説明

作物洗浄装置

【課題】
ニンジンや大根に散水して泥を除去する作物洗浄装置において、少ない水の量で効率よく泥を除去することを課題とする。
【解決手段】
前記散水装置(32)は散水口(33a)(33b)を所定のピッチで多数形成する散水パイプ33を前記移送手段に並行して設けるものであって、前記移送手段(15)の移送始端部(V)に散水する散水口(33a)のピッチを他の部分に散水する散水口(33b)のピッチよりも狭くしたり、移送始端部(V)に散水する散水口(33a)の大きさを他の部分に散水する散水口(33b)よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫した人参や大根等を洗浄する洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横方向に長い洗浄ロールを複数設け、作物は洗浄ロールで移送されながら、散水されて作物に付着する泥を除去する作物洗浄装置に関する技術が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平6−70732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
作物洗浄装置においては、散水量を多くするほうが作物に付着する泥を多く除去できる。しかしながら、ただ多く散水するだけでは水の無駄が多くなる。そこで、本発明は散水方法を工夫することで、少ない水の量で効率よく泥を除去することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するために次の技術的手段を用いる。
すなわち、請求項1記載の発明においては、枠(C1)内に作物を移送する移送手段(15)を設け、枠(C1)の上部には前記移送手段(15)に向かって散水する散水装置(32)を設け、該散水装置(32)は前記移送手段(15)の移送始端部から移送終端部にかけて複数個所から散水する構成であって、かつ、前記移送始端部から多く散水する構成としたことを特徴とする作物洗浄装置とする。
【0005】
請求項2記載の発明においては、前記散水装置(32)は散水口(33a)(33b)を所定のピッチで多数形成する散水パイプ33を前記移送手段に並行して設けるものであって、前記移送手段(15)の移送始端部(V)に散水する散水口(33a)のピッチを他の部分に散水する散水口(33b)のピッチよりも狭くしたことを特徴とする請求項1記載の作物洗浄装置とする。
【0006】
請求項3記載の発明においては、前記移送手段(15)の移送始端部(V)に散水する散水口(33a)の大きさを他の部分に散水する散水口(33b)よりも大きくしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の作物洗浄装置とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明においては、泥が多数付着している移送始端部の作物に対しては多く散水することで作物に付着する泥をできるだけ除去できるようにし、移送始端部を通過して泥の大半を除去した作物に対しては移送始端部よりも少なく散水することで、効率良く作物に付着した泥を除去することができ、使用する水の量を抑制することができる。
【0008】
請求項2記載の発明においては、前記移送手段の移送始端部に散水する散水口のピッチを他の部分に散水する散水口のピッチよりも狭くしたことで、泥が多数付着している移送始端部の作物に対し、多く散水して作物に付着する泥をできるだけ除去できる。また、移送始端部を通過して泥の大半を除去した作物に対しては移送始端部よりも少なく散水することで、使用する水の量を抑制することができる。
【0009】
請求項3記載の発明においては前記移送手段の移送始端部に散水する散水口の大きさを他の部分に散水する散水口よりも大きくしたことで泥が多数付着している移送始端部の作物に対し、多く散水して作物に付着する泥をできるだけ除去できる。また、移送始端部を通過して泥の大半を除去した作物に対しては移送始端部よりも少なく散水することで、使用する水の量を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、収穫した作物を洗浄装置で洗浄した後に作物の重量毎に選別する作物洗浄選別装置に基づいて説明する。
まず図1の平面図に基づいて本発明の作物洗浄選別装置全体の構成について説明する。
【0011】
Aは収穫した作物を投入する収容タンク、Bは収容タンクA内に投入された作物を搬送する搬送コンベア、Cは搬送コンベアBで搬送された作物を洗浄する洗浄装置、Dは洗浄装置Cで洗浄された作物を一時貯留する貯留タンク、Eは貯留タンク内の作物を搬送する第二搬送コンベア、Fは第二搬送コンベアEで搬送された作物を整列して搬送する整列搬送装置、Gは整列搬送装置で搬送された作物を重量ごとに選別する作物選別装置である。
【0012】
次に収容タンクA、及び搬送コンベアBについて説明する。ここで説明する始端側とは搬送コンベアBの搬送始端側を指し、終端側とは搬送コンベアBの搬送終端側を指し、搬送方向の左右を側部という。
【0013】
収容タンクA内は、その終端側に傾斜部3を形成し、側部はそれぞれ傾斜部4を形成し、傾斜部3,4内側にはホッパ部1を形成している。ホッパ部1の下方には搬送コンベアBを挿入する挿入部2を形成し、挿入部2の下方、すなわち、収容タンクAの底部には挿入部2の幅Mよりも広い幅Nからなる泥溜まり部5を形成している。そのため、多くの泥を泥溜まり部5に堆積できる構成としている。
【0014】
泥溜まり部5の下部には水抜き穴6を形成し、水抜き穴6にはホース7を取り付けている。また、泥溜まり部5の下部には泥抜き通路8を設け、泥抜き通路8は開閉板9により開閉自在に構成している。
【0015】
収容タンクA内には、収容タンクA内に収容された作物を始端側から終端側に向かって斜め上がり方向に持ち上げ搬送する搬送コンベアBを設ける。搬送コンベアBは、コンベア10と、コンベア10を側方から支持する支持フレーム12と、コンベア10の搬送終端部にあってコンベア10を駆動させる駆動モータ13と、コンベア10から排出された作物を次の洗浄装置Cに案内する案内シュート14とを備えている。案内シュート14はは弾性体で形成しており、隣接する洗浄装置Cの洗浄始端側の上方に配置している。
【0016】
コンベア10は搬送始端側を略平坦に、搬送途中から搬送終端側にかけて斜め上方に向かって形成し、傾斜部3に並行するよう配置している。駆動モータ13は支持フレーム12に取り付けたモータ載置台51に載置されている。
【0017】
支持フレーム12の搬送始端側には軸25を支点に回動する回動傾斜板16と、搬送コンベアBを下側から支持する支持脚17を取り付け、回動傾斜板16には吊りフック18を取り付けている。支持脚17はその下端部をクッションゴムで構成することでコンベア10の振動を吸収している。また、吊りフック18は吊り上げるときに回動傾斜板16から突出する構成である。なお、19は作業者が吊りフック18に引っ掛けて持ち上げる吊り具である。また、20はモータカバー、22は収容タンクAに収穫したコンテナ(図示せず)内の作物を投入するときにコンテナを載置するための載置棒である。
【0018】
21は搬送コンベアBを回動させる回動支点で、搬送コンベアBの搬送始端側を上下方向に回動可能に構成している。回動方法について詳述すると、作業者が回動傾斜板16を回動させ、吊り具19等をフックに18引っ掛けて持ち上げる。すると、図3に示すように回動支点21を支点に搬送コンベアBの搬送始端側が持ち上がる構成としている。
【0019】
次に洗浄装置Cについて説明する。
洗浄装置Cは作物を移送しながら作物に付着する泥を除去する複数の洗浄ロール15を枠C1内に並列して設け、洗浄ロール15の下方は開放状態に形成している。洗浄ロール15を略U字上に配列して一箇所の洗浄列K1を形成しており、本実施例では二箇所の洗浄列K1,K2を形成している。洗浄ロール15の洗浄始端側には駆動スプロケット25aをそれぞれ設け、洗浄列K1,K2毎に一本のチェーン26で巻回し、テンション27でチェーンを張る構成である。そして、洗浄ロール駆動モータ29の動力をチェーン28で各洗浄列K1,K2に伝達している。なお、30はモータ載置台で、一つの駆動モータ29が載置されており、50は一つの駆動モータ29で二つの洗浄列K1,K2を回転させるためのカウンタースプロケットである。
【0020】
洗浄装置Cの側板31の上部には洗浄水を散水する散水装置32を形成している。散水装置32は多数の散水口33aを形成する散水パイプ33からなり、別途設ける水源(図示せず)からの水を洗浄装置Cに向かって散水口33a,33bより散水する構成である。本実施例では水源(図示せず)と接続する散水パイプ33は洗浄終端側で分岐し、洗浄装置Cの左右の側板31それぞれに固定具35で固定している。洗浄始端部(Vの範囲)の散水口33aは他の散水口33bよりもピッチを狭く形成することで、比較的多くの水を集中して散水できる構成としている(図13(イ)参照)。また、散水口33aの面積を他の散水口33bよりも大きくしても良い(図13(ロ)参照)。それにより、散水量全体をできるだけ抑制しながら作物に付着する泥が多い洗浄始端側に集中して散水することができる。また、散水パイプ33は洗浄終端側を通すことで搬送コンベアBや収容タンクAに当たって破損することを防止することができる。
【0021】
ところで、図示はしないが洗浄始端部(V)だけでなく洗浄終端側の散水口33bのピッチを狭くしたり散水口33bの面積を大きくすることで、洗浄終端側に多く散水することで作物の仕上げを良好なものにしても良い。
34は散水パイプ33を覆うプレートで、散水口33aに対応して切欠き穴34aを形成している。このプレートは洗浄装置Cで除去された泥が散水口33aに付着して詰まることを防止し、かつ散水パイプ33に直接何らかの衝撃を与えることを防止するためのものである。
【0022】
プレート34の一端は洗浄装置Cの側板31側に取り付け、多端は洗浄ロール15に当接する構成とし、脱着できる構成としている。
洗浄装置Cの洗浄終端側には支点軸26を支点に回動する回動板37を洗浄列K1,K2毎に形成し、回動板37にはウエイト取り付け軸38とウエイト39をそれぞれ取り付けている。40は開動板37の開閉のロック及びロック解除をするロック装置である。
【0023】
ところで、洗浄ロール駆動モータ29は洗浄始端側より外側に向かって突出する構成である。本実施例のように収容タンクAの終端側と洗浄装置Cの洗浄始端側とを隣接して設けたときに収容タンクAの傾斜部3と洗浄装置Cの洗浄始端側との間に形成される空間部Tを利用して洗浄ロール駆動モータ29を配置する。そのため、隣接する洗浄ロール15間から流れる洗浄水や除去された泥がモータ洗浄ロール駆動モータ29にかかりにくくすることができる。また、洗浄ロール駆動モータ29が洗浄ロール15の下方に配置すると、洗浄ロール駆動モータ29と洗浄ロール15との間に除去した泥が堆積するという不具合が生じていたが本実施例のように構成することで、洗浄ロール15の下方が開放状態になるので泥が堆積することがない。
【0024】
なお、この空間部Tは下広がりに側面視略三角形状に形成されており、作業者が駆動スプロケット25a及びチェーン26,28等をメンテナンスするときに入り込むことができる。48は洗浄装置Cをトラック等で輸送するときに洗浄装置をロープで固定するための突出部である。
【0025】
図11は洗浄ロール15の脱着の構成について説明した図である。
洗浄ロール15の洗浄始端側は角軸15bに形成し、チェーン26を卷回する駆動スプロケット25a及び軸受部41の内部に角軸15bを嵌合し、挿入・抜き出し自在に構成する。洗浄ロール15の洗浄終端側は丸軸15cを軸受けメタル42にキー(図示せず)等を解して脱着可能に嵌め合わせ、軸受けメタル42は洗浄装置Cの搬送終端側の板43にボルト44で取り付けている。なお、板43には洗浄ロール15の径よりも大きい脱着用穴44を形成しておく。
【0026】
洗浄ロール15を交換するときには、ボルト44を外して軸受けメタル42を板43から取り外す。すると、軸受けメタル42は洗浄ロール15の丸軸15cから外れる。すると、洗浄ロール15は脱着用穴44から引っ張り出すことができる。反対に洗浄ロール15を取り付けるときは洗浄ロール15の角軸15bから脱着用穴44に挿入していき、角軸15cを軸受け部41に挿入し、丸軸15cとキー(図示せず)を軸受けメタル42に挿入し、軸受けメタル42を板にボルト締めをする。
【0027】
このように、伝動機構45側を取り外すことなく、簡単な作業で洗浄ロール15の脱着作業を行うことができる。なお、図示はしないが洗浄装置Cの側板31を脱着可能に構成することで、さらに洗浄ロールの脱着をしやすくする構成としても良い。
【0028】
作物洗浄選別装置の作用について説明する。
水を張った収容タンクAに、作業者は収穫したニンジン等の作物を投入する。収容タンクA内に投入された作物は、傾斜部4及び回動傾斜板2により収容タンクAの左右中央部にある搬送コンベアBの搬送始端側に集められ、搬送コンベアBで搬送される。搬送終端側で搬送コンベアBから放出された作物は案内シュート14を通過して洗浄装置Cの各洗浄列K1,K2の洗浄始端側に落下供給される。
【0029】
作物を持ち上げ搬送したコンベア10が作物を放出した後、傾斜部3と対向しながら移動するときにコンベア10から落下した泥は傾斜部3をにより泥溜まり部5に堆積されていく。
【0030】
洗浄装置Cに落下供給された作物は回転する洗浄ロール15のブラシ面15aにより作物表面に付着する泥を除去されながら、洗浄終端側に向かって移送されていく。洗浄終端側に移送された作物は回動板27を押し開けながら洗浄装置Cより排出され、貯留タンクDに貯留されていく。
【0031】
貯留タンクDに貯留された作物は第二搬送コンベアEにより整列搬送装置に搬送され、整列搬送装置Fで作物の姿勢を修正しながら作物選別装置Gに供給され、作物選別装置Gで重量ごとに選別される。
【0032】
収容タンクAの泥溜まり部5に堆積した泥を作業者が掻きだす時には、まず、作業中上に持ち上げていたホース7を寝せて収容タンクA内に張った水を排出させる。そして、作業者は回動傾斜板16を回動させ、吊り具19等をフックに18引っ掛けて持ち上げ、回動支点21を支点に搬送コンベアBの搬送始端側を持ち上げる。そして、たとえば持ち上げた搬送コンベアBと収容タンクAとの間を角棒等をかちこみ搬送コンベアBを持ち上げた状態で固定するようにする。そして、開閉板9を開放し泥溜まり部5に堆積した泥を泥抜き通路8から掻き出す。
【0033】
なお、このとき、案内シュート14を弾性部材にすることで、作物が通過するときに、作物に傷がつきにくい。また、搬送コンベアBを回動させるときに、案内シュート14が洗浄装置Cに当たって搬送コンベアBの回動を阻害したり、案内シュート14自体が破損し難い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】作物洗浄選別装置の平面図
【図2】側面から見た収容タンク及び洗浄装置の内部を説明する図
【図3】側面から見た搬送コンベアの回動作業を説明する図
【図4】平面から見た収容タンク及び搬送コンベアを説明する図
【図5】始端側から見た収容タンクと搬送コンベアを説明する図
【図6】洗浄装置の平面図
【図7】洗浄始端側から見た洗浄装置
【図8】洗浄終端側から見た洗浄装置
【図9】散水装置の斜視図
【図10】散水装置の断面図
【図11】洗浄ロールの脱着を説明する図
【図12】整列搬送装置及び選別装置の側面図
【図13】洗浄始端部の散水パイプを示す図
【符号の説明】
【0035】
C 洗浄装置
C1 枠
15 洗浄ロール(移送手段)
33a 散水口
33b 散水口
33 散水パイプ
V 移送始端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠(C1)内に作物を移送する移送手段(15)を設け、枠(C1)の上部には前記移送手段(15)に向かって散水する散水装置(32)を設け、該散水装置(32)は前記移送手段(15)の移送始端部から移送終端部にかけて複数個所から散水する構成であって、かつ、前記移送始端部から多く散水する構成としたことを特徴とする作物洗浄装置。
【請求項2】
前記散水装置(32)は散水口(33a)(33b)を所定のピッチで多数形成する散水パイプ33を前記移送手段に並行して設けるものであって、前記移送手段(15)の移送始端部(V)に散水する散水口(33a)のピッチを他の部分に散水する散水口(33b)のピッチよりも狭くしたことを特徴とする請求項1記載の作物洗浄装置。
【請求項3】
前記移送手段(15)の移送始端部(V)に散水する散水口(33a)の大きさを他の部分に散水する散水口(33b)よりも大きくしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の作物洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−238756(P2006−238756A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57262(P2005−57262)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】