説明

作業車輌の原動部構造

【課題】ラジエータファンによる外気の吸入効率に優れる手段を提供する。
【解決手段】ラジエータ(21)の機体内側に配置した正転状態と非駆動状態とに切り替え可能な外気吸入用のラジエータファン(26)と、ラジエータ(21)の機体内側に配置した逆転状態と非駆動状態とに切換可能な排塵ファン(27)を設け、該ラジエータファン(26)と排塵ファン(27)とを同一軸心上に設け、逆転状態から非駆動状態に切換られた後における排塵ファン(27)の慣性による排気風量よりも、非駆動状態から正転状態に切換られた後におけるラジエータファン(26)の外気吸入風量を大に設定する構成としたことにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータの外側に設置された濾過体に付着する藁屑、塵埃を除去し、エンジンのオーバヒートを防止する作業車輌の原動部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等の作業車輌には水冷式エンジンが使用されている。エンジンにより温度上昇した冷却水は、ラジエータを循環することにより冷却された後、再びエンジンを循環する。
コンバインは、穀稈の刈取、脱穀、選別、排藁処理を行う過程で、前部の刈取装置からは、立毛穀稈の切断や搬送によって藁屑や塵埃が発生し、後部からは、脱穀処理や脱穀後の排稈切断処理によって発生した藁屑、塵埃等を排出するので、コンバインの機体周囲には多量の藁屑や塵埃が巻き上げられる。この巻き上げられた藁屑等がエンジンカバーやラジエータカバーの濾過体に付着し、これらの濾過体が目詰まった場合、濾過体の外側から内側に十分な外気を吸入することができなくなり、冷却器の冷却効率が低下し、場合によってはエンジンがオーバヒートする恐れがある。
【0003】
上記問題を解決するため、特許文献1には、テンション操作体を移動することによりラジエータの内側に設けたファンの正転状態と逆転状態を切換え、ラジエータの冷却及びラジエータカバーの濾過体に付着した藁屑、塵埃等の除去を行なう構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001―263063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術において、ファンを逆転させる場合には、ファンの慣性による正転に抗して反転駆動力を伝達することになるため、このファンの逆転速度が安定するまで長い時間を要する。このため、ファンの正転状態から逆転状態への切換、逆転状態から正転状態への切換を短時間で行なうことはできず、安定した風量を供給できない。
したがって、ファンの回転方向を反転させた直後の風量が小さくなり、正転状態におけるラジエータの冷却効率が低下し、逆転状態においてはラジエータカバーの濾過体に付着した藁屑、塵埃等の除去効率が低くなるために、正転状態でのラジエータの冷却効率が更に低下してエンジンがオーバヒートしやすくなる問題があった。
そこで、本発明の主たる課題は、かかる問題点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
エンジン(11)の冷却水を冷却するラジエータ(21)と、該ラジエータ(21)の外側に配置した外気濾過用の濾過体(24)と、前記ラジエータ(21)の機体内側に配置した正転駆動状態と非駆動状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン(26)と、前記ラジエータ(21)の機体内側に配置した逆転駆動状態と非駆動状態とに切換可能な排気用の排塵ファン(27)と、
前記ラジエータファン(26)の正転駆動状態と非駆動状態との切換および排塵ファン(27)の逆転駆動状態と非駆動状態との切換を行なう駆動状態切換手段(45)とを設け、
前記ラジエータファン(26)と排塵ファン(27)を同一軸心上に設けると共に、
逆転駆動状態から非駆動状態に切換られた後における排塵ファン(27)の慣性での逆転による排気風量よりも、非駆動状態から正転駆動状態に切換られた後におけるラジエータファン(26)の外気吸入風量を大に設定したことを特徴とする作業車輌の原動部構造である。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記ラジエータファン(26)の羽根(26B)の基部を支持する中心部(26C)の直径よりも、排塵ファン(27)の羽根(27B)の基部を支持する中心部(27C)の直径を小さくしたことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の原動部構造である。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記ラジエータファン(26)の羽根(26B)の枚数よりも、排塵ファン(27)の羽根(27B)の枚数を少なくしたことを特徴とする請求項1又は2記載の作業車輌の原動部構造である。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記ラジエータファン(26)の回転速度よりも、排塵ファン(27)の回転速度を高速に設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0010】
請求項5に係る発明は、作業クラッチ(104,115)が接続された後に前記駆動状態切換手段(45)が作動する構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0011】
請求項6に係る発明は、作業クラッチ(104,115)が接続された場合に、ラジエータファン(26)を正転駆動状態から非駆動状態へ切り換えると共に排塵ファン(27)を非駆動状態から逆転駆動状態へ切り換える排塵モードを第1設定時間に亘り継続し、該第1設定時間経過後に、ラジエータファン(26)を非駆動状態から正転駆動状態へ切り換えると共に排塵ファン(27)を逆転状態から非駆動状態へ切り換える冷却モードを第2設定時間に亘り継続し、以後、該排塵モードの実行と冷却モードの実行とを背反的に反復して実行するように前記駆動状態切換手段(45)を制御する構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0012】
請求項7に係る発明は、前記ラジエータファン(26)よりも機体内側に排塵ファン(27)を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0013】
請求項8に係る発明は、前記排塵ファン(27)を支持する筒状回転軸(27A)内を貫通してラジエータファン(26)の回転軸(26A)を設け、排塵ファン(27)及びラジエータファン(26)をエンジン(11)の出力により駆動する構成としたことを特徴とする請求項7記載の作業車輌の原動部構造である。
【0014】
請求項9に係る発明は、前記ラジエータファン(26)よりも機体外側に排塵ファン(27)を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0015】
請求項10に係る発明は、前記ラジエータファン(26)を支持する筒状回転軸(26D)内を貫通して排塵ファン(27)の回転軸(27D)を設け、排塵ファン(27)及びラジエータファン(26)をエンジン(11)の出力により駆動する構成としたことを特徴とする請求項9記載の作業車輌の原動部構造である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、ラジエータファン(26)の正転駆動状態と非駆動状態との切換および排塵ファン(27)の逆転駆動状態と非駆動状態との切換を行なう駆動状態切換手段(45)とを設けていることから、切換え構造を簡易にでき信頼性も高まる。また、ラジエータファン(26)と排塵ファン(27)を同一軸心上に設けていることから、ラジエータファン(26)及び排塵ファン(27)をコンパクトに配置することができる。さらに、駆動状態切換手段(45)により逆転駆動状態から非駆動状態に切換られた後における排塵ファン(27)の慣性での逆転による排気風量よりも、非駆動状態から正転駆動状態に切換られた後におけるラジエータファン(26)の外気吸入風量を大に設定していることから、ラジエータファン(26)の非駆動状態から正転駆動状態の切換時に、排塵ファン(27)が慣性力により逆転状態を維持して排気風を送風していても、ラジエータファン(26)によって外気を機体内側へ吸入することができ、ラジエータ(21)の冷却効率を向上させることができる。
その結果、エンジン(11)のオーバヒートを効果的に防止して作業能率を高めることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、ラジエータファン(26)の羽根(26B)の基部を支持する中心部(26C)の直径よりも、排塵ファン(27)の羽根(27B)の基部を支持する中心部(27C)の直径を小さくしたことから、ラジエータファン(26)の正転状態時に、排塵ファン(27)によるラジエータファン(26)の外気の吸入能力の低下を更に抑制することができ、エンジン(11)のオーバヒートを効果的に防止できる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、ラジエータファン(26)の羽根(26B)の枚数よりも、排塵ファン(27)の羽根(27B)の枚数を少なくしたことから、ラジエータファン(26)の正転状態時に、停止状態の排塵ファン(27)によるラジエータファン(26)の外気の吸入能力の低下を更に抑制することができ、エンジン(11)のオーバヒートを効果的に防止できる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、ラジエータファン(26)の回転速度よりも、排塵ファン(27)の回転速度を高速に設定したことから、排塵ファン(27)の逆転状態時に、濾過体(24)の内側から外側に向かう排気風量を多くすることができ、濾過体(24)に付着した藁屑、塵埃等の除去能力を高めることができ、エンジン(11)のオーバヒートを効果的に防止できる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、作業クラッチ(104,115)が接続された後に駆動状態切換手段(45)が作動することから、外気濾過用の濾過体(24)に多量の藁屑、塵埃等が付着する作業時にのみに、駆動状態切換手段(45)が作動するので、この駆動状態切換手段(45)の耐久性が向上し、ラジエータファン(26)と排塵ファン(27)との切換時に発生する駆動音も低減することができる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、排塵モードと冷却モードを交互に反復して実行するので、ラジエータ(21)の冷却性能を維持しながら、作業時に濾過体(24)に付着する塵埃等を効果的に除去することができる。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、ラジエータファン(26)よりも機体内側に排塵ファン(27)を設けたことから、ラジエータファン(26)がラジエータ(21)の内側面に接近し、ラジエータファン(26)によるラジエータ(21)の冷却を効率よく行なえ、エンジン(11)のオーバヒートを効果的に防止できる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の発明の効果に加えて、排塵ファン(27)を支持する筒状回転軸(27A)内を貫通してラジエータファン(26)の回転軸(26A)を設け、排塵ファン(27)及びラジエータファン(26)はエンジン(11)の出力により回転することから、ラジエータファン(26)と排塵ファン(27)を同一軸心上に配置しながら互いに異なった速度で回転させることができ、このラジエータファン(26)と排塵ファン(27)をコンパクトに配置できると共に、エンジン(11)のオーバヒートを効果的に防止できる。
【0024】
請求項9記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、ラジエータファン(26)よりも、機体外側に排塵ファン(27)を設けたことから、この排塵ファン(27)がラジエータ(21)の内側面に接近し、また、排塵ファン(27)の逆転状態において、ラジエータファン(26)が排塵ファン(27)の排気風の抵抗にならないので、濾過体(24)に付着した藁屑、塵埃等の除去能力を更に高めることができ、エンジン(11)のオーバヒートを効果的に防止できる。
【0025】
請求項10記載の発明によれば、請求項記9載の発明の効果に加えて、ラジエータファン(26)を支持する筒状回転軸(26D)内を貫通して排塵ファン(27)の回転軸(27D)を設け、排塵ファン(27)及びラジエータファン(26)はエンジン(11)の出力により回転する構成としたことから、排塵ファン(27)とラジエータファン(26)を同一軸心上に配置しながら互いに異なった速度で回転させることができ、このラジエータファン(26)と排塵ファン(27)をコンパクトに配置できると共に、エンジン(11)のオーバヒートを更に効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態のコンバインの右面図である。
【図2】第1実施形態のコンバインの左面図である。
【図3】第1実施形態のコンバインの平面図である。
【図4】第1実施形態のコンバインの背面図である。
【図5】第1実施形態のラジエータファンと排塵ファンの要部拡大正面図である。
【図6】第1実施形態の原動部の要部拡大側面図である。
【図7】第1実施形態の原動部の要部拡大裏面図である。
【図8】第1実施形態のラジエータファンと排塵ファンの動力伝達図である。
【図9】第1実施形態の原動部の要部拡大側面図である。
【図10】第1実施形態のラジエータファンの動作説明図である。
【図11】第1実施形態の排塵ファンの動作説明図である。
【図12】第1実施形態のコンプレッサの動作説明図である。
【図13】第2実施形態のラジエータファンと排塵ファンの要部拡大正面図である。
【図14】第2実施形態の原動部の要部拡大側面図である。
【図15】第2実施形態の原動部の要部拡大裏面図である。
【図16】第3実施形態のラジエータファンと排塵ファンの要部拡大正面図である。
【図17】第3実施形態の原動部の要部拡大側面図である。
【図18】第3実施形態の原動部の要部拡大裏面図である。
【図19】第1実施形態のエンジンルームの要部拡大側面図である。
【図20】第1実施形態のエンジンルームの要部拡大上面図である。
【図21】第1実施形態のエンジンルームの要部拡大側面図である。
【図22】第1実施形態のエンジンルームの要部拡大上面図である。
【図23】第1実施形態のギアボックスの要部拡大上面図である。
【図24】第1実施形態のインタークーラ等の要部拡大正面図である。
【図25】第1実施形態のインタークーラ等の要部拡大上面図である。
【図26】第1実施形態のインタークーラ等の要部拡大側面図である。
【図27】第1〜第3実施形態のコントローラのブロック線図である。
【図28】第1〜第3実施形態のコントローラのフローチャートである。
【図29】第1〜第3実施形態のコンバインの動力図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の作業車輌の原動部構造の第1実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態は、作業車輌としてコンバインを例示してあるがコンバインに限定されるものではなく、トラクター、田植機等の農業用作業車輌にも適用できるものである。
【0028】
以下の説明において、コンバイン1の機体内側を「内側」、機体外側を「外側」といい、キャビン9内の操作席(図示省略)に着座する操作者から見て右手側を「右側」、左手側を「左側」、上方側を「上方」、下方側を「下方」、コンバインの進行方向を「前側」と、後退方向を「後側」という。
【0029】
「正転」とは機体外側から機体内側に向かい外気を吸入するファンの回転方向をいい、「逆転」とは機体内側から機体外側に向かい内気を送風するファンの回転方向をいい、「停止」とはファンが正転および逆転していないファンの休止状態をいうものとする。
【0030】
すなわち、後述するラジエータファン26における「正転」とは、図6、図14、図17にS1で示すように、ラジエータカバー22の目抜き鉄板などからなる濾過体24を介して機体外側からラジエータ21に向かって外気を吸入し送風するラジエータファン26の回転方向をいう。また、図27で示すように、ラジエータファン26(電動モータ45)は、コントローラ84により正転駆動状態および非駆動状態の切換が行なわれる。
【0031】
排塵ファン27における「逆転」とは、図6、図14、図17にS2で示すように、ラジエータカバー22の濾過体24を介して機体内側から機体外側に向かって内気を排気し送風する排塵ファン27の回転方向をいう。また、図27で示すように、排塵ファン27は、コントローラ84により逆転駆動および非駆動状態の切換が行なわれる。
【0032】
エンジン冷却用ファン14における「正転」とは、図20のS3で示すように、エンジンカバー15の目抜き鉄板などからなる外気濾過用の濾過体16を介して機体外側からエンジン11に向かって外気を吸入し送風するエンジン冷却用ファン14の回転方向をいい、「逆転」とは、図20にS4で示すように、エンジンカバー15の濾過体16を介して機体内側から機体外側に向かい内気を送風するエンジン冷却用ファン14の回転方向をいう。また、エンジン冷却用ファン14は、図27で示すように、コントローラ84により正転駆動、逆転駆動および非駆動状態の切換が行なわれる。
【0033】
「排気風量」とは機体内側から機体外側に向かい排気される内気の風量をいい、図5、図13、図16に示す排塵ファン27の排塵羽根27B,27Eの平面投影面積と排塵ファン27の回転速度を乗算することに求めることができる。「吸入風量」とは機体外側から機体内側に向かい吸入される外気の風量をいい、図5、図13、図16に示すラジエータファン26のラジエータ用羽根26Bの平面投影面積とラジエータファン26の回転速度を乗算することに求めることができる。なお、AMCA STANDARD 210によるダブルチャンバー方式により「排気風量」及び「吸入風量」を求めた場合、風量を高い精度で求めることができる。
【0034】
図1〜図4には、本発明の原動部構造を有するコンバイン1が示されている。コンバイン1の車台2の下方には土壌面を走行するための左右一対のクローラからなる走行装置3が設けられ、車台2の上方左側には脱穀および選別をする為の脱穀装置4が設けられ、脱穀装置4の前側には刈取装置6が設けられ、刈取装置6の前側には穀稈掻込用のリール5が設けられている。
【0035】
リール5で掻き込まれた刈稈は刈取装置6に備えた刈刃(図示省略)で刈り取られ脱穀装置4に送られる。脱穀装置4で脱穀および選別された穀粒は脱穀装置4の右側に設けられたグレンタンク7に貯留され、貯留された穀粒は穀粒排出筒8により外部へ排出される。
【0036】
車台2の上方右側には操作者が搭乗する操作席を備えたキャビン9が設けられ、操作席の下方後側にはエンジンルーム10が設けられている。
図19〜図22に示すように、エンジンルーム10の後側にはコンバイン1の駆動源であるエンジン11設けられ、エンジン11の前側にはエンジン11の燃焼用の混合気を冷却するインタークーラ12、昇降用シリンダ及びミッション駆動用オイルを冷却するオイルクーラ57A,57B、エンジン11の冷却水が循環するラジエータ21が、ラジエータカバー22の内側に順に配置されている。なお、インタークーラ12はエンジン11の吸気経路であるマニホールド13に接続されており、オイルクーラ57A,57Bはオイルタンク89の供給口に接続されている。
【0037】
エンジン11とエンジンカバー15との間には、正逆転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のエンジン冷却用ファン14が設けられている。エンジン冷却用ファン14はエンジン冷却用羽根14Bとエンジン冷却用中心部14Cとにより構成され、エンジン冷却用中心部14Cはエンジン冷却用モータ14Aの回転軸に軸支されている。なお、エンジン冷却用モータ14Aはモータ支持枠(図示省略)により支持され、車台2に取付けられている。
【0038】
エンジン11の駆動時にあっては、エンジン11を冷却するため、エンジン冷却用ファン14は正転し、エンジンカバー15の濾過体16を介し、コンバイン1の外側から内側に外気を吸入する。一方、後述する排塵ファン27の逆転時には、エンジンカバー15の濾過体16に付着した藁屑、塵埃等を除去するため、エンジン冷却用ファン14は逆転し、コンバイン1の内側から外側に内気を送風する。
【0039】
保守、点検作業時の安全を高めるため、エンジン冷却用ファン14とエンジンカバー15との間には、エンジン冷却用ファン14の外周を囲む濾過目合いの小さい保護カバー94が設けられ、保護カバー94はエンジンリアフレーム91と操作フレーム92とに脱着自在に取付けられている。また、保護カバー94の内側には、金属繊維を編体にした保護ネット97が設けられ、保護ネット97は、エンジンリアフレーム91と操作フレーム92とに両端部が固定された上部補強フレーム98と下部補強フレーム99とに脱着自在に取付けられている。さらに、 保守、点検作業時の安全を高めるため、エンジン各部の潤滑用オイルの油量低下や劣化を調べるオイルレベルゲージ95の把持部は、保護カバー94の上方に臨む位置に設けられている。
【0040】
図24〜図26に示すように、エンジンルーム10の前側には、ラジエータカバー22の内側に外側から内側に向かいエンジン11の燃焼用の混合気を冷却するインタークーラ12、昇降用シリンダ駆動用オイルを冷却するオイルクーラ57A、ミッション潤滑用オイルを冷却するオイルクーラ57B及びエンジン11の冷却水が循環するラジエータ21が一定の間隔を空けて設けられ、オイルクーラ57Aはオイルクーラ57Bの上方に一定の間隔を空けて設けられている。
後述するラジエータファン26の正転時に、エンジンカバー15の濾過体16を介し、コンバイン1の外側から内側に外気の吸入効率を高めるため、インタークーラ12は多孔が形成されたステー96により支持部材(図面省略)に取付けられている。インタークーラ12のステー96と同様に、オイルクーラ57A,57ABのステーも多孔が形成されたステーを用いることができる。
【0041】
図5〜図7に示すように、第1実施形態は正転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン26の内側に逆転状態と回転停止状態とに切換可能な排塵ファン27が設けられている。
ラジエータファン26はラジエータ用羽根26Bとラジエータ用中心部26Cとにより構成され、ラジエータ用中心部26Cは、後述する筒状回転軸である排塵ファン27の排塵用回転軸27Aの内側を貫通するラジエータ用回転軸26Aに軸支されている。また、排塵ファン27は排塵用羽根27Bと排塵用中心部27Cとにより構成され、排塵用中心部27Cは回転軸27Aに軸支されている。
【0042】
ラジエータファン26はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,62を介し伝動され正転し、排塵ファン27はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,63及び作動プーリ64を介し伝動され逆転する。また、ラジエータファン26が軸支されたラジエータ用回転軸26Aと排塵ファン27が軸支された筒状回転軸である排塵用回転軸27Aは、相互にベアリング61を介し同一軸心上に設けられている。
【0043】
第1実施形態におけるラジエータファン26のラジエータ用羽根26Bは7枚であり排塵ファン27の排塵用羽根27Bは4枚である。また、ラジエータファン26の有効直径は排塵ファン27の有効直径に対して約145%大きく、ラジエータファン26のラジエータ用中心部26Cのボス直径は排塵用中心部27Cのボス直径対して約135%大きく形成されている。
排塵ファン27の回転数はラジエータファン26の回転数に対し約2倍大きく設定されている。なお、ラジエータファン26及び排塵ファン27の回転数は、後述するプーリ31,33,62,63,64等の直径、作動ギヤのキヤ64C,64Dの直径を変更することにより任意に設定することができる。
【0044】
ラジエータファン26のラジエータ用回転軸26A及び排塵ファン27の排塵用回転軸27Aはフレーム80の連結パイプ93内に設けられ、ラジエータファン26及び排塵ファン27はフレーム80と一体となり車台2から脱着することができる。
【0045】
フレーム80は前方フレーム87と後方フレーム88と前方フレーム87と後方フレーム88とを連結する連結パイプ93とにより構成されている。
前方フレーム87の上部外側にはラジエータファン26のラジエータ用羽根26Bの内側部分の外周及び排塵ファン27は排塵用羽根27Bの外周を囲む第2シュラウド82の下片部が取付けられ、前方フレーム87の上部内側と第2シュラウド82の上片部とには第2シュラウド82の上下方向の剛性を高めるため一定の間隔を有して一対の支持片86が取付けられている。また、支持片86の中部内側と第2シュラウド82の左片部とには
第2シュラウド82の左右方向の剛性を高めるため支持片86Aが取付けられている。
後方フレーム88の上部外側にはテンションローラ37,37Aの回転軸41,41Aを軸支する上部片90Aが取付けられ、後方フレーム88の中部内側にはギアボックス64を固定する中部片90Bが取付けられ、後方フレーム88の下部外側には車台2に後方フレーム88と取付ける下部片90Cが取付けられている。
連結パイプ93の外側部は支持片86及び支持片86Aに固定され、連結パイプ93の内側部は後方フレーム88及び上部片90Aに固定されている。
よって、ラジエータファン26、排塵ファン27、テンションローラ37,37A、ギアボックス64の保守、点検作業時には、フレーム80を車台2から取外して容易に行なうことができる。
【0046】
第2シュラウド82の形状は、ラジエータファン26による外気の吸入を効率的に行ない、また、排塵ファン27の内部から外側への送風を効率的に行なうため、ラジエータファン26の形状に近似した八角形状に形成されている。
第2シュラウド82は薄板状の鋼板により成形加工されており、八角形状の第2シュラウド82のそれぞれの対角辺の幅W2がラジエータファン26の外径Dに対し約105%に形成されている。
特に、排塵ファン27による内部から外側への送風を効率的に行なうため、排塵ファン27の排塵用羽根27Bの外周部位を覆っている。これにより、排塵ファン27の逆転時に、第2シュラウド82により区画された部位に存在する内気に排塵ファン27の逆転力が効率的に作用し区画された部位に存在する内気を効率的に外側に送風することができる。
なお、第2シュラウド82の形状は、八角形状に制限されることはなく六角形状等の多角形状、ラジエータファン26の外周に沿う円形形状にすることもでき、また、第2シュラウド82を排塵ファン27の全幅を覆うように延伸させることもできる。
【0047】
また、ラジエータファン26による外気の吸入によりラジエータ21を効率的に冷却するため、ラジエータファン26のラジエータ用羽根26Bの外周部位をラジエータ21の内側面に取付けられた第1シュラウド(図示省略)により囲むことができる。
第1シュラウド81の形状は、第2シュラウド82と同様にラジエータファン26の外周に沿わせて円形状あるいは多角形状に形成し、ラジエータファン26による外気の吸入の抵抗を小さくするため、第1シュラウドは薄板状の鋼板により成形加工する。
【0048】
図8〜図9に示すように、エンジン11のクランク軸31Aの回転をラジエータファン26に伝動するため、エンジン11のクランク軸31Aに軸支されクランク軸31Aと一体となって回転するプーリ31と、プーリ31に対向する位置に設けられた中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Aと、中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Cに対向する位置に設けられたラジエータ用回転軸26Aに軸支されラジエータ用回転軸26Aと一体となって回転するプーリ62には、それぞれベルト35,72がベルト掛けされている。なお、クラッチ部材38は、コントローラ84により作動状態の切換が行なわれる。
【0049】
エンジン11のクランク軸31Aの回転を排塵ファン27に伝動するため、エンジン11のクランク軸31Aに軸支されクランク軸31Aと一体となって回転するプーリ31と、プーリ31に対向する位置に設けられた中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Aと、中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Bと、プーリ33Bに対向する位置に設けられたギアボックス64の中間軸65Aに軸支され中間軸65Aと一体となって回転するプーリ64Aと、ギアボックス64の中間軸65Bに軸支され中間軸65Bと一体となって回転するプーリ64Bに対向する位置に設けられた排塵用回転軸27Aに軸支され排塵用回転軸27Aと一体となって回転するプーリ63には、それぞれベルト35,71,73がベルト掛けされている。
ギアボックス64は、入力側の中間軸65Aに軸支されたギヤ64Cと出力側の中間軸65Bに軸支されたギヤ64Dとが噛合い、例えば、入力側のプーリ64Aが時計方向に回転する場合、出力側のプーリ64Bは反時計方向に回転する。
なお、ギヤ64Cと中間軸65A及びギヤ64Dと中間軸65Bは一体に形成することもできる。また、排塵ファン27に換え、反対方向に傾斜した排塵羽根27Bを有する排塵ファン27を用いた場合、ギアボックス64を介在させる必要はなく部品点数を削減することができる。
【0050】
エンジン11のクランク軸31Aの回転をコンプレッサ66に伝動するため、エンジン11のクランク軸31Aに軸支されクランク軸31Aと一体となって回転するプーリ31と、プーリ31に対向する位置に設けられた中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Aと、中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Bと、プーリ33Bに対向する位置に設けられた入力軸66Aに軸支され入力軸65Aと一体となって回転するプーリ67には、それぞれベルト35,71,がベルト掛けされている。
なお、プーリ31に対向する位置に設けられた中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Dは、ラジエータミッション101の入力軸101Bに軸支され入力軸101Bと一体となって回転するプーリ101Aには、ベルト(図示省略)が掛け回されている。
【0051】
図10に示すように、ラジエータファン26を正転駆動し、排塵ファン27の駆動を停止する場合、回転軸41に軸支され回転軸41を中心に回転するアーム42を時計方向に回転させ、アーム42の先端部に設けられたテンションローラ37をプーリ33Cとプーリ62にベルト掛けされたベルト72に押圧しベルト72を緊張させ、エンジン11のクランク軸31Aの回転をプーリ62が軸支された回転軸26Aに伝動する。
一方、回転軸41Aに軸支され回転軸41Aを中心に回転するアーム42Aを時計方向に回転させ、アーム42Aの先端部に設けられたテンションローラ37Aをプーリ64Bとプーリ63にベルト掛けされたベルト73から離間させベルト73のテンションを弱め、エンジン11のクランク軸31Aの回転のプーリ63が軸支された回転軸27Aへの伝動を遮断する。
【0052】
アーム42は、電動モータ(駆動状態切換手段)45で回動される円板46により直動される圧縮スプリングを有する連動リンク74により時計方向または反時計方向に回転され、アーム42Aは、アーム42を回転させる同一の電動モータ45で回動される円板46により直動される圧縮スプリングを有する連動リンク74Aにより時計方向または反時計方向に回転される。
なお、電動モータ45は後述するコントローラ84により制御されており、脱穀装置4を起動する作業クラッチ(脱穀クラッチ)104または刈取装置6を起動する作業クラッチ(刈取クラッチ)115が入力されていない場合、操作者が誤って電動モータ45の駆動入力操作をしても電動モータ45は作動しない。また、ラジエータファン26の慣性による正転、排塵ファン27の慣性による逆転を強制的に停止するため、アーム42,42Aにそれぞれブレーキ板(図示省略)を設けることができる。
【0053】
図11に示すように、ラジエータファン26の駆動を停止し、排塵ファン27を正転駆動する場合、回転軸41に軸支され回転軸41を中心に回転するアーム42を反時計方向に回転させ、アーム42の先端部に設けられたテンションローラ37をプーリ33Cとプーリ62にベルト掛けされたベルト72から離間させベルト72のテンションを弱め、エンジン11のクランク軸31Aの回転のプーリ62が軸支された回転軸26Aへの伝動を遮断する。
一方、回転軸41Aに軸支され回転軸41Aを中心に回転するアーム42Aを反時計方向に回転させ、アーム42Aの先端部に設けられたテンションローラ37Aをプーリ64Bとプーリ63にベルト掛けされたベルト73に押圧しベルト73緊張させ、エンジン11のクランク軸31Aの回転をプーリ63が軸支された回転軸27Aに伝動する。
【0054】
ラジエータファン26の正転駆動/駆動停止状態の切換えをラジエータファン26が軸支された回転軸26Aのプーリ62と中間軸に軸支されたプーリ33Cとに掛け回されているベルト72のテンションで行なうことから、ラジエータファン26の正転/停止状態の切換えを短時間で行なうことができる。
排塵ファン27の逆転駆動/駆動停止状態の切換えを排塵ファン27が軸支された回転軸27Aのプーリ63と別の中間軸に軸支されたプーリ64Bとに軸架されているベルト73のテンションで行なうことから、排塵ファン27の逆転/停止状態の切換えを短時間で行なうことができる。
また、ラジエータファン26の正転駆動/駆動停止状態を切換えるアーム42および排塵ファン27の逆転/停止状態の切換えるアーム42Aが一つの電動モータ45により行なわれていることから、切換え構造を簡易にでき信頼性が高まる。
【0055】
図12に示すように、コンプレッサ66はエンジン11からの駆動力により駆動されるプーリ33Bと、ギアボックス64のプーリ64Aとコンプレッサ66に駆動力を入力するプーリ67とに掛け回したベルト71を緊張状態に保つテンションローラ37Bによって常時駆動する。
なお、以下のようにコンプレッサ66の作動を任意に停止する構成としても良い。コンプレッサ66を作動させる場合、回転軸41Bに軸支され回転軸41Bを中心に回転するアーム42Bを時計方向に回転させ、アーム42Bの先端部に設けられたテンションローラ37Bをプーリ33Bとプーリ67にベルト掛けされたベルト71に押圧しベルト71のテンションを強め、エンジン11のクランク軸31Aの回転をプーリ67が軸支された入力軸66Aに伝動する。
一方、コンプレッサ66を停止させる場合、テンションローラ37Bをプーリ33Bとプーリ67にベルト掛けされたベルト71から離間させベルト71のテンションを弱め、エンジン11のクランク軸31Aの回転のプーリ67が軸支された入力軸66Aへの伝動を遮断する。
【0056】
図23に示すように、ギアボックス64は、プーリ33Bと対向する位置に設けられた入力側の中間軸65Aに軸支されたプーリ64Aと、排塵用回転軸27Aに軸支されたプーリ63と対向する位置に設けられた出力側の中間軸65Bに軸支されたプーリ64Bと、中間軸65Aに軸支されたギヤ64Cと、中間軸65Bに軸支されたギヤ64Dとから構成され、ギヤ64Cとギヤ64Dは相互に噛み合っている。
ギアボックス64を小型化するために、入力側の中間軸65Aは入力側のケース60Aに内装されたベアリング70Aを介しケース60Aに回転自在に取付けられ、中間軸65Aと一体で形成したギヤ64Cの内周には、出力側ケース60Bに形成された軸60Dに軸支されたベアリング68Bが内装されている。
一方、出力側の中間軸65Bは出力側のケース60Bに内装されたベアリング70Bを介しケース60Bに回転自在に取付けられ、中間軸65Bと一体で形成したギヤ64Dの内周には、入力側ケース60Aに形成された軸60Cに軸支されたベアリング68Aが内装されている。なお、部品の共用化によってコストの低減を図るため、ギアボックス64のケース60A、60B及び中間軸65A、65B等は同一形状に形成されている。
【0057】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
図13〜図15に示すように、第2実施形態は正転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン26の外側に逆転状態と回転停止状態とに切換可能な排塵ファン27が設けられている。
ラジエータファン26はラジエータ用羽根26Bとラジエータ用中心部26Cとにより構成され、ラジエータ用中心部26Cは、筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Dに軸支されている。
排塵ファン27は排塵用羽根27Bと排塵用中心部27Cとにより構成され、排塵用中心部27Cはラジエータファン26の筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Dの内側を貫通する回転軸27Dに軸支されている。
【0058】
ラジエータファン26はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,62を介し伝動され正転し、排塵ファン27はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,63及びギアボックス64を介し伝動され逆転する。また、ラジエータファン26が軸支された筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Dと排塵ファン27が軸支された排塵用回転軸27Dは、相互にベアリング61を介し同一軸心上に設けられている。
【0059】
第2実施形態におけるラジエータファン26のラジエータ用羽根26Bは7枚であり排塵ファン27の排塵用羽根27Bは4枚である。また、ラジエータファン26の有効直径は排塵ファン27の有効直径に対して約145%大きく、ラジエータファン26のラジエータ用中心部26Cのボス直径は排塵用中心部27Cのボス直径対して約135%大きく形成されている。また、排塵ファン27の回転数はラジエータファン26の回転数に対し約2倍大きく設定されている。なお、ラジエータファン26及び排塵ファン27の回転数は、プーリ31,33,62,63,64等の直径、作動ギヤのキヤ64C,64Dの直径を変更することにより任意に設定することができる。
【0060】
ラジエータファン26のラジエータ用回転軸26D及び排塵ファン27の排塵用回転軸27Dはフレーム80の連結パイプ93内に設けられ、ラジエータファン26及び排塵ファン27はフレーム80と一体となり車台2から脱着することができる。
【0061】
第2実施形態の場合、排塵ファン27の逆転時に、ラジエータファン26により排塵ファン27の内側から外側に向かう送風が阻害されず、ラジエータカバー22の濾過体24に付着した藁屑、塵埃等の除去能力を高めることができる。
【0062】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
図15〜図17に示すように、第3実施形態は正転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン26の内側に逆転状態と回転停止状態とに切換可能な排塵ファン27が設けられている。
ラジエータファン26はラジエータ用羽根26Bとラジエータ用中心部26Cとにより構成され、ラジエータ用中心部26Cは、筒状回転軸である排塵ファン27の排塵用回転軸27Aの内側を貫通するラジエータ用回転軸26Aに軸支されている。また、排塵ファン27は排塵用羽根27Eと排塵用中心部27Cとにより構成され、排塵用中心部27Cは回転軸27Aに軸支されている。
【0063】
ラジエータファン26はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,62を介し伝動され正転し、排塵ファン27はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,63及び作動プーリ64を介し伝動され逆転する。また、ラジエータファン26が軸支されたラジエータ用回転軸26Aと排塵ファン27が軸支された筒状回転軸である排塵用回転軸27Aは、相互にベアリング61を介し同一軸心上に設けられている。
【0064】
第3実施形態におけるラジエータファン26のラジエータ用羽根26B及び排塵ファン27の排塵用羽根27Eは共に7枚である。また、ラジエータファン26の有効直径は排塵ファン27の有効直径に対して約145%大きく、ラジエータファン26のラジエータ用中心部26Cのボス直径は排塵用中心部27Cのボス直径対して約135%大きく形成されている。また、排塵ファン27の回転数はラジエータファン26の回転数に対し約2倍大きく設定されている。なお、ラジエータファン26及び排塵ファン27の回転数は、プーリ31,33,62,63,64等の直径、作動ギヤ64C,64Dの直径を変更することにより任意に設定することができる。
【0065】
ラジエータファン26のラジエータ用回転軸26A及び排塵ファン27の排塵用回転軸27Aはフレーム80の連結パイプ93内に設けられ、ラジエータファン26及び排塵ファン27はフレーム80と一体となり車台2から脱着することができる。
【0066】
第3実施形態の場合、排塵ファン27の排塵用羽根27Eをラジエータファン26のラジエータ用羽根26Bと同枚数に形成したことから、排塵ファン27の逆転時に、排塵ファン27の内側から外側に向かう送風風量が多くなり、ラジエータカバー22の濾過体24に付着した藁屑、塵埃等の除去能力を高めることができる。
【0067】
次に、第1〜第3実施形態の制御装置について説明する。
【0068】
図27に示すように、コントローラ84には、作業クラッチ(脱穀クラッチ)104の接続状態を検出する脱穀クラッチセンサ104a,104bと、作業クラッチ(刈取クラッチ)115の接続状態を検出する刈取クラッチセンサ115aを入力する。コントローラ84の出力側には電動モータ45を接続している。
手動操作によってラジエータファン26と排塵ファン27を冷却モードから排塵モードに切替えるキャビン9内に逆転スイッチを設けてもよい。
なお、脱穀クラッチ104は扱胴106等の脱穀部のクラッチ104Aと唐箕123等の選別部のクラッチ104Bとからなり、脱穀クラッチセンサ104a,104bは脱穀クラッチ104A,104Bが接続状態となることで夫々ONするように構成し、刈取クラッチセンサ115aは刈取クラッチ115が接続状態となることでONするように構成している。
【0069】
図28に示すように、脱穀クラッチセンサ104a,104bの入力状態を判断し、脱穀クラッチセンサ104a,104bが共にON状態である場合には、刈取クラッチセンサ115aの入力状態を判断する。一方、脱穀クラッチセンサ104a,104bのいずれか一方または両方がOFF状態である場合には、電動モータ45を正転側に駆動しラジエータファン26を正転駆動状態にし、排塵ファン27を非駆動状態にする。
次に、刈取クラッチセンサ115aの入力状態を判断し、刈取クラッチセンサ115aがON状態である場合には、排塵モードと冷却モードを反復して実行する反復モードを開始する。一方、脱穀クラッチセンサ104a,104bと刈取クラッチセンサ115aがいずれもOFF状態である場合には、電動モータ45を正転側に駆動しラジエータファン26を正転駆動状態にし、排塵ファン27を非駆動状態にする。
なお、排塵モード及び冷却モードの設定時間は、コンバインの使用環境等により任意に設定できる。
【0070】
次に、第1〜第3実施形態の動力系について説明する。
図29に示すように、エンジン11の動力はプーリ31,プーリ103を介し作業クラッチ104、ギヤボックス105、扱胴106に伝動され扱胴106を回転させる。また、ベルト109を介しコンベア111、オプションであるスプレッタ110またはセカンドモア112に伝動される。なお、スプレッタ110とセカンドモア112とはいずれか一方を選択し使用する。
【0071】
エンジン11の動力はプーリ31,プーリ33を介しラジエータファン26、コンプレッサ66に伝動され、ラジエータファン26、コンプレッサ66を稼働させる。また、プーリ33に伝動された動力は、中間軸107、ベルト108、プーリ101Aを介しランスミッション101、HST102に伝動され、さらに、中間軸107、プーリ113を介しギヤボックス114に伝動される。
【0072】
ギヤボックス114に伝動された動力は、作業クラッチ115を介しフィーダチェン116、オーガドラム117、刈刃118、リール119に伝動され、オーガドラム117、刈刃118、リール119を回転させる。また、ギヤボックス114に伝動された動力は、該ギヤボックス114に内蔵されたクラッチ104Bを介し、ギヤボックス114に軸支された選別駆動別の軸121によってプレファン122、塵埃ファン123、1番コンベア124、2番コンベア125、セカンドファン126に伝動され、1番コンベア124、2番コンベア125を稼働させる。
【0073】
1番コンベア124に伝動された動力は、パケット下軸131を介しレベリング軸132に伝動され、2番コンベア125に伝動された動力は、2番コンベア軸127を介し2番縦コンベア128、2番上コンベア129に伝動され、2番縦コンベア128、2番上コンベア129を稼働させる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、農業用作業車輌に適用できるものである。
【符号の説明】
【0075】
1 コンバイン
2 車台
10 エンジンルーム
11 エンジン
12 インタークーラ
14 エンジン冷却用ファン
21 ラジエータ
22 ラジエータカバー
24 濾過体
26 ラジエータファン
26A ラジエータ用回転軸
26B ラジエータ用羽根
26C ラジエータ用中心部
26D ラジエータ用回転軸(筒状回転軸)
27 排塵ファン
27A 排塵用回転軸(筒状回転軸)
27B 排塵用羽根
27C 排塵用中心部
27D 排塵用回転軸
27E 排塵用羽根
45 駆動状態切換手段(電動モータ)
57A オイルクーラ
57B オイルクーラ
62 プーリ
63 プーリ
64 ギアボックス
80 フレーム
89 オイルタンク
94 保護カバー
95 オイルレベルゲージ
96 ステー
97 保護ネット
104 作業クラッチ(脱穀クラッチ)
115 作業クラッチ(刈取クラッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(11)の冷却水を冷却するラジエータ(21)と、該ラジエータ(21)の外側に配置した外気濾過用の濾過体(24)と、前記ラジエータ(21)の機体内側に配置した正転駆動状態と非駆動状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン(26)と、前記ラジエータ(21)の機体内側に配置した逆転駆動状態と非駆動状態とに切換可能な排気用の排塵ファン(27)と、
前記ラジエータファン(26)の正転駆動状態と非駆動状態との切換および排塵ファン(27)の逆転駆動状態と非駆動状態との切換を行なう駆動状態切換手段(45)とを設け、
前記ラジエータファン(26)と排塵ファン(27)を同一軸心上に設けると共に、
逆転駆動状態から非駆動状態に切換られた後における排塵ファン(27)の慣性での逆転による排気風量よりも、非駆動状態から正転駆動状態に切換られた後における該ラジエータファン(26)の外気吸入風量を大に設定したことを特徴とする作業車輌の原動部構造。
【請求項2】
前記ラジエータファン(26)の羽根(26B)の基部を支持する中心部(26C)の直径よりも、排塵ファン(27)の羽根(27B)の基部を支持する中心部(27C)の直径を小さくしたことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項3】
前記ラジエータファン(26)の羽根(26B)の枚数よりも、排塵ファン(27)の羽根(27B)の枚数を少なくしたことを特徴とする請求項1又は2記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項4】
前記ラジエータファン(26)の回転速度よりも、排塵ファン(27)の回転速度を高速に設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項5】
作業クラッチ(104,115)が接続された後に前記駆動状態切換手段(45)が作動する構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項6】
作業クラッチ(104,115)が接続された場合に、ラジエータファン(26)を正転駆動状態から非駆動状態へ切り換えると共に排塵ファン(27)を非駆動状態から逆転駆動状態へ切り換える排塵モードを第1設定時間に亘り継続し、該第1設定時間経過後に、ラジエータファン(26)を非駆動状態から正転駆動状態へ切り換えると共に排塵ファン(27)を逆転状態から非駆動状態へ切り換える冷却モードを第2設定時間に亘り継続し、以後、該排塵モードの実行と冷却モードの実行とを背反的に反復して実行するように前記駆動状態切換手段(45)を制御する構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項7】
前記ラジエータファン(26)よりも機体内側に排塵ファン(27)を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項8】
前記排塵ファン(27)を支持する筒状回転軸(27A)内を貫通してラジエータファン(26)の回転軸(26A)を設け、排塵ファン(27)及びラジエータファン(26)をエンジン(11)の出力により駆動する構成としたことを特徴とする請求項7記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項9】
前記ラジエータファン(26)よりも機体外側に排塵ファン(27)を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項10】
前記ラジエータファン(26)を支持する筒状回転軸(26D)内を貫通して排塵ファン(27)の回転軸(27D)を設け、排塵ファン(27)及びラジエータファン(26)をエンジン(11)の出力により駆動する構成としたことを特徴とする請求項9記載の作業車輌の原動部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−60959(P2012−60959A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209792(P2010−209792)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】