説明

保持具

【課題】 流体消費量を抑えながら、安定した保持力を維持できる保持具を提供すること。
【解決手段】 流体源に接続する流入口6を形成した本体と、負圧生成室8と、この負圧生成室8に流入口6からの流体を噴出するための噴出口とを備え、上記噴出口から噴出した流体の流れによって、負圧生成室8に負圧を生成し、この生成された負圧を利用して被保持体を保持する保持具において、噴出口12b、14bを、流体源Pからの流体の流れに対して直列に複数配置するとともに、上記流体の流れに対して上流側に位置する噴出口14bと、下流側の導入口12aとの間に隙間を設け、上記噴出口14b、導入口12a及び上記隙間によってエジェクタ機構を構成し、上記エジェクタ機構で生成した負圧と、上記負圧生成室8に生成した負圧とが相まって、被保持体Wを保持する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体のベルヌーイ効果によって発生させた負圧を利用して、半導体ウエハなどの被保持体を非接触状態で保持する保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体のベルヌーイの効果を利用して被保持体を被接触状態で保持する保持具が知られている。
例えば、図6に示す保持具は、円盤状のベース部材1の一方の面に凹部2を形成するとともに、この凹部2の底面に流体の噴出部材3を設けている。
この噴出部材3は、その中央に流体室4を設けるとともに、この流体室4側の導入口5aから外周の噴出口5bに向かう複数の通路5を放射状に備えた円筒状の部材である。
【0003】
また、ベース部材1には上記流体室4に流体を供給する流体源Pを接続するための流入口6を設け、上記流体源Pから供給された流体は、流体室4から上記通路5の噴出口5bから噴出するようにしている。
そして、上記複数の流路5の噴出口5bの合計開口面積を上記流入口6の開口よりも小さくして、噴出口5bから高速流体が噴出するようにしている。
【0004】
一方、上記凹部2内であって、噴出部材3の外周には、テーパー状にしたガイド面7を形成し、上記噴出口5bから噴出された流体をベース部材1の表面に沿って外方へ導くようにしている。
このように構成した保持具に、流体源Pから流体を供給し、その流体を上記噴出口5bから高速で噴出させるとその流体によって、噴出部材3の外周に形成した負圧生成室8に負圧が生成される。このように、流体を噴出させた状態で上記流入口6と反対側の保持面9側に被保持部材となる平板状のワークWを対向させ近づけると、ワークWは、上記負圧生成室8に生成した負圧による吸引力で引き付けられ、この吸引力と、流体の噴出による正圧と、ワークWの重量に基づく重力とがバランスする位置で保持されることになる。
【0005】
なお、図6中符号10は、図示のように保持されたワークWの外周を囲むように設けられたストッパ部材であり、保持状態において、保持具が水平方向に移動したとき、ワークWが保持面9から外れてしまわないように機能するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4766824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、従来の保持具は、ベース部材1に形成した負圧生成室8に生成される負圧によってワークWを吸引するようにしているが、上記負圧生成室8に生成される負圧は、上記噴出口5bから噴出される流体速度が大きいほど大きくなる。
そのため、ワークWを確実に保持するためには、上記噴出口5bから噴出する流体速度を大きくして、大きな負圧を生成する必要がある。
特に、半導体ウエハなどのワークWが大型化すれば、ワークWの重量が大きくなり、それを保持するための吸引力も大きくしなければならない。
【0008】
そのために、上記従来の保持具では、負圧生成室8の負圧を大きくするために、流体源Pからの流体供給量を大きくして、噴出口5bから噴出される流体の速度を大きくしなければならなかった。
または、上記噴出口5bの数を多くしなければならなかった。
その結果、流体源Pの流体消費量が多く、エネルギー効率が悪いという問題があった。
この発明の目的は、流体消費量を抑えながら、安定した保持力を維持できる保持具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、気体あるいは液体などの流体源に接続する流入口を形成した本体と、この本体に形成した負圧生成室と、この負圧生成室に上記流入口からの流体を噴出するための噴出口とを備え、上記噴出口から噴出した流体の流れによって、上記負圧生成室に負圧を生成し、この生成された負圧を利用して被保持体を保持する保持具を前提とする。
【0010】
第1の発明は、上記保持具を前提とし、上記噴出口を、上記流体源から噴出口へ流れる流体の流れに対して直列に複数配置するとともに、上記複数の噴出口のうち、上記流体源から噴出口へ流れる流体の流れに対して上流側に位置する噴出口と、この上流側の噴出口から噴出される流体を下流側の噴出口へ導く導入口との間に隙間を設け、上記噴出口、導入口及び上記隙間によってエジェクタ機構を構成し、上記エジェクタ機構で生成した負圧と、上記負圧生成室に生成した負圧とが相まって、被保持体を保持する構成にしたことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、上記エジェクタ機構によって負圧が生成される減圧エリアあるいは上記負圧生成室と本体外部とを連通させる負圧調整用の調整孔を上記本体に形成したことを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、上記エジェクタ機構によって負圧が生成される減圧エリアと、上記負圧生成室とを連通させる連通路を本体に形成するとともに、上記本体には、減圧エリアと被保持体との間を遮断する遮断部を備えたことを特徴とする。
なお、上記流体源から供給される流体は、気体及び液体を含む。
【発明の効果】
【0013】
第1から第3の発明は、エジェクタ機構を備えたので、負圧生成室に生成した負圧だけでなく、エジェクタ機構で生成される負圧も利用して、被保持体に対するより大きな吸引力を発揮させることができる。
しかも、エジェクタ機構によって外部の流体を吸い込み、その流体が流体源から供給された流体と合流して、最下流側の噴出口から負圧生成室に噴出するので、負圧生成室に噴出させる流体量を流体源からの供給量よりもエジェクタ機構で吸い込んだ分だけ多くすることができる。
言い換えれば、負圧生成室に噴出させる流体量が同じなら、エジェクタ機構で吸い込む流体分だけ流体源からの供給流量を少なくでき、消費流量を節約できる。
【0014】
また、流体源からの流体がエジェクタ機構を通過する過程で負圧を生成し、外気を吸い込みながら、最下流の噴出口から噴出して負圧生成室にも負圧を生成させるので、流体源からの供給流量が従来と同じであっても、エジェクタ機構による負圧と、負圧生成室に生成される負圧とが相まって、大きな吸引力を発揮し、被保持体をより安定的に保持することができる。
【0015】
第2の発明では、調整孔の開度を調整することによって減圧エリアあるいは負圧生成室と本体外部とを連通させ、負圧生成室よりも高い外部の圧力を減圧エリアあるいは負圧生成室に導いて、減圧エリアあるいは負圧生成室内の負圧を弱く調整することができる。これにより、被保持体に対する吸引力を小さく調整できる。例えば、被保持体が柔軟性を有するものの場合、減圧エリアや負圧生成室の負圧による吸引力が大きすぎると、被保持体における減圧エリアあるいは負圧生成室に対向する部分が減圧エリアあるいは負圧生成室側に引き付けられて、被保持体が変形してしまう可能性があるが、この発明のように、減圧エリアあるいは負圧生成室内の圧力を調整できれば、吸引力を最適に保って被保持体の変形を防止することができる。
【0016】
なお、上記流体源からの流体供給量を調整して、噴出口から噴出する流体流量や速度を調整すれば、減圧エリアあるいは負圧生成室内の負圧を調整することも可能である。しかし、流体ポンプなどの流体源からの気体の吐出量を微妙に制御することは難しい場合がある。これに対し、上記調整孔に流量調整バルブなどを設け、その開度を調整して減圧エリアあるいは負圧生成室と外部との連通を調整することはそれほど難しくなく、減圧エリアあるいは負圧生成室内の圧力調整が容易にできる。
【0017】
第3の発明によれば、エジェクタ機構によって形成される減圧エリアと被保持体との間に遮断部材を備えることによって、被保持体が減圧エリアと直接対向することがない。被保持体が柔軟性を有するものであったとしても、エジェクタ機構によって形成される減圧エリアの負圧によって、被保持体が変形してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は第1実施形態の保持具の断面図である。
【図2】図2は第2実施形態の保持具の断面図である。
【図3】図3は図2のIII-III線断面図である。
【図4】図4は第3実施形態の保持具の断面図である。
【図5】図5は第4実施形態の保持具の断面図である。
【図6】図6は従来例の保持具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示す第1実施形態は、ベース部材1に形成した凹部2内に、複数の流体通路12を形成し、保持面9側を解放した筒状の第1噴出部材11と、この第1噴出部材11内に配置し、保持面9側を閉鎖した第2噴出部材13を設け、上記第1噴出部材11の外側に、ガイド面7と第1噴出部材11とで囲まれた負圧生成室8を形成している。
なお、この第1実施形態において、図6に示す従来例と同様の構成要素には、図6と同じ符号を用いることにする。
また、この第1実施形態では、ベース部材1と、第1、第2噴出部材11,13とによって、この発明の本体を構成し、これら各部材におけるワークW側端面をほぼ面一の保持面9とする。
【0020】
上記第1噴出部材11は、その側面に放射状に設けた複数の流体通路12を備え、各流体通路12の導入口12aから導入された流体が噴出口12bから上記負圧生成室8へ噴出され、ガイド面7に沿ってベース部材1の外周側へ流れる過程で、負圧生成室8内に負圧を生成する構成にしている。
【0021】
また、上記第2噴出部材13は、流体源Pに接続する流入口6に接続され、導入口14a及び噴出口14bを有するノズル部材14を複数支持している。
この第2噴出部材13で支持された各ノズル部材14は、その噴出口14bが上記第1噴出部材11に設けた流体通路12の各導入口12aに対応し、流体の流れに対して直列に配置され、上記流入口6から供給された流体が、図示の矢印のようにノズル部材14の噴出口14bから流体通路12の導入口12aに導入され、上記各噴出口12bから負圧生成室8へ噴出される構成にしている。
【0022】
さらに、上記ノズル部材14の噴出口14bと流体通路12の導入口12aとの間には隙間を確保し、上記噴出口14bから導入口12aへ向かう流体の流れが、上記隙間を介して外部の流体を吸い込むこの発明のエジェクタ機構を構成するようにしている。このように、エジェクタ機構によって減圧され、負圧が生成されるエリアを減圧エリア15とする。
この第1実施形態では、上記ノズル部材14の噴出口14bと、流体通路12の噴出口12bが、この発明の流体の流れに対して直列に配置した複数の噴出口であり、上記噴出口14bが上流側に位置する噴出口、上記噴出口12bが下流側の噴出口である。また、上記導入口12aが、上流側の噴出口14bから噴出される流体を下流側の噴出口12bへ導く導入口である。
【0023】
このような保持具は、上記流入口6に流体源Pからの流体を供給し、その保持面9側を被保持体であるワークWに近づけると、ノズル部材14、流体通路12、負圧生成室8、及び保持面9とワークWとの間隙を介して本体の外方へ流れ、負圧生成室8への噴出流によって負圧生成室8に負圧を生成し、上記エジェクタ機構によって減圧エリア15に負圧を生成する。
このように生成された上記負圧生成室8の負圧と、減圧エリア15の負圧が吸引力となり、この吸引力と、流体噴出による正圧と、ワーク重量とのバランスした位置で、ワークWが保持される。
【0024】
この第1実施形態では、負圧生成室8の負圧と、減圧エリア15の負圧とが相まって、ワークWを保持するようにしている。従来のように、負圧生成室8に生成された負圧のみによる吸引力でワークWを保持する場合と比べて大きな保持力を実現でき安定した保持ができる。
【0025】
また、この第1実施形態では、エジェクタ機構によって減圧エリア15に負圧が生成されると、ワークWと保持面9との間隙から本体外部の流体が吸い込まれるので、上記第1噴出部材11の流体通路12には、流体源Pから供給された流体に外部の流体が合流して供給されることになる。
そのため、流体通路12の噴出口12bからは、上記流体源Pからの供給量よりも多くの流体が噴出され、負圧生成室8内により大きな負圧を生成することができる。
その結果、安定した保持力を得ることができ、より大きなワークにも対応できる。
【0026】
さらに、上記負圧生成室8への噴出流には、上記エジェクタ機構によって減圧エリア15を介して吸い込まれた流体が合流するので、負圧生成室8に噴出させる流体量が同じなら、エジェクタ機構で吸い込む流体分だけ流体源Pからの供給流量を少なくでき、消費流量を節約することもできる。
【0027】
図2,3に示す第2実施形態は、ベース部材1の凹部2に、上記第1実施形態の第1、第2噴出部材11,13に替えて噴出部材16を設け、この噴出部材16とベース部材1とによって本体を構成した保持具である。なお、上記第1実施形態と同じ構成要素には、図1と同じ符号を用い、個々の構成要素の詳細な説明は省略する。
上記噴出部材16は、ワークWに対向する保持面9側を底面16aとした円筒状部材である。上記底面16aにはその外周に沿って起立した円筒側面状の第1支持部16bと、この第1支持部16bの内側に起立した第2支持部16cとを備えている。
【0028】
上記第1支持部16bは、複数、この第2実施形態では4個の第1ノズル部材17を支持し、第2支持部16cは、上記第1ノズル部材17と同数の第2ノズル部材18を支持している。
また、上記第1ノズル部材17の噴出口17bと、第2ノズル部材18の噴出口18bとを流体の流れに対して直列に配置し、流体流れに対して上流側の第2ノズル部材の噴出口18bと下流側の第1ノズル部材17の導入口17aとの間に隙間を維持し、エジェクタ機構を構成するとともに、その周囲を減圧エリア15としている。
【0029】
そして、第2ノズル部材18の導入口18aが図示しない流体源に接続する流入口6に接続するとともに、上記導入口18a側空間と、噴出口18b側の減圧エリア15とを上記第2支持部16cで区画している。
また、上記減圧エリア15と上記負圧生成室8とを、上記第1支持部16bで区画している。
但し、第1支持部16bには、図3に示すように複数の連通路19を形成している。
【0030】
上記連通路19は、上記減圧エリア15と本体外部とを、上記負圧生成室8を経由して連通させるための通路であり、上記エジェクタ機構が減圧エリア15の流体を吸い込む際に、この連通路19及び負圧生成室8を介して減圧エリア15に外部の流体が供給される。
なお、上記連通路19は、上記第1ノズル部材17の噴出口17bから負圧生成室8内に噴出した流体を直接吸い込むことがないように、その吸入口19aと上記噴出口17bとの間には所定の距離を保つようにしている。
これにより、上記エジェクタ機構によって減圧室15には負圧が生成されるとともに、本体外部の流体が負圧生成室8及び減圧エリア15を経由し、第1ノズル部材18の噴出口18bから噴出した流体と合流して第1ノズル部材17へ導入されることになる。
【0031】
この第2実施形態の保持具も、流入口6に接続した流体源から流体を供給し、第1ノズル部材17の噴出口17bから流体を噴出することによって、負圧生成室8に負圧を生成し、この負圧によって保持面9側にワークWを保持することがでる。
また、第1ノズル部材17の噴出口17bから噴出される流体の流量は、上記流体源から供給された流量に上記エジェクタ機構によって外部から吸い込まれた流量との合計になるため、流体源からの供給流量よりも大きな流量を噴出させてより大きな負圧によって大きな保持力を得ることができる。
【0032】
さらに、上記負圧生成室8への噴出流には、上記エジェクタ機構によって減圧エリア15を介して吸い込まれた外部流体が合流するので、負圧生成室8に噴出させる流体量が同じなら、エジェクタ機構で吸い込む流体分だけ流体源からの供給流量を少なくでき、消費流量を節約することもできる。
さらにまた、この第2実施形態では、上記減圧エリア15とワークWとの間に、噴出部材16の底面16aを介在させて減圧エリア15を露出させていないため、ワークの中央部分が減圧エリア15に吸引されて、変形することを防止できる。
【0033】
この第2実施形態の保持具は、他の実施形態と同様に負圧生成室8で生成された負圧と、エジェクタ機構によって生成された負圧とが相まって保持力となるが、エジェクタ機構によって負圧が生成される減圧エリア15は、負圧生成室8とは違って流体の噴出がない。そのため、上記減圧エリア15に生成される負圧が大きくなると、その負圧による吸引力でワークWが吸引されて、変形するだけでなく、吸着してしまうことがある。
しかし、上記のように、噴出部材16の底面16aが、上記減圧エリア15とワークWとの間に介在して、両者の間を遮断していれば、ワークWが減圧エリア15の負圧によって変形するようなことはない。この第2実施形態では、上記底面16aが、この発明の遮断部材を構成する。
【0034】
図4に示す第3実施形態は、ベース部材1に、流量制御バルブを接続するための接続孔20を形成した以外は図2、3に示す第2実施形態と同じである。この実施形態において、第2実施形態と同じ構成要素には、上記第2実施形態と同じ符号を用いる。そして、第2実施形態と同じ構成要素については各要素の詳細な説明は省略し、以下には第2実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0035】
上記接続孔20は、第2ノズル部材18の噴出口18bと第1ノズル部材17の導入口17aとで構成されるエジェクタ機構によって負圧が生成される減圧エリア15と本体外部とを連通する貫通孔で、この接続孔20には、図示しない流量制御バルブを直接あるいは配管を介して接続し、この流量制御バルブを介して、上記減圧エリア15と外部とを連通させるようにする。
このように、上記減圧エリア15が本体外部と連通すれば、本体外部の圧力が減圧エリア15に導かれ、減圧エリア15内の圧力が外部圧力に近づき、すなわち減圧エリア15に生成される負圧が小さくなる。
【0036】
このように、減圧エリア15内の負圧が小さくなれば、負圧生成室8への噴出流体によって生成される負圧と、減圧エリア15に生成される負圧とが相まって生成される吸引力が小さくなり、保持状態のワークWのうち、上記減圧生成室8に対向した部分のみが強く吸引されて、ワークWが変形してしまうことを防止できる。
なお、上記接続孔20に接続した流量制御バルブの開度を調整することによって吸引力の基となる負圧の大きさを調整し、適度な保持力を得ることができる。
上記接続孔20とこの接続孔20に接続した流量制御バルブとによってこの発明の負圧調整用の調整孔を構成しているが、上記バルブはその開度が調整可能なものであれば、どのようなものでも構わない。
【0037】
なお、この第3実施形態においても、負圧生成室8に噴出する流体によって生成される負圧と、上記エジェクタ機構によって減圧エリア15に生成される負圧とに基づいて、安定した保持力を得ることができるとともに、流体源から供給される流体にエジェクタ機構によって吸い込まれた流体を合流させて噴出流量を大きくすることができ、その結果負圧を大きくすることができる点は、他の実施形態と同じである。
また、エジェクタ機構によって吸い込む外部流体の分だけ、流体源の消費流量を節約できる点も上記他の実施形態と同じである。
【0038】
図5に示す第4実施形態は、図4に示す第3実施形態の接続孔20に替えて、ベース本体1に直接負圧調整用の調整孔であるオリフィス21を形成したものである。
その他の構成は、上記第3実施形態と同じである。第3実施形態と同じ構成要素には、図4と同じ符号を用い、それらの詳細な説明は省略する。
この第4実施形態では、上記ベース部材1に形成したオリフィス21を、第2ノズル部材18の噴出口18bと第1ノズル部材17の導入口17aとで構成されるエジェクタ機構によって負圧が生成される減圧エリア15と本体外部とを連通する位置に貫通させている。
【0039】
このように、上記減圧エリア15が上記オリフィス21を介して本体外部と連通すれば、本体外部の圧力が減圧エリア15に導かれ、減圧エリア15内の圧力が外部圧力に近づき、すなわち減圧エリア15に生成される負圧が小さくなる。
その結果、上記第3実施形態と同様に、上記エジェクタ機構によって生成する負圧が大きくなり過ぎないように調整し、ワークWの吸着を防止できる。
この第4実施形態では、減圧エリア15内の負圧を調整するためのオリフィス21をベース部材1に直接形成し、オリフィスの開度を一定にしているが、この開度はワーク重量や供給流体の流量など、保持具の使用条件に応じて最適値を選択する必要がある。
但し、開度の変更が可能な可変オリフィスを別部材として、ベース本体1に組み付け、その開度を変えて、上記減圧エリア15に生成される負圧を調整するようにしてもよい。
【0040】
なお、この第4実施形態においても、負圧生成室8に噴出する流体によって生成される負圧と、上記エジェクタ機構によって減圧エリア15に生成される負圧とに基づいて、安定した保持力を得ることができるとともに、流体源から供給される流体にエジェクタ機構によって吸い込まれた流体を合流させて噴出流量を大きくすることができ、その結果負圧を大きくすることができる点は上記他の実施形態と同じである。
また、エジェクタ機構によって吸い込む外部流体の分だけ、流体源の消費流量を節約できる点も上記他の実施形態と同じである。
【0041】
また、上記第3、第4実施形態では、この発明の調整孔である接続孔20あるいはオリフィス21を、上記減圧エリア15に開口させているが、これら接続孔20あるいはオリフィス21などの調整孔は、減圧エリア15ではなく、上記負圧生成室8に開口させてもよい。上記調整孔を負圧生成室8に開口させれば、負圧生成室8に本体外部の圧力を直接導いて、負圧生成室8内の負圧を小さく調整することができ、上記第3、第4実施形態と同様の効果を得られる。
【0042】
さらに、上記第1〜第4実施形態の保持具は、流体源から供給される流れに沿って、二つの噴出口を直列に配置して一つのエジェクタ機構を構成しているが、噴出口の数及びエジェクタ機構の数は上記実施形態に限らず、複数のエジェクタ機構を構成するようにしてもよい。
また、上記保持具は、空気などの気体中だけでなく、液体中で用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明の保持具は、変形しやすい柔軟性を有するワークの保持に適している。
【符号の説明】
【0044】
1 ベース部材
6 流入口
8 負圧生成室
11 第1噴出部材
12 流体通路
12a 導入口
12b 噴出口
13 第2噴出部材
14 ノズル部材
14a 導入口
14b 噴出口
15 減圧エリア
16 噴出部材
16a (遮断部材である)底面
17 第1ノズル部材
17a 導入口
17b 噴出口
18 第2ノズル部材
18a 導入口
18b 噴出口
19 連通路
20 接続孔
21 オリフィス
P 流体源
W (被保持体である)ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体あるいは液体などの流体源に接続する流入口を形成した本体と、この本体に形成した負圧生成室と、この負圧生成室に上記流入口からの流体を噴出するための噴出口とを備え、上記噴出口から噴出した流体の流れによって、上記負圧生成室に負圧を生成し、この生成された負圧を利用して被保持体を保持する保持具において、上記噴出口を、上記流体源から噴出口へ流れる流体の流れに対して直列に複数配置するとともに、上記複数の噴出口のうち、上記流体源から噴出口へ流れる流体の流れに対して上流側に位置する噴出口と、この上流側の噴出口から噴出される流体を下流側の噴出口へ導く導入口との間に隙間を設け、上記噴出口、導入口及び上記隙間によってエジェクタ機構を構成し、上記エジェクタ機構で生成した負圧と、上記負圧生成室に生成した負圧とが相まって、被保持体を保持する構成にした保持具。
【請求項2】
上記エジェクタ機構によって負圧が生成される減圧エリアあるいは上記負圧生成室と本体外部とを連通させる負圧調整用の調整孔を上記本体に形成した請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
上記エジェクタ機構によって負圧が生成される減圧エリアと、上記負圧生成室とを連通させる連通路を本体に形成するとともに、上記本体には、減圧エリアと被保持体との間を遮断する遮断部を備えた請求項1または2の保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−48184(P2013−48184A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186326(P2011−186326)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(592189701)日本空圧システム株式会社 (17)
【Fターム(参考)】