説明

促進剤のないラテックス由来の薄い壁のゴム加硫物

生きている組織または生きている組織に送達される物質と接触して使用するための薄い壁のゴムの物品が、炭素−炭素架橋および炭素−(硫黄)−炭素架橋の両方を生成する加硫によって天然ゴムまたは合成cis−1,4−ポリイソプレンのいずれかの水性ラテックスから調製され、加硫は第2級アミン基またはニトロソアミンを生成する傾向を有する任意の成分を含む任意の混合成分の非存在下で行われる。硫黄活性剤は含まれ得るが、硫黄促進剤は全く含まれないことが好まれる。ラテックスから形成された薄い壁のゴムの物品は驚くほどに、高い引張強さ、高い極限率伸び、および低い500%引っ張り係数の組み合わせを示す。その工程は特に、合成cis−1,4−ポリイソプレン由来の薄い壁の物品の製造に効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.発明の分野)
本発明は、薄い壁のゴムの物品の分野に属し、特にラテックスから作られ、炭素−硫黄および炭素−炭素架橋結合の両方を生成するように加硫された物品である。本発明の目的は、高い引張強さ、高い極限伸び、および低い引っ張り係数を含む好ましい張力特性を有する薄い壁のゴムの物品を提供すること、ならびに硫黄加硫されたゴムの製造で一般に使用されるいくらかの化学物質が原因であるアレルギー反応または健康上の懸念を引き起こさないで提供することである。
【背景技術】
【0002】
(2.先行技術の説明)
天然および合成ゴムが、薄い壁の医療用具および身の回り品の構成物質として広く使用されている。これらの物質から作られた物品の例は、外科および検査手袋、指サック、カテーテルバルーン並びにカフス、子宮熱アブレーションバルーン、コンドーム、避妊用ペッサリー、留置導尿用カテーテル、男性の外部の導尿用カテーテル、ブリーザバッグ、外科用チュービング、乳児用のおしゃぶり、哺乳瓶ニップル、薬剤注入ブラダーである。使用中にこれらの用具に課された機械的ストレスのために、これらの用具の壁は、低い500%引っ張り係数で合成された高い引張強さを有さなければならない。ゴムは、構造の完全性を達成するために任意の様々な方法で加硫されるが、加硫が硫黄の使用によって、すなわち、炭素−硫黄結合でのポリマー鎖の架橋によって達成される場合、高い引張強さおよび低い引っ張り係数は最も容易に達成される。
【0003】
最も高い耐久性および可撓性は、継ぎ目がなく均一の厚さであるゴムの薄膜によって達成される。特に、ディップ成形によってラテックスから形成された薄い壁のゴム用具は、これらの理由のために特に好まれる。ラテックスは、ゴムの分子量を壊さずに処理され得るが、ゴムを粉砕するために高い剪断を利用し、処理のための別の複合成分と混合する乾燥ゴム方法は、分子量を低下させる傾向がある。
【0004】
硫黄を用いる加硫は、慣用的に硫黄加硫促進剤の存在下で行われている。硫黄と天然ゴムとの間の反応を促進し得ると見出された最初の化合物は、アニリン(1906年に初めて使用された)であり、アニリンと類似性を有する様々な別の化合物が、その後、開発され、より少ない毒性でより大きな促進活性を生じさせた。それらには次の物が挙げられる:
2−メルカプトベンゾチアゾール、ビス(2,2’−メルカプトベンゾチアゾリル)ジスルフィドおよび亜鉛2−メルカプトベンゾチアゾールのような、メルカプトベンゾチアゾール、
N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、および4−モルホリノ−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドのような、スルフェンアミド、
ビスマスジメチルジチオカルバメート、カドミウムジエチルジチオカルバメート、銅ジメチルジチオカルバメート、亜鉛ジメチルジチオカルバメート、および別の金属ジアルキルジチオカルバメート、並びにピペリジニウムペンタメチレンジチオカルバメートのような、ジチオカルバメート、
ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、およびテトラ−n−ブチルチウラムジスルフィドのような、チウラム、
ジフェニルグアニジンおよびジ−オルト−トリルグアニジンのような、グアニジン、
ジフェニルチオ尿素、エチレンチオ尿素、およびトリメチルチオ尿素のような、チオ尿素、
ジブチルキサントゲンジスルフィド、および亜鉛ジ−イソ−プロピルキサンテートのような、キサンテート、ならびに
銅O,O−ジ−イソ−プロピルホスホロジチオエートおよび亜鉛O,O−ジ−n−ブチルホスホロジチオエートのような、ジチオホスフェート。
【0005】
上記のリストの中で最も広く使用された促進剤は、ジアルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、およびモルホリニル基のような、第2級アミン基(第1級アミン基RNH−と反対のRR’N−)を含むものである。第2級アミン基は、例えば、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびチウラムに見出される。これらの促進剤を含むことの残念な結果は、物品と接触する個体に副作用を生じる傾向である。その反応は、一般に、T細胞によって媒介され、ゴム物品と接触して大体6〜48時間以内に起こり、接触された皮膚の範囲に局部集中される、タイプIVアレルギーと呼ばれる。第2級アミンを含む促進剤はまた、混合、粉砕、押出、鋳型成形、つや出し、硬化、ならびに保管および貯蔵中でさえ、大気中の窒素酸化物との反応を受けやすく、ヒト発癌性物質の可能性があると指定されているニトロソアミンを生成するので、ニトロソ化可能アミンと呼ばれる。これらのニトロソアミンのいくらかは、N−ニトロソ−ジ−n−ブチルアミン、N−ニトロソ−ジエタノールアミン、N−ニトロソジエチルアミン、N−ニトロソジメチルアミン、N−ニトロソジイソプロピルアミン、N−ニトロソジ−n−プロピルアミン、N−ニトロソモルホリン、N−ニトロソピペリジン、およびN−ニトロソピロリジンである。
【0006】
天然ゴム自身は、特定の個体において副作用を引き起こし、その上、これらは本発明の特定の実施形態によって扱われる。天然ゴムに対する副作用の1つのタイプは、結果として刺激性の皮膚炎を生じる間接的な反応である。アレルギー反応ではないが、刺激性の皮膚炎は、体の免疫系への接近を増加させるタンパク質を含むゴムの成分を与え得る皮膚に破損を引き起こし得、最終的にアレルギー反応を引き起こし得る。天然ゴムに対する副作用の別のタイプは、天然ゴム中のタンパク質に対するIgE抗体によって引き起こされるI型アレルギーとして公知の全身アレルギー反応である。これは、曝露の30分以内に起こる「即座」の反応であり、その症状は、発疹、鼻炎、結膜炎、喘息、ならびにまれにアナフィラキシーおよび低血圧を含む。
【0007】
天然ゴムに対するこれらの副作用は、適切な合成ゴムを使用することによって防止され得る。タンパク質を取り除いた天然ゴムの使用が提案されているが、タンパク質を取り除いた天然ゴムが完全にその問題を排除することは示されていない。種々の合成エラストマーが、同様に使用されている。例えば、ニトリルゴムおよびポリクロロプレンは、外科用手袋、検診用手袋および歯科用手袋の製造に使用されている。しかし、これらの物質は、天然ゴムの高い弾力性および低い引張セット(tensile set)値を与えない。シリコーンゴムは、カテーテルバルーンとして使用されているが、その引張強さは、天然ゴムのそれより低いので、壁の厚さを増加させることによって補われなければならない。ポリウレタンはまた、特にディップ成形されたカテーテルバルーンに使用されている。ポリウレタンは、非常に高い引張強さを有しているが、それらは天然ゴムの弾力性および低い引張セット値を欠いており、従って、使用中膨張の大きい度合いを受け、次いでそれらの元の構造に戻り得ることを必要とされる用具には不適切である。手袋はまた、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレントリ−ブロック共重合体から調製されているが、この物質は、非常に高い引張セット値、手袋が好ましくない「バギング」、すなわち使用後に伸びたままになること示す原因となる特徴を有する。
【0008】
総合的な性能の点で、天然ゴムに最も近い代替品は、合成cis−1,4−ポリイソプレンおよび十分な量の合成cis−1,4ポリイソプレンから成るゴム組成物である。しかし、分子構造の点で、合成cis−1,4ポリイソプレンと天然ゴムとの間には、かなりの違いがある。天然ゴム中のポリイソプレンは、約1,000,000amu〜約2,500,000amuの分子量を有するが、合成cis−1,4−ポリイソプレンの分子量は、約250,000amu〜約350,000amuの範囲である(両方、数平均として表されている)。より低い分子量のポリマーは、より低い引張強さを含むより小さい引張特性を一般に有する。合成cis−1,4−ポリイソプレンはまた、より低い分岐の度合い、より低い対称性、およびより低い分子間力を有する。これらの特徴の全ては、ポリマーの引張特性に寄与し、影響を及ぼす。
【0009】
外科用および別の医療用手袋のような特定の医療用具は、使用中、快適なままである比較的低い引っ張り係数を必要とする。引っ張り係数が非常に高い場合、使用者の手は、手袋の物質を伸ばすために、除々により強い力が必要とされるので、時間が経つと、疲労し得る。これは特に、長い外科手術中のような長時間帯使用される手袋に問題がある。低い引っ張り係数の重要性は、引張特性の規格を指定する規格化された試験手順ASTM D3577において理解されている。規格は、500%係数値が合成手袋では7MPa以下、天然ゴム手袋では5.5MPa以下であることを必要とする。より低い引っ張り係数値はまた、着用する容易さを促進するためにコンドームにとって、および膨張の容易さが有益であるカテーテルバルーンにとって重要である。低い引っ張り係数はまた、薬液をブラダーに満たしやすくさせることによってエラストマー薬剤注入ブラダーにおいて価値がある。
【0010】
特定の医療用および個人的な用具の実用性に影響する別の引張特性は、用具の初期故障を防ぐのに重要である引裂強さである。哺乳瓶ニップルおよび乳児用のおしゃぶりはまた、使用中、子供の歯がニップルまたはおしゃぶりを切断することを防ぐので、高い引裂強さは有益である。炭素−炭素結合を通してのみ架橋されたゴムは、硫化物および/またはポリ硫化物架橋を含むゴムと比較して引裂強さが劣っていることは、一般に公知である。
【0011】
さらに、ゴム医療用デバイスの十分な性能に重要である引張特性は、極限伸びである。極限伸びの値を増加させることは、使用中の破損の頻度を減少させると考えられている。例えば、高い極限伸びの値を有する場合、コンドームおよびカテーテルバルーン、ならびに外科用手袋を容易に着用することに有益である。高い極限伸びの重要性はまた、合成ゴム手袋では少なくとも650%、および天然ゴム手袋では少なくとも750%の極限伸びを必要とする規格化された試験手順ASTM D3577において理解されている。カテーテルバルーンについては、高い極限伸びは、膨張される場合、バルーンに置かれた応力を低下させ、それによって、初期故障を防ぐのに役立つ。硫黄加硫された物品は、炭素−炭素架橋のみを含む同等の物品より高い伸びを示す任意の与えられたゴム組成物は周知である。
【0012】
以下は、本明細書中に示された本発明の特定の局面に関連した先行技術から成る開示の調査である。これらの開示の各々の関連性は、後に続く本明細書および特許請求の範囲の項から明らかにされる。本明細書中に引用しているすべての特許および公開された物質は、その全体が本明細書で参考として援用される。
【0013】
医療用具または医療用具部品で用いるcis−1,4−ポリイソプレンラテックス成分の使用は周知である。Preissらは、米国特許第3,215,649号で、硫黄加硫されたcis−1,4−ポリイソプレンの使用を開示している。McGlothlinらは、米国特許第6,329,444号で、ディップ成形された医療用具で用いる硫黄のない、フリーラジカル硬化されたcis−1,4−ポリイソプレンの使用を開示している。Leeperらは、米国特許第4,938,751号で、エラストマーブラダー中の補強されたフリーラジカルで架橋されたcis−1,4−ポリイソプレンの使用を開示している。Leeperらの特許は、成形された(ラテックスでない)ゴム物品を扱うが、まだかるい薄い壁である。McGlothlinらおよびLeeperらの特許は、主に炭素−炭素架橋による硬化されたポリイソプレン物質の高レベルの寸法安定性を言及している。McGlothlinらは、5%未満の引張セット値が達成され得ると述べているが、Leeperらは、約10%未満の低周波数ヒステリシスおよび約10%未満の応力緩和が達成され得ると示している。McGlothlinらとLeeperらのどちらも、合成ポリイソプレンの物理的特性を改良するために有機過酸化物と組み合わせた硫黄の使用を開示していない。
【0014】
Zabielskiらは米国特許第4,724,028号で、押出工程によってcis−1,4−ポリイソプレンから作られた医療用注射部位を硬化するためのフリーラジカル硬化メカニズムの使用を開示している。Noeckerらは、米国特許第6,051,320号で、医療用具で用いるフリーラジカル硬化された天然ゴムの引張強さを改良するために補強剤の使用を開示している。Noeckerらは、「...本発明に従うサンプルゴムラテックス手袋は、硫黄および関連の硬化剤を使用して形成された従来のゴムラテックス手袋より引張強さおよび弾性率でいくらか劣る」と認めている。Noeckerらによって言及された引張強さは、天然ゴムでは21〜24MPaである。合成ポリイソプレンに関する参考文献は全くない。ZabielskiらとNoeckerらの特許のどちらも、引張強さを改良するために硫黄およびフリーラジカル硬化メカニズムを組み合わせる任意の提案を提供しない。
【0015】
Classは、米国特許第6,245,861号で、過酸化物で排他的に硬化された組成物が、硫黄硬化された組成物由来の比較できる架橋より小さい可撓性である短い架橋を有すると考えられ、従って、過酸化物硬化された組成物は、磨耗および切断の増大に対してより小さい耐性を示すと確信される、と述べている。直接的に合成ポリイソプレンについて言及していないが、Classはフリーラジカル硬化されたゴム化合物で一般的に生じる問題を扱う。
【0016】
共薬剤の使用は、純粋な過酸化物硬化に対する難点を克服する方法として提案されている。Classによって開示されたような典型的な共薬剤としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアネート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアネート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、および低分子1,2−ポリブタジエンが挙げられる。Classは、共薬剤は過酸化物硬化された組成物の係数および硬度を増大し得ると述べている。同じ組成物中に過酸化物および硫黄両方の組み合わせが示唆されているが、Classは、硫黄は過酸化物の共薬剤であると示唆していない。しかし、Classは硫黄が使用される場合、慣例の促進剤の使用を詳細に公開している。Classはポリイソプレンの使用、および医療用具適用について言及していない。多くの医療用具適用において、硬度および係数の増大は、特にコンドームおよび手袋のような薄い膜で囲まれた製品にとっては好ましくない。
【0017】
Blokらは、米国特許第6,300,421号で、EPDMエラストマー硬化における共薬剤の役割の包括的な概要を提供している。Blokらはさらに、EPDMゴムの硬化において過酸化物の共薬剤として、元素状態で存在する硫黄の使用を開示している。開示されたのはまた、EPDM形成の成分として可能性のあるポリイソプレンの使用である。Blokらはさらに、副反応の発生を最小化または抑制するために、共薬剤が、硬化工程中に形成されたフリーラジカルと反応および安定化させる過酸化物硬化剤と組み合わせて使用され得ると述べている。この方法において、共薬剤は全体の架橋効率を改良する傾向があり、それによって、より高い硬化速度および硬化状態に導く。これは、当業者に周知である。Blokらは、任意の炭素−硫黄結合は実際に形成されると提案していない。硫黄は、一般にゴムの引っ張り係数を増加させ、極限伸びを減少させる硬化の効率、速度および状態に役立つ慣例の共薬剤として、おそらく作用している。Blokらは、天然ゴムまたは合成ポリイソプレンまたは医療用具についてまたはラテックス適用に関係のある何かを開示していない。
【0018】
Mageiらは、米国特許第4,218,548号で、エチレンプロピレンゴムのための共薬剤として硫黄の使用を開示している。Blokらのように、硫黄は加硫剤として作用しているという提案がない。ポリイソプレンと過酸化物化合物の使用または医療用具の硬化について、Blokらによる言及または提案もない。
【0019】
Sartomer Company,Inc.,Exton,Pennsylvania,USAは、エラストマー硬化における過酸化物共薬剤として使用するための多数の生成物を製造する。Sartomerは、「Coagent Selection for Peroxide Cured Elastomers」という題名をつけられた技術公報を出版している。合成ポリイソプレンに特定していないが、その公報は総じて、エラストマーにとっての共薬剤との関連を含んでいる。その公報の表15は、過酸化物のみの硬化システムと、促進された硫黄のみの硬化システムと、7つの異なる過酸化物−共薬剤硬化システムとの間の一般化された硬化特性の比較を提供している。そのデータは、共薬剤の添加は、促進された硫黄硬化システムと過酸化物のみの硬化システムとの両方と比較して、引っ張り係数および硬度の両方が増加することを示す。これは、コンドーム、手袋、バルーン、および外科用チュービングのような、高度な弾性の医療用具を作る観点から好ましくない。その公報は、過酸化物と組み合わせた硫黄の使用の可能性を開示していない。
【0020】
「Comparing curing systems:peroxide−co−agent versus sulfur−accelerator in polyisoprene」という題名をつけられたMcElweeおよびLohrによる論文は、Rubber World,Kippincott&Peto,Inc,Akron,Ohio,USA,225巻,No.2,2001年11月、41〜44ページに見られる。その論文は、過酸化物−共薬剤硬化システムは、過酸化物および硫黄硬化システム両方の最も良い特徴、すなわち、高い引張強さ、高い引裂強さ、高い係数、ならびに際立った撓性および熱−老化特性を有すると述べている。いくつかのアクリルおよび別の共薬剤が開示されているが、共薬剤としての硫黄の使用は開示されていない。いくつかの物理的特性の点について、硫黄硬化、過酸化物硬化、および過酸化物/共薬剤硬化との間の比較がなされている。その比較は、過酸化物−共薬剤システムで獲得された引っ張り係数は、別の硬化システムで獲得されたものより高く、過酸化物−共薬剤システムは、硬化のより卓越した状態を表すことを示す。ShoreA硬度はまた、促進された硫黄硬化または過酸化物のみの硬化のいずれよりも、過酸化物−共薬剤システムで顕著により高くなると示され、別の先行技術所見と一致した結果である。その論文は、物質の硬度を増加させずに、より低い引っ張り係数およびより高い伸長を達成するという点について、ポリイソプレンを硬化するために過酸化物とともに硫黄を使用することの利点を明らかにしていない。
【0021】
Stevensonは、米国特許4,695,609号A1で、ジヒドロカルビルキサントゲンポリスルフィドおよび0.4重量部未満のニトロソ化可能物質を含む促進剤の組み合わせを用いる硫黄加硫を使用する加硫されたゴムの物品を調製する工程を開示している。その促進剤の組み合わせは、合成ポリイソプレンとの使用の目的として公開されている。その特許に記載された工程は、硬化中に形成されるニトロソアミンの量を減少させ、有毒な従来の窒素含有促進剤の使用において顕著な減少を達成するが、そのような化合物の完全な除去を可能にしない。ポリイソプレンの加硫のための過酸化物および硫黄の組み合わせた使用は、開示されていない。
【0022】
Stevensonらは、米国特許第5,254,635号で、ゴム形成に必要とされるニトロソ化可能化合物の量を減少させる方法を開示している。特に合成ポリイソプレンについて言及していないが、Stevensonらは、第2級および第3級アミンのような潜在的にニトロソ化可能物質の使用は、硬化されるゴムが合成ゴムである場合、十分な硬化の度合いを提供するために、補足促進剤として添加されるために必要とされ得ると述べている。Stevensonは明らかにまだ、これらの好ましくない物質の量を約0.2phrに限定し得る。これは低いレベルであるが、医療用具および部品の製造にとって、まだ好ましくない量である。一方、合成ポリイソプレンの加硫のための組み合わせにおいて過酸化物および硫黄の使用についての開示はない。
【0023】
Virdiは、米国特許第6,162,875号で、おそらく非変異原性である、より安全なニトロソアミンを生成すると考えられる硫黄促進剤としての亜鉛ジイソノニルジチオカルバメートの使用を開示している。しかし、Virdiの工程によって生成された加硫物は、まだニトロソアミンを含む。
【0024】
Puydakらは、米国特許第5,073,597号で、熱可塑性の成形方法により処理され得る動的に加硫されたアロイを作製する際に使用するためのEPMおよびEPDMゴム硬化における過酸化物のための共薬剤としての硫黄の使用を開示している。組成物中の合成ポリイソプレンの含有は開示されているが、ポリイソプレンの役割は定義されておらず、任意のポリイソプレンの加硫でできたものについての言及はない。共薬剤として硫黄を使用する過酸化物硬化された組成物についての特性は、指定されていない。さらに、動的な加硫されたゴム物質の使用は、限られており、高い引張強さ、低い引張セットゴム物質を生成することに使用され得ない。
【0025】
過酸化物を含む製剤の加硫のための多数の方法は、公知である。これらの方法のほとんどは、硬化工程中にゴム組成物から酸素を取り除くことを含む。McGlothlinらは、米国特許第6,329,444号で、加硫中の酸素曝露から有機過酸化物を含むポリイソプレンの薄い膜を保護するための方法を開示している。Verlaanらは、米国特許第4,808,442号で、ゴムの酸素作用によって引き起こされた劣化から有機過酸化物を含むゴム組成物を保護するためのいくつかの方法を教示している。圧縮成形、トランスファー成形、および射出成形は、硬化工程中のそのようなゴム組成物を保護する方法として公知である。
【0026】
有機過酸化物硬化されたゴム粒子は、前加硫工程の間、酸素がほとんど取り除かれる場合、成形された物品に形成される前に加硫され得る。過酸化ジクミルが、合成ラテックスゴム粒子を加硫するために使用されるような1つの工程は、WO02/08328A1で、Bayer AG(Obrecht)によって開示されている。
【0027】
Dillenschneiderは、米国特許第3,937,862号で、比較的に低い分子量(100℃で84のMooney粘度)を有するEPDMポリマーを用いた混合硫黄および過酸化物加硫システム(実施例23)から形成されたタイヤサイドウォールを開示している。Dillenschneiderは、混合加硫システムは、全ての過酸化物加硫システムよりも、特有の利点がないことを提供するという結論を出している。Dillenschneiderは、ゴムの混合(そのいくつかがポリイソプレンおよび/または天然ゴムを含み得る)の使用を開示しているが、その特許は、ポリイソプレンを含む混合物のための混合硫黄および過酸化物加硫システムの使用を開示していない。開示された組成物の全ては、ニトロソ化可能ゴム促進剤の使用を含む。Dillenschneiderはさらに、約0.1〜約0.3phrのような非常に少量の硫黄の使用は、過酸化物および促進剤両方の非存在下での加硫にとって不十分であると述べている。
【0028】
Weiらは、米国特許第3,179,718号で、ブタジエン−アクリロニトリルゴムを有する高い飽和ゴムの混合物を加硫するために過酸化物および元素状態で存在する硫黄の混合の使用を教示している。比較例において、Weiらは硫黄および過酸化物の組み合わせを用いる天然ゴムの硬化について言及している。Weiらによって使用された天然ゴムの形態は、スモークシートゴムであった。2phrの硫黄および4phrの過酸化ジクミルの組み合わせを用いて天然ゴムを化合する場合、Weiらは、2360psiの引張強さおよび570%の極限伸びを有する加硫物を生成した。Weiらは、合成ポリイソプレンは別のゴム物質と混合され得、次いで硫黄/過酸化物硬化システムで加硫され得ると提案しているが、合成ポリイソプレン単独の使用についての言及はない。Weiらは、ラテックス製剤の使用を公開しておらず、また、開示された硬化システムは高い引張強さを有する生成物を生成すると述べていない。Weiらは、I型またはIV型ラテックスアレルギーの回避についてもまた、言及していない。まださらに、Weiらが扱うただ一つのゴム物品は、タイヤトレッド、ウインドシールドチャネル、およびケーブルカバーリングである。薄い膜のゴム物品は、扱われていないかまたは提案されていない。
【0029】
Mitchellらは、米国特許第4,973,627号で、混合硫黄および過酸化物加硫システムを含むタイヤサイドウォール組成物の使用を教示している。サイドウォール組成物のポリイソプレンおよび/または天然ゴムの任意の包含は、言及されている。その特許は、開示された生成物の製造において硫黄促進剤を含むことが必須であると明白に述べている。
【0030】
Podellらは、米国特許第3,813,695号で、手袋を着用する補助として役立つために、アクリルヒドロゲルコーティングの適用を開示している。手袋の過酸化物硬化中の酸素の通路を除去するために使用されるそのようなコーティングでできたものの開示はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
先行技術は、優れた引張強さ、低い500%係数、および高い極限伸びの組み合わせを有する薄い壁のラテックスディップ成形されたゴムの物品は、ニトロソ化可能(すなわち、第2級アミンを含む)硫黄促進剤と組み合わせて、硫黄を用いた加硫によってのみ獲得され得ることを示している。本発明はこの制限を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0032】
(発明の要旨)
薄い壁のゴムの物品が、極めて好ましい引張特性を示し、さらにニトロソアミン形成またはIV型アレルギー反応のいずれかを生成する成分を含まないように形成され得ることが、たった今発見されている。これらの物品は、第2級アミン基を含む任意の反応性種をラテックスに包含せずに、炭素−硫黄架橋および炭素−炭素架橋の両方を形成するために水性ラテックスを加硫することによって形成される。先行技術で通常使用される第2級アミンを含む反応性種は、硫黄加硫促進剤である。硫黄および第2級アミン基の両方を含む特定の薬剤は、どちらかが硫黄加硫薬剤自体として、または硫黄加硫薬剤および硫黄促進剤の両方として役立ち、その上これらは本発明において排除される。これらの薬剤の例は、4,4’−ジチオジモルホリン、2−(4−モルホリニルジチオ)ベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、およびN,N’−カプロラクタムジスルフィドである。本発明の好ましい実施形態において、ラテックスは硫黄促進剤を全く含まず、また第2級アミン基を含む任意の別の反応性種も含まない。本明細書で使用される「反応性種」という用語は、加硫段階または任意の処理工程の間、不活性でない種について言及しており、「第2級アミン基」という用語は、上記定義に従って使用される。炭素−硫黄架橋は、硫黄を含む加硫薬剤によって形成され、元素状態で存在する硫黄自体が好まれ、炭素−炭素架橋は、炭素−炭素結合を形成する任意の加硫方法によって形成され、過酸化物が好ましい加硫剤である。好ましい引張特性は、高い極限パーセント伸び、低い引っ張り係数(例えば、低い500%引っ張り係数)、高い引裂強さ、および高い引張強さを含む。さらに、利点がゴム成分として合成cis−1,4−ポリイソプレンを使用することによって獲得されるが、本発明は全体として合成cis−1,4−ポリイソプレンおよび天然ゴムの両方を与える。
【0033】
本発明に従う薄い壁のゴムの物品は、生きている組織に直接または間接に接触すること、ならびにヒトの患者への注入を意図する液体に直接接触すること、および吸入を意図する気体に接触することが、主に考慮される。これらの物品の例は、医療用手袋、コンドーム、ペッサリー、カテーテルバルーン、薬剤注入ブラダー、組織回収袋、医療用チュービング、哺乳瓶ニップル、乳児用のおしゃぶり、麻酔袋、蘇生袋、および外科用チュービングである。別の例は、医療用処置およびこれらの処置に使用される種々のタイプ用具において、当業者にとって明白である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
理論によって束縛されることを意図しないが、発明者らは本明細書中において、本発明の方法で形成された架橋は、炭素−炭素架橋、モノ硫化物炭素架橋(C−S−C)、およびポリ硫化物炭素架橋(C−S−C)を含み、モノ硫化物炭素架橋およびポリ硫化物炭素架橋は、本明細書中に「炭素−硫黄架橋」として集合的に言及されていると、考えている。
【0035】
本発明に従う炭素−硫黄架橋は、種々の例が当該分野において周知である硫黄を含む加硫剤の使用を含む従来の手法によって獲得される。最も一般的な薬剤は、元素状態で存在する硫黄自身であり、ほとんどの場合、環状の8員環として重合された斜方晶系形態で使用される。元素状態で存在する硫黄は好まれるが、ニトロソアミンを形成し得ない硫黄提供化合物は、当該分野において公知であり、同様に使用され得る。元素状態で存在する硫黄を含む工程にとって、ラテックスに含まれる硫黄の量は変化し得るが、好ましい量は10phr以下、さらに好ましくは約0.01phr〜約6phr、および最も好ましくは約0.1phr〜約0.6phrである。「phr」という用語は、「100分率の部」または乾燥ゴムの100重量部当たりの重量部を意味する。上記したように、ニトロソアミンを生成する硫黄を含む加硫剤は、本発明の方法に使用されない。
【0036】
本発明に従う炭素−炭素架橋は、同様に従来の手法によって、特にフリーラジカル加硫剤の使用によって獲得される。これらの中で好ましいのは有機過酸化物であり、最も一般的なものは、過酸化ジアシル、過酸化ジアルキル、ペルオキシケタール、モノペルオキシカルボナート、過酸化アセチルアルキスルホニル、ジアルキルペルオキシジカルボナート、tert−アルキルヒドロペルオキシド、ペルオキシエステル、およびアセチルアルキルスルホニルペルオキシドである。2つの特に好ましい過酸化物は、DiCup RのようなHercules Incorporated,Wilmington,Delaware,USAから入手可能な過酸化ジクミル、およびVAROX(登録商標) VC−RのようなR.T.Vanderbilt Company,Inc.,Norwalk,Connecticut,USAから入手可能なジ−(2−tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンである。別の有用な過酸化ジアルキルの例は、2,5−ジメチル−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、過酸化ジベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、t−ブチル3−イソプロペニルクミルペルオキシド、ビス(3−イソプロペニルクミル)ペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルペルオキシベンゾエート、およびビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシドである。まだ別のものが、当該分野における当業者に公知である。過酸化物の量は変化し得、例示のように過酸化ジクミルを使用して、好ましい量は約0.05phr〜約3phrの範囲で、さらに好ましくは約0.1phr〜約2phr、および最も好ましくは約1.2phrである。
【0037】
過酸化物の代替物は、ヒドロキシ化合物およびジアミノ化合物のような二官能性の架橋剤である。ヒドロキシ化合物の例は、p−キノンジオキシム、メチロールフェノール−ホルムアルデヒドレジン、およびアルキルフェノール−ホルムアルデヒドレジンである。ジアミノ化合物の例は、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)カルバメート、および4,4’−メチレンジアニリンである。さらなる加硫剤は、O.W.Burkeによって1975年7月1日に発行された米国特許第3,892,697号で開示されている。
【0038】
ゴム製造の分野において公知である共薬剤、活性剤、および別の添加剤は、本発明の方法に使用されるラテックスに含まれ得る。酸化亜鉛は、例えば、硫黄活性剤として有用であり、好ましくは約0.03phr〜約1phrの範囲の量において含まれる。さらなる例は、過酸化物系のための共薬剤である。特定の共薬剤は、単一の過酸化物ラジカルが1つより多くの炭素−炭素架橋を生成することによって、過酸化物の架橋効率を増す。共薬剤はまた、伸びおよび引裂強さのようなポリマーの特定の性質を高めるために、共有結合によって高分子網目に組み入れられ得る。これらの共薬剤のいくつかは、アクリラートおよびメタクリラートの化学的性質に基づいている。例は、Sartomer Company,Inc.,Exton,Pennsylvania,USAから入手可能なSARET(登録商標)231、SARET516、SARET517、SARET521、およびSARET634である。これらの共薬剤は、アクリル酸およびメタクリル酸の多官能性の塩である。これらの中のSARET634(その主成分は亜鉛ジメタクリラートである)ならびにSARET231および521(その主成分は二官能性のアクリル酸エステルであり、SARET521はさらに、スコーチ抑制剤を含む)は、最も好まれる。トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアネート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、低い分子量1,2−ポリブタジエン、およびポリクロロプレンがさらなる例である。共薬剤のさらに広範囲にわたるリストが、Cowperthwaiteらに1973年8月7日に発行された米国特許第3,751,878号、およびCottmanらに1994年5月10日に発行された米国特許第5,310,811号に見出される。
【0039】
補強剤および別の添加剤はまた、本発明のいくつかの実施形態に含まれる。補強剤の例は、シリカ(特にヒュームドシリカ)、カーボンブラック、およびチョップトファイバーである。医療用手袋の引裂強さを改良するためのファイバーの使用は、Wuらに2000年2月8日に発行された米国特許第6,021,524号に開示されており、浸された薄膜の引裂強さを改良するためのヒュームドシリカの使用は、Anandに1999年2月16日に発行された米国特許第5,872,173号に開示されている。酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤はまた、環境老化に対して保護するために含まれ得る。好ましい酸化防止剤は、ヒンダードフェノール化合物であり、その例は4−{[4,6−ビス(オクチルチオ)−s−トリアジン−2−イル]アミノ}−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、および重合された1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリンである。少量の別のゴム物質がまた、添加剤または混合薬剤として含まれ得る。少なくとも50%スチレン含有量を有するカルボキシル化されたスチレンブタジエンゴムの使用が好まれる。この物質は、反応性の補強剤として作用し、おそらく過酸化物共薬剤としてもまた、役立つように見え、付加的な引張強さを与える。ゴム形成およびゴム用具の製造の分野における当業者に公知である任意の別の添加物であり得るような、顔料および染料もまた含まれ得る。
【0040】
本発明の方法で使用される水性ラテックスは、天然ゴムまたは合成cis−1,4−ポリイソプレンのいずれかの水性ラテックスである。天然ゴムは、Hevea brasiliensis、Parthenum argentatum(一般に「グアユールゴム」として公知である)、およびFicus elasticaゴムの木を含むいくつかの原料から獲得され得る。Heveaでない原料から天然ゴムラテックスを獲得するための方法は、Cornishに1996年12月3日に発行された米国特許第5,580,942号に記載されている。天然ゴムラテックスは、高アンモニアラテックス、低アンモニアラテックス、および別のものを含む、いくつかの等級で利用可能である。すべてのそのような種類は、本発明の使用にとって適切である。本発明はまた、ラテックスに存在するタンパク質の量を減少するように処理されている天然ゴムラテックスに及ぶ。これらの工程のいくつかは、水を分離および除去するために遠心分離することを含み、別のものは2重の遠心分離を含み、最初の遠心分離の後に、水の追加および第2の遠心分離が続く。まだ別の工程は、タンパク質を消化する酵素の使用を含む。酵素方法の詳細は、全てTanakaらの米国特許第5,610,212号1997年3月11日、同第5,569,740号1996年10月29日、および同第5,585,459号1996年12月17日に見出される。商業的に利用可能な除タンパク質ゴムラテックスの例は、ALLOTEX(登録商標)であり、Tillotson Healthcare Corporation,Rochester,New Hampshire,USAから獲得できる。
【0041】
合成cis−1,4−ポリイソプレンは、米国ではThe Goodyear Tire&Rubber Company,Beaumont,Texas,USA.から市販され、西ヨーロッパではKraton Polymers Division of Ripplewood Holdings LLC,Bernis,Netherlandsから市販され、日本ではJapan Synthetic Rubber Co.,Ltd.、およびNippon Co.,Ltdから市販される。ポリマーは、イソブチルアルミニウムおよび四塩化チタンからなるチーグラー触媒、または細かく分割されたリチウム金属または有機リチウム化合物のようなアルカリ金属触媒上でイソプレンを重合することによって生成される。ポリイソプレン分野において公知である別の触媒が、同様に使用され得る。ポリマーはまた、アニオン重合、カチオン重合、およびフリーラジカル重合を含む工程によって調製可能である。これらの工程、およびそれらが行われる条件は、当該分野において公知である。架橋の前の典型的な合成cis−1,4−ポリイソプレンに関して、重量平均分子量は一般に、約750,000amu〜約950,000amuの範囲で、数平均分子量は一般に、約250,000amu〜約350,000amuの範囲である。チーグラー触媒経路によって調製された合成cis−1,4ポリイソプレンは、約96〜約98%のcis−1,4配向で結合された単量体単位を有する。アニオン重合によって作製されたそれらのものにおいて、約90%〜約92%の単量体単位がcis−1,4配向で結合される。本発明で使用するための好ましい合成cis−1,4−ポリイソプレンは、チーグラー触媒方法またはアニオン重合方法のいずれかによって生成されたものである。
【0042】
cis−1,4−ポリイソプレンのラテックスは、ゴム化合および処理の分野における当業者に公知である方法によって形成される。これらの方法は、水溶性媒体中のポリマーの有機溶液の乳化続く溶媒の除去、またはポリマーの液化および乳化条件下での水溶性媒体と液化ポリマーの混合のいずれかを含む。乳濁液は、種々の乳化剤によって安定化され得る。典型的な乳化剤は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、アラキン酸、およびリシン酸のカリウム塩およびナトリウム塩のような、ロジン酸およびより高級脂肪酸のカリウム塩ならびにナトリウム塩であり、そしてラウリル硫酸ナトリウムおよびラウリルスルホン酸ナトリウムのような、これらの酸の硫酸塩およびスルホン酸塩である。別の乳化剤は、長鎖脂肪酸エステルのヒドロキシルアミンのアミン塩、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムおよび塩化トリデシルベンゼンヒドロキシエチルイミダゾールのような第四級アンモニウム塩、カプリルアルコールおよびオクチルアルコールのようなより高級アルコールのリン酸エステル、ならびにソルビタンモノオレエートのようなオレイン酸のモノエステルおよびペンタエリスリトールである。ほとんどの場合、体積割合(有機物:水性)は約0.5:1〜約20:1で、最も良い結果にとって好ましくは約0.75:1〜約1.25:1の範囲であるが、各相の相対量は変化し得る。有機溶媒が使用される場合、適切な溶媒は脂肪族炭化水素であり、好ましくは5〜8個の炭素原子を含むもので、その例は、ペンタン、ペンテン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、およびテトラヒドロフランである。その溶媒は、溶媒のない水性ラテックスを残すために別の従来の方法のエバポレーションによって容易に除去される。所望の場合、ラテックスは次いで、従来の方法によって濃縮され、その1つの例は、Delpico、米国特許第4,160,726(1979年7月10日)およびTanakaら、米国特許第5,569,740(1996年10月29日)によって開示されているような限外濾過である。
【0043】
ラテックスの種々の成分は、均一に分散された固体または液滴を有する流体媒体を生成する任意の方法で混合され得る。好ましくは、個々の成分は最初、溶液または水溶性に基づいた乳濁液または分散物のいずれかのような、流体形態で提供される。個々の流体は次いで、ラテックスを形成するために単純な混合によって混ぜ合わされる。
【0044】
本発明の方法の加硫は、(i)薄膜形成より前のラテックスで(その場合、加硫は「前加硫」として言及される)、(ii)薄膜が形成および乾燥された後(「後加硫」)、(iii)薄膜が形成された後であるが、水を除去する前、または薄膜が形成される前、および薄膜が形成および乾燥された後の両方のいずれかで行われ得る。このように、前加硫は部分的または完全な加硫のいずれかであり得、部分的な前加硫に続いて、薄膜が形成された、あるいは形成および乾燥された後の加硫の完成が行われ得る。前加硫は、必要に応じて当該分野における公知の加硫触媒の存在下において、ラテックスを加熱すること、または高エネルギー放射線を適用することによって達成され得る。加熱するための温度および曝露時間は、所望の前加硫の度合いに基づいて容易に選択される。高エネルギー放射線についての詳細は、McGlothlinら、米国特許第6,329,444号、2001年12月11日に見出される。
【0045】
薄膜の中へのテックスの形成は、噴霧、ローリング、ドクターブレード、または当該分野において周知である種々の成形技術を含む任意の従来の方法によって達成され得る。多くの医療用および個人用の用具にとって、特にコンドーム、外科用および検査用手袋、ならびに指サックのような中空であるものはディップ成形が、薄膜を形成するのに特に有効および便利な方法である。ディップ成形は、成形部材(またはディップフォーマー)の使用を含み、その外側輪郭は最終の物品のそれと相補的である。成形部材はラテックスに浸され、次いで調節された割合で成形部材の表面の濡れたラテックスの薄フィルムを残すように除去される。所望の厚さが1つの浸漬で達成されない場合、2回以上の浸漬が、多層のフィルムを形成するために、浸漬の間で部分的に乾燥させて連続して行われ得る。ラテックスは、浸漬の前後で加硫状態に供され、水は最終的に最終の物品を残すために生じているフィルムから除去される。
【0046】
最終的な膜の厚さは、本発明にとって重要ではないが、好ましい膜はそれらの厚さが約0.02インチ(0.051cm)以下、最も好ましくは約0.001インチ(0.0025cm)〜約0.02インチ(0.051cm)である。外科用手袋にとって、特に好ましい厚さの範囲は、約0.003インチ〜約0.015インチ(約0.0076cm〜約0.038cm)である。コンドームにとって、特に好ましい厚さの範囲は、約0.002インチ〜約0.005インチ(約0.005cm〜約0.013cm)である。カテーテルバルーンのような別の用具は、特に好ましい異なる範囲を有し得るが、全ては上記に挙げた広い範囲内であり得、全てはそのような用具の製造における当業者に容易に明らかであり得る。
【0047】
膜がディップ成形によって形成される場合、改良された膜の品質は、ラテックスより先に液体の凝固剤の溶液中に成形部材を浸すことによって達成され得る。ゴム工業に使用される凝固剤が、本明細書中で使用され得る。典型的な凝固剤は、多価金属塩であり、その例は硝酸カルシウムおよび硝酸カルシウムと塩化カルシウムの混合物である。
【0048】
加硫が膜で行われる場合、任意の種々の公知である加硫方法が使用され得る。これらの中に含まれるものは、ホットエア硬化炉、高エネルギー放射線を用いる膜の照射、および熱い液体媒体浴中の膜の浸漬である。
【0049】
高エネルギー放射線は電子ビーム放射線、例えば約200KeV〜約3MeVの電圧および約25Ma〜約200Maの電流によって、またはガンマ放射線、例えば放射線源として60Co、137Cs、210Po、または226Raのいずれかの使用によって適用され得る。電子ビーム放射線およびガンマ放射線の両方は、ラテックス中の化学増感剤の包含によって増強され得る。上記された過酸化物化合物は、増感剤として役立ち得る。別の増感剤は、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートである。放射線量は変化し得る。増感剤が存在しない場合、通常線量範囲は、約20メガラド〜約40メガラドの範囲で、好ましくは約25メガラドである。増感剤が使用される場合、ガンマ放射線にとっての好ましい線量範囲は、約1メガラド〜約5メガラドで、電子ビーム放射線にとっての好ましい線量範囲は、約10メガラド〜約20メガラドである。
【0050】
加硫の好ましい方法は、液体媒体浴中での膜の浸漬であり、一般に液体硬化方法(LCM加硫)として言及されている。一般に押出されたゴムに適用されるが、ラテックスの膜に適用されるようなこの方法の詳細は、国際特許出願番号WO01/77210,Apex Medical Technologies,Inc.、公開日2001年10月18日、およびその米国特許対応物、2000年4月11日に出願された係属中の特許出願第09/547,366号に見出される。この目的のために使用され得る液体媒体は、融解された無機塩類、オイル、グリコール、液化された金属、水、および生理食塩水溶液を含む。融解された無機塩類、シリコーンオイル、およびグリコールは好まれ、融解された無機塩類が最も好まれる。適切な融解された無機塩類の例は、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、およびカリウム、ナトリウムおよびリチウムのハロゲン化物、ならびにこれらの塩類の組み合わせである。このタイプの塩類の組み合わせは、Heatbath Corporation,Detroit,Michigan,USAおよびHubbard−Hall Inc.,Inman,South Carolina,USAのような業者から市販される。適切な商業用塩混合物の例は、Hubbard−Hall,Inc.のQUICK CURE275であり、その主な成分は、約315°F〜約650F°(157℃〜343℃)の範囲の融解温度で、硝酸カリウム(約50重量%)、亜硝酸ナトリウム(約30重量%)、および硝酸ナトリウム(10%重量未満)である。別の例は、Heatbath CorporationのPARCURE275およびPARCURE300である。
【0051】
液体媒体浴が使用される場合、最適温度および浴へのラテックスの曝露時間はラテックス組成物で変化し得る。天然ゴムラテックスにとって、例えば、450°F(232°)を超えないことが最善ではあるが、合成cis−1,4−ポリイソプレンにとって、少し高い温度が使用され得る。一般に、好ましい温度範囲は約100℃〜約350℃である。有機過酸化物硬化システムについての曝露時間は、例えば、過剰な過酸化物は溶媒または水抽出によって浸出され得るが、そのシステムにおいて実質的に全ての有機過酸化物が、ホモリシスに開裂されることを確実にするために十分長いことが好ましい。最小限6個の半減期の過酸化物化合物が好ましく、8個以上の半減期が最も好ましい。
【0052】
薄膜の加硫は、膜と分子酸素を接触せずに行われることが好ましい。これは酸素除外の液体媒体浴の使用によって、容易に達成され得るが、密閉型、無酸素雰囲気、酸素除去化学物質、およびバリアコーティングの使用によってもまた達成され得る。別の方法は当業者に明らかである。バリアコーティングは膜を、まだバリア物質の溶液中の成形部材上で浸すことによって適用され得るか、あるいは、スプレーコーティングまたはブラシコーティングのような別の従来の方法によるバリアーコーティングを適用することによって、適用され得る。バリアーコーティングとして効果的に役立つ物質は、標準およびヒドロゲルタイプのポリビニルアルコールおよびアクリルならびにメタクリル塗膜である。いったん塗膜によって保護されると、膜は慣例のホットエア硬化炉中で加硫され得る。
【0053】
以下は、本発明の方法で使用され得るディップ成形および硬化の手順の1つの例である:
(a)天然ゴムラテックスまたは合成ゴムラテックスのいずれかを、加硫剤、およびおそらく補強剤、安定剤、顔料のような添加剤、あるいは2以上のそのような添加剤と混合する。
【0054】
(b)その混合されたラテックスを、次いで熱または放射線によって、部分的にまたは完全に加硫し得る。
【0055】
(c)成形部材を、必要に応じて凝固剤を含む浴の中に部材を浸すことによって化学凝固剤を用いてコーティングし、次いで、部材を引き出し、部材の表面に残される凝固剤の膜を乾燥させる。
【0056】
(d)凝固剤を含むまたは含まない成形部材を、混合されたラテックスの浴に浸す。
【0057】
(e)成形部材を、浴からゆっくり引き出す。凝固剤コーティングが最初に適用される場合、成形部材の表面は湿ったラテックスゲルで覆われる。凝固剤コーティングが適用されない場合、表面は液体のラテックスの膜で覆われる。
【0058】
(f)ラテックスゲルの過剰な水または成形部材表面の膜を、一般にスイープガス(sweep gas)または不完全真空のいずれかを有するホットエア対流炉中のエバポレーションによって取り除く。ホットエア処理は、赤外線、マイクロ波または高周波放射線、あるいはエバポレーションを促進させるための別のタイプのエネルギーを用いて補足され得る。乾燥が真空下で行われる場合、最後の加硫より前にラテックスに加熱された空気を適用することを必要としない。
【0059】
(g)成形部材を、ラテックスを硬化するための十分な時間、加熱された液体媒体浴中に浸す。
【0060】
(h)硬化されたラテックスの膜を有する成形部材を、加熱された媒体浴から引き出し、空気中または水の流れの中のいずれかで冷やす。水は、媒体浴から沈殿し得る任意の凝固された塩を洗い流すために使用され得る。
【0061】
(i)完成された加硫ラテックスの物品を、成形部材から手動または機械的にはがす。
【0062】
以下に示す例は、例示の目的のために提供され、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
この実施例は、合成cis−1,4−ポリイソプレンの水性ラテックスについての組み合わされた硫黄および過酸化物硬化システムの使用ならびに硫黄促進剤の欠如を例示する。
【0064】
(物質)
約60%固体、Kraton Polymersの製品番号IR−RP401、を含む合成cis−1,4−ポリイソプレンラテックスを使用した。
【0065】
40%固体の過酸化ジクミル分散物のマスターバッチを、高い剪断下で2分間、以下の物質を混合することによって調製した:100gの過酸化ジクミル、35gのトルエン、5.6gのオレイン酸、101gの脱イオン水、および2.6gの30重量パーセントの水酸化カリウム水溶液。この結果により過酸化ジクミルが均一に分散された分散物が生じた。
【0066】
SARET231のマスターバッチ(過酸化ジクミルのための二官能性のメタクリレート共薬剤)分散物を、高い剪断下で2分間、35gのトルエンと5.6gのオレイン酸を混合し、次いでその結果生じた混合物中に100gのSARET521を完全に溶解することによって調製した。これを次いで、101gの脱イオン水および2.62gの30重量パーセント水酸化カリウム水溶液に加えた。これらの物質を次いで、高い剪断下で2分間、混合した。これは均一の分散物を生成した。
【0067】
水分散されたヒュームドシリカをまた、補強剤として利用した。そのシリカは、Cabot Corporation,Boston,Massachusetts,USAによって提供された15%(重量で)水溶性分散物(CABO GUARD LT−122)であった。
【0068】
硫黄は、Akron Dispersions,Akron,Ohio,USAによって提供された製品名Bostex410を有する68%活性硫黄分散であった。Tiarco,Division of Textile Rubber and Chemical Co.,Inc.,Dalton,Georgia,USAによって提供された製品名Octocure462を有する62%活性酸化亜鉛からなる酸化亜鉛分散もまた、使用された。
【0069】
含まれたさらなる成分は、補強剤としての5phrの高スチレン含有量のカルボキシル化SBRゴムラテックス(Reichhold Chemicals,Research Triangle Park,North Carolina,USAから提供されたTYLAC68333−00−20)、0.5phrの界面活性剤、および2phrの酸化防止剤4−{[4,6−ビス(オクチルチオ)−s−トリアジン−2−イル]アミノ}−2,6−ジ−t−ブチルフェノールであった。
【0070】
全ての物質を、非常に低い剪断条件下で共に混合し、使用する前に、脱イオン水で45%合計固形物含有量に希釈した。硫黄の量という点でのみ異なり、各々0.2phrの酸化亜鉛および1phrのヒュームドシリカを含む、2つの組成物を調製した。
【0071】
凝固剤溶液を、約200g硝酸カルシウム、5gのIgepalCO−630界面活性剤(Rodia,Inc.,Cranbury,New Jersey,USAによって供給された)、および795g変性エチルアルコールを組み合わせることによって調製した。
【0072】
(試験膜の調製)
円筒型のガラス成形具を凝固剤溶液の中に浸漬し、5秒間とどまらせ、次いで引き出して風乾させた。成形具を次いで、5秒間混合されたラテックスの中に浸し、次いでゆっくり引き出した。成形具を次いで、60分間、60℃で、ホットエア炉中で乾燥した。いったん乾燥されると、成形具およびその接着性の膜を、177℃で9分間、融解塩浴中に浸した。結果として生じた膜を次いで、塩浴から取り除き、すすぎ、むいて、引張試験のために準備した。各処方物について3つの膜を調製して、引張試験のための3つの別々の試験片を得た。
【0073】
(引張特性の測定)
標準的なコンドームリング引張試験片を調製し、ASTM規格D3492に従って試験した。各々の一連の3つのテストからの引張値の中央値を、表1に記載する。
【0074】
【表1】

表Iの係数値は好ましく低く、引張強さおよび極限伸びは、好ましくは高い。
【0075】
(実施例2)
この実施例はさらに、合成cis−1,4−ポリイソプレンの水性ラテックスについて、硫黄促進剤または過酸化物共薬剤のいずれも使用せずに、単独および組み合わせの両方、ならびに種々の量で、硫黄および過酸化物硬化システムを検討する。その目的は、実施例1において観測された引張特性における改良に対するこれらの変動の効果を調べることであった。
【0076】
物質を調製するための手順は、実施例1のものと同じであり、利用された引張試験手順は、ASTM D412であり、このASTM D412は一般に、外科用手袋の引張試験に使用されるが、実施例1で使用されたASTM D3492を用いて獲得されたものと比較できる結果を生じる。トルエン膨張試験もまた、架橋の度合いを部分的に定量化するために行った。膨張率の減少は、架橋密度の増加に関係している。炭素−炭素結合がより短く、それによって共により近くにポリマー鎖を保持するので、炭素−炭素架橋は、炭素−硫黄(C−(S)−C)架橋より大きくトルエン膨張を低下させる傾向がある。このように、トルエン膨張値は、架橋の異なるタイプに起因して架橋密度と正確な関係を提供しないが、トルエン膨張値はそれにもかかわらず、架橋密度を比較する手段として有益である。
【0077】
トルエン膨張値は、百分率として測定され、直径0.25インチ(0.635cm)の円形の鋼型を使用して、試験される各ゴムシートから3つの円盤を切断することによって獲得された。その円盤を、10mLのトルエンで満たされた小さいガラスジャーの中に置き、30分間膨張させた。その円盤を次いで、取り除きそれらの直径を即座に測定した。その膨張率を、次の式で計算した。
【0078】
【数1】

種々のゴム組成物についての引張特性およびトルエン膨張率を、以下の表IIに記載する。
【0079】
【表2】

残りの試験組成物と硫黄が存在しない3つの試験組成物(試験番号2.10、2.14、2.18)との比較は、任意の量の硫黄の添加は極限伸びを増加させ、500%引っ張り係数を減少させる結果を生じることを示す。比較はまた、圧倒的な数の試験組成物において、硫黄を用いる加硫は、引張強さの増加を生じさせると示す。また、過酸化物加硫単独で、たとえ共薬剤を用いたとしても、500%引っ張り係数を減少させながら、引張強さを維持することは可能ではないことは、次の実施例から記述される。
【0080】
(実施例3)
この実施例は、天然ゴムラテックスに適用されるような本発明の工程を例示する。
【0081】
混合物質を、以下の表IIIに記載された量の硫黄および過酸化ジクミル、さらに2phrヒュームドシリカおよび0.5phrの界面活性剤ならびに実施例1で使用された2phrの酸化防止剤から構成した。酸化亜鉛は含まれず、天然ゴムに固有である補強構造の点で、SBRゴムもまた含まれなかった。同じ試験手順を使用し、その結果を以下の表IIIに記載する。
【0082】
【表3】

これらの結果とcis−1,4−ポリイソプレンで獲得される対応する結果との間の相違は、硫黄加硫は、小さい改良点が、極限伸び(増加)および500%引っ張り係数(減少)に見られるものの、引張強さに改良点を生じないように見えることである。硫黄はまた、cis−1,4−ポリイソプレンラテックスよりも天然ゴムラテックスにおいてトルエン膨張値でより少ない効果を有する。
【0083】
(例4−比較)
比較のために、この例は、硫黄ではなく過酸化物で加硫された一連のラテックス処方物での試験結果を示す。過酸化物共薬剤を用いたものと用いていないものの両方の処方物を試験し、共薬剤に対する過酸化物の異なる割合、ならびに過酸化物および共薬剤の異なる総量も試験した。
【0084】
材料、混合手順、および試験手順は、過酸化物共薬剤がSartomer521(Sartomer231と同一の二官能性のメタクリレートであるが、スコーチ抑制剤を含む)であることを除いて、前述の実施例のものと同じで、1phrシリカのみを使用して、硫黄、酸化亜鉛、SBRゴム、界面活性剤、酸化防止剤のいずれも使用しなかった。その試験結果を、表IVに記載する。
【0085】
【表4】

表IVのデータは、共薬剤が500%引っ張り係数を低下させ得るが、同時に係数を低くし、極限引張強さを増加し、かつ極限伸びを増加させることは可能ではなかったことを示す。
【0086】
(例5−比較)
さらなる比較のために、この例は、硫黄ではなく過酸化物で加硫されたさらなる一連のラテックス処方物での試験結果を示す。これらの処方物は、2phrシリカ(例4のような1phrではなく)およびSBRゴムラテックス、さらに界面活性剤、および実施例1の酸化防止剤の形でさらなる補強試薬を含むことによって例4のものとは異なった。例4のように、過酸化物共薬剤(Sartomer231)を用いたものと用いてないものの両方の処方物を試験し、共薬剤に対する異なる割合の過酸化物、ならびに過酸化物および共薬剤の異なる総量も試験した。
【0087】
材料、混合手順、および試験手順は、前述の例のものと同じであり、試験結果を表Vに記載する。
【0088】
【表5】

表IVのデータと表Vのデータの比較は、追加の補強剤の含有が、3つ全ての改良、すなわち、引っ張り係数を減少させ、引張強さを増加させ、および極限伸びを増加させることを成し遂げる目的を達成できないことを示す。
【0089】
上記のものは、主に例示の目的のために提供されている。本発明の精神および範囲内のままでさらなる変更および改良がなされ得ることが、当業者に容易に明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄い壁のゴムの物品を形成するための方法であって、該方法が以下:
(a)加硫可能なゴム、硫黄を含む加硫剤、炭素−炭素架橋を形成する架橋剤、および水を含む水性ラテックスを形成する工程であって、該ラテックスが第2級アミン基を含む加硫促進剤を欠いている、工程;および
(b)該薄い壁のゴムの物品の中に該水性ラテックスを以下の(i)〜(iii)の工程:
(i)膜の中に該水性ラテックスを形成する工程、
(ii)該膜から水をエバポレーションする工程、および
(iii)工程(i)、工程(i)と(ii)との間、工程(ii)の後、または工程(i)の前および工程(ii)の後のいずれかで該加硫可能なゴムを加硫条件に供する工程、
によって形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記水性ラテックスが、第2級アミン基を含む全ての反応種を欠く、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性ラテックスが、硫黄加硫促進剤を欠く請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加硫可能なゴムが、タンパク質のない合成cis−1,4−ポリイソプレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記硫黄を含む加硫剤が、元素状態で存在する硫黄であり、炭素−炭素架橋を形成する前記架橋剤が有機過酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)が、膜の中に前記水性ラテックスを形成する工程、該膜から水をエバポレーションする工程、該膜上に酸素バリアを形成する工程、および該膜から水をエバポレーションした後、該膜を加硫条件に供する工程、を包含する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水性ラテックスが、二官能性のアクリル酸エステル、シリカ補強剤、および安定化させる量の酸化防止剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法によって形成された、外科用手袋。
【請求項9】
請求項1に記載の方法によって形成された、コンドーム。
【請求項10】
請求項1に記載の方法によって形成された、カテーテルバルーン。

【公表番号】特表2006−502024(P2006−502024A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543028(P2004−543028)
【出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/030441
【国際公開番号】WO2004/033177
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(504421899)リージェント・メディカル・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】