使用
本発明は、心血管疾患の治療もしくは予防における使用または心臓および/もしくは心血管の健康の促進における使用のための、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有する高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を含む組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心血管障害の予防および/または治療のための、高グルコシノレートのブロッコリーなどの高グルコシノレートのアブラナ科の野菜の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
心血管疾患(CVD)は、英国における早期死亡の主要な原因の一つである[1]。英国では、毎年110,000人を超える人々が冠動脈性心疾患(CHD)で死亡する。140万人を超える人々が狭心症に罹患し、毎年275,000人が心臓発作を起こしている。CVDの原因は複雑であり、通常は動脈の狭窄(アテローム性動脈硬化症)および狭窄した動脈中での血栓の形成による閉塞(血栓症)をもたらす[3]。これらの事象は、血管反応性の変化、血小板凝集の増加、血漿トリグリセリドの増加および炎症の全身マーカーの増加と関連することがわかってきた[4-7]。これらのうち、炎症が最も重要であり、癌および認知低下などの他の形態の慢性疾患の発達を支える[8]。
【0003】
これらの慢性疾患を生じる危険性を低下させるために、1日あたり少なくとも5部分の果物および野菜を摂取するようにとの食事に対するアドバイスは、果物および野菜が豊富な食事と、年齢に関連する慢性疾患の減少とを関連付けた疫学調査から得られた観察データに大きく基づくものである[8]。
【0004】
現在、アブラナ科の野菜が豊富な食事が、様々な部位での癌の発生および進行の危険性を低下させることができると記述する実質的な多くの疫学的証拠が存在する[12〜18]。
【0005】
ブロッコリーまたはカラブレーゼ(ブラシカ・オレラセア・バル・イタリカ(Brassica oleracea var italica))は、アブラナ科の野菜の代表的なメンバーである。この科の野菜は、その食用部分中でのグルコシノレートの合成および蓄積において独特である[34]。これらの硫黄含有グリコシドは、細胞液胞内に貯蔵される。組織損傷の後、それらは植物のチオグルコシダーゼ(ミロシナーゼ)を介していくつかの産物に加水分解され、それらのうち、メチオニン由来グルコシノレートに由来するイソチオシアネートおよびトリプトファン由来グルコシノレートに由来するインドールが最も豊富である[35]。ミロシナーゼを凍結前の漂白または調理により変性させた場合、摂取されるグルコシノレートは結腸中の微生物チオグルコシダーゼの作用によりイソチオシアネートおよびインドールに加水分解される。これらの分解産物は生物活性が高く、アブラナ科の野菜の健康上の利益の多くはこれらの化合物の活性と関連しているが、ヒトにおける実験データはほとんど全く存在しない。アブラナ科野菜はまた、健康上の利益と関連する他の化合物、特に、ビタミンC、葉酸、カロテノイド、カルシウムおよびマグネシウムの特に良好な供給源である[36,37]。ブロッコリーなどの食品中の任意の一群の化合物の生物活性を識別することは非常に複雑である。しかしながら、グルコシノレートに関する研究を容易にするために、標準的なブロッコリーと比較してメチオニン由来グルコシノレートのレベルが特異的に上昇しているが、他の潜在的な生物活性化合物には変化がないブロッコリーの栽培品種が開発されている[38,39]。かくして、これらの新しい遺伝子型を用いて、複雑な食品内の単一クラスの生物活性化合物の寄与と関与するヒトにおける仮説を試験することができる。
【0006】
いくつかの疫学調査は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子ファミリーの1以上のメンバー内の特定の多型が癌の危険因子であり得ることを示唆している。この遺伝子ファミリーの変異はまた、CVDにも関与し、いくつかの研究がヌル遺伝子型とCVDとの間の関係を試験してきた。現在、8個のクラスのGSTが存在し[42]、多くの研究がGST-μ(GSTM1)、GST-θ(GSTT1)およびGST-π(GSTP1)ならびにその多型に関して行われている。集団の約40%がヌル遺伝子型をもたらすGSTM1遺伝子の相同的欠失を有し、20%がGSTT1遺伝子の欠失を有する。GST遺伝子ファミリーは、グルタチオンとの結合により、反応性求電子剤を、体内からより容易に排出され得る化合物に変換する。従って、多型は防御機構を損傷させ、CVDを含む多数の疾患の発生をもたらし得る[43]。GSTとの多型はまた、癌の危険性に影響するアブラナ科の野菜摂取と相互作用することも示されている[43]。我々が加齢するにつれて、我々の動脈は硬化し、心筋需要の増加を引き起こし、より高い収縮期血圧および脈圧の拡大をもたらす。硬化プロセスは構造的変化、動脈の弾力性を担うエラスチンの分解および動脈壁の肥厚を引き起こすコラーゲンの増加の結果生じる[44]。冠動脈かん流圧の低下に伴う動脈の硬さおよび中心収縮期血圧のこの増加は、心臓発作、脳卒中および心不全の危険性を劇的に増加させる。動脈の硬さはまた、年齢、高血圧、喫煙、コレステロールレベルおよび肥満などのCVDと関連する一般的な危険因子の多くとも関連しているが、重要なことに、いくつかの集団群においては心血管罹患率および死亡率の独立予測因子であることも示されている[45]。動脈の硬さの測定は、CVDを有する患者の臨床評価における道具としてますます用いられている。増加指数(AIx)は、冠動脈疾患のための強力な独立危険マーカーであることが示されており、脈波伝播速度(PWV)は高血圧症患者における罹患率および死亡率の独立予測因子であることが示されている[46,47]。疫学調査および臨床試験により、動脈の硬さの増加が末期腎不全を有する患者および高血圧症を有する患者におけるCVDの独立マーカーであることが示されている[46,48,49]。頸動脈-大腿動脈PWVは、動脈の硬さの直接的測定における判断基準であると考えられる[50,51]。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様を、特許請求の範囲および以下の注釈に提示する。WO99/052345(参照により本明細書に組入れられるものとする)に開示されたものなどの高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を、心臓の健康を促進するために、より具体的には、障害の治療もしくは予防において、さらに具体的には、心血管障害の治療もしくは予防において用いることができることが見出された。例えば、それを必要とする人々もしくは動物の食事中に、本明細書に定義されるそのような高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(例えば、高グルコシノレートのブロッコリー)、もしくはその一部の十分量を含有させるか、またはそのような人々もしくは動物に、そのような高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(例えば、高グルコシノレートのブロッコリー)もしくはその一部から調製された医薬を投与することにより、これを達成することができる。
【0008】
本発明はまた、3-メチルチオプロピル(3-MTP)グルコシノレートのレベルを増加させるために改変された高グルコシノレートのアブラナ科の野菜植物(高グルコシノレートのブロッコリー植物など)および非改変対照植物と比較して3-MTP-グルコシノレートのレベルが上昇した高グルコシノレートの野菜植物(高グルコシノレートのブロッコリー植物など)も含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】CVDと関連する危険因子に対するグルコシノレートの投与の効果を決定するために行った試験の概略を示す。
【図2a】非糖尿病男性に関するJoint British SocietiesのCVD危険予測図を示す。
【図2b】非糖尿病女性に関するJoint British SocietiesのCVD危険予測図を示す。
【図3】取得したサンプルの詳細を含む行われたスクリーニングプロトコルの概略を示す。
【図4】4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレートおよびスルホラファンの代謝を示す。腸細胞への進入の際に、スルホラファン(SF)はグルタチオンに迅速に結合し、全身循環に輸送され、メルカプツル酸経路を介して代謝される。血漿のグルタチオンが低い環境内では、SF-グルタチオンコンジュゲートは切断され、おそらくGSTM1により媒介され、血漿中の遊離SFの循環をもたらす。この遊離SFは、TGFβ、EGFおよびインスリンなどのシグナリング分子を含む血漿タンパク質を改変することができる。
【図5】独立した前立腺マイクロアレイデータセットのLDAを示す。良性(Be)、原発性癌(PCa)および転移性癌(MCa)サンプルからなる、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション法(LCD)による前立腺上皮細胞サンプル(GEOアクセッション番号:GDS1439)を分類するための訓練サンプルとして、この試験のために良性(B)および悪性(M)(経尿道前立腺切除)TURP前立腺組織を用いる線形判別分析(LDA)である。「方法」に記載のように、良性および悪性TURPサンプルを識別するLDAを遺伝子一覧に対して行った。ここでは、最初の線形判別(LD1)を示す。
【図6】遺伝子転写に対する食事介入の効果を示す。a、介入前(Pre)、ブロッコリーに富む食事の6ヶ月後(Broc)およびエンドウ豆に富む食事の6ヶ月後(Peas)での、ボランティアからの良性(Ben)および悪性(Mal)前立腺から得たTURP組織、ならびに経直腸超音波誘導(TRUS誘導)生検組織における、GSTM1陽性とヌル遺伝子型の間で異なるプローブの数(P≦0.005、Welchの改変2標本t検定)を示す。b、介入前のTRUS誘導生検サンプルと、6ヶ月後のブロッコリー(6B)、6ヶ月後のエンドウ豆(6P)、12ヶ月後のブロッコリー(12B)および12ヶ月後のエンドウ豆(12P)に富む食事との間で異なるプローブの数(P≦0.005、Welchの改変2標本の対応のあるt検定)を示す。影は、適用した異なるカットオフ倍数に対応する。プローブ数、P値および中央偽発見率の完全な詳細については、表2を参照されたい。
【図7】ヒト血漿中でSFと共にインキュベートした、およびSFを含まずにインキュベートしたインスリンの液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)を示す。6.46および7.08分の保持時間で2種の異なるインスリン-SFコンジュゲートの出現を示す、(A)ヒト血漿対照中の非改変インスリン(20μg/ml)ならびに(B)インスリン(20μg/ml)および50μMのSFと共に37℃で4時間インキュベートしたヒト血漿中のインスリン-SF MH55+の抽出イオンLC-MSクロマトグラム(m/z 1183.6-1184.1)である。これらの2種のインスリン-SFコンジュゲートの増強された生成物イオン(EPI)-MSスペクトルを、図8に示す。
【図8】2種のインスリン-SFコンジュゲートの増強された生成物イオン(EPI)-MSスペクトルを示す。ウシインスリンおよび50μMのSFと共に37℃で4時間インキュベートしたヒト血漿のLC-MS分析に由来する(A)6.46分および(B)7.08分の保持時間ピークのMS2生成物イオンスペクトルである。(A)および(B)において、m/z 1183.9はインスリン-SF MH55+に対応し、(A)において、m/z 235.0はGly-SF、インスリンA鎖のN末端アミノ酸に対応し、(B)において、m/z 325.2はPhe-SF、インスリンB鎖のN末端アミノ酸に対応する。
【図9】SFと共にインキュベートした、およびSFを含まずにインキュベートしたTGFβ1のLC-MSを示す。TGFβ1の非改変N-末端ペプチド(m/z 768.5)ならびにDMSOで処理されたTGFβ1に由来するm/z 768.2〜769.2のA、SFで処理されたTGFβ1に由来するm/z 768.2〜769.2のB、DMSOで処理されたTGFβ1に由来するm/z 876.7〜877.7のCおよびSFで処理されたTGFβ1に由来するm/z 876.7〜877.7のDの改変N末端ペプチド(m/z 877.2)を表す前駆体質量の抽出イオンクロマトグラム(MS)である。
【図10】SFによるTGFβ1のN末端改変を示す。(A)保持時間23.43分でのTGFβ1の非改変N末端ペプチドを表すm/z 768.7のMS/MSスペクトルおよび(B)保持時間30.85分でのSFで処理されたサンプル中においてのみ見られる改変形態のTGFβ1を表すm/z 877.2のMS/MSスペクトルを示す。yイオンシリーズは同じままであるが、bイオンシリーズがシフトし(Δ)、質量217±0.8 DaのN末端改変を示すことに留意されたい。
【図11】SFによるTGFβ1/Smad媒介性転写の活性化を示す。CAGA12-lucプラスミドを含むNIH3T3細胞を、TGFβ1のみ、TGFβ1と活性なTGFβ1ダイマーを破壊する10 mM DTT、またはTGFβ1と2μMのSFで処理した。全てのサンプルを30分間予備インキュベートし、4時間さらに透析して、SFの最終濃度を34 nMにした。さらなる陰性対照として、細胞を処理しないか、または34 nMのSFのみで処理したところ、両方ともルシフェラーゼを誘導できなかった。化学発光を各サンプルのタンパク質濃度に対して正規化した(詳細については「方法」を参照されたい)。これは、行った合計4つの類似実験のうちの代表的な実験である。示されるデータは、3つの反復物の平均(s.e.m)である。
【図12】腺癌上皮A549細胞中のTGF-βシグナリング経路に対する純粋な化合物およびロケットに由来する総抽出物の効果を示す。イソチオシアネートが産生されないように熱処理されたロケットに由来する抽出物は、TGFβシグナリングの抑制を示す。エルシンは、SFよりもTGFβシグナリングを上方調節するのにより効果的であるようである。
【図13】ブロッコリー抽出物および/またはTGFβ1で処理した後のリン酸化SMAD2に関するCaco-2細胞のウェスタンブロット分析を示す。パネルA、リン酸化SMAD2;パネルB、GAPDH。レーン1、2-対照;3、4-TGFβ1;5、6-0分;7、8-4分;9-1分;10-1分 + TGFβ(2μg/L)。
【図14】遺伝子型分析のためのCovaultおよび同僚に基づくリアルタイムPCR手順を用いる使用のためのPCR条件と共に、Applied Biosystems Primer Express (http://www.appliedbiosystems.com/)を用いて設計されたプライマーおよびプローブを示す[21]。
【図15】ITCとシグナリングペプチドとの相互作用の機能的結果を示し、これは、ITCをEGFと共にインキュベートすることにより、過形成前立腺組織のモデルであるBPH細胞中のEGFシグナリングを抑制することができることを示す。示されるデータは、ペプチド改変を引き起こすことが知られる条件下でのEGFと4-メチルスルフィニルブチルITC(SF)との予備インキュベーションが、EGFのみと比較してリン酸化された受容体の量を減少させることを示す。これは、抗炎症結果と共に、EGFシグナリング経路の阻害をもたらすと予想される。
【図16】プロシアニジン(2μMの用量)は、HUVEC細胞モデルにおいて腫瘍壊死因子-α(TNF-α)に誘導されるIL-6を阻害することができる;プロシアニジンはブドウ皮抽出物(GE)から得られたものである。
【図17】プロシアニジン(2μMの用量)は、HUVEC細胞モデルにおいて腫瘍壊死因子-α(TNF-α)に誘導されるIL-6を阻害することができる;プロシアニジンはブドウ皮抽出物(GE)から得られたものである。
【図18】増殖因子EGFおよびインスリンを添加した場合、pAKTのレベルが増加することを示す良性前立腺過形成細胞(BPH-1)(癌細胞ではない)を示す。
【図19】ウシ胎仔血清(FCS)中で培養し、ITC、SFで処理した癌細胞PC3を示す。結果から認められるように、対照中には多くのpAKTが存在する。2μMで処理した場合、pAKTレベルの有意な低下が観察された。SFは、ウシ胎仔血清中で細胞外シグナリングタンパク質(インスリンなど)を介して作用していた。
【図20】図19における結果が、FCS中の細胞外シグナリングタンパク質に起因するものであったことを示す。図20には、FCSを用いない場合の結果を示す。FCSを用いない場合に認められるように、SFはpAKTを減少させるように機能しなかった。
【図21】ウェスタンブロットの結果を示す。A:pAKT発現を示すPC-3細胞の免疫組織化学染色(赤く着色)。B:pAKT発現の阻害を示す、2μMのSF中で1時間インキュベートした後のPC-3細胞の免疫組織化学染色(赤く着色しない)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、心血管障害の治療または予防における使用のための、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)および/またはその誘導体を含む組成物が提供される。
【0011】
本明細書で用いられる用語「アブラナ科の野菜」とは、新鮮なアブラナ科の野菜および/または加工されたアブラナ科の野菜および/またはアブラナ科の野菜の抽出物を意味する。
【0012】
本発明において、本発明者らは、標準的なレベルのグルコシノレートを含むアブラナ科の野菜および/または対照(エンドウ豆)処理と比較して高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を投与することにより、少なくとも収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール、LDL-コレステロール(mmol/L)および心血管疾患の危険性(次の10年における事象%)を有意に低下させることができることを示した。
【0013】
一実施形態においては、本明細書で用いられる用語「アブラナ科の野菜」とは、新鮮なアブラナ科の野菜を意味する。
【0014】
さらなる実施形態においては、本明細書で用いられる用語「アブラナ科の野菜」とは、加工されたアブラナ科の野菜を意味する。
【0015】
別の実施形態においては、本明細書で用いられる用語「アブラナ科の野菜」とは、アブラナ科の野菜の抽出物を意味する。
【0016】
本明細書で用いられる用語「新鮮なアブラナ科の野菜」は、生で摂取されるか、または任意の好適な方法で調理されたアブラナ科の野菜またはその一部を意味する。
【0017】
本明細書で用いられる用語「加工されたアブラナ科の野菜」は、例えば、房化(floreting)、個別急速冷凍(IQF)、マセレーション、均質化、乾燥、凍結、圧縮などの少なくとも1のさらなる加工工程を受けたアブラナ科の野菜を意味する。
【0018】
本明細書で用いられる「アブラナ科の野菜の抽出物」とは、本明細書で定義される新鮮なアブラナ科の野菜の全部もしくは一部を抽出することにより、および/または本明細書で定義される加工されたアブラナ科の野菜の全部もしくは一部を抽出することにより得られた物質または複数の物質の混合物を指す。抽出を、エタノールまたは水などの溶媒を用いて実行することができる。一実施形態においては、好ましくは、抽出物は水性抽出物である。一実施形態においては、好適には、抽出物はアブラナ科の野菜の少なくともグルコシノレートを含む。
【0019】
本明細書で用いられる用語「ブロッコリー」は、新鮮なブロッコリーおよび/または加工されたブロッコリーおよび/またはブロッコリーの抽出物を意味する。
【0020】
一実施形態においては、本明細書で用いられる用語「ブロッコリー」は、新鮮なブロッコリーを意味する。
【0021】
さらなる実施形態においては、本明細書で用いられる用語「ブロッコリー」は、加工されたブロッコリーを意味する。
【0022】
別の実施形態においては、本明細書で用いられる用語「ブロッコリー」は、ブロッコリーの抽出物を意味する。
【0023】
本明細書で用いられる用語「新鮮なブロッコリー」は、生で摂取されるか、または任意の好適な方法により調理されたブロッコリーの花房および茎を意味する。
【0024】
本明細書で用いられる用語「加工されたブロッコリー」は、例えば、房化、個別急速冷凍(IQF)、マセレーション、均質化、乾燥、凍結、圧縮などの少なくとも1のさらなる加工工程を受けたブロッコリーを意味する。
【0025】
本明細書で用いられる「ブロッコリーの抽出物」とは、本明細書で定義される新鮮なブロッコリーの全部もしくは一部を抽出することにより、および/または本明細書で定義される加工されたブロッコリーの全部もしくは一部を抽出することにより得られた物質または複数の物質の混合物を指す。抽出を、エタノールまたは水などの溶媒を用いて実行することができる。一実施形態においては、好ましくは、抽出物は水性抽出物である。一実施形態においては、好適には、抽出物はブロッコリーの少なくともグルコシノレートを含む。
【0026】
本明細書で用いられる用語「投与する」、「投与すること」、「治療すること」または「治療された」は、必要に応じて、所望の生理的効果を達成するのに十分な用量の設定された食事計画において、本明細書で定義されるような、新鮮な高グルコシノレートのアブラナ科の野菜もしくはその一部(新鮮な高グルコシノレートのブロッコリーもしくはその一部)、加工された高グルコシノレートのアブラナ科の野菜もしくはその一部(加工された高グルコシノレートのブロッコリーもしくはその一部など)、またはそのような高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)から調製された医薬などの前記高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の十分量の摂取を可能にすることを含む。
【0027】
いかなる理論によっても束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、本発明の方法および使用における使用のための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(例えば、高グルコシノレートのブロッコリー)中に存在する1種以上の植物化学物質および/または少なくとも1種のその誘導体が、細胞外シグナリングタンパク質を改変することにより作用すると考えている。これが心血管疾患を治療または予防するための本明細書に記載のブロッコリーの排他的な作動形態であるとは考えられないことは理解されるであろう。
【0028】
本発明の別の態様においては、心血管障害の治療または予防のための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0029】
本発明のさらなる態様においては、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)の有効量を被験体に投与することを含む、心血管障害の治療または予防のための方法を提供する。
【0030】
本明細書で用いられる、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)に対する参照は、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート、4-メチルチオブチルグルコシノレート;3-メチルチオプロピルグルコシノレート、スルホラファン、エルシン、サチビン、イベリン、β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC)、3-メチルチオプロピルイソチオシアネートを含む一覧から選択される少なくとも1種の植物化学物質のレベルが増加したブロッコリーを指す。
【0031】
本発明のさらなる態様においては、細胞外シグナリングタンパク質を調節することによる、心血管の健康もしくは心血管疾患の進行の管理または心血管の健康およびウェルネスの増進における使用のための、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物を提供する。好適には、前記シグナリングタンパク質は、限定されるものではないが、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)、上皮増殖因子(EGF)またはインスリンのうちの1種以上であってよい。
【0032】
本発明のさらなる態様においては、細胞外シグナリングタンパク質を調節することによる、心血管の健康もしくは心血管疾患の進行の管理または心血管の健康およびウェルネスの増進における使用のための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。好適には、前記シグナリングタンパク質は、限定されるものではないが、TGFβ1、EGFまたはインスリンのうちの1種以上であってよい。
【0033】
本発明のさらなる態様においては、被験体の心血管の健康もしくは心血管疾患の進行を管理するか、または心血管の健康およびウェルネスを増進する方法であって、有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を被験体に投与することによって、1種以上の細胞外シグナリングタンパク質を共有改変することを含む前記方法を提供する。
【0034】
本発明の別の態様によれば、例えば、C反応性タンパク質(CRP)および限定されるものではないが、インターロイキン-6(IL-6)などの炎症と関連するサイトカインなどの、炎症マーカーおよび炎症と関連するタンパク質のレベルを低下させるのに使用するための、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物が提供される。
【0035】
本発明の別の態様においては、例えば、CRPおよび限定されるものではないが、IL-6などの炎症と関連するサイトカインなどの、炎症マーカーおよび炎症と関連するタンパク質のレベルを低下させるのに使用するための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0036】
本発明のさらなる態様においては、炎症マーカーおよび炎症と関連するタンパク質(例えば、CRPおよび限定されるものではないが、IL-6などの炎症と関連するサイトカインなど)のレベルを低下させる方法であって、被験体に有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を投与することによって、1種以上の細胞外シグナリングタンパク質を共有改変することを含む前記方法を提供する。
【0037】
本発明のさらなる態様においては、総コレステロール(TC)のレベルおよび/または低密度リポタンパク質-コレステロール(LDL-コレステロール)のレベルなどの哺乳動物血清コレステロールのレベルを改善するか、または制御するのに使用するための、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物を提供する。特に、例えば、哺乳動物血清コレステロール、総コレステロール(TC)および/またはLDL-コレステロールのレベルを、例えば、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)で治療されていない被験体中の前記レベルと比較して、低下させるか、または増加を防止する(すなわち、健康なレベルに維持する)ことができる。
【0038】
本発明の別の態様においては、総コレステロール(TC)のレベルおよび/またはLDL-コレステロールのレベルなどの、哺乳動物血清コレステロールのレベルを改善するか、または制御するのに使用するための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。特に、哺乳動物血清コレステロール、例えば、総コレステロール(TC)および/またはLDL-コレステロールのレベルを、例えば、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)で治療されていない被験体中の前記レベルと比較して、低下させるか、または増加を防止する(すなわち、健康なレベルに維持する)ことができる。
【0039】
本発明のさらなる態様においては、哺乳動物血清コレステロールのレベル(総コレステロール(TC)のレベルおよび/またはLDL-コレステロールのレベルなど)を改善するか、または制御する方法であって、有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を摂取することによって、前記1種以上の細胞外シグナリングタンパク質を共有改変することを含む前記方法を提供する。特に、哺乳動物血清コレステロール、例えば、総コレステロール(TC)および/またはLDL-コレステロールのレベルを、例えば、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)で治療されていない被験体中の前記レベルと比較して、低下させるか、または増加を防止する(すなわち、健康なレベルに維持する)ことができる。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、心血管炎症の治療または予防における使用のための、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物が提供される。
【0041】
本発明の別の態様においては、心血管炎症の治療または予防における使用のための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0042】
本発明のさらなる態様においては、被験体に有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を投与することを含む、心血管炎症を治療または予防する方法を提供する。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、高血圧症の治療または予防における使用のための高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物が提供される。
【0044】
本発明の別の態様においては、高血圧症の治療または予防のための医薬の製造における高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0045】
本発明のさらなる態様においては、被験体に有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を投与することを含む、高血圧症の治療または予防のための方法を提供する。
【0046】
本発明のさらなる態様においては、心血管の危険性を低下させるのに使用するための高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物を提供する。
【0047】
本発明のさらなる態様においては、心血管の危険性を低下させるのに使用するための医薬の製造における高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0048】
本発明のさらなる態様においては、被験体に有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を投与することを含む、被験体における心血管の危険性を低下させるための方法を提供する。
【0049】
本発明のさらなる態様においては、総血清トリグリセリド(TG)を低下させるのに使用するための高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物を提供する。
【0050】
本発明のさらなる態様においては、総血清トリグリセリドを低下させるのに使用するための医薬の製造における高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0051】
本発明のさらなる態様においては、被験体に有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を投与することを含む、被験体における総血清トリグリセリドを低下させる方法を提供する。
【0052】
本明細書で用いられる通り、その最も広い意味で、用語「心血管障害」または「心血管疾患」とは、心臓または血管系の任意の障害または疾患を指す。用語「心血管障害」および「心血管疾患」は、本明細書では互換的に用いられる。より具体的には、本明細書で用いられる用語「心血管障害」は、例えば、年齢、食事、環境因子および/または遺伝的素因の1つ以上から選択される複雑な原因を有する心臓または血管系に作用する慢性障害を指す。そのような障害の例は、狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症または心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患、脳卒中である。
【0053】
好ましい態様
本発明の高レベルのグルコシノレートを有するアブラナ科の野菜を、WO99/52345およびPCT/GB2009/001648(両方とも参照により本明細書に組入れられるものとする)に記載の高グルコシノレートのブロッコリーとして提供することができる。
【0054】
あるいは、高レベルのグルコシノレートを有するアブラナ科の野菜は、ブロッコリー以外の高グルコシノレートのアブラナ科の野菜であってもよく、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜を、WO99/52345およびPCT/GB2009/001648(両方とも参照により本明細書に組入れられるものとする)に記載の教示に従って調製することができる。
【0055】
好適には、本発明における使用のための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、増加したレベルの1種以上のグルコシノレートおよび/または1種以上のイソチオシアネートを含む。
【0056】
一実施形態においては、本発明における使用のための高グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、増加したレベルの1種以上の以下の化合物:4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)、4-メチルチオブチルグルコシノレート;3-メチルチオプロピルグルコシノレートを含む。
【0057】
一実施形態においては、本発明における使用のための高グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、増加したレベルの4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)および/または3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)を含む。
【0058】
好ましくは、本発明における使用のための高グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、同様の条件下で成長させた標準的なアブラナ科の野菜(標準的なブロッコリーなど)に認められる4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)のレベルの2〜3倍である4-メチルスルフィニルグルコシノレート(MSB)のレベルを有する。
【0059】
好ましくは、本発明における使用のための高グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、同様の条件下で成長させた標準的なアブラナ科の野菜(標準的なブロッコリーなど)に認められる4-3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)のレベルの2〜3倍である4-3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)のレベルを有する。
【0060】
一実施形態においては、本発明における使用のための高グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、増加したレベルの1種以上の以下の化合物:スルホラファン、エルシン、サチビン、イベリン、β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC)、3-メチルチオプロピルイソチオシアネートを含む。
【0061】
好適には、前記高グルコシノレートおよび/またはその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を、所望の生理的効果をもたらすことが知られる十分な用量で設定された食事計画で提供することができる。
【0062】
一実施形態においては、高グルコシノレートおよび/またはその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を、約60〜140μmol/日、好適には、70〜140μmol/日、好適には、75〜140μmol/日、好適には、80〜135μmol/日、好適には、90〜135μmol/日の量のグルコシノレートを提供する量で摂取する。好適には、高レベルのグルコシノレートおよび/またはその誘導体を有するブロッコリーを、約20μmol/日以上、30μmol/日以上、40μmol/日以上、50μmol/日以上、60μmol/日以上、75μmol/日以上、好適には、約79μmol/日以上、好適には、約100μmol/日以上、好適には、約130μmol/日、好適には、約140μmol/日の量でグルコシノレートを提供する量で摂取する。
【0063】
好ましくは、高グルコシノレートおよび/またはその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、同様の条件下で成長させた標準的なアブラナ科の野菜(標準的なブロッコリーなど)に認められるレベルの2〜3倍であるグルコシノレートのレベルを有する。好ましくは、高グルコシノレートおよび/またはその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、少なくとも10μmol/g乾燥重量、より好ましくは、少なくとも約14μmol/g乾燥重量、少なくとも約16μmol/g乾燥重量、少なくとも約20μmol/g乾燥重量、少なくとも約25μmol/g乾燥重量、少なくとも約30μmol/g乾燥重量、少なくとも約50μmol/g乾燥重量または少なくとも75μmol/g乾燥重量の量の少なくとも1種のグルコシノレートを含む。
【0064】
好適には、一実施形態においては、好ましくは、本発明による高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、少なくとも10μmol/g乾燥重量、より好ましくは、少なくとも約14μmol/g乾燥重量、少なくとも約16μmol/g乾燥重量、少なくとも約20μmol/g乾燥重量、少なくとも約25μmol/g乾燥重量、少なくとも約30μmol/g乾燥重量、少なくとも約50μmol/g乾燥重量または少なくとも約75μmol/g乾燥重量の量の4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)および/または3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)を有する。
【0065】
本明細書で用いられる用語「細胞外シグナリングタンパク質を改変すること」とは、該シグナリングタンパク質の天然のシグナリング機能を変化させることを意味する。用語「改変すること」は、細胞外シグナリングタンパク質のシグナリング機能を阻害または増強することを意味してもよい。一実施形態においては、用語「改変すること」は、細胞外シグナリングタンパク質のシグナリング機能を阻害することを意味する。
【0066】
一実施形態においては、好ましくは、前記被験体は、グルタチオンS-トランスフェラーゼμ1(GSTM1)遺伝子および/またはグルタチオンS-トランスフェラーゼθ1(GSTT1)遺伝子および/またはグルタチオンS-トランスフェラーゼπ1(GSTP1)遺伝子を含む遺伝子型を有する。
【0067】
本明細書で用いられる用語「低下させること」または「低下した」および「低下させる」の他の派生は、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)で治療しなかった被験体と比較して、本発明による高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)で治療した被験体における値の低下が存在することを意味する。
【0068】
好ましい実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜は、高グルコシノレートのブロッコリーである。
【0069】
誘導体
本明細書で用いられる用語「誘導体」とは、グルコシノレートから誘導された高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)中に存在する化合物を指す。1つの好ましい実施形態においては、誘導体は、イソチオシアネートであってよい。イソチオシアネートは、一般式R-NCSを有する硫黄含有植物化学物質である。
【0070】
イソチオシアネートは、アブラナ科の野菜中にグルコシノレートコンジュゲートとして天然に存在する。
【0071】
本発明における特定の興味のイソチオシアネートとしては、以下のもの:4-メチルスルフィニルブチル(さもなければスルホラファンもしくはSFとして知られる);4-メチルチオブチル(さもなければエルシンとして知られる);4-メルカプトブチル(さもなければサチビンとして知られる);β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC);イベリン(さもなければIBとして知られる)、および3-メチルチオプロピルが挙げられる。
【0072】
一実施形態においては、エルシンおよび3-メチルチオプロピルが、単独で、または組合せにおいて特に好ましいイソチオシアネートであってよいと想定される。
【0073】
一実施形態においては、3-メチルチオプロピルが好ましいイソチオシアネートである。
【0074】
別の実施形態においては、サチビンが好ましいイソチオシアネートであってよい。
【0075】
一実施形態においては、4-メチルスルフィニルブチル(スルホラファン)が好ましい。
【0076】
グルコシノレート
グルコシノレートは、硫黄、窒素およびグルコースに由来する基を含む有機化合物のクラスである。それらは、アブラナ科の野菜などのアブラナ目の多くの植物の二次代謝物として生じる。
【0077】
グルコシノレートは水溶性の陰イオンであり、グルコシドに属する。全てのグルコシノレートは、硫黄原子を介してグリコン基に(硫酸化ケトキシムを作る)、および窒素原子を介して硫酸基に結合される中心炭素原子を含む。さらに、中心炭素は側基に結合する;異なるグルコシノレートは異なる側基を有する。
【0078】
約120種の異なるグルコシノレートが植物において天然に存在することが知られている。
【0079】
本発明によるグルコシノレートは、好ましくは脂肪族化合物である。
【0080】
本発明においては、1種以上の以下のグルコシノレート:4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート、4-メチルチオブチルグルコシノレートおよび3-メチルチオプロピルグルコシノレートが重要であってよいことが想定される。
【0081】
一実施形態においては、グルコシノレートは、好ましくは、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)および/または3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)である。
【0082】
高グルコシノレートのアブラナ科の野菜または高グルコシノレートのブロッコリー
好適には、用語「高レベルのグルコシノレートを有するアブラナ科の野菜」または「高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリー」は、それぞれ、アブラナ科の野菜またはブロッコリーの伝統的な種類と比較して、グルコシノレートのレベルが増加したアブラナ科の野菜またはブロッコリー作物を意味する。
【0083】
一実施形態においては、用語「高グルコシノレート」は、アブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)および/または少なくとも1種のその誘導体が、同様の条件下で成長させた標準的なアブラナ科の野菜(標準的なブロッコリーなど)に認められる4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)および/またはメチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)のレベルの2〜3倍である4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)および/またはメチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)のレベルを有することを意味する。
【0084】
好適には、一実施形態においては、用語「高レベルのグルコシノレート」は、アブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)が約10〜約100μmol/g乾燥重量を含むことを意味する。好適には、用語「高グルコシノレート」は、アブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)が、少なくとも約10μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約14μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約16μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約20μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約25μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約30μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約50μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約75μmol/g乾燥重量を含むことを意味する。
【0085】
高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、Mithenら、Theor. Appl. Genet. (2003) 106, 727-734; Sarikamisら、Molecular Breeding (2006) 18, 219-228、またはWO 99/52345(参照により本明細書に組入れられるものとする)に記載のものであってよい。
【0086】
一実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、約10〜約100μmol/g乾燥重量、好適には、約14〜約100μmol/g乾燥重量、好適には、約16〜約100μmol/g乾燥重量、好適には、約20〜約100μmol/g乾燥重量、好適には、約30〜約100μmol/g乾燥重量、好適には、約50〜約100μmol/g乾燥重量の濃度の4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレートおよび/または3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレートを含んでもよい。
【0087】
例えば、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)中の4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレートのレベルは、例えば、約8〜約55μmol/g乾燥重量、好適には、約10〜約55μmol/g乾燥重量、好適には、約10〜約40μmol/g乾燥重量であってよい。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)中の4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレートのレベルは、例えば、少なくとも約8μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約10μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約15μmol/g乾燥重量であってよい。これは、典型的には、4〜5μmol/g乾燥重量の領域のこのグルコシノレートのレベルを有する、小売り店から入手可能なアブラナ科の野菜(特に、ブロッコリー)と鋭く対照をなす。
【0088】
例えば、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)中の3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレートのレベルは、例えば、約1.5〜約10μmol/g乾燥重量、好適には、約2〜約10μmol/g乾燥重量、好適には、約2〜約8μmol/g乾燥重量であってよい。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)中の3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレートのレベルは、例えば、少なくとも約1.5μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約2μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約3μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約4μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約5μmol/g乾燥重量であってよい。これは、典型的には、0.5〜1μmol/g乾燥重量の領域のこのグルコシノレートのレベルを有する、小売り店から入手可能なアブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)と鋭く対照をなす。
【0089】
一実施形態においては、アブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)中のグルコシノレートのレベルを、ブロッコリーについては花房および食用茎の両方などの植物の全ての食用部分を試験することにより決定する。別の実施形態においては、アブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)中のグルコシノレートのレベルを、葉のみ、または花房のみ、または根のみを試験することにより決定する。
【0090】
例えば、アブラナ科の野菜が、葉を主に食べるもの、例えば、ロケット、ルッコラ、ウォールロケット、ワイルドロケット、ケールまたはキャベツなどである場合、例えば、好ましくは、アブラナ科の野菜中のグルコシノレートのレベルを、葉のみを試験することにより決定する。
【0091】
アブラナ科の野菜が、花房を主に食べるもの、例えば、ブロッコリー、芽キャベツまたはカリフラワーなどである場合、例えば、好ましくは、アブラナ科の野菜中のグルコシノレートのレベルを、花房のみを試験することにより決定する。
【0092】
アブラナ科の野菜が、根を主に食べるもの、例えば、ダイコンまたはカブなどである場合、例えば、好ましくは、アブラナ科の野菜中のグルコシノレートのレベルを、根の食用部分のみを試験することにより決定する。
【0093】
好ましくは、本発明において用いられるのは、少なくともブロッコリーの花房(またはブロッコリーの花房のみ)である。
【0094】
一実施形態においては、用語「高レベルのグルコシノレート」は、アブラナ科の野菜の花房または食用の根または食用の葉が、例えば、約10〜約100μmol/g乾燥重量の高レベルのグルコシノレートを含有することを意味する。この実施形態においては、好適には、用語「高グルコシノレート」は、アブラナ科の野菜の花房または根または葉は、少なくとも約10μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約14μmol/g乾燥重量、少なくとも約16μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約20μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約25μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約30μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約50μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約75μmol/g乾燥重量を含むことを意味する。
【0095】
一実施形態においては、用語「高レベルのグルコシノレート」は、ブロッコリーの花房が、例えば、約10〜約100μmol/g乾燥重量の高レベルのグルコシノレートを含有することを意味する。この実施形態においては、好適には、用語「高グルコシノレート」は、ブロッコリーの花房が、少なくとも約10μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約14μmol/g乾燥重量、少なくとも約16μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約20μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約25μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約30μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約50μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約75μmol/g乾燥重量を含むことを意味する。
【0096】
用語「高レベルのグルコシノレートを有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)」とは、その新鮮な天然状態の植物材料、すなわち、頭部全体、例えば、ブロッコリーの花房および茎だけでなく、例えば、房化、個別急速冷凍(IQF)、マセレーション、均質化、乾燥、凍結、圧縮などの1つ以上のさらなる加工工程にかけた場合のアブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)も指すことが理解されるであろう。
【0097】
高レベルのグルコシノレートを有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を、1種以上のさらなる高グルコシノレートのアブラナ科の野菜などの、1種以上の他の野菜および/または野菜生産物と組合わせることができることがさらに明らかであろう。
【0098】
アブラナ科の野菜
当業者であれば、高グルコシノレートのブロッコリー以外のグルコシノレートを含む植物が公知であることを知っているであろう。グルコシノレートは、フウチョウソウ目に由来する植物中に存在する。この目は約18の科を含み、アブラナ科とフウチョウソウ科が最大の2つである。
【0099】
グルコシノレートを含有するアブラナ科に由来するアブラナ科の野菜(例えば、アブラナ科の野菜作物)としては、以下のアブラナ科の野菜作物:
・ブロッコリー、
・ロケット(シシンブリウム・オフィシナレス(Sisymbrium officinales); エルカ・サティバ(Eruca sativa) (ルッコラ)、ジプロタキシス・エルコイデス(Diplotaxis erucoides) (ウォールロケット)、ジプロタキシス・テヌイフォリア(Diplotaxis tenuifolia) (ワイルドロケット)、およびブニアス・オリエンタリス(Bunias orientalis) (トルコロケット));ならびに
・クレソン(ロリパ・ナスタルチウム・アクアチカム(Rorripa nasturtium aquaticum)およびナスタルチウム・オフィシナレ(Nasturtium officinale)、
・カリフラワー、
・ケール、
・カブ、
・コラード、
・芽キャベツ、
・キャベツ、ならびに
・ダイコン、
が挙げられる。
【0100】
一実施形態においては、高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーを、1種以上のアブラナ科の野菜作物などの、1種以上の他のアブラナ科の野菜および/またはアブラナ科の野菜生産物と組合わせることができる。
【0101】
抽出物
一実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)からの抽出物を含む、本発明における使用のための組成物を提供し、その抽出物も高レベルのグルコシノレートを有する。
【0102】
一実施形態においては、好ましくは、前記抽出物は、本明細書で定義される新鮮な高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の全部もしくは一部(生のアブラナ科の野菜(生のブロッコリーなど)など)を抽出することによるか、または本明細書で定義される加工されたアブラナ科の野菜(加工されたブロッコリーなど)の全部もしくは一部を抽出することにより得られる物質または複数の物質の混合物である。
【0103】
抽出を、エタノールまたは水などの溶媒を用いて実行することができる。一実施形態においては、好ましくは、抽出物は水性抽出物である。
【0104】
個体/被験体
本明細書で用いられる用語「個体」および「被験体」とは、脊椎動物、特に、哺乳動物種のメンバーを指す。この用語は、限定されるものではないが、家畜動物、競技用動物、霊長類およびヒトを含む。一実施形態においては、好ましくは、被験体はヒトである。
【0105】
治療的使用
高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を、1種以上の以下のもの:狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症もしくは心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、高血圧/高血圧症、高コレステロール血症/高脂血症、末梢動脈疾患、脳卒中の治療または予防において用いることができる。
【0106】
一実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を、アテローム性動脈硬化症の治療または予防において用いることができる。
【0107】
従って、一実施形態においては、本発明は、狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症もしくは心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、高血圧/高血圧症、高コレステロール血症/高脂血症、末梢動脈疾患、脳卒中の治療および/または予防における使用のための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を含む組成物を提供する。
【0108】
別の実施形態においては、本発明は、被験体に有効量の高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を含む組成物を投与することを含む、狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症もしくは心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、高血圧/高血圧症、高コレステロール血症/高脂血症、末梢動脈疾患、脳卒中を治療および/または予防する方法を提供する。
【0109】
一実施形態においては、本発明は、哺乳動物の血清コレステロールのレベルを改善または制御するのに使用するための1種以上の植物化学物質および/もしくは少なくとも1種のその誘導体(特に、1種以上のグルコシノレートおよび/もしくはイソチオシアネート)または高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を含む組成物であって、該植物化学物質および/もしくはその誘導体または高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)が細胞外シグナリングタンパク質を改変する、前記組成物を提供する。特に、総コレステロール(TC)および/またはLDL-コレステロールのレベルを、例えば、植物化学物質および/もしくは少なくとも1種のその誘導体または高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)で治療されていない被験体中のレベルと比較して、低下させるか、または増加を防止する(すなわち、健康なレベルに維持する)ことができる。
【0110】
別の実施形態においては、本発明は、1種以上の植物化学物質および/もしくは少なくとも1種のその誘導体(特に、1種以上のグルコシノレートおよび/もしくはイソチオシアネート)を含む組成物(好ましくは、医薬組成物)の有効量または高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の有効量を被験体に投与することを含み、植物化学物質および/もしくはその誘導体または高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)が細胞外シグナリングタンパク質を改変する、哺乳動物の血清コレステロールのレベルを改善または制御するための方法を提供する。
【0111】
心血管障害(CVD)
本明細書で用いられる通り、その最も広い意味において、用語「心血管障害」または「心血管疾患」とは、心臓または血管系の任意の障害または疾患を指す。用語「心血管障害」および「心血管疾患」は、本明細書では互換的に用いられる。
【0112】
より具体的には、本明細書で用いられる用語「心血管障害」とは、例えば、年齢、食事、環境因子および/または遺伝的素因のうちの1つ以上から選択される複雑な原因を有する心臓または血管系に作用する慢性障害を指す。そのような障害の例は、狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症もしくは心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患、脳卒中である。
【0113】
一実施形態においては、用語「心血管障害を予防すること」とは、1つ以上の心血管危険因子(以下に定義される)を、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を投与した被験体において、すなわち、本発明に従って高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を投与しなかった被験体と比較して、治療する、および/または予防する、および/または減少させることを意味してもよい。
【0114】
心血管危険因子
以下の一覧は、心血管危険因子、すなわち、単独で、または集合的に、ヒトがCVDを生じるか、または心血管(CV)事象を有する危険にある因子であると一般的に考えられるものを定義する。
【0115】
心血管危険因子は、心臓危険性アセサーにおける全体パラメーター、例えば、CVDを生じる人の危険を、彼らから得られた生物学的値および生理学的値のセットから算出するアルゴリズムを形成する[58]。
【0116】
好適な心血管危険性カルキュレーターを、http://www.patient.co.uk/showdoc/40000133/に見出すことができ、参照により本明細書に組入れられるものとするHeart (British Cardiac Society, British Hypertension Society, Diabetes UK, HEART UK, Primary Care Cardiovascular Society, The Stroke Associationにより準備された“JBS2: Joint British Societies’ Guidelines on Prevention of Cardiovascular Disease in Clinical Practice” (Heart 2005, Vol 91: v1-v52; doi 10.1136/hrt.2005.079988 (特別版)を参照されたい)の特別版にも教示されている。JBS2において用いられるアルゴリズムおよび心血管危険性アセサーに関するさらなる詳細を、参照により本明細書に組入れられるものとするAndersonら、Circulation 1991; 83: 356-62に見出すことができる。
【0117】
本明細書の図2aおよび2bは、上記で教示された危険性アセサーの代わりに、またはそれと共に用いることができる心血管危険予測図を示す。これらの図表は、Heart (British Cardiac Society, British Hypertension Society, Diabetes UK, HEART UK, Primary Care Cardiovascular Society, The Stroke Associationにより準備された“JBS2: Joint British Societies’ Guidelines on Prevention of Cardiovascular Disease in Clinical Practice” (Heart 2005, Vol 91: v1-v52; doi 10.1136/hrt.2005.079988 (特別版)を参照されたい)の特別版に記載されている。これらの図表は、まだ冠動脈性心疾患(CHD)または他の主要なアテローム性動脈硬化症を生じていない個体について心血管疾患(CVD)の危険性(非致命的心筋梗塞および脳卒中、冠動脈疾患および脳卒中による死亡ならびに新しい狭心症)を評価するためのものである。
【0118】
図2aおよび2bに示される心血管危険予測図を用いてCVDを生じる個体の合計10年の危険性を評価するために、被験体の性別、ならびに生涯の喫煙状態、および年齢に関する表を選択する。この四角形の中で、収縮期血圧に関する座標と、総コレステロールとHDL-コレステロールの比とが交わる点に従って、レベルまたは危険性を定義する。HDLコレステロールの結果が利用可能でない場合、これが1.0 mmol/lであると仮定し、脂質スケールを総コレステロールのみについて用いることができる。
【0119】
より高い危険性のある個体を、10年のCVD危険性が20%を超える(これは同じ期間にわたって15%を超えるCHDの危険性とほぼ等しい)人と定義する。この図表はまた、10年のCVD危険性が10〜20%の範囲で中程度に増加する個体および危険性が10年にわたって10%より低い人の同定も支援する。初期の血圧および最初の無作為の(非空腹時)総コレステロールおよびHDLコレステロールを用いて、個体の危険性を評価することができる。
【0120】
代替的な心血管危険カルキュレーターが、当業者には公知である。例えば、QRISKのみが、英国人集団のために特異的に設計された心血管疾患危険性スコアであり、ASSIGNはスコットランド人集団のために設計されている(例えば、参照により本明細書に組入れられるものとするHippisley-Coxら、BMJ (doi:10.1136/bmj.39261.471806.55) pp1-12を参照されたい)。他の好適な心血管危険性カルキュレーターは、当業者には公知であろう。
【0121】
高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与により改変することができる心血管危険因子を、
・収縮期血圧、
・拡張期血圧、
・総コレステロール、
・LDLコレステロール、
・動脈の硬さ、
・炎症、
・IL6のレベル、
・C反応性タンパク質(CRP)のレベル、
からなる群の1つ以上から選択する。
【0122】
炎症ならびにIL6およびCRPレベルの上昇は、CVDの危険性を増加させる役割を果たす。一実施形態においては、炎症を、IL6および/またはCRPレベルを測定することにより評価することができる。
【0123】
本発明の一実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜の使用は、炎症および/または炎症マーカーおよび/またはIL6および/またはCRPのレベルを低下させることができる。
【0124】
動脈の硬さは、CVDの独立予測因子として確立されている。脈波伝播速度(PWV)または増加指数(AIx)を測定することにより、動脈の硬さを決定することができる。さらに、増加指数(AIx)は、冠動脈疾患に関する強力な独立危険マーカーであることが示されており、脈波伝播速度(PWV)は高血圧症患者における罹患率および死亡率の独立予測因子であることが示されている。
【0125】
本発明の一実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜の使用は、動脈の硬さおよび/またはPWV測定値および/またはAIx測定値を減少させることができる。
【0126】
一実施形態においては、好ましくは、収縮期血圧、拡張期血圧、LDL-コレステロール(すなわち、総コレステロール-HDLコレステロールおよび-血清トリグリセリド)、または総コレステロールのうちの1つ以上が、対照被験体と比較して、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を用いて治療した被験体において低下する。
【0127】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における収縮期血圧を低下させることができ、好適には、収縮期血圧を160 mmHg未満、好ましくは140 mmHg未満に低下させることができる。
【0128】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における収縮期血圧を、約1〜20 mmHg、好適には、約2〜10、好適には、約4〜10 mmHg、好適には、約4〜6 mmHg低下させることができる。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における収縮期血圧を、少なくとも約3 mmHg、好適には、少なくとも約4 mmHg、好適には、少なくとも約5 mmHg、好適には、約6 mmHg、好適には、約10 mmHg低下させることができる。
【0129】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における拡張期血圧を低下させることができ、好適には、収縮期血圧を、100 mmHg未満、好ましくは、90 mmHg未満に低下させることができる。
【0130】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における拡張期血圧を、約1〜20 mmHg、好適には、約2〜10、好適には、約3〜10 mmHg、好適には、約3〜5 mmHg低下させることができる。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における拡張期血圧を、少なくとも約2 mmHg、好適には、少なくとも約3 mmHg、好適には、約4 mmHg、好適には、約5 mmHg、好適には、約6 mmHg、好適には、約10 mmHg低下させることができる。
【0131】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における総コレステロールを低下させることができ、好適には、総コレステロールを240 mg/dL(6.2 mmol/L)未満に低下させることができる。
【0132】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における総コレステロールを、約0.2〜3.0、好適には、約0.3〜10、好適には、約0.3〜0.6 mmol/L、好適には、約0.4〜0.5 mmol/L低下させることができる。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における総コレステロールを、少なくとも約0.2、例えば、少なくとも約0.3、例えば、少なくとも約0.4、例えば、少なくとも約0.5 mmol/L低下させることができる。
【0133】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体におけるLDL-コレステロールを低下させることができ、好適には、LDL-コレステロールを3.5 mmol/L未満(男性について)または3.3 mmol/L未満(女性について)に低下させることができる。
【0134】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体におけるLDL-コレステロールを、約0.1〜1.0 mmol/L、好適には、約0.2〜0.7 mmol/L、好適には、約0.2〜0.5 mmol/L、好適には、約0.3〜0.4 mmol/L低下させることができる。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体におけるLDL-コレステロールを、少なくとも約0.2 mmol/L、好適には、少なくとも約0.3 mmol/L、好適には、少なくとも約0.4 mmol/L、好適には、少なくとも約0.5 mmol/L低下させることができる。
【0135】
一実施形態においては、本発明は、1つ以上の心血管危険因子を低下させるのに使用するための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)および/または少なくとも1種のその誘導体を含む組成物に関する。
【0136】
別の実施形態においては、本発明は、心血管疾患を生じる危険性を低下させるのに使用するための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)および/または少なくとも1種のその誘導体を含む組成物に関する。
【0137】
本発明の一態様においては、本発明に従う高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の使用は、CVDの危険性の評価において用いられる個々の危険因子(LDL-コレステロールレベル、総コレステロールレベル、収縮期血圧、および/または拡張期血圧など)を調節する(通常は、低下させる)ことにより、CVDの危険性(すなわち、心血管疾患を生じる危険性)の全体的な低下を誘導する。
【0138】
さらに別の実施形態においては、本発明は、下記群:高血圧症、高コレステロール血症または高脂血症からなる群の1つ以上の治療または予防における使用のための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)および/または少なくとも1種のその誘導体を含む組成物に関する。
【0139】
高脂血症
高脂血症は、血液中の任意の脂質もしくは全ての脂質および/またはリポタンパク質のレベルが異常に上昇する症状である。
【0140】
脂質(脂溶性分子)はタンパク質莢膜中に輸送され、その莢膜、またはリポタンパク質のサイズがその密度を決定する。リポタンパク質密度およびそれが含むアポリポタンパク質の型は、その粒子の運命と代謝に対するその影響を決定する。
【0141】
脂質およびリポタンパク質の異常は、一般的な集団において一般的であり、アテローム性動脈硬化症へのその影響に起因して、心血管疾患に関する改変可能な危険因子として見なされている。
【0142】
高コレステロール血症
高コレステロール血症(文字通り、高い血中コレステロール)は、血液中の高レベルのコレステロールの存在である。それは、心血管疾患の一因となる代謝障害である。それは、用語「高脂血症」(血液中の脂質レベルの上昇)と密接に関連する。
【0143】
高血圧症/高血圧
高血圧症または高血圧は、全身の動脈の血圧が上昇した慢性の医学的症状である。それは低血圧症の反対である。それは原発性(本態性)または二次性として分類される。
【0144】
持続的高血圧症は、脳卒中、心筋梗塞、心不全および動脈瘤などの心血管疾患の危険因子の1つである。
【実施例】
【0145】
ここで、本発明を、ほんの一例として、以下の図面および実施例を参照して説明する。
【0146】
試験設計
この試験は、CVDを生じるか、またはCV事象を有する軽度から中程度の危険性を有すると考えられる50歳を超える喫煙および非喫煙の男性および女性に関する無作為化平行試験である。この軽度から中程度の危険性は、次の10年にCVDを生じる機会が10〜20%であると定義され、Framingham Risk Score [59]に基づくものである、Joint British Societies (JBS2)CVD危険性評価図[58](図2)により算出することができる。ボランティアを、3つの試験群の1つに割り当てながら性別について適合させる。1群は12週間にわたって毎週400 gの標準的なブロッコリーを摂取する;第2群は12週間にわたって毎週400 gの高グルコシノレートのブロッコリーを摂取するが、第3群は12週間にわたって毎週400 gのエンドウ豆を摂取する。ブロッコリーとエンドウ豆を、ボランティアの標準食に加えて摂取する。ボランティアの習慣的な食事を評価するために、彼らに2つの7日間の食事日記(一方は介入前のものであり、他方はその介入の終わりに対するものである)をつけるように求める。介入前後にボランティアに対していくつかの生理学的試験を実施する(基線-第0週および第12週で);血液サンプルを取得して、彼らの脂質プロフィールならびにいくつかのCVD危険性指示因子を決定する。試験の概略を図1に示す。
【0147】
試験集団は、次の10年にわたってCVDを生じるか、またはCV事象(以下の試験対象患者基準に定義される)を有する軽度から中程度の危険性を有する50歳以上の年齢の喫煙および非喫煙の男性および女性の3群(ブロッコリー群についてはn=22;対照エンドウ豆群についてはn=10)からなる。同数の男性および女性、喫煙者および非喫煙者を募集する。各群のボランティアはまた、GSTM1欠失を有する数の均一な分布を有する(彼らは集団の約半分を構成し、これは共変量適合無作為化技術[60]を用いることにより達成される)。
【0148】
ボランティアを、性別、喫煙状態および遺伝子型により適合させる(最初の10人のボランティアを、3群のうちの1つに無作為に割り当てる)。食事日記を用いて、アブラナ科の野菜の高い(1週間あたり3部分を超える)または低い(1週間あたり1部分未満)習慣的摂取者を定義する。次いで、ボランティアを3つの食事介入群のうちの1つに無作為に割り当てる:
1. 標準的なブロッコリー群には、彼らの通常の食事の一部として1週間あたりさらに4部分(それぞれ100 g)の標準的なブロッコリーを摂取するように求める、
2. 「HG」ブロッコリー群には、彼らの通常の食事の一部として1週間あたりさらに4部分(それぞれ100 g)の、そのグルコシノレート含量の増強のために選択的に成長させた特殊な種類のブロッコリーを摂取するように求める、
3. エンドウ豆対照群には、彼らの通常の食事の一部として1週間あたりさらに4部分(それぞれ100 g)のBirds Eye(登録商標)エンドウ豆を摂取するように求める。
【0149】
ボランティアに、標準的なブロッコリー、HGブロッコリーまたはエンドウ豆を食べることにより、合計12週間にわたってその習慣的な食事を改変するように求める。これにより、本発明者らは、CVDの危険性の生化学的マーカー、特に、総コレステロール濃度、LDL-コレステロールおよび血圧の変化を検出することができる。ボランティアは、どの日に野菜を食べるか選択することができるが、野菜を食べた時には記録をつけるように求める。
【0150】
心血管危険因子
募集したボランティアは、次の10年にCVDを生じるか、またはCV事象を有する軽度から中程度の危険性を有していた[61-63]。以下の一覧は、心血管危険因子であると一般的に考えられるもの、すなわち、単独で、または集合的に、CVDを生じるか、またはCV事象を有する危険に人を置く因子を定義するものである。以下のパラメーターを用いて、試験に対するボランティアの適合性を評価する。それらは、彼らから得られる生物学的値および生理学的値のセットから、CVDを生じる人の危険性を算出するアルゴリズムである、心臓危険性アセサーにおける全体パラメーターを形成する[58]。心血管危険性アセサーは、http://www.patient.co.uk/showdoc/4000133/に見出すことができ、Heart (British Cardiac Society, British Hypertension Society, Diabetes UK, HEART UK, Primary Care Cardiovascular Society, The Stroke Associationにより準備された“JBS2: Joint British Societies’ Guidelines on Prevention of Cardiovascular Disease in Clinical Practice” (Heart 2005, Vol 91: v1-v52; doi 10.1136/hrt.2005.079988 (特別版)を参照されたい)の特別版にも教示されている。
【0151】
ボランティアは、彼らの健康を傷つけるプロジェクトに彼らを参加させることなく、または彼らに薬を飲ませることなく、この軽度から中程度の群内にある。一度、全てのスクリーニングの結果が得られたら、カルキュレーターを用いる。出力計算(統計の節を参照されたい)は、LDL-コレステロール(すなわち、総コレステロールから高密度リポタンパク質-コレステロール(HDL-コレステロール)および血清トリグリセリド(TG)を引いたもの)などの総コレステロール濃度ならびに/または血圧の値に基づく。英国の平均は5.7 mmol/Lであるが[65]、4 mmol/L以下の低さの値を有する人を治療するJBS2提言[58]により設定された標準として少なくとも5 mmol/L以上のコレステロール値を有するボランティアを募集する。食事の変化が5.7 mmol/L未満の値においては認められないであろうと示唆する証拠はない。ブロッコリーの芽の摂取を見る試験においては、参加者の基準コレステロール値は男性および女性について、それぞれ4.5 mmol/Lおよび4.6 mmol/Lであり、総コレステロールの低下が依然として認められる[32]。
【0152】
British Hypertensive Society (BHS)によれば、上記の収縮期血圧および拡張期血圧は、軽度の高血圧症であると分類される[66]。募集された年齢群(50歳以上)を試験する過去の試験から得られたデータは、これより高い範囲の血圧を有するボランティアを募集するのは困難であり、従って、本発明者らの募集のための値は、BHSにより定義される最適血圧、120/80 mmHg以上に低下することを示している。
【0153】
喫煙状態は、CVDの危険性と関連する重要な問題であり、従って、ボランティアの状態はタバコへの生涯の曝露を反映するものである。例えば、8年間にわたって1日5本のタバコを喫煙してきたボランティアは、おそらく、3年前まで20年間にわたって1日40本のタバコを喫煙していた誰かよりもタバコへの曝露は低いであろう。試験対象患者基準および除外基準を適宜設定した。
【0154】
心臓危険性アセサーカルキュレーター
図2aおよび2bは、それぞれ、非糖尿病の男性および女性に関するJBS2 CVD危険予測図を示す。その収縮期BPおよびTC:図表の淡い下側の部分により指定された範囲内にあるHDLの値と一致する、次の10年にわたってCVDを生じる10〜20%の危険性にあるボランティアを募集することが本発明者らの目的である。一般的に20%を超える範囲にある人々は通常、そのGPにより全体のCVの危険性を低下させるために、生活様式および食事の変化よりも抜本的ないくつかの形態の療法、降圧剤、脂質低下、グルコース低下および他の心血管保護療法が推奨されるであろう。
【0155】
試験対象患者基準
・50歳以上の男性および女性を試験に募集した:10〜20%のスコアがこの試験への参加について許容可能であろう;
・総コレステロールが5.0 mmol/L以上である;
・血圧測定値が、収縮期:120 mmHg以上;拡張期:80 mmHg以上である;
・BMIが20以上である;
・喫煙者および非喫煙者。
【0156】
除外基準
・糖尿病の診断;
・空腹時血糖が6 mmol/Lを超える;
・血圧が90/50または95/55未満である、症候性の場合、160/100を超える;
・慢性腎疾患;
・スタチン、胆汁酸抑制剤、コレステロール吸収阻害剤およびニコチン酸などの脂質低下療法を行っている人;
・脳卒中、心筋梗塞または一過性脳虚血発作などの心血管事象を患った人;
・跛行などの末梢血管疾患;
・魚油サプリメントの摂取(ボランティアが試験の開始前の4週間にその使用を中止する意思を示している場合を除く);
・食事介入および/または生物学的液体/材料のサンプリングを含む別の研究プロジェクトへの同時参加;
・試験チームの任意の一員と関係するか、または一緒に生活している人;
・最近4ヶ月以内に血液サンプリングを含む別の研究プロジェクトへの参加;双方の試験からの血液が470mLを超えるべきではない;
・BMIが20未満である;
・BMIが40を超える;
・空腹時総コレステロールが8.0 mmol/Lを超える;
・症状または試験介入/手順が禁忌である場合を除き、胃腸疾患を有する(裂孔ヘルニアを除く);
・単一期間に8日以上の休日にあるか、またはCRTUの臨床予約の2週間以内にある;
・頸部および咽喉部の損傷および手術を現在患っているか、または患っていた。
【0157】
情報交換(1)-人類栄養部門(HNU)-ボランティアの1回目の訪問
試験の詳細を受け取った後、全てのボランティアは、彼らが試験に参加することを望むかどうかを考えるために最小で72時間(3日間)を与えられる。この考える期間の後に参加することを望む人を、少なくとも8時間の一晩の断食後、適格性スクリーニングのためにHNUに参加するように招待する。ボランティアに、彼らがこの断食期間に必要とするだけ多くの水を飲むべきであるとアドバイスする。ボランティアに、1回目の情報交換時に提供される容器に、朝の1回目の尿から中間尿サンプルを入れるように思い出させる。同意書に署名してもらった後まで中間尿を試験しない。ボランティアは、尿サンプルを回収して2時間以内に到着する必要があるが、これは尿の尿検査の妥当性のために必要な仕様だからである。また、ボランティアに、処方された薬剤、生薬または栄養補助食品の詳細(すなわち、薬剤の名称、摂取した用量など)を持ってくるように思い出させる。
【0158】
適格性スクリーニング-HNU-ボランティアの2回目の訪問
HNUの看護師は、健康に関するアンケートを完成させ、血圧、脈拍、身長、体重および胴囲、計算された体格指数(BMI)を測定および記録し、尿検査を行い(Combur 9 Test(登録商標)、Roche Diagnostics Ltd)、完全な血球計算、完全な脂質プロフィール、グルコース、C反応性タンパク質、尿素および電解質、アルブミンのために19.5 mLの血液を採取する。次いで、5 mL容量の血液を遺伝子型決定(GSTM1、GSTT1およびGSTP1)のために用いる。BMIが20未満であるか、または40を超える場合、ボランティアを試験から除外する。
【0159】
ボランティアの無作為化
ボランティアを、最小化方法[60]としても知られる、共変量適合法に無作為化する。この方法の主な目的は、比較的少数のボランティアについて試験を実行する場合に元気である治療群と、この試験の場合と同様に、共変量(年齢、性別、喫煙状態など)に相当するか、またはそれを番号付けする治療群との間の差異を最小化することである[67]。少数のボランティアをその治療目的に無作為に割り当てた後、それぞれの新しいボランティアを、以前のボランティアの割り当てを考慮に入れて連続的に群に割り当てた後、この方法を用いることができる[60]。
【0160】
試験の結果は、合計24人のボランティアに関するものである;10人はHGブロッコリー群、8人は標準的なブロッコリー群および7人はエンドウ豆群である。
【0161】
どのブロッコリーを彼らが摂取するかに関して、ボランティアは知らされない。得られたデータを、第19節の「統計」で取り扱われる対応のあるT検定および/または一元配置分散分析により分析する。
【0162】
情報交換(2)-HNU-ボランティアの3回目の訪問
一度、試験に採用されたら、ボランティアは2番目のコード番号を割り当てられる。
【0163】
臨床予約1および2-臨床研究および臨床試験部門(UEAのCRTU)-ボランティアの4回目および5回目の訪問
全ての測定およびサンプリングを、看護師が実施する。ボランティアは少なくとも8時間にわたって断食し、その臨床予約の24時間前から全てのカフェイン入りの品目を控える。喫煙するボランティアは、全ての測定を行う約1時間前からタバコを吸うのを控える。ボランティアをCRTUの静かな試験用寝室に連れて行き、そこで介入前(基準、第0週)セットの生理的測定を行う。最初の任務は、測定を継続する前にボランティアの全体的な健康状態を評価することである。ボランティアが、試験(スクリーニングまたは1回目の臨床予約)と関連する最後の訪問以来、薬剤を摂取または変更したかどうか、および電話、手紙または電子メールにより未だ開示されていない有害事象(AE)/重篤な有害事象(SAE)を経験したかどうかを確立する。一度、全ての情報を収集したら、必要に応じて、測定値を記録しようとしている看護師は、ボランティアが継続することができるかどうかを評価する。情報を取得する看護師は、AEまたはSAEと関連する必要な文書業務を完了させる責任を負う。得られた情報の性質に応じて、ボランティアが継続することができない場合、別の期日を用意するか、またはボランティアを試験から除外する。
【0164】
測定を実行する前に、ボランティアの血圧を両腕で測定する。ボランティアの身長、体重、臀部および胴囲の測定値も取得する。これらの測定値は、脈波伝播速度の測定に必要である。第1の手順は、血液サンプリングである。18 mL容量の血液を採取して、脂質プロフィール;空腹時血糖、CRP、FBC、アルブミンを測定する。これらのサンプルに加えて、血液のアリコートを採取して、ビタミンD(vit D)分析、IL6およびhs-CRP ELISAのための血清および/または血漿を作製する。ボランティアは10分毎に自由行動下24時間血圧(BP)測定を行う。ボランティアはちょうど1時間にわたって血圧バンドを着用し、6回のBP読み取り値を取得し、これから平均BPを決定することができる。基準値後12週間、これを繰り返す(介入後〜第12週)。
【0165】
2回目の測定は、Vicorder (Skidmore Medical Ltd)を用いるPWVである。これは、2つの動脈の硬さの測定のうちの最初のものである。この手順のために、ボランティアに、静かな、温度が調節された部屋で最大30分間、横たわったままになり、リラックスするように求める。最大30分間休憩した後、休息時のボランティアのBPを測定した後、約1インチの厚さの血圧バンドの空気注入部を頸動脈と接触させて、首の周囲に置き(この小さい部分のみが測定の間に膨張し、血圧バンド全体は膨張しない)、また、一方の脚の大腿上方の周囲に置き、大腿動脈を測定する(約4インチの厚さ)。ボランティアは、測定を行う間に話したり、または眠ったりしないように指示されるが、これは読み取りの邪魔になることがあるためである。一度、血圧バンドを取り付けたら、看護師は4つの身体測定:頸動脈の血圧バンドの中点から大腿動脈の中点まで(cm);上部胸骨切痕から大腿動脈の血圧バンドの中点まで(cm);上部胸骨切痕から下部胸骨切痕まで(cm)および下部胸骨切痕から大腿動脈の血圧バンドの中点まで(cm)を実行した。
【0166】
次いで、看護師は3回のPWV読み取りを行う。
【0167】
最後の手順は、圧平眼圧測定のSphygmoCor (Atcor MedicalPty Ltd)を用いるAIxの測定である。この手順のために、ボランティアは横たわったままになるか、または座ってもよい。ボランティアの腕は安定させる必要があり、これを可能にするために、腕をテーブルまたはベッドの上で静止させ、手首を支え、わずかに曲げる(小さい巻いたタオルまたは看護師の手を用いる)。ボランティアの手首が平らであり、斜めに保持されないことが重要である。
【0168】
この測定を3回繰り返して、3セットのデータを取得する。他の測定と同様、この測定を、基準後12週間繰り返す。
【0169】
コンプライアンス
ボランティアに、彼らが毎週、野菜の部分を食べるたびに毎回記録する、12週間の介入期間に週毎の野菜記録シートを記入するように求める。これは食事介入の間のコンプライアンスを補助するであろうことが望まれる。野菜記録シートはまた、コンプライアンスをモニターする手段として、7日間の食事日記と共に用いられる。
【0170】
食事評価
対照群はその通常の食事の一部として高レベルのアブラナ科の野菜を摂取する可能性があるため、3つの群全てにおける習慣的食事を測定する。この情報は、結果がもたらし得る交絡因子を説明するのに有用である。この情報はまた、植物化学物質の摂取量または脂肪分の多い魚の消費量などの他の栄養素群のレベルを同定し、これが結果に対して効果を有するかどうかを同定するのにも有用である。ボランティアが決してその食事に順応しないことが重要であり、従って、特に、一度ボランティアが介入状態になったら、彼らにアブラナ科または任意の他の型の野菜の部分を増加させないことの重要性を強調した。ボランティアに、7日間にわたって摂取した食品、飲料およびサプリメントの摂取量を記録するように指示する。12週間の食事介入の終わりに向かって、2回目の7日間の食事日記を再度完成させて、介入に対するコンプライアンスを評価する。食物摂取日記を、「Diet Cruncher」およびUK食品組成表(McCance and Widdowson's The Composition of Foods, Sixth summary edition. Food Standards Agency (2002). Cambridge: Royal Society of Chemistry. ISBN 0-85404-428-0)を用いて分析する。日記からの食品摂取量をDiet Cruncher v1.6.1 (www.waydownsouthsoftware.com/)に入力し、基線時および介入の12週間後での3つの介入群間の栄養組成の差異について分析する。
【0171】
ブロッコリー
高グルコシノレート(HG)のブロッコリーは、グルコラファニン(スルホラファンの前駆体)と呼ばれるグルコシノレートのレベルが増強されたハイブリッド栽培品種である。グルコラファニンは、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)の別名である。
【0172】
前記試験において用いられた高グルコシノレート(HG)のブロッコリーは、6.1±0.65μmol/g乾燥重量のグルコシノレート(3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP))および16.7±0.36μmol/g乾燥重要のグルコシノレート(4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB))を有する。疑いを避けるために、グルコイベリンが3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)の別名である。
【0173】
前記試験において用いられた標準的なブロッコリー(本明細書では「アイアンマン(Ironman)」と呼ぶこともある)は、0.9±0.07μmol/g乾燥重量のグルコシノレート(3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP))および5.64±0.50μmol/g乾燥重量のグルコシノレート(4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB))を有する。
【0174】
2つの型のブロッコリーは、その番号、ブロッコリー1およびブロッコリー2により区別可能である。しかしながら、試験を実行している科学者または試験に参加しているボランティアは、どのブロッコリーがHG種であり、どれが標準種であるかを知らされていない。サンプルは100 gの部分に包装し、-18℃で冷凍保存する。次いで、ブロッコリーをボランティアの家に冷凍のまま配達する。ボランティアに、冷凍状態から、ブロッコリーについては最大5分間およびエンドウ豆については最大3分間調理するように求める。
【0175】
冷凍ブロッコリーの調理指針
ブロッコリーの部分を最大5分間、エンドウ豆については最大3分間、蒸す。産生されるイソチオシアネートの吸収の遅延をもたらすため、ボランティアがブロッコリーを過剰調理しないことが重要である。
【0176】
以前の試験により、取り込まれるITCのレベルを最大化するのに必要とされる調理レベルが示されている(未公開データ)。高グルコシノレートのブロッコリーハイブリッド中のグルコシノレートおよび等価なイソチオシアネートのレベルは、IFRでMithenら(2003)により以前に測定されている。そのレベルは、標準的な市販のブロッコリーと比較して、3〜4倍の増加に相当する。
【0177】
方法:
生理的測定
これらのものは、PWV、AIxおよび自由行動下24時間BPを含む。再現可能かつ正確な測定を確保するために、全てのボランティアを同様の条件下で測定する。ボランティアにリラックスさせ(横たわるか、または座る)、ボランティアが測定前にカフェイン、タバコ、重い食事または運動を控えていることが重要である。全てのボランティアに、臨床予約日に緩い着心地のいい服を着用するように奨励する。
【0178】
PWVは動脈の硬さを決定するのに用いられる最も古いパラメーターの1つである[68]。動脈の硬さはCVDの独立予測因子として確立されている[68, 69]。PWVを、Skidmore Medical社製Vicorder装置を用いて測定する。測定の脈波伝播速度(m/s)を、標準偏差(PWV +/- SD)と共に提示する。標準偏差は、前記速度の10%以下であるべきであり、例えば、PWVが8.0 m/sである場合、SDは0.8未満であるべきである。これが当てはまらない場合、この基準を満たす3つの値が得られるまで測定を繰り返す[70]。
【0179】
AIxは動脈の硬さを測定する単純かつ高感度の方法であり、PWV測定値を裏付けるのに用いられる。この測定を、SphygmoCor社製の装置を用いる圧平眼圧計を用いて実行する。品質指数は、パルスの平均高さおよびパルス高さ変動などのいくつかの品質制御パラメーターから誘導される100のうちの数である。その数が85を超える場合、読み取りが許容される。それが75〜85である場合、それは境界線である。それが75未満である場合、読み取りは許容されない[70]。
【0180】
自由行動下血圧測定(ABPM)は、患者が自由な生活環境にありながら、長期間にわたって血圧読み取り値を取得する非侵襲的方法であり、望まれるものが患者の血圧を真に反映するものであることを示す。ここで、多くの試験により、長期間にわたって、および最大24時間にわたって測定された血圧が、将来の心血管事象の予測において臨床に基づく血圧よりも優れていることが確認されている[71]。試験により、ABPM上での血圧読み取り値の増加が、測定しないものよりも末期臓器障害、例えば、左心室肥大とより強く相関することが示されている[72, 73]。それらはまた、ボランティアの真のBPを評価することを試みる場合に問題となり得る、白衣高血圧症を克服する有効な方法でもある。
【0181】
生化学的サンプリング
以下の血液サンプルおよび容量を、以下に示される順序で採取する(図3を参照されたい)。合計55.5 mLの全血を、介入の全過程にわたってボランティアから採取する。ボランティアが2回目の血液採取を必要とする再スクリーニングの予約のために戻ってきた場合、これを14.5 mL増やしてもよい。看護師は毎回、完全な順番の血液サンプルを採集することを目指した:
適格性スクリーニング(HNU)=19.5 mL:
サンプル1=1 x 3.5 mLの血清用血液=3.5 mL
・グルコース
サンプル2=1 x 3.5 mLの血清用=3.5 mL
・血清脂質プロフィール
サンプル3=1 x 3.5 mLの血漿用=3.5 mL
・アルブミン、U+EsおよびCRP
サンプル4=1 x 4 mLの血漿用=4 mL
・全血球計算
サンプル5=1 x 5 mLの血漿用=5 mL
・遺伝子型決定(GSTP1、GSTT1およびGSTM1)。
【0182】
スクリーニング時に、5 mLの血液サンプルから、QIAamp DNA Miniキットプロトコル(Qiagen Inc)を用いてゲノムDNAを抽出した。サンプルを二重に暗号化して、ボランティアの身元を保護した。全血から抽出されたDNAサンプルを、Cottonら(2000)の方法を用いるリアルタイムPCRを用いて増幅させて、GSTM1およびGSTT1遺伝子型の存在または非存在を決定する。GSTPiの変異型対立遺伝子の頻度も決定する。
【0183】
臨床予約1および2:2 x 18 mL
サンプル1=1 x 3.5 mLの血清用=3.5 mL
・グルコースおよびCRP
サンプル2=1 x 5 mLの血清用=5 mL
・血清脂質プロフィール
サンプル3=1 x 3.5 mLの血漿用=3.5 mL
・アルブミンおよびFBC
サンプル4=6 mLの血漿/血清用血液=6 mL
・IL6、vitD(25-ヒドロキシ-vit D)およびhs-CRP。
【0184】
ELISAによる分析のための血液サンプルをバキュテナーに分注し、室温で30〜60分間静置して、血清を作製する。チューブを2200 x gで15分間遠心分離し、それぞれの分析、IL6、vit Dおよびhs-CRPのために予め標識された6〜10個の1.5 mL凍結バイアル中に血清を分注する。これらの凍結バイアルをすぐにドライアイス中に入れ、分析まで-80℃で保存する。
【0185】
血漿をELISAに用いる場合、EDTAで被覆された血液チューブに移した全血を、室温で10分間、1210 x gで遠心分離する。血漿層を注意深く除去し、それぞれの分析、IL6、Vit Dおよびhs-CRPのために予め標識された6〜10個の1.5 mLの凍結バイアルに移す。これらの凍結バイアルを、それらが安全に輸送されるまですぐにドライアイス中に入れ、分析まで-80℃で保存する。
【0186】
QuantakineおよびIDSからの標準的なELISAを、IL6、ビタミンDおよびhs-CRPの分析のために用いる:
・IL6 - Quantikine D6050;
・hs-CRP Quantikine ELISA Kit-DCRP00。
【0187】
インターロイキン6(IL6)およびC反応性タンパク質(CRP)は両方とも、全身性炎症の感受性生理的マーカーである。IL6は前炎症的および抗炎症的方法で作用し得る多機能シグナリング分子である。それは外傷および/または組織損傷に応答して様々な細胞により放出され、炎症をもたらす[74]。CRPは、炎症の結果として上昇したレベルでも認められる急性期タンパク質である。実際、肝細胞により肝臓中で産生されるCRPは、IL6のレベルにより調節される[75]。炎症状態の持続性は、多数の年齢関連慢性疾患の原因であると提言されており[76]、炎症ならびに実際に上昇したレベルのIL6およびCRPは、CVDにおいて主要な役割を果たすことを示唆する多くの証拠が存在する[77]。いくつかの大規模横断研究により、血漿中のCRPレベルの上昇は、CVDの最も強い独立予測因子の1つであると結論付けられている[78]。高感度CRP(hs-CRP)の測定は、低レベルのCRPの測定においてより高い正確性を与える。刺激後、CRPのレベルは50μg/Lの循環値から極端な事例では500 mg/Lまで10,000倍増加することがある[79]。
【0188】
炎症はCVDおよびCVDの危険性と関連するため、これらの重要な炎症マーカーのレベルをボランティアにおいて測定して、アブラナ科の野菜の摂取の結果として、炎症プロセスにより影響されるIL6、hs-CRP、総コレステロールおよび生理的測定値の間の関係を確認する。
【0189】
ビタミンD(Vit D)(25-ヒドロキシ-vit D)-IDS AC-57F-1;
Vit Dは伝統的に骨の健康と関連している;しかしながら、それは心血管系の最適な機能にとってますます重要になっていることが現在では知られている[80]。新たなデータは、vit D状態が、高血圧症、糖尿病、代謝症候群、左心室肥大、鬱血性心不全および慢性血管肥大などの症状の可能性を増加させる欠陥を伴うCVDの発生において重要な役割を果たすことを示唆している[80〜82]。Vit Dは2つの形態、vit D2(エルゴカルシフェロール)およびvit D3(コレカルシフェロール)で存在し、前者は植物において認められ、エルゴステロールの紫外線B(UVB)照射の産物であり、後者はヒト表皮中の7-デヒドロコレステロールの照射に由来する[81]。vit D2はサプリメントとして、または強化された食品中で摂取することができるが、vit D3はヒトにより産生されるか、または脂肪分の多い魚の形態で摂取される[81]。肝臓中で、vit Dは、vit Dの取込みおよび内部産生を反映し、従って、総vit D状態を決定するために評価する必要がある化合物である25-ヒドロキシ-vit D(25(OH) vit D)に変換される。NHANES III(第3回National Health and Nutrition Examination Survey[83])国家コホート登録簿(national cohort registry)上の15,088人に関する横断研究において、25(OH) vit Dと、高血圧症、糖尿病、高トリグリセリド血症および肥満との間の逆相関が存在することが見出された[84]。
【0190】
この知見に同意する多くの他の研究が存在し、この研究は心血管危険性マーカーを試験しているため、本発明者らのコホートにおけるvit D状態を本発明者ら自身の関連を確立するために評価する。ボランティアがvit D欠損群(37.4 nmol/L未満)または豊富群(37.4 nmol/Lを超える)にあるかどうかに関して[85]、ならびにこれが本発明者らが得ている総コレステロール濃度および生理的測定値の変化とどのように関係するかに関して、ボランティアを評価する。
【0191】
結果
総コレステロール、LDL-コレステロール、収縮期血圧(BP);拡張期血圧(BP)および心血管疾患(CVD)の危険性に対するグルコシノレートの効果について、結果を提供する。
【0192】
上記で考察されたCVDの危険性を、血圧、脂質プロフィールおよび上記で詳述されたいくつかの人口統計因子に関するデータを用いて算出する。この危険性アセサーは、次の10年以内のCVDの危険性(%)を見積もるために医師により広く用いられている。
【0193】
上記の表Aは、エンドウ豆、標準的なブロッコリー「アイアンマン」および高グルコシノレートのブロッコリー(HG1)処理を用いた場合の、収縮期血圧(BP)、拡張期血圧(BP)、総コレステロール、LDL-コレステロール mmol/LおよびCVDの危険性(次の10年における事象%)に関する結果を示す。p値は対応のあるT検定に由来するものである。P<0.05は有意であり、P>0.05は有意でない(ns)。
【0194】
明確に認められるように、高グルコシノレートのブロッコリー(標準的なブロッコリーおよび/またはエンドウ豆と比較して)は、試験した被験者における収縮期血圧、拡張期血圧(BP)、総コレステロール、LDLコレステロールおよびCVDの危険性の有意な低下をもたらす。
【0195】
注目すべきことに、エンドウ豆(陰性対照)および標準的なブロッコリーは、収縮期血圧、拡張期血圧(BP)、総コレステロール、LDL-コレステロールまたは心血管疾患の危険性の有意な変化をもたらさない。
【0196】
高グルコシノレートのブロッコリーはまた、総コレステロールの有意な低下をもたらすが、エンドウ豆および標準的なブロッコリーは総コレステロールレベルの有意な変化をもたらさなかった。
【0197】
実施例2 前立腺癌を有する患者の細胞シグナリング経路における高グルコシノレートブロッコリーの摂取の効果
被験者および試験設計
前立腺癌の前侵襲性in situ段階である高悪性度前立腺上皮内癌(HGPIN)と以前に診断された57〜70歳の22人の男性ボランティア(表1)を、Norfolk and Norwich University Hospital NHS Trustで顧問泌尿器科医により募集した。前立腺病理学に特別な興味を有する2人の顧問組織病理学者により、組織学的診断を行った。試験に関する倫理的認可を、Norfolk Research Ethics Committeeから取得した。全ての参加者はインフォームドコンセントの文書を得た。ボランティアが化学予防療法を受けている、テストステロン補充療法もしくは5αリダクターゼ阻害剤を受けている、治療を要する活動性感染症を有する、18.5未満もしくは35を超える体格指数(BMI)を有する、または糖尿病である場合、彼らを除外した。通常の食事に加えて、(i)1週間あたり400 gのブロッコリーを摂取する、または(ii)1週間あたり400 gのエンドウ豆を摂取する、2つの食事介入群からなる12ヶ月間の平行食事介入試験に被験者を割り振った。総PSA免疫アッセイを用いて、Norfolk and Norwich University Hospitalでの介入試験の前ならびに6ヶ月後および12ヶ月後に、血漿前立腺特異的抗原(PSA)レベルを定量した。ボランティアは、急性効果を避けるためにそれぞれの生検予約の前の48時間はグルコシノレートを含むことが知られる食品を避けた。
【0198】
介入試験の直前、ならびに6ヶ月および12ヶ月後にボランティアから得られた前立腺の経直腸超音波走査(TRUS)誘導針生検に加えて、18個の良性および14個の悪性の経尿道的前立腺切除(TURP)組織も、Norfolk & Norwich University Hospital Partners in Cancer Research Human Tissue Bankから得た。
【0199】
食事介入
野菜を月ベースでボランティアに配達した。野菜を蒸し器と共に提供し、ボランティアに、野菜を調理する方法についてInstitute of Food Researchで食事調理人によりデモンストレーションを与えた。ブロッコリーの部分を4〜5分間蒸し、エンドウ豆の部分を2〜3分間蒸した。冷凍エンドウ豆(Birds Eye Garden Peas, http://www.birdseye.co.uk/)を、地元の小売店から購入した。ボランティアに提供される冷凍ブロッコリー中のグルコシノレート含量の一貫性を確保するために、介入試験に必要とされるブロッコリーを、Terrington, near King's Lynn, UK (http://www.adas.co.uk/)のADAS実験農場で1バッチで成長させ、Christian Salvesen (Bourne, Lincolnshire, UK, http://www.salvesen.co.uk/)により加工した。それを90.1℃で74秒間漂白し、-30℃で冷凍し、100 g部分に包装した後、ボランティアが蒸すまで-18℃で保存した。ブロッコリーは高グルコシノレート種[19, 20]であった。4-メチルスルフィニルブチルおよび3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(それぞれ、SFおよびIBの前駆体)のレベル、平均(SD)は、地元の小売店から購入したブロッコリーにおける4.4(0.12)および0.6(0.01)μmolsg-1乾燥重量と比較して、それぞれ、10.6(0.38)および3.6(0.14)μmolesg-1乾燥重量であった。グルコシノレートのレベルは標準的なブロッコリーよりも高かったが、冷凍前の漂白は植物ミロシナーゼを変性させ、かくして、高グルコシノレートのブロッコリーの食事に由来するSFおよびIBのレベルは、機能的ミロシナーゼを含む新鮮なブロッコリーから得られるレベルと同様であるか、またはそれより低いであろう。インドールグルコシノレートのレベルは、高グルコシノレートのブロッコリーと標準的なブロッコリーの両方において類似していた。
【0200】
コンプライアンスのモニタリングと食事評価
ボランティアは、いつ野菜の部分を食べたかを同定するために、12ヶ月の介入期間に毎週のチェックシートを完成させた。2週間毎に、ボランティアに電話で接触し、食事に対する順守に関して質問した。ボランティアは、7日間評価された食品摂取量の食事日記を、部分の大きさを示す家庭用測定器を用いて、基準時および6ヶ月後に完成させた。日記に由来する食品摂取量を、Diet Cruncher v1.6.1 (www.waydownsouthsoftware.com/)に入力し、基準時および介入の6ヶ月後での2つの介入群間の栄養組成の差異について分析した。
【0201】
遺伝子型決定
製造業者の説明書(http://www.qiagen.co.uk/)に従って、RNase処理しながらQiagen QIAamp DNAミニキットを用いて、全血または組織サンプルからゲノムDNAを抽出した。遺伝子特異的プライマーおよびプローブを用いるCovaultおよびその同僚に基づくリアルタイムPCR手順を用いて、GSTM1 (NM_000561)遺伝子型を決定し、2コピーの遺伝子対照である乳癌1のIVS10中の領域、早期開始(BRCA1, NM_007294)遺伝子と比較して定量した[21]。プライマーおよびプローブを、Applied Biosystems Primer Express (http://www.appliedbiosystems.com/)を用いて設計し、図14中にPCR条件と共に記載する。データをApplied Biosystems Absolute Quantificationソフトウェアを用いて分析した。
【0202】
RNA抽出およびマクロアレイハイブリダイゼーション
製造業者の説明書(http://www.qiagen.co.uk/)に従ってQIAGEN(登録商標)RNeasyミニキットを用いて、TURP組織バンクサンプルおよびボランティアから得たTRUS誘導針生検から総RNAを単離した。得られたRNAの量を、分光光度計(Beckman)を用いて測定した。RNAの品質を、Agilent 2100 Bioanalyzer (http://www.agilent.co.uk/)を用いて決定した。基準時、ならびに介入の6ヶ月および12ヶ月後の、良性および悪性前立腺のTURP生検ならびに両被験者群(エンドウ豆およびブロッコリー)から得たTRUS誘導生検に由来するRNAサンプルを、Nottingham Arabidopsis Stock Centre (NASC, http://arabidopsis.info/)によりAffymetrix Human U133 Plus 2.0マイクロアレイ(http://www.affymetrix.com/)上にハイブリダイズさせた。二本鎖cDNA合成およびビオチン標識されたcRNAの生成を、製造業者のプロトコル(Affymetrix, http://www.affymetrix.com/)に従って実施した。最終的なcRNAを品質についてチェックした後、断片化し、アレイ上にハイブリダイズさせた。
【0203】
22人のボランティアのうちの1人が、試験の基準時生検時に前立腺癌であると診断され、試験から除外した。基準時生検に由来する11個のサンプル、6ヶ月時生検に由来する2個のサンプルおよび12ヶ月時生検に由来する3個のサンプルは、良好な品質のRNAおよび/または十分なcRNAを産生しなかったため、ハイブリダイズさせなかった。さらに、1人のボランティアは、6ヶ月の生検時に前立腺癌を示し、その後のサンプルを試験から除外した。各アレイに関する蛍光強度を、GeneChip(登録商標)Scanner 3000 7Gを用いて捕捉した。Affymetrix GeneChip(登録商標)Operating Software (GCOS)を用いて、それぞれのU133 Plus 2.0アレイを定量した。この紙におけるマイクロアレイデータは、マイクロアレイ実験(MIAME)基準に関する最少の情報に準拠しており、Array Express (http://www.ebi.ac.uk/microarray-as/aer; 受託番号E-MEXP-1243)に預託されている。
【0204】
マイクロアレイデータ分析
生データファイル(CEL)を、正規化、発現値の生成および統計分析のためにDNA-Chip Analyzerソフトウェア(dChip, http://biosun1.harvard.edu/complab/dchip/、構築日2006年9月)中にロードした。不変集合正規化法を用いる正規化後、PMのみのモデルを用いてプローブ発現レベルを算出した。群間で変化している遺伝子を同定するために、dChip中のWelch改変2標本t検定により算出された異なる両側P値閾値を適用した。必要に応じて、対応のある、または対応のないt検定を実施した。複数の試験について補正するために、dChip中の順列により偽発見率(FDR)を見積もり、100個の順列の中央値をそれぞれの比較のために報告した(選択されたサンプル上の1000個の順列はFDR計算値に対してほとんど効果がなかった)。3697個のプローブの遺伝子一覧上の距離メトリックとして1ランク補正を用いて、良性および悪性サンプルに対して教師なしクラスタリングを行った。これらのプローブは2つの基準:第1に、変動係数(CV)が0.5〜1000であること、および第2に、プレゼンスコールの割合が全てのTURP良性および悪性サンプルにわたって20%未満であること、を満たした。
【0205】
サンプルの分類のために、19個のレーザーキャプチャーマイクロダイセクション法(LCD)による上皮細胞マイクロアレイ(GEOアクセッション番号: GDS1439, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)ならびに32個のTURP良性および悪性マイクロアレイを一緒に正規化し、dChip中に上記されたようにモデルに基づく発現を算出した。LCDサンプルは、6個の良性前立腺組織サンプル、5個の臨床的に局在化された一次前立腺癌サンプル、プール後の5個の一次癌サンプルの2個の反復物、4個の転移性前立腺癌サンプルおよびプール後の4個の転移性前立腺癌サンプルの2個の反復物から誘導されたものであった[22]。次いで、LCD上皮細胞サンプルの分類を、訓練サンプルとしてTURP良性および悪性サンプルに基づく線形判別分析(LDA)を用いて実施した。TURP良性および悪性サンプルの間のシグナル強度の100単位より高い差異を有し、Welchの改変2標本t検定によりP≦0.01で有意に異なる442個のプローブを用いて、LDAを実施した。示差的に発現される遺伝子の一覧中に最も過剰に提示される経路を同定するために、MAPPFinderおよびGenMAPP v2.1を用いる機能的分析を実施した(http://www.genmapp.org/)。
【0206】
ペプチドとイソチオシアネートとのインキュベーション
SFまたはIBと、ウシインスリン(P01308, Sigma-Aldrich)、組換えヒト表皮増殖因子(EGF, P01133, R&D Systems, http://rndsystems.com/)および組換えヒトトランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1, P01137, R&D Systems)とのインキュベーションを、37℃で0.5〜24時間、リン酸ナトリウム緩衝生理食塩水溶液(pH 7.4)またはヒト血漿中で実施した。血漿を限外濾過により予備処理して、高分子量タンパク質を除去した(Microcon Ultracel YM-30フィルター、MWCO 30,000)。LC-MS/MSにより直接的に、またはゲル電気泳動バンドのトリプシン消化物のLC-MS/MS分析により、サンプルを分析した。
【0207】
イソチオシアネートと共にインキュベートされたペプチドの直接LC-MS/MS分析
用いたLC系は、Shimadzuシリーズ10AD VP (Shimadzu, http://www.shimadzu.com/)であった。カラムはACE 300 C18, 150 x 2.1 mm(5μm粒径)であり、40℃で用いた。移動相Aは水中の0.1%ギ酸であり、移動相Bはアセトニトリル中の0.1%ギ酸であり、流速は0.25 ml/分であった。0〜5分間にわたっては25%のB〜35%のBの線状勾配、次いで、6分間にわたって35%のB〜99%のBのさらなる勾配、次いで、4分間、99%のBを用いた。カラムを合計3分間、再平衡化させた。注入容量は5〜20μlであった。全てのMS実験を、陽イオンエレクトロスプレーモードで用いられるTurboIon源を備えた、Analystバージョン1.4.1ソフトウェア(Applied Biosystems, http://www.appliedbiosystems.com/)を用いる4000 QTRAPハイブリッド三連四重極線状イオン捕捉質量分析計上で行った。プローブキャピラリー電圧を4200 Vに最適化し、脱溶媒和温度を400℃に設定し、カーテンガス、霧化ガスおよびターボスプレーガスを、それぞれ、40、10および20に設定した(任意の値)。デクラスタリングポテンシャルを50〜120 Vに傾斜させた。衝突誘起解離(CID)には窒素を用いた。全てのMSおよびMS/MS実験について、ピーク幅を1.0 Th(半分の高さで測定)でQ1およびQ3に設定した。1〜2秒の走査時間で、範囲m/z 800〜2000に渡ってスペクトルを得た。LITモードでQ0トラッピングを運転することにより活性化し、ダイナミックフィルタイムを使用し、増強プロダクトイオン(EPI)走査のために走査速度を250 Th/sに設定し、励起時間は150 msecであり、励起エネルギーは25 Vであり、エントリーバリアは4 Vであった。EPIスペクトルの獲得のために、SFと、インスリン(m/z 1183.9 MH55+)、EGF(m/z 1088.8, MH56+)およびTGFβ(m/z 1981.9, MH513+)とのコンジュゲートのために目的の前駆体イオンを選択し、衝突エネルギーを30〜120 Vに傾斜させ、1.9秒の走査時間で範囲m/z 100〜1500にわたってスペクトルを得た。MS3の設定は、衝突エネルギーが50〜80 Vであり、デクラスタリングポテンシャルが50〜80 Vである以外はMS2と同一であった。
【0208】
電気泳動およびトリプシン消化後のSFと共にインキュベートされたTGFβ1のLC-MS/MS分析
担体としてウシ血清アルブミンを補給したTGFβ1タンパク質の1μgアリコートを、37℃で30分間、DMSOまたは1.2μモルのSFと共にインキュベートし、変性4〜12% Bis-Tris NuPAGEゲル(Invitrogen, http://www.invitrogen.com)上で泳動した。バンドを切り出し、ジチオトレイトール(DTT)で還元し、ヨードアセトアミド(Sigma-Aldrich, http://www.sigmaaldrich.com/)でアルキル化した後、トリプシンで消化した(Promega, http://www.promega.com/)。抽出されたペプチドを凍結乾燥し、質量分析による分析のために1%アセトニトリル、0.1%ギ酸中に再溶解した。LTQ質量分析装置(Thermo Electron Corporation, http://www.thermo.com/)およびナノフローHPLC系(Surveyor, Thermo Electron)を用いて、LC-MS/MS分析を実施した。ペプチドを、セルフパックC18 8-cm分析カラム(BioBasic樹脂Thermo Electron; Picotip 75 μm id, 15 μm tip, New Objective, http://www.newobjective.com/)に接続されたプレカラム(C18 pepmap100, LC Packings, http://www.lcpackings.com/)に加えた。約250 nL/分の流速で40分間にわたって0.1%ギ酸中の2〜30%のアセトニトリルの勾配により、ペプチドを溶出させた。MS/MSのデータ依存的獲得は、各サイクル:質量電荷比(m/z) 300〜2000、最小シグナル1000、衝突エネルギー25、5リピートヒット、300秒の排除中、5種の最も豊富なイオンの選択からなっていた。全ての事例において、質量分析装置を、ナノスプレー源を備えた陽イオンモード、200℃のキャピラリー温度で運転し、シースガスを用いなかった;電源電圧およびフォーカス電圧をアンギオテンシンの伝達のために最適化した。BioWorks 3.3 (Thermo Electron Corporation)を用いて、生データを処理した。ホモ・サピエンス(68982配列)に対する分類法により限られているSptrEMBL (4719335配列)に対して、Mascot (Matrix Science, http://www.matrixscience.com/)を用いて検索を実施し、酸化メチオニンおよびカルバミドメチルシステイン残基を、推定SFである可変的改変として許容した。親イオンの誤差許容レベルは±1.2 Daであり、断片質量許容レベルは±0.6 Daであり、1つの切断ミスを許容した。TGFβに対するMascotにおける誤差許容検索を日常的に実施し、抽出イオンクロマトグラムおよびスペクトルの手動検査を、Qual BrowserおよびBioWorks 3.3 (Thermo Electron Corporation)を用いて調製した。
【0209】
ルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイ
Smad活性化に応答する、CAGA12-lucプラスミドを安定にトランスフェクトされたNIH 3T3細胞[23]を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、1% L-グルタミンおよび0.4 mg/mlジェネティシンを補給したDMEM中で培養した。6穴組織培養皿中で24時間、完全増殖培地中に細胞を播種した後、培地を、3つの処理:(1)PBSバッファー中のTGFβ1(2 ng/mlの最終濃度を達成する)、(2)PBSバッファー中のTGFβ1 + 10 mM DTT、(3)PBSバッファー中のTGFβ1 + 2μM SFのうちの1つを含む低血清培地(0.5%FCS)に置換した。SFの薬物動態をシミュレーションするために、全ての試験サンプルを透析前に37℃で30分間インキュベートし、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassettes MWCO 3.5K (PIERCE, http://www.piercenet.com/)を用いてPBSバッファー中で4時間実施した。透析によりSF濃度を34 nMに低下させた。追加の対照として、細胞を、TGFβ1を含まないPBSおよびSF(34 nM)を含むPBSで処理した。Perkin Elmer Wallac Victor 2 1420多標識カウンタープレートリーダー(http://las.perkinelmer.com/)中、Luciferase Reporter Gene assay (Roche Applied Science, http://www.roche.com/)を用いて16時間処理した後、ルシフェラーゼ活性を決定した。簡単に述べると、細胞をPBSで2回洗浄し、細胞溶解バッファー中で溶解させ、アッセイに供給した。ルシフェラーゼアッセイ基質を添加した後すぐに、化学発光を定量した。BCAアッセイ(Sigma-Aldrich, http://www.sigmaaldrich.com/)を用いて定量されたタンパク質濃度に対して、ルシフェラーゼの値を正規化した。実験を4回繰り返し、実験あたり各処理の3回の反復物を得た。統計ソフトウェアR[24]を用いる一元配置分散分析を用いて、統計分析を実施した。
【0210】
結果
良性および悪性TURP組織サンプルの遺伝子発現の比較
本発明者らは、異種組織から抽出されたRNAを用いて、外科的に切除された良性および悪性前立腺TURP組織における全体的な遺伝子発現プロフィールを比較した(本発明者らが介入試験において使用することを意図したものなど)。教師なしクラスタリングは、良性および悪性サンプルを一義的に識別した。2群間で有意に異なる遺伝子の経路分析を、GenMappソフトウェアを用いて行い、発癌の間に撹乱されると報告されることが多い経路を同定した(表2aおよび3a)。データ分析の本発明者らの方法をさらに立証するために、および異種組織全体から得たマイクロアレイデータがLCD上皮細胞から生成されたデータと比較可能であるかどうかを決定するために、本発明者らは、良性、限局性および転移性前立腺癌に由来するLCD上皮細胞(GEO受託番号:GDS1439)の独立データセットを分析した。本発明者らは、線形判別分析(LDA)のための訓練セットとして本発明者らの良性および悪性サンプルならびに試験セットとして独立データを使用し、LDAモデルが良性、限局性および転移性LCD上皮細胞サンプルを正確に識別することを見出した(図5)。かくして、この予備試験は、アレイデータの統計分析に対する本発明者らの手法のための検証を提供する。
【0211】
血漿PSAレベルの変動
介入前のPSAレベルは、HGPINと診断された同じ年齢範囲の男性について以前に報告されたもの[25]と同様の範囲にあった。介入試験のいずれかの治療群内で、6ヶ月または12ヶ月後に、GSTM1遺伝子型との有意な関連はなく、PSAレベルの一貫した変化もなかった(表1)。
【0212】
GSTM1陽性個体とGSTM1ヌル個体との間の全体的な遺伝子発現の差異
本発明者らは最初に、切除されたTURP組織サンプルを遺伝子型決定し、良性および悪性サンプル内のGSTM1陽性遺伝子型とGSTM1ヌル遺伝子型との遺伝子発現プロフィールを比較した。本発明者らは、遺伝子型間にほとんど差異はなく、同様に高い中央偽発見率を有することを見出した(図6a、表3b)。同様に、本発明者らは、HGPINと以前に診断されたGSTM1陽性男性およびGSTM1ヌル男性に由来する前立腺の針生検から得られた遺伝子発現プロフィールを比較し、ほとんど差異がないことを見出した。
【0213】
本発明者らは次いで、食事介入試験に募集された21人の男性の針生検組織中のGSTM1遺伝子型間の遺伝子発現プロフィールを比較した。この試験内の男性のうち8人には1週間あたり400 gの蒸した冷凍エンドウ豆を摂取するように求め、他の13人には1週間あたり400 gの蒸した冷凍ブロッコリーを摂取するが、さもなければ通常の食事を摂取するように要求した。食事を、介入前および6ヶ月後に7日間の食事日記を用いて評価した。ブロッコリーとエンドウ豆の摂取は別として、食事成分において有意な差異は認められなかった(表4)。本発明者らは、6ヶ月間ブロッコリーの食事を摂取したGSTM1陽性男性とGSTM1ヌル男性との間には前立腺遺伝子発現の多くの差異を見出したが、エンドウ豆の食事を摂取したGSTM1陽性男性およびGSTM1ヌル男性との間では、たとえあったとしても、遺伝子発現の差異はわずかであることを見出した(図6a、表3b)。ブロッコリーに富む食事後のGSTM1遺伝子型間の遺伝子発現の差異の潜在的な結果を調査するために、本発明者らは、GenMappを介してこれらのデータを分析した。3つの経路、EGF受容体、脂質生成およびTGFβ受容体を、それらの遺伝子が、それらが偶然生じるよりも高い頻度で生じるものと同定した(表2b)。
【0214】
食事介入の前後での遺伝子発現の変化
本発明者らは、対応のあるt検定を用いて、介入のそれぞれの治療群内の個体から得た生検サンプル中で、0〜6ヶ月および0〜12ヶ月で発現が変化した遺伝子を同定し、経時的な発現の変化を定量した。ブロッコリー治療群内で、本発明者らはGSTM1陽性個体に対して分析を制限した。本発明者らは、6ヶ月後および12ヶ月後の両方において、エンドウ豆に富む治療群よりもブロッコリーに富む治療群内でより多くの発現の変化があることを見出した(図6b、表3c)。0〜12ヶ月で発現が変化した遺伝子に関する経路分析により、エンドウ豆に富む治療群においてはアンドロゲン受容体経路にのみ変化が同定されたが、ブロッコリーに富む治療群においては、インスリンシグナリング、TGFβおよびEGF受容体経路などのいくつかの他のシグナリング経路と共に、アンドロゲン受容体経路が同定された(図2c)。ブロッコリー治療群において0〜6ヶ月で発現が変化した遺伝子に関する分析により、TGFβ受容体経路(P=0.001に調整)、インスリンシグナリング(P=0.035に調整)およびEGF受容体シグナリング(P=0.068に調整)における変化も同定された。
【0215】
かくして、TGFβおよびEGFシグナリングの調節に対するブロッコリー摂取の効果に関する証拠が、2つの独立した分析:第1に、6ヶ月間、ブロッコリーに富む食事を摂取したGSTM1陽性およびヌル個体の遺伝子発現プロフィールの比較、ならびに、第2に、ブロッコリーに富む食事を摂取したGSTM1陽性個体から0および12ヶ月で得られた生検に由来する遺伝子発現プロフィールの対分析において得られた。これらの分析はいかなるアレイデータセットも共有しないことに留意することが重要である。
【0216】
TGFβ1、インスリンおよびEGFペプチドと、ブロッコリーのイソチオシアネートとの化学的相互作用
ブロッコリーの摂取がいくつかの細胞シグナリング経路を調節することが証明されたので、本発明者らはその説明を追求した。0.5〜24時間、37℃で、PBS pH 7.4中、イソチオシアネートSFまたはIBと共にインスリン、EGFおよびTGFβ1ペプチドをインキュベートすることにより、対応するペプチドとITCの共有結合したコンジュゲートの形成の一貫した証拠が得られた。高分子量タンパク質を枯渇させたヒト血漿中で同じインキュベーションを行うことにより、生理学的関連性についてこれをさらに調査した。LC-MS/MS分析により、SFまたはIBを前記ペプチドと共にインキュベートした場合、1個以上のさらなるLC-MSピークの出現が示された。例えば、図7では、抽出イオンクロマトグラム(m/z 1183.9、インスリン-SF MH55+に対応)は、対照インキュベーションと比較して、2つのインスリン-SFコンジュゲートの出現を示している。これらのピークのMS2分析(図8)により、インスリンの2個のN末端アミノ酸へのSFの付加Gly-SFおよびPhe-SFに対応するm/z 235およびm/z 325での2個の診断断片イオンの存在が確認された。前記インキュベーションからGly-IB (m/z 221)およびPhe-IB (m/z 311)を同定するために同様の結果が得られた(データは示さない)。EGFのN末端アスパラギン残基(m/z 309)へのSFの付加と対応するヒト血漿中でのSFとのEGFコンジュゲートの形成に関する比較可能な証拠が得られた。
【0217】
TGFβ1に対する改変のさらなる情報を提供するために、本発明者らは、相補的な手法を採用した。1μgアリコートのタンパク質を、DMSOまたは1.2μモルのSFと共に、37℃で30分間インキュベートし、SDS-PAGE電気泳動により分離した。バンドを切り出し、トリプシンで消化した後、LC-MS/MSにより分析した。TGFβ1は活性なダイマーに対応する25 kDaのバンド中でしっかりと同定された。DMSO(対照)およびSF処理されたサンプルの両方において、親イオンm/z 768.5からN末端ペプチドALDTNYCFSSTEKが同定された(図9)。前駆体イオンm/z 877.2はSF処理されたサンプル中でのみ観察された。両前駆体イオンのMS/MS分析により、両方(図10)の前駆体イオンに共通する強い一連の断片ピークが示された。これらの断片化パターンは、ペプチドALDTNYCFSSTEK(カルバミドメチルシステイン+57)については非改変yイオンシリーズおよびSFで処理されたサンプル中では217.4±0.8 Daシフトしたbイオンシリーズと一致していた。これらの結果は、SFによるTGFβ1に対するN末端改変を強く支持している。SFの付加は、上記のように、無傷のTGFβ1のLC-MS分析を用いて観察されたように177の質量付加をもたらすであろう。177とは対照的に、217の付加は、還元ジスルフィド結合をアルキル化するために反応混合物に添加された、チオウレアとヨードアセトアミドとのその後の反応に起因するものであり、カルバミミドイルスルファニルアセトアミド異性体の混合物をもたらし、それは環化およびNH3の喪失を受け、対応するイミノチアゾリジノンが得られる可能性が非常に高い。
【0218】
スルホラファンとの予備インキュベーション後のTGFβ1シグナリングの増強
イソチオシアネートにより生成されるタンパク質のチオウレア誘導体は物理化学的特性および酵素的特性を改変することが示されたため[26, 27]、本発明者らは、細胞外シグナリングタンパク質のSF改変が機能的結果を有するかどうかを評価することを追求した。本発明者らは、細胞の増殖および行動の制御を通じた組織恒常性の維持におけるその深い役割に起因してTGFβ1シグナリングに焦点を当てた[28, 29]。ルシフェラーゼ活性をSmadタンパク質の活性化の際に測定することができるCAGA12-lucプラスミドで安定にトランスフェクトされたNIH3T3細胞中でTGFβ1に誘導されるSmad媒介性転写を定量した[30]。TGFβ1への細胞の曝露は、予想通りルシフェラーゼ活性を誘導した。細胞を、生理学的に好適な濃度のSF(2μM)と共に30分間予備インキュベートした後、透析したTGFβ1に曝露して、SF血漿薬物動態を刺激した場合[14]、TGFβ1のみへの曝露と比較してSmad媒介性転写が増加した(図11)。残留SF(34 nM)への細胞の曝露は、転写の増強をもたらさなかったが、これは、SFがSmad活性化を間接的に誘導することを示唆しており、SFがリガンド自体に結合するという本発明者らの以前の観察と一致している。また、SFは受容体の細胞外ドメインと相互作用して、下流のシグナリングを変化させることができると考えられる。
【0219】
ITCとEGFとのインキュベーション
ITCとシグナリングペプチドとの相互作用の機能的結果のさらなる例を図15に示し、これはITCとEGFとのインキュベーションが過形成前立腺組織のモデルであるBPH細胞中でEGFシグナリングを抑制することができることを示している。EGFはEGF受容体に結合し、リン酸化し、下流のシグナリング経路を活性化する。提示されるデータは、ペプチド改変の原因となることが知られる条件下でのEGFと4-メチルスルフィニルブチルITC (SF)との予備インキュベーションが、EGFのみと比較してリン酸化された受容体の量を減少させることを示している。これは、抗炎症的結果と共に、EGFシグナリング経路の阻害をもたらすと期待される。
【0220】
ITCとプロシアニジンとの組合せ
本発明者らはまず、ルッコラを凍結乾燥し、PBS中にITCを抽出した(5 mlのPBS中に200 mg)。HPLCにより定量したところ、これが約100μMのスルホラファン、200μMのイベリンおよび未知量の他のITCを含有することが示された。
【0221】
この実験は、10個のサンプルの処理からなり、全て生物学的トリプリケートで行った。HUVEC細胞を、処理2〜10で10 ng/mlのTNFαを添加する前に45分間、以下の処理で処理した。6時間後、培地およびタンパク質溶解物を回収し、-20℃で保存した。次いで、培地中でIL-6 Quantikine ELISA (R & D Systems)を行い、細胞タンパク質含量についてBCA定量(Sigma)を行った。
【0222】
処理は以下の通りである(括弧内の名称は図16のグラフ中のサンプル名である):
1)対照(C)
2)対照(TNF)
3)2μg/mlのプロシアニジンGE (GE)
4)1μMのロケット抽出物(1RkE)
5)5μMのロケット抽出物(5RkE)
6)10μMのロケット抽出物(10RkE)
7)25μMのロケット抽出物(25RkE)
8)2μg/mlのプロシアニジンGE + 1μMのロケット抽出物(GE + 1RkE)
9)2μg/mlのプロシアニジンGE + 5μMのロケット抽出物(GE + 5RkE)
10)2μg/mlのプロシアニジンGE + 10μMのロケット抽出物(GE + 10RkE)。
【0223】
この実験の結果を図16および17に示す。
【0224】
高レベルの3-メチルチオプロピル(3-MTP)グルコシノレートを含む栽培品種の作製
高レベルの3-メチルチオプロピルグルコシノレートを含む植物(例えば、ブロッコリーまたは別の種類のブラシカ・オレラセア(B. oleracea))の栽培品種を作製するためには、ブラシカ・オレラセアのGSL-ELONG座のヌル対立遺伝子と、ブラシカ・オレラセアのGSL-ALK座のヌル対立遺伝子とを組合わせる必要があろう[52〜54]。好適な対立遺伝子の可能な起源は、ブラシカ・ドレパネンシス(B. drepanensis)、ブラシカ・マクロカルパ(B. macrocarpa)、ブラシカ・ルペストリス(B. rupestris)またはブラシカ・ビローサ(B. villosa)であり、それらは全て、n=9のブラシカ・オレラセア種複合体のメンバーである。これらの対立遺伝子の好適な分子マーカーを用いて、商業的農学的遺伝的背景へのこれらの対立遺伝子の遺伝子移入速度を増強することができる。
【0225】
考察
本発明者らの知る限り、これは12ヶ月の介入の前後で標的組織内の全体的な遺伝子発現プロフィールを分析し、遺伝子型により遺伝子発現プロフィールを階層化する初めての食事介入試験である。本発明者らは12ヶ月間の介入期間にわたって血漿PSAレベルの一貫した変化を観察していないが、本発明者らは遺伝子発現における広範囲の変化を定量することができた。本発明者らは、ブロッコリーの摂取が癌の危険性を低下させることができるという観察データを説明するための動物および細胞モデルから誘導された潜在的な機構を支持する証拠はほとんど発見していないが、発癌および炎症と関連するいくつかのシグナリング経路の撹乱に関するかなりの証拠を発見した(表2bおよびc)。これらの経路の撹乱の正味の効果は、細胞増殖の危険性を低下させ、細胞および組織の恒常性を維持することができる可能性がある。ブロッコリーの介入は、他の部位での発癌[28, 36, 37]、および心筋梗塞と関連する炎症[38]に加えて、それぞれ、前立腺癌の発癌と関連している[31〜35]、TGFβ1、EGFおよびインスリンシグナリングの撹乱と関連していることはかなり興味深い。ブロッコリーの摂取はまた、mRNAプロセッシングの変化とも関連していたことは注目に値する。
【0226】
ブロッコリーに由来する主要な生物活性産物は、スルホラファンおよびイベリンなどのイソチオシアネートであると考えられる。これらのものは、細胞モデルにおいて複数の生物学的活性を有し、抗発癌活性と一致することが示されている[15]。しかしながら、これらの試験は主として、ブロッコリー摂取後に血漿中に一過的に生じ、例えば、細胞内酸化還元状態の撹乱、グルタチオンの枯渇およびKeap-Nfr2複合体の撹乱によってITCの細胞内活性により媒介されるよりもはるかに過剰な濃度のSFおよびIBに細胞を曝露することを含む。細胞に進入するITCはいずれも、比較的高い濃度で存在するグルタチオンとの結合を介してすぐに不活化されるであろうため、本発明者らは、これらのプロセスがin vivoで起こるかどうかに疑問を持っている。かくして、本発明者らは、ITCの生物学的活性が、低いグルタチオン濃度を有する、血漿の細胞外環境内のシグナリングペプチドとの化学的相互作用により媒介され得るかどうかを探索した。本発明者らは、ITCが、N末端残基との共有結合を介して血漿中のシグナリングタンパク質とチオウレアを容易に形成することを証明した。ITCは、他の血漿タンパク質と化学的に反応すると考えられ、ITCによる血漿タンパク質改変の全体的な分析を正当化する。また、システインおよびリジン残基を介する共有結合[39, 40]などの、ITCによる血漿タンパク質の他の型の化学的改変が生じる可能性もある。
【0227】
以前の試験により、イソチオシアネート由来チオウレアが親タンパク質の物理化学的および酵素的特性を改変することが示されている[26, 27]。かくして、前立腺におけるシグナリング経路の撹乱は、細胞外環境中で生じるタンパク質改変により媒介される可能性がある。本発明者らは、TGFβ1と生理学的に好適な濃度のSFとを予備インキュベーション (2μMで30分間)し、次いで、4時間透析して、SF薬物動態を刺激することにより、Smad媒介性転写が増強されることを証明することにより、この仮説に関するさらなる証拠を提供する。TGFβ1/Smad媒介性転写は非形質転換細胞中で細胞増殖を阻害するため[31, 41]、SFによるSmad媒介性形質転換の増強は、心筋梗塞の危険性の低下[10, 38]に加えて、ブロッコリーの抗発癌活性と一致するであろう。特定の環境においては、TGFβシグナリングの増強は、既に開始した細胞内での腫瘍進行と関連しているが、これが媒介される正確な経路は完全には解明されていない[42]。それは、TGFβ1のみとは対照的に、いくつかの経路における変化の正味の効果である可能性があり、ブロッコリー/アブラナ科の摂取を介する癌および心筋梗塞の両方の観察された減少の根拠となり得る。
【0228】
以前の試験により、イソチオシアネートはEGFシグナリングを阻害し得ることが示されたが、それには機構的説明がない[43]。現在の試験で、本発明者らは、SFがEGFリガンドに結合し、これは本発明者らの結果および以前に報告された結果[43]の根拠となり得ることを示している。さらに、ITCによるシグナリングタンパク質の化学的改変を、TRPA1受容体について以前に示されたように[39, 40]、受容体タンパク質の改変により補足することができる。
【0229】
シグナリング経路の撹乱を、GSTM1遺伝子型によりさらに決定する。遺伝子発現上での食事とGSTM1との相互作用は、食事評価を欠き、GSTM1ヌル遺伝子型を、前立腺癌の危険性の増加と関連付けたか、または関連付けていない対照試験の事例に由来する矛盾する結果を一部説明することができる[44〜47]。GSTM1酵素活性は、SF-グルタチオンコンジュゲートの形成と切断の両方を触媒する[48]。本発明者らは、腸細胞から血漿への輸送後、GSTM1活性(肝細胞代謝回転[49]または末梢リンパ球からの漏出[50]から生じる)が、血漿の低グルタチオン環境内のSF-グルタチオンコンジュゲートの切断を触媒し[51]、上記で考察されたように、タンパク質改変にとって利用可能であり、メルカツプル酸代謝を介しては排出されない遊離SFの程度を決定することを提言する(図4)。かくして、ブロッコリーの通常の食事摂取から予想されるように、低レベルのSFは細胞シグナリングのかすかな変化をもたらし、時間と共に、遺伝子発現の大規模な変化をもたらす。このように、1週間あたり1部分のブロッコリーの摂取は、1部分がGSTM1陽性であるか、またはさらに1部分がGSTM1ヌルである場合[14]、癌の危険性の低下に寄与し得る。
【0230】
この試験が遺伝子発現に対するブロッコリー摂取の効果を提供するという洞察に加えて、本発明者らは、本発明者らの試験がより広い暗示を有すると考えている。第1に、本発明者らは、日常的な前立腺針生検を、組織学的評価に加えて、全体的な遺伝子発現分析に用いることができ、また、時間に応じた発現の変化をモニターすることができることを証明する。試験の両方の食事治療群内の男性が、アンドロゲン受容体経路の有意な変化を有していたことは注目に値する。アンドロゲンシグナリングにおけるこれらの変化は、加齢と関係し、食事とは無関係であるか、またはそれらはブロッコリーに富む食事とエンドウ豆に富む食事の両方に共通の成分により誘導されたものである可能性がある。本発明者らの知る限り、HGPINを有するこの年齢の男性におけるアンドロゲンシグナリング上での変化の速度に関するデータは存在しない。この観察は、さらなる試験が正当化されることを示唆している。連続的生検を介してHGPINまたは限局性前立腺癌と診断された男性の遺伝子発現の変化の速度に関する分析は、発癌および侵襲性の強い癌への進行の両方の可能性を測定するための信頼できる生物マーカーを提供し、ならびに針生検の組織学的試験および血漿PSAレベルの測定を補足することができる。第2に、遺伝子型による全体的な遺伝子発現プロフィールの階層化は有益であり、この手法は前立腺または他の組織における遺伝子発現のパターンを詳細に分析するために他の遺伝子にも拡張することができる。最後に、ポリフェノール誘導体などの他の食事性植物化学物質も、イソチオシアネートの提唱された作用機構と同様の様式で、血漿中のシグナリングペプチドと化学的に相互作用することができると考えられる。
【0231】
結論として、本発明者らは、本発明者らの試験が疫学的試験により示唆されるように、ブロッコリー摂取を介する前立腺癌の危険性の低下の機構的基礎を提供したと考えている。
【0232】
ボランティアはブロッコリーに富む食事またはエンドウ豆に富む食事に無作為に割り当てられた。6ヶ月後、エンドウ豆に富む食事上ではグルタチオンS-トランスフェラーゼμ1(GSTM1)陽性個体とヌル個体との間で遺伝子発現の差異はなかったが、ブロッコリーに富む食事上ではGSTM1遺伝子型間で有意な差異があり、これはトランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)および表皮増殖因子(EGF)シグナリング経路と関連する。介入前後に得られた生検の比較により、遺伝子発現のより大きい変化は、エンドウ豆に富む食事上の個体よりもブロッコリーに富む食事上の個体において生じることが示された。食事に関係なく、アンドロゲンシグナリングに変化があったが、ブロッコリーに富む食事上の男性は、mRNAプロセッシング、ならびにTGFβ1、EGFおよびインスリンのシグナリングに対するさらなる変化を有していた。本発明者らはまた、スルホラファン(ブロッコリー中に蓄積する4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレートから誘導されるイソチオシアネート)がTGFβ1、EGFおよびインスリンペプチドと化学的に相互作用して、チオウレアを形成し、TGFβ1/Smad媒介性転写を増強することの証拠も提供する。
【0233】
結論
本明細書に提示される知見は、ブロッコリーの摂取がGSTM1遺伝子型と相互作用して、前立腺における炎症および発癌に関連するシグナリング経路に対して複雑な変化をもたらすことを示唆している。本発明者らは、これらの変化が、イソチオシアネートと血漿中のシグナリングペプチドとの化学的相互作用により媒介されることを提唱する。この試験は、初めて、アブラナ科の野菜に富む食事が前立腺癌および他の慢性疾患の危険性を低下させ得るという観察試験を支援するためのヒトにおいて得られた実験的証拠を提供するものである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0234】
実施例3
増殖因子は細胞表面上の受容体と相互作用して、遺伝子およびタンパク質の調節に影響し、かくして、細胞シグナリング経路を介して細胞内での細胞増殖に影響する。1つの重要な細胞シグナリング経路は、PI3K/pAKTシグナリングとして知られる。この経路では、インスリン、EGFおよびTGFβなどの増殖因子は細胞表面受容体と相互作用し、AKTとして知られるタンパク質のリン酸化をもたらす。この経路の活性化は、代謝、タンパク質合成、DNA合成および細胞増殖を刺激し、アポトーシスを阻害することにより、細胞の生存において不可欠な役割を果たす。活性化の程度は通常、AKTのリン酸化を弱めるPTENタンパク質により制限される。多くの癌においては、PTENは迅速な細胞増殖および腫瘍形成を誘導するAKTの構成的活性化が存在するように突然変異している。pAKTシグナリングの阻害は、製薬業界の主要な標的である。PTENの喪失は最大60%の転移性前立腺癌において起こる。
【0235】
pAKTと腫瘍生成の間には関連がある。
【0236】
ウェスタンブロッティングにより前立腺癌細胞系PC-3中でpAKTの活性化を観察することができる(図19を参照)。これは部分的には、PC-3細胞が、AKTのリン酸化を弱める機能的PTEN遺伝子の欠如に起因して、通常の培養培地の一部であるウシ胎仔血清(FCS)中に存在する増殖因子に対して非常に感受性が高いためである。対照的に、機能的PTEN遺伝子を有する非癌細胞系BPH-1中では、AKTのリン酸化はインスリンまたはEGFなどのさらなる増殖因子への曝露後にのみ起こる(図18を参照)。
【0237】
PC-3細胞をSFと共に1時間インキュベートすることにより、特に、2μMの用量レベルで、pAKT発現が低下する(図19)。PC3細胞 + SF + FCS(ウシ胎仔血清)に関するデータは、対照(SFなし)中でのpAKTの構成的発現を示す。2μMのSFの添加はpAKTを抑制するが、10μMでの可変的応答が存在する。本発明者らは、0.5μMでの抑制も見出した(データは示さない)。
【0238】
pAKTの抑制は、かなりの破壊が存在する場合、高濃度では失われる。
【0239】
FCSを含まない培養培地中でPC-3細胞を増殖させる場合、pAKT発現は、低下したレベルではあるが、依然として存在する(図20を参照)が、SFの添加によるさらなる阻害はない。これは、SFがFCS中の増殖因子と相互作用して、細胞内での作用とは反対に、AKTのさらなるリン酸化を阻害し得ることを示唆している。
【0240】
従って、イソチオシアネートと、いくつかの重要な増殖因子とのコンジュゲーションは、特に、細胞増殖および腫瘍増殖と関連するpAKT媒介性シグナリングの過剰活性化を誘導するPTEN遺伝子中に突然変異が存在する組織における抗発癌活性と関連し得る増殖因子の阻害を誘導する。
【0241】
ウェスタンブロッティング
BPH-1またはPC-3細胞を、それらが80%の集密度に達するまで10 cmの細胞培養皿または6穴培養プレート中で培養し、TEバッファー(10 mM Tris/HCl、1 mM EDTA、pH8)を用いて除去(lifter)した。SFを用いて24時間処理した後、細胞を冷PBSで3回洗浄し、氷上で2分間、RIPAバッファーで処理した後、4℃で10分間、13000 gで遠心分離し、ウェスタンブロッティングのために上清を回収した。タンパク質を電気泳動によりNuPage 10%ポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に移した。1:1000の希釈率でCell Signalling(著作権)から得られた一次抗体:Phospho-Akt (Ser473)ウサギmAb(#4060L)およびAKT(pan)ウサギmAb(#4685)を用いて膜を精査した。
【0242】
GAPDHを、全てのブロットについてローディング対照として用いた。タンパク質をSuperSignal West Chemikuminescenceキットを用いて可視化した。
【0243】
図21は、ウェスタンブロットの結果を示す。A:pAKT発現を示すPC-3細胞の免疫組織化学染色(赤く着色)。B:pAKT発現の阻害を示す、2μMのSF中で1時間インキュベートした後のPC-3細胞の免疫組織化学染色。
【0244】
上記の明細書に記載の全ての刊行物は、参照により本明細書に組入れられるものとする。本発明の記載の方法および系に関する様々な改変および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態と関連して説明してきたが、特許請求の範囲に記載の本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野の当業者には明らかである本発明を実施するための記載された様式の様々な改変は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0245】
1.参考文献
【技術分野】
【0001】
本発明は、心血管障害の予防および/または治療のための、高グルコシノレートのブロッコリーなどの高グルコシノレートのアブラナ科の野菜の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
心血管疾患(CVD)は、英国における早期死亡の主要な原因の一つである[1]。英国では、毎年110,000人を超える人々が冠動脈性心疾患(CHD)で死亡する。140万人を超える人々が狭心症に罹患し、毎年275,000人が心臓発作を起こしている。CVDの原因は複雑であり、通常は動脈の狭窄(アテローム性動脈硬化症)および狭窄した動脈中での血栓の形成による閉塞(血栓症)をもたらす[3]。これらの事象は、血管反応性の変化、血小板凝集の増加、血漿トリグリセリドの増加および炎症の全身マーカーの増加と関連することがわかってきた[4-7]。これらのうち、炎症が最も重要であり、癌および認知低下などの他の形態の慢性疾患の発達を支える[8]。
【0003】
これらの慢性疾患を生じる危険性を低下させるために、1日あたり少なくとも5部分の果物および野菜を摂取するようにとの食事に対するアドバイスは、果物および野菜が豊富な食事と、年齢に関連する慢性疾患の減少とを関連付けた疫学調査から得られた観察データに大きく基づくものである[8]。
【0004】
現在、アブラナ科の野菜が豊富な食事が、様々な部位での癌の発生および進行の危険性を低下させることができると記述する実質的な多くの疫学的証拠が存在する[12〜18]。
【0005】
ブロッコリーまたはカラブレーゼ(ブラシカ・オレラセア・バル・イタリカ(Brassica oleracea var italica))は、アブラナ科の野菜の代表的なメンバーである。この科の野菜は、その食用部分中でのグルコシノレートの合成および蓄積において独特である[34]。これらの硫黄含有グリコシドは、細胞液胞内に貯蔵される。組織損傷の後、それらは植物のチオグルコシダーゼ(ミロシナーゼ)を介していくつかの産物に加水分解され、それらのうち、メチオニン由来グルコシノレートに由来するイソチオシアネートおよびトリプトファン由来グルコシノレートに由来するインドールが最も豊富である[35]。ミロシナーゼを凍結前の漂白または調理により変性させた場合、摂取されるグルコシノレートは結腸中の微生物チオグルコシダーゼの作用によりイソチオシアネートおよびインドールに加水分解される。これらの分解産物は生物活性が高く、アブラナ科の野菜の健康上の利益の多くはこれらの化合物の活性と関連しているが、ヒトにおける実験データはほとんど全く存在しない。アブラナ科野菜はまた、健康上の利益と関連する他の化合物、特に、ビタミンC、葉酸、カロテノイド、カルシウムおよびマグネシウムの特に良好な供給源である[36,37]。ブロッコリーなどの食品中の任意の一群の化合物の生物活性を識別することは非常に複雑である。しかしながら、グルコシノレートに関する研究を容易にするために、標準的なブロッコリーと比較してメチオニン由来グルコシノレートのレベルが特異的に上昇しているが、他の潜在的な生物活性化合物には変化がないブロッコリーの栽培品種が開発されている[38,39]。かくして、これらの新しい遺伝子型を用いて、複雑な食品内の単一クラスの生物活性化合物の寄与と関与するヒトにおける仮説を試験することができる。
【0006】
いくつかの疫学調査は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子ファミリーの1以上のメンバー内の特定の多型が癌の危険因子であり得ることを示唆している。この遺伝子ファミリーの変異はまた、CVDにも関与し、いくつかの研究がヌル遺伝子型とCVDとの間の関係を試験してきた。現在、8個のクラスのGSTが存在し[42]、多くの研究がGST-μ(GSTM1)、GST-θ(GSTT1)およびGST-π(GSTP1)ならびにその多型に関して行われている。集団の約40%がヌル遺伝子型をもたらすGSTM1遺伝子の相同的欠失を有し、20%がGSTT1遺伝子の欠失を有する。GST遺伝子ファミリーは、グルタチオンとの結合により、反応性求電子剤を、体内からより容易に排出され得る化合物に変換する。従って、多型は防御機構を損傷させ、CVDを含む多数の疾患の発生をもたらし得る[43]。GSTとの多型はまた、癌の危険性に影響するアブラナ科の野菜摂取と相互作用することも示されている[43]。我々が加齢するにつれて、我々の動脈は硬化し、心筋需要の増加を引き起こし、より高い収縮期血圧および脈圧の拡大をもたらす。硬化プロセスは構造的変化、動脈の弾力性を担うエラスチンの分解および動脈壁の肥厚を引き起こすコラーゲンの増加の結果生じる[44]。冠動脈かん流圧の低下に伴う動脈の硬さおよび中心収縮期血圧のこの増加は、心臓発作、脳卒中および心不全の危険性を劇的に増加させる。動脈の硬さはまた、年齢、高血圧、喫煙、コレステロールレベルおよび肥満などのCVDと関連する一般的な危険因子の多くとも関連しているが、重要なことに、いくつかの集団群においては心血管罹患率および死亡率の独立予測因子であることも示されている[45]。動脈の硬さの測定は、CVDを有する患者の臨床評価における道具としてますます用いられている。増加指数(AIx)は、冠動脈疾患のための強力な独立危険マーカーであることが示されており、脈波伝播速度(PWV)は高血圧症患者における罹患率および死亡率の独立予測因子であることが示されている[46,47]。疫学調査および臨床試験により、動脈の硬さの増加が末期腎不全を有する患者および高血圧症を有する患者におけるCVDの独立マーカーであることが示されている[46,48,49]。頸動脈-大腿動脈PWVは、動脈の硬さの直接的測定における判断基準であると考えられる[50,51]。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様を、特許請求の範囲および以下の注釈に提示する。WO99/052345(参照により本明細書に組入れられるものとする)に開示されたものなどの高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を、心臓の健康を促進するために、より具体的には、障害の治療もしくは予防において、さらに具体的には、心血管障害の治療もしくは予防において用いることができることが見出された。例えば、それを必要とする人々もしくは動物の食事中に、本明細書に定義されるそのような高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(例えば、高グルコシノレートのブロッコリー)、もしくはその一部の十分量を含有させるか、またはそのような人々もしくは動物に、そのような高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(例えば、高グルコシノレートのブロッコリー)もしくはその一部から調製された医薬を投与することにより、これを達成することができる。
【0008】
本発明はまた、3-メチルチオプロピル(3-MTP)グルコシノレートのレベルを増加させるために改変された高グルコシノレートのアブラナ科の野菜植物(高グルコシノレートのブロッコリー植物など)および非改変対照植物と比較して3-MTP-グルコシノレートのレベルが上昇した高グルコシノレートの野菜植物(高グルコシノレートのブロッコリー植物など)も含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】CVDと関連する危険因子に対するグルコシノレートの投与の効果を決定するために行った試験の概略を示す。
【図2a】非糖尿病男性に関するJoint British SocietiesのCVD危険予測図を示す。
【図2b】非糖尿病女性に関するJoint British SocietiesのCVD危険予測図を示す。
【図3】取得したサンプルの詳細を含む行われたスクリーニングプロトコルの概略を示す。
【図4】4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレートおよびスルホラファンの代謝を示す。腸細胞への進入の際に、スルホラファン(SF)はグルタチオンに迅速に結合し、全身循環に輸送され、メルカプツル酸経路を介して代謝される。血漿のグルタチオンが低い環境内では、SF-グルタチオンコンジュゲートは切断され、おそらくGSTM1により媒介され、血漿中の遊離SFの循環をもたらす。この遊離SFは、TGFβ、EGFおよびインスリンなどのシグナリング分子を含む血漿タンパク質を改変することができる。
【図5】独立した前立腺マイクロアレイデータセットのLDAを示す。良性(Be)、原発性癌(PCa)および転移性癌(MCa)サンプルからなる、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション法(LCD)による前立腺上皮細胞サンプル(GEOアクセッション番号:GDS1439)を分類するための訓練サンプルとして、この試験のために良性(B)および悪性(M)(経尿道前立腺切除)TURP前立腺組織を用いる線形判別分析(LDA)である。「方法」に記載のように、良性および悪性TURPサンプルを識別するLDAを遺伝子一覧に対して行った。ここでは、最初の線形判別(LD1)を示す。
【図6】遺伝子転写に対する食事介入の効果を示す。a、介入前(Pre)、ブロッコリーに富む食事の6ヶ月後(Broc)およびエンドウ豆に富む食事の6ヶ月後(Peas)での、ボランティアからの良性(Ben)および悪性(Mal)前立腺から得たTURP組織、ならびに経直腸超音波誘導(TRUS誘導)生検組織における、GSTM1陽性とヌル遺伝子型の間で異なるプローブの数(P≦0.005、Welchの改変2標本t検定)を示す。b、介入前のTRUS誘導生検サンプルと、6ヶ月後のブロッコリー(6B)、6ヶ月後のエンドウ豆(6P)、12ヶ月後のブロッコリー(12B)および12ヶ月後のエンドウ豆(12P)に富む食事との間で異なるプローブの数(P≦0.005、Welchの改変2標本の対応のあるt検定)を示す。影は、適用した異なるカットオフ倍数に対応する。プローブ数、P値および中央偽発見率の完全な詳細については、表2を参照されたい。
【図7】ヒト血漿中でSFと共にインキュベートした、およびSFを含まずにインキュベートしたインスリンの液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)を示す。6.46および7.08分の保持時間で2種の異なるインスリン-SFコンジュゲートの出現を示す、(A)ヒト血漿対照中の非改変インスリン(20μg/ml)ならびに(B)インスリン(20μg/ml)および50μMのSFと共に37℃で4時間インキュベートしたヒト血漿中のインスリン-SF MH55+の抽出イオンLC-MSクロマトグラム(m/z 1183.6-1184.1)である。これらの2種のインスリン-SFコンジュゲートの増強された生成物イオン(EPI)-MSスペクトルを、図8に示す。
【図8】2種のインスリン-SFコンジュゲートの増強された生成物イオン(EPI)-MSスペクトルを示す。ウシインスリンおよび50μMのSFと共に37℃で4時間インキュベートしたヒト血漿のLC-MS分析に由来する(A)6.46分および(B)7.08分の保持時間ピークのMS2生成物イオンスペクトルである。(A)および(B)において、m/z 1183.9はインスリン-SF MH55+に対応し、(A)において、m/z 235.0はGly-SF、インスリンA鎖のN末端アミノ酸に対応し、(B)において、m/z 325.2はPhe-SF、インスリンB鎖のN末端アミノ酸に対応する。
【図9】SFと共にインキュベートした、およびSFを含まずにインキュベートしたTGFβ1のLC-MSを示す。TGFβ1の非改変N-末端ペプチド(m/z 768.5)ならびにDMSOで処理されたTGFβ1に由来するm/z 768.2〜769.2のA、SFで処理されたTGFβ1に由来するm/z 768.2〜769.2のB、DMSOで処理されたTGFβ1に由来するm/z 876.7〜877.7のCおよびSFで処理されたTGFβ1に由来するm/z 876.7〜877.7のDの改変N末端ペプチド(m/z 877.2)を表す前駆体質量の抽出イオンクロマトグラム(MS)である。
【図10】SFによるTGFβ1のN末端改変を示す。(A)保持時間23.43分でのTGFβ1の非改変N末端ペプチドを表すm/z 768.7のMS/MSスペクトルおよび(B)保持時間30.85分でのSFで処理されたサンプル中においてのみ見られる改変形態のTGFβ1を表すm/z 877.2のMS/MSスペクトルを示す。yイオンシリーズは同じままであるが、bイオンシリーズがシフトし(Δ)、質量217±0.8 DaのN末端改変を示すことに留意されたい。
【図11】SFによるTGFβ1/Smad媒介性転写の活性化を示す。CAGA12-lucプラスミドを含むNIH3T3細胞を、TGFβ1のみ、TGFβ1と活性なTGFβ1ダイマーを破壊する10 mM DTT、またはTGFβ1と2μMのSFで処理した。全てのサンプルを30分間予備インキュベートし、4時間さらに透析して、SFの最終濃度を34 nMにした。さらなる陰性対照として、細胞を処理しないか、または34 nMのSFのみで処理したところ、両方ともルシフェラーゼを誘導できなかった。化学発光を各サンプルのタンパク質濃度に対して正規化した(詳細については「方法」を参照されたい)。これは、行った合計4つの類似実験のうちの代表的な実験である。示されるデータは、3つの反復物の平均(s.e.m)である。
【図12】腺癌上皮A549細胞中のTGF-βシグナリング経路に対する純粋な化合物およびロケットに由来する総抽出物の効果を示す。イソチオシアネートが産生されないように熱処理されたロケットに由来する抽出物は、TGFβシグナリングの抑制を示す。エルシンは、SFよりもTGFβシグナリングを上方調節するのにより効果的であるようである。
【図13】ブロッコリー抽出物および/またはTGFβ1で処理した後のリン酸化SMAD2に関するCaco-2細胞のウェスタンブロット分析を示す。パネルA、リン酸化SMAD2;パネルB、GAPDH。レーン1、2-対照;3、4-TGFβ1;5、6-0分;7、8-4分;9-1分;10-1分 + TGFβ(2μg/L)。
【図14】遺伝子型分析のためのCovaultおよび同僚に基づくリアルタイムPCR手順を用いる使用のためのPCR条件と共に、Applied Biosystems Primer Express (http://www.appliedbiosystems.com/)を用いて設計されたプライマーおよびプローブを示す[21]。
【図15】ITCとシグナリングペプチドとの相互作用の機能的結果を示し、これは、ITCをEGFと共にインキュベートすることにより、過形成前立腺組織のモデルであるBPH細胞中のEGFシグナリングを抑制することができることを示す。示されるデータは、ペプチド改変を引き起こすことが知られる条件下でのEGFと4-メチルスルフィニルブチルITC(SF)との予備インキュベーションが、EGFのみと比較してリン酸化された受容体の量を減少させることを示す。これは、抗炎症結果と共に、EGFシグナリング経路の阻害をもたらすと予想される。
【図16】プロシアニジン(2μMの用量)は、HUVEC細胞モデルにおいて腫瘍壊死因子-α(TNF-α)に誘導されるIL-6を阻害することができる;プロシアニジンはブドウ皮抽出物(GE)から得られたものである。
【図17】プロシアニジン(2μMの用量)は、HUVEC細胞モデルにおいて腫瘍壊死因子-α(TNF-α)に誘導されるIL-6を阻害することができる;プロシアニジンはブドウ皮抽出物(GE)から得られたものである。
【図18】増殖因子EGFおよびインスリンを添加した場合、pAKTのレベルが増加することを示す良性前立腺過形成細胞(BPH-1)(癌細胞ではない)を示す。
【図19】ウシ胎仔血清(FCS)中で培養し、ITC、SFで処理した癌細胞PC3を示す。結果から認められるように、対照中には多くのpAKTが存在する。2μMで処理した場合、pAKTレベルの有意な低下が観察された。SFは、ウシ胎仔血清中で細胞外シグナリングタンパク質(インスリンなど)を介して作用していた。
【図20】図19における結果が、FCS中の細胞外シグナリングタンパク質に起因するものであったことを示す。図20には、FCSを用いない場合の結果を示す。FCSを用いない場合に認められるように、SFはpAKTを減少させるように機能しなかった。
【図21】ウェスタンブロットの結果を示す。A:pAKT発現を示すPC-3細胞の免疫組織化学染色(赤く着色)。B:pAKT発現の阻害を示す、2μMのSF中で1時間インキュベートした後のPC-3細胞の免疫組織化学染色(赤く着色しない)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、心血管障害の治療または予防における使用のための、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)および/またはその誘導体を含む組成物が提供される。
【0011】
本明細書で用いられる用語「アブラナ科の野菜」とは、新鮮なアブラナ科の野菜および/または加工されたアブラナ科の野菜および/またはアブラナ科の野菜の抽出物を意味する。
【0012】
本発明において、本発明者らは、標準的なレベルのグルコシノレートを含むアブラナ科の野菜および/または対照(エンドウ豆)処理と比較して高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を投与することにより、少なくとも収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール、LDL-コレステロール(mmol/L)および心血管疾患の危険性(次の10年における事象%)を有意に低下させることができることを示した。
【0013】
一実施形態においては、本明細書で用いられる用語「アブラナ科の野菜」とは、新鮮なアブラナ科の野菜を意味する。
【0014】
さらなる実施形態においては、本明細書で用いられる用語「アブラナ科の野菜」とは、加工されたアブラナ科の野菜を意味する。
【0015】
別の実施形態においては、本明細書で用いられる用語「アブラナ科の野菜」とは、アブラナ科の野菜の抽出物を意味する。
【0016】
本明細書で用いられる用語「新鮮なアブラナ科の野菜」は、生で摂取されるか、または任意の好適な方法で調理されたアブラナ科の野菜またはその一部を意味する。
【0017】
本明細書で用いられる用語「加工されたアブラナ科の野菜」は、例えば、房化(floreting)、個別急速冷凍(IQF)、マセレーション、均質化、乾燥、凍結、圧縮などの少なくとも1のさらなる加工工程を受けたアブラナ科の野菜を意味する。
【0018】
本明細書で用いられる「アブラナ科の野菜の抽出物」とは、本明細書で定義される新鮮なアブラナ科の野菜の全部もしくは一部を抽出することにより、および/または本明細書で定義される加工されたアブラナ科の野菜の全部もしくは一部を抽出することにより得られた物質または複数の物質の混合物を指す。抽出を、エタノールまたは水などの溶媒を用いて実行することができる。一実施形態においては、好ましくは、抽出物は水性抽出物である。一実施形態においては、好適には、抽出物はアブラナ科の野菜の少なくともグルコシノレートを含む。
【0019】
本明細書で用いられる用語「ブロッコリー」は、新鮮なブロッコリーおよび/または加工されたブロッコリーおよび/またはブロッコリーの抽出物を意味する。
【0020】
一実施形態においては、本明細書で用いられる用語「ブロッコリー」は、新鮮なブロッコリーを意味する。
【0021】
さらなる実施形態においては、本明細書で用いられる用語「ブロッコリー」は、加工されたブロッコリーを意味する。
【0022】
別の実施形態においては、本明細書で用いられる用語「ブロッコリー」は、ブロッコリーの抽出物を意味する。
【0023】
本明細書で用いられる用語「新鮮なブロッコリー」は、生で摂取されるか、または任意の好適な方法により調理されたブロッコリーの花房および茎を意味する。
【0024】
本明細書で用いられる用語「加工されたブロッコリー」は、例えば、房化、個別急速冷凍(IQF)、マセレーション、均質化、乾燥、凍結、圧縮などの少なくとも1のさらなる加工工程を受けたブロッコリーを意味する。
【0025】
本明細書で用いられる「ブロッコリーの抽出物」とは、本明細書で定義される新鮮なブロッコリーの全部もしくは一部を抽出することにより、および/または本明細書で定義される加工されたブロッコリーの全部もしくは一部を抽出することにより得られた物質または複数の物質の混合物を指す。抽出を、エタノールまたは水などの溶媒を用いて実行することができる。一実施形態においては、好ましくは、抽出物は水性抽出物である。一実施形態においては、好適には、抽出物はブロッコリーの少なくともグルコシノレートを含む。
【0026】
本明細書で用いられる用語「投与する」、「投与すること」、「治療すること」または「治療された」は、必要に応じて、所望の生理的効果を達成するのに十分な用量の設定された食事計画において、本明細書で定義されるような、新鮮な高グルコシノレートのアブラナ科の野菜もしくはその一部(新鮮な高グルコシノレートのブロッコリーもしくはその一部)、加工された高グルコシノレートのアブラナ科の野菜もしくはその一部(加工された高グルコシノレートのブロッコリーもしくはその一部など)、またはそのような高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)から調製された医薬などの前記高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の十分量の摂取を可能にすることを含む。
【0027】
いかなる理論によっても束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、本発明の方法および使用における使用のための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(例えば、高グルコシノレートのブロッコリー)中に存在する1種以上の植物化学物質および/または少なくとも1種のその誘導体が、細胞外シグナリングタンパク質を改変することにより作用すると考えている。これが心血管疾患を治療または予防するための本明細書に記載のブロッコリーの排他的な作動形態であるとは考えられないことは理解されるであろう。
【0028】
本発明の別の態様においては、心血管障害の治療または予防のための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0029】
本発明のさらなる態様においては、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)の有効量を被験体に投与することを含む、心血管障害の治療または予防のための方法を提供する。
【0030】
本明細書で用いられる、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)に対する参照は、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート、4-メチルチオブチルグルコシノレート;3-メチルチオプロピルグルコシノレート、スルホラファン、エルシン、サチビン、イベリン、β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC)、3-メチルチオプロピルイソチオシアネートを含む一覧から選択される少なくとも1種の植物化学物質のレベルが増加したブロッコリーを指す。
【0031】
本発明のさらなる態様においては、細胞外シグナリングタンパク質を調節することによる、心血管の健康もしくは心血管疾患の進行の管理または心血管の健康およびウェルネスの増進における使用のための、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物を提供する。好適には、前記シグナリングタンパク質は、限定されるものではないが、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)、上皮増殖因子(EGF)またはインスリンのうちの1種以上であってよい。
【0032】
本発明のさらなる態様においては、細胞外シグナリングタンパク質を調節することによる、心血管の健康もしくは心血管疾患の進行の管理または心血管の健康およびウェルネスの増進における使用のための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。好適には、前記シグナリングタンパク質は、限定されるものではないが、TGFβ1、EGFまたはインスリンのうちの1種以上であってよい。
【0033】
本発明のさらなる態様においては、被験体の心血管の健康もしくは心血管疾患の進行を管理するか、または心血管の健康およびウェルネスを増進する方法であって、有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を被験体に投与することによって、1種以上の細胞外シグナリングタンパク質を共有改変することを含む前記方法を提供する。
【0034】
本発明の別の態様によれば、例えば、C反応性タンパク質(CRP)および限定されるものではないが、インターロイキン-6(IL-6)などの炎症と関連するサイトカインなどの、炎症マーカーおよび炎症と関連するタンパク質のレベルを低下させるのに使用するための、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物が提供される。
【0035】
本発明の別の態様においては、例えば、CRPおよび限定されるものではないが、IL-6などの炎症と関連するサイトカインなどの、炎症マーカーおよび炎症と関連するタンパク質のレベルを低下させるのに使用するための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0036】
本発明のさらなる態様においては、炎症マーカーおよび炎症と関連するタンパク質(例えば、CRPおよび限定されるものではないが、IL-6などの炎症と関連するサイトカインなど)のレベルを低下させる方法であって、被験体に有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を投与することによって、1種以上の細胞外シグナリングタンパク質を共有改変することを含む前記方法を提供する。
【0037】
本発明のさらなる態様においては、総コレステロール(TC)のレベルおよび/または低密度リポタンパク質-コレステロール(LDL-コレステロール)のレベルなどの哺乳動物血清コレステロールのレベルを改善するか、または制御するのに使用するための、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物を提供する。特に、例えば、哺乳動物血清コレステロール、総コレステロール(TC)および/またはLDL-コレステロールのレベルを、例えば、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)で治療されていない被験体中の前記レベルと比較して、低下させるか、または増加を防止する(すなわち、健康なレベルに維持する)ことができる。
【0038】
本発明の別の態様においては、総コレステロール(TC)のレベルおよび/またはLDL-コレステロールのレベルなどの、哺乳動物血清コレステロールのレベルを改善するか、または制御するのに使用するための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。特に、哺乳動物血清コレステロール、例えば、総コレステロール(TC)および/またはLDL-コレステロールのレベルを、例えば、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)で治療されていない被験体中の前記レベルと比較して、低下させるか、または増加を防止する(すなわち、健康なレベルに維持する)ことができる。
【0039】
本発明のさらなる態様においては、哺乳動物血清コレステロールのレベル(総コレステロール(TC)のレベルおよび/またはLDL-コレステロールのレベルなど)を改善するか、または制御する方法であって、有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を摂取することによって、前記1種以上の細胞外シグナリングタンパク質を共有改変することを含む前記方法を提供する。特に、哺乳動物血清コレステロール、例えば、総コレステロール(TC)および/またはLDL-コレステロールのレベルを、例えば、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)で治療されていない被験体中の前記レベルと比較して、低下させるか、または増加を防止する(すなわち、健康なレベルに維持する)ことができる。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、心血管炎症の治療または予防における使用のための、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物が提供される。
【0041】
本発明の別の態様においては、心血管炎症の治療または予防における使用のための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0042】
本発明のさらなる態様においては、被験体に有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を投与することを含む、心血管炎症を治療または予防する方法を提供する。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、高血圧症の治療または予防における使用のための高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物が提供される。
【0044】
本発明の別の態様においては、高血圧症の治療または予防のための医薬の製造における高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0045】
本発明のさらなる態様においては、被験体に有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を投与することを含む、高血圧症の治療または予防のための方法を提供する。
【0046】
本発明のさらなる態様においては、心血管の危険性を低下させるのに使用するための高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物を提供する。
【0047】
本発明のさらなる態様においては、心血管の危険性を低下させるのに使用するための医薬の製造における高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0048】
本発明のさらなる態様においては、被験体に有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を投与することを含む、被験体における心血管の危険性を低下させるための方法を提供する。
【0049】
本発明のさらなる態様においては、総血清トリグリセリド(TG)を低下させるのに使用するための高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物を提供する。
【0050】
本発明のさらなる態様においては、総血清トリグリセリドを低下させるのに使用するための医薬の製造における高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を含む組成物の使用を提供する。
【0051】
本発明のさらなる態様においては、被験体に有効量の高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を投与することを含む、被験体における総血清トリグリセリドを低下させる方法を提供する。
【0052】
本明細書で用いられる通り、その最も広い意味で、用語「心血管障害」または「心血管疾患」とは、心臓または血管系の任意の障害または疾患を指す。用語「心血管障害」および「心血管疾患」は、本明細書では互換的に用いられる。より具体的には、本明細書で用いられる用語「心血管障害」は、例えば、年齢、食事、環境因子および/または遺伝的素因の1つ以上から選択される複雑な原因を有する心臓または血管系に作用する慢性障害を指す。そのような障害の例は、狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症または心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患、脳卒中である。
【0053】
好ましい態様
本発明の高レベルのグルコシノレートを有するアブラナ科の野菜を、WO99/52345およびPCT/GB2009/001648(両方とも参照により本明細書に組入れられるものとする)に記載の高グルコシノレートのブロッコリーとして提供することができる。
【0054】
あるいは、高レベルのグルコシノレートを有するアブラナ科の野菜は、ブロッコリー以外の高グルコシノレートのアブラナ科の野菜であってもよく、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜を、WO99/52345およびPCT/GB2009/001648(両方とも参照により本明細書に組入れられるものとする)に記載の教示に従って調製することができる。
【0055】
好適には、本発明における使用のための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、増加したレベルの1種以上のグルコシノレートおよび/または1種以上のイソチオシアネートを含む。
【0056】
一実施形態においては、本発明における使用のための高グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、増加したレベルの1種以上の以下の化合物:4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)、4-メチルチオブチルグルコシノレート;3-メチルチオプロピルグルコシノレートを含む。
【0057】
一実施形態においては、本発明における使用のための高グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、増加したレベルの4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)および/または3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)を含む。
【0058】
好ましくは、本発明における使用のための高グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、同様の条件下で成長させた標準的なアブラナ科の野菜(標準的なブロッコリーなど)に認められる4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)のレベルの2〜3倍である4-メチルスルフィニルグルコシノレート(MSB)のレベルを有する。
【0059】
好ましくは、本発明における使用のための高グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、同様の条件下で成長させた標準的なアブラナ科の野菜(標準的なブロッコリーなど)に認められる4-3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)のレベルの2〜3倍である4-3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)のレベルを有する。
【0060】
一実施形態においては、本発明における使用のための高グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、増加したレベルの1種以上の以下の化合物:スルホラファン、エルシン、サチビン、イベリン、β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC)、3-メチルチオプロピルイソチオシアネートを含む。
【0061】
好適には、前記高グルコシノレートおよび/またはその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を、所望の生理的効果をもたらすことが知られる十分な用量で設定された食事計画で提供することができる。
【0062】
一実施形態においては、高グルコシノレートおよび/またはその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を、約60〜140μmol/日、好適には、70〜140μmol/日、好適には、75〜140μmol/日、好適には、80〜135μmol/日、好適には、90〜135μmol/日の量のグルコシノレートを提供する量で摂取する。好適には、高レベルのグルコシノレートおよび/またはその誘導体を有するブロッコリーを、約20μmol/日以上、30μmol/日以上、40μmol/日以上、50μmol/日以上、60μmol/日以上、75μmol/日以上、好適には、約79μmol/日以上、好適には、約100μmol/日以上、好適には、約130μmol/日、好適には、約140μmol/日の量でグルコシノレートを提供する量で摂取する。
【0063】
好ましくは、高グルコシノレートおよび/またはその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、同様の条件下で成長させた標準的なアブラナ科の野菜(標準的なブロッコリーなど)に認められるレベルの2〜3倍であるグルコシノレートのレベルを有する。好ましくは、高グルコシノレートおよび/またはその誘導体のアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、少なくとも10μmol/g乾燥重量、より好ましくは、少なくとも約14μmol/g乾燥重量、少なくとも約16μmol/g乾燥重量、少なくとも約20μmol/g乾燥重量、少なくとも約25μmol/g乾燥重量、少なくとも約30μmol/g乾燥重量、少なくとも約50μmol/g乾燥重量または少なくとも75μmol/g乾燥重量の量の少なくとも1種のグルコシノレートを含む。
【0064】
好適には、一実施形態においては、好ましくは、本発明による高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、少なくとも10μmol/g乾燥重量、より好ましくは、少なくとも約14μmol/g乾燥重量、少なくとも約16μmol/g乾燥重量、少なくとも約20μmol/g乾燥重量、少なくとも約25μmol/g乾燥重量、少なくとも約30μmol/g乾燥重量、少なくとも約50μmol/g乾燥重量または少なくとも約75μmol/g乾燥重量の量の4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)および/または3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)を有する。
【0065】
本明細書で用いられる用語「細胞外シグナリングタンパク質を改変すること」とは、該シグナリングタンパク質の天然のシグナリング機能を変化させることを意味する。用語「改変すること」は、細胞外シグナリングタンパク質のシグナリング機能を阻害または増強することを意味してもよい。一実施形態においては、用語「改変すること」は、細胞外シグナリングタンパク質のシグナリング機能を阻害することを意味する。
【0066】
一実施形態においては、好ましくは、前記被験体は、グルタチオンS-トランスフェラーゼμ1(GSTM1)遺伝子および/またはグルタチオンS-トランスフェラーゼθ1(GSTT1)遺伝子および/またはグルタチオンS-トランスフェラーゼπ1(GSTP1)遺伝子を含む遺伝子型を有する。
【0067】
本明細書で用いられる用語「低下させること」または「低下した」および「低下させる」の他の派生は、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)で治療しなかった被験体と比較して、本発明による高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)で治療した被験体における値の低下が存在することを意味する。
【0068】
好ましい実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜は、高グルコシノレートのブロッコリーである。
【0069】
誘導体
本明細書で用いられる用語「誘導体」とは、グルコシノレートから誘導された高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)中に存在する化合物を指す。1つの好ましい実施形態においては、誘導体は、イソチオシアネートであってよい。イソチオシアネートは、一般式R-NCSを有する硫黄含有植物化学物質である。
【0070】
イソチオシアネートは、アブラナ科の野菜中にグルコシノレートコンジュゲートとして天然に存在する。
【0071】
本発明における特定の興味のイソチオシアネートとしては、以下のもの:4-メチルスルフィニルブチル(さもなければスルホラファンもしくはSFとして知られる);4-メチルチオブチル(さもなければエルシンとして知られる);4-メルカプトブチル(さもなければサチビンとして知られる);β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC);イベリン(さもなければIBとして知られる)、および3-メチルチオプロピルが挙げられる。
【0072】
一実施形態においては、エルシンおよび3-メチルチオプロピルが、単独で、または組合せにおいて特に好ましいイソチオシアネートであってよいと想定される。
【0073】
一実施形態においては、3-メチルチオプロピルが好ましいイソチオシアネートである。
【0074】
別の実施形態においては、サチビンが好ましいイソチオシアネートであってよい。
【0075】
一実施形態においては、4-メチルスルフィニルブチル(スルホラファン)が好ましい。
【0076】
グルコシノレート
グルコシノレートは、硫黄、窒素およびグルコースに由来する基を含む有機化合物のクラスである。それらは、アブラナ科の野菜などのアブラナ目の多くの植物の二次代謝物として生じる。
【0077】
グルコシノレートは水溶性の陰イオンであり、グルコシドに属する。全てのグルコシノレートは、硫黄原子を介してグリコン基に(硫酸化ケトキシムを作る)、および窒素原子を介して硫酸基に結合される中心炭素原子を含む。さらに、中心炭素は側基に結合する;異なるグルコシノレートは異なる側基を有する。
【0078】
約120種の異なるグルコシノレートが植物において天然に存在することが知られている。
【0079】
本発明によるグルコシノレートは、好ましくは脂肪族化合物である。
【0080】
本発明においては、1種以上の以下のグルコシノレート:4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート、4-メチルチオブチルグルコシノレートおよび3-メチルチオプロピルグルコシノレートが重要であってよいことが想定される。
【0081】
一実施形態においては、グルコシノレートは、好ましくは、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)および/または3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)である。
【0082】
高グルコシノレートのアブラナ科の野菜または高グルコシノレートのブロッコリー
好適には、用語「高レベルのグルコシノレートを有するアブラナ科の野菜」または「高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリー」は、それぞれ、アブラナ科の野菜またはブロッコリーの伝統的な種類と比較して、グルコシノレートのレベルが増加したアブラナ科の野菜またはブロッコリー作物を意味する。
【0083】
一実施形態においては、用語「高グルコシノレート」は、アブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)および/または少なくとも1種のその誘導体が、同様の条件下で成長させた標準的なアブラナ科の野菜(標準的なブロッコリーなど)に認められる4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)および/またはメチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)のレベルの2〜3倍である4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)および/またはメチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)のレベルを有することを意味する。
【0084】
好適には、一実施形態においては、用語「高レベルのグルコシノレート」は、アブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)が約10〜約100μmol/g乾燥重量を含むことを意味する。好適には、用語「高グルコシノレート」は、アブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)が、少なくとも約10μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約14μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約16μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約20μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約25μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約30μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約50μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約75μmol/g乾燥重量を含むことを意味する。
【0085】
高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、Mithenら、Theor. Appl. Genet. (2003) 106, 727-734; Sarikamisら、Molecular Breeding (2006) 18, 219-228、またはWO 99/52345(参照により本明細書に組入れられるものとする)に記載のものであってよい。
【0086】
一実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)は、約10〜約100μmol/g乾燥重量、好適には、約14〜約100μmol/g乾燥重量、好適には、約16〜約100μmol/g乾燥重量、好適には、約20〜約100μmol/g乾燥重量、好適には、約30〜約100μmol/g乾燥重量、好適には、約50〜約100μmol/g乾燥重量の濃度の4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレートおよび/または3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレートを含んでもよい。
【0087】
例えば、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)中の4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレートのレベルは、例えば、約8〜約55μmol/g乾燥重量、好適には、約10〜約55μmol/g乾燥重量、好適には、約10〜約40μmol/g乾燥重量であってよい。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)中の4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレートのレベルは、例えば、少なくとも約8μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約10μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約15μmol/g乾燥重量であってよい。これは、典型的には、4〜5μmol/g乾燥重量の領域のこのグルコシノレートのレベルを有する、小売り店から入手可能なアブラナ科の野菜(特に、ブロッコリー)と鋭く対照をなす。
【0088】
例えば、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)中の3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレートのレベルは、例えば、約1.5〜約10μmol/g乾燥重量、好適には、約2〜約10μmol/g乾燥重量、好適には、約2〜約8μmol/g乾燥重量であってよい。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)中の3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレートのレベルは、例えば、少なくとも約1.5μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約2μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約3μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約4μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約5μmol/g乾燥重量であってよい。これは、典型的には、0.5〜1μmol/g乾燥重量の領域のこのグルコシノレートのレベルを有する、小売り店から入手可能なアブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)と鋭く対照をなす。
【0089】
一実施形態においては、アブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)中のグルコシノレートのレベルを、ブロッコリーについては花房および食用茎の両方などの植物の全ての食用部分を試験することにより決定する。別の実施形態においては、アブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)中のグルコシノレートのレベルを、葉のみ、または花房のみ、または根のみを試験することにより決定する。
【0090】
例えば、アブラナ科の野菜が、葉を主に食べるもの、例えば、ロケット、ルッコラ、ウォールロケット、ワイルドロケット、ケールまたはキャベツなどである場合、例えば、好ましくは、アブラナ科の野菜中のグルコシノレートのレベルを、葉のみを試験することにより決定する。
【0091】
アブラナ科の野菜が、花房を主に食べるもの、例えば、ブロッコリー、芽キャベツまたはカリフラワーなどである場合、例えば、好ましくは、アブラナ科の野菜中のグルコシノレートのレベルを、花房のみを試験することにより決定する。
【0092】
アブラナ科の野菜が、根を主に食べるもの、例えば、ダイコンまたはカブなどである場合、例えば、好ましくは、アブラナ科の野菜中のグルコシノレートのレベルを、根の食用部分のみを試験することにより決定する。
【0093】
好ましくは、本発明において用いられるのは、少なくともブロッコリーの花房(またはブロッコリーの花房のみ)である。
【0094】
一実施形態においては、用語「高レベルのグルコシノレート」は、アブラナ科の野菜の花房または食用の根または食用の葉が、例えば、約10〜約100μmol/g乾燥重量の高レベルのグルコシノレートを含有することを意味する。この実施形態においては、好適には、用語「高グルコシノレート」は、アブラナ科の野菜の花房または根または葉は、少なくとも約10μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約14μmol/g乾燥重量、少なくとも約16μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約20μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約25μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約30μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約50μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約75μmol/g乾燥重量を含むことを意味する。
【0095】
一実施形態においては、用語「高レベルのグルコシノレート」は、ブロッコリーの花房が、例えば、約10〜約100μmol/g乾燥重量の高レベルのグルコシノレートを含有することを意味する。この実施形態においては、好適には、用語「高グルコシノレート」は、ブロッコリーの花房が、少なくとも約10μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約14μmol/g乾燥重量、少なくとも約16μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約20μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約25μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約30μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約50μmol/g乾燥重量、好適には、少なくとも約75μmol/g乾燥重量を含むことを意味する。
【0096】
用語「高レベルのグルコシノレートを有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)」とは、その新鮮な天然状態の植物材料、すなわち、頭部全体、例えば、ブロッコリーの花房および茎だけでなく、例えば、房化、個別急速冷凍(IQF)、マセレーション、均質化、乾燥、凍結、圧縮などの1つ以上のさらなる加工工程にかけた場合のアブラナ科の野菜(ブロッコリーなど)も指すことが理解されるであろう。
【0097】
高レベルのグルコシノレートを有するアブラナ科の野菜(高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーなど)を、1種以上のさらなる高グルコシノレートのアブラナ科の野菜などの、1種以上の他の野菜および/または野菜生産物と組合わせることができることがさらに明らかであろう。
【0098】
アブラナ科の野菜
当業者であれば、高グルコシノレートのブロッコリー以外のグルコシノレートを含む植物が公知であることを知っているであろう。グルコシノレートは、フウチョウソウ目に由来する植物中に存在する。この目は約18の科を含み、アブラナ科とフウチョウソウ科が最大の2つである。
【0099】
グルコシノレートを含有するアブラナ科に由来するアブラナ科の野菜(例えば、アブラナ科の野菜作物)としては、以下のアブラナ科の野菜作物:
・ブロッコリー、
・ロケット(シシンブリウム・オフィシナレス(Sisymbrium officinales); エルカ・サティバ(Eruca sativa) (ルッコラ)、ジプロタキシス・エルコイデス(Diplotaxis erucoides) (ウォールロケット)、ジプロタキシス・テヌイフォリア(Diplotaxis tenuifolia) (ワイルドロケット)、およびブニアス・オリエンタリス(Bunias orientalis) (トルコロケット));ならびに
・クレソン(ロリパ・ナスタルチウム・アクアチカム(Rorripa nasturtium aquaticum)およびナスタルチウム・オフィシナレ(Nasturtium officinale)、
・カリフラワー、
・ケール、
・カブ、
・コラード、
・芽キャベツ、
・キャベツ、ならびに
・ダイコン、
が挙げられる。
【0100】
一実施形態においては、高レベルのグルコシノレートを有するブロッコリーを、1種以上のアブラナ科の野菜作物などの、1種以上の他のアブラナ科の野菜および/またはアブラナ科の野菜生産物と組合わせることができる。
【0101】
抽出物
一実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)からの抽出物を含む、本発明における使用のための組成物を提供し、その抽出物も高レベルのグルコシノレートを有する。
【0102】
一実施形態においては、好ましくは、前記抽出物は、本明細書で定義される新鮮な高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の全部もしくは一部(生のアブラナ科の野菜(生のブロッコリーなど)など)を抽出することによるか、または本明細書で定義される加工されたアブラナ科の野菜(加工されたブロッコリーなど)の全部もしくは一部を抽出することにより得られる物質または複数の物質の混合物である。
【0103】
抽出を、エタノールまたは水などの溶媒を用いて実行することができる。一実施形態においては、好ましくは、抽出物は水性抽出物である。
【0104】
個体/被験体
本明細書で用いられる用語「個体」および「被験体」とは、脊椎動物、特に、哺乳動物種のメンバーを指す。この用語は、限定されるものではないが、家畜動物、競技用動物、霊長類およびヒトを含む。一実施形態においては、好ましくは、被験体はヒトである。
【0105】
治療的使用
高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を、1種以上の以下のもの:狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症もしくは心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、高血圧/高血圧症、高コレステロール血症/高脂血症、末梢動脈疾患、脳卒中の治療または予防において用いることができる。
【0106】
一実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を、アテローム性動脈硬化症の治療または予防において用いることができる。
【0107】
従って、一実施形態においては、本発明は、狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症もしくは心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、高血圧/高血圧症、高コレステロール血症/高脂血症、末梢動脈疾患、脳卒中の治療および/または予防における使用のための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を含む組成物を提供する。
【0108】
別の実施形態においては、本発明は、被験体に有効量の高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を含む組成物を投与することを含む、狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症もしくは心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、高血圧/高血圧症、高コレステロール血症/高脂血症、末梢動脈疾患、脳卒中を治療および/または予防する方法を提供する。
【0109】
一実施形態においては、本発明は、哺乳動物の血清コレステロールのレベルを改善または制御するのに使用するための1種以上の植物化学物質および/もしくは少なくとも1種のその誘導体(特に、1種以上のグルコシノレートおよび/もしくはイソチオシアネート)または高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を含む組成物であって、該植物化学物質および/もしくはその誘導体または高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)が細胞外シグナリングタンパク質を改変する、前記組成物を提供する。特に、総コレステロール(TC)および/またはLDL-コレステロールのレベルを、例えば、植物化学物質および/もしくは少なくとも1種のその誘導体または高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)で治療されていない被験体中のレベルと比較して、低下させるか、または増加を防止する(すなわち、健康なレベルに維持する)ことができる。
【0110】
別の実施形態においては、本発明は、1種以上の植物化学物質および/もしくは少なくとも1種のその誘導体(特に、1種以上のグルコシノレートおよび/もしくはイソチオシアネート)を含む組成物(好ましくは、医薬組成物)の有効量または高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の有効量を被験体に投与することを含み、植物化学物質および/もしくはその誘導体または高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)が細胞外シグナリングタンパク質を改変する、哺乳動物の血清コレステロールのレベルを改善または制御するための方法を提供する。
【0111】
心血管障害(CVD)
本明細書で用いられる通り、その最も広い意味において、用語「心血管障害」または「心血管疾患」とは、心臓または血管系の任意の障害または疾患を指す。用語「心血管障害」および「心血管疾患」は、本明細書では互換的に用いられる。
【0112】
より具体的には、本明細書で用いられる用語「心血管障害」とは、例えば、年齢、食事、環境因子および/または遺伝的素因のうちの1つ以上から選択される複雑な原因を有する心臓または血管系に作用する慢性障害を指す。そのような障害の例は、狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症もしくは心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患、脳卒中である。
【0113】
一実施形態においては、用語「心血管障害を予防すること」とは、1つ以上の心血管危険因子(以下に定義される)を、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を投与した被験体において、すなわち、本発明に従って高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を投与しなかった被験体と比較して、治療する、および/または予防する、および/または減少させることを意味してもよい。
【0114】
心血管危険因子
以下の一覧は、心血管危険因子、すなわち、単独で、または集合的に、ヒトがCVDを生じるか、または心血管(CV)事象を有する危険にある因子であると一般的に考えられるものを定義する。
【0115】
心血管危険因子は、心臓危険性アセサーにおける全体パラメーター、例えば、CVDを生じる人の危険を、彼らから得られた生物学的値および生理学的値のセットから算出するアルゴリズムを形成する[58]。
【0116】
好適な心血管危険性カルキュレーターを、http://www.patient.co.uk/showdoc/40000133/に見出すことができ、参照により本明細書に組入れられるものとするHeart (British Cardiac Society, British Hypertension Society, Diabetes UK, HEART UK, Primary Care Cardiovascular Society, The Stroke Associationにより準備された“JBS2: Joint British Societies’ Guidelines on Prevention of Cardiovascular Disease in Clinical Practice” (Heart 2005, Vol 91: v1-v52; doi 10.1136/hrt.2005.079988 (特別版)を参照されたい)の特別版にも教示されている。JBS2において用いられるアルゴリズムおよび心血管危険性アセサーに関するさらなる詳細を、参照により本明細書に組入れられるものとするAndersonら、Circulation 1991; 83: 356-62に見出すことができる。
【0117】
本明細書の図2aおよび2bは、上記で教示された危険性アセサーの代わりに、またはそれと共に用いることができる心血管危険予測図を示す。これらの図表は、Heart (British Cardiac Society, British Hypertension Society, Diabetes UK, HEART UK, Primary Care Cardiovascular Society, The Stroke Associationにより準備された“JBS2: Joint British Societies’ Guidelines on Prevention of Cardiovascular Disease in Clinical Practice” (Heart 2005, Vol 91: v1-v52; doi 10.1136/hrt.2005.079988 (特別版)を参照されたい)の特別版に記載されている。これらの図表は、まだ冠動脈性心疾患(CHD)または他の主要なアテローム性動脈硬化症を生じていない個体について心血管疾患(CVD)の危険性(非致命的心筋梗塞および脳卒中、冠動脈疾患および脳卒中による死亡ならびに新しい狭心症)を評価するためのものである。
【0118】
図2aおよび2bに示される心血管危険予測図を用いてCVDを生じる個体の合計10年の危険性を評価するために、被験体の性別、ならびに生涯の喫煙状態、および年齢に関する表を選択する。この四角形の中で、収縮期血圧に関する座標と、総コレステロールとHDL-コレステロールの比とが交わる点に従って、レベルまたは危険性を定義する。HDLコレステロールの結果が利用可能でない場合、これが1.0 mmol/lであると仮定し、脂質スケールを総コレステロールのみについて用いることができる。
【0119】
より高い危険性のある個体を、10年のCVD危険性が20%を超える(これは同じ期間にわたって15%を超えるCHDの危険性とほぼ等しい)人と定義する。この図表はまた、10年のCVD危険性が10〜20%の範囲で中程度に増加する個体および危険性が10年にわたって10%より低い人の同定も支援する。初期の血圧および最初の無作為の(非空腹時)総コレステロールおよびHDLコレステロールを用いて、個体の危険性を評価することができる。
【0120】
代替的な心血管危険カルキュレーターが、当業者には公知である。例えば、QRISKのみが、英国人集団のために特異的に設計された心血管疾患危険性スコアであり、ASSIGNはスコットランド人集団のために設計されている(例えば、参照により本明細書に組入れられるものとするHippisley-Coxら、BMJ (doi:10.1136/bmj.39261.471806.55) pp1-12を参照されたい)。他の好適な心血管危険性カルキュレーターは、当業者には公知であろう。
【0121】
高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与により改変することができる心血管危険因子を、
・収縮期血圧、
・拡張期血圧、
・総コレステロール、
・LDLコレステロール、
・動脈の硬さ、
・炎症、
・IL6のレベル、
・C反応性タンパク質(CRP)のレベル、
からなる群の1つ以上から選択する。
【0122】
炎症ならびにIL6およびCRPレベルの上昇は、CVDの危険性を増加させる役割を果たす。一実施形態においては、炎症を、IL6および/またはCRPレベルを測定することにより評価することができる。
【0123】
本発明の一実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜の使用は、炎症および/または炎症マーカーおよび/またはIL6および/またはCRPのレベルを低下させることができる。
【0124】
動脈の硬さは、CVDの独立予測因子として確立されている。脈波伝播速度(PWV)または増加指数(AIx)を測定することにより、動脈の硬さを決定することができる。さらに、増加指数(AIx)は、冠動脈疾患に関する強力な独立危険マーカーであることが示されており、脈波伝播速度(PWV)は高血圧症患者における罹患率および死亡率の独立予測因子であることが示されている。
【0125】
本発明の一実施形態においては、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜の使用は、動脈の硬さおよび/またはPWV測定値および/またはAIx測定値を減少させることができる。
【0126】
一実施形態においては、好ましくは、収縮期血圧、拡張期血圧、LDL-コレステロール(すなわち、総コレステロール-HDLコレステロールおよび-血清トリグリセリド)、または総コレステロールのうちの1つ以上が、対照被験体と比較して、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)を用いて治療した被験体において低下する。
【0127】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における収縮期血圧を低下させることができ、好適には、収縮期血圧を160 mmHg未満、好ましくは140 mmHg未満に低下させることができる。
【0128】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における収縮期血圧を、約1〜20 mmHg、好適には、約2〜10、好適には、約4〜10 mmHg、好適には、約4〜6 mmHg低下させることができる。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における収縮期血圧を、少なくとも約3 mmHg、好適には、少なくとも約4 mmHg、好適には、少なくとも約5 mmHg、好適には、約6 mmHg、好適には、約10 mmHg低下させることができる。
【0129】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における拡張期血圧を低下させることができ、好適には、収縮期血圧を、100 mmHg未満、好ましくは、90 mmHg未満に低下させることができる。
【0130】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における拡張期血圧を、約1〜20 mmHg、好適には、約2〜10、好適には、約3〜10 mmHg、好適には、約3〜5 mmHg低下させることができる。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における拡張期血圧を、少なくとも約2 mmHg、好適には、少なくとも約3 mmHg、好適には、約4 mmHg、好適には、約5 mmHg、好適には、約6 mmHg、好適には、約10 mmHg低下させることができる。
【0131】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における総コレステロールを低下させることができ、好適には、総コレステロールを240 mg/dL(6.2 mmol/L)未満に低下させることができる。
【0132】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における総コレステロールを、約0.2〜3.0、好適には、約0.3〜10、好適には、約0.3〜0.6 mmol/L、好適には、約0.4〜0.5 mmol/L低下させることができる。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体における総コレステロールを、少なくとも約0.2、例えば、少なくとも約0.3、例えば、少なくとも約0.4、例えば、少なくとも約0.5 mmol/L低下させることができる。
【0133】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体におけるLDL-コレステロールを低下させることができ、好適には、LDL-コレステロールを3.5 mmol/L未満(男性について)または3.3 mmol/L未満(女性について)に低下させることができる。
【0134】
好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体におけるLDL-コレステロールを、約0.1〜1.0 mmol/L、好適には、約0.2〜0.7 mmol/L、好適には、約0.2〜0.5 mmol/L、好適には、約0.3〜0.4 mmol/L低下させることができる。好適には、高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の投与は、治療された被験体におけるLDL-コレステロールを、少なくとも約0.2 mmol/L、好適には、少なくとも約0.3 mmol/L、好適には、少なくとも約0.4 mmol/L、好適には、少なくとも約0.5 mmol/L低下させることができる。
【0135】
一実施形態においては、本発明は、1つ以上の心血管危険因子を低下させるのに使用するための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)および/または少なくとも1種のその誘導体を含む組成物に関する。
【0136】
別の実施形態においては、本発明は、心血管疾患を生じる危険性を低下させるのに使用するための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)および/または少なくとも1種のその誘導体を含む組成物に関する。
【0137】
本発明の一態様においては、本発明に従う高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)の使用は、CVDの危険性の評価において用いられる個々の危険因子(LDL-コレステロールレベル、総コレステロールレベル、収縮期血圧、および/または拡張期血圧など)を調節する(通常は、低下させる)ことにより、CVDの危険性(すなわち、心血管疾患を生じる危険性)の全体的な低下を誘導する。
【0138】
さらに別の実施形態においては、本発明は、下記群:高血圧症、高コレステロール血症または高脂血症からなる群の1つ以上の治療または予防における使用のための高グルコシノレートのアブラナ科の野菜(高グルコシノレートのブロッコリーなど)および/または少なくとも1種のその誘導体を含む組成物に関する。
【0139】
高脂血症
高脂血症は、血液中の任意の脂質もしくは全ての脂質および/またはリポタンパク質のレベルが異常に上昇する症状である。
【0140】
脂質(脂溶性分子)はタンパク質莢膜中に輸送され、その莢膜、またはリポタンパク質のサイズがその密度を決定する。リポタンパク質密度およびそれが含むアポリポタンパク質の型は、その粒子の運命と代謝に対するその影響を決定する。
【0141】
脂質およびリポタンパク質の異常は、一般的な集団において一般的であり、アテローム性動脈硬化症へのその影響に起因して、心血管疾患に関する改変可能な危険因子として見なされている。
【0142】
高コレステロール血症
高コレステロール血症(文字通り、高い血中コレステロール)は、血液中の高レベルのコレステロールの存在である。それは、心血管疾患の一因となる代謝障害である。それは、用語「高脂血症」(血液中の脂質レベルの上昇)と密接に関連する。
【0143】
高血圧症/高血圧
高血圧症または高血圧は、全身の動脈の血圧が上昇した慢性の医学的症状である。それは低血圧症の反対である。それは原発性(本態性)または二次性として分類される。
【0144】
持続的高血圧症は、脳卒中、心筋梗塞、心不全および動脈瘤などの心血管疾患の危険因子の1つである。
【実施例】
【0145】
ここで、本発明を、ほんの一例として、以下の図面および実施例を参照して説明する。
【0146】
試験設計
この試験は、CVDを生じるか、またはCV事象を有する軽度から中程度の危険性を有すると考えられる50歳を超える喫煙および非喫煙の男性および女性に関する無作為化平行試験である。この軽度から中程度の危険性は、次の10年にCVDを生じる機会が10〜20%であると定義され、Framingham Risk Score [59]に基づくものである、Joint British Societies (JBS2)CVD危険性評価図[58](図2)により算出することができる。ボランティアを、3つの試験群の1つに割り当てながら性別について適合させる。1群は12週間にわたって毎週400 gの標準的なブロッコリーを摂取する;第2群は12週間にわたって毎週400 gの高グルコシノレートのブロッコリーを摂取するが、第3群は12週間にわたって毎週400 gのエンドウ豆を摂取する。ブロッコリーとエンドウ豆を、ボランティアの標準食に加えて摂取する。ボランティアの習慣的な食事を評価するために、彼らに2つの7日間の食事日記(一方は介入前のものであり、他方はその介入の終わりに対するものである)をつけるように求める。介入前後にボランティアに対していくつかの生理学的試験を実施する(基線-第0週および第12週で);血液サンプルを取得して、彼らの脂質プロフィールならびにいくつかのCVD危険性指示因子を決定する。試験の概略を図1に示す。
【0147】
試験集団は、次の10年にわたってCVDを生じるか、またはCV事象(以下の試験対象患者基準に定義される)を有する軽度から中程度の危険性を有する50歳以上の年齢の喫煙および非喫煙の男性および女性の3群(ブロッコリー群についてはn=22;対照エンドウ豆群についてはn=10)からなる。同数の男性および女性、喫煙者および非喫煙者を募集する。各群のボランティアはまた、GSTM1欠失を有する数の均一な分布を有する(彼らは集団の約半分を構成し、これは共変量適合無作為化技術[60]を用いることにより達成される)。
【0148】
ボランティアを、性別、喫煙状態および遺伝子型により適合させる(最初の10人のボランティアを、3群のうちの1つに無作為に割り当てる)。食事日記を用いて、アブラナ科の野菜の高い(1週間あたり3部分を超える)または低い(1週間あたり1部分未満)習慣的摂取者を定義する。次いで、ボランティアを3つの食事介入群のうちの1つに無作為に割り当てる:
1. 標準的なブロッコリー群には、彼らの通常の食事の一部として1週間あたりさらに4部分(それぞれ100 g)の標準的なブロッコリーを摂取するように求める、
2. 「HG」ブロッコリー群には、彼らの通常の食事の一部として1週間あたりさらに4部分(それぞれ100 g)の、そのグルコシノレート含量の増強のために選択的に成長させた特殊な種類のブロッコリーを摂取するように求める、
3. エンドウ豆対照群には、彼らの通常の食事の一部として1週間あたりさらに4部分(それぞれ100 g)のBirds Eye(登録商標)エンドウ豆を摂取するように求める。
【0149】
ボランティアに、標準的なブロッコリー、HGブロッコリーまたはエンドウ豆を食べることにより、合計12週間にわたってその習慣的な食事を改変するように求める。これにより、本発明者らは、CVDの危険性の生化学的マーカー、特に、総コレステロール濃度、LDL-コレステロールおよび血圧の変化を検出することができる。ボランティアは、どの日に野菜を食べるか選択することができるが、野菜を食べた時には記録をつけるように求める。
【0150】
心血管危険因子
募集したボランティアは、次の10年にCVDを生じるか、またはCV事象を有する軽度から中程度の危険性を有していた[61-63]。以下の一覧は、心血管危険因子であると一般的に考えられるもの、すなわち、単独で、または集合的に、CVDを生じるか、またはCV事象を有する危険に人を置く因子を定義するものである。以下のパラメーターを用いて、試験に対するボランティアの適合性を評価する。それらは、彼らから得られる生物学的値および生理学的値のセットから、CVDを生じる人の危険性を算出するアルゴリズムである、心臓危険性アセサーにおける全体パラメーターを形成する[58]。心血管危険性アセサーは、http://www.patient.co.uk/showdoc/4000133/に見出すことができ、Heart (British Cardiac Society, British Hypertension Society, Diabetes UK, HEART UK, Primary Care Cardiovascular Society, The Stroke Associationにより準備された“JBS2: Joint British Societies’ Guidelines on Prevention of Cardiovascular Disease in Clinical Practice” (Heart 2005, Vol 91: v1-v52; doi 10.1136/hrt.2005.079988 (特別版)を参照されたい)の特別版にも教示されている。
【0151】
ボランティアは、彼らの健康を傷つけるプロジェクトに彼らを参加させることなく、または彼らに薬を飲ませることなく、この軽度から中程度の群内にある。一度、全てのスクリーニングの結果が得られたら、カルキュレーターを用いる。出力計算(統計の節を参照されたい)は、LDL-コレステロール(すなわち、総コレステロールから高密度リポタンパク質-コレステロール(HDL-コレステロール)および血清トリグリセリド(TG)を引いたもの)などの総コレステロール濃度ならびに/または血圧の値に基づく。英国の平均は5.7 mmol/Lであるが[65]、4 mmol/L以下の低さの値を有する人を治療するJBS2提言[58]により設定された標準として少なくとも5 mmol/L以上のコレステロール値を有するボランティアを募集する。食事の変化が5.7 mmol/L未満の値においては認められないであろうと示唆する証拠はない。ブロッコリーの芽の摂取を見る試験においては、参加者の基準コレステロール値は男性および女性について、それぞれ4.5 mmol/Lおよび4.6 mmol/Lであり、総コレステロールの低下が依然として認められる[32]。
【0152】
British Hypertensive Society (BHS)によれば、上記の収縮期血圧および拡張期血圧は、軽度の高血圧症であると分類される[66]。募集された年齢群(50歳以上)を試験する過去の試験から得られたデータは、これより高い範囲の血圧を有するボランティアを募集するのは困難であり、従って、本発明者らの募集のための値は、BHSにより定義される最適血圧、120/80 mmHg以上に低下することを示している。
【0153】
喫煙状態は、CVDの危険性と関連する重要な問題であり、従って、ボランティアの状態はタバコへの生涯の曝露を反映するものである。例えば、8年間にわたって1日5本のタバコを喫煙してきたボランティアは、おそらく、3年前まで20年間にわたって1日40本のタバコを喫煙していた誰かよりもタバコへの曝露は低いであろう。試験対象患者基準および除外基準を適宜設定した。
【0154】
心臓危険性アセサーカルキュレーター
図2aおよび2bは、それぞれ、非糖尿病の男性および女性に関するJBS2 CVD危険予測図を示す。その収縮期BPおよびTC:図表の淡い下側の部分により指定された範囲内にあるHDLの値と一致する、次の10年にわたってCVDを生じる10〜20%の危険性にあるボランティアを募集することが本発明者らの目的である。一般的に20%を超える範囲にある人々は通常、そのGPにより全体のCVの危険性を低下させるために、生活様式および食事の変化よりも抜本的ないくつかの形態の療法、降圧剤、脂質低下、グルコース低下および他の心血管保護療法が推奨されるであろう。
【0155】
試験対象患者基準
・50歳以上の男性および女性を試験に募集した:10〜20%のスコアがこの試験への参加について許容可能であろう;
・総コレステロールが5.0 mmol/L以上である;
・血圧測定値が、収縮期:120 mmHg以上;拡張期:80 mmHg以上である;
・BMIが20以上である;
・喫煙者および非喫煙者。
【0156】
除外基準
・糖尿病の診断;
・空腹時血糖が6 mmol/Lを超える;
・血圧が90/50または95/55未満である、症候性の場合、160/100を超える;
・慢性腎疾患;
・スタチン、胆汁酸抑制剤、コレステロール吸収阻害剤およびニコチン酸などの脂質低下療法を行っている人;
・脳卒中、心筋梗塞または一過性脳虚血発作などの心血管事象を患った人;
・跛行などの末梢血管疾患;
・魚油サプリメントの摂取(ボランティアが試験の開始前の4週間にその使用を中止する意思を示している場合を除く);
・食事介入および/または生物学的液体/材料のサンプリングを含む別の研究プロジェクトへの同時参加;
・試験チームの任意の一員と関係するか、または一緒に生活している人;
・最近4ヶ月以内に血液サンプリングを含む別の研究プロジェクトへの参加;双方の試験からの血液が470mLを超えるべきではない;
・BMIが20未満である;
・BMIが40を超える;
・空腹時総コレステロールが8.0 mmol/Lを超える;
・症状または試験介入/手順が禁忌である場合を除き、胃腸疾患を有する(裂孔ヘルニアを除く);
・単一期間に8日以上の休日にあるか、またはCRTUの臨床予約の2週間以内にある;
・頸部および咽喉部の損傷および手術を現在患っているか、または患っていた。
【0157】
情報交換(1)-人類栄養部門(HNU)-ボランティアの1回目の訪問
試験の詳細を受け取った後、全てのボランティアは、彼らが試験に参加することを望むかどうかを考えるために最小で72時間(3日間)を与えられる。この考える期間の後に参加することを望む人を、少なくとも8時間の一晩の断食後、適格性スクリーニングのためにHNUに参加するように招待する。ボランティアに、彼らがこの断食期間に必要とするだけ多くの水を飲むべきであるとアドバイスする。ボランティアに、1回目の情報交換時に提供される容器に、朝の1回目の尿から中間尿サンプルを入れるように思い出させる。同意書に署名してもらった後まで中間尿を試験しない。ボランティアは、尿サンプルを回収して2時間以内に到着する必要があるが、これは尿の尿検査の妥当性のために必要な仕様だからである。また、ボランティアに、処方された薬剤、生薬または栄養補助食品の詳細(すなわち、薬剤の名称、摂取した用量など)を持ってくるように思い出させる。
【0158】
適格性スクリーニング-HNU-ボランティアの2回目の訪問
HNUの看護師は、健康に関するアンケートを完成させ、血圧、脈拍、身長、体重および胴囲、計算された体格指数(BMI)を測定および記録し、尿検査を行い(Combur 9 Test(登録商標)、Roche Diagnostics Ltd)、完全な血球計算、完全な脂質プロフィール、グルコース、C反応性タンパク質、尿素および電解質、アルブミンのために19.5 mLの血液を採取する。次いで、5 mL容量の血液を遺伝子型決定(GSTM1、GSTT1およびGSTP1)のために用いる。BMIが20未満であるか、または40を超える場合、ボランティアを試験から除外する。
【0159】
ボランティアの無作為化
ボランティアを、最小化方法[60]としても知られる、共変量適合法に無作為化する。この方法の主な目的は、比較的少数のボランティアについて試験を実行する場合に元気である治療群と、この試験の場合と同様に、共変量(年齢、性別、喫煙状態など)に相当するか、またはそれを番号付けする治療群との間の差異を最小化することである[67]。少数のボランティアをその治療目的に無作為に割り当てた後、それぞれの新しいボランティアを、以前のボランティアの割り当てを考慮に入れて連続的に群に割り当てた後、この方法を用いることができる[60]。
【0160】
試験の結果は、合計24人のボランティアに関するものである;10人はHGブロッコリー群、8人は標準的なブロッコリー群および7人はエンドウ豆群である。
【0161】
どのブロッコリーを彼らが摂取するかに関して、ボランティアは知らされない。得られたデータを、第19節の「統計」で取り扱われる対応のあるT検定および/または一元配置分散分析により分析する。
【0162】
情報交換(2)-HNU-ボランティアの3回目の訪問
一度、試験に採用されたら、ボランティアは2番目のコード番号を割り当てられる。
【0163】
臨床予約1および2-臨床研究および臨床試験部門(UEAのCRTU)-ボランティアの4回目および5回目の訪問
全ての測定およびサンプリングを、看護師が実施する。ボランティアは少なくとも8時間にわたって断食し、その臨床予約の24時間前から全てのカフェイン入りの品目を控える。喫煙するボランティアは、全ての測定を行う約1時間前からタバコを吸うのを控える。ボランティアをCRTUの静かな試験用寝室に連れて行き、そこで介入前(基準、第0週)セットの生理的測定を行う。最初の任務は、測定を継続する前にボランティアの全体的な健康状態を評価することである。ボランティアが、試験(スクリーニングまたは1回目の臨床予約)と関連する最後の訪問以来、薬剤を摂取または変更したかどうか、および電話、手紙または電子メールにより未だ開示されていない有害事象(AE)/重篤な有害事象(SAE)を経験したかどうかを確立する。一度、全ての情報を収集したら、必要に応じて、測定値を記録しようとしている看護師は、ボランティアが継続することができるかどうかを評価する。情報を取得する看護師は、AEまたはSAEと関連する必要な文書業務を完了させる責任を負う。得られた情報の性質に応じて、ボランティアが継続することができない場合、別の期日を用意するか、またはボランティアを試験から除外する。
【0164】
測定を実行する前に、ボランティアの血圧を両腕で測定する。ボランティアの身長、体重、臀部および胴囲の測定値も取得する。これらの測定値は、脈波伝播速度の測定に必要である。第1の手順は、血液サンプリングである。18 mL容量の血液を採取して、脂質プロフィール;空腹時血糖、CRP、FBC、アルブミンを測定する。これらのサンプルに加えて、血液のアリコートを採取して、ビタミンD(vit D)分析、IL6およびhs-CRP ELISAのための血清および/または血漿を作製する。ボランティアは10分毎に自由行動下24時間血圧(BP)測定を行う。ボランティアはちょうど1時間にわたって血圧バンドを着用し、6回のBP読み取り値を取得し、これから平均BPを決定することができる。基準値後12週間、これを繰り返す(介入後〜第12週)。
【0165】
2回目の測定は、Vicorder (Skidmore Medical Ltd)を用いるPWVである。これは、2つの動脈の硬さの測定のうちの最初のものである。この手順のために、ボランティアに、静かな、温度が調節された部屋で最大30分間、横たわったままになり、リラックスするように求める。最大30分間休憩した後、休息時のボランティアのBPを測定した後、約1インチの厚さの血圧バンドの空気注入部を頸動脈と接触させて、首の周囲に置き(この小さい部分のみが測定の間に膨張し、血圧バンド全体は膨張しない)、また、一方の脚の大腿上方の周囲に置き、大腿動脈を測定する(約4インチの厚さ)。ボランティアは、測定を行う間に話したり、または眠ったりしないように指示されるが、これは読み取りの邪魔になることがあるためである。一度、血圧バンドを取り付けたら、看護師は4つの身体測定:頸動脈の血圧バンドの中点から大腿動脈の中点まで(cm);上部胸骨切痕から大腿動脈の血圧バンドの中点まで(cm);上部胸骨切痕から下部胸骨切痕まで(cm)および下部胸骨切痕から大腿動脈の血圧バンドの中点まで(cm)を実行した。
【0166】
次いで、看護師は3回のPWV読み取りを行う。
【0167】
最後の手順は、圧平眼圧測定のSphygmoCor (Atcor MedicalPty Ltd)を用いるAIxの測定である。この手順のために、ボランティアは横たわったままになるか、または座ってもよい。ボランティアの腕は安定させる必要があり、これを可能にするために、腕をテーブルまたはベッドの上で静止させ、手首を支え、わずかに曲げる(小さい巻いたタオルまたは看護師の手を用いる)。ボランティアの手首が平らであり、斜めに保持されないことが重要である。
【0168】
この測定を3回繰り返して、3セットのデータを取得する。他の測定と同様、この測定を、基準後12週間繰り返す。
【0169】
コンプライアンス
ボランティアに、彼らが毎週、野菜の部分を食べるたびに毎回記録する、12週間の介入期間に週毎の野菜記録シートを記入するように求める。これは食事介入の間のコンプライアンスを補助するであろうことが望まれる。野菜記録シートはまた、コンプライアンスをモニターする手段として、7日間の食事日記と共に用いられる。
【0170】
食事評価
対照群はその通常の食事の一部として高レベルのアブラナ科の野菜を摂取する可能性があるため、3つの群全てにおける習慣的食事を測定する。この情報は、結果がもたらし得る交絡因子を説明するのに有用である。この情報はまた、植物化学物質の摂取量または脂肪分の多い魚の消費量などの他の栄養素群のレベルを同定し、これが結果に対して効果を有するかどうかを同定するのにも有用である。ボランティアが決してその食事に順応しないことが重要であり、従って、特に、一度ボランティアが介入状態になったら、彼らにアブラナ科または任意の他の型の野菜の部分を増加させないことの重要性を強調した。ボランティアに、7日間にわたって摂取した食品、飲料およびサプリメントの摂取量を記録するように指示する。12週間の食事介入の終わりに向かって、2回目の7日間の食事日記を再度完成させて、介入に対するコンプライアンスを評価する。食物摂取日記を、「Diet Cruncher」およびUK食品組成表(McCance and Widdowson's The Composition of Foods, Sixth summary edition. Food Standards Agency (2002). Cambridge: Royal Society of Chemistry. ISBN 0-85404-428-0)を用いて分析する。日記からの食品摂取量をDiet Cruncher v1.6.1 (www.waydownsouthsoftware.com/)に入力し、基線時および介入の12週間後での3つの介入群間の栄養組成の差異について分析する。
【0171】
ブロッコリー
高グルコシノレート(HG)のブロッコリーは、グルコラファニン(スルホラファンの前駆体)と呼ばれるグルコシノレートのレベルが増強されたハイブリッド栽培品種である。グルコラファニンは、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB)の別名である。
【0172】
前記試験において用いられた高グルコシノレート(HG)のブロッコリーは、6.1±0.65μmol/g乾燥重量のグルコシノレート(3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP))および16.7±0.36μmol/g乾燥重要のグルコシノレート(4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB))を有する。疑いを避けるために、グルコイベリンが3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP)の別名である。
【0173】
前記試験において用いられた標準的なブロッコリー(本明細書では「アイアンマン(Ironman)」と呼ぶこともある)は、0.9±0.07μmol/g乾燥重量のグルコシノレート(3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(MSP))および5.64±0.50μmol/g乾燥重量のグルコシノレート(4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(MSB))を有する。
【0174】
2つの型のブロッコリーは、その番号、ブロッコリー1およびブロッコリー2により区別可能である。しかしながら、試験を実行している科学者または試験に参加しているボランティアは、どのブロッコリーがHG種であり、どれが標準種であるかを知らされていない。サンプルは100 gの部分に包装し、-18℃で冷凍保存する。次いで、ブロッコリーをボランティアの家に冷凍のまま配達する。ボランティアに、冷凍状態から、ブロッコリーについては最大5分間およびエンドウ豆については最大3分間調理するように求める。
【0175】
冷凍ブロッコリーの調理指針
ブロッコリーの部分を最大5分間、エンドウ豆については最大3分間、蒸す。産生されるイソチオシアネートの吸収の遅延をもたらすため、ボランティアがブロッコリーを過剰調理しないことが重要である。
【0176】
以前の試験により、取り込まれるITCのレベルを最大化するのに必要とされる調理レベルが示されている(未公開データ)。高グルコシノレートのブロッコリーハイブリッド中のグルコシノレートおよび等価なイソチオシアネートのレベルは、IFRでMithenら(2003)により以前に測定されている。そのレベルは、標準的な市販のブロッコリーと比較して、3〜4倍の増加に相当する。
【0177】
方法:
生理的測定
これらのものは、PWV、AIxおよび自由行動下24時間BPを含む。再現可能かつ正確な測定を確保するために、全てのボランティアを同様の条件下で測定する。ボランティアにリラックスさせ(横たわるか、または座る)、ボランティアが測定前にカフェイン、タバコ、重い食事または運動を控えていることが重要である。全てのボランティアに、臨床予約日に緩い着心地のいい服を着用するように奨励する。
【0178】
PWVは動脈の硬さを決定するのに用いられる最も古いパラメーターの1つである[68]。動脈の硬さはCVDの独立予測因子として確立されている[68, 69]。PWVを、Skidmore Medical社製Vicorder装置を用いて測定する。測定の脈波伝播速度(m/s)を、標準偏差(PWV +/- SD)と共に提示する。標準偏差は、前記速度の10%以下であるべきであり、例えば、PWVが8.0 m/sである場合、SDは0.8未満であるべきである。これが当てはまらない場合、この基準を満たす3つの値が得られるまで測定を繰り返す[70]。
【0179】
AIxは動脈の硬さを測定する単純かつ高感度の方法であり、PWV測定値を裏付けるのに用いられる。この測定を、SphygmoCor社製の装置を用いる圧平眼圧計を用いて実行する。品質指数は、パルスの平均高さおよびパルス高さ変動などのいくつかの品質制御パラメーターから誘導される100のうちの数である。その数が85を超える場合、読み取りが許容される。それが75〜85である場合、それは境界線である。それが75未満である場合、読み取りは許容されない[70]。
【0180】
自由行動下血圧測定(ABPM)は、患者が自由な生活環境にありながら、長期間にわたって血圧読み取り値を取得する非侵襲的方法であり、望まれるものが患者の血圧を真に反映するものであることを示す。ここで、多くの試験により、長期間にわたって、および最大24時間にわたって測定された血圧が、将来の心血管事象の予測において臨床に基づく血圧よりも優れていることが確認されている[71]。試験により、ABPM上での血圧読み取り値の増加が、測定しないものよりも末期臓器障害、例えば、左心室肥大とより強く相関することが示されている[72, 73]。それらはまた、ボランティアの真のBPを評価することを試みる場合に問題となり得る、白衣高血圧症を克服する有効な方法でもある。
【0181】
生化学的サンプリング
以下の血液サンプルおよび容量を、以下に示される順序で採取する(図3を参照されたい)。合計55.5 mLの全血を、介入の全過程にわたってボランティアから採取する。ボランティアが2回目の血液採取を必要とする再スクリーニングの予約のために戻ってきた場合、これを14.5 mL増やしてもよい。看護師は毎回、完全な順番の血液サンプルを採集することを目指した:
適格性スクリーニング(HNU)=19.5 mL:
サンプル1=1 x 3.5 mLの血清用血液=3.5 mL
・グルコース
サンプル2=1 x 3.5 mLの血清用=3.5 mL
・血清脂質プロフィール
サンプル3=1 x 3.5 mLの血漿用=3.5 mL
・アルブミン、U+EsおよびCRP
サンプル4=1 x 4 mLの血漿用=4 mL
・全血球計算
サンプル5=1 x 5 mLの血漿用=5 mL
・遺伝子型決定(GSTP1、GSTT1およびGSTM1)。
【0182】
スクリーニング時に、5 mLの血液サンプルから、QIAamp DNA Miniキットプロトコル(Qiagen Inc)を用いてゲノムDNAを抽出した。サンプルを二重に暗号化して、ボランティアの身元を保護した。全血から抽出されたDNAサンプルを、Cottonら(2000)の方法を用いるリアルタイムPCRを用いて増幅させて、GSTM1およびGSTT1遺伝子型の存在または非存在を決定する。GSTPiの変異型対立遺伝子の頻度も決定する。
【0183】
臨床予約1および2:2 x 18 mL
サンプル1=1 x 3.5 mLの血清用=3.5 mL
・グルコースおよびCRP
サンプル2=1 x 5 mLの血清用=5 mL
・血清脂質プロフィール
サンプル3=1 x 3.5 mLの血漿用=3.5 mL
・アルブミンおよびFBC
サンプル4=6 mLの血漿/血清用血液=6 mL
・IL6、vitD(25-ヒドロキシ-vit D)およびhs-CRP。
【0184】
ELISAによる分析のための血液サンプルをバキュテナーに分注し、室温で30〜60分間静置して、血清を作製する。チューブを2200 x gで15分間遠心分離し、それぞれの分析、IL6、vit Dおよびhs-CRPのために予め標識された6〜10個の1.5 mL凍結バイアル中に血清を分注する。これらの凍結バイアルをすぐにドライアイス中に入れ、分析まで-80℃で保存する。
【0185】
血漿をELISAに用いる場合、EDTAで被覆された血液チューブに移した全血を、室温で10分間、1210 x gで遠心分離する。血漿層を注意深く除去し、それぞれの分析、IL6、Vit Dおよびhs-CRPのために予め標識された6〜10個の1.5 mLの凍結バイアルに移す。これらの凍結バイアルを、それらが安全に輸送されるまですぐにドライアイス中に入れ、分析まで-80℃で保存する。
【0186】
QuantakineおよびIDSからの標準的なELISAを、IL6、ビタミンDおよびhs-CRPの分析のために用いる:
・IL6 - Quantikine D6050;
・hs-CRP Quantikine ELISA Kit-DCRP00。
【0187】
インターロイキン6(IL6)およびC反応性タンパク質(CRP)は両方とも、全身性炎症の感受性生理的マーカーである。IL6は前炎症的および抗炎症的方法で作用し得る多機能シグナリング分子である。それは外傷および/または組織損傷に応答して様々な細胞により放出され、炎症をもたらす[74]。CRPは、炎症の結果として上昇したレベルでも認められる急性期タンパク質である。実際、肝細胞により肝臓中で産生されるCRPは、IL6のレベルにより調節される[75]。炎症状態の持続性は、多数の年齢関連慢性疾患の原因であると提言されており[76]、炎症ならびに実際に上昇したレベルのIL6およびCRPは、CVDにおいて主要な役割を果たすことを示唆する多くの証拠が存在する[77]。いくつかの大規模横断研究により、血漿中のCRPレベルの上昇は、CVDの最も強い独立予測因子の1つであると結論付けられている[78]。高感度CRP(hs-CRP)の測定は、低レベルのCRPの測定においてより高い正確性を与える。刺激後、CRPのレベルは50μg/Lの循環値から極端な事例では500 mg/Lまで10,000倍増加することがある[79]。
【0188】
炎症はCVDおよびCVDの危険性と関連するため、これらの重要な炎症マーカーのレベルをボランティアにおいて測定して、アブラナ科の野菜の摂取の結果として、炎症プロセスにより影響されるIL6、hs-CRP、総コレステロールおよび生理的測定値の間の関係を確認する。
【0189】
ビタミンD(Vit D)(25-ヒドロキシ-vit D)-IDS AC-57F-1;
Vit Dは伝統的に骨の健康と関連している;しかしながら、それは心血管系の最適な機能にとってますます重要になっていることが現在では知られている[80]。新たなデータは、vit D状態が、高血圧症、糖尿病、代謝症候群、左心室肥大、鬱血性心不全および慢性血管肥大などの症状の可能性を増加させる欠陥を伴うCVDの発生において重要な役割を果たすことを示唆している[80〜82]。Vit Dは2つの形態、vit D2(エルゴカルシフェロール)およびvit D3(コレカルシフェロール)で存在し、前者は植物において認められ、エルゴステロールの紫外線B(UVB)照射の産物であり、後者はヒト表皮中の7-デヒドロコレステロールの照射に由来する[81]。vit D2はサプリメントとして、または強化された食品中で摂取することができるが、vit D3はヒトにより産生されるか、または脂肪分の多い魚の形態で摂取される[81]。肝臓中で、vit Dは、vit Dの取込みおよび内部産生を反映し、従って、総vit D状態を決定するために評価する必要がある化合物である25-ヒドロキシ-vit D(25(OH) vit D)に変換される。NHANES III(第3回National Health and Nutrition Examination Survey[83])国家コホート登録簿(national cohort registry)上の15,088人に関する横断研究において、25(OH) vit Dと、高血圧症、糖尿病、高トリグリセリド血症および肥満との間の逆相関が存在することが見出された[84]。
【0190】
この知見に同意する多くの他の研究が存在し、この研究は心血管危険性マーカーを試験しているため、本発明者らのコホートにおけるvit D状態を本発明者ら自身の関連を確立するために評価する。ボランティアがvit D欠損群(37.4 nmol/L未満)または豊富群(37.4 nmol/Lを超える)にあるかどうかに関して[85]、ならびにこれが本発明者らが得ている総コレステロール濃度および生理的測定値の変化とどのように関係するかに関して、ボランティアを評価する。
【0191】
結果
総コレステロール、LDL-コレステロール、収縮期血圧(BP);拡張期血圧(BP)および心血管疾患(CVD)の危険性に対するグルコシノレートの効果について、結果を提供する。
【0192】
上記で考察されたCVDの危険性を、血圧、脂質プロフィールおよび上記で詳述されたいくつかの人口統計因子に関するデータを用いて算出する。この危険性アセサーは、次の10年以内のCVDの危険性(%)を見積もるために医師により広く用いられている。
【0193】
上記の表Aは、エンドウ豆、標準的なブロッコリー「アイアンマン」および高グルコシノレートのブロッコリー(HG1)処理を用いた場合の、収縮期血圧(BP)、拡張期血圧(BP)、総コレステロール、LDL-コレステロール mmol/LおよびCVDの危険性(次の10年における事象%)に関する結果を示す。p値は対応のあるT検定に由来するものである。P<0.05は有意であり、P>0.05は有意でない(ns)。
【0194】
明確に認められるように、高グルコシノレートのブロッコリー(標準的なブロッコリーおよび/またはエンドウ豆と比較して)は、試験した被験者における収縮期血圧、拡張期血圧(BP)、総コレステロール、LDLコレステロールおよびCVDの危険性の有意な低下をもたらす。
【0195】
注目すべきことに、エンドウ豆(陰性対照)および標準的なブロッコリーは、収縮期血圧、拡張期血圧(BP)、総コレステロール、LDL-コレステロールまたは心血管疾患の危険性の有意な変化をもたらさない。
【0196】
高グルコシノレートのブロッコリーはまた、総コレステロールの有意な低下をもたらすが、エンドウ豆および標準的なブロッコリーは総コレステロールレベルの有意な変化をもたらさなかった。
【0197】
実施例2 前立腺癌を有する患者の細胞シグナリング経路における高グルコシノレートブロッコリーの摂取の効果
被験者および試験設計
前立腺癌の前侵襲性in situ段階である高悪性度前立腺上皮内癌(HGPIN)と以前に診断された57〜70歳の22人の男性ボランティア(表1)を、Norfolk and Norwich University Hospital NHS Trustで顧問泌尿器科医により募集した。前立腺病理学に特別な興味を有する2人の顧問組織病理学者により、組織学的診断を行った。試験に関する倫理的認可を、Norfolk Research Ethics Committeeから取得した。全ての参加者はインフォームドコンセントの文書を得た。ボランティアが化学予防療法を受けている、テストステロン補充療法もしくは5αリダクターゼ阻害剤を受けている、治療を要する活動性感染症を有する、18.5未満もしくは35を超える体格指数(BMI)を有する、または糖尿病である場合、彼らを除外した。通常の食事に加えて、(i)1週間あたり400 gのブロッコリーを摂取する、または(ii)1週間あたり400 gのエンドウ豆を摂取する、2つの食事介入群からなる12ヶ月間の平行食事介入試験に被験者を割り振った。総PSA免疫アッセイを用いて、Norfolk and Norwich University Hospitalでの介入試験の前ならびに6ヶ月後および12ヶ月後に、血漿前立腺特異的抗原(PSA)レベルを定量した。ボランティアは、急性効果を避けるためにそれぞれの生検予約の前の48時間はグルコシノレートを含むことが知られる食品を避けた。
【0198】
介入試験の直前、ならびに6ヶ月および12ヶ月後にボランティアから得られた前立腺の経直腸超音波走査(TRUS)誘導針生検に加えて、18個の良性および14個の悪性の経尿道的前立腺切除(TURP)組織も、Norfolk & Norwich University Hospital Partners in Cancer Research Human Tissue Bankから得た。
【0199】
食事介入
野菜を月ベースでボランティアに配達した。野菜を蒸し器と共に提供し、ボランティアに、野菜を調理する方法についてInstitute of Food Researchで食事調理人によりデモンストレーションを与えた。ブロッコリーの部分を4〜5分間蒸し、エンドウ豆の部分を2〜3分間蒸した。冷凍エンドウ豆(Birds Eye Garden Peas, http://www.birdseye.co.uk/)を、地元の小売店から購入した。ボランティアに提供される冷凍ブロッコリー中のグルコシノレート含量の一貫性を確保するために、介入試験に必要とされるブロッコリーを、Terrington, near King's Lynn, UK (http://www.adas.co.uk/)のADAS実験農場で1バッチで成長させ、Christian Salvesen (Bourne, Lincolnshire, UK, http://www.salvesen.co.uk/)により加工した。それを90.1℃で74秒間漂白し、-30℃で冷凍し、100 g部分に包装した後、ボランティアが蒸すまで-18℃で保存した。ブロッコリーは高グルコシノレート種[19, 20]であった。4-メチルスルフィニルブチルおよび3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(それぞれ、SFおよびIBの前駆体)のレベル、平均(SD)は、地元の小売店から購入したブロッコリーにおける4.4(0.12)および0.6(0.01)μmolsg-1乾燥重量と比較して、それぞれ、10.6(0.38)および3.6(0.14)μmolesg-1乾燥重量であった。グルコシノレートのレベルは標準的なブロッコリーよりも高かったが、冷凍前の漂白は植物ミロシナーゼを変性させ、かくして、高グルコシノレートのブロッコリーの食事に由来するSFおよびIBのレベルは、機能的ミロシナーゼを含む新鮮なブロッコリーから得られるレベルと同様であるか、またはそれより低いであろう。インドールグルコシノレートのレベルは、高グルコシノレートのブロッコリーと標準的なブロッコリーの両方において類似していた。
【0200】
コンプライアンスのモニタリングと食事評価
ボランティアは、いつ野菜の部分を食べたかを同定するために、12ヶ月の介入期間に毎週のチェックシートを完成させた。2週間毎に、ボランティアに電話で接触し、食事に対する順守に関して質問した。ボランティアは、7日間評価された食品摂取量の食事日記を、部分の大きさを示す家庭用測定器を用いて、基準時および6ヶ月後に完成させた。日記に由来する食品摂取量を、Diet Cruncher v1.6.1 (www.waydownsouthsoftware.com/)に入力し、基準時および介入の6ヶ月後での2つの介入群間の栄養組成の差異について分析した。
【0201】
遺伝子型決定
製造業者の説明書(http://www.qiagen.co.uk/)に従って、RNase処理しながらQiagen QIAamp DNAミニキットを用いて、全血または組織サンプルからゲノムDNAを抽出した。遺伝子特異的プライマーおよびプローブを用いるCovaultおよびその同僚に基づくリアルタイムPCR手順を用いて、GSTM1 (NM_000561)遺伝子型を決定し、2コピーの遺伝子対照である乳癌1のIVS10中の領域、早期開始(BRCA1, NM_007294)遺伝子と比較して定量した[21]。プライマーおよびプローブを、Applied Biosystems Primer Express (http://www.appliedbiosystems.com/)を用いて設計し、図14中にPCR条件と共に記載する。データをApplied Biosystems Absolute Quantificationソフトウェアを用いて分析した。
【0202】
RNA抽出およびマクロアレイハイブリダイゼーション
製造業者の説明書(http://www.qiagen.co.uk/)に従ってQIAGEN(登録商標)RNeasyミニキットを用いて、TURP組織バンクサンプルおよびボランティアから得たTRUS誘導針生検から総RNAを単離した。得られたRNAの量を、分光光度計(Beckman)を用いて測定した。RNAの品質を、Agilent 2100 Bioanalyzer (http://www.agilent.co.uk/)を用いて決定した。基準時、ならびに介入の6ヶ月および12ヶ月後の、良性および悪性前立腺のTURP生検ならびに両被験者群(エンドウ豆およびブロッコリー)から得たTRUS誘導生検に由来するRNAサンプルを、Nottingham Arabidopsis Stock Centre (NASC, http://arabidopsis.info/)によりAffymetrix Human U133 Plus 2.0マイクロアレイ(http://www.affymetrix.com/)上にハイブリダイズさせた。二本鎖cDNA合成およびビオチン標識されたcRNAの生成を、製造業者のプロトコル(Affymetrix, http://www.affymetrix.com/)に従って実施した。最終的なcRNAを品質についてチェックした後、断片化し、アレイ上にハイブリダイズさせた。
【0203】
22人のボランティアのうちの1人が、試験の基準時生検時に前立腺癌であると診断され、試験から除外した。基準時生検に由来する11個のサンプル、6ヶ月時生検に由来する2個のサンプルおよび12ヶ月時生検に由来する3個のサンプルは、良好な品質のRNAおよび/または十分なcRNAを産生しなかったため、ハイブリダイズさせなかった。さらに、1人のボランティアは、6ヶ月の生検時に前立腺癌を示し、その後のサンプルを試験から除外した。各アレイに関する蛍光強度を、GeneChip(登録商標)Scanner 3000 7Gを用いて捕捉した。Affymetrix GeneChip(登録商標)Operating Software (GCOS)を用いて、それぞれのU133 Plus 2.0アレイを定量した。この紙におけるマイクロアレイデータは、マイクロアレイ実験(MIAME)基準に関する最少の情報に準拠しており、Array Express (http://www.ebi.ac.uk/microarray-as/aer; 受託番号E-MEXP-1243)に預託されている。
【0204】
マイクロアレイデータ分析
生データファイル(CEL)を、正規化、発現値の生成および統計分析のためにDNA-Chip Analyzerソフトウェア(dChip, http://biosun1.harvard.edu/complab/dchip/、構築日2006年9月)中にロードした。不変集合正規化法を用いる正規化後、PMのみのモデルを用いてプローブ発現レベルを算出した。群間で変化している遺伝子を同定するために、dChip中のWelch改変2標本t検定により算出された異なる両側P値閾値を適用した。必要に応じて、対応のある、または対応のないt検定を実施した。複数の試験について補正するために、dChip中の順列により偽発見率(FDR)を見積もり、100個の順列の中央値をそれぞれの比較のために報告した(選択されたサンプル上の1000個の順列はFDR計算値に対してほとんど効果がなかった)。3697個のプローブの遺伝子一覧上の距離メトリックとして1ランク補正を用いて、良性および悪性サンプルに対して教師なしクラスタリングを行った。これらのプローブは2つの基準:第1に、変動係数(CV)が0.5〜1000であること、および第2に、プレゼンスコールの割合が全てのTURP良性および悪性サンプルにわたって20%未満であること、を満たした。
【0205】
サンプルの分類のために、19個のレーザーキャプチャーマイクロダイセクション法(LCD)による上皮細胞マイクロアレイ(GEOアクセッション番号: GDS1439, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)ならびに32個のTURP良性および悪性マイクロアレイを一緒に正規化し、dChip中に上記されたようにモデルに基づく発現を算出した。LCDサンプルは、6個の良性前立腺組織サンプル、5個の臨床的に局在化された一次前立腺癌サンプル、プール後の5個の一次癌サンプルの2個の反復物、4個の転移性前立腺癌サンプルおよびプール後の4個の転移性前立腺癌サンプルの2個の反復物から誘導されたものであった[22]。次いで、LCD上皮細胞サンプルの分類を、訓練サンプルとしてTURP良性および悪性サンプルに基づく線形判別分析(LDA)を用いて実施した。TURP良性および悪性サンプルの間のシグナル強度の100単位より高い差異を有し、Welchの改変2標本t検定によりP≦0.01で有意に異なる442個のプローブを用いて、LDAを実施した。示差的に発現される遺伝子の一覧中に最も過剰に提示される経路を同定するために、MAPPFinderおよびGenMAPP v2.1を用いる機能的分析を実施した(http://www.genmapp.org/)。
【0206】
ペプチドとイソチオシアネートとのインキュベーション
SFまたはIBと、ウシインスリン(P01308, Sigma-Aldrich)、組換えヒト表皮増殖因子(EGF, P01133, R&D Systems, http://rndsystems.com/)および組換えヒトトランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1, P01137, R&D Systems)とのインキュベーションを、37℃で0.5〜24時間、リン酸ナトリウム緩衝生理食塩水溶液(pH 7.4)またはヒト血漿中で実施した。血漿を限外濾過により予備処理して、高分子量タンパク質を除去した(Microcon Ultracel YM-30フィルター、MWCO 30,000)。LC-MS/MSにより直接的に、またはゲル電気泳動バンドのトリプシン消化物のLC-MS/MS分析により、サンプルを分析した。
【0207】
イソチオシアネートと共にインキュベートされたペプチドの直接LC-MS/MS分析
用いたLC系は、Shimadzuシリーズ10AD VP (Shimadzu, http://www.shimadzu.com/)であった。カラムはACE 300 C18, 150 x 2.1 mm(5μm粒径)であり、40℃で用いた。移動相Aは水中の0.1%ギ酸であり、移動相Bはアセトニトリル中の0.1%ギ酸であり、流速は0.25 ml/分であった。0〜5分間にわたっては25%のB〜35%のBの線状勾配、次いで、6分間にわたって35%のB〜99%のBのさらなる勾配、次いで、4分間、99%のBを用いた。カラムを合計3分間、再平衡化させた。注入容量は5〜20μlであった。全てのMS実験を、陽イオンエレクトロスプレーモードで用いられるTurboIon源を備えた、Analystバージョン1.4.1ソフトウェア(Applied Biosystems, http://www.appliedbiosystems.com/)を用いる4000 QTRAPハイブリッド三連四重極線状イオン捕捉質量分析計上で行った。プローブキャピラリー電圧を4200 Vに最適化し、脱溶媒和温度を400℃に設定し、カーテンガス、霧化ガスおよびターボスプレーガスを、それぞれ、40、10および20に設定した(任意の値)。デクラスタリングポテンシャルを50〜120 Vに傾斜させた。衝突誘起解離(CID)には窒素を用いた。全てのMSおよびMS/MS実験について、ピーク幅を1.0 Th(半分の高さで測定)でQ1およびQ3に設定した。1〜2秒の走査時間で、範囲m/z 800〜2000に渡ってスペクトルを得た。LITモードでQ0トラッピングを運転することにより活性化し、ダイナミックフィルタイムを使用し、増強プロダクトイオン(EPI)走査のために走査速度を250 Th/sに設定し、励起時間は150 msecであり、励起エネルギーは25 Vであり、エントリーバリアは4 Vであった。EPIスペクトルの獲得のために、SFと、インスリン(m/z 1183.9 MH55+)、EGF(m/z 1088.8, MH56+)およびTGFβ(m/z 1981.9, MH513+)とのコンジュゲートのために目的の前駆体イオンを選択し、衝突エネルギーを30〜120 Vに傾斜させ、1.9秒の走査時間で範囲m/z 100〜1500にわたってスペクトルを得た。MS3の設定は、衝突エネルギーが50〜80 Vであり、デクラスタリングポテンシャルが50〜80 Vである以外はMS2と同一であった。
【0208】
電気泳動およびトリプシン消化後のSFと共にインキュベートされたTGFβ1のLC-MS/MS分析
担体としてウシ血清アルブミンを補給したTGFβ1タンパク質の1μgアリコートを、37℃で30分間、DMSOまたは1.2μモルのSFと共にインキュベートし、変性4〜12% Bis-Tris NuPAGEゲル(Invitrogen, http://www.invitrogen.com)上で泳動した。バンドを切り出し、ジチオトレイトール(DTT)で還元し、ヨードアセトアミド(Sigma-Aldrich, http://www.sigmaaldrich.com/)でアルキル化した後、トリプシンで消化した(Promega, http://www.promega.com/)。抽出されたペプチドを凍結乾燥し、質量分析による分析のために1%アセトニトリル、0.1%ギ酸中に再溶解した。LTQ質量分析装置(Thermo Electron Corporation, http://www.thermo.com/)およびナノフローHPLC系(Surveyor, Thermo Electron)を用いて、LC-MS/MS分析を実施した。ペプチドを、セルフパックC18 8-cm分析カラム(BioBasic樹脂Thermo Electron; Picotip 75 μm id, 15 μm tip, New Objective, http://www.newobjective.com/)に接続されたプレカラム(C18 pepmap100, LC Packings, http://www.lcpackings.com/)に加えた。約250 nL/分の流速で40分間にわたって0.1%ギ酸中の2〜30%のアセトニトリルの勾配により、ペプチドを溶出させた。MS/MSのデータ依存的獲得は、各サイクル:質量電荷比(m/z) 300〜2000、最小シグナル1000、衝突エネルギー25、5リピートヒット、300秒の排除中、5種の最も豊富なイオンの選択からなっていた。全ての事例において、質量分析装置を、ナノスプレー源を備えた陽イオンモード、200℃のキャピラリー温度で運転し、シースガスを用いなかった;電源電圧およびフォーカス電圧をアンギオテンシンの伝達のために最適化した。BioWorks 3.3 (Thermo Electron Corporation)を用いて、生データを処理した。ホモ・サピエンス(68982配列)に対する分類法により限られているSptrEMBL (4719335配列)に対して、Mascot (Matrix Science, http://www.matrixscience.com/)を用いて検索を実施し、酸化メチオニンおよびカルバミドメチルシステイン残基を、推定SFである可変的改変として許容した。親イオンの誤差許容レベルは±1.2 Daであり、断片質量許容レベルは±0.6 Daであり、1つの切断ミスを許容した。TGFβに対するMascotにおける誤差許容検索を日常的に実施し、抽出イオンクロマトグラムおよびスペクトルの手動検査を、Qual BrowserおよびBioWorks 3.3 (Thermo Electron Corporation)を用いて調製した。
【0209】
ルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイ
Smad活性化に応答する、CAGA12-lucプラスミドを安定にトランスフェクトされたNIH 3T3細胞[23]を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、1% L-グルタミンおよび0.4 mg/mlジェネティシンを補給したDMEM中で培養した。6穴組織培養皿中で24時間、完全増殖培地中に細胞を播種した後、培地を、3つの処理:(1)PBSバッファー中のTGFβ1(2 ng/mlの最終濃度を達成する)、(2)PBSバッファー中のTGFβ1 + 10 mM DTT、(3)PBSバッファー中のTGFβ1 + 2μM SFのうちの1つを含む低血清培地(0.5%FCS)に置換した。SFの薬物動態をシミュレーションするために、全ての試験サンプルを透析前に37℃で30分間インキュベートし、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassettes MWCO 3.5K (PIERCE, http://www.piercenet.com/)を用いてPBSバッファー中で4時間実施した。透析によりSF濃度を34 nMに低下させた。追加の対照として、細胞を、TGFβ1を含まないPBSおよびSF(34 nM)を含むPBSで処理した。Perkin Elmer Wallac Victor 2 1420多標識カウンタープレートリーダー(http://las.perkinelmer.com/)中、Luciferase Reporter Gene assay (Roche Applied Science, http://www.roche.com/)を用いて16時間処理した後、ルシフェラーゼ活性を決定した。簡単に述べると、細胞をPBSで2回洗浄し、細胞溶解バッファー中で溶解させ、アッセイに供給した。ルシフェラーゼアッセイ基質を添加した後すぐに、化学発光を定量した。BCAアッセイ(Sigma-Aldrich, http://www.sigmaaldrich.com/)を用いて定量されたタンパク質濃度に対して、ルシフェラーゼの値を正規化した。実験を4回繰り返し、実験あたり各処理の3回の反復物を得た。統計ソフトウェアR[24]を用いる一元配置分散分析を用いて、統計分析を実施した。
【0210】
結果
良性および悪性TURP組織サンプルの遺伝子発現の比較
本発明者らは、異種組織から抽出されたRNAを用いて、外科的に切除された良性および悪性前立腺TURP組織における全体的な遺伝子発現プロフィールを比較した(本発明者らが介入試験において使用することを意図したものなど)。教師なしクラスタリングは、良性および悪性サンプルを一義的に識別した。2群間で有意に異なる遺伝子の経路分析を、GenMappソフトウェアを用いて行い、発癌の間に撹乱されると報告されることが多い経路を同定した(表2aおよび3a)。データ分析の本発明者らの方法をさらに立証するために、および異種組織全体から得たマイクロアレイデータがLCD上皮細胞から生成されたデータと比較可能であるかどうかを決定するために、本発明者らは、良性、限局性および転移性前立腺癌に由来するLCD上皮細胞(GEO受託番号:GDS1439)の独立データセットを分析した。本発明者らは、線形判別分析(LDA)のための訓練セットとして本発明者らの良性および悪性サンプルならびに試験セットとして独立データを使用し、LDAモデルが良性、限局性および転移性LCD上皮細胞サンプルを正確に識別することを見出した(図5)。かくして、この予備試験は、アレイデータの統計分析に対する本発明者らの手法のための検証を提供する。
【0211】
血漿PSAレベルの変動
介入前のPSAレベルは、HGPINと診断された同じ年齢範囲の男性について以前に報告されたもの[25]と同様の範囲にあった。介入試験のいずれかの治療群内で、6ヶ月または12ヶ月後に、GSTM1遺伝子型との有意な関連はなく、PSAレベルの一貫した変化もなかった(表1)。
【0212】
GSTM1陽性個体とGSTM1ヌル個体との間の全体的な遺伝子発現の差異
本発明者らは最初に、切除されたTURP組織サンプルを遺伝子型決定し、良性および悪性サンプル内のGSTM1陽性遺伝子型とGSTM1ヌル遺伝子型との遺伝子発現プロフィールを比較した。本発明者らは、遺伝子型間にほとんど差異はなく、同様に高い中央偽発見率を有することを見出した(図6a、表3b)。同様に、本発明者らは、HGPINと以前に診断されたGSTM1陽性男性およびGSTM1ヌル男性に由来する前立腺の針生検から得られた遺伝子発現プロフィールを比較し、ほとんど差異がないことを見出した。
【0213】
本発明者らは次いで、食事介入試験に募集された21人の男性の針生検組織中のGSTM1遺伝子型間の遺伝子発現プロフィールを比較した。この試験内の男性のうち8人には1週間あたり400 gの蒸した冷凍エンドウ豆を摂取するように求め、他の13人には1週間あたり400 gの蒸した冷凍ブロッコリーを摂取するが、さもなければ通常の食事を摂取するように要求した。食事を、介入前および6ヶ月後に7日間の食事日記を用いて評価した。ブロッコリーとエンドウ豆の摂取は別として、食事成分において有意な差異は認められなかった(表4)。本発明者らは、6ヶ月間ブロッコリーの食事を摂取したGSTM1陽性男性とGSTM1ヌル男性との間には前立腺遺伝子発現の多くの差異を見出したが、エンドウ豆の食事を摂取したGSTM1陽性男性およびGSTM1ヌル男性との間では、たとえあったとしても、遺伝子発現の差異はわずかであることを見出した(図6a、表3b)。ブロッコリーに富む食事後のGSTM1遺伝子型間の遺伝子発現の差異の潜在的な結果を調査するために、本発明者らは、GenMappを介してこれらのデータを分析した。3つの経路、EGF受容体、脂質生成およびTGFβ受容体を、それらの遺伝子が、それらが偶然生じるよりも高い頻度で生じるものと同定した(表2b)。
【0214】
食事介入の前後での遺伝子発現の変化
本発明者らは、対応のあるt検定を用いて、介入のそれぞれの治療群内の個体から得た生検サンプル中で、0〜6ヶ月および0〜12ヶ月で発現が変化した遺伝子を同定し、経時的な発現の変化を定量した。ブロッコリー治療群内で、本発明者らはGSTM1陽性個体に対して分析を制限した。本発明者らは、6ヶ月後および12ヶ月後の両方において、エンドウ豆に富む治療群よりもブロッコリーに富む治療群内でより多くの発現の変化があることを見出した(図6b、表3c)。0〜12ヶ月で発現が変化した遺伝子に関する経路分析により、エンドウ豆に富む治療群においてはアンドロゲン受容体経路にのみ変化が同定されたが、ブロッコリーに富む治療群においては、インスリンシグナリング、TGFβおよびEGF受容体経路などのいくつかの他のシグナリング経路と共に、アンドロゲン受容体経路が同定された(図2c)。ブロッコリー治療群において0〜6ヶ月で発現が変化した遺伝子に関する分析により、TGFβ受容体経路(P=0.001に調整)、インスリンシグナリング(P=0.035に調整)およびEGF受容体シグナリング(P=0.068に調整)における変化も同定された。
【0215】
かくして、TGFβおよびEGFシグナリングの調節に対するブロッコリー摂取の効果に関する証拠が、2つの独立した分析:第1に、6ヶ月間、ブロッコリーに富む食事を摂取したGSTM1陽性およびヌル個体の遺伝子発現プロフィールの比較、ならびに、第2に、ブロッコリーに富む食事を摂取したGSTM1陽性個体から0および12ヶ月で得られた生検に由来する遺伝子発現プロフィールの対分析において得られた。これらの分析はいかなるアレイデータセットも共有しないことに留意することが重要である。
【0216】
TGFβ1、インスリンおよびEGFペプチドと、ブロッコリーのイソチオシアネートとの化学的相互作用
ブロッコリーの摂取がいくつかの細胞シグナリング経路を調節することが証明されたので、本発明者らはその説明を追求した。0.5〜24時間、37℃で、PBS pH 7.4中、イソチオシアネートSFまたはIBと共にインスリン、EGFおよびTGFβ1ペプチドをインキュベートすることにより、対応するペプチドとITCの共有結合したコンジュゲートの形成の一貫した証拠が得られた。高分子量タンパク質を枯渇させたヒト血漿中で同じインキュベーションを行うことにより、生理学的関連性についてこれをさらに調査した。LC-MS/MS分析により、SFまたはIBを前記ペプチドと共にインキュベートした場合、1個以上のさらなるLC-MSピークの出現が示された。例えば、図7では、抽出イオンクロマトグラム(m/z 1183.9、インスリン-SF MH55+に対応)は、対照インキュベーションと比較して、2つのインスリン-SFコンジュゲートの出現を示している。これらのピークのMS2分析(図8)により、インスリンの2個のN末端アミノ酸へのSFの付加Gly-SFおよびPhe-SFに対応するm/z 235およびm/z 325での2個の診断断片イオンの存在が確認された。前記インキュベーションからGly-IB (m/z 221)およびPhe-IB (m/z 311)を同定するために同様の結果が得られた(データは示さない)。EGFのN末端アスパラギン残基(m/z 309)へのSFの付加と対応するヒト血漿中でのSFとのEGFコンジュゲートの形成に関する比較可能な証拠が得られた。
【0217】
TGFβ1に対する改変のさらなる情報を提供するために、本発明者らは、相補的な手法を採用した。1μgアリコートのタンパク質を、DMSOまたは1.2μモルのSFと共に、37℃で30分間インキュベートし、SDS-PAGE電気泳動により分離した。バンドを切り出し、トリプシンで消化した後、LC-MS/MSにより分析した。TGFβ1は活性なダイマーに対応する25 kDaのバンド中でしっかりと同定された。DMSO(対照)およびSF処理されたサンプルの両方において、親イオンm/z 768.5からN末端ペプチドALDTNYCFSSTEKが同定された(図9)。前駆体イオンm/z 877.2はSF処理されたサンプル中でのみ観察された。両前駆体イオンのMS/MS分析により、両方(図10)の前駆体イオンに共通する強い一連の断片ピークが示された。これらの断片化パターンは、ペプチドALDTNYCFSSTEK(カルバミドメチルシステイン+57)については非改変yイオンシリーズおよびSFで処理されたサンプル中では217.4±0.8 Daシフトしたbイオンシリーズと一致していた。これらの結果は、SFによるTGFβ1に対するN末端改変を強く支持している。SFの付加は、上記のように、無傷のTGFβ1のLC-MS分析を用いて観察されたように177の質量付加をもたらすであろう。177とは対照的に、217の付加は、還元ジスルフィド結合をアルキル化するために反応混合物に添加された、チオウレアとヨードアセトアミドとのその後の反応に起因するものであり、カルバミミドイルスルファニルアセトアミド異性体の混合物をもたらし、それは環化およびNH3の喪失を受け、対応するイミノチアゾリジノンが得られる可能性が非常に高い。
【0218】
スルホラファンとの予備インキュベーション後のTGFβ1シグナリングの増強
イソチオシアネートにより生成されるタンパク質のチオウレア誘導体は物理化学的特性および酵素的特性を改変することが示されたため[26, 27]、本発明者らは、細胞外シグナリングタンパク質のSF改変が機能的結果を有するかどうかを評価することを追求した。本発明者らは、細胞の増殖および行動の制御を通じた組織恒常性の維持におけるその深い役割に起因してTGFβ1シグナリングに焦点を当てた[28, 29]。ルシフェラーゼ活性をSmadタンパク質の活性化の際に測定することができるCAGA12-lucプラスミドで安定にトランスフェクトされたNIH3T3細胞中でTGFβ1に誘導されるSmad媒介性転写を定量した[30]。TGFβ1への細胞の曝露は、予想通りルシフェラーゼ活性を誘導した。細胞を、生理学的に好適な濃度のSF(2μM)と共に30分間予備インキュベートした後、透析したTGFβ1に曝露して、SF血漿薬物動態を刺激した場合[14]、TGFβ1のみへの曝露と比較してSmad媒介性転写が増加した(図11)。残留SF(34 nM)への細胞の曝露は、転写の増強をもたらさなかったが、これは、SFがSmad活性化を間接的に誘導することを示唆しており、SFがリガンド自体に結合するという本発明者らの以前の観察と一致している。また、SFは受容体の細胞外ドメインと相互作用して、下流のシグナリングを変化させることができると考えられる。
【0219】
ITCとEGFとのインキュベーション
ITCとシグナリングペプチドとの相互作用の機能的結果のさらなる例を図15に示し、これはITCとEGFとのインキュベーションが過形成前立腺組織のモデルであるBPH細胞中でEGFシグナリングを抑制することができることを示している。EGFはEGF受容体に結合し、リン酸化し、下流のシグナリング経路を活性化する。提示されるデータは、ペプチド改変の原因となることが知られる条件下でのEGFと4-メチルスルフィニルブチルITC (SF)との予備インキュベーションが、EGFのみと比較してリン酸化された受容体の量を減少させることを示している。これは、抗炎症的結果と共に、EGFシグナリング経路の阻害をもたらすと期待される。
【0220】
ITCとプロシアニジンとの組合せ
本発明者らはまず、ルッコラを凍結乾燥し、PBS中にITCを抽出した(5 mlのPBS中に200 mg)。HPLCにより定量したところ、これが約100μMのスルホラファン、200μMのイベリンおよび未知量の他のITCを含有することが示された。
【0221】
この実験は、10個のサンプルの処理からなり、全て生物学的トリプリケートで行った。HUVEC細胞を、処理2〜10で10 ng/mlのTNFαを添加する前に45分間、以下の処理で処理した。6時間後、培地およびタンパク質溶解物を回収し、-20℃で保存した。次いで、培地中でIL-6 Quantikine ELISA (R & D Systems)を行い、細胞タンパク質含量についてBCA定量(Sigma)を行った。
【0222】
処理は以下の通りである(括弧内の名称は図16のグラフ中のサンプル名である):
1)対照(C)
2)対照(TNF)
3)2μg/mlのプロシアニジンGE (GE)
4)1μMのロケット抽出物(1RkE)
5)5μMのロケット抽出物(5RkE)
6)10μMのロケット抽出物(10RkE)
7)25μMのロケット抽出物(25RkE)
8)2μg/mlのプロシアニジンGE + 1μMのロケット抽出物(GE + 1RkE)
9)2μg/mlのプロシアニジンGE + 5μMのロケット抽出物(GE + 5RkE)
10)2μg/mlのプロシアニジンGE + 10μMのロケット抽出物(GE + 10RkE)。
【0223】
この実験の結果を図16および17に示す。
【0224】
高レベルの3-メチルチオプロピル(3-MTP)グルコシノレートを含む栽培品種の作製
高レベルの3-メチルチオプロピルグルコシノレートを含む植物(例えば、ブロッコリーまたは別の種類のブラシカ・オレラセア(B. oleracea))の栽培品種を作製するためには、ブラシカ・オレラセアのGSL-ELONG座のヌル対立遺伝子と、ブラシカ・オレラセアのGSL-ALK座のヌル対立遺伝子とを組合わせる必要があろう[52〜54]。好適な対立遺伝子の可能な起源は、ブラシカ・ドレパネンシス(B. drepanensis)、ブラシカ・マクロカルパ(B. macrocarpa)、ブラシカ・ルペストリス(B. rupestris)またはブラシカ・ビローサ(B. villosa)であり、それらは全て、n=9のブラシカ・オレラセア種複合体のメンバーである。これらの対立遺伝子の好適な分子マーカーを用いて、商業的農学的遺伝的背景へのこれらの対立遺伝子の遺伝子移入速度を増強することができる。
【0225】
考察
本発明者らの知る限り、これは12ヶ月の介入の前後で標的組織内の全体的な遺伝子発現プロフィールを分析し、遺伝子型により遺伝子発現プロフィールを階層化する初めての食事介入試験である。本発明者らは12ヶ月間の介入期間にわたって血漿PSAレベルの一貫した変化を観察していないが、本発明者らは遺伝子発現における広範囲の変化を定量することができた。本発明者らは、ブロッコリーの摂取が癌の危険性を低下させることができるという観察データを説明するための動物および細胞モデルから誘導された潜在的な機構を支持する証拠はほとんど発見していないが、発癌および炎症と関連するいくつかのシグナリング経路の撹乱に関するかなりの証拠を発見した(表2bおよびc)。これらの経路の撹乱の正味の効果は、細胞増殖の危険性を低下させ、細胞および組織の恒常性を維持することができる可能性がある。ブロッコリーの介入は、他の部位での発癌[28, 36, 37]、および心筋梗塞と関連する炎症[38]に加えて、それぞれ、前立腺癌の発癌と関連している[31〜35]、TGFβ1、EGFおよびインスリンシグナリングの撹乱と関連していることはかなり興味深い。ブロッコリーの摂取はまた、mRNAプロセッシングの変化とも関連していたことは注目に値する。
【0226】
ブロッコリーに由来する主要な生物活性産物は、スルホラファンおよびイベリンなどのイソチオシアネートであると考えられる。これらのものは、細胞モデルにおいて複数の生物学的活性を有し、抗発癌活性と一致することが示されている[15]。しかしながら、これらの試験は主として、ブロッコリー摂取後に血漿中に一過的に生じ、例えば、細胞内酸化還元状態の撹乱、グルタチオンの枯渇およびKeap-Nfr2複合体の撹乱によってITCの細胞内活性により媒介されるよりもはるかに過剰な濃度のSFおよびIBに細胞を曝露することを含む。細胞に進入するITCはいずれも、比較的高い濃度で存在するグルタチオンとの結合を介してすぐに不活化されるであろうため、本発明者らは、これらのプロセスがin vivoで起こるかどうかに疑問を持っている。かくして、本発明者らは、ITCの生物学的活性が、低いグルタチオン濃度を有する、血漿の細胞外環境内のシグナリングペプチドとの化学的相互作用により媒介され得るかどうかを探索した。本発明者らは、ITCが、N末端残基との共有結合を介して血漿中のシグナリングタンパク質とチオウレアを容易に形成することを証明した。ITCは、他の血漿タンパク質と化学的に反応すると考えられ、ITCによる血漿タンパク質改変の全体的な分析を正当化する。また、システインおよびリジン残基を介する共有結合[39, 40]などの、ITCによる血漿タンパク質の他の型の化学的改変が生じる可能性もある。
【0227】
以前の試験により、イソチオシアネート由来チオウレアが親タンパク質の物理化学的および酵素的特性を改変することが示されている[26, 27]。かくして、前立腺におけるシグナリング経路の撹乱は、細胞外環境中で生じるタンパク質改変により媒介される可能性がある。本発明者らは、TGFβ1と生理学的に好適な濃度のSFとを予備インキュベーション (2μMで30分間)し、次いで、4時間透析して、SF薬物動態を刺激することにより、Smad媒介性転写が増強されることを証明することにより、この仮説に関するさらなる証拠を提供する。TGFβ1/Smad媒介性転写は非形質転換細胞中で細胞増殖を阻害するため[31, 41]、SFによるSmad媒介性形質転換の増強は、心筋梗塞の危険性の低下[10, 38]に加えて、ブロッコリーの抗発癌活性と一致するであろう。特定の環境においては、TGFβシグナリングの増強は、既に開始した細胞内での腫瘍進行と関連しているが、これが媒介される正確な経路は完全には解明されていない[42]。それは、TGFβ1のみとは対照的に、いくつかの経路における変化の正味の効果である可能性があり、ブロッコリー/アブラナ科の摂取を介する癌および心筋梗塞の両方の観察された減少の根拠となり得る。
【0228】
以前の試験により、イソチオシアネートはEGFシグナリングを阻害し得ることが示されたが、それには機構的説明がない[43]。現在の試験で、本発明者らは、SFがEGFリガンドに結合し、これは本発明者らの結果および以前に報告された結果[43]の根拠となり得ることを示している。さらに、ITCによるシグナリングタンパク質の化学的改変を、TRPA1受容体について以前に示されたように[39, 40]、受容体タンパク質の改変により補足することができる。
【0229】
シグナリング経路の撹乱を、GSTM1遺伝子型によりさらに決定する。遺伝子発現上での食事とGSTM1との相互作用は、食事評価を欠き、GSTM1ヌル遺伝子型を、前立腺癌の危険性の増加と関連付けたか、または関連付けていない対照試験の事例に由来する矛盾する結果を一部説明することができる[44〜47]。GSTM1酵素活性は、SF-グルタチオンコンジュゲートの形成と切断の両方を触媒する[48]。本発明者らは、腸細胞から血漿への輸送後、GSTM1活性(肝細胞代謝回転[49]または末梢リンパ球からの漏出[50]から生じる)が、血漿の低グルタチオン環境内のSF-グルタチオンコンジュゲートの切断を触媒し[51]、上記で考察されたように、タンパク質改変にとって利用可能であり、メルカツプル酸代謝を介しては排出されない遊離SFの程度を決定することを提言する(図4)。かくして、ブロッコリーの通常の食事摂取から予想されるように、低レベルのSFは細胞シグナリングのかすかな変化をもたらし、時間と共に、遺伝子発現の大規模な変化をもたらす。このように、1週間あたり1部分のブロッコリーの摂取は、1部分がGSTM1陽性であるか、またはさらに1部分がGSTM1ヌルである場合[14]、癌の危険性の低下に寄与し得る。
【0230】
この試験が遺伝子発現に対するブロッコリー摂取の効果を提供するという洞察に加えて、本発明者らは、本発明者らの試験がより広い暗示を有すると考えている。第1に、本発明者らは、日常的な前立腺針生検を、組織学的評価に加えて、全体的な遺伝子発現分析に用いることができ、また、時間に応じた発現の変化をモニターすることができることを証明する。試験の両方の食事治療群内の男性が、アンドロゲン受容体経路の有意な変化を有していたことは注目に値する。アンドロゲンシグナリングにおけるこれらの変化は、加齢と関係し、食事とは無関係であるか、またはそれらはブロッコリーに富む食事とエンドウ豆に富む食事の両方に共通の成分により誘導されたものである可能性がある。本発明者らの知る限り、HGPINを有するこの年齢の男性におけるアンドロゲンシグナリング上での変化の速度に関するデータは存在しない。この観察は、さらなる試験が正当化されることを示唆している。連続的生検を介してHGPINまたは限局性前立腺癌と診断された男性の遺伝子発現の変化の速度に関する分析は、発癌および侵襲性の強い癌への進行の両方の可能性を測定するための信頼できる生物マーカーを提供し、ならびに針生検の組織学的試験および血漿PSAレベルの測定を補足することができる。第2に、遺伝子型による全体的な遺伝子発現プロフィールの階層化は有益であり、この手法は前立腺または他の組織における遺伝子発現のパターンを詳細に分析するために他の遺伝子にも拡張することができる。最後に、ポリフェノール誘導体などの他の食事性植物化学物質も、イソチオシアネートの提唱された作用機構と同様の様式で、血漿中のシグナリングペプチドと化学的に相互作用することができると考えられる。
【0231】
結論として、本発明者らは、本発明者らの試験が疫学的試験により示唆されるように、ブロッコリー摂取を介する前立腺癌の危険性の低下の機構的基礎を提供したと考えている。
【0232】
ボランティアはブロッコリーに富む食事またはエンドウ豆に富む食事に無作為に割り当てられた。6ヶ月後、エンドウ豆に富む食事上ではグルタチオンS-トランスフェラーゼμ1(GSTM1)陽性個体とヌル個体との間で遺伝子発現の差異はなかったが、ブロッコリーに富む食事上ではGSTM1遺伝子型間で有意な差異があり、これはトランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)および表皮増殖因子(EGF)シグナリング経路と関連する。介入前後に得られた生検の比較により、遺伝子発現のより大きい変化は、エンドウ豆に富む食事上の個体よりもブロッコリーに富む食事上の個体において生じることが示された。食事に関係なく、アンドロゲンシグナリングに変化があったが、ブロッコリーに富む食事上の男性は、mRNAプロセッシング、ならびにTGFβ1、EGFおよびインスリンのシグナリングに対するさらなる変化を有していた。本発明者らはまた、スルホラファン(ブロッコリー中に蓄積する4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレートから誘導されるイソチオシアネート)がTGFβ1、EGFおよびインスリンペプチドと化学的に相互作用して、チオウレアを形成し、TGFβ1/Smad媒介性転写を増強することの証拠も提供する。
【0233】
結論
本明細書に提示される知見は、ブロッコリーの摂取がGSTM1遺伝子型と相互作用して、前立腺における炎症および発癌に関連するシグナリング経路に対して複雑な変化をもたらすことを示唆している。本発明者らは、これらの変化が、イソチオシアネートと血漿中のシグナリングペプチドとの化学的相互作用により媒介されることを提唱する。この試験は、初めて、アブラナ科の野菜に富む食事が前立腺癌および他の慢性疾患の危険性を低下させ得るという観察試験を支援するためのヒトにおいて得られた実験的証拠を提供するものである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0234】
実施例3
増殖因子は細胞表面上の受容体と相互作用して、遺伝子およびタンパク質の調節に影響し、かくして、細胞シグナリング経路を介して細胞内での細胞増殖に影響する。1つの重要な細胞シグナリング経路は、PI3K/pAKTシグナリングとして知られる。この経路では、インスリン、EGFおよびTGFβなどの増殖因子は細胞表面受容体と相互作用し、AKTとして知られるタンパク質のリン酸化をもたらす。この経路の活性化は、代謝、タンパク質合成、DNA合成および細胞増殖を刺激し、アポトーシスを阻害することにより、細胞の生存において不可欠な役割を果たす。活性化の程度は通常、AKTのリン酸化を弱めるPTENタンパク質により制限される。多くの癌においては、PTENは迅速な細胞増殖および腫瘍形成を誘導するAKTの構成的活性化が存在するように突然変異している。pAKTシグナリングの阻害は、製薬業界の主要な標的である。PTENの喪失は最大60%の転移性前立腺癌において起こる。
【0235】
pAKTと腫瘍生成の間には関連がある。
【0236】
ウェスタンブロッティングにより前立腺癌細胞系PC-3中でpAKTの活性化を観察することができる(図19を参照)。これは部分的には、PC-3細胞が、AKTのリン酸化を弱める機能的PTEN遺伝子の欠如に起因して、通常の培養培地の一部であるウシ胎仔血清(FCS)中に存在する増殖因子に対して非常に感受性が高いためである。対照的に、機能的PTEN遺伝子を有する非癌細胞系BPH-1中では、AKTのリン酸化はインスリンまたはEGFなどのさらなる増殖因子への曝露後にのみ起こる(図18を参照)。
【0237】
PC-3細胞をSFと共に1時間インキュベートすることにより、特に、2μMの用量レベルで、pAKT発現が低下する(図19)。PC3細胞 + SF + FCS(ウシ胎仔血清)に関するデータは、対照(SFなし)中でのpAKTの構成的発現を示す。2μMのSFの添加はpAKTを抑制するが、10μMでの可変的応答が存在する。本発明者らは、0.5μMでの抑制も見出した(データは示さない)。
【0238】
pAKTの抑制は、かなりの破壊が存在する場合、高濃度では失われる。
【0239】
FCSを含まない培養培地中でPC-3細胞を増殖させる場合、pAKT発現は、低下したレベルではあるが、依然として存在する(図20を参照)が、SFの添加によるさらなる阻害はない。これは、SFがFCS中の増殖因子と相互作用して、細胞内での作用とは反対に、AKTのさらなるリン酸化を阻害し得ることを示唆している。
【0240】
従って、イソチオシアネートと、いくつかの重要な増殖因子とのコンジュゲーションは、特に、細胞増殖および腫瘍増殖と関連するpAKT媒介性シグナリングの過剰活性化を誘導するPTEN遺伝子中に突然変異が存在する組織における抗発癌活性と関連し得る増殖因子の阻害を誘導する。
【0241】
ウェスタンブロッティング
BPH-1またはPC-3細胞を、それらが80%の集密度に達するまで10 cmの細胞培養皿または6穴培養プレート中で培養し、TEバッファー(10 mM Tris/HCl、1 mM EDTA、pH8)を用いて除去(lifter)した。SFを用いて24時間処理した後、細胞を冷PBSで3回洗浄し、氷上で2分間、RIPAバッファーで処理した後、4℃で10分間、13000 gで遠心分離し、ウェスタンブロッティングのために上清を回収した。タンパク質を電気泳動によりNuPage 10%ポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に移した。1:1000の希釈率でCell Signalling(著作権)から得られた一次抗体:Phospho-Akt (Ser473)ウサギmAb(#4060L)およびAKT(pan)ウサギmAb(#4685)を用いて膜を精査した。
【0242】
GAPDHを、全てのブロットについてローディング対照として用いた。タンパク質をSuperSignal West Chemikuminescenceキットを用いて可視化した。
【0243】
図21は、ウェスタンブロットの結果を示す。A:pAKT発現を示すPC-3細胞の免疫組織化学染色(赤く着色)。B:pAKT発現の阻害を示す、2μMのSF中で1時間インキュベートした後のPC-3細胞の免疫組織化学染色。
【0244】
上記の明細書に記載の全ての刊行物は、参照により本明細書に組入れられるものとする。本発明の記載の方法および系に関する様々な改変および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態と関連して説明してきたが、特許請求の範囲に記載の本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野の当業者には明らかである本発明を実施するための記載された様式の様々な改変は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0245】
1.参考文献
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心血管疾患の治療もしくは予防における使用のため、または心臓および/もしくは心血管の健康の促進における使用のための、高レベルのグルコシノレートおよび/もしくは少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜を含む組成物。
【請求項2】
高レベルのグルコシノレートおよび/もしくは少なくとも1種のその誘導体を有する前記アブラナ科の野菜が、所望の生理学的効果を達成するのに十分な用量のセット食事計画で提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体が、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート、4-メチルチオブチルグルコシノレート、3-メチルチオプロピルグルコシノレート、スルホラファン、エルシン、サチビン、イベリン、β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC)、3-メチルチオプロピルイソチオシアネートのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アブラナ科の野菜が、約10〜約100μモル/g乾燥重量の量のグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記心血管疾患が、狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症または心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患、脳卒中から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
1種以上の心血管危険因子の治療における使用のための請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記心血管危険因子が以下の高血圧症または高コレステロール血症の1つ以上である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
LDLコレステロールのレベル、HDLコレステロールのレベル、総コレステロールのレベル、ビタミンDのレベル、hsCRPのレベル、IL-6のレベル、血圧、動脈の硬さ、AIx測定値および/またはPWV測定値のうちの1つ以上の改善または制御における使用のための請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
血清コレステロールレベルの改善または制御における使用のための請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
総コレステロール(TC)および/またはLDL-コレステロールのレベルを、前記組成物を投与していない被験体中のレベルと比較して低下させるか、またはその増加を防止する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
被験体に、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有する有効量のアブラナ科の野菜を投与することを含む、心血管疾患の治療もしくは予防または心臓および/もしくは心血管の健康の促進のための方法。
【請求項12】
前記被験体が心血管疾患の危険性が高いと診断されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有する前記アブラナ科の野菜を、所望の生理学的効果を達成するのに十分な用量のセット食事計画で提供する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体が、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート、4-メチルチオブチルグルコシノレート、3-メチルチオプロピルグルコシノレート、スルホラファン、エルシン、サチビン、イベリン、β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC)、3-メチルチオプロピルイソチオシアネートのうちの少なくとも1つから選択される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アブラナ科の野菜が、約10〜約100μモル/g乾燥重量の量のグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、以下のもの:狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症または心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患、脳卒中のうちの1つ以上の治療または予防のためのものである、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、1つ以上の心血管危険因子の治療のためのものである、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
心血管危険因子が、以下の高血圧症または高コレステロール血症の1つ以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
被験体中のLDLコレステロールのレベル、HDLコレステロールのレベル、総コレステロールのレベル、ビタミンDのレベル、hsCRPのレベル、IL-6のレベル、血圧、動脈の硬さ、AIx測定値および/またはPWV測定値のうちの1つ以上を改善または制御するための、請求項11〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
血清コレステロールのレベルを改善または制御するための請求項19に記載の方法。
【請求項21】
総コレステロール(TC)およびLDL-コレステロールのレベルを、前記アブラナ科の野菜で治療されていない被験体中のレベルと比較して低下させるか、またはその増加を防止する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
心血管疾患の治療もしくは予防または心臓および/もしくは心血管の健康の促進のための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜の使用。
【請求項23】
高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有する前記アブラナ科の野菜を、所望の生理学的効果を達成するのに十分な用量のセット食事計画で提供する、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体が、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート、4-メチルチオブチルグルコシノレート、3-メチルチオプロピルグルコシノレート、スルホラファン、エルシン、サチビン、イベリン、β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC)、3-メチルチオプロピルイソチオシアネートのうちの少なくとも1つから選択される、請求項22または23に記載の使用。
【請求項25】
前記アブラナ科の野菜が約10〜約100μモル/g乾燥重量の量のグルコシノレートを含む、請求項22〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
心血管疾患が狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症または心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患、脳卒中から選択される、請求項22〜25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
1つ以上の心血管危険因子を治療する、請求項22〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記心血管危険因子が以下の高血圧症または高コレステロール血症のうちの1つ以上である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
LDLコレステロールのレベル、HDLコレステロールのレベル、総コレステロールのレベル、ビタミンDのレベル、hsCRPのレベル、IL-6のレベル、血圧、動脈の硬さ、AIx測定値および/またはPWV測定値のうちの1つ以上を改善または制御するための、請求項22〜28のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
血清コレステロールのレベルを改善または制御するための、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
総コレステロール(TC)およびLDL-コレステロールのレベルを、前記医薬を投与されていない被験体中のレベルと比較して低下させるか、またはその増加を防止する、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
哺乳動物の血清コレステロールのレベルを改善もしくは制御するか、または高コレステロール血症を治療もしくは予防するか、または高血圧症を治療もしくは予防するための、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜を含む組成物。
【請求項33】
総コレステロール(TC)およびLDL-コレステロールのレベルを、低下させるか、またはその増加を防止する、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
哺乳動物の血清コレステロールのレベルを改善もしくは制御するか、または高コレステロール血症を治療もしくは予防するか、または高血圧症を治療もしくは予防するための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜を含む組成物の使用。
【請求項35】
総コレステロール(TC)およびLDL-コレステロールのレベルを、低下させるか、またはその増加を防止する、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜の有効量を摂取することを含む、哺乳動物の血清コレステロールのレベルを改善もしくは制御するか、または高コレステロール血症を治療もしくは予防するか、または高血圧症を治療もしくは予防するための方法。
【請求項37】
1種以上の細胞外シグナリングタンパク質を共有改変する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
総コレステロール(TC)およびLDL-コレステロールのレベルを、低下させるか、またはその増加を防止する、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
アブラナ科の野菜が、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するブロッコリーである、請求項1〜10もしくは請求項32〜33のいずれか1項に記載の組成物、請求項11〜21もしくは請求項36〜38のいずれか1項に記載の方法または請求項22〜31もしくは34〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
前記ブロッコリーが、同様の条件下で成長させた標準的なブロッコリー中に認められるレベルの2〜3倍のグルコシノレートのレベルを有する、請求項39に記載の組成物、方法、使用。
【請求項41】
高グルコシノレートのアブラナ科の野菜が、同様の条件下で成長させた標準的なアブラナ科の野菜中に認められるレベルの2〜3倍のグルコシノレートのレベルを有する、請求項1〜10もしくは請求項32〜33のいずれか1項に記載の組成物、請求項11〜21もしくは請求項36〜38のいずれか1項に記載の方法または請求項22〜31もしくは34〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
図面および実施例を参照することにより本明細書で定義される組成物、使用および方法。
【請求項1】
心血管疾患の治療もしくは予防における使用のため、または心臓および/もしくは心血管の健康の促進における使用のための、高レベルのグルコシノレートおよび/もしくは少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜を含む組成物。
【請求項2】
高レベルのグルコシノレートおよび/もしくは少なくとも1種のその誘導体を有する前記アブラナ科の野菜が、所望の生理学的効果を達成するのに十分な用量のセット食事計画で提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体が、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート、4-メチルチオブチルグルコシノレート、3-メチルチオプロピルグルコシノレート、スルホラファン、エルシン、サチビン、イベリン、β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC)、3-メチルチオプロピルイソチオシアネートのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アブラナ科の野菜が、約10〜約100μモル/g乾燥重量の量のグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記心血管疾患が、狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症または心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患、脳卒中から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
1種以上の心血管危険因子の治療における使用のための請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記心血管危険因子が以下の高血圧症または高コレステロール血症の1つ以上である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
LDLコレステロールのレベル、HDLコレステロールのレベル、総コレステロールのレベル、ビタミンDのレベル、hsCRPのレベル、IL-6のレベル、血圧、動脈の硬さ、AIx測定値および/またはPWV測定値のうちの1つ以上の改善または制御における使用のための請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
血清コレステロールレベルの改善または制御における使用のための請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
総コレステロール(TC)および/またはLDL-コレステロールのレベルを、前記組成物を投与していない被験体中のレベルと比較して低下させるか、またはその増加を防止する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
被験体に、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有する有効量のアブラナ科の野菜を投与することを含む、心血管疾患の治療もしくは予防または心臓および/もしくは心血管の健康の促進のための方法。
【請求項12】
前記被験体が心血管疾患の危険性が高いと診断されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有する前記アブラナ科の野菜を、所望の生理学的効果を達成するのに十分な用量のセット食事計画で提供する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体が、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート、4-メチルチオブチルグルコシノレート、3-メチルチオプロピルグルコシノレート、スルホラファン、エルシン、サチビン、イベリン、β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC)、3-メチルチオプロピルイソチオシアネートのうちの少なくとも1つから選択される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アブラナ科の野菜が、約10〜約100μモル/g乾燥重量の量のグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、以下のもの:狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症または心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患、脳卒中のうちの1つ以上の治療または予防のためのものである、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、1つ以上の心血管危険因子の治療のためのものである、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
心血管危険因子が、以下の高血圧症または高コレステロール血症の1つ以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
被験体中のLDLコレステロールのレベル、HDLコレステロールのレベル、総コレステロールのレベル、ビタミンDのレベル、hsCRPのレベル、IL-6のレベル、血圧、動脈の硬さ、AIx測定値および/またはPWV測定値のうちの1つ以上を改善または制御するための、請求項11〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
血清コレステロールのレベルを改善または制御するための請求項19に記載の方法。
【請求項21】
総コレステロール(TC)およびLDL-コレステロールのレベルを、前記アブラナ科の野菜で治療されていない被験体中のレベルと比較して低下させるか、またはその増加を防止する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
心血管疾患の治療もしくは予防または心臓および/もしくは心血管の健康の促進のための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜の使用。
【請求項23】
高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有する前記アブラナ科の野菜を、所望の生理学的効果を達成するのに十分な用量のセット食事計画で提供する、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記グルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体が、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレート、3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート、4-メチルチオブチルグルコシノレート、3-メチルチオプロピルグルコシノレート、スルホラファン、エルシン、サチビン、イベリン、β-フェニルエチルイソチオシアネート(PE-ITC)、3-メチルチオプロピルイソチオシアネートのうちの少なくとも1つから選択される、請求項22または23に記載の使用。
【請求項25】
前記アブラナ科の野菜が約10〜約100μモル/g乾燥重量の量のグルコシノレートを含む、請求項22〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
心血管疾患が狭心症、アテローム性動脈硬化症、心筋症または心臓の炎症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患、脳卒中から選択される、請求項22〜25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
1つ以上の心血管危険因子を治療する、請求項22〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記心血管危険因子が以下の高血圧症または高コレステロール血症のうちの1つ以上である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
LDLコレステロールのレベル、HDLコレステロールのレベル、総コレステロールのレベル、ビタミンDのレベル、hsCRPのレベル、IL-6のレベル、血圧、動脈の硬さ、AIx測定値および/またはPWV測定値のうちの1つ以上を改善または制御するための、請求項22〜28のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
血清コレステロールのレベルを改善または制御するための、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
総コレステロール(TC)およびLDL-コレステロールのレベルを、前記医薬を投与されていない被験体中のレベルと比較して低下させるか、またはその増加を防止する、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
哺乳動物の血清コレステロールのレベルを改善もしくは制御するか、または高コレステロール血症を治療もしくは予防するか、または高血圧症を治療もしくは予防するための、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜を含む組成物。
【請求項33】
総コレステロール(TC)およびLDL-コレステロールのレベルを、低下させるか、またはその増加を防止する、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
哺乳動物の血清コレステロールのレベルを改善もしくは制御するか、または高コレステロール血症を治療もしくは予防するか、または高血圧症を治療もしくは予防するための医薬の製造における、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜を含む組成物の使用。
【請求項35】
総コレステロール(TC)およびLDL-コレステロールのレベルを、低下させるか、またはその増加を防止する、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するアブラナ科の野菜の有効量を摂取することを含む、哺乳動物の血清コレステロールのレベルを改善もしくは制御するか、または高コレステロール血症を治療もしくは予防するか、または高血圧症を治療もしくは予防するための方法。
【請求項37】
1種以上の細胞外シグナリングタンパク質を共有改変する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
総コレステロール(TC)およびLDL-コレステロールのレベルを、低下させるか、またはその増加を防止する、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
アブラナ科の野菜が、高レベルのグルコシノレートおよび/または少なくとも1種のその誘導体を有するブロッコリーである、請求項1〜10もしくは請求項32〜33のいずれか1項に記載の組成物、請求項11〜21もしくは請求項36〜38のいずれか1項に記載の方法または請求項22〜31もしくは34〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
前記ブロッコリーが、同様の条件下で成長させた標準的なブロッコリー中に認められるレベルの2〜3倍のグルコシノレートのレベルを有する、請求項39に記載の組成物、方法、使用。
【請求項41】
高グルコシノレートのアブラナ科の野菜が、同様の条件下で成長させた標準的なアブラナ科の野菜中に認められるレベルの2〜3倍のグルコシノレートのレベルを有する、請求項1〜10もしくは請求項32〜33のいずれか1項に記載の組成物、請求項11〜21もしくは請求項36〜38のいずれか1項に記載の方法または請求項22〜31もしくは34〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
図面および実施例を参照することにより本明細書で定義される組成物、使用および方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2013−515713(P2013−515713A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545452(P2012−545452)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052200
【国際公開番号】WO2011/077163
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(500123706)プラント・バイオサイエンス・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052200
【国際公開番号】WO2011/077163
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(500123706)プラント・バイオサイエンス・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
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