説明

作業車両のタイヤ洗浄装置

【課題】従来、トラクタ等に作業車両に装備されるタイヤ洗浄装置は、洗浄ノズルが固定されて、タイヤに付着した泥土を十分除去することができなかった。また車体に装備された洗浄装置は、走行や作業時に視界の妨げとなったり、障害物を引っ掛け易いという課題が有った。
【解決手段】トラクタの車体1後部にに、貯水タンク2、取水装置3、ポンプ4、洗浄ノズル7を有するブーム28等から成る洗浄装置11を備える。前記ブーム28は、車体1後部に支持した回動アームに29に取り付けて、後輪6rに対する相対位置を変更自在に構成する。また前記ブーム28は、洗浄作業時には後輪上方へ位置させ、通常走行時には車体1の背面に沿わせて回動収納する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯水タンクや水路等から汲み上げた水を利用して、タイヤの泥土を洗い落とす作業車両のタイヤ洗浄装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用トラクタでは、ぬかるんだ畑や水田内を走行して作業を行うと、タイヤに多量の泥土が付着し、作業終了後そのまま一般道路へ移動すると、この泥土を路上に落とすこととなるので、事前に除去するのに大変な労力を要している。そこで、従来、特開2003−19949号公報(特許文献1参照)に示すように、トラクタ後部の安全フレームに水タンクを取り付け、該水タンクの下部に接続された水噴射用のモータに洗浄ノズルを備え、同ノズルから水を噴射して後輪を洗浄する装置が考えられている。
【特許文献1】特開2003-19949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した公報に開示されているタイヤ洗浄装置は、水タンクに連通した洗浄ノズルがタイヤ上方に固定されており、タイヤ周囲に広範囲に噴射する場合は、車体をジャッキアップしたり、車体を前後進させてタイヤを回転させる必要が生じる。また洗浄水の噴射方向がタイヤに対して一定であり、タイヤにこびり付いた泥土を効率的に除去できないという課題が有った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題に鑑みてこの発明の作業車両のタイヤ洗浄装置は以下のように構成した。
即ち、請求項1に記載した発明は、車体(1)に搭載した貯水タンク(2)に充填された水、又は取水装置(3)によって水源から取り出した水を、ポンプ(4)により圧力水として噴射する洗浄ノズル(7)が設けられ、該洗浄ノズル(7)は、タイヤ(6r)の左右幅方向に複数配列して構成され、前記タイヤ(6r)に対する相対位置を変更可能に構成したことを特徴とする作業車両のタイヤ洗浄装置。
【0005】
(請求項1の作用)
以上のように構成した作業車両のタイヤ洗浄装置では、複数の洗浄ノズル(7…)からタイヤ(6r)の左右幅に亘って、この噴射方向を変えながら洗浄水を噴射する。
【0006】
また請求項2の発明では、前記複数の洗浄ノズル(7)は、共通のブーム(28)に一体構成され、同ブーム(28)を前記タイヤ(6r)に対して洗浄水を噴射する作業位置と、車体に沿わせて位置させる収納位置とに変更自在に構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両のタイヤ洗浄装置。
(請求項2の作用)
以上のように構成した作業車両のタイヤ洗浄装置では、タイヤ洗浄時、洗浄ノズル(7)を備えたブーム(28)を適宜の位置へ位置させて、洗浄水を噴射する。また通常作業時や路上走行時には、ブーム(28)を車体に沿わせて位置させて収納する。
【発明の効果】
【0007】
これにより、まず請求項1の発明は、複数の洗浄ノズル(7…)をタイヤ(6r)に対して相対位置を変えることで、洗浄水の噴射方向を変えることができ、付着した泥に対し幾通りかの角度から洗浄水を当てることができるので、泥の除去効果が向上し洗浄作業の効率が向上する。
【0008】
また請求項2の発明では、洗浄ノズル(7)はブーム(28)に一体構成され、洗浄作業が終了すると、同ブーム(28)に沿わせて位置させることで、走行または作業に支障のない位置に移動できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を農業用トラクタ後部に搭載した形態に付いて図面に基づいて説明する。
タイヤ洗浄装置11は、図2と図3に示すように、貯水タンク2と電動式の取水ポンプ4及び散布装置11を備え、前記取水ポンプ4を駆動し、水路(水源)から汲み上げた水を貯水タンク2に充填し、同タンク2内の水を圧力水として洗浄ノズル7からタイヤ(以下、後輪6r)へ向かって噴射する構成としている。
【0010】
また前記貯水タンク2は、側面視逆L字型に形成され、キャビン12の外側で且つ操縦席13の下方から後方にかけて搭載している。そして、上記貯水タンク2は、上部に蓋を有する給水口14を備えると共に、タンク下部側部に取込口を開口して前記取水ポンプ4と接続する構成としている。これにより、前記貯水タンク2には、水道水などを給水口14から充填することもでき、また前記取水ポンプ4を駆動して水路等からも水を汲み上げて充填することができる。
【0011】
また前記取水ポンプ4は、図3に示すように、トラクタのボンネット8内に搭載したバッテリー16との間を電気コード17で通電可能に接続し、この途中にポンプ駆動スイッチ18を設け、キャビン室内からON、OFF操作可能に構成している。
【0012】
また前記取水ポンプ4には、取水ホース20と、これを巻き取るホースリール21、ホース先端部のフィルター3等から成る取水装置19を備え、前記フィルター3を水路内に沈めて前記ポンプ4を駆動することで洗浄水を汲み上げる構成となっている。また取水作業を行なわないときには、同ホースを前記ホースリール21に巻き取って収納する構成となっている。
【0013】
また前記取水ホース20の基部と前記取水ポンプ4との接続部には、切替バルブ22を設けており、この水路切替操作によって、前記ホース20からの水を貯水タンク2へ送る状態と、同ホース20からの水を後述する散布装置11へ送る状態と、ホース内水路を遮断して前記タンク2の水を散布装置11へ送る状態とに切り替える構成としている。
【0014】
これにより、トラクタが水路近くにある場合では、前記ホース20とポンプ4間の通水路を連通させて水路の水を直接散布装置11へ送って洗浄することができ、また水路から離れる場合は、前記ホース20とタンク2を連通させて洗浄水を一旦タンク2へ貯め、後に貯水タンク2と洗浄装置11を接続して水を使用することができる。
【0015】
また前記貯水タンク2は、水路から汲み上げた水を貯水タンク2に溜める場合、同タンク2が満タン状態となることが解るように、上部にフロート式のレベルゲージ23を設けると共に、満タン状態に達すると、リレー回路により前記取水ポンプ4のスイッチ18をOFFとする構成となっている。
【0016】
次に図1と図5と図6に基づいて散布装置11の構成を説明する。
トラクタ車体1の背面には、取付板26により左右方向の回動軸25aを有する支持管25が回動自在に取り付けられ、この左右両側に回動アーム29,29を立設支持すると共に、同アーム29,29の上端同士を水平方向のブーム取付管27にて接続している。そして、ブーム取付管27は、この左右両側に複数の洗浄ノズル7…を備えたブーム28を、外側に伸出した位置(洗浄作業位置)と上方を経由して内側まで回動した位置(収納位置)とに切替できるように回動自在に接続する構成としている。また前記左右のブーム28とブーム取付管27は、中空状のパイプ部材で構成され、前記接続部をホース24を介して連通しており、前記取水ポンプ4からの水をホース15及び支持管27を経由して左右のブーム28,28へ送水する構成としている。
【0017】
また前記ブーム28には、図4乃至図6に示すように、洗浄ノズル7を所定間隔を空けて複数備え、この散布幅は後輪6rの左右幅よりやや幅広に設定し、背面視においてそれぞれ噴射方向を後輪6rに向けている。即ち前記左右両端の洗浄ノズル7,7の噴射方向は、後輪6rの上部側面に対して所定角(略45度)に傾斜させて備え、後輪6rに対して圧力水を斜めから噴射する構成としている。 尚、図1に示す符号32は、取付管27の両端に設けた摩擦材を示し、ブームの回動位置を保持する構成と構成となっている。
【0018】
以上のように構成したトラクタでは、前記洗浄ノズル7を設けたブーム28は、図2の洗浄作業位置(図中実線)と、フェンダー10の下方に位置させる収納位置(図中仮想線)とに切替移動ができるように回動自在、即ち後輪6rに対する相対位置を変更可能に構成されている。そして、前記洗浄ノズル7を設けたブーム28は、洗浄作業が終了すると、前後方向において車体側に近づけて回動させ、更にブーム取付管27の両端を支点にして上方を経由して内側に折り曲げて、左右後輪6rの内側且つ車体の背面に沿わせて位置させる。
【0019】
これにより、タイヤ洗浄装置11は、このように内側まで収納すると、他の農作業、例えば、ロータリ耕耘装置で作業を行って、これを昇降移動しても何ら支障もおきることは無く、また作業時にも後方、特に作業機近傍の視界を妨げることが無い。また走行時においては、車体の左右側方または後方へ突出することが無いので、障害物を引っ掛けることも無い。
【0020】
また前記洗浄装置11は、洗浄ノズル7の全噴射幅を、後輪6rの左右幅に対して広範囲に設定し、その左右両端部の洗浄ノズル7をタイヤ表面に対し斜め方向から噴射する構成となっているので、泥土とタイヤの間に洗浄水を進入させて、タイヤにこびり付いた泥土を削り落とす効果を奏するので、単にタイヤ上から洗浄水を噴射する構成と比較して作業効率が良い。
【0021】
尚、この発明の別形態としては、前記回動アーム29に電動モータなどのアクチュエータを備え、別途電気スイッチ操作により作業状態と収納状態との間を動かす構成としても良い。また図7に示すように、ブーム取付管27を車体の前後方向に移動させ、フェンダー10下方で車体の背面に沿わせて収納する構成としても良い。
【0022】
次に前記洗浄装置11に接続する前輪洗浄装置について説明する。
図7と図8に示す前記洗浄装置11は、前記取付管27から分岐させた前輪送水ホース35を前方に延長して、その前端に、前輪6fの内側、詳しくはキングピン上部に固定した送水管36に接続する構成となっている。そして、送水管36の上端部には、正面視タイヤ形状に合わせて円弧形状に湾曲させたブーム37を備え、このブーム37に複数の噴射ノズル7,7…を備える構成となっている。これにより、この前輪洗浄装置では、前記ポンプ4を駆動すると、前輪6f及び後輪6r同時に洗浄することができる。
【0023】
次に、図9と図10に基づいて、前記洗浄装置の別形態について説明する。
この別形態の洗浄装置41は、携帯用のポリタンク(貯水タンク2に相当)42と、電動ポンプ43と、圧力タンク44と等を、ボンネット6前方位置で車体1に係止させるホルダ48内に備える構成としている。またこの洗浄装置41のポンプ43は、前記同様、車体1に搭載しているバッテリー16の電源を利用して駆動できるように接続し、キャビン12室内からの操作で洗車作業を開始・停止する構成となっている。
【0024】
これにより、前記洗浄装置11のように、車体後部に備える構成と比較して、車体に対し洗浄装置41の着脱操作が簡単で且つタンク42内に水を充填しておくと、トラクタのウェイトも兼用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(A)洗浄装置の斜視図。(B)洗浄装置の一部分解図。
【図2】トラクタの側面図。
【図3】取水装置の作用を示すトラクタの側面図。
【図4】洗浄装置の使用状態とトラクタの背面図。
【図5】洗浄装置の背面図。
【図6】洗浄装置の平面図。
【図7】別形態の洗浄装置を取り付けたトラクタの側面図。
【図8】前輪洗浄ノズルを示す正面図。
【図9】別形態を示す洗浄装置を取り付けたトラクタの側面図。
【図10】図9の一部断面した正面図。
【符号の説明】
【0026】
1 車体
2 貯水タンク
3 取水装置
4 電動式のポンプ
6r 後輪(タイヤ)
6f 前輪
7 洗浄ノズル
10 フェンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)に搭載した貯水タンク(2)に充填された水、又は取水装置(3)によって水源から取り出した水を、ポンプ(4)により圧力水として噴射する洗浄ノズル(7)が設けられ、該洗浄ノズル(7)は、タイヤ(6r)の左右幅方向に複数配列して構成され、前記タイヤ(6r)に対する相対位置を変更可能に構成したことを特徴とする作業車両のタイヤ洗浄装置。
【請求項2】
前記複数の洗浄ノズル(7)は、共通のブーム(28)に一体構成され、同ブーム(28)を前記タイヤ(6r)に対して洗浄水を噴射する作業位置と、車体に沿わせて位置させる収納位置とに変更自在に構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両のタイヤ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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