説明

保持パッド

【課題】大型化しても平坦性を確保しつつ全面を保持定盤に装着することができる保持パッドを提供する。
【解決手段】保持パッド10は、略平坦な保持面Pの背面側にバフ処理が施されたウレタンシート2を備えている。ウレタンシート2の保持面Pの背面側に粘着シート4が一面で貼り合わされている。粘着シート4では、粘着性を有するノンサポテープ41、42が隣接するように配さている。粘着シート4の他面に樹脂基材5が一面で貼り合わされている。樹脂基材5は一面および他面がそれぞれ連続した面である。樹脂基材5の他面に粘着シート6が貼り合わされている。粘着シート6は保持定盤に装着するための一面を有している。粘着シート6では、粘着性を有するノンサポテープ61、62が隣接するように配されている。保持パッド10が樹脂基材5により全面で支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保持パッドに係り、特に、被研磨物を保持するための樹脂製のシート材を備えた保持パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ、平行平面板、反射ミラー等の光学材料、シリコンウェハ、ハードディスク用基板や液晶ディスプレイ用ガラス基板等の材料では、高精度な平坦性が要求されているため、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。通常、研磨加工には、被研磨物の両面を同時に研磨加工する両面研磨機や被研磨物を片面ずつ研磨加工する片面研磨機等が使用されている。両面研磨機では、表面が平坦な上下定盤にそれぞれ貼付した研磨パッドに被研磨物の両面を当接させ研磨粒子等を含む研磨液を供給しながら研磨加工が行われる。一方、片面研磨機では、保持定盤に装着された保持パッドに被研磨物の一面側を保持させて、研磨定盤に貼付した研磨パッドにより、研磨液を供給しながら被研磨物の他面側に研磨加工が行われる。このとき、保持パッドで保持された被研磨物が研磨加工中に移動し、加工表面の平坦性が損なわれることがある。被研磨物の移動を防止するため、型枠(テンプレート)等に被研磨物を挿入して研磨加工が行われている。
【0003】
被研磨物、特に液晶ディスプレイ用ガラス基板では、液晶ディスプレイの大型化に伴い、ガラス基板が大型化する傾向にある。例えば、板厚1mm、外寸1.5m×1.8mのガラス基板が研磨加工されるため、ガラス基板等の被研磨物を型枠に挿入することが難しい。そのため、型枠を用いることなく被研磨物を保持することができ平坦性の高い大型の保持パッドが求められている。また、シリコンウェハでは、研磨加工の効率向上を目的として、複数の材料を同時に研磨加工する技術が進められている。この場合でも、研磨加工に使用する保持パッドを大型化することが必要とされている。例えば、1辺の長さが2000mmを超える矩形状や直径2000mmを超える円形状の保持パッドが開発されている。
【0004】
通常、保持パッドには、保持定盤に装着するために、基材を有する両面テープが用いられている。ところが、一枚の両面テープで保持パッドを保持定盤に貼着すると、保持パッドと保持定盤の間の空気の噛み込みやしわ等が形成されるおそれがある。また、保持パッドは保持定盤の正確な位置に貼着される必要があり、再度貼り直すことができないため、貼着作業は非常に困難である。保持パッドの大型化に対応するため、1辺の長さや直径が2000mを超えるような一枚の大型の両面テープが求められている。この大型の両面テープで保持パッドを保持定盤に貼着すると、貼着作業はますます困難となる。そこで、現状では複数の両面テープを並列して貼り合わせ、それぞれの両面テープを順番に貼り合わせることで大型化に対応している。
【0005】
一方、保持パッドは、被研磨物を保持するための樹脂製のシート材を備えている。樹脂製シート材は、ポリウレタン樹脂を水混和性の有機溶媒に溶解させた樹脂溶液をシート状の成膜基材に塗布後、水系凝固液中で樹脂を凝固再生させること(湿式成膜法)で製造される。製造されたシート材の表面には緻密な微多孔が形成された厚さ数μm程度の表面層(スキン層)が形成される。緻密に形成された微多孔のため、スキン層の表面はミクロな平坦性を有している。このスキン層が被研磨物との接触性に優れるため、被研磨物の保持が可能となる。すなわち、スキン層の表面が被研磨物を保持するための保持面となる。ところが、湿式成膜法では、樹脂溶液が粘性を有するため、成膜基材への塗布時に厚さバラツキが生じると共に、凝固再生時に有機溶媒と水系凝固液との置換により厚さバラツキが生じやすい。このため、シート材自体の表面のマクロな平坦性が損なわれる(大きく波打った表面となる)。そのため、スキン層のミクロな平坦性を残したまま、厚さバラツキを減少させてマクロな平坦性を向上させることが重要である。スキン層を残したまま、厚さバラツキを低減するために、例えば、シート材の保持面の背面側にバフ処理を施す技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−62059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、シート材の保持面の背面側をバフ処理することで、スキン層を残したまま、シート材の厚みをほぼ一様にすることができるものの、保持パットの大型化への対応については言及されていない。現状では、保持パッドの大型化への対応として、保持パッドを保持定盤に貼着しやすくするために、基材を有する複数の両面テープを並べて貼り合わせている。これでは、運搬時等にそれぞれ基材を有する両面テープの途切れ目部分で折れ曲がり、シート材にキズ等が生じる可能性がある。また、保持定盤への装着時には、両面テープ等の途切れ目部分でシート材が伸ばされることがあり、シート材の両面にしわや窪みが形成されて凹凸が生じることとなる。このような凹凸が生じた状態の保持パッドを用いて研磨加工を行うと、被研磨物に段差が転写されてスジ等が生じるため、被研磨物の表面を平坦化することが難しくなる。
【0008】
本発明は上記事案に鑑み、大型化しても平坦性を確保しつつ全面を保持定盤に装着することができる保持パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、被研磨物を保持するための保持面を有する樹脂製のシート材と、前記シート材の保持面の背面側に貼り合わされた一面を有しており、粘着性を有する複数の第1の粘着部材が隣接するように配された第1の粘着層と、定盤に装着するための一面を有しており、粘着性を有する複数の第2の粘着部材が隣接するように配された第2の粘着層と、前記第1の粘着層と第2の粘着層との間に介在し、一面が前記第1の粘着層の他面に貼り合わされ、他面が前記第2の粘着層の他面に貼り合わされた樹脂基材と、を備え、前記樹脂基材は、前記一面および他面がそれぞれ連続した面であることを特徴とする保持パッドである。
【0010】
本発明では、第1の粘着層を複数の第1の粘着部材で構成し、第2の粘着層を複数の第2の粘着部材で構成したことで、シート材が大型化しても全面で定盤に装着することができると共に、第1の粘着層と第2の粘着層との間に、一面および他面がそれぞれ連続した面の樹脂基材を介在させたことで、樹脂基材がシート材を全面で支持する機能を果たし、搬送時や定盤への装着時の折れ曲がりや、保持面のしわ形成が抑制されるため、保持面の平坦性を確保することができる。
【0011】
この場合において、第1の粘着部材および第2粘着部材は、粘着剤のみで構成されるノンサポート型粘着テープ(以下、ノンサポテープと略記する。)としてもよい。このとき、粘着剤は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系の粘着剤から選択される少なくとも1種を用いることができる。第2の粘着層の一面側は、複数の第2の粘着部材の表面が、それぞれ剥離可能なセパレータで覆われていることが好ましい。このような保持パッドは、シート材および樹脂基材が合同な形状であり、対向する2辺の長さが2000mm以上の矩形状または直径が2000mm以上の円形状でも対応可能である。保持パッドは、第1の粘着層と、樹脂基材と、第2の粘着層とが予め貼り合わされたものであることが好適である。また、複数の第2の粘着部材の境界部分同士が、複数の第1の粘着部材の境界部分同士と樹脂基材を介して厚さ方向と交差する方向で同じ位置に配されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の粘着層を複数の第1の粘着部材で構成し、第2の粘着層を複数の第2の粘着部材で構成したことで、シート材が大型化しても全面で定盤に装着することができると共に、第1の粘着層と第2の粘着層との間に、一面および他面がそれぞれ連続した面の樹脂基材を介在させたことで、樹脂基材がシート材を全面で支持する機能を果たし、搬送時や定盤への装着時の折れ曲がりや、保持面のしわ形成が抑制されるため、保持面の平坦性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した実施形態の保持パッドを模式的に示す断面図である。
【図2】実施形態の保持パッドの作製に使用したラミネート機を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を適用した保持パッドの実施の形態について説明する。
【0015】
(構成)
図1に示すように、本実施形態の保持パッド10は、略平坦な保持面Pを有するシート材としてのウレタンシート2と、ウレタンシート2を研磨機の保持定盤に装着するための装着シート7と、を備えている。
【0016】
ウレタンシート2は、100%モジュラス(2倍長に引っ張る時の応力)が20MPa以下のポリウレタン樹脂で湿式成膜法により形成されている。ウレタンシート2は、保持面Pの背面(反対面)側が、ウレタンシート2の厚さ(図1の縦方向の長さ)がほぼ一様となるようにバフ処理されている。ウレタンシート2は、保持面P側に不図示の緻密な微多孔が形成されたスキン層8を有している。スキン層8の表面はミクロな平坦性を有している。スキン層8より内側(ウレタンシート2の内部)には、スキン層8の微多孔より大きい孔径でウレタンシート2の厚さ方向に沿って丸みを帯びた断面三角状の大気孔3が略均等に形成されている。大気孔3の孔径は、保持面P側の大きさが、保持面Pと反対の面側より小さく形成されている。大気孔3同士の間のポリウレタン樹脂中では、スキン層8の微多孔より大きく大気孔3より小さい孔径の図示を省略した小気孔が形成されている。スキン層8の微多孔、大気孔3および小気孔は連通孔で網目状につながっている。すなわち、ウレタンシート2は、連続状のセル構造を有している。保持面Pの反対面側がバフ処理されているため、大気孔3および図示を省略した小気孔の一部が保持面Pの反対面側の表面で開孔している。
【0017】
装着シート7は、一面側がウレタンシート2と貼り合わされる第1の粘着層としての粘着シート4と、保持定盤に装着するための一面を有する第2の粘着層としての粘着シート6とを有している。粘着シート4と粘着シート6との間には樹脂基材5が介在している。樹脂基材5は、一面側が粘着シート4の他面側と貼り合わされ、他面側が粘着シート6の他面側と貼り合わされている。粘着シート4は、2つのノンサポテープ41、42(第1の粘着部材)が境界D1で隣接するように配されている。一方、粘着シート6は、2つのノンサポテープ61、62(第2の粘着部材)が境界D2で隣接するように配されている。すなわち、境界D1および境界D2は、樹脂基材5を介して厚さ方向と交差する方向で同じ位置に配されている。換言すれば、保持面P側から見たときに、境界D1および境界D2が重なるように配されている。ノンサポテープ41、42の間に形成される間隙(境界D1の幅)およびノンサポテープ61、62の間に形成される間隙(境界D2の幅)は、2mm以内に設定されている。ノンサポテープ61、62の一面側は、それぞれセパレータ61a、62aで覆われている。
【0018】
粘着シート4を構成するノンサポテープ41は、粘着剤のみでシート状に形成された、基材を有していないテープ(ノンサポート型粘着テープ)である。ノンサポテープ42は、ノンサポテープ41と同じ構成で形成されている。ノンサポテープ41、42には、いずれも、同質のアクリル系粘着剤が用いられている。また、ノンサポテープ41、42は、厚さおよび幅が同じに形成されており、同一面を形成している。粘着シート4では、一面側がウレタンシート2の保持面Pの背面側と貼り合わされており、他面側が樹脂基材5の一面側と貼り合わされている。
【0019】
粘着シート6を構成するノンサポテープ61は、ノンサポテープ41と同様に、粘着剤のみでシート状に形成された、基材を有していないテープである。ノンサポテープ61の一面側、すなわち、定盤に装着するための一面側は、保持パッド10の保管時や搬送時にノンサポテープ61を保護するために、セパレータ61aで覆われている。ノンサポテープ62は、ノンサポテープ61と同じ構成で形成されている。すなわち、ノンサポテープ62は一面側がセパレータ62aで覆われている。ノンサポテープ61、62には、いずれも、同質のゴム系粘着剤が用いられている。粘着シート6は、保持パッドを定盤に固定する役割を果たし、研磨による負荷が大きいため、粘着シート4で用いたアクリル系粘着剤より強力なゴム系粘着剤が用いられる。ノンサポテープ61、62は、厚さおよび幅が同じに形成されており、同一面を形成している。粘着シート6では、一面側がそれぞれセパレータ61a、62aで覆われており、他面側が樹脂基材5の他面側と貼り合わされている。セパレータ61a、62aの境界部分は、ノンサポテープ61、62の境界部分と厚さ方向と交差する方向で同じ位置に配されている。
【0020】
樹脂基材5は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製の基材である。樹脂基材5は、粘着シート4と粘着シート6との間に介在している。すなわち、樹脂基材5は、一面側が粘着シート4の他面側と貼り合わされ、他面側が粘着シート6の他面側と貼り合わされている。樹脂基材5は、ウレタンシート2と同じ大きさを有する1枚のシートで形成されており、一面および他面がそれぞれ連続した略平坦面である。すなわち、樹脂基材5は、ウレタンシート2と合同な形状である。このため、樹脂基材5は、ウレタンシート2を全面で支持する働きをしている。
【0021】
(製造)
保持パッド10は、ウレタンシート2および装着シート7をそれぞれ作製し、貼り合わせることで製造される。以下、ウレタンシート2の作製、装着シート7の作製、貼り合わせの順に説明する。
【0022】
〈ウレタンシートの作製〉
ウレタンシート2は、樹脂溶液を調製する準備ステップ、樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液中でポリウレタン樹脂をフィルム状に凝固再生させる凝固再生ステップ、凝固再生したポリウレタン樹脂を洗浄し乾燥させてウレタンシート2を得る洗浄・乾燥ステップ、乾燥後のウレタンシート2の保持面Pの反対面側に厚みを均一化させるようにバフ処理を施す平滑化処理ステップを経て作製される。
【0023】
準備ステップでは、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN、N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)および添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。ポリウレタン樹脂には、100%モジュラスが20MPa以下のポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用い、例えば、ポリウレタン樹脂が30%となるようにDMFに溶解させる。添加剤としては、大気孔3の大きさや量(個数)を制御するカーボンブラック等の顔料、発泡を促進させる親水性活性剤およびポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。得られた溶液を減圧下で脱泡して樹脂溶液を調製する。
【0024】
凝固再生ステップでは、準備ステップで調製した樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液中でポリウレタン樹脂をフィルム状に凝固再生させる。樹脂溶液は、塗布装置により常温下で帯状の成膜基材に略均一に塗布される。塗布装置には、本例では、ナイフコータが用いられる。このとき、ナイフコータと成膜基材との間隙(クリアランス)を調整することで、樹脂溶液の塗布厚さ(塗布量)が調整される。成膜基材には、可撓性フィルム、不織布、織布等を用いることができる。本例では、成膜基材としてPET製フィルムが用いられる。
【0025】
成膜基材に塗布された樹脂溶液は、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液に浸漬される。凝固液中では、まず、塗布された樹脂溶液の表面にスキン層8を構成する微多孔が厚さ数μm程度にわたって形成される。その後、樹脂溶液中のDMFと凝固液との置換の進行によりポリウレタン樹脂が成膜基材の片面にフィルム状に凝固再生する。DMFが樹脂溶液から脱溶媒し、DMFと凝固液とが置換することにより、スキン層8より内側のポリウレタン樹脂中には、大気孔3および小気孔が形成され、大気孔3および小気孔が網目状に連通する連通孔が形成される。このとき、成膜基材のPET製フィルムが水を浸透させないため、樹脂溶液の表面側(スキン層8側)で脱溶媒が生じて成膜基材側が表面側より大きな大気孔3が形成される。
【0026】
洗浄・乾燥ステップでは、凝固再生した帯状(長尺状)のポリウレタン樹脂を洗浄した後乾燥させる。すなわち、ポリウレタン樹脂は、成膜基材から剥離され、水等の洗浄液中で洗浄されてポリウレタン樹脂中に残留するDMFが除去される。洗浄後、ポリウレタン樹脂を乾燥機等で乾燥させる。本例では、乾燥機として、内部に熱源を有するシリンダを備えたシリンダ乾燥機が用いられる。ポリウレタン樹脂がシリンダの周面に沿って通過することで乾燥する。平滑化処理ステップでは、乾燥後のポリウレタン樹脂の厚みが均一となるように、スキン層の反対面側にバフ処理が施される。本例では、平滑化処理後、ポリウレタン樹脂が幅2000mmに裁断され、ローラで巻き取られ、ウレタンシート2が得られる。
【0027】
〈装着シートの作製〉
装着シート7の作製では、まず、粘着シート4を構成する粘着テープ41、42と、粘着シート6を構成する粘着テープ61、62と、樹脂基材5とをそれぞれ準備する。ラミネート機(詳細後述)を用いて樹脂基材5に粘着シート6および粘着シート4を貼り合わせて作製する。
【0028】
粘着シート4のノンサポテープ41、42、および、粘着シート6のノンサポテープ61、62は、いずれもテープ幅1000mm、厚さ55μmに設定されている。ノンサポテープ41、42には、粘着剤の両表面側がそれぞれセパレータで覆われたものが用いられる。ノンサポテープ61、62には、保持定盤に装着するための一面側がセパレータ61a、62aで、他面側がセパレータでそれぞれ覆われたものが用いられる。樹脂基材5は、幅2000mm、厚さ75μmに設定されている。すなわち、樹脂基材5は、ウレタンシート2と同じ幅のものが用いられる。樹脂基材5は、一面および他面が連続した平坦面のPET基材である。セパレータには、PET製樹脂シートや紙等を用いることができる。なお、セパレータに剥離しやすいように離型処理を施してもよい。
【0029】
図2に示すように、ラミネート機90は、2つのノンサポテープをそれぞれ供給するための2つのテープ供給ローラ95と、樹脂基材5にノンサポテープを加圧して貼着するための1対の加圧ローラ93とを備えている。すなわち、ラミネート機90は、2つのノンサポテープをそれぞれ2つのテープ供給ローラ95で供給可能な2軸ラミネータである。ローラ95は、2つのノンサポテープを並べて供給するように、加圧ローラ93の上方に配置されている。テープ供給ローラ95の上流側には、ノンサポテープのセパレータを回収するためのローラ91が配置され、テープ供給ローラ95と加圧ローラ93との間には、テープのテンションをコントロールする役割を兼ねる搬送ローラ96が配置されている。加圧ローラ93の上流側には、供給側として、樹脂基材5を供給する基材供給ローラ92が配置されている。基材供給ローラ92と加圧ローラ93との間には、搬送ローラ97が配置されている。加圧ローラ93の下流側には、ノンサポテープが貼着された樹脂基材5を巻き取るためのローラ94が配置されている。加圧ローラ93とローラ94との間には、搬送ローラ98が配置されている。
【0030】
ラミネータ機90では、テープ供給ローラ95から引き出されたノンサポテープ61、62が搬送ローラ96を介して搬送される。ノンサポテープ61、62の他面側のセパレータが剥離され、剥離されたセパレータがローラ91でロール状に巻き取られる。他面側のセパレータが剥離されたノンサポテープ61、62は、加圧ローラ93側に搬送される。一方、樹脂基材5が基材供給ローラ92から加圧ローラ93側に搬送され、樹脂基材5の他面とノンサポテープ61、62の他面とが接触する。ノンサポテープ61、62および樹脂基材5が加圧ローラ93間を通過することで加圧されて、樹脂基材5の他面にノンサポテープ61、62の他面が貼着される。ノンサポテープ61、62が貼着された樹脂基材5は、搬送ローラ98を介して搬送されローラ94に巻き取られる。ノンサポテープ61、62の間に形成される間隙(境界D2の幅)が2mm以内になるように、ノンサポテープ61、62の位置が赤外線レーザーで制御されている。同様にして、ノンサポテープ41、42を樹脂基材5の一面側に貼着し、装着シート7を作製する。このとき、ノンサポテープ41、42の境界D1を、樹脂基材5を介してノンサポテープ61、62の境界D2と厚さ方向と交差する方向で同じ位置に配されるように貼着する。
【0031】
〈貼り合わせ〉
作製したウレタンシート2と装着シート7とを一対の加圧ローラを備えたラミネート機を用いて貼り合わせる。すなわち、ウレタンシート2と装着シート7とがそれぞれ加圧ローラに向けて供給される。このとき装着シート7のセパレータが剥離される。加圧ローラ間を通過させることでウレタンシート2と装着シート7とを加圧して貼り合わせる。装着シート7が貼着されたウレタンシート2がロール状に巻き取られる。その後、長さ2000mmに裁断し、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い、長さ2000mm、幅2000mmの大型の保持パッド10を完成させる。
【0032】
保持パッド10を保持定盤に装着するときは、セパレータ61a、62aを取り外し、露出したノンサポテープ61、62で保持定盤に貼着する。このとき、2枚のセパレータ61a、62aを順次取り外して、ノンサポテープ61、62を1枚分ずつ順に貼着することで、位置ズレや空気の噛み込みを発生することなく正確に定盤に貼着することができる。研磨加工時には、研磨粒子を含む研磨液(スラリ)を供給しながら、保持された被研磨物が研磨される。
【0033】
(作用等)
次に、本実施形態の保持パッド10の作用等について、装着シート7の作用を中心に説明する。
【0034】
本実施形態の保持パッド10では、粘着シート4が2つのノンサポテープ41、42で構成され、粘着シート6が2つのノンサポテープ61、62で構成されている。このため、保持パッド10が大型化してもウレタンシート2と装着シート7を貼り合わせるときに、しわ等の発生を抑制することができる。また、粘着シート6を構成する2つのノンサポテープ61、62を順に保持定盤に貼着することで、位置ズレを生じることなく正確に保持定盤に装着することができる。
【0035】
また、本実施形態の保持パッド10では、粘着シート4と粘着シート6との間に、樹脂基材5が介在している。樹脂基材5は、ウレタンシート2と同じ大きさで、一面および他面がそれぞれ連続した略平坦面であるため、樹脂基材5が、ウレタンシート2を全面で支持する機能を果たす。そのため、保持パッド10の搬送時や定盤への装着時に、ウレタンシート2の保持面P側のしわ等の形成が抑制される。従って、保持面Pの平坦性が確保されるので、被研磨物を平坦に保持することができ、被研磨物の平坦性向上を図ることができる。
【0036】
更に、本実施形態の保持パッド10では、粘着シート4と粘着シート6との間に、一面および他面がそれぞれ連続した略平坦面である樹脂基材5が介在している。すなわち、樹脂基材5は、ウレタンシート2に対して合同な形状である。樹脂基材5は、弾性を有する柔軟なウレタンシート2を支持するため、搬送時や保持定盤への装着時の折れ曲がり等を抑制することができる。また、保持パッド10を大型化しても、保持定盤への貼着作業や保持パッドの交換時の剥離作業を容易にすることができる。
【0037】
また更に、本実施形態の保持パッド10では、粘着シート6を構成するノンサポテープ61、62の境界部分D2が、粘着シート4を構成するノンサポテープ41、42の境界部分D1と樹脂基材5を介して厚さ方向と交差する方向で同じ位置に配されている。換言すれば、ノンサポテープ41、42、および、ノンサポテープ61、62はいずれも同じ幅と長さに設定されている。そのため、装着シート7の作製時に、粘着シート4および粘着シート6のそれぞれで、同じ幅のノンサポテープを用いればよく、部材管理を容易にすることができる。また、ノンサポテープは粘着剤のみで形成され、基材を有していない。従来の基材を有する両面テープを使用した場合、ウレタンシートの保持面に両面テープの境界に沿って凹みが形成される。これは、両面テープの基材がウレタンシートや粘着剤と比べて高い剛性を有し、また基材分の厚みが増すことにより、境界と両面テープの剛性差や段差が拡大し、ウレタンシートに転写されるためである。ノンサポテープを使用することにより、境界と両面テープの剛性差や段差が低減されることで、保持パッドの保持面の平坦性を向上させることができる。
【0038】
更にまた、本実施形態の保持パッド10では、境界D1および境界D2の幅、すなわち、隣接するノンサポテープ41、42の間に形成された間隙、および、隣接するノンサポテープ61、62の間に形成された隙間は2mm以下に設定されている。境界D1および境界D2の幅が2mmを超えると保持パッド10の保持面Pに段差が生じ、被研磨物を平坦に保持することが難しくなる。境界D1および境界D2の幅を2mm以内に設定することで、ノンサポテープ間の段差による保持面Pへの影響を低減でき、被研磨物を平坦に保持することができる。境界D1および境界D2の幅を狭めることで、被研磨物の平坦性を保持できることを考慮すれば、境界D1および境界D2の幅は1mm以内とすることが好ましい。
【0039】
なお、本実施形態の保持パッド10では、装着シート7として、樹脂基材5に粘着シート4、6を貼り合わせる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、粘着シート4、6以外に更に粘着シートを積層してもよく、樹脂基材5以外に更に樹脂基材を積層してもよい。この場合、ウレタンシート2を支持する効果を向上させることが期待されるが、保持パッドの全体に占める装着シートの割合が大きくなるため、研磨加工に支障をきたす可能性もある。この点を考慮すれば、粘着シート4,6および樹脂基材5で構成された3層構造の装着シート7とすることが好ましい。
【0040】
また、本実施形態の保持パッド10では、粘着シート4を構成する粘着部材として2つのノンサポテープ41、42を用い、粘着シート6を構成する粘着部材として2つのノンサポテープ61、62を用いる例を示したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、粘着シート4および粘着シート6を3つ以上のノンサポテープで構成してもよい。換言すれば、粘着シート4、6を構成するノンサポテープの数は、ウレタンシート2(樹脂基材5も同じ。)の大きさ、ノンサポテープの幅を考慮して決定すればよい。また、粘着シート4および6をそれぞれ構成するノンサポテープの数は、粘着シート4および6で異なっていてもよい。すなわち、ノンサポテープ61、62の境界部分がノンサポテープ41、42の境界部分と樹脂基材5を介して厚さ方向と交差する方向で異なる位置に配されていてもよい。このようにしても、装着シート7の作製において不都合を生じるものではなく、上述した効果を得ることができる。
【0041】
更に、本実施形態の保持パッド10では、樹脂基材5としてPET製の基材を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレンや二軸延伸ポリプロピレン(OPP)を用いてもよい。また、ノンサポテープ41、42の粘着剤として、アクリル系粘着剤、ノンサポテープ61、62の粘着剤として、ゴム系粘着剤を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ウレタン系やエポキシ系の粘着剤を用いてもよい。ノンサポテープ41、42の粘着剤とノンサポテープ61、62の粘着剤とは同質のものを使用してもよい。接着強度やウレタンシート2の物性に及ぼす影響を考慮すれば、ノンサポテープ41、42の粘着剤とノンサポテープ61、62の粘着剤とを異なるものとし、それぞれの接着力を適正化させることが好適である。
【0042】
また更に、本実施形態の保持パッド10では、ウレタンシート2の保持面Pの背面側にバフ処理を施した例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、ウレタンシート2の保持面Pにバフ処理を施し、大気孔3および図示を省略した気孔の一部を保持面P側で開孔させて使用してもよい。保持パッド10の被研磨物保持性を考慮すれば、保持面Pの背面側をバフ処理してスキン層8を残すことが好ましい。また、粘着シート4の一面側(ウレタンシート2と貼り合わされる面側)および粘着シート6の一面側(保持定盤に貼り合わされる面側)で、粘着シート4、6を構成する粘着剤層の表面をそれぞれ覆う剥離可能なセパレータを有するようにしてもよい。このようにすれば、装着シート7を単独で保管、運搬等を行うことができ、製造管理の観点からも好ましくなる。
【0043】
更にまた、本実施形態の保持パッド10では、樹脂製シート材として、湿式成膜されたポリウレタン樹脂製のウレタンシート2を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、イソシアネート化合物とポリオール化合物やポリアミン化合物とを反応させることで乾式成形したウレタンシートを用いることも可能である。また、ポリウレタン樹脂に代えて、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂を用いるようにしてもよい。
【0044】
また、本実施形態の保持パッド10では、長さ2000mm、幅2000mmの矩形状とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、対向する2辺の長さが2000mm以上の矩形状、直径2000mm以上の円形状の保持パッドに対応することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は大型化しても平坦性を確保しつつ全面を保持定盤に装着することができる保持パッドを提供するため、保持パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0046】
P 保持面
2 ウレタンシート(シート材)
4 粘着シート(第1の粘着層)
5 樹脂基材
6 粘着シート(第2の粘着層)
10 保持パッド
41、42 ノンサポテープ(第1の粘着部材)
61、62 ノンサポテープ(第2の粘着部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物を保持するための保持面を有する樹脂製のシート材と、
前記シート材の保持面の背面側に貼り合わされた一面を有しており、粘着性を有する複数の第1の粘着部材が隣接するように配された第1の粘着層と、
定盤に装着するための一面を有しており、粘着性を有する複数の第2の粘着部材が隣接するように配された第2の粘着層と、
前記第1の粘着層と第2の粘着層との間に介在し、一面が前記第1の粘着層の他面に貼り合わされ、他面が前記第2の粘着層の他面に貼り合わされた樹脂基材と、
を備え、
前記樹脂基材は、前記一面および他面がそれぞれ連続した面であることを特徴とする保持パッド。
【請求項2】
前記第1の粘着部材および前記第2の粘着部材は、粘着剤のみで構成されるノンサポート型粘着テープであることを特徴とする請求項1に記載の保持パッド。
【請求項3】
前記粘着剤は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系の粘着剤から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の保持パッド。
【請求項4】
前記第2の粘着層の一面側は、前記複数の第2の粘着部材の表面が、それぞれ剥離可能なセパレータで覆われていることを特徴とする請求項3に記載の保持パッド。
【請求項5】
前記シート材および前記樹脂基材は合同な形状であり、対向する2辺の長さが2000mm以上の矩形状または直径が2000mm以上の円形状であることを特徴とする請求項4に記載の保持パッド。
【請求項6】
前記第1の粘着層と、前記樹脂基材と、前記第2の粘着層とが予め貼り合わされたものであることを特徴とする請求項5に記載の保持パッド。
【請求項7】
前記複数の第2の粘着部材の境界部分同士が、前記複数の第1の粘着部材の境界部分同士と前記樹脂基材を介して厚さ方向と交差する方向で同じ位置に配されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の保持パッド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−5562(P2011−5562A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149097(P2009−149097)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000005359)富士紡ホールディングス株式会社 (180)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】