説明

保存眼科用組成物

眼科用組成物は、担体成分、組成物を保存するのに有効な量で存在するオキシ−クロロ成分、および少なくとも1つの付加的な成分、例えば組成物の保存効果を増強するのに有効な量で存在するボレート成分及び/又はグリセリン成分を含む。また、組成物は、好適には、1つまたはそれ以上の他の成分、例えばキノキサリン成分などの治療成分、および組成物に1つまたはそれ以上の機能性をもたらすのに有効なポリアニオン性成分なども含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存眼科用組成物および眼科用組成物を保存する方法に関するものである。より詳細には、本発明は、眼に薬剤を送達するのに有用な組成物、ドライアイを処置するための組成物およびその他の方法で眼をケアするための組成物、ならびにコンタクトレンズケア組成物など、保存されることにより有益性がもたらされる眼科用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼科用組成物は、組成物のタイプに依存して、しばしば、少なくとも1種の保存剤を利用する。このような組成物に包含された特定の治療薬は、特定の保存剤に敏感なことが多く、これらの保存剤によって不活性化することがある。この悪影響は、幾つかのケースにおいては、保存剤が低減された濃度で存在する場合に最小化または排除することができる。更に、このような低減された濃度の保存剤は、特定の保存剤によりもたらされ得る眼への刺激または他の悪影響を防止する上でも有利であり得る。しかし、幾つかのケースにおいては、低減された保存剤濃度は、USP、EP-A及び/又はEP-Bの保存剤効能試験または保存剤効能基準などの特定の基準に合格しない組成物をもたらし得る。その上、保存剤は長い期間の間に不活性化された状態になることがあり、従って、保存剤の初期濃度を比較的高くする必要がある。この不活性化は、例えば組成物に含まれている1つまたはそれ以上の成分に晒されることにより促進される可能性がある。
【0003】
溶液、エマルションおよび懸濁液などの様々な眼科用組成物は、投与用治療薬または治療成分と組み合わせて、眼に、または眼を介して使用される。例えば、水中油型エマルションは、眼に投与されるべき治療成分に対する担体として使用することができる。このような組成物は、例えば保存剤を使用して、及び/又はこの組成物にとって重大な不利な影響をもたらさない濃度での保存剤、またはこの組成物が投与されるヒトもしくは動物にとって重大な有害な影響をもたらさない濃度での保存剤を用いて、効果的に保存されることによって有益性がもたらされることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの組成物中における保存用成分の増強された効果をもたらし、これにより、保存剤の使用及び/又は上記のような不利な影響をもたらさない低減された濃度での保存剤の使用を可能にする眼科用組成物に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
新たな保存眼科用組成物および眼科用組成物を保存する方法が見出された。本発明は、効果的に保存され、好適には、保存効果が増強された眼科用組成物を提供する。本発明は、有利には、保存用成分の使用、及び/又は例えば副作用などの有害な影響が低減される低められた濃度での保存用成分の使用を可能にする組成物を提供する。
【0006】
一つの広い要旨では、本発明は、好適には水性成分を含む担体成分、治療学的に有効な量の治療成分、組成物を保存するのに有効な量なオキシ−クロロ成分、および組成物の保存効果を増強するのに有効な量のボレート成分を含む眼科用組成物を提供する。一つの実施態様では、本発明の組成物またはオキシ−クロロ成分の保存効果は、ボレート成分を含まない点を除いて実質的に同一の組成物に比べ、増強されている。好適には、本発明の組成物は、組成物の保存効果を更に高めるのに有効な量のグリセリンを含む。また、本発明は、眼科用組成物中におけるオキシ−クロロ成分の効果、好適には保存効果を増強する方法も提供する。このような方法は、オキシ−クロロ成分を含む眼科用組成物にこのオキシ−クロロ成分の効果を高めるのに有効なある量のボレート成分を組み入れることを含み得る。
【0007】
一つの実施態様では、眼科用組成物は水性成分と油性成分を含み、有利には、水中油型エマルションの形態である。
【0008】
一つの実施態様では、治療成分はキノキサリン成分である。このキノキサリン成分は、例えば、これらに限定するものではないが、(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンなどのキノキサリン、これらのキノキサリンの眼科的に許容可能な酸付加塩などのキノキサリンの塩、およびこれらのキノキサリンとこれらの塩の混合物を含み得る。
【0009】
一つの実施態様では、本キノキサリン成分は、次の式:
【化1】

ならびに上述の式の眼科的に許容可能な酸付加塩および上述の式と前述の塩との混合物を有している。式中のR1はH、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、または1〜4個の炭素原子を含有するアルコキシ基であってよく、R2はH、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、例えばメチル基、または1〜4個の炭素原子を含有するアルコキシ基であってよい。2−イミダゾリン−2−イルアミノ基は、このキノキサリン核の5-、6-、7-または8-位置のうちのいずれにあってもよい。式中のR3、R4およびR5は、それぞれ、このキノキサリン核の残りの5-、6-、7-または8-位置のうちのいずれか一つに位置していてよい。5-、6-、7-および8-のそれぞれは、Cl、Br、H、または1〜3個の炭素原子を含有するアルキル基、例えばメチル基であってよい。例えば、これらに限定するものではないが、本キノキサリンは以下の式の1つを有していてよい:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

一つの非常に有用なキノキサリン成分は、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンから選択される1つまたはそれ以上のキノキサリン、これらのキノキサリンの塩、およびこれらのキノキサリンとこれらの塩の混合物を含む。
【0010】
一つの実施態様では、オキシ−クロロ成分は亜塩素酸塩成分を含む。オキシ−クロロ成分は安定化二酸化塩素または安定化オキシ−クロロ錯体であってよい。
【0011】
オキシ−クロロ成分は、組成物の約1ppm〜約5000ppm、例えば約10ppm〜約1000ppm、または約20ppm〜約500ppmの量で存在していてよい。有利には、オキシ−クロロ成分は約75ppmより多い量、例えば約75ppm超から約500ppmまで、もしくは約1000ppmまで、または約5000ppmまでの範囲の量で存在する。
【0012】
一つの実施態様では、ボレート成分は、これらに限定するものではないが、ホウ酸、ホウ酸の塩、例えばボレート、およびホウ酸とホウ酸の塩の混合物を含んでよい。ボレート成分は、組成物の約0.01%〜約10%(w/v)の範囲、例えば約0.05%または約0.1%〜約2%または約5%の量で存在してよい。一つの実施態様では、ボレート成分は約0.01%〜約3%の量で存在する。
【0013】
一つの実施態様において、本組成物中におけるマンニトールの存在は、これらの組成物の保存効果に有害な影響を有することが判明した。一つの特に有用な実施態様では、本発明の組成物は、この有害な影響を実質的に排除すべく、マンニトールおよび同様な物質を実質的に含まない。
【0014】
一つの実施態様では、本発明の組成物は、保存効果を更に高めるのに有効な量のグリセリン成分を含む。グリセリン成分は、オキシ−クロロ成分またはオキシ−クロロ成分とボレート成分の組合せの保存効果を高めるのに有効な量で存在していてよい。有利には、グリセリン成分を含んだ場合のオキシ−クロロ成分または本組成物の保存効果は、グリセリン成分を含まない点を除いて実質的に同一の組成物に比べ、増強されている。グリセリン成分は、ボレート成分を含む組成物中に存在していてよい。更に、グリセリン成分は、ボレート成分を含んでいない組成物中に存在していてもよい。
【0015】
また、本発明は、水性成分、油性成分、およびキノキサリン成分などの治療成分を含む眼科用組成物も提供する。一つの実施態様では、上述の水性成分のpHは、治療成分、例えばキノキサリン成分の所望の分配、例えば、治療成分(キノキサリン成分)の主要部分、すなわち約50%またはそれ以上の量、好適には約50%より多い量が水性成分、例えば水性相中に、または油性成分、例えば油性相中に存在するような分配をもたらすのに有効であり、また、このような分配をもたらすべく制御または調節されてよい。
【0016】
また、本発明は、眼科用組成物中における治療成分(キノキサリン成分)の所望の分配をもたらすための方法も提供する。この方法は、水性成分および非水性成分を含む組成物のうちの水性成分のpHを所望の値に設定または調節するステップを含んでよい。
【0017】
組成物のpHは、約3.0〜約9.0の間、例えば約4.0または約5.0〜約7.5または約8.5の間、または約7.5〜約8.0の間、例えば約7.9であってよい。
【0018】
一つの実施態様では、治療成分は、この成分の約50%より多い量が水性成分中に存在するように分配される。例えば、治療成分は、この治療成分の約60%より多い量、もしくは約70%より多い量、もしくは約80%より多い量、または約90%より多い量が水性成分に存在するように分配されてよい。
【0019】
あるいは、治療成分は、この成分の約50%より多い量が油性成分に存在するように分配されてもよい。例えば、治療成分は、この治療成分の約60%より多い量、もしくは約70%より多い量、もしくは約80%より多い量、または約90%より多い量が油性成分に存在するように分配されてよい。
【0020】
一つの有用な実施態様では、本発明の眼科用組成物は、水性成分、この組成物が眼に投与されたときに眼に潤滑性をもたらすのに有効な量で存在するポリアニオン性成分、約75ppm超の濃度で存在するオキシ−クロロ成分、およびボレート成分を含まない点を除いて実質的に同一の組成物に比べてこの組成物の保存効果を増強するのに有効な量で存在するボレート成分を含む。
【0021】
ここで説明されているそれぞれの特徴およびあらゆる特徴、ならびにこのような特徴の2つまたはそれ以上の各組合せおよびあらゆる組合せは、このような組合せに包含されるこれらの特徴が相互に矛盾しないならば、本発明の範囲に含まれる。
【0022】
本発明のこれらの要旨および利点、ならびに他の要旨および利点は、以下の詳細な説明、実施例および請求項において明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、保存眼科用組成物、例えば、組成物中における保存剤の効果または効能が増強されているような保存眼科用組成物に関するものである。また、本発明は、組成物の水性成分と組成物の非水性成分、例えば油性相との間で、眼科用組成物中における治療成分の分配を制御または調節することにも関係している。一つの実施態様では、組成物は、ドライアイを処置するための点眼薬、他の方法で眼をケアするための点眼薬、およびコンタクトレンズをケアするための点眼薬として、眼に、または眼を通じて薬剤を送達するのに有用な眼科用組成物であり、これらの組成物では、保存されることによって有益性がもたらされる。特定の実施態様では、本発明の組成物は、例えば人工涙液組成物、洗眼薬組成物、および眼の手術中に使用するための潅流用組成物などであってよい。
【0024】
本発明の組成物は、有利には、眼科的に許容可能であり、例えば眼に対して実質的に無毒及び/又は非刺激性及び/又は非損傷性であり、組成物が投与されるヒトまたは動物に少なくとも1つの利益をもたらすことができ、例えばヒトまたは動物に投薬治療を施すことができ、また、眼の細胞および組織に対する保護機能を提供することができるなどの利点を有している。
【0025】
本発明は、オキシ−クロロ含有保存用成分の包含を提供する。保存用成分は1つまたはそれ以上の保存剤を含んでいてよい。有用な保存剤は、細菌または微生物との化学的または物理化学的相互作用を通じて抗菌活性を誘導し得る保存剤を含む。
【0026】
好適には、オキシ−クロロ成分は、眼科的に許容可能なまたは安全な濃度で、担体成分、例えば液体水性媒質などの水性担体成分中に存在する。
【0027】
選択されたオキシ−クロロ成分の濃度は、例えば、この特定のオキシ−クロロ成分が保存組成物中の細菌、真菌、及び/又は原虫の増殖を防止する、または殺す効力に依存する。
【0028】
本発明による保存剤として非常に有用なオキシ−クロロ成分は、次亜塩素酸塩成分、例えば次亜塩素酸塩;塩素酸塩成分、例えば塩素酸塩;過塩素酸塩成分、例えば過塩素酸塩;および亜塩素酸塩成分、例えば亜塩素酸塩を含む。
【0029】
特に有用なオキシ−クロロ成分は亜塩素酸塩成分を含む。亜塩素酸塩成分の例は、これらに限定するものではないが、安定化二酸化塩素(SCD)、アルカリ金属およびアルカリ土類金属亜塩素酸塩などの金属亜塩素酸塩、ならびにこれらの混合物を含む。工業用グレードの亜塩素酸ナトリウムは非常に有用なオキシ−クロロ成分である。多くの亜塩素酸塩成分、例えばSCDの正確な化学組成は完全には理解されていない。特定の亜塩素酸塩成分の製造または生産については、McNicholasの米国特許第3,278,447号に記載されており、この特許は、参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる。有用なSCD製品の特定の例は、Rio Linda Chemical Company, Inc.からDura Klorという商標で販売されている製品、およびInternational Dioxide, Inc.からAnthium Dioxideという商標で販売されている製品を含む。
【0030】
本発明の別の広い要旨においては、オキシ−クロロ成分は、少なくとも保存を助長するのに有効な量で組成物中に存在し、例えば本組成物の1つまたはそれ以上の成分を保存するのに有効な量で組成物中に存在する。好適には、オキシ−クロロ成分は、組成物中の他の成分、例えば、組成物に含まれている治療成分、例えばキノキサリン成分などの機能発揮に実質的にまたは有意に悪影響を及ぼさないように選択される。
【0031】
一つの実施態様では、オキシ−クロロ成分は約0.01ppmまたはそれ以上の濃度で使用される。例えば、オキシ−クロロは約0.1ppm〜約4000ppmまたは約5000ppmの範囲の量で使用されてよい。別の例では、オキシ−クロロは約0.1ppm〜約2000ppmまたは約3000ppmの範囲の量で使用されてよい。別の例では、オキシ−クロロは約0.1ppmまたは1ppm〜約500ppmまたは約1000ppmの範囲の量で使用されてよい。一つの実施態様では、オキシ−クロロは約1.0ppm〜約500ppmの範囲の量で存在する。
【0032】
本発明の組成物におけるオキシ−クロロ成分の非常に効果的な濃度は約75ppmより大きい。このような濃度は、組成物の他の成分に悪影響を及ぼすことなく、また、組成物が投与されるヒトまたは動物に有意な悪影響をもたらすことなく、組成物を非常に効果的に保存する。このような濃度のオキシ−クロロ成分は、本明細書の別の箇所で説明されているように、ボレート成分及び/又はグリセリン成分と共に、増強された保存効果を提供し、許容可能な長い製品貯蔵寿命をもたらす。有利には、オキシ−クロロ成分は、約75ppmより多い量から約2000ppmもしくは約3000ppmまたは約5000ppmまでの範囲の量で存在する。
【0033】
本発明の一つの重要な特徴は、本発明の組成物中にボレート成分を包含することである。ボレート成分は、本発明の眼科用組成物におけるオキシ−クロロ成分の効果を増強するのに有効であることが示されている。例えば、ボレート成分は、本発明の眼科用組成物におけるオキシ−クロロ成分の抗菌活性及び/又は抗真菌活性を増強することができる。一つの実施態様では、ボレート成分は、ボレート成分を含まない点を除いて実質的に同一の組成物に比べ、組成物の貯蔵寿命を長くする。現在有用なボレート成分は、これらに限定するものではないが、ホウ酸、ホウ酸の塩など、およびホウ酸とホウ酸の塩との混合物を含む。例は、これらに限定するものではないが、ホウ砂、四ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、オルトホウ酸、メタホウ酸、これらの混合物などを含む。更に、本発明は、あらゆる適切なホウ素含有化合物、例えば、本発明の組成物において眼科的に許容可能であり、本発明に従って組成物の保存効果を増強するのに有効なホウ素含有化合物の使用を包含する。
【0034】
ボレート成分は、組成物におけるオキシ−クロロ成分の効果を増強するのに有効であり得るあらゆる量で組成物中に存在していてよい。一つの実施態様では、ボレート成分は約0.001%(w/v)またはそれ以上の濃度で組成物に用いられる。例えば、ボレート成分は約0.001%〜約10%(w/v)または約20%(w/v)の範囲の量で使用されてよい。別の例では、ボレート成分は約0.005%〜約5%(w/v)または約10%(w/v)の範囲の量で使用されてよい。別の例では、ボレート成分は約0.005%または0.01%〜約2%(w/v)または約4%(w/v)の範囲の量で使用されてよい。有利には、ボレート成分は約0.01%〜約1%(w/v)の範囲の量で存在する。
【0035】
本発明の別の重要な要旨においては、グリセリン成分、例えば、これらに限定するものではないが、グリセリンおよび同様な化合物、ならびにこれらの混合物などが、組成物におけるオキシ−クロロ成分の効果を増強することができる。例えば、グリセリン成分は、組成物がボレート成分も含んでいるときに、組成物におけるオキシ−クロロ成分の効果を増強することができる。グリセリン成分は、オキシ−クロロ成分の効果を増強するのに有効なあらゆる量で組成物中に存在していてよい。例えば、グリセリン成分は、組成物におけるオキシ−クロロ成分の抗菌活性及び/又は抗真菌活性を高めることができる。一つの実施態様では、グリセリン成分は、グリセリン成分を含まない点を除いて実質的に同一の組成物に比べ、組成物の貯蔵寿命を長くする。グリセリン成分は、水性成分と油性成分とを有するエマルションを含む眼科用組成物の保存効果を増強するのに非常に有用である。
【0036】
一つの実施態様では、グリセリン成分は約0.001%(w/v)またはそれ以上の濃度で組成物に用いられる。例えば、グリセリン成分は約0.001%〜約30%(w/v)の範囲の量で使用されてよい。グリセリン成分は、約0.005%もしくは約0.01%または約0.1%〜約10%(w/v)もしくは約15%(w/v)もしくは約20%(w/v)または約30%(w/v)の範囲の量で用いられてよい。好適には、グリセリン成分は、約0.1%〜約5%(w/v)の範囲の量で存在する。
【0037】
本発明の更なる重要な要旨においては、本発明の組成物はある種の炭水化物及び/又はアルコールもしくは糖アルコール(即ちポリオール)を実質的に含んでいない。例えば、組成物は、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなど、およびこれらの混合物を実質的に含んでいなくてよい。一つの実施態様では、オキシ−クロロ成分は、本明細書の別の箇所で述べられているように、1つまたはそれ以上の炭水化物、アルコール及び/又はポリオールを含んでおらず、このような物質を含んでいる点を除いて、例えば1.5%(w/v)の1つまたはそれ以上のこのような炭水化物、アルコール及び/又はポリオールを含んでいる点を除いて実質的に同一の組成物と比べ、1つまたはそれ以上の高められた効果、好適には高められた保存効果を有する組成物に含められる。一つの特に有用な実施態様においては、組成物はマンニトールを実質的に含んでいない。
【0038】
一つの実施態様では、マンニトールを実質的に含んでいない本発明の組成物は、1.5%(w/v)のマンニトールを含んでいる点を除いて実質的に同一の組成物に比べ、増強された保存効果を有している。一つの実施態様では、マンニトールを実質的に含んでいない本保存組成物は、1.5%(w/v)のマンニトールを含んでいる点を除いて実質的に同一の組成物に比べ、より長くなった貯蔵寿命を有している。
【0039】
治療成分が本発明の組成物に含められてよい。有用な治療成分の例は、これらに限定するものではないが、NMDAアンタゴニスト;ベータ−ラクタム抗生物質などの抗菌物質、例えばセホキシチン、n-ホルムアミドイルチエナマイシンおよび他のチエナマイシン誘導体、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、カルベニシリン、コリスチン、ペニシリンG、ポリミキシンB、バンコマイシン、セファゾリン、セファロリジン、キブロリファマイシン、グラミシジン、バシトラシンおよびスルホンアミド;ゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシン、シソミシンおよびトブラマイシンなどのアミノグリコシド抗生物質;ノルフロキサシン、オフロキサシンなどのキノロン;ニトロフラゾンおよびその類似体;ピリラミン、クロルフェニラミン、テトラヒドラゾリン、アンタゾリンおよびこれらの物質の類似体などの抗ヒスタミン剤および充血除去剤;クロモリンなどの肥満細胞ヒスタミン放出阻害剤;コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンエステル、ベタメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、メドリゾン、フルオロメトロン、プレドニゾロン、プレドニゾロンリンナトリウム、トリアムシノロン、インダイネタシン、スリンダックおよびこれらの物質の類似体などの抗炎症薬;エコチオファート、ピロカルピン、サリチル酸フィゾスチグミン、ジイソプロピルフルオロホスフェート、エピネフリン、ジピバロイルエピネフリン、ヨウ化ネオスチグミンエコチオパート、臭化デメカリム、塩化カルバモイルコリン、メタコリン、ベタネコールおよびこれらの物質の類似体などの縮瞳薬および抗コリン作用薬;アトロフィン、ホマトロピン、スコポラミン、ヒドロキシアンフェタミン、エフェドリン、コカイン、トロピカミド、フェニレフリン、シクロペントラート、オキシフェノニウム、ユーカトロピンなどの散瞳薬;およびこれらの物質の混合物を含む。
【0040】
他の治療成分は、これらに限定するものではないが:抗緑内障薬、例えばチモロール、特にチモロールのマレイン酸塩およびR-チモロール、ならびにチモロール、マレイン酸チモロール及び/又はR-チモロールとピロカルピンとの組合せ;エピネフリンおよびエピネフリン錯体、ならびに重酒石酸塩、ホウ酸塩、塩酸塩、ジピベフリン誘導体などのアドレナリン作用性アゴニスト及び/又はアンタゴニスト;アセタゾラミド、ジクロルフェナミド、2−(p−ヒドロキシフェニル)−チオチオフェン−スルホンアミド、6−ヒドロキシ−2−ベンゾチアゾールスルホンアミドおよび6−ピバロイルオキシ−2−ベンゾチアゾールスルホンアミドなどのカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤;イベルメクチン、ピリメタミン、トリスルファピジミジン、クリンダマイシンおよびコルチコステロイド製剤などの駆虫性化合物及び/又は抗原虫性化合物;アシクロビル、5−ヨード−2'−デオキシウリジン(IDU)、アデノシンアラビノシド(Ara-A)、トリフルオロチミジン、インターフェロンおよびポリI:Cなどのインターフェロン誘導剤などの抗ウイルス活性を有する化合物;アムホテリシンB、ナイスタチン、フルシトシン、ナタマイシンおよびミコナゾールなどの抗真菌剤;エチドカイン、コカイン、ベノキシナート、塩酸ジブカイン、塩酸ジクロニン、ネパイン、塩酸フェナカイン、ピペロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸テトラカイン、ヘキシルカイン、ブピバカイン、リドカイン、メピバカインおよびプリロカインなどの麻酔薬;(a)網膜を調べるために使用される診断薬、例えばフルオレセインナトリウム、(b)結膜、角膜および涙器を調べるために使用される診断薬、例えばフルオレセインおよびローズベンガル、ならびに(c)異常な瞳孔応答を調べるために使用される診断薬、例えばメタコリン、コカイン、アドレナリン、アトロピン、ヒドロキシアンフェタミンおよびピロカルピンなどの眼科用診断薬;手術の際に佐剤として使用される眼科用物質、例えばα−キモトリプシンおよびヒアルロニダーゼ;キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸の塩およびデフェロキサミン;免疫抑制剤および抗代謝剤、例えばメトトレキサート、シクロホスファミド、6−メルカプトプリンおよびアザチオプリン;および抗生物質/抗炎症薬の組合せなどの上で挙げられている物質の組合せ、例えば硫酸ネオマイシンとデキサメタゾンリン酸ナトリウムとの組合せ、および緑内障を治療するために同時的に使用される組合せ、例えばマレイン酸チモロールとアセクリジンとの組合せ;ならびに同様な物質およびこれらの物質の混合物を含む。
【0041】
他の有用な治療成分は、Woodwardらの米国特許第5,688,819号に開示されているような低眼圧剤;Cairnsらの米国特許第4,474,787号に開示されているようなピラノキノリノン誘導体;Chandraratnaの米国特許第5,089,509号に開示されているようなレチノイド様活性を有する化合物;Muchowskiらの米国特許第4,089,969号に開示されているようなケトロラック/ピロール−1−カルボン酸;Hayakawaらの米国特許第4,382,892号に開示されているようなオフロキサシン/ベンゾオキサジン誘導体、およびLiptonらの米国特許第5,922,773号に開示されているようなメマンチンを含む。米国特許第5,688,819号;第4,474,787号;第5,089,509号;第4,089,969号;第4,382,892号;および第5,922,773号のそれぞれの開示は、参照により、これらの内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0042】
一つの有用な実施態様では、本発明の治療成分はアドレナリン作用性アゴニストを含む。これらのアドレナリン作用性アゴニストは、約7より大きいpKa、例えば約7(または約7より大きい値)から約9までの範囲のpKaを有する、アミンを含有した化学的実体であってよい。
【0043】
一つの実施態様では、この有用な治療成分はα−アドレナリン作用性アゴニストを含む。α−アドレナリン作用性アゴニストの例は、これらに限定するものではないが、アドラフィニル、アドレノロン、アミデフリン、アプラクロニジン、ブドララジン、キノキサリン、クロニジン、シクロペンタミン、デトミジン、ジメトフリン、ジピベフリン、エフェドリン、エピネフリン、フェノキサゾリン、グアナベンズ、グアンファシン、ヒドロキシアンフェタミン、イボパミン、インダナゾリン、イソメテプテン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミン、メチルヘキサンアミン、メチゾレン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトドリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、フェニルプロピルメチルアミン、ホレドリン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、リルメニジン、シネフリン、テトラヒドロゾリン、チアメニジン、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、チマゾリン、チラミン、キシロメタゾリンなど、およびこれらの物質の混合物を含む。
【0044】
一つの有用な実施態様では、治療成分はα−2アドレナリン作用性アゴニストを含む。本明細書で使用する場合、「α−2アドレナリン作用性アゴニスト」という用語は、実効的な交感神経遮断性応答を引き起こし、結果として、例えば交換神経性の節後神経末端に存在するシナプス前部のα−2受容体に結合することにより、または例えば平滑筋細胞に存在するシナプス後部のα−2受容体に結合することにより、高められた調節機能をもたらすことができる化合物、イオン、錯体などの化学種を含む。交感神経遮断性応答は、交感神経系により運ばれるインパルスの効果の阻害、縮小または防止により特徴付けられる。本発明のα−2アドレナリン作用性アゴニストは、シナプス前部でα−2アドレナリン作用性受容体に結合し、ニューロンのノルエピネフリンの放出を低減すべく、負のフィードバックを引き起こすことができる。更に、これらのアゴニストは、シナプス後部でα−2アドレナリン作用性受容体に作用し、他の細胞内経路に及ぼすシナプス後部のα−2アドレナリン作用性受容体の効果に加え、毛様体筋の弛緩に寄与する、β−アドレナリン作用性受容体を刺激することによるサイクリックAMPの形成を阻害することもできる。シナプス前部またはシナプス後部のいずれかにおけるα−2アドレナリン作用性受容体の活動は、アドレナリン作用性の影響の低減をもたらし得る。アドレナリン作用性の影響の低減は、コリン作用性神経支配に由来する収縮の増強をもたらす。また、α−2アドレナリン作用性アゴニストは、神経保護活性を有する化合物も含む。例えば、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンは、未知のメカニズムを通じて神経保護活性を有するα−2アドレナリン作用性アゴニストである。
【0045】
本発明を記載されている特定の群および化合物に限定するものではないが、以下のリストは、この発明において有用な代表的α−2アドレナリン作用性アゴニストの例である:クロニジン、アプラクロニジンを含むイミノ−イミダゾリン;ナファゾリン、キシメタゾリン、テトラヒドロゾリンおよびトラマゾリンを含むイミダゾリン;デトミジン、メデトミジンおよびデクスメデトミジンを含むイミダゾール;B-HT 920(6−アリル−2−アミノ−5,6,7,8テトラヒドロ−4H−チアゾロ[4,5-d]−アゼピン)およびB-HT 933を含むアゼピン;キシラジンを含むチアジン;リルメニジンを含むオキサゾリン;グアナベンズおよびグアンファシンを含むグアニジン;カテコールアミンなど。
【0046】
特に有用なα−2アドレナリン作用性アゴニストはキノキサリン成分を含む。一つの実施態様では、これらのキノキサリン成分は、キノキサリン、キノキサリンの誘導体、およびこれらの化合物の混合物を含む。キノキサリンの誘導体は、これらに限定するものではないが、(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、これらのキノキサリン誘導体の塩、およびこれらの化合物の混合物を含む。一つの実施態様では、キノキサリンの誘導体は5−ハロ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、これらのキノキサリン誘導体の塩、およびこれらの化合物の混合物を含む。5−ハロ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンの「ハロ」は、フッ素、塩素、ヨウ素または臭素であってよく、好適には、ブリモニジンとしても知られている5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン(ブリモニジン)を形成するための臭素であってよい。
【0047】
他の有用なキノキサリンおよびキノキサリン誘導体が広く知られている。例えば、有用なキノキサリンおよびキノキサリンの誘導体は、米国特許第5,021,416号;米国特許第5,703,077号;および米国特許第3,890,319号により開示されているものを含む。これらの3件の各特許の開示は、参照により、これらの内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0048】
キノキサリンおよびキノキサリンの誘導体、例えばブリモニジンは、アミンを含有しており、好適には約7より大きいpKa、好ましくは約7.5〜約9のpKaを有している。
【0049】
また、所望の治療効果をもたらすべく同様な仕方で機能する上述の化学的実体の類似体、塩、例えば眼科的に許容可能な塩および誘導体も、本発明の組成物における治療成分として使用され得ることが明確に想定されている。
【0050】
一つの有用な実施態様では、本発明の組成物における治療成分の量は、約0.01%〜約30%(w/v)の範囲である。この治療成分の量は約0.1%(w/v)〜約10%(w/v)の範囲であってよい。例えば、治療成分の量は約0.1%(w/v)〜約0.6%(w/v)の範囲であってよい。一つの実施態様では、治療成分はアドレナリン作用性アゴニストであり、組成物中に約0.1%(w/v)〜約0.6%(w/v)の範囲、例えば約0.15%(w/v)の量で存在する。
【0051】
本発明の組成物は、有利には、水性液体もしくは非水性液体中における溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型の液体エマルションとして提示されてよい。本発明の組成物は、同じ一般的なタイプの組成物において慣習的に使用されている1つまたはそれ以上の成分を含んでいてよい。
【0052】
水性懸濁液の形態における本発明の組成物は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤を含んでいてよい。このような賦形剤は、これらに限定するものではないが、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガム;を含み、分散剤または湿潤剤は、天然ホスファチド、例えばレシチン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカ−エチレンオキシセタノール、またはポリオキシエチレンソルビトールモノ−オレエートなどの、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノ−オレエート、ならびにこれらと同様な化合物およびこれらの混合物であってよい。
【0053】
油性懸濁液の形態における本発明の組成物は、植物油、例えばオリーブ油、ヒマシ油、ダイズ油、ゴマ油もしくはヤシ油中において、または液体パラフィンなどの鉱油中において処方されてよい。このような懸濁液は増粘剤、例えば蜜ロウ、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含んでよい。
【0054】
本発明の組成物は水中油型のエマルションの形態であってよい。油性相は、植物油、例えばヒマシ油、オリーブ油、ダイズ油もしくはラッカセイ油、または鉱油、例えば液体パラフィン、ならびにこれらと同様なものおよびこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤は、天然ゴム、例えばアカシアゴムまたはトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えばダイズレシチン、および脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノ−オレエート、ならびに上述の部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノ−オレエートであってよい。
【0055】
本発明において使用することができる非常に有用な油/水エマルションは、2003年1月22日に出願された同一出願人による米国特許出願第10/349,466号に記載されている。上記の出願の開示は、参照により、その内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0056】
一つの有用な実施態様においては、本発明は、組成物中における治療成分の分配を提供する。この実施態様では、組成物は、治療成分を分配することができる2つまたはそれ以上の相を含む。例えば、組成物は、水性相成分と油性成分などの非水性相成分とを含み、水中油型のエマルションまたは油中水型の液体エマルションの形態で存在してよい。組成物における治療成分の分配は、全治療成分のある特定の割合(またはパーセンテージ)がこの組成物の1つまたはそれ以上の相に存在することを意味する。例えば、治療成分の第一の割合が組成物の一つの相(例として、水性成分、または非水性成分、例えば油性成分)に存在し、残りの治療成分は、この組成物のそれ以外の相に存在する。
【0057】
本発明の一つの重要な要旨においては、1つまたはそれ以上の治療薬の分配は、組成物の水性相成分のpHによって決定されてよい。本発明を何らかの動作理論に限定することを意図するものではないが、治療成分は荷電種もしくは遊離塩基のいずれかとして、またはこれらの組合せとして存在し得ると考えられる。例えば、特定の治療成分(例えばブリモニジン)の大きなパーセンテージは、8.0付近のpHにおいて、例えばpH7.9において、遊離塩基として存在する。治療成分の遊離塩基は、この治療成分の荷電種よりも疎水性が高く、従って、遊離塩基は、この治療成分の荷電種よりも、より容易に組成物の油性成分に分配されるものと考えられる。更に、疎水性の特定の治療成分は、疎水性に劣る治療成分に比べ、更に容易に眼の角膜に浸透し得るものと考えられる。
【0058】
一つの実施態様では、治療成分のより大きい方の割合が水性成分中によりも油性成分中に有利に存在してよい。別の実施態様では、治療成分のより大きい方の割合が油性成分中によりも水性成分中に有利に存在してよい。別の実施態様では、実質的に等しい割合の治療成分が水性成分中および油性成分中に有利に存在してよい。一つの有用な実施態様においては、治療成分(例えばブリモニジン)は、約7.9のpHを有する水性成分を含む眼科用組成物中に存在してよく、この場合、この治療成分は、より低いpHを有する点を除いて実質的に同一の組成物に比べ、より大きなパーセンテージで遊離塩基として水性成分中に存在することができる。
【0059】
組成物のpHは、治療成分がこの組成物中に存在する全治療成分のいくらかの割合で組成物の特定の相に存在し得るようなpHであってよい。例えば、pHは約pH5.0〜約pH10.0、もしくは約pH5.5〜約pH9.5、もしくは約pH6.0〜約pH9.0、もしくは約pH6.5〜約pH8.5、または約pH7.0〜約pH8.0の範囲であってよい。
【0060】
一つの実施態様では、組成物中に存在する第一の治療成分がこの組成物の一つの相に分配され、一方、この組成物中に存在する第二の治療成分がこの組成物の別の相に分配されてよい。
【0061】
例えば、本発明をいかなる動作理論にも限定することを意図するものではないが、pH値が約6.5である特定の水中油型エマルション組成物または油中水型エマルション組成物においては、約90%より多い(例えば約99%より多い)割合の治癒成分、例えばブリモニジンが、組成物の水性成分または水性相に分配されるものと考えられる。pH値が約8.0である同様な組成物の場合、約50%の治療成分、例えばブリモニジンは、この組成物の油性相または油性成分に分配される。
【0062】
本発明の組成物の担体成分は眼科的に許容可能である。担体成分または他の材料は、これらが眼組織と実質的に適合する場合、「眼科的に許容可能」であると言う。即ち、このような担体成分または他の材料は、眼組織と接触されたときに、重大な影響または過度の有害な影響を引き起こさない。好適には、眼科的に許容可能な材料は、本組成物の他の成分とも実質的に適合する。担体成分は、このような眼科的な許容性をもたらすことにおいて、及び/又は、本発明の組成物に及び/又は組成物が投与された眼に及び/又は眼が治療される患者に何らかの利益をもたらすことにおいて有効な1つまたはそれ以上の成分を含んでよい。有利には、担体成分は、主要量、すなわち少なくとも約50重量%の水を含む、水性系のものである。
【0063】
本発明の担体成分として有用な適切な物質の例は、水、水と低級アルカノールまたはアラルカノールなどの水混和性溶媒との混合物、油性成分、植物油、ポリアルキレングリコール、ワセリン、エチルセルロース、オレイン酸エチル、ポリビニルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、通例使用されている他の眼科的に許容可能な物質など、およびこれら物質の混合物を含む。
【0064】
また、担体成分は、乳化剤、湿潤剤、増粘剤、緩衝剤成分、酸及び/又は塩基、張度調節剤成分、界面活性剤成分、粘度調節剤成分、潤滑性調節成分、保存剤成分、および、これらに限定するものではないが、眼科用組成物において通例使用されている物質などを含む、眼科用処方物において有用な他の材料などの補助的な物質も含んでいてよい。
【0065】
場合によって有用な増粘剤の例は、これらに限定するものではないが、様々なポリエチレングリコール、カーボワックス、ワセリンなどを含む。
【0066】
適切な緩衝剤は、これらに限定するものではないが、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤などの無機緩衝剤、および酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、トロメタミンなどの有機緩衝剤を含む。
【0067】
場合によって本発明の組成物に有用な張度調節剤は、これらに限定するものではないが、デキストロース、塩化カリウム及び/又は塩化ナトリウムなどを含み、好適には塩化ナトリウムである。
【0068】
場合によって本発明の組成物に有用な酸はホウ酸、塩酸、酢酸、使用される濃度において眼科的に許容可能な他の塩などを含む。
【0069】
本発明の組成物に含まれ得る塩基は、これらに限定するものではないが、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム、他のアルカリ及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、有機塩基、使用される濃度において眼科的に許容可能な他の塩基などを含む。
【0070】
酸/塩基緩衝剤は、含まれるとしても、好適には本発明の組成物を生理学的に許容可能な範囲のpH、より好適には約4〜約8.5の範囲のpH、一層好適には約6〜約8のpH、特に約6.8〜約8のpHにもたらすため及び/又はこのようなpHを維持するように、含まれる。
【0071】
場合によって本発明の組成物に有用な界面活性剤成分は、これらに限定するものではないが、組成物中に存在しているときに組成物と眼液(涙液)との間の表面張力を低減するリポタンパク質洗剤を含む。好適には、非イオン性界面活性剤が使用される。
【0072】
場合によって本発明の組成物に有用な粘度調節剤は、これらに限定するものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、眼科用処方物に有用な他の粘性誘導材料などを含む。
【0073】
一つの非常に有用な実施態様では、本発明の組成物はポリアニオン性成分を含む。有利には、このポリアニオン性成分は、組成物が眼に投与されたときに、眼に潤滑性をもたらすのに有効な量で存在する。ポリアニオン性成分は、しばしば、組成物の少なくとも約0.1%w/vの量で存在する。例えば、ポリアニオン性成分は、組成物の約0.1%もしくは約0.2%〜約1%(w/v)もしくは5%(w/v)または約10%(w/v)の範囲の量で存在していてよい。別の例では、ポリアニオン性成分は、組成物の約0.6%〜約1.8%(w/v)の範囲の量で存在する。
【0074】
ポリアニオン性成分は、ここで説明されている通りに機能し、全体としての組成物に、または組成物が投与される眼に実質的な悪影響がないことを条件として、あらゆる適切なポリアニオン性成分を本発明に従って使用することができる。このようなポリアニオン性成分は、眼科的に許容可能であり、組成物の他の成分と適合し、眼科的に合理的な濃度において、眼に投与されるときに眼への治療成分、例えばキノキサリン成分の投与を促進するのに効果的であり、また、本発明により別な仕方で機能するのに効果的であるべきである。
【0075】
本明細書で使用する場合、「ポリアニオン性成分」という用語は、1つより多くの離散的陰イオン電荷、すなわち複数の離散的陰イオン電荷を含む化学種、例えば、イオン的に帯電した高分子材料などのイオン的に帯電した種を表す。好適には、ポリアニオン性成分は、複数の陰イオン電荷を有する高分子材料およびこれら高分子材料の混合物からなる群より選択される。
【0076】
本発明の組成物に役立つ適切なポリアニオン性成分の例は、これらに限定するものではないが、アニオン性セルロース誘導体、アニオン性アクリル酸含有ポリマー、アニオン性メタクリル酸含有ポリマー、アニオン性アミノ酸含有ポリマーなど、およびこれらの混合物を含む。アニオン性セルロース誘導体は本発明において特に有用である。
【0077】
一つの有用なクラスのポリアニオン性成分は、複数の陰イオン電荷を有する1つまたはそれ以上の高分子材料である。このような高分子材料の例は、これらに限定するものではないが:
金属カルボキシメチルセルロース
金属カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース
金属カルボキシメチルスターチ
金属カルボキシメチルヒドロキシエチルスターチ
アンモニウムメチルセルロース
アミノ化合物メチルセルロース
加水分解されたポリアクリルアミドおよびポリアクリロニトリル
ヘパリン
クルコアミノグリカン
ヒアルロン酸
硫酸コンドロイチン
硫酸デルマタン
ペプチドおよびポリペプチド
アルギン酸
アルギン酸金属
1つまたはそれ以上の以下のもののホモポリマーおよびコポリマー:
アクリル酸およびメタクリル酸
金属アクリレートおよびメタクリレート
ビニルスルホン酸
ビニルスルホン酸金属
アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸
アミノ酸の金属塩
p−スチレンスルホン酸
p−スチレンスルホン酸金属
2−メタクリロイルオキシエチルスルホン酸
2−メタクリロイルオキシエチルスルホン酸金属
3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホン酸
3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホン酸金属
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸金属
アリルスルホン酸
アリルスルホン酸金属など
を含む。
【0078】
カルボキシメチルセルロースおよびこれらカルボキシメチルセルロースの混合物から選択されるポリアニオン性成分、例えばアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カルボキシメチルセルロースを用いて優れた結果を達成することができる。
【0079】
一つの実施態様では、ポリアニオン性成分は2つ以上のポリアニオン性成分部分を含んでおり、各ポリアニオン性成分部分は、このポリアニオン性成分を構成している別のポリアニオン性成分部分とは異なる分子量を有している。
【0080】
一つの非常に有用な実施態様においては、ポリアニオン性成分は、第一の分子量を有する第一ポリアニオン性成分部分と、第二の分子量を有する第二ポリアニオン性成分とを含んでいる。一つの実施態様では、それぞれのポリアニオン性成分部分は、組成物の少なくとも約0.01%w/vの量で存在している。例えば、それぞれのポリアニオン性成分部分は、組成物の約0.01%もしくは約0.1%または約0.2%〜約2%(w/v)もしくは約5%(w/v)または約10%(w/v)の範囲の量で存在していてよい。別の例では、それぞれのポリアニオン性成分部分は、組成物の約0.1%〜約2.0%(w/v)の範囲の量で存在している。
【0081】
上述のように、それぞれのポリアニオン性成分部分は異なる分子量を有していてよい。一つの実施態様では、第一ポリアニオン性成分部分は、第二ポリアニオン性成分部分の第二の分子量よりも大きい第一の分子量を有している。これらのポリアニオン性成分部分間の分子量の差、例えば第一ポリアニオン性成分部分と第二ポリアニオン性成分部分との間の分子量の差は、少なくとも約10,000、例えば少なくとも約50,000であってよい。
【0082】
一つの実施態様では、第一ポリアニオン性成分部分と第二ポリアニオン性成分部分との重量比は約0.02〜約50の範囲であってよい。例えば、第一ポリアニオン性成分部分と第二ポリアニオン性成分部分との重量比は約0.25〜約4の範囲である。
【0083】
本明細書で使用する場合、「分子量」という用語は、この用語がポリマー技術分野において一般的に知られている通りの重量平均分子量を表し、この技術分野において広く知られた手順及び/又は技術を用いて測定または決定することができる。
【0084】
一つの有用な実施態様においては、ポリアニオン性成分部分の少なくとも1つは、アニオン性セルロース誘導体およびこれらの混合物から選択される。一つの非常に有用な実施態様は、すべてのポリアニオン性成分部分がカルボキシメチルセルロースおよびこれらの混合物からなる群より選択されることを想定している。
【0085】
他の適切なポリアニオン性成分も使用されてよい。例えば、ポリアニオン性成分部分の少なくとも1つ、例えばすべてが、アクリル酸、メタクリル酸、金属アクリレートおよび金属メタクリレート、ならびにこれらの混合物の1つまたはそれ以上の単位を含むアニオン性のホモポリマーおよびコポリマーから選択されてよい。第一および第二ポリアニオン性成分部分の少なくとも1つを選択し得る一つの非常に有用なポリアニオン性成分は、アクリル酸、金属アクリレート、およびこれらの混合物の1つまたはそれ以上の単位を含むホモポリマーおよびコポリマーである。ポリアニオン性成分は3つまたはそれ以上の陰イオン電荷(負電荷)を含むことができる。ポリアニオン性成分が高分子材料である場合には、この高分子材料の各繰返し単位が離散的な陰イオン電荷を含んでいることが好適である。特に有用なアニオン性成分は、水溶性、例えば本発明の組成物中における使用濃度において、環境温度(室温)で可溶性のアニオン性成分である。
【0086】
各ポリアニオン性成分部分は異なる分子量を有することができる。一つの非常に有用な実施態様においては、ポリアニオン性成分は、第一の分子量を有する第一ポリアニオン性成分部分;および第二の分子量を有する第二ポリアニオン性成分を含む。有利には、それぞれのポリアニオン性成分部分は、組成物が眼に投与されるときに、この眼の角膜を通じて行われる眼への治療成分、例えばキノキサリン成分の投与を促進するのに有効な量で存在する。それぞれのポリアニオン性成分部分は、組成物の少なくとも約0.1%w/vの量で存在することができる。
【0087】
一つの実施態様では、少なくとも2つのポリアニオン性成分部分、例えば第一および第二ポリアニオン性成分部分は、異なる分子量を有している点を除き、実質的に同様な化学構造を有している。しかし、少なくとも2つのポリアニオン性成分部分は、異なる化学構造を有していてもよい。
【0088】
それぞれのポリアニオン性成分部分、例えば第一および第二ポリアニオン性成分部分は、別々に誘導されてよい。換言すれば、それぞれのポリアニオン性成分部分は、別々な材料として本発明の組成物に組み込まれてよい。
【0089】
本発明の組成物は、好適には、水の粘度を超える粘度を有している。一つの実施態様では、本発明の組成物の粘度は少なくとも約15cps(センチポアズ)であり、例えば約15cps〜約2000cpsまたは約3,000cpsの範囲である。有利には、本発明の組成物の粘度は、約30cpsまたは約70cps〜約750cpsまたは約1000cpsの範囲であってよい。一つの実施態様では、組成物の粘度は、約15cpsまたは約50cps〜約200cpsの範囲である。別の実施態様では、組成物の粘度は、約30cps〜約5000cps、または約200cps〜約4000cpsの範囲である。更に別の実施態様では、組成物の粘度は、約200cps〜約2000cpsの範囲である。
【0090】
粘度は、1秒当たり1〜10の間の剪断速度で測定することができる。本発明の組成物の粘度はあらゆる適切な方法で測定されてよい。一般的なBrookfield粘度計を用いてこのような粘度を測定することができる。本発明の組成物はニュートン組成物であってもよいし、または非ニュートン組成物であってもよい。物理的な剪断条件(例えばブリンキング)下においては比較的低い粘度を有する組成物に帰着する非ニュートン組成物の剪断−流動特性は、非ニュートン組成物がニュートン組成物よりも高い初期粘度を有することを可能にし得る。
【0091】
上述のように、それぞれのポリアニオン性成分部分、即ち、例えば少なくとも第一および第二ポリアニオン性成分部分は、組成物の少なくとも約0.1%(w/v)の量で存在することができる。一つの非常に有用な実施態様では、ポリアニオン性成分は、組成物の約0.2%〜約5%、例えば約0.4%〜約2.5%、もしくは例えば約0.6%〜約1.8%、または例えば約0.8%〜約1.3%(w/v)の範囲の量で存在する。
【0092】
第一ポリアニオン性成分部分と第二ポリアニオン性成分部分との重量比は広い範囲にわたって変えることができる。一つの実施態様では、第二部分に対する第一部分の重量比は、約0.02〜約50、好適には約0.1〜約10、より好適には約0.25〜約4の範囲である。
【0093】
本発明の組成物の異なる、例えば第一および第二の、ポリアニオン性成分部分は、別々に誘導されてよい。言い換えれば、異なる(例えば第一および第二の)ポリアニオン性成分部分は、異なるソースから本発明の組成物に混ぜ合わせることができる。これらの異なるポリアニオン性成分部分の分子量は、少なくとも約10,000だけ、例えば少なくとも約50,000だけ異なっていてよい。
【0094】
一つの有用な実施態様においては、ポリアニオン性成分は、第一および第二の分子量とは異なる第三の分子量を有する第三ポリアニオン性成分部分を含んでいる。第三ポリアニオン性成分部分は、好適には、第三ポリマー成分部分を伴わない点を除いて実質的に同一の組成物に比べ、眼への治療成分、例えばブリモニジン成分の投与を促進するのに有効な量で存在する。
【0095】
また、眼に投与したときに粘度が増大する保存化合物も本発明の範囲に包含される。例えば、米国特許第5,212,162号には「ゲル化多糖類」が開示されており、この特許は、参照により、その内容全体が本明細書に組み入れられる。また、同米国特許には、部分的にゲル化し液体として投与され、眼に点滴されたときにゲル化する、カラギーナンおよびフルセラランを含有した眼科用処方物も開示されている。更に、米国特許第4,136,173号、第4,136,177号および第4,136,178号は、液体の形態で眼に投与され、点滴されたときにゲル化する、キサンタンゴムおよびイナゴマメゴムを含有した治療用組成物の使用を開示している。米国特許第4,861,760号は、ゲル化していない液体として眼に投与され、点滴されたときにゲル化する、ゲランガムを含有した眼科的組成物を開示している。これらの4件の特許のそれぞれの開示は、参照により、これらの特許の内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0096】
また、保存オイル、軟膏、ゲルなども本発明の範囲内である。本発明の組成物は、これらの組成物に含まれている1つまたはそれ以上の他の成分の溶解度を高めるため、シクロデキストリンなどの成分を含んでよい。例えば、疎水性であるステロイドは、多くの場合、シクロデキストリンの存在下では1桁またはそれ以上の水溶性の向上を呈する。あらゆる適切なシクロデキストリン成分を本発明により使用することができる。有用なシクロデキストリン成分は、これらに限定するものではないが、溶解性の低い活性成分の見掛け溶解度、好適には水溶性を高めるのに有効な物質、及び/又は活性成分の安定性を増強するのに有効な物質、及び/又は活性成分の望ましくない副作用を低減するのに有効な物質を含む。有用なシクロデキストリン成分の例は、これらに限定するものではないが:α−シクロデキストリン、α−シクロデキストリンの誘導体、β−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンの誘導体、γ−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンの誘導体、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−エチル−β−シクロデキストリン、ジエチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ランダムメチル−β−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンなど、およびこれらの混合物を含む。本明細書で使用する場合、「誘導体」という用語は、この用語がシクロデキストリンに関係する場合、本明細書で説明されているように、シクロデキストリン成分として充分に機能するための、例えば活性成分の溶解度及び/又は安定性を高めるための、及び/又は活性成分の望ましくない副作用を低減するための、及び/又は活性成分との包接錯体を形成するためのシクロデキストリンの特徴的な化学構造を有する何らかの置換が為された化合物、または別な方法で修飾された化合物を意味する。
【0097】
組成物が処方される特定の用途に基づき、1つまたはそれ以上の付加的な成分を本発明の組成物に含めることができる。例えば、本発明の組成物は、眼に投与するための治療成分を含むように処方することができる。
【0098】
本発明の保存組成物は眼に投与されてよい。適切に処方されたこれらの組成物は、従来の一般的な組成物の代わりに使用することができる。例えば、本発明の組成物は、治療成分を眼に投与するために使用することができる。一つの実施態様では、本発明の組成物により抗生物質が眼に投与される。別の例では、本発明の組成物は外科用洗浄薬として使用することができる。
【0099】
また、本組成物は、コンタクトレンズのケア用に、例えばレンズの装着を安全且つ快適にするために使用することもできる。適切に処方された本発明の組成物は、従来の一般的な組成物の代わりに本組成物を用いることにより、通常のコンタクトレンズケア様式で使用することができる。多くの場合、これらのコンタクトレンズケア様式は、レンズを、有益なコンタクトレンズケア結果または望ましいコンタクトレンズケア結果を得るのに有効な量および条件で本発明の組成物と接触させることを含む。
【0100】
以下の非制限的な実施例は、本発明の特定の側面を説明するものである。
【0101】
以下の実施例で述べられている各処方物は、表示されている成分を通常の方法で共に混合することにより調製される。
【0102】
これら処方物それぞれが、供試生物S. aureus、P. aeruginosa、c. albicans、E. coli及び/又はA. nigerを用いた簡略化された保存効果試験を実施することにより、試験される。これらの処方物が、指示されている通りに、United States Preservative Efficacy Test(米国保存効果試験)(USP)、European Efficacy Test-A(欧州効能試験-A)(EP-A)およびEuropean Efficacy Test-B(欧州効能試験-B)(EP-B)の判定基準に対して試験される。10mlの各処方物が、約105cfu/mlの供試生物を用いて試験される。中和剤培地としてDey Engleyブイヨン(DE)を用い、適切な時間間隔で、細菌および真菌の生存菌の量を評価する。DEは、濾過と共に、組成物中の抗菌物質を中和するのに充分である。1mlの各サンプルを9mlのDEで希釈する。1mlの1:10希釈液をが0.45μmのフィルターにより濾過し、100mlの食塩水/ポリソルベート80溶液で洗浄する。濾液を100mlの食塩水/ポリソルベート80溶液で2回洗った後、濾液を細菌用のTSAプレートおよび真菌用のSABに置く。
【実施例1】
【0103】
以下の4種類の処方物を調製し、試験する。試験結果の概要は以下の通りである:
【表1】

(1) C10〜C30アルキルアクリレート架橋ポリマー
(2) 安定化二酸化塩素、Allergan, Inc.から入手可能。
【0104】
この実施例は、保存剤としてのオキシ−クロロ成分の使用が、特定のケースでは、特定の保存効果判定基準、例えばEuropean EfficacyTest-A(欧州効能試験-A)(EP-A)またはEuropean EfficacyTest-B(欧州効能試験-B)(EP-B)の判定基準を満たすのに有効でないことを示している。処方物1〜4までのどの処方物もホウ酸を含んでいない。
【実施例2】
【0105】
別の処方物として処方物5を調製し、試験する。処方物4と比較したこの試験結果の概要は以下の通りである:
【表2】

【0106】
この実施例は、マンニトールと比較的小さな濃度のホウ酸との両者が共に存在している状況が組成物の保存効果に実質的に影響を及ぼさないことを示している。例えば、処方物4と、0.15%(w/v)のホウ酸および1%(w/v)のマンニトールを含有する処方物5とを比較したときに、両処方物は、USPおよびEP-Bには合格するが、EP-Aには不合格となることを示している。
【実施例3】
【0107】
2種類の更なる処方物を調製し、試験する。試験結果の概要は以下の通りである:
【表3】

【0108】
この実施例は、処方物にマンニトールを伴わず、オキシ−クロロ成分と共に、少量であってもホウ酸が存在する状況が、処方物7の保存効果を改善することを示している。従って、ホウ酸を全く含まない処方物6はEP-AとEP-Bの両試験判定基準に不合格となるが、一方の0.2%(w/v)のホウ酸を含む処方物7はEP-Bの試験判定基準に合格する。
【実施例4】
【0109】
2種類の更なる処方物を調製し、試験する。この試験結果の概要は以下の通りである:
【表4】

【0110】
この実施例は、ホウ酸が例えば0.6%(w/v)の濃度で使用され、マンニトールが存在していないときには、保存効果がオキシ−クロロ成分含有処方物において有意に増強されることを示している。処方物9は、USP、EP-AおよびEP-Bの試験判定基準すべてに合格する。これとは対照的に、処方物8はUSP試験判定基準にのみ合格する。
【実施例5】
【0111】
別の2種類の処方物を調製し、試験する。この試験結果の概要は以下の通りである:
【表5】

【0112】
この実施例は、オキシ−クロロ成分とホウ酸の両方を含む処方物におけるグリセリンの存在が、本組成物の保存効果をより増強することを示している。オキシ−クロロ成分、グリセリンおよびホウ酸のすべてを含む処方物11は、USP、EP-AおよびEP-Bの試験判定基準すべてに合格する。処方物10はそうではない。
【実施例6】
【0113】
処方物を調製し、試験する。これらの試験結果の概要は以下の通りである:
【表6】

(3) 5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンタルトラート。
【0114】
この処方物は、USP、EP-AおよびEP-Bの試験判定基準すべてに合格する。更に、この処方物は、水中油型エマルションの形態であり、ヒトまたは動物の眼にブリモニジンを送達するのに効果的な組成物である。
【0115】
本発明を様々な特定の例および実施態様に関して説明してきたが、本発明はこれらの例および実施態様に限定されるものではなく、以下の特許請求項の範囲を用いて様々に実践され得ることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体成分、組成物が投与されるヒトまたは動物に所望の治療効果をもたらすのに有効な量で存在するキノキサリン成分、約75ppm超の濃度で存在するオキシ−クロロ成分、およびボレート成分を含まない点を除き実質的に同一の組成物に比べて組成物の保存効果を増強するのに有効な量で存在するボレート成分を含む眼科用組成物。
【請求項2】
上記キノキサリン成分が、キノキサリン、その塩およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記キノキサリン成分が、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、その塩およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
上記オキシ−クロロ成分が亜塩素酸塩成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
上記オキシ−クロロ成分が、該組成物の重量の約75ppm超から約5000ppmまでの範囲の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
上記ボレート成分がホウ酸、その塩およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
マンニトールを実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該組成物の保存効果をより増強するのに有効な量のグリセリン成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
上記グリセリンが、該組成物の約0.01%〜約10%(w/v)の範囲の量で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
該組成物が水性成分および油性成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
水中油型エマルションの形態である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
上記水性成分が、上記油性成分と上記水性成分との間における上記キノキサリン成分の所望の分配をもたらすのに有効なpHを有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
上記pHが約3.0〜約9.0の間である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
上記キノキサリン成分の約50%またはそれ以上が上記水性成分に存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
上記キノキサリン成分の約50%またはそれ以上が上記油性成分に存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
担体成分、組成物が投与されるヒトまたは動物に所望の治療効果をもたらすのに有効な量で存在する治療成分、約75ppm超の濃度で存在するオキシ−クロロ成分、およびボレート成分を含まない点を除き実質的に同一の組成物に比べて該組成物の保存効果を増強するのに有効な量で存在するボレート成分を含む眼科用組成物。
【請求項17】
上記オキシ−クロロ成分が、該組成物の重量の約75ppm超から約5000ppmまでの範囲の量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
上記ボレート成分がホウ酸、その塩およびそれらの混合物から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
該組成物がマンニトールを実質的に含まない、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
該組成物の保存効果をより増強するのに有効な量のグリセリン成分を更に含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
上記グリセリンが、該組成物の約0.01%〜約10%(w/v)の範囲の量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
該組成物が水性成分および油性成分を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項23】
水中油型エマルションの形態である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
上記水性成分が、上記油性成分と上記水性成分との間における上記治療成分の所望の分配をもたらすのに有効なpHを有する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
担体成分、組成物が眼に投与されるときに眼に潤滑性をもたらすのに有効な量で存在するポリアニオン性成分、約75ppm超の濃度で存在するオキシ−クロロ成分、およびボレート成分を含まない点を除き実質的に同一の組成物に比べて該組成物の保存効果を増強するのに有効な量で存在するボレート成分を含む眼科用組成物。
【請求項26】
上記ポリアニオン性成分が、アニオン性セルロース誘導体およびアニオン性セルロース誘導体混合物からなる群より選択される材料を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
上記ポリアニオン性成分が、カルボキシメチルセルロースおよびその混合物からなる群より選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
上記ポリアニオン性成分が、該組成物の約0.1%〜約5.0%(w/v)の範囲の量で存在する、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
上記ポリアニオン性成分が、第一の分子量を有する第一ポリアニオン性成分部分、および異なる第二の分子量を有する第二ポリアニオン性成分部分を含み、上記第一の分子量は上記第二の分子量よりも大きく、また、該組成物は、該組成物が眼に投与されたときに、等しい合計量の上記ポリアニオン性成分を有し、且つ、上記第一ポリアニオン性成分部分を実質的に含んでいない点を除いて実質的に同一の組成物に比べ、眼に付着する能力が高められている、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
該組成物は、該組成物が眼に投与されたときに、等しい合計量のポリアニオン性成分を有し、且つ、上記第二ポリアニオン性成分部分を実質的に含んでいない点を除いて実質的に同一の組成物に比べ、上記眼における視力障害を引き起こす能力が低減されている、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
上記ボレート成分がホウ酸、その塩およびそれらの混合物から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項32】
該組成物がマンニトールを実質的に含まない、請求項25に記載の組成物。
【請求項33】
該組成物の保存効果をより増強するのに有効な量のグリセリン成分を更に含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項34】
上記グリセリンが、該組成物の約0.01%〜約10%(w/v)の範囲の量で存在する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
該組成物が水性成分および油性成分を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項36】
水中油型エマルションの形態である、請求項25に記載の組成物。
【請求項37】
担体成分、組成物を保存するのに有効な量で存在するオキシ−クロロ成分、およびグリセリン成分を含まない点を除いて実質的に同一の組成物に比べ、該組成物の保存効果を増強するのに有効な量で存在するグリセリン成分を含む眼科用組成物。
【請求項38】
上記オキシ−クロロ成分が、該組成物の少なくとも約0.002%(w/v)の量で存在する、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
更に、該組成物が投与されるヒトまたは動物に所望の治療効果をもたらすのに有効な量で存在する治療成分を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
上記治療成分がキノキサリン成分である、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
上記キノキサリン成分が、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、その塩およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
該組成物が眼に投与されたときに、眼に潤滑性をもたらすのに有効な量のポリアニオン性成分を更に含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項43】
該組成物がマンニトールを実質的に含まない、請求項37に記載の組成物。
【請求項44】
該組成物が、水性成分および油性成分を含有するエマルションを含む、請求項37に記載の組成物。

【公表番号】特表2006−521362(P2006−521362A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507503(P2006−507503)
【出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/008913
【国際公開番号】WO2004/087098
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】