説明

作業車

【課題】右及び左の走行装置用の右及び左のブレーキと、PTO軸とを備えた作業車において、運転者が右及び左のブレーキペダルを踏み操作した際に、確実に機体を停止させる。
【解決手段】右及び左のブレーキペダルが踏み操作されると、右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動側に作動させる。右及び左のブレーキペダルが踏み操作されて、右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動側に作動させた際に、PTOクラッチが伝動状態であれば遮断状態に操作し、その後、右及び左のブレーキペダルが戻し操作された際に、右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動側に維持するとともに、遮断状態に操作したPTOクラッチを伝動状態に操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、右及び左の走行装置用の右及び左のブレーキを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車では例えば特許文献1に開示されているように、人為的に操作される右及び左のブレーキペダル(特許文献1の図1及び図10の12R,12L)、右及び左の後輪(走行装置に相当)(特許文献1の図1の2)用の右及び左のブレーキ(特許文献1の図1及び図10の11R,11L)を備えて、右のブレーキペダルが踏み操作されると連係機構(特許文献1の図1及び図10の14)を介して右のブレーキが制動側に操作され、左のブレーキペダルが踏み操作されると連係機構(特許文献1の図1及び図10の14)を介して左のブレーキが制動側に操作されるように構成しているものがある。
これにより、直進時の停止時には、運転者が右及び左のブレーキペダルを踏み操作し、右及び左のブレーキを制動側に操作して、機体を停止させる。例えば右に旋回する場合、運転者が前輪を右に操向操作すると同時に右のブレーキペダルを踏み操作し、右のブレーキを制動側に操作することにより、右への小回り旋回を行うことができる。
【0003】
特許文献1では、右及び左のブレーキペダルと右及び左のブレーキとを接続する連係機構(特許文献1の図1及び図10の14)に、油圧シリンダ(特許文献1の図1及び図10の13R,13L)を備えており、例えば右に旋回する場合、運転者が前輪を右に操向操作すると、右の油圧シリンダに作動油が供給され、右の油圧シリンダが収縮作動して、右のブレーキが制動側に操作されるように構成している。
これにより、例えば右に旋回する場合、運転者が前輪を右に操向操作すれば、右のブレーキペダルを踏み操作しなくても、右のブレーキが自動的に制動側に操作されて、右への小回り旋回を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−262151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直進時の停止時において、運転者が右及び左のブレーキペダルを踏み操作し、右及び左のブレーキを制動側に操作して機体を停止させる場合、特に女性や高齢者のように足の踏力が小さい運転者では、右及び左のブレーキペダルが十分な足の踏力で踏み操作されない状態になることが考えられ、右及び左のブレーキが十分に制動側に操作されないことが考えられる。
【0006】
本発明は右及び左の走行装置用の右及び左のブレーキを備えた作業車において、運転者が右及び左のブレーキペダルを踏み操作し、右及び左のブレーキを制動側に操作して機体を停止させる場合、右及び左のブレーキが十分に制動側に操作されるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、作業車において次のように構成することにある。
人為的に操作される右及び左のブレーキペダルと、右及び左の走行装置用の右及び左のブレーキとを備える。右のブレーキペダルが踏み操作されると連係機構を介して右のブレーキが制動側に操作されるように構成して、左のブレーキペダルが踏み操作されると連係機構を介して左のブレーキが制動側に操作されるように構成する。右のブレーキを制動側に操作可能な右のアクチュエータと左のブレーキを制動側に操作可能な左のアクチュエータとを、右及び左のブレーキペダル、連係機構とは別に備える。機体の旋回操作に伴って右又は左のアクチュエータにより旋回中心側のブレーキを制動側に操作する自動旋回手段を備える。右及び左のブレーキペダルが踏み操作されると、右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動側に作動させる補助制動手段を備える。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によれば、右のブレーキペダルが踏み操作されると連係機構を介して右のブレーキが制動側に操作され、左のブレーキペダルが踏み操作されると連係機構を介して左のブレーキが制動側に操作される。
右及び左のブレーキを制動側に操作可能な右及び左のアクチュエータ、自動旋回手段を備えており、例えば機体の右への旋回操作が行われると、右のブレーキペダルが踏み操作されなくても、右のアクチュエータにより右のブレーキが自動的に制動側に操作されて、右への小回り旋回が行われる。
【0009】
本発明の第1特徴によれば、右及び左のブレーキペダルが踏み操作されると、右及び左のアクチュエータが右及び左のブレーキの制動側に作動する。
これにより、右及び左のブレーキペダルが十分な足の踏力で踏み操作されず、右及び左のブレーキペダルだけでは、右及び左のブレーキが十分に制動側に操作されない状態において、右及び左のアクチュエータが右及び左のブレーキの制動側に作動するので、右及び左のブレーキペダルの踏み操作力と、右及び左のアクチュエータの操作力とが、右及び左のブレーキに伝えられて、右及び左のブレーキが十分に制動側に操作される。
【0010】
この場合、右及び左のアクチュエータは前述のように右及び左への小回り旋回を行う際に作動するものであり、既存のものと言ってよい。これにより、本発明の第1特徴によると、右及び左のブレーキペダルが踏み操作される際に右及び左のブレーキを制動側に操作する専用の右及び左のアクチュエータを備える必要がなく、右及び左のアクチュエータが機体の旋回操作の際に使用されるものと、右及び左のブレーキペダルが踏み操作される際に使用されるものとに、兼用されることになる。
【0011】
右及び左のアクチュエータを備える場合、例えば特許文献1のように、右及び左のブレーキペダルと右及び左のブレーキとを接続する連係機構に、右及び左のアクチュエータを備えることが考えられる。
しかしながら、このように構成すると、右及び左のアクチュエータの一端が右及び左のブレーキペダルに支持されることになるので、右及び左のブレーキペダルが踏み操作されながら右及び左のアクチュエータが作動して、右及び左のブレーキを制動側に操作する場合、右及び左のアクチュエータの作動反力を右及び左のブレーキペダルで支持しなければならない。
従って、十分な足の踏力で右及び左のブレーキペダルが踏み操作されなければ、右及び左のブレーキペダルが右及び左のアクチュエータの作動反力に負けて、右及び左のブレーキペダルが戻し操作されてしまい、右及び左のブレーキが十分に制動側に操作されないのであり、右及び左のブレーキペダルの十分な足の踏力で踏み操作されなくても、右及び左のブレーキが十分に制動側に操作されるようにすると言う構成ではない。
【0012】
本発明の第1特徴によれば、右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキペダル、連係機構とは別に備えており、右及び左のアクチュエータの一端が右及び左のブレーキペダルに支持されると言う状態になっていない。
これにより、右及び左のアクチュエータの作動反力が右及び左のブレーキペダルに掛からないのであり、右及び左のブレーキペダルの踏み操作力と、右及び左のアクチュエータの操作力とが、別々に独立して右及び左のブレーキに伝えられて、右及び左のブレーキが十分に制動側に操作される。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、右及び左の走行装置用の右及び左のブレーキを備えた作業車において、右及び左のブレーキペダルが十分な足の踏力で踏み操作されなくても、右及び左のブレーキペダルの踏み操作力と、右及び左のアクチュエータの操作力とが、右及び左のブレーキに伝えられ、右及び左のブレーキが十分に制動側に操作されるように構成することができて、作業車の停止性能を向上させることができた。
本発明の第1特徴によると、右及び左のアクチュエータが機体の旋回操作の際に使用されるものと、右及び左のブレーキペダルが踏み操作される際に使用されるものとに、兼用されることになるので、構造の簡素化と言う面で有利なものとなった。
【0014】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の作業車において次のように構成することにある。
右及び左のブレーキペダルが踏み操作されて、右及び左のアクチュエータが右及び左のブレーキの制動側に作動した後、右及び左のブレーキペダルが戻し操作されても、右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動側に維持させるように、補助制動手段を構成する。
【0015】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、右及び左のブレーキペダルが踏み操作されて、右及び左のアクチュエータが右及び左のブレーキの制動側に作動し、機体が停止した後に、運転者が右及び左のブレーキペダルから足を離しても(右及び左のブレーキペダルが戻し操作されても)、右及び左のアクチュエータが右及び左のブレーキの制動側に作動しているので、例えば坂道等で機体が停止した後に、不用意に右及び左のブレーキペダルが戻し操作されても、機体が坂道等に沿って移動するようなことはない。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、機体が停止した後、運転者が右及び左のブレーキペダルから足を離しても(右及び左のブレーキペダルが戻し操作されても)、右及び左のアクチュエータが右及び左のブレーキが制動側に作動しており、機体が坂道等に沿って移動するようなことはないので、作業車の停止性能を向上させることができた。
【0017】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴の作業車において次のように構成することにある。
機体の発進操作が行われると、機体の発進操作開始から設定時間の経過後に、右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動側から制動解除側に作動させるように、補助制動手段を構成する。
【0018】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
前項[II]に記載のように、例えば坂道等で機体が停止した後、右及び左のアクチュエータにより右及び左のブレーキが制動側に操作されている状態において、機体を発進させる場合、右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動解除側に作動させる必要がある。
この場合、右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動解除側に作動させてから、発進の動力が右及び左の走行装置に伝達されるような状態になると、右及び左のアクチュエータが右及び左のブレーキの制動解除側に作動した瞬間に、坂道等に沿って機体が後退することがある。
【0019】
本発明の第3特徴によれば、前述の状態において、坂道等での機体の発進操作が行われると、直ちに右及び左のアクチュエータが右及び左のブレーキの制動解除側に作動するのではないので、発進の動力が右及び左の走行装置に伝達される状態になってから、右及び左のアクチュエータが右及び左のブレーキの制動解除側に作動する状態を得ることができる。
これにより、右及び左のアクチュエータが右及び左のブレーキの制動解除側に作動し、且つ、発進の動力が右及び左の走行装置に伝達されない状態を避けることができるのであり、坂道等での機体の発進操作時に坂道等に沿って機体が後退するようなことがない。
【0020】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、坂道等での機体の発進操作時において、発進の動力が右及び左の走行装置に伝達される状態になってから、右及び左のアクチュエータが右及び左のブレーキの制動解除側に作動する状態を得ることができ、坂道等に沿って機体が後退するようなことがないので、作業車の発進性能を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】農用トラクタの全体側面図である。
【図2】農用トラクタの全体平面図である。
【図3】右及び左のブレーキペダル、右及び左のブレーキ、右及び左の油圧シリンダの連係状態を示す図である。
【図4】右及び左のブレーキペダルが踏み操作された際の制御の流れを示す図である。
【図5】発明の実施の第1別形態において農用トラクタの全体側面図である。
【図6】発明の実施の第1別形態において右及び左のブレーキペダルが踏み操作された際の制御の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[1]
図1及び図2に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2(走行装置に相当)で支持された機体の中央部に運転部3が形成されて、作業車の一例である四輪駆動型の農用トラクタが構成されている。機体の前部に備えられたエンジン4の動力が、主クラッチ(図示せず)、ギヤ変速式の主変速装置(図示せず)及び副変速装置(図示せず)、後輪デフ機構(図示せず)を介して右及び左の後輪2に伝達されており、後輪デフ機構の直前から分岐した動力が、前輪変速装置5(図3参照)及び前輪デフ機構(図示せず)を介して、右及び左の前輪1に伝達される。
【0023】
図3に示すように、前輪変速装置5は、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2が略同じ速度で駆動される標準状態、右及び左の前輪1が右及び左の後輪2よりも高速で駆動される増速状態に、操作自在に構成されている。前輪変速装置5が標準状態に付勢されて、電磁操作式の制御弁6により作動油が供給されることで増速状態に操作され、制御弁6により作業油が排出されると、標準状態に操作されるように構成されており、制御装置8により制御弁6が操作される。
【0024】
図1,2,3に示すように、運転部3において運転座席9の前方に操縦ハンドル7が備えられ、右及び左の前輪1を操向操作するピットマンアーム10が機体の下部に備えられており、操縦ハンドル7を操作することによりピットマンアーム10が左右に揺動操作されて、右及び左の前輪1が操向操作される。ピットマンアーム10の角度を検出するポテンショメータ13が備えられて、ポテンショメータ13の検出値が制御装置8に入力されている。
【0025】
図3に示すように、ポテンショメータ13の検出値により、ピットマンアーム10が直進位置A0、直進位置A0から右及び左の設定角度A1の範囲で揺動操作される状態において、制御装置8及び制御弁6により前輪変速装置8は標準状態に操作される。ポテンショメータ13の検出値により、ピットマンアーム10が右及び左の設定角度A1を越えて右及び左の揺動限度A2の範囲で揺動操作される状態において、制御装置8及び制御弁6により前輪変速装置8は増速状態に操作される。
これにより、ピットマンアーム10が右又は左の設定角度A1を越えて揺動操作されると(機体の右又は左への旋回操作に相当)、制御装置8及び制御弁6により前輪変速装置8が増速状態に操作されて、右及び左の後輪2よりも高速で駆動される右及び左の前輪1により、右又は左への小回り旋回が行われる。
【0026】
[2]
次に、右及び左のブレーキペダル15,16について説明する。
図1及び図2に示すように、運転部3において左下部に、主クラッチを伝動及び遮断状態に操作するクラッチペダル14が備えられ、運転部3において右下部に、右及び左のブレーキペダル15,16が左右方向に並べて備えられており、右及び左のブレーキペダル15,16が戻し操作側に付勢されている。
【0027】
図3に示すように、右の後輪2を制動可能な右のブレーキ17、及び左の後輪2を制動可能な左のブレーキ18が備えられており、右及び左のブレーキ17,18が制動解除側に付勢されている。右のブレーキペダル15と右のブレーキ17の操作アーム17aとが連係ロッド19(連係機構に相当)を介して接続され、左のブレーキペダル16と左のブレーキ18の操作アーム18aとが連係ロッド19(連係機構に相当)を介して接続されている。
【0028】
これにより図3に示すように、右のブレーキペダル15が踏み操作されると、連係ロッド19を介して右のブレーキ17が制動側に操作され、右のブレーキペダル15が戻し操作されると、右のブレーキ17が制動解除側に操作される。左のブレーキペダル16が踏み操作されると、連係ロッド19を介して左のブレーキ18が制動側に操作され、左のブレーキペダル16が戻し操作されると、左のブレーキ18が制動解除側に操作される。
【0029】
[3]
次に、右及び左のブレーキ17,18を制動側に操作可能な右及び左の油圧シリンダ21,22(アクチュエータに相当)について説明する。
図3に示すように、機体の右及び左の固定部12に、右の油圧シリンダ21及び左の油圧シリンダ22が支持されており、右の油圧シリンダ21と右のブレーキ17の操作アーム17aとが連係ロッド20を介して接続され、左の油圧シリンダ22と左のブレーキ18の操作アーム18aとが連係ロッド20を介して接続されている。
【0030】
図3に示すように、右及び左の油圧シリンダ21,22は単動型に構成され、内装されたバネ(図示せず)により伸長側に付勢されて、右及び左の油圧シリンダ21,22に作動油を給排操作する電磁操作式の制御弁23,24が備えられており、制御装置8により制御弁23,24が操作される。制御弁23,24により作動油が供給されると、右及び左の油圧シリンダ21,22が収縮作動して、右及び左のブレーキ17,18が制動側に操作される。制御弁23,24により作業油が排出されると、右及び左の油圧シリンダ21,22が伸長作動して、右及び左のブレーキ17,18が制動解除側に操作される。
【0031】
図3に示すように、長孔11aを備えた融通部材11が、右及び左のブレーキペダル15,16、右及び左の油圧シリンダ21,22に接続され、連係ロッド19,20の端部のピン19a,20aが融通部材11の長孔11aに挿入されており、連係ロッド19,20の端部のピン19a,20aが、融通部材11の長孔11aの紙面左端部に位置している。
【0032】
これにより、図3に示すように、右及び左ブレーキペダル15,16が踏み操作されていない状態において、右及び左の油圧シリンダ21,22が収縮作動して、右及び左のブレーキ17,18が制動側に操作されても、この動作により連係ロッド19のピン19aが融通部材11の長孔11aに沿って紙面右方に移動するだけで、右及び左のブレーキペダル15,16は踏み操作の方向に移動しない。
【0033】
図3に示すように、右及び左の油圧シリンダ21,22が収縮作動していない状態において、右及び左ブレーキペダル15,16が踏み操作されて、右及び左のブレーキ17,18が制動側に操作されても、この動作により連係ロッド20のピン20aが融通部材11の長孔11aに沿って紙面右方に移動するだけで、右及び左の油圧シリンダ21,22は収縮作動しない(右及び左の油圧シリンダ21,22が、右及び左のブレーキペダル15,16の踏み操作の抵抗にならない)。
【0034】
図3及び前項[1]に記載のように、ピットマンアーム10が直進位置A0、直進位置A0から右及び左の設定角度A1の範囲で揺動操作され、前輪変速装置8が標準状態に操作された状態において、制御装置8及び制御弁23,24により、右及び左の油圧シリンダ21,22が伸長作動しており、右及び左のブレーキ17,18が制動解除側に操作されている。
【0035】
図3及び前項[1]に記載のように、ピットマンアーム10が右の設定角度A1を越えて揺動操作されると(機体の右への旋回操作に相当)、制御装置8及び制御弁6により前輪変速装置8が増速状態に操作されて、右及び左の前輪1が右及び左の後輪2よりも高速で駆動されるのに加えて、制御装置8及び制御弁23により右の油圧シリンダ21が収縮作動し、右のブレーキ17が制動側に操作されて、右への小回り旋回が行われる(自動旋回手段に相当)。
【0036】
図3及び前項[1]に記載のように、ピットマンアーム10が左の設定角度A1を越えて揺動操作されると(機体の左への旋回操作に相当)、制御装置8及び制御弁6により前輪変速装置8が増速状態に操作されて、右及び左の前輪1が右及び左の後輪2よりも高速で駆動されるのに加えて、制御装置8及び制御弁24により左の油圧シリンダ22が収縮作動し、左のブレーキ18が制動側に操作されて、左への小回り旋回が行われる(自動旋回手段に相当)。
【0037】
[4]
次に、直進時の停止時において、右及び左のブレーキペダル15,16が踏み操作される状態について、図4に基づいて説明する。
図3に示すように、右のブレーキペダル15が踏み操作されたことを検出する右の踏み操作センサー25が備えられ、左のブレーキペダル16が踏み操作されたことを検出する左の踏み操作センサー25が備えられて、右及び左の踏み操作センサー25の操作信号が制御装置8に入力されている。
【0038】
直進時の停止時において右及び左のブレーキペダル15,16が踏み操作されて、右及び左の踏み操作センサー25の操作信号が制御装置8に入力されると(ステップS1)、制御装置8及び制御弁23,24により、右及び左の油圧シリンダ21,22が収縮作動して、右及び左のブレーキ17,18が制動側に操作される(ステップS2)(補助制動手段に相当)。これにより、右及び左のブレーキペダル15,16の踏み操作力と、右及び左の油圧シリンダ21,22の操作力とが、右及び左のブレーキ17,18に伝えられて、右及び左のブレーキ17,18が十分に制動側に操作される。
【0039】
機体が停止した後、右及び左のブレーキペダル15,16から運転者の足が離れて、右及び左のブレーキペダル15,16が戻し操作されても(ステップS3)、制御装置8及び制御弁23,24により、右及び左の油圧シリンダ21,22が収縮状態に維持されており、右及び左のブレーキ17,18が制動側に維持されている(ステップS4)(補助制動手段に相当)。これにより、例えば坂道等で機体が停止した状態で、右及び左のブレーキペダル15,16が戻し操作されても、右及び左の油圧シリンダ21,22が収縮状態に維持されており、右及び左のブレーキ17,18が制動側に維持されているので、機体が坂道に沿って移動するようなことがない。
【0040】
機体が停止し、右及び左のブレーキペダル15,16から運転者の足が離れて、右及び左のブレーキペダル15,16が戻し操作された後において、機体の発進操作が行われると(例えばクラッチペダル14が踏み操作されて主クラッチが遮断状態に操作され、主及び副変速装置の変速操作が行われて、クラッチペダル14が戻し操作されて主クラッチが伝動状態に操作されると)(ステップS5)、タイマーによる設定時間T1のカウントが開始される(ステップS6)。
【0041】
設定時間T1の経過の間において、エンジンの動力が実際に右及び左の前輪1、右及び左の後輪2に伝達されるようになるので、設定時間T1が経過すると(ステップS7)、制御装置8及び制御弁23,24により、右及び左の油圧シリンダ21,22が伸長作動して、右及び左のブレーキ17,18が制動解除側に操作される(ステップS8)(補助制動手段に相当)。これにより、坂道に沿って機体を後退させることなく、機体を発進させることができる。
【0042】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、図5及び図6に示すように構成してもよい。
主クラッチ(図示せず)及びギヤ変速式の主変速装置(図示せず)が廃止されて、これらに代えて静油圧式無段変速装置(図示せず)が備えられている。静油圧式無段変速装置は、中立位置、中立位置から前進の高速側及び後進の高速側に無段階に変速自在に構成されている。
【0043】
図5に示すように、機体の後部にロータリ耕耘装置26が昇降駆動自在に支持され、エンジンの動力がPTOクラッチ(図示せず)及びPTO軸27を介してロータリ耕耘装置26に伝達される。ロータリ耕耘装置26の耕耘爪26aは図5の紙面時計方向(矢印B1参照)に回転駆動されるのであり、ロータリ耕耘装置26による耕耘作業時には、ロータリ耕耘装置26の耕耘爪26aの回転によって、ロータリ耕耘装置26が機体を前方(図5の紙面右方)に押しており、エンジンの動力が右及び左の前輪1、右及び左の後輪2に伝達されて機体が走行することによって、ロータリ耕耘装置26が機体を前方に押す力を機体で受け止めている。
【0044】
次に、直進時の停止時において、右及び左のブレーキペダル15,16が踏み操作される状態について、図6に基づいて説明する。
直進時の停止時において、右及び左のブレーキペダル15,16が踏み操作されて、右及び左の踏み操作センサー25の操作信号が制御装置8に入力されると(ステップS11)、制御装置8及び制御弁23,24により、右及び左の油圧シリンダ21,22が収縮作動して、右及び左のブレーキ17,18が制動側に操作され(ステップS12)(補助制動手段に相当)、静油圧式無段変速装置が操作シリンダ(図示せず)により自動的に中立位置に操作される(ステップS13)。
【0045】
これにより、右及び左のブレーキペダル15,16の踏み操作力と、右及び左の油圧シリンダ21,22の操作力とが、右及び左のブレーキ17,18に伝えられて、右及び左のブレーキ17,18が十分に制動側に操作される。
この場合、PTOクラッチが伝動状態に操作されていると(ロータリ耕耘装置26の耕耘爪26aが回転駆動されていると)、PTOクラッチが自動的に遮断状態に操作される(ロータリ耕耘装置26の耕耘爪26aが停止する)(ステップS14)。
【0046】
機体が停止した後、右及び左のブレーキペダル15,16が戻し操作されて、機体の発進操作(例えば静油圧式無段変速装置を中立位置から前進の高速側に操作)が行われる場合、右及び左のブレーキペダル15,16が戻し操作されると(ステップS15)、PTOクラッチが自動的に伝動状態に操作されるのであるが(ロータリ耕耘装置26の耕耘爪26aが回転駆動されるのであるが)(ステップS16)、制御装置8及び制御弁23,24により、右及び左の油圧シリンダ21,22が収縮作動して、右及び左のブレーキ17,18が制動側に操作された状態のままで、タイマーによる設定時間T2のカウントが開始される(ステップS17)。
【0047】
設定時間T2の経過の間において、機体の発進操作(例えば静油圧式無段変速装置を中立位置から前進の高速側に操作)が行われ、エンジンの動力が実際に右及び左の前輪1、右及び左の後輪2に伝達されるようになるので、設定時間T2が経過すると(ステップS18)、制御装置8及び制御弁23,24により、右及び左の油圧シリンダ21,22が伸長作動して、右及び左のブレーキ17,18が制動解除側に操作される(ステップS19)。
【0048】
前述のPTOクラッチが自動的に伝動状態に操作された際(ロータリ耕耘装置26の耕耘爪26aが回転駆動された際)(ステップS16)、右及び左のブレーキ17,18が制動解除側に操作され、静油圧式無段変速装置が中立位置に操作されていると、ロータリ耕耘装置26が機体を前方に押す力により機体が前進してしまうことが考えられる。この場合、右及び左のブレーキ17,18が制動側に操作された状態のままであるので、ロータリ耕耘装置26が機体を前方に押す力により機体が前進してしまうことがない。
【0049】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]において、連係ロッド19に代えて、ワイヤ(図示せず)(連係機構に相当)を使用してもよい。右及び左の油圧シリンダ21,22に代えて、電動シリンダ(アクチュエータに相当)を使用してもよい。
右及び左の前輪1、右及び左の後輪2に代えて、右及び左のクローラ走行装置(図示せず)(走行装置に相当)を備え、右及び左のクローラ走行装置に右及び左のブレーキ17,18を備えた作業車にも、本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0050】
2 右及び左の走行装置
15 右のブレーキペダル
16 左のブレーキペダル
19 連係機構
21 右のアクチュエータ
22 左のアクチュエータ
T1 設定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人為的に操作される右及び左のブレーキペダルと、
右及び左の走行装置用の右及び左のブレーキと、
前記右のブレーキペダルが踏み操作された際に前記右のブレーキを制動側に操作する右の連携機構と、
前記左のブレーキペダルが踏み操作された際に前記左のブレーキを制動側に操作する左の連携機構と、
前記右のブレーキペダルと前記右の連係機構とは別に設けられ、前記右のブレーキを制動側に操作可能な右のアクチュエータと、
前記左のブレーキペダルと前記左の連係機構とは別に設けられ、前記左のブレーキを制動側に操作可能な左のアクチュエータと
エンジンの動力を外部の外部装置に伝達するPTO軸への動力の伝動または遮断を切り換えるPTOクラッチと、
前記右及び左のブレーキペダルが踏み操作されると、前記右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動側に作動させる補助制動手段と、を備え、
前記右及び左のブレーキペダルが踏み操作されて、前記右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動側に作動させた際に、前記PTOクラッチが伝動状態であれば遮断状態に操作し、
その後、前記右及び左のブレーキペダルが戻し操作された際に、前記右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動側に維持するとともに、遮断状態に操作した前記PTOクラッチを伝動状態に操作する作業車。
【請求項2】
機体の発進操作が行われると、機体の発進操作開始から設定時間の経過後に、前記右及び左のアクチュエータを右及び左のブレーキの制動側から制動解除側に作動させるように、前記補助制動手段を構成してある請求項1に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−230767(P2011−230767A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179565(P2011−179565)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【分割の表示】特願2007−231487(P2007−231487)の分割
【原出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】