説明

便座装置

【課題】移動可能な主部を便座及び便蓋と共に、基部から容易に且つ安全に取り外すことのできる便座装置を提供する。
【解決手段】本発明の便座装置(洗浄便座装置1)は、便器本体5の上面51後方に配設される基部4と、前記基部4に保持される主部2と、前記主部2に回動可能に保持される便座6及び/又は便蓋7とを備える便座装置であって、前記基部4には、前記便器5の前後方向に形成され且つ前方に開口部3を持つガイド溝43が形成され、前記主部2に設けられたピン22が前記ガイド溝43に挿架されて、前記主部2が前記基部4に対して前後方向摺動可能、浮上可能及び着脱可能とされた、ことを特徴とする。また、前記主部2の前記基部4に対する着脱を許容・禁止するガイド開閉手段を備えることが好ましい。さらに、前記ガイド開閉手段は、前記着脱の禁止を継続する付勢手段を持つようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便座装置に関し、より詳細には便器本体から取り外すことのできる便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄用の温水を噴射する洗浄機構や、便座を暖める暖房機構を持つ便座装置が各種実用化されている。便座装置は、通常、洋式便器の上面後方に配設される基部と、基部に保持される主部と、主部に回動可能に軸支されて着座を可能にする便座及び便器の上面を開閉する便蓋とで構成され、必要に応じて洗浄ノズルや温水タンク、ヒーターや保温部などが付属されている。最近では、清掃時の作業性に配慮して便器本体と便座装置主部との間に空隙を設けるため、主部が可動式になっている場合も多い。例えば、特許文献1の浮上機構付き洗浄便座では、主部を便器の外方向、あるいは側部方向、後方向、上方向に浮上させる機構を有している。この浮上機構により、重量のある主部を容易にかつ安全に移動することができるようになっっている。
【特許文献1】特開平9−316976公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の洗浄便座では、落下防止や安全性向上のために、主部は容易には取り外せない構造としてある。しかしながら、長期未使用時における凍結防止のためのタンクからの水抜きや、内部の点検のためには主部の取り外しが必要になる。この場合には、基部を便器本体に固定している締結ボルト及びナットを緩め、洗浄便座全体を一括して取り外していた。この取り外し及び後の再取り付けでは、便器後方のロータンクの下部の狭隘なスペースで作業を行う必要があり、難儀で且つ細心の注意が必要であった。
【0004】
本発明は、上述の背景に鑑みてなされたものであり、移動可能な主部を便座及び便蓋と共に、基部から容易に且つ安全に取り外すことのできる便座装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の便座装置は、便器本体の上面後方に配設される基部と、前記基部に保持される主部と、前記主部に回動可能に保持される便座及び/又は便蓋とを備える便座装置であって、前記基部には、前記便器の前後方向に形成され且つ前方に開口部を持つガイド溝が形成され、前記主部に設けられたピンが前記ガイド溝に挿架されて、前記主部が前記基部に対して前後方向摺動可能、浮上可能及び着脱可能とされた、ことを特徴とする。
【0006】
本発明は可動式の便座装置を改良するものであり、普段は主部を移動させて清掃の便宜を図るとともに、必要に応じて主部を取り外せるようにしている。本発明の便座装置は、基部と、主部と、便座及び/又は便蓋と、を備えており、基部が主部を着脱可能に保持する構造に特徴を有している。
【0007】
基部は、便器本体の上面後方に配設され、主部を摺動可能及び揺動可能に保持している。基部は、例えばボルトなどの締結部材により、便器本体の上面後方に固定されている。基部は、主部を保持するために、便器本体の前後方向に形成されたガイド溝を持っている。
【0008】
ガイド溝は、例えば基部の両側面にそれぞれ1箇所ずつ合計2箇所に設けることができ、あるいは基部の上面の1箇所に設けてもよく、3箇所以上に設けてもよい。ガイド溝の断面形状は、一般的な矩形断面でよく、また、外れ防止のために、溝の入口よりも内部を広くしてもよい。ガイド溝の前後方向の長さは、主部が摺動するストローク長と略一致するため、清掃時の便宜を考慮して定められるのが好ましい。さらに、ガイド溝は前方に開口部を持っており、ガイド溝と外部とは連続している。
【0009】
前記主部は、洗浄機構を収容してもよい。また、前記便座は、暖房便座であってもよい。主部は、便座装置の主要な部位であり、便座及び/又は便蓋を回動可能に保持している。と共に、洗浄ノズルや温水タンクなどの洗浄機構を備えるようにしてもよい。さらに、便座は、ヒーターや保温部などを持つ暖房便座であってもよい。主部は、基部のガイド溝に挿架されるピンを持っている。
【0010】
前記ピンの断面は略楕円であって、その長径が前記ガイド溝の幅よりも大きいことが好ましい。また、ピンの断面はガイド溝の幅よりも小さい略円形であってもよい。いずれの場合にも、ピンを中心軸にして主部を揺動させ、便器本体から浮上させることができる。とりわけ断面が楕円の場合には、揺動の途中でピンがガイド溝に挟持され、主部から手を離しても浮上状態が保持されるため、清掃作業に好都合である。また、ピン自体はガイド溝を摺動するが回転はしないで、主部とピンとが相対回転可能に保持されるように構成してもよい。ピンが開口部を通ってガイド溝に入り込み挿架されることにより、主部は基部に対して前後方向に摺動可能となる。と共に、任意の摺動位置でピンは揺動の中心軸となり、主部が浮上可能となる。なお、ピンは、使用者の邪魔にならないように、主部の下面に設けることができる。
【0011】
前記主部の前記基部に対する着脱を許容・禁止するガイド開閉手段を備えることが好ましい。本発明の好ましい態様として、主部の着脱を許容・禁止する手段、例えば開口部を開閉するガイド開閉手段を備えることが好ましい。ガイド開閉手段は、ピンをガイド溝に入れるとき及び離脱させるときにのみ開口部を開き、それ以外では開口部を閉じるように形成することができる。これにより、使用中あるいは清掃中には開口部を閉じ、主部を確実に保持することができる。開口部が複数あるとき、ガイド開閉手段はそれぞれに設けられ、全てが一緒に開閉することが、使用上好ましい。ガイド開閉手段は、例えばスライドすることにより開口部を塞ぐ可動板を基部に設けることで実現できる。
【0012】
さらに、前記ガイド開閉手段は、前記着脱の禁止を継続する付勢手段を持つようにしてもよい。例えば、常時は付勢手段により可動板がスライドして開口部を塞ぎ、主部を着脱するときだけ付勢手段を解除するように構成することができる。ガイド開閉手段が複数あるとき、付勢手段はそれぞれに設けられるのが好ましい。付勢手段には、例えばばね部材を用いることができる。
【0013】
なお、使用中に主部が移動しないように、摺動位置の後方側で主部を基部又は便器本体に固定する係止機構を設けることが好ましい。
【0014】
次に、上述のように構成された本発明の便座装置の組み付け方法、作用について説明する。まず、締結部材を用いて、便座本体の上面後方に基部を固定する。次に、ピンを基部の前方側の開口部にあわせるようにして、主部を便器本体上に戴置する。続いて、付勢手段を解除して開口部を開き、主部を後方へ押して移動させる。すると、ピンは開口部を通ってガイド溝に挿架され、主部が基部に保持される。さらに、ピンを摺動させながらガイド溝の後方側に達するまで、主部を後方側へ押し込む。ここで、係止機構を用いて主部を固定することにより、使用可能な状態となる。
【0015】
清掃時には、係止機構を外して主部を摺動させ、また任意の摺動位置で主部を揺動して浮上させるとともに便座及び便蓋を回動することにより、便器本体上面を順に開放してゆくことができる。なお清掃時には、付勢手段が作用して開口部は閉じているため、主部が外れることはない。
【0016】
主部を取り外すときには、まず係止機構を外した後に、ピンをガイド溝の中で摺動させながら、主部を前方に引き出す。次に、付勢手段を解除して開口部を開き、ピンを開口部から離脱させながら、さらに主部を引き出すことにより取り外すことができる。このように、基部は便器本体に固定されたまま、主部を持ち上げる必要もなく安全に着脱することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の便座装置では、主部にピンを設けて基部に設けたガイド溝に挿架し、且つ開口部から離脱できるようにしたため、主部を前後方向に移動させる容易な操作で、基部から安全に着脱することができる。さらに、主部の着脱を許容・禁止するガイド開閉手段、及び着脱の禁止を継続する付勢手段を設けた態様では、常時及び清掃時に主部が外れることがないため、より安全且つ確実である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図3を参考にして説明する。図1は、本発明の実施例の洗浄便座装置1を示す斜視図である。図中の一点鎖線は、別々に描かれた部材が実際には係合して用いられることを示している。実施例の洗浄便座装置1は、基部4と、主部2と、便座6及び便蓋7と、で構成されている。
【0019】
基部4は略矩形の部材で左右対称に形成され、中央部分の左右に2つの固定用長穴44が穿孔されている。固定用長穴44により、基部4の取り付け位置を便器本体5の前後方向に調整することができる。固定用長穴44は便器本体5の取付穴とともに、固定ボルト45、ナット46、ワッシャ47、パッキン48の締結部材により締め付けられ、基部4が便器本体5の上面51後方に固定されている。基部4の両側面には便器本体5の前後方向にガイド溝43がそれぞれ、合計2箇所配設されている。ガイド溝43の断面は側方に開いた略コ形であり、コ形の上面と側面は基部4の部材が延伸して形成され、下面は便器本体5の上面51が利用されている。ガイド溝43の後方側は閉じた閉鎖部49であり、前方側は開いた開口部3となっている。開口部3はガイド溝43と同じ断面形状を持っている。
【0020】
主部2は、内部に洗浄機構を備える略箱状のケーシング21を主体に形成されている。ケーシング21の上面には、便座6及び便蓋7が回動可能に軸支されている。また、ケーシング21の中央下部には、前後に摺動するときに基部4をすり抜けられるように断面矩形で前後方向に抜けた切欠き部23が形成されている。切欠き部23の内側の両側面には、内側に向き合って一対のピン22が突設されている。ピン22は、基部4のガイド溝43のコ形断面の開いた部分に挿架されるようになっている。また、ピン22の断面は略楕円であって、その長径はガイド溝43の幅よりも大きく形成されている。
【0021】
上述のように構成された洗浄便座装置1では、以下の手順で主部2を基部4に取り付ける。まず、便器本体5の上面51前方に主部2を戴置する。このとき、切欠き部23が基部4の正面、ピン22が開口部3の正面になるように配置する。次に、主部2を後方に押し移動させてゆけば、ピン22は自然に開口部3を通ってガイド溝43にまで達する。さらに、主部2を後方に押し込んでゆくと、ピン22はガイド溝43内を摺動して閉鎖部49に達する。この位置で、主部2を図略の係止機構により固定することにより、取り付けが完了する。この作業では、ケーシング21及び便座6は、便器上面51を摺動するため、途中で持ち上げる必要はない。
【0022】
主部2の取り外しは、上述の取り付けと逆の手順で行う。すなわち、まず、係止機構を外して主部2が移動できるようにする。次に、主部2を前方に引き出すと、ピン22はガイド溝43内を摺動して開口部3まで出てくる。さらに主部2を引き出すと、ピン22は開口部3を通過して離脱し、主部2は便器本体5の上面51前方の中央に引き出される。このように主部2の着脱は容易な作業で行え、且つ作業の途中で持ち上げたりする必要がないため安全である。
【0023】
図2は、ピン22が切欠き部23の後端に設けられた別の実施例における主部20の動作を説明する図であり、(a)は主部20が前方に摺動した状態、(b)は前方で主部20が揺動して浮上した状態を、それぞれ示している。主部20は、常時は図2(a)に二点鎖線で示される後方側の位置に係止機構で固定され、使用に供されている。そして清掃時には、係止機構を外した後、ピン22がガイド溝43内を摺動するようにして、主部20を前方に引き出すことができる。このとき、ケーシング21及び便座6は、便器上面51を摺動するため、持ち上げる必要はない。これにより、便器上面51の最も後方側が開放されて、清掃できるようになる。
【0024】
次いで、図2(b)に示すように、ピン22を回転軸として主部20を後方に傾けるようにして揺動し浮上させることができる。この時、ピン22の楕円断面の長径はガイド溝43の幅よりも大きいので、揺動の途中でピン22はガイド溝43の幅一杯を占め、挟持されるようになる。すると、主部20は、手を離しても動かず、浮上状態に保持される。ここでさらに便座6及び便蓋7を上方から後方へと回動させることにより、便器上面51の中央付近及び前方側が開放されて、清掃できるようになる。
【0025】
上述のように、主部20の摺動と、主部20の揺動による浮上と、便座6及び便蓋7の回動とにより、便器本体5の上面51全面を順に開放してゆき、清掃することができる。
【0026】
図3は本発明のまた別の実施例であり、ガイド開閉手段8を備えた便座装置を説明する基部40の水平断面図である。図3で(a)は開口部3が閉じた常時の状態を示し、(b)は開口部3が開いた状態を示している。ガイド開閉手段8は、2枚の可動板81と、付勢手段に相当するばね部材9と、解除部材85と、で構成されている。
【0027】
2つの可動板81は可撓性をもち、一端部82が開口部3に交差するように出入りし、中間部83は湾曲して、他端部84は互いに接近して並行しばね部材9に一緒に保持されている。ばね部材9の一端は2つの可動板81の他端部84を保持し、他端は基部40に固定されている。ばね部材9は、常時2つの可動板81を付勢し、図3(a)に示されるように、一端部82を開口部3に突出させ閉じている。解除部材85は棒状の部材で、一端はばね部材9に当接し、他端で操作できるようになっている。そして、解除部材85の他端が押下されると、図3(b)に示されるように、ばね部材9が圧縮されて可動板81を引き戻し、可動板81の一端部82が退いて開口部3を開くように構成されている。
【0028】
ガイド開閉手段8及びばね部材9を備えることにより、解除部材85が押下されたとき以外は開口部3を閉じておくことができる。したがって、常時及び清掃時に主部2の着脱を禁止することができる。
【0029】
なお、上述の各実施例に於いて、便座6は図示されないヒーターにより暖房される暖房便座であるが、必ずしも暖房便座である必要はない。また、主部2には洗浄機構が収容されていなくてもよい。つまり、主部2に便座6が回動可能に保持されているだけの、洗浄機構も暖房機構も便蓋7もないシンプルな構成であってもよい。この場合でも、本発明の採用により、便器本体5の上面51の清掃が頗る容易に行えるからである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例の洗浄便座装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の別の実施例の便座装置の主部の動作を説明する図であり、(a)は主部が前方に摺動した状態、(b)は前方で主部が揺動して浮上した状態を、それぞれ示す。
【図3】本発明のまた別の実施例の便座装置の基部を示す水平断面図であり、(a)は開口部が閉じた状態、(b)は開口部が開いた状態を示す。
【符号の説明】
【0031】
1:洗浄便座装置
2、20:主部
21:ケーシング 22:ピン 23:切欠き部
3:開口部
4、40:基部
43:ガイド溝 44:固定用長穴 45:固定ボルト
46:ナット 47:ワッシャ 48:パッキン
49:閉鎖部
5:便器本体 51:上面
6:便座
7:便蓋
8:ガイド開閉手段
81:可動板 82:一端部 83:中間部
84:他端部 85:解除部材
9:ばね部材(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体の上面後方に配設される基部と、前記基部に保持される主部と、前記主部に回動可能に保持される便座及び/又は便蓋とを備える便座装置であって、
前記基部には、前記便器の前後方向に形成され且つ前方に開口部を持つガイド溝が形成され、前記主部に設けられたピンが前記ガイド溝に挿架されて、前記主部が前記基部に対して前後方向摺動可能、浮上可能及び着脱可能とされた、便座装置。
【請求項2】
前記主部の前記基部に対する着脱を許容・禁止するガイド開閉手段を備える、請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記ガイド開閉手段は、前記着脱の禁止を継続する付勢手段を持つ、請求項2記載の便座装置。
【請求項4】
前記主部は、洗浄機構を収容する、請求項1記載の便座装置。
【請求項5】
前記便座は、暖房便座である、請求項1記載の便座装置。
【請求項6】
前記ピンの断面は略楕円であって、その長径が前記ガイド溝の幅よりも大きい、請求項1記載の便座装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−271568(P2006−271568A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93371(P2005−93371)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】