説明

作業車両

【課題】エンジンルームの吸気口に設置された網又は多数の通気孔が穿設された板よりなる防塵カバーを振動させる振動装置を備え、防塵カバーに付着した付着物を取除くことが可能な作業車両において、利便性が高く、振動装置の配置構成の自由度も高い作業車両を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、エンジンルーム11の吸気口11aに設置された網又は多数の通気孔が穿設された板よりなる防塵カバー17と、吸気口11aから防塵カバー17を介してエンジンルーム11内に吸気された冷却風によって空冷されるエンジン冷却装置14と、防塵カバー17を振動させる振動装置18とを備え、振動装置18によって防塵カバー17を振動させることにより、防塵カバー17に付着した付着物を取除く作業車両において、制御部を設けるとともに、振動装置18を制御部の指令によって自動的に所定のタイミングで駆動制御可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンルームの吸気口に設置された網又は多数の通気孔が穿設された板よりなる防塵カバーを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルームの吸気口に設置された網又は多数の通気孔が穿設された板よりなる防塵カバーと、吸気口から防塵カバーを介してエンジンルーム内に吸気された冷却風によって空冷されるエンジン冷却装置とを備えた作業車両が従来公知であるが、エンジンルーム内への吸気によって防塵カバーの外面側に屑や埃等が付着して、これによって、防塵カバーの通気性が低下し、冷却効率が悪くなるという問題があった。
【0003】
この問題に対して、防塵カバーを振動させる振動装置を備え、振動装置によって防塵カバーを振動させることにより、防塵カバーに付着した付着物を取除き、冷却性能を持続させることが可能な特許文献1に示す作業車両が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭55−28833号公報(第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記文献の作業車両は、作業者の手動操作が連係機構を介して機械的に伝えられことにより振動装置が作動し、防塵カバーに付着した付着物の除去が行われるため、連係機構をコンパクトにするためには、手動操作具と振動装置との距離を短くする必要がある等、振動装置の配置位置が制限される他、付着物を除去する場合に、その都度、作業者が手動操作によって振動装置を作動させる必要があり、利便性が低いという課題がある。
本発明は、上記課題を解決し、エンジンルームの吸気口に設置された網又は多数の通気孔が穿設された板よりなる防塵カバーを振動させる振動装置を備え、防塵カバーに付着した付着物を取除くことが可能な作業車両において、利便性が高く、振動装置の配置構成の自由度も高い作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の作業車両は、第1に、エンジンルーム11の吸気口11aに設置された網又は多数の通気孔が穿設された板よりなる防塵カバー20と、吸気口11aから防塵カバー20を介してエンジンルーム11内に吸気された冷却風によって空冷されるエンジン冷却装置14と、防塵カバー20を振動させる振動装置18とを備え、振動装置18によって防塵カバー20を振動させることにより、防塵カバー20に付着した付着物を取除く作業車両において、制御部を設けるとともに、振動装置18を制御部の指令によって自動的に所定のタイミングで駆動制御可能に構成してなることを特徴としている。
【0007】
第2に、エンジンルーム11内に冷却風を吸気する吸気ファン16と、該吸気ファン16の駆動・駆動停止を行う駆動装置37を設け、振動装置18の駆動時には前記駆動装置37を介して吸気ファン16の駆動停止が行われるように制御部を構成してなることを特徴としている。
【0008】
第3に、電動モータ53と、該電動モータ53の出力軸53aに偏心されて取付けられた錘54とにより、振動装置18を構成してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように構成される本発明の作業車両によれば、制御部からの指令によって振動装置を適宜駆動・駆動停止させることにより、防塵カバーから付着物を自動的に除去できるため、作業者の手動操作が連係機構を介して機械的に伝えられることにより振動装置が振動作動して防塵カバーに付着した付着物の除去が行われる場合と比べ、利便性が向上する他、連係機構も不要になって振動装置の配置構成の自由度が増すという効果がある。
【0010】
また、エンジンルーム内に冷却風を吸気する吸気ファンと、該吸気ファンの駆動・駆動停止を行う駆動装置を設け、振動装置の駆動時には前記駆動装置を介して吸気ファンの駆動停止が行われるように制御部を構成すれば、防塵カバーを振動させる際には、冷却風の吸引が停止されるため、より効率的に防塵カバーから付着物を除去できるという効果がある。
【0011】
さらに、電動モータと、該電動モータの出力軸に偏心されて取付けられた錘とからなるシンプルな構造の振動装置を用いることにより、製造コストを低減させることが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の作業車両を適用したコンバインの全体側面図である。
【図2】エンジンルーム内の構成を示す要部正面図である。
【図3】吸気ファンの動力伝動構成を示す動力伝動系統図である。
【図4】ファンクラッチが接続された状態のエンジンの側面図である。
【図5】ファンクラッチが切断された状態のエンジンの側面図である。
【図6】振動装置の配置箇所を示すエンジンカバー内面側の斜視図である。
【図7】振動装置の側面図である。
【図8】振動装置の分解斜視図である。
【図9】本発明の別実施形態を示すエンジンの側面図である。
【図10】図9に示す電磁クラッチの構成を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の作業車両を適用したコンバインの全体側面図である。図示するコンバインは、左右のクローラ式走行装置である走行部1L,1Rによって支持された走行機体2と、走行機体2の前部に昇降駆動可能に連結された前処理部3とを備え、左右の走行部1L,1Rによって圃場を走行しながら、前処理部3によって圃場の穀稈の刈取作業を行うように構成されている。
【0014】
走行機体2のフレーム部である機体フレーム4上の右半部前側には、オペレータが乗込む操縦部を覆うキャビン6が立設され、機体フレーム4上の右半部後側には、穀粒を収納するグレンタンク7が配設され、機体フレーム4上の左半部には、穀稈の脱穀処理等を行う脱穀装置(図示しない)が設置されている。前処理部3で刈取られた穀稈は、脱穀装置によって脱穀・選別されて穀粒となり、グレンタンク7内に収容される。グレンタンク7内の穀粒は、グレンタンク7の後部側に左右回動可能且つ上下揺動可能に支持された円筒状のオーガ8によって機外に排出される。
【0015】
図2は、エンジンルーム内の構成を示す要部正面図である。図1及び2に示すように、本コンバインでは、上述の各種機器を駆動させる動力を発生させるエンジン9が、キャビン6の下方且つグレンタンク7の前方に位置するエンジンルーム11内に収納固定されている。
【0016】
該エンジンルーム11は外側方(図示する例では、右側方)が開放され、この開放側が吸気口11aをなし、エンジンルーム11内のエンジン9と、吸気口11aとの間には、外側(図示する例では、右側)から内側に向かって順番に、コンデンサ12とオイルクーラー13とラジエータ(エンジン冷却装置)14とが配置され、ラジエータ14とエンジン9との間に位置してエンジン動力によって駆動される吸気ファン16によって、外側からエンジンルーム11内への吸気が行われる。この吸気された冷却風によって、通気性を有するコンデンサ12、オイルクーラー13及びエジエータ14がまとめて空冷され、キャビン6内を冷却するエアコンユニット(図示しない)の冷媒と、潤滑油と、エンジン9の冷却水とが冷却される。
【0017】
この冷却風のエンジンルーム11内への吸気の際には、外側からエンジンルーム11内に屑や埃等の入り込む虞があるが、吸気口11aには該吸気口11aを覆って閉塞する開閉自在なエンジンカバー17が設置され、このエンジンカバー17に設けられた開口部を網又は多数の通気孔が穿設された板から構成される防塵カバー20で通気性を確保した状態で覆っており、このような通気性を有するエンジンカバー17によって吸気口11aを覆っているため、エンジンルーム11内への吸気を妨げること無く上記屑や埃等の入り込みを防止できる。
【0018】
なお、エンジンカバー17の内面側には、エンジンカバー17の防塵カバー20の外面側等に付着した屑や埃等の付着物を、エンジンカバー17を振動させることにより取除く振動装置18が設置されており、この振動作動によって、エンジンカバー17の通気性が悪化して空冷効率が低下することも防止される。
【0019】
次に、図3乃至5に基づき吸気ファンのエンジン動力の伝動構成について説明する。
図3は、吸気ファンの動力伝動構成を示す動力伝動系統図であり、図4は、ファンクラッチが接続された状態のエンジンの側面図であり、図5は、ファンクラッチが切断された状態のエンジンの側面図である。
【0020】
エンジン9上部の吸気ファン16配置側には、冷却水を循環させるウォータポンプ19及びオルタネータ21と、ウォータポンプ19から外側に突出してウォータポンプ19を駆動する左右方向のポンプ駆動軸22及び該ポンプ駆動軸22と一体回転するポンプ駆動プーリ23と、オルタネータ21から外側に突出してオルタネータ21を駆動する左右方向のオルタネータ駆動軸24及び該オルタネータ駆動軸24と一体回転するオルタネータ駆動プーリ26と、がそれぞれ配置される。
【0021】
上記ポンプ駆動軸22の先端側には、ポンプ駆動プーリ23の外側に位置するファン駆動プーリ28が回転自在に支持されており、このファン駆動プーリ28の回転中心はポンプ駆動軸22の軸心上に配置されている。そして、ファン駆動プーリ28に動力が伝動されることにより、吸気ファン16が駆動され、エンジンルーム11内に冷却風が吸気される。
【0022】
一方、上記ポンプ駆動プーリ23の真下には、伝動プーリ29が配置されるとともに、上記ファン駆動プーリ28の真下には、上記伝動プーリ29の外側に位置した状態でファン伝動プーリ31が配置されており、この伝動プーリ29及びファン伝動プーリ31は、エンジン9の出力軸であるクランク軸32に取付けられて該クランク軸32と一体回転するように構成されている。
【0023】
そして、上記オルタネータ駆動プーリ26、ポンプ駆動プーリ23及び伝動プーリ29には、伝動ベルト33が巻き掛けられ、オルタネータ駆動プーリ26及びポンプ駆動プーリ23にエンジン動力がベルト伝動される一方で、ファン伝動プーリ31とファン駆動プーリ28にも、ファン伝動ベルト34が巻き掛けられており、このファン伝動ベルト34の環状内側には、該ファン伝動ベルト34のテンションを調整することによりファン伝動プーリ31からファン駆動プーリ28への動力伝動を断続するテンションプーリよりなるファンクラッチ36が設置されている。
【0024】
このファンクラッチ36は、吸気ファン16の駆動・駆動停止を行う駆動装置37の一部を構成している他、上記ファン伝動ベルト34側には、ファンクラッチ36が切断された際に、ファン伝動ベルト34の緩みを所定方向にガイドしてファン伝動ベルト34のズレ落ちを防止する複数の後述するベルトガイド38,39,41,42が設けられている。
【0025】
上記駆動装置37は、ファン伝動プーリ31の外側に位置して先端側にファンクラッチ36である上述のテンションプーリを回転自在に支持する一方で基端側が側面視クランク軸32を支点に前後揺動されるクラッチアーム43と、ファンクラッチ36の接続側にクラッチアーム43を付勢する引張スプリング等の弾性部材44と、ファン伝動ベルト34の環状外側における前後の一方側(図示する例では後側)に前後揺動可能な状態で配置された操作アーム46と、操作アーム46の基端部側に設けられて該操作アーム46を前後揺動駆動される電動モータであるクラッチモータ47と、該操作アーム46及びクラッチモータ47が取付支持される操作側ブラケット48と、操作アーム46の先端部の円弧状の移動軌跡に沿うように操作側ブラケット48に穿設された円弧孔48aを介して操作アーム46先端部に一端側を取付ける一方で他端側がクラッチアーム43の基端部に取付けられた前後方向の連結ワイヤ49と、を備えている。
【0026】
クラッチモータ47を駆動して操作アーム46を前後の一方側(図示する例では後側)である切断側に揺動作動させることにより、連結ワイヤ49が引張作用して弾性部材44の弾性力に抗してファンクラッチ36を切断作動させる側にクラッチアーム43が揺動されるとともに、クラッチモータ47を駆動して操作アーム46を前後の他方側である接続側に揺動作動させることにより、連結ワイヤ49の引張作用が解除されて弾性部材44の付勢力によってファンクラッチ36を接続作動させる側にクラッチアーム43が揺動される。
【0027】
このクラッチモータ47を制御部の出力側に接続することにより、駆動装置37は、マイコンからなる制御部(図示しない)からの電気的な制御信号(指令)によって、吸気ファン16の駆動・駆動停止を行うように構成される。
【0028】
上記複数のベルトガイド38,39,41,42は、全てファン伝動プーリ31の環状外側に配置され、1つが、上下方向に延びてファン伝動ベルト34を前側及び下側からファン伝動プーリ31側に寄せるとともに前側からファン駆動プーリ28側に寄せる前側ベルトガイド38となり、1つが、ファン伝動ベルト34を後側からファン駆動プーリ28側に寄せる後側ベルトガイド39となり、1つが、クラッチアーム43の先端側に固定されてファンクラッチ36の切断時にファン伝動ベルト34を後側からファンクラッチ36側に寄せるファンクラッチ側ベルトガイド41となり、1つが、クラッチアーム43の基端側に配置されてファンクラッチ36の切断時にファン伝動ベルト34を後側からクラッチアーム43の基端側に寄せるクラッチアーム側ベルトガイド42になる。
【0029】
これらの4つのベルトガイド38,39,41,42によって、ファンクラッチ36が切断された際、ファン伝動ベルト34の緩み部分が、ベルトガイド38,39,41,42が設けられていないファン駆動プーリ28の上方に案内され、これによって、ファンクラッチ36の切断時のファン伝動ベルト34のズレ落ちが防止される。
【0030】
次に、図6乃至8に基づき振動装置の構成について詳述する。
図6は、振動装置の配置箇所を示すエンジンカバー内面側の斜視図であり、図7,8は、振動装置の側面図及び分解斜視図である。振動装置18は、エンジンカバー17の内面側に設置されている。
【0031】
エンジンカバー17は、前後の一方側(図示する例では後側)がヒンジ51(図1参照)を介して走行機体2側に支持され、前後の他方側にはエンジンカバー17の閉状態時のロック及びロック解除を行うロックハンドル52が設けられており、上述の振動装置18は、エンジンカバー17内面側の前後におけるロックハンドル52と反対側である後側に設置されている。
【0032】
振動装置18は、電動モータ53と、該電動モータ53の出力軸53aに偏心された状態で取付けられた錘54から構成されている。電動モータ53は、出力軸53aが下方に突出する姿勢で後述の手段により取付支持されている。錘54は、電動モータ53から近い側の円柱状の偏心部56と、径が偏心部56よりも小さく電動モータ53から遠い側の円柱状の非偏心部57とを有し、これらが一体成形されることにより、構成されている。
【0033】
偏心部56は、出力軸53aの軸心上から平行にずらされている一方で、非偏心部57は、出力軸53aの軸心上に位置している。また、偏心部56の電動モータ53側端面には、出力軸53aを挿入させる挿入孔56aが穿設され、偏心部56の外周面には、該外周面から上記挿入孔56aに至り且つ偏心部56の軸方向に対して直交するネジ孔56bが穿設されている。そして、挿入孔56aに出力軸53aを挿入した状態で、上記ネジ孔56bに、出力軸53aと当接する位置まで、外周にネジが形成された棒状のストッパー58を、係合挿入し、ネジ止めすることにより、錘54が電動モータ53の出力軸53aに取付固定される。このようにして錘54が取付けられた状態で、電動モータ53を駆動させると、偏心された錘54によって、振動装置18全体が振動し、この振動をエンジンカバー17に伝えることによって、エンジンカバー17全体を振動させる。
【0034】
この振動装置18の取付手段について説明すると、エンジンカバー17内面の上部及び下部に左右方向のフレーム側ブラケット59をそれぞれ溶着し、この上下一対のフレーム側ブラケット59,59の間に上下方向の支持フレーム61を架設固定し、この支持フレーム61に支持体62を上下位置調整可能にボルト固定し、この支持体62に上述の振動装置18を取付ける。
【0035】
支持フレーム61は平面視L字状をなす上下方向のアングル状部材であって、L字をなすように2方向に突出する一方側がエンジンカバー17内面側に対して平行方向になり、他方側がエンジンカバー17に対して垂直方向にエンジンカバー17側からエンジン9側に突出する突出部63になり、この突出部63に上下方向に長い長孔63aを穿設し、この長孔63aに挿通される上下一対の取付ボルト64,64によって、支持体62が上下位置調子可能にボルト固定される。
【0036】
支持体62は、支持フレーム61側にボルト固定されて電動モータが取付けられる支持ブラケット66と、電動モータ53の出力軸53aに取付けられた錘54を補助的に支持する補助ブラケット67と、を備えている。
【0037】
上記支持ブラケット66は、エンジンカバー17に対して略平行な状態で近接する方形板状の本体部68と、本体部68の左右の支持フレーム61側端部からエンジン9側に延設されて支持フレーム61にボルト固定される上下方向に長い方形板状の固定部69と、本体部68の上下方向中途部からエンジン9側に向かって水平に延設されて電動モータ53が取付支持される支持部71とを備え、これらが平面視L字状のアングル状部材と背面視L字状のアングル状部材とを組合せることにより形成されている。
【0038】
固定部69の上部及び下部にはそれぞれPナット72が固着されており、支持フレーム61の長孔63aに挿通される上下の取付ボルト64,64が上下のPナット72、72にボルト止めされることにより、支持ブラケット66が支持フレーム61にボルト固定される一方で、取付ボルト64,64を緩めることにより、支持ブラケット66が支持フレーム61に対して上下位置調整可能な状態になる。
【0039】
支持部71には、下方に突出した電動モータ53の出力軸53aを上下に挿通させる挿通孔71aが穿設されており、該挿通孔71aに上側から出力軸53aを挿通させ、一対の取付ネジ73、73によって電動モータ53の出力軸53a側端部を支持部71にネジ止めすることにより、電動モータ53が支持部71に取付固定される。また、電動モータ53と本体部68との間には、板状弾性部材であって両者に当接するゴムプレート74が介挿されており、このゴムプレート74によって、振動装置18で発生した振動を支持体62に伝え易くなると共に駆動音を抑える効果がある。ちなみに、このようにして、電動モータ53を支持ブラケット66に取付固定した後、電動モータ53の出力軸53aに上記錘54を取付ける。
【0040】
上記補助ブラケット67は、側面視上方が開放されたU字状をなすチャネル状部材の前後一対の上部を、互いが離間する側に屈曲形成することにより構成されており、この屈曲された部分が上記支持部71への取付箇所となり、該前後の各取付箇所には取付孔67aが穿設されている。また、補助ブラケット67の窪んだ底面側には、錘54の非偏心部57が挿入又は挿通されて錘54を回転自在に支持する滑り軸受であるメタルブッシュ76が設置されている。
【0041】
支持部71に基端側が固着されて先端側が下方に突出する一対のPボタン77,77は、挿通孔71aを挟んで対称配置されている。この一対のPボタン77,77が取付孔67aに挿通され且つ非偏心部57が回転自在にメタルブッシュ76に支持されるようにして、補助ブラケット67の上述の各取付箇所を支持部71に当接させ、該一対の取付孔67aからそれぞれ突出した一対の各Pボタン77先端部に取付ナット78を係合させて締付けることにより、錘54が補助的に支持された状態で、補助ブラケット67が支持ブラケット66に取付固定される。
【0042】
上記支持構成によって、電動モータ53の出力軸53aの先端側に取付けられた錘54が、メタルブッシュ76によって安定的に支持されるため、余分な騒音を発生させずに、錘54の他の部材との不要な接触が防止された状態で、振動装置18によって、エンジンカバー17を効率的な振動させることが可能になる他、錘54の上下及び前後が補助ブラケット67によって囲繞され、電動モータ53の駆動力により偏心された錘54が外れて、支持体62側から飛出すことが防止される。
【0043】
そして、電動モータ53を上述の制御部の出力側に接続することにより、振動装置18は制御部からの電気的な制御信号(指令)によって駆動制御可能に構成される。この制御部は、電動モータ53を駆動させてエンジンカバー17を振動させる振動装置18の駆動時には、駆動装置37によって吸気ファン16を駆動停止させてエンジンルーム11への吸気を停止するように構成されており、これによって自動的に所定タイミングでエンジンカバー17に付着した付着物を効率的に除去することが可能になる。
【0044】
制御内容を簡単に説明すると、制御部は通常モードで予め設定された時間刈取作業を継続したことを判断すると防塵モードに切り替り、所定時間だけ駆動装置37によって吸気ファン16を駆動停止させると共に振動装置18を駆動させる。その後、防塵モードで予め定められた時間が経過したことを判断すると通常モードに切り替り、駆動装置37により吸気ファン16を駆動させると共に振動装置18の駆動を停止させる。その後、刈取作業を継続している間は通常モードと防塵モードを繰り返すように制御される。
【0045】
以上のように構成される本コンバインによれば、ストッパー58のネジ孔56bからの挿脱によって出力軸53aに取付けられた錘54を交換できるため、サイズや形状の異なる錘54を複数用意し、これらを適宜選択して電動モータ53の出力軸53aに取付けることにより、所望の振動をエンジンカバー17に加えて、付着物のエンジンカバー17からの除去をより効率的に行うことが可能になる。
【0046】
また、振動装置18がエンジンカバー17に上下位置調整可能に取付支持されているため、所望の振動をエンジンカバー17に加えることがさらに容易になり、付着物のエンジンカバー17からの除去効率がさらに向上する。
【0047】
なお、上述の振動装置18では、ストッパー58及びネジ孔56bを1つ設けたが、出力軸53aの軸心に対して対称配置されるように、ストッパー58及びネジ孔56bをそれぞれ一対設けてもよい。この一対のストッパー58によって、補助ブラケット67を設置すること無く出力軸53aに取付けられた錘54を安定的に回転作動させることが可能になる他、一対の各ストッパー58のネジ孔56への挿入量を調整することにより、出力軸53aに対する錘54の傾きを調整することも可能になる。
【0048】
次に、図9及び10に基づき、本発明の別実施形態について、前述の例と異なる部分を説明する。
図9は、本発明の別実施形態を示すエンジンの側面図であり、図10は、図9に示す電磁クラッチの構成を示す要部側面図である。ファン伝動ベルト34の環状内側に配置されたテンションプーリ79は、前述の例とは異なりテンションクラッチを構成せず、ファン伝動ベルト34に常時テンションを与えるので、ファン伝動プーリ31の動力は、常時、ファン駆動プーリ28に伝動される。一方、吸気ファン16への動力を断続させるファンクラッチは、電磁クラッチ81によって構成される。
【0049】
この電磁クラッチ81の構成について説明すると、ファン伝動プーリ31は、クランク軸32の軸心上に回転自在に配置され、このファン伝動プーリ31とクランク軸32との間に、上記電磁クラッチ81が配置されており、この電磁クラッチ81によって、クランク軸32からファン伝動プーリ31へ動力伝動が断続される。そして、この電磁クラッチ81は制御部に接続されており、制御部からの電気的な制御信号(指令)によって、断続制御される。すなわち、この電磁クラッチ81は駆動装置37を構成している。
【符号の説明】
【0050】
11 エンジンルーム
11a 吸気口
14 ラジエータ(エンジン冷却装置)
16 吸気ファン
18 振動装置
20 防塵カバー
37 駆動装置
53 電動モータ
53a 出力軸
54 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム(11)の吸気口(11a)に設置された網又は多数の通気孔が穿設された板よりなる防塵カバー(20)と、吸気口(11a)から防塵カバー(20)を介してエンジンルーム(11)内に吸気された冷却風によって空冷されるエンジン冷却装置(14)と、防塵カバー(20)を振動させる振動装置(18)とを備え、振動装置(18)によって防塵カバー(20)を振動させることにより、防塵カバー(20)に付着した付着物を取除く作業車両において、制御部を設けるとともに、振動装置(18)を制御部の指令によって自動的に所定タイミングで駆動制御可能に構成してなる作業車両。
【請求項2】
エンジンルーム(11)内に冷却風を吸気する吸気ファン(16)と、該吸気ファン(16)の駆動・駆動停止を行う駆動装置(37)を設け、振動装置(18)の駆動時には前記駆動装置(37)を介して吸気ファン(16)の駆動停止が行われるように制御部を構成してなる請求項1の作業車両。
【請求項3】
電動モータ(53)と、該電動モータ(53)の出力軸(53a)に偏心されて取付けられた錘(54)とにより、振動装置(18)を構成してなる請求項1又は2の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−30533(P2011−30533A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182254(P2009−182254)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】