻ることになる。
【0112】
#42にて検出値Pが中速位置Mに対応する位置よりも高速側でないこと、つまり、検出値Pが中速位置Hに対応する位置よりも低速側であることを判別すると、目標電流値Aが中速位置Mに対応する設定上限電流値A2よりも小であるか否かを判別し(#45)、小であることが判別した場合には、#46にて現在の目標電流値Aから設定量αを加算した値を新たな目標電流値Aとして設定し、その後、#44の電流制御処理に移行することになる。
また、#45にて目標電流値Aが中速位置Mに対応する設定上限電流値A2よりも小でないこと判別した場合は、現在の目標電流値Aを設定上限電流値A2に設定して、#44の電流制御処理に移行することになる。
【0113】
図10は、上述した低速操作処理の制御作動を示すものである。
先ず、操作シリンダ56のピストンの位置を検出するポテンショメータ89の検出値Pが低速位置Lに対応する位置であるか否かを判別し(#61)、検出値Pが低速位置Lに対応する位置である場合には、メインフローに戻ることになる。
#61にて検出値Pが低速位置Lに対応する位置でないことを判別した場合には、検出値Pが低速位置Lに対応する位置よりも高速側であるか否かを判別し(#62)、高速側であることを判別すると、現在の目標電流値Aから設定量αを減算した値を新たな目標電流値Aとして設定し(#63)、電流検出センサーDにて検出される電流値aが新たな目標電流値Aになるように駆動回路93に対して電流増減指令を指令する電流制御処理を実行し(#64)、その後、メインフローに戻ることになる。
【0114】
#62にて検出値Pが低速位置Lに対応する位置よりも高速側でないこと、つまり、検出値Pが低速位置Hに対応する位置よりも低速側であることを判別すると、目標電流値Aが低速位置Lに対応する設定上限電流値A3よりも小であるか否かを判別し(#65)、小であることが判別した場合には、#66にて現在の目標電流値Aから設定量αを加算した値を新たな目標電流値Aとして設定し、その後、#64の電流制御処理に移行することになる。
また、#65にて目標電流値Aが低速位置Lに対応する設定上限電流値A3よりも小でないことを判別した場合は、現在の目標電流値Aを設定上限電流値A3に設定して、#64の電流制御処理に移行することになる。
【0115】
図11は、上述した補正処理の制御作動を示すものである。
先ず、株元センサ90にてオン状態(刈取作業状態)が検出され(#80)、車速センサ91にて検出される車速が設定車速以上であることが検出され(#81)、且つ、操作位置検出センサーQにて直進状態が検出されている(#82)と、すなわち、基準走行状態であると判別すると、その基準走行状態であると判別する状態が継続している間において、前回積算してから設定時間が経過したことを判別すると(#83)、そのときの電流検出センサーDにて検出される電流値aを積算値に加算して電流値を積算し且つ電流値を積算した積算値を図示しない不揮発性メモリに記憶する(#84)。又、積算した回数をカウントする(#85)。
【0116】
そして、1つの作業行程での刈取作業が終了して、株元センサ90がオン状態(刈取作業状態)からオフ状態(非刈取作業状態)に切り換わった直後であることを判別すると(#86)、積算した電流値の平均処理を行う(#87)。つまり、積算値を回数nで割って平均電流値Avを求める。次に、ローパス処理を実行する(#88)。このローパス処理につて具体的に説明すると、前回の作業行程にて求めた基準電流値Arに「9」を掛けたものと今回求めた平均電流値Avとを加算した値を「10」で割って新たな基準電流値Arを求める。このような処理を繰り返すことで極力、長い走行距離に亘って平均化した値に相当する値を得るようにしている。
【0117】
次に、中速位置Mに対応する設定上限電流値A2を、新たなに求めた基準電流値Arに補正して、併せて、高速位置Hに対応する設定上限電流値A1及び低速位置Lに対応する設定上限電流値A3も補正し(#89)、補正した設定上限電流値A1、A2、及び、A3を不揮発性メモリに更新記憶する(#90)。
【0118】
設定上限電流値A1、A2、及び、A3の補正について説明を加えると、電磁比例制御弁にて構成される圧力制御弁58における電流値と操作シリンダ56に供給する油圧の圧力(操作力)との関係は、図13に示すように、直線状に変化するが、図13に示す3本の特性線L1、L2、L3のうち、中央の特性線L2が生産段階で初期設定されている特性であり、今回検出された基準電流値Ar(A2)が、例えば、特性線L3上に位置しているものとすると、個体差によりバラつく場合、圧力が同じであるときにおける電流値は各特性線毎にオフセットするが、各特性線は直線の傾きは同じであり平行移動する状態で変化することが知られている。そこで、今回検出された基準電流値Ar(A2)が、特性線L3上に位置しているときは、中速位置Mに対応する設定上限電流値A2と同じ補正量にて、高速位置Hに対応する設定上限電流値A1及び低速位置Lに対応する設定上限電流値A3も同じように補正することができるのである。
しかも、上記基準走行状態であることにより、操作シリンダ56の油圧の圧力(操作圧)は、初期設定されている設定上限電流値A2であるときの圧力F2に近い値が出力されているものと推定するのである。
【0119】
〔別の実施形態〕
以下、本発明の別実施形態について説明する。
【0120】
(1)前記補正処理として、次のように制御を実行するものでもよい。
すなわち、制御装置が、作業状態検出手段としての株元センサにてオン状態(刈取作業状態)が検出されていると、前記基準走行状態であると判別するように構成され、且つ、前記基準走行状態であると判別すると、株元センサにてオン状態(刈取作業状態)が検出されている状態からオフ状態(非刈取作業状態)が検出される状態に切り換わる切り換わりタイミングよりも設定時間前から切り換わりタイミングまでの間に、油圧モータ7Mの斜板7Maを中速位置Mに維持させるときの圧力制御弁58に通電される電流値aに基づいて、設定上限電流値A1、A2、及び、A3を補正するように制御するものでもよい。
【0121】
図12は、別の実施形態の補正処理の制御作動を示すものである。
先ず、#100にて株元センサ90にてオン状態(刈取作業状態)が検出されると、すなわち、基準走行状態であると判別すると、その基準走行状態であると判別する状態が継続している間において、#101にて前回記憶してから設定時間が経過したことを判別すると、#102にて、そのときの電流検出センサーDにて検出される電流値aを不揮発性メモリに記憶する。尚、このとき、電流値aを時間の経過と対応つけて順次記憶するようにしている。
【0122】
そして、1つの作業行程での刈取作業が終了して、#103にて株元センサ90がオン状態(刈取作業状態)からオフ状態(非刈取作業状態)に切り換わった直後であることを判別すると、#104にて切り換わり時点よりも設定時間前に記憶した電流値aを基準電流値Arとして求める。次に、#105にて中速位置Mに対応する設定上限電流値A2を、新たに求めた基準電流値Arに補正し、併せて、高速位置Hに対応する設定上限電流値A1及び低速位置Lに対応する設定上限電流値A3も補正し、#89にて補正した設定上限電流値A1、A2、及び、A3を不揮発性メモリに更新記憶する。設定上限電流値A1、A2、及び、A3の補正のしかたは上記実施形態と同じである。
【0123】
(2)前記補正処理として、次のように制御を実行するものでもよい。
すなわち、上記実施形態及び上記(1)の別実施形態では、制御装置が、作業状態検出手段及びその他の検出手段の検出情報に基づいて自動で判別する構成としたが、このような構成に代えて、前記制御装置が、手動操作式の指令手段としての指示スイッチの操作指令に基づいて、前記補正処理を実行するようにしてもよい。
【0124】
具体的には、コンバインを移動走行状態に設定している状態で、コンクリート路面などの硬質で平坦な走行路面上を設定速度で走行させている状態で、操縦者が指示スイッチを操作して開始を指令すると、電流検出センサーDにて検出される電流値aを設定時間毎に繰り返し検出して記憶し、その後、操縦者が指示スイッチを再度操作して終了を指令すると、それまで記憶した複数の電流値の平均値を基準電流値Arとして求め、この基準電流値Arを高速位置Hに対応する設定上限電流値A1に補正し、併せて、設定上限電流値A2、A3を補正する。補正のしかたは上記各実施形態と同じである。
【0125】
(3)上記実施形態では、保持手段として、操作力が供給される油圧の圧力にて変更される油圧シリンダを例示したが、その他の構成のものを使用できる。
例えば、操作部を高速側に移動されるための駆動回転体と、その駆動回転体と操作部とを伝達力を変更調整自在な摩擦伝動機構を用いて連動連結して、摩擦伝動機構の伝達力を変更調整することにより、操作部を高速側に移動する操作力を変更調整できるように構成して実施できる。
そして、保持手段の操作力を変更調整する操作力調整手段は、保持手段の構成に応じて種々変更される。
【0126】
(4)上記実施形態では、操作部を維持させる設定目標位置が、高速位置、中速位置、及び、低速位置の異なる3つの位置である場合を例示したが、例えば、高速位置だけを設定目標位置として定める形態で実施してもよく、また、4つ以上の多数位置を設定目標位置として定める形態で実施してもよい。
【0127】
(5)上記実施形態では、設定上限値を、操作部を維持させる3つの設定目標位置の夫々に対して、低速側の設定目標位置ほど低くする状態で各別に定める場合を例示したが、例えば、高速位置に対応する設定上限値のみを定める形態で実施してもよい。
【0128】
(6)上記実施形態では、作業車としてのコンバインを例示したが、トラクター、運搬車等の各種の作業車に本願発明は適用できるものである。
【符号の説明】
【0129】
2 刈取処理部
4 脱穀装置
6 エンジン
7 静油圧式無段変速装置
7M 静油圧式無段変速装置の油圧モータ
7Ma 操作部(斜板)
56 保持手段(油圧シリンダ)
58 操作力調整手段(電磁比例弁)
79 制御手段
81,82 選択手段
89 位置検出手段
90 作業状態検出手段
91 車速検出手段
Q 操向状態検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力が伝達される走行用の静油圧式無段変速装置を備えた作業車の走行制御装置であって、
前記静油圧式無段変速装置の可変容量型の油圧モータにおける容量変更用の操作部が低速側に移動するのを高速側に移動操作する操作力にて保持する保持手段と、
大小に変化する指令値が大であるほど前記保持手段の操作力を大きくする形態で前記保持手段の操作力を変更調整する操作力調整手段と、
前記操作部の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出情報に基づいて、前記操作部を設定目標位置に維持させるように、前記操作力調整手段に指令する指令値を変更調整する制御手段とが設けられ、
前記制御手段が、
前記操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、設定上限値を超えて前記指令値を増加させない形態で、前記操作力調整手段に指令する前記指令値を変更調整するように構成され、且つ、
基準走行状態であることを判別すると、前記操作部を前記設定目標位置に維持させるときの前記指令値に基づいて前記設定上限値を補正するように構成されている作業車の走行制御装置。
【請求項2】
前記設定目標位置として、異なる位置となる複数の設定目標位置が定められ、
前記複数の設定目標位置のいずれかを選択する選択手段が設けられ、
前記制御手段が、前記複数の設定目標位置のうちで、前記選択手段にて選択された設定目標位置に前記操作部を維持させるように、前記操作力調整手段に指令する指令値を変更調整するように構成されている請求項1記載の作業車の走行制御装置。
【請求項3】
前記設定上限値が、前記複数の設定目標位置の夫々に対して、低速側の設定目標位置ほど低くする状態で定められている請求項2記載の作業車の走行制御装置。
【請求項4】
前記保持手段が、操作力が供給される油圧の圧力にて変更される油圧シリンダであり、
前記操作力調整手段が、前記指令値としての通電される電流値が大であるほど、前記保持手段の操作力を大きくする形態で前記油圧シリンダに供給する油圧の圧力を変更調整する電磁比例弁であり、
前記制御手段が、前記設定上限値に対応する設定上限電流値を超えて増加させない形態で前記電磁比例弁に通電する電流値を変更調整するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車の走行制御装置。
【請求項5】
前記エンジンが、作業車としてのコンバインに搭載されて、そのエンジンの動力が、刈取処理部及び脱穀装置に伝達されるものであり、
刈取作業状態であるか非刈取作業状態であるかを検出する作業状態検出手段が備えられ、
前記制御手段が、
前記作業状態検出手段にて前記刈取作業状態が検出されていると、前記基準走行状態であると判別するように構成され、且つ、
前記基準走行状態であると判別すると、前記作業状態検出手段にて前記刈取作業状態が検出されている状態から前記非刈取作業状態が検出される状態に切り換わる切り換わりタイミングよりも設定時間前から前記切り換わりタイミングまでの間に、前記操作部を前記設定目標位置に維持させるときの前記指令値に基づいて前記設定上限値を補正するように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車の走行制御装置。
【請求項6】
前記エンジンが、作業車としてのコンバインに搭載されて、そのエンジンの動力が、刈取処理部及び脱穀装置に伝達されるものであり、
刈取作業状態であるか非刈取作業状態であるかを検出する作業状態検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、直進状態であるか旋回状態であるかを検出する操向状態検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記作業状態検出手段にて前記刈取作業状態が検出されること、前記車速検出手段にて検出される車速が設定車速以上であること、及び、前記操向状態検出手段にて直進状態が検出されることの各条件が満たされると、前記基準走行状態であると判別するように構成され、且つ、
前記基準走行状態であると判別すると、その基準走行状態であると判別する状態が継続している間において、前記操作部を前記設定目標位置に維持させるときの前記指令値を平均処理した値に基づいて、前記設定上限値を補正するように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−164109(P2010−164109A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6049(P2009−6049)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】