説明

作業車両の冷却装置

【課題】防塵効果を維持させながら十分な冷却効果を得ることが可能な作業車両の冷却装置を提供することを課題とする。
【解決手段】エンジンルーム11内に、エアを前面から取入れるラジエータ13と、該ラジエータ13前方に配置されたラジエータ防塵用の防塵具14とを備えた作業車両の冷却装置において、防塵具14を前方及び上方に延びるアングル状に形成し、防塵具の前方及び下方からエアを取入れ可能なように多数の通気孔14aを穿設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車両の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルーム内に、エアを前面から取入れるラジエータと、該ラジエータ前方に配置されたラジエータ防塵用の防塵具とを備えた特許文献1に示す作業車両の冷却装置が公知となっている。
【特許文献1】実開昭56−13511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記文献の作業車両の冷却装置は防塵具の前方のみからエアを取込む構造になっているため、状況によっては取込むエアの量が不足して冷却効果を十分に得られないことがあるという課題がある。一方、取込むエアの量を多くするために防塵具の通気孔を大きく形成すると防塵効果が低下するという課題がある。
本発明は上記課題を解決し、防塵効果を維持させながら十分な冷却効果を得ることが可能な作業車両の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明の作業車両の冷却装置は、第1にエンジンルーム11内に、エアを前面から取入れるラジエータ13と、該ラジエータ13前方に配置されたラジエータ防塵用の防塵具14とを備えた作業車両の冷却装置において、防塵具14を前方及び上方に延びるアングル状に形成し、防塵具の前方及び下方からエアを取入れ可能なように多数の通気孔14aを穿設したことを特徴としている。
【0005】
第2に、防塵具14とラジエータ13との間に作業者が掃除作業可能なスペースSが形成されるように前記防塵具14をラジエータ13から離間させて配置した特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明の作業車両の冷却装置によれは、防塵具の前方及び下方からエアを取入れることができるため、防塵機能を低下させることなくラジエータの冷却効率を向上させることができる。
【0007】
また、防塵具とラジエータとの間に作業者が掃除作業可能なスペースが形成されることにより、防塵具を取り外すことなく防塵具とラジエータとの間の掃除ができるため、利便性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の作業車両の冷却装置を適用したトラクタの全体斜視図である。本トラクタは、前後輪1,2を有する走行機体3と、走行機体3の後方に昇降自在に連結されるロータリ耕耘機等の作業機(図示しない)とから構成される。
【0009】
走行機体3のシャーシーフレーム4上の後半部にはオペレータが乗込むキャビン6が立設されている。キャビン6の前方には、左右の側壁であるサイドカバー7,7と、前壁であるフロントグリル8と、上方をカバーするボンネット9とにより構成されるエンジンルーム11(図2参照)が配置されている。
【0010】
なお、ボンネット9は後端部を回動支点として上下回動可能に構成されており、これによってエンジンルーム11上方を開放させ、内部のメンテナンスを行う。くわえて、左右のサイドカバー7,7、フロントグリル8及びボンネット9は、間に隙間が形成されないように密着させ、外部からエンジンルーム11内に埃等の粉塵が入込まないようになっている。
【0011】
図2,3は、エンジンルーム11内の側面図及び背面図である。エンジンルーム11内の後部には、シャーシーフレーム4に対して強固に固定された状態で、エンジン12が配置されている。くわえて、エンジンルーム11内におけるエンジン12の前方にはエンジン冷却装置であるラジエータ13が、エンジンルーム11内におけるラジエータ13の前方にはラジエータ防塵用の防塵具14がそれぞれ配置されている。そして、防塵具14の前方にボンネット9の前端部及びフロントグリル8が位置した状態になる。
【0012】
上記ラジエータ13は、エンジン12内を冷却して温度が上昇した冷却水等の冷媒が送込まれる上部タンク16と、上部タンク16からの冷媒を冷却しながら下方に移送するラジエータコア17と、ラジエータコアからの冷却済み冷媒が送込まれる下部タンク18とにより左右及び上下方向に延びる略直方体形状の本体部を構成している。そして、この本体部の両側面及び上面を囲繞する正面視略逆U字型のラジエータフレーム19を介して、ラジエータ13はシャーシーフレーム4に固設されている。
【0013】
ラジエータコア17は、冷媒が、ラジエータコア17の上部から下部に移送されていく過程で、正面側から背面側に吹き抜けるエアによって効率良く冷却されるように構成されている。なお、ラジエータコア17の背面側には、周面がファンシュラウド21によって囲繞された冷却ファン22と、ラジエータ13の前方の空間と後方の空間とを隔てる隔壁23とが設けられており、ラジエータコア17の正面側から効率良くエアを流入できるようになっている。
【0014】
また、隔壁23の上端部及び左右の側端部は正面視略逆U字形をなす帯状のウェザーラップ24によって覆われており、このウェザーラップ24が左右のサイドカバー7,7内面及び閉じた状態のボンネット9内面に密着し、間に隙間を生じにくくしている。これによってもラジエータコア17正面側から効率良くエアを流入できる構成になっている。
【0015】
なお、エンジン12内の冷媒は入力パイプ26を介して上部タンク16まで移送される。一方、下部タンク18内の冷却された冷媒は出力パイプ27を介してエンジン12内に戻される。
【0016】
上記防塵具14は、粉塵を通さない程度の径を有する通気孔14aが多数且つ満遍なく穿設された方形状の金属製板状部材であるパンチングプレートを屈曲形成することにより得られる側面視略L字形のアングル状部材である。折り曲げ形成した部分の内、一方側が略水平な床部28になり、他方側が上記床部28の後端部から垂直に起立した起立部29となる。なお、パンチングメタルではなく、防塵網等によって上記防塵具14を構成してもよい。
【0017】
床部28は、シャーシーフレーム4にボルト等で強固に固定されている。そして、床部28の下方から、床部28の通気孔14aを介して、エンジンルーム11内にエアを流入できるようになっている。
【0018】
起立部29の上端部及び左右の側端部は正面視逆U字形をなす帯状のウェザーラップ31によって覆われており、このウェザーラップ31が左右のサイドカバー7,7内面及び閉じた状態のボンネット9内面に密着するため、左右のサイドカバー7と防塵具14との間及びボンネット9と防塵具14との間に隙間が生じにくくなる。このことにより、ラジエータ13の正面側に粉塵が入り込むことが防止され、防塵効果が向上する。
【0019】
また、防塵具14は、起立部29とラジエータ13との間に作業者が掃除作業可能なスペースSが形成されるように、ラジエータ13から離間させて配置している。これによって、ラジエータ13と防塵具14との間で行う掃除等のメンテナンスが容易になる。
【0020】
なお、ラジエータ13と防塵具14との間には、スペースSを囲繞するように固定プレート32(固定具)が設けられている。この固定プレート32は、後端がラジエータフレーム19の正面側に取付けられる一方で、前端部が起立部29の背面側に取付けられている。これによって、起立部29はラジエータ13に対して強固に固定される。
【0021】
上記フロントグリル8には、フロントグリル防塵具33が設けられており、このフロントグリル防塵具33に穿設された通気孔33aを介して、エンジンルーム11内にエアを流入する。なお、フロントグリル防塵具33はパンチングメタルであってもよいし、網であってもよい。また、フロントグリル8はシャーシーフレーム4上にピン等で固定されているが、メンテナンス等のために取外しが可能になっている。
【0022】
上記ボンネット9には、ボンネット防塵具34が設けられており、このフロントグリル防塵具34に穿設された通気孔34aを介して、エンジンルーム11内にエアを流入する。なお、ボンネット防塵具33はパンチングメタルであってもよいし、網であってもよい。
【0023】
以上、走行機体3の前側からのエアは、フロントグリル防塵具33又はボンネット防塵具34を通過した後、防塵具14の起立部29を通過して、ラジエータ13に送込まれる。一方、走行機体3の下側からのエアは、防塵具14の床部28を通過した後、起立部29を通過してラジエータ13に送込まれる。すなわち、外部のエアは二重のフィルターを介して、ラジエータ13に送込まれることになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の作業車両の冷却装置を適用したトラクタの全体斜視図である。
【図2】エンジンルーム11内の側面図である。
【図3】エンジンルーム11内の背面図である。
【符号の説明】
【0025】
11 エンジンルーム
13 ラジエータ
14 防塵具
14a 通気孔14
S スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム(11)内に、エアを前面から取入れるラジエータ(13)と、該ラジエータ(13)前方に配置されたラジエータ防塵用の防塵具(14)とを備えた作業車両の冷却装置において、防塵具(14)を前方及び上方に延びるアングル状に形成し、防塵具の前方及び下方からエアを取入れ可能なように多数の通気孔(14a)を穿設した作業車両の冷却装置。
【請求項2】
防塵具(14)とラジエータ(13)との間に作業者が掃除作業可能なスペース(S)が形成されるように前記防塵具(14)をラジエータ(13)から離間させて配置した請求項1の作業車両の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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