説明

使用済み紙おむつの処理機

【課題】廃棄処理が容易な紙おむつ、並びに簡単な装置および工程により処理可能で、且つ地球環境に優しい使用済み紙おむつの処理機を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態では、外面側の外側シートと装着者の肌が触れる内側シートとの間に生分解性の素材で構成されている吸水ポリマーを介在した使い捨ての紙おむつを使用した後に廃棄するための処理方法に使用される使用済み紙おむつの処理機であって、回転自在に配設された回転ドラムと、該回転ドラムに水を供給する供給手段と、該回転ドラム内の水と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出する排出手段とが備えられる。
【選択図】図


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ、使用済み紙おむつの処理方法、および使用済み紙おむつの処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に使い捨ての紙おむつは、非透水カバーシートと透水性不織布との間に吸水ポリマーを内包し、この吸水ポリマーが水分を含んで膨潤することにより、排泄物を吸収することができるように構成されている。
【0003】
このような紙おむつを使用した後は、焼却するか或いは埋め立てることにより処理されている。
【0004】
ところが、焼却処理をするためには多大なエネルギーを消費するとともに、多くの二酸化炭素を排出するので、地球環境に悪影響を及ぼす。一方、埋め立て処理をする場合は、使用済み紙おむつが産業廃棄物になる市町村もあり、コストがかかるといった問題が生じていた。
【0005】
そこで、使用済みの紙おむつの容積を減少させるとともに再利用するために、使用済み紙おむつを粉砕機で分断して構成成分に分解分離し、その後塩化カルシウムを投入した分解槽で高吸水性ポリマーを塩化カルシウムでモノマーに分解して水溶化し、パルプ成分を分離回収する方法(例えば、特許文献1参照。)や、使用済み紙おむつを解体、消毒・消臭し、紙おむつの構成成分に分離回収する使用済み紙おむつの処理方法、及びその処理装置(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【特許文献1】特開2000−84533号公報
【特許文献2】特開2003−19169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の使用済み紙おむつの処理方法では、使用済みの紙おむつを分断して分離したり濾過する工程が必要であるため、処理システムが大掛かりになるとともに、処理方法が複雑となる。このため、処理するためにエネルギーを必要としたり、大掛かりな処理施設を設けるためにコストが嵩むといった問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み創案されたもので、廃棄処理が容易な紙おむつ並びに簡単な装置および工程により処理可能で、且つ地球環境に優しい使用済み紙おむつの処理方法および使用済み紙おむつの処理機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、外面側の外側シートと装着者の肌が触れる内側シートとの間に吸水ポリマーを介在した使い捨ての紙おむつにおいて、
前記吸水ポリマーが生分解性の素材で構成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、吸水ポリマーとして生分解性の素材を使用しているので、吸水ポリマーを焼却したり埋め立てる必要がなく、放置していても微生物等の作用により自然に分解する。しかも、吸水ポリマーは、水分を吸収して膨潤し、使用済み紙おむつの大部分を占めているので、従来この吸水ポリマーを含めた紙おむつ全体を焼却処分をする際に大量に発生していた二酸化炭素の排出が大幅に抑制され、地球環境に優しい。
【0010】
なお、本発明において、紙おむつとは、フラットタイプの紙おむつのほか、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿とりパッド、ベッド用パッド、失禁パッド、ペット用のおむつ・シーツを含むものとする。
【0011】
本発明は、上記構成の紙おむつを使用した後に廃棄する処理方法であって、使用済みの紙おむつを回転ドラムを備えた処理機に投入し、該回転ドラム内において、前記使用済みの紙おむつを水に浸漬して攪拌し、該水に吸水ポリマーその他の紙おむつの構成材料および排泄物からなる不溶物を分散させ、回転ドラム内の水と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、使用済みの紙おむつを回転ドラムを備えた処理機に投入し、該回転ドラム内において、前記使用済みの紙おむつを水に浸漬して攪拌しているので、該水に吸水ポリマーその他の紙おむつの構成材料および排泄物からなる不溶物を分散させることができる。したがって、回転ドラム内の水と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出すれば、生分解性の素材で形成されている吸水ポリマーが微生物等の作用により自然に分解する。そうすると、吸水ポリマーや排泄物以外の不溶物のみを焼却或いは埋め立て処理すれば良いので、焼却しても排出される二酸化炭素は少量であり、埋め立てる場合であっても、少量で済むので、地球環境に優しい。
【0013】
本発明は、上記構成の使用済み紙おむつの処理方法に使用される使用済み紙おむつの処理機であって、回転自在に配設された回転ドラムと、該回転ドラムに水を供給する供給手段と、該回転ドラム内の水と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出する排出手段とが備えられたことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、簡単な構造の処理機により、使用済み紙おむつを好適に処理することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、廃棄処理が容易な紙おむつ並びに簡単な装置および工程により処理可能で、且つ地球環境に優しい使用済み紙おむつの処理方法および使用済み紙おむつの処理機を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る紙おむつおよび使用済み紙おむつの処理方法の最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本実施形態に係る紙おむつ1の概略を示しており、図2はこの紙おむつ1の断面の一部を示している。
【0018】
この紙おむつ1は、テープタイプの紙おむつであって、外面側の外側シート2と装着者の肌が触れる内側シート3との間に吸水ポリマー4を介在したもので構成されている。
【0019】
外側シート2は、非透水性の塩化ビニルで形成されており、防水効果を奏することにより、水分が外部に漏れることが防止されている。
【0020】
なお、外側シート2を形成する素材は、上記した塩化ビニルに限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン、ポリエステルなどの素材で形成してもよい。
【0021】
内側シート3は、装着者の肌が直接触れる不織布シート31と、この不織布シート31の外側に配置されるパルプ材32とが積層されてなっている。
【0022】
不織布シート31は、例えば、ポリプロピレン、ポリエステルなどの素材で形成されている。
【0023】
パルプ材32は、一般的に使用されるパルプ成分で形成されており、例えばティッシュペーパーを粉砕したものでもよい。また木材紙に限られるものではなく、植物繊維で形成されたものであってもよい。
【0024】
吸水ポリマー4は、ポリアスパラギン酸或いはポリグルタミン酸ナトリウムの生分解性の素材で形成されており、微生物等の作用により自然に分解して使用済み紙おむつの処理が容易になるように図られている。
【0025】
本実施の形態に係る紙おむつ1は、上記した構成材料のほかに、紙おむつ1を装着者に取り付けるための面ファスナー11aを有する係合部材11、股部分からの漏れを防止するための漏れ防止ギャザー12、紙おむつ1の外周を伸縮させて快適に装着するためのゴム部材13などが含まれている。
【0026】
なお、テープタイプの紙おむつ1の構成の概略は上記したとおりであるが、パンツタイプの紙おむつは、このテープタイプのものを立体成形した構造であり、また、フラットタイプの紙おむつ、尿とりパッド、ベッド用パッド、失禁パッド、ペット用のおむつ・シーツについても、基本的な外側シート2、内側シート3、吸水ポリマー4の構成はいずれも同様である。
【0027】
次に、上記した紙おむつ1を使用した後に廃棄する処理方法について説明する。
【0028】
まず、使用済みの紙おむつ1を回転ドラムを備えた処理機に投入する。
【0029】
そして、処理機の回転ドラム内において、使用済みの紙おむつ1を水に浸漬して攪拌し、該水に吸水ポリマー4その他の紙おむつの構成材料および排泄物からなる不溶物を分散させる。
【0030】
続いて、この回転ドラム内の水と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマー4と排泄物とを下水道または浄化槽に排出する。
【0031】
なお、水の温度を、例えば90度よりも高い温度に設定すると、殺菌効果をも奏するので、感染症予防に有効となる。
【0032】
また、上記した使用済み紙おむつの処理において、使用済み紙おむつ1を回収する際に、水溶性の素材で構成された回収袋(図示省略)に収容して回収すると、回収袋ごと処理することができるので、衛生的であり且つ利便性が高い。
【0033】
なお、この回収袋を生分解性をも有するの素材で構成すると、微生物等の作用により自然に分解するので、処理が容易で地球環境に優しい。
【0034】
次に、上記した使用済み紙おむつ1の処理方法に使用される処理機について図面を参照しながら説明する。
【0035】
この処理機5は、図3に示すように、回転自在に配設された回転ドラム(図示省略)と、該回転ドラムに水を供給する供給手段と、該回転ドラム内の水と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマー4と排泄物とを下水道または浄化槽に排出する排出手段とが備えられている。
【0036】
なお、回転ドラムに供給する水が温水が好ましく、例えば90度程度に昇温した高温水を用いると、殺菌処理が可能で感染症防止に有効となる。このため、該供給手段は、給水手段、蒸気ボイラー51、温水タンク52、給水タンク53とから主要部が構成されており、温水タンク52に供給された水に蒸気ボイラー51から蒸気を供給して水の温度を上昇させ、給水手段から供給された水を一時貯留した給水タンク53からの水とともに処理機5内に供給される。処理機5内の蒸気は再び蒸気ボイラー51に供給され、蒸気が循環されるようになされている。
【0037】
このように処理機5が構成され、給水・蒸気供給のための配管がなされているので、処理機5は、通常の洗濯機において、高温水に対する耐性を備えるように形成すれば使用することができる。また、特別な配管を施さなくても、通常の洗濯機・乾燥機に対する配管を利用することができるので、例えば洗濯機に処理機を並設して使用することも可能である。したがって、処理機5を設置するために、特別に大掛かりな工事等を行う必要がない。
【0038】
また、排出手段は、排水パイプ54を有しており、排水パイプ54の口径より大きな不溶物、例えば外側シート2は、回転ドラム内に残留して、容易に取り出すことができるように図られている。
【0039】
なお、処理機から排水した後は、浄化槽などにおいて排水リントやスリットスクリーンを用いることによりゴム部材や紙類などを取り除くことができる。
以上、本発明の実施の形態について、一例としての実施例について説明したが、上述した実施例に限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、廃棄処理が容易な紙おむつ並びに簡単な装置および工程により処理可能で、且つ地球環境に優しい使用済み紙おむつの処理方法および使用済み紙おむつの処理機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙おむつを示す平面図である。
【図2】図1の紙おむつの断面を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る紙おむつの処理方法の概略を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0042】
1 紙おむつ
2 外側シート
3 内側シート
4 吸水ポリマー
5 処理機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面側の外側シートと装着者の肌が触れる内側シートとの間に吸水ポリマーを介在した使い捨ての紙おむつにおいて、
前記吸水ポリマーが生分解性の素材で構成されていることを特徴とする紙おむつ。
【請求項2】
請求項1に記載の紙おむつを使用した後に廃棄するための処理方法であって、
使用済みの紙おむつを回転ドラムを備えた処理機に投入し、
該回転ドラム内において、前記使用済みの紙おむつを水に浸漬して攪拌し、該水に吸水ポリマーその他の紙おむつの構成材料および排泄物からなる不溶物を分散させ、回転ドラム内の水と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出することを特徴とする使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の使用済み紙おむつの処理方法に使用される使用済み紙おむつの処理機であって、
回転自在に配設された回転ドラムと、該回転ドラムに水を供給する供給手段と、該回転ドラム内の水と、不溶物のうち少なくとも吸水ポリマーと排泄物とを下水道または浄化槽に排出する排出手段とが備えられたことを特徴とする使用済み紙おむつの処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−112642(P2009−112642A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291043(P2007−291043)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(500294800)松本ナ−ス産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】