説明

保持装置

【課題】 ベルヌーイの原理を利用してワークを保持する保持装置において、製造コストを抑えながら装置全体の厚みを薄くできる保持装置を提供すること。
【解決手段】 ノズル本体内6に、ノズル11に連通するとともに圧力流体源に接続した中継室7を備えるとともに、上記中継室7の周囲には流体誘導面8,10を設け、上記圧力流体源からの流体を上記中継室7を経由して上記ノズル11から噴出させ、ベルヌーイの原理を用いてワークを保持して搬送する保持装置において、上記ノズル本体6の側面を通過して上記中継室に連通する供給パイプ16と、上記ノズル本体6の側面に連接した支持部15とを備え、上記供給パイプ16を上記支持部15に沿わせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルヌーイの原理を利用してワークを保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体に関するベルヌーイの原理によって発生する負圧を利用してワークを保持する装置が知られている。
例えば、特許文献1に示すものは、図10に示すように、円形のプレート面1aを備えたプレート部材1の中央に、円形の凹部2を形成するとともに、この凹部2の壁面上部をテーパー状にして、このテーパー面2aをプレート面1aになめらかに連続させている。
また、上記凹部2には、ノズル部材3を組み込んでいる。
このノズル部材3は、その一方の面3aをプレート面1aと同一レベルにするとともに、その内部に圧力流体を供給する中継室4を形成している。そして、この中継室4に連続する複数の絞り噴出口5を放射状に形成している。
【0003】
上記絞り噴出口5は、流体の噴出方向をプレート面1aと平行になるように形成するとともに、その直径を中継室4よりも小さくしている。このように流路を絞ることによって、これら複数の絞り噴出口5の合計流路面積を、中継室4の流路面積よりも小さくしている。
上記中継室4には、図示していないが、エアなどの流体を導く配管を接続するようにしている。この配管を介して中継室4にエアを導くと、そのエアが複数の絞り噴出口5に導かれる。このとき、複数の絞り噴出口5の合計流路面積、すなわち、流路の有効断面積を中継室4の流路の有効断面積よりも小さくしているので、中継室4から絞り噴出口5を通過する過程で、流速が数倍から十数倍に加速する。このようにして十分に加速した流体を、上記テーパー面2aに吹き付けるようにしている。
【0004】
テーパー面2aに吹き付けられたエアは、コアンダ効果によってこのテーパー面2aに誘導された後、このテーパー面2aからプレート面1aに導かれることになる。
また、上記プレート面1aに沿って導かれた流体は、さらにプレート面1aに沿って流れ、プレート部材1の図示しない外縁に沿って放出される。
【0005】
上記のように加速されて高速になった流体がプレート面1aに沿って流れると、流体のベルヌーイ効果によって、このプレート面1a上に十分な負圧が発生する。この負圧を利用すれば、プレート面1aから所定の距離に置いた図示していない被保持体となるワークを非接触状態で保持し、目的の場所まで搬送することができる。
【0006】
なお、ワークが、非接触状態に保たれるのは以下の原理による。
上記プレート面1aを下に向けて、ワークを上から保持する場合には、ワークに作用する重力と上記負圧による吸引力とがバランスする位置にワークが保持されることになる。
また、上記プレート面1aを上に向けて、ワークを下から保持する場合には、噴出流体がワークにぶつかることによってワークを押し上げる推力と、ワークに作用する重力とのバランスによって、ワークが保持されることになる。
さらに、上記プレート面1aから突出するパッドを設け、ワークをこのパッドに軽く接触させて保持することもできる。
【0007】
このような保持装置は、ワークを挟んで保持する装置とは違い、ワークを非接触あるいは軽い接触状態で保持することができるので、保持跡や傷などを付けずに保持することができる。そのため、例えば、半導体基板など、保持跡や傷を嫌うワークを保持して搬送するのに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2002/047155号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した保持装置で搬送することができる半導体基板は、その製造現場において、棚状のカセットの各段に1枚ずつ収容されていることがある。このカセットの各段は、半導体基板の厚みの、数倍程度の高さを備えているが、例えば、厚さが1(mm)以下の半導体基板を1枚だけ収容する各段の高さは、5(mm)〜10(mm)と、非常に小さい。
しかし、上記従来の保持装置では、ノズル部材3の厚み方向に、中継室4にエアを供給する配管を設けているので、装置全体の厚みが大きくなって、半導体基板を収容したカセットの格段にノズル部材3を組み込んだプレート部材1を挿入することができない。このように、ノズル部材3やプレート部材1の厚みが厚すぎて上記カセット内にプレート部材1が挿入できない場合には、カセットから別の手段で各半導体基板を取り出してから、改めて上記保持装置によって基板を保持し、搬送しなければならない。そのため、基板搬送の作業性が悪くなってしまう。
【0010】
一方、ノズル部材3及びプレート部材1の厚みを薄くして上記カセットにプレート部材1を挿入できるようにするためには、圧力流体の供給通路を、中継室4の側面から中央に向かって形成し、側面の開口を流体供給源に接続することが考えられる。ところが、ノズル部材3及びプレート部材1の厚みが薄くなればなるほど、プレート部材1に長い貫通孔を形成する加工は難しく、製造コストが掛かってしまうという問題がある。
また、上記供給通路を形成するため、プレート部材1を薄い板部材を張り合わせて構成し、合わせ面のそれぞれに凹部を形成することによって供給通路を構成することも考えられる。しかし、板部材の合わせ面に形成した供給通路に圧力流体を供給したとき、圧力流体が漏れないように合わせ面を接着することは難しく、合わせ面の接着にコストが掛かってしまうという問題もあった。
【0011】
この発明の目的は、ベルヌーイの原理を利用してワークを保持する保持装置において、製造コストを抑えながら装置全体の厚みを薄くできる保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、ノズルを構成するノズル本体内に、ノズルに連通するとともに圧力流体源に接続した中継室を備えるとともに、上記中継室の周囲には流体誘導面を設け、上記圧力流体源からの流体を上記中継室を経由して上記ノズルから噴出させ、この噴出させた流体を流体誘導面に沿って流出させ、ベルヌーイの原理を用いてワークを保持して搬送する保持装置において、上記ノズル本体の側面を通過して上記中継室に連通し、上記中継室に圧力流体を供給する供給パイプを設けた点に特徴を有する。
上記ノズルは、筒状のものに限らず、絞り噴出口を構成するものならどのようなものでもよく、例えばスリットなども含むものとする。
【0013】
第2の発明は、上記ノズルを、中継室の側面に設けるとともに、このノズルから噴出させた流体を誘導するテーパー面を備えるとともに、上記供給パイプを上記テーパー面に交差する角度で中継室の側面に連通させたことを特徴とする。
なお、上記の「供給パイプをテーパー面に交差する角度で・・・連通させた」とは、供給パイプがノズル本体の側面から中継室の側面に連通する際に、テーパー面を回避しないということで、供給パイプがテーパー面に形成した貫通孔やスリット内に配置されることである。
【0014】
第3の発明は、上記ノズル本体の側面に連接した支持部を備え、上記供給パイプを上記支持部に沿わせて設けたことを特徴とする。
第4の発明は、上記供給パイプの一部あるいは全部を、上記支持部内に位置させたことを特徴とする。
第5の発明は、第3または第4の発明を前提とし、上記支持部の端部に、上記供給パイプと上記圧力流体源とを接続するための接続用ブロックを設けたことを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、上記供給パイプにおける上記中継室と反対側の端部を、上記支持部の端部から突出させ、この供給パイプの突出部分の外周に環状シール部材を設けるとともに、上記接続用ブロックには、上記支持部の端部を保持する支持部保持部と、この支持部保持部に連続し、上記環状シール部材の外周よりわずかに小さくした内周を備えた筒状凹部と、この筒状凹部の軸方向に連続し、その内径を筒状凹部よりも小さくした連通路と、この連通路に上記圧力流体源側の配管を接続するための圧力流体源接続部とを備え、上記供給パイプに設けた上記環状シール部材を上記筒状凹部内に位置させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1〜第6の発明では、ノズル本体に設けた中継室にノズル本体の側面を通過する供給パイプによって圧力流体を供給するようにしているため、圧力流体の供給用の配管などによって装置の厚みが厚くなることはない。
また、圧力流体の供給通路としてパイプを用いているため、細くて長い供給通路を形成する難しい加工をしたり、薄板を強固に接着したりしなくても、保持装置の厚みを薄くできる。
このように保持装置の厚みを薄くできれば、ワークが収容された狭い隙間に保持装置を挿入することができ、収容されたワークを保持して取り出したり、そのまま搬送したりすることができる。例えば、狭いカセット内に収容された半導体基板を、カセット内で直接保持して搬送することもできる。
【0017】
第2の発明では、供給パイプと、流体誘導面を構成するテーパー面と、ノズルとを、ノズル本体の厚み方向ではなく、中継室の側面側にほぼ同レベルに配置することができ、装置の厚みをより薄くすることができる。
第3の発明は、ノズル本体の側面に支持部を連接したので、この支持部によってノズル本体を支持して移動することができ、保持したワークを搬送することができる。そして、供給パイプを支持部に沿わせることによって、供給パイプが搬送装置から離れてしまうことがなく、ワークを保持する作業の邪魔になることがない。
【0018】
第4の発明では、供給パイプの一部あるいは全部を支持部内に位置させたので、供給パイプの太さと支持部の厚みとを合わせた全体の厚みを、支持部内に位置させた供給パイプの分だけ小さくすることができる。このように、指示部に対応する部分の厚みが薄くなれば、支持部も狭い隙間に挿入することができるため、狭い場所に収容されているワークをより保持し易くなる。
【0019】
第5、第6の発明によれば、供給パイプと、圧力流体源側の配管とが同一寸法でなくても、上記接続用ブロックを介して接続することができる。特に、供給パイプを細くして、ノズル本体や支持部などの厚みを薄くしながら、接続用ブロック18の圧力流体源接続部を大きくして、圧力流体源に接続する外部の配管は一般的な寸法のものを利用できる。そのため、保持装置設置の自由度が高い。
第6の発明によれば、接続用ブロックの筒状凹部に、外周に環状シール部材を設けた供給パイプを挿入して、接続用ブロックと支持部とを連結するだけで、シール性を保った状態でシール部材が保持できる。シール部材を保持するシール溝などの加工が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の断面図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】第1実施形態の平面図である。
【図4】第1実施形態の接続用ブロックの斜視図である。
【図5】第2実施形態の断面図である。
【図6】図5のVI-VI線断面図である。
【図7】第2実施形態の平面図である。
【図8】第3実施形態の断面図である。
【図9】第4実施形態の平面図である。
【図10】従来例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜4に示す第1実施形態は、図10に示した従来の保持装置と同様に、流体のベルヌーイの原理を利用してワークを保持するものである。
そして、この第1実施形態の保持装置は、上記従来例のプレート部材1とノズル部材3の機能を一体化したノズル本体6を備えている。
このノズル本体6は、円盤状の部材であり、中央部に中継室7を形成するとともに、その周囲には環状のテーパー面8を形成している。
【0022】
そして、上記中継室7の外側を円形の平面9とし、この平面9と上記テーパー面8の外周側の平面10とを同一レベルにしている。
さらに、このノズル本体6の中央部には、上記中継室7に連通する絞り噴出口11を複数形成し、これらによってノズルを構成している。
また、上記外周側の平面10上には複数のパッド12を設けている。このパッド12は、この第1実施形態の保持装置において、上記平面9,10側に負圧による吸引力を発生させたとき、吸引力が作用する領域内に、その先端が位置するようにしている。従って、上記負圧による吸引力によってワークを保持する場合、ワークはこのパッド12に接触した状態で保持されることになる。
【0023】
さらに、上記中継室7の側壁には、上記噴出口11とほぼ同レベルの位置に、後で説明する供給パイプ16を挿入するための挿入孔13を形成するとともに、この挿入孔13と連続し、上記テーパー面8を経由してノズル本体6の側面から外部に開放された貫通孔14を形成している。
なお、図3中、符号14aは、上記テーパー面8上で、上記貫通孔14に連続する凹部である。
【0024】
上記のようにしたノズル本体6の外周には、一対の第1、第2部材15a,15bからなるこの発明の支持部を構成する支持部材15を連接している。上記第1、第2部材15a,15bは所定の間隔を保つことによって、支持部材15の長さ方向に連続するスリット15cを形成している。そして、この支持部材15は、上記スリット15cを上記ノズル本体6の貫通孔14に連続する位置に接続している。これらノズル本体6と支持部材15との接続には、接着やビス止めなどどのような接続手段を用いてもかまわない。
【0025】
さらに、この第1実施形態の保持装置は、上記中継室7に圧力流体であるエアを供給するための供給パイプ16を備えているが、この供給パイプ16は、支持部材15のスリット15c内及びノズル本体6の貫通孔14から上記パイプ挿入孔13に一方の端部を挿入し、中継室7に連通している。そして、接着剤によって、挿入孔13に供給パイプ16を固定するとともに、供給パイプ16と挿入孔13との間を封止するようにしている。つまり、上記供給パイプ16は、テーパー面8に交差する角度で中継室7の側面に連通している。
一方、供給パイプ16の他方の端部を、支持部材15の端部から突出させ、この突出部分には環状シール部材であるOリング17を嵌めている。
【0026】
また、支持部材15の端部には、供給パイプ16の突出部を収容する接続用ブロック18を設けている。
この接続用ブロック18は、図4に示すように、支持部材15を、図1に示す上下方向から挟み込む挟持用のスリット19とこのスリット19の中央に、スリットより奥まで形成した筒状凹部20と、筒状凹部20の底面から軸方向に連続して端面18aまで貫通する連通路21とを備えている。
【0027】
上記スリット19は、このスリット19に支持部材15の端部を挿入するこの発明の支持部側保持部である。そして、このスリット19に端部を挿入した支持部材15に、上記接続用部材18を接着やビス止めなどで取り付けることができる。
また、上記筒状凹部20は、その内径を供給パイプ16に嵌めた状態のOリング17の外周よりわずかに小さくし、上記連通路21は筒状凹部20よりも内径を小さくしている。
【0028】
そして、上記支持部材15の端部をスリット19に挿入し、この接続用ブロック18を支持部材15の端部に取り付けたとき、上記供給パイプ16に嵌めたOリング17が、上記支持部材15の端部と連通路21との間の上記筒状凹部20に位置する寸法関係を備えている。
なお、上記したように、連通路21の内径を筒状凹部20の内径よりも小さくしているので、上記筒状凹部20と連通路21との境には境界段部20aが形成される。そこで、この接続用ブロック18を支持部材15の端部に接続すると、上記Oリング17は、支持部材15の端部と筒状凹部20の境界段部20aとの間に保持される。また、上記筒状凹部20の内径をOリング17の外径よりもわずかに小さくしているので、筒状凹部20内でOリング17は直径方向に圧縮され、シール機能を発揮することになる。
【0029】
また、上記筒状凹部20の開口21a側は、圧力流体源に接続した配管を接続する圧力流体源接続部を構成し、図示しない管継ぎ手を取り付け可能にしている。例えば、連通路21の開口21a側内周には、管継ぎ手をねじ結合するための雌ねじを形成して、継ぎ手を介して配管を接続する圧力流体源接続部としたり、開口21aに直接、配管を接続したりするようにしてもよい。さらに、連通路21に連続させて内径の大きな圧力流体源接続部を形成し、大径の継ぎ手や配管を接続するようにしてもよい。
【0030】
上記第1実施形態の保持装置は、接続用ブロック18に接続した供給配管を介して供給パイプ16にエアを供給すると、そのエアは、中継室7を介して複数の絞り噴出口11から高速で噴出し、テーパー面8及び平面10に沿って流れる。つまり、この第1実施形態では、上記テーパー面8及び平面10が、この発明の流体誘導面を構成している。そして、上記エアの流れに沿って負圧の領域が形成され、吸引力を発揮することになる。
このようなノズル本体6をワークに近接させれば、上記吸引力によってワークを吸引し、ワークをパッド12に接触させた状態で保持することができる。
【0031】
この第1実施形態の保持装置は、ノズル本体6に形成した中継室7に、ノズル本体6の側面を介して供給パイプ16を接続しているので、エアの供給通路や圧力流体源側の配管が、ノズル本体6の厚み方向の寸法を大きくすることがない。
従って、供給パイプ16が接続できる範囲内でノズル本体6の厚みを薄くすることができる。
【0032】
また、この第1実施形態では、流体誘導面を構成するテーパー面8を中継室7の側面の周囲に設け、ノズルを構成する絞り噴出口11をテーパー面8に向かって形成するとともに、供給パイプ16をテーパー面に交差させて中継室8に連通させている。そのため、上記供給パイプ16をテーパー面8、絞り噴出口11とほぼ同一レベルに配置することができ、供給パイプ16が、テーパー面8を回避する場合と比べてノズル本体の厚みをより薄くすることが可能である。
厚みを薄くした保持装置は、例えば、半導体基板のカセットのように、狭い箇所にノズル本体を挿入することができ、ワークの周囲の空間的余裕が少ない状況でも、ワークの保持搬送の作業性が良い。
【0033】
しかも、この第1実施形態の保持装置は、エアの供給通路をパイプで構成しているので、ノズル本体6や他の部材に長くて細い通路を形成する加工が不要である。この第1実施形態では、ノズル本体6に供給パイプ16を通すための貫通孔14を形成しているが、この貫通孔14は供給パイプ16が通過できればよいので、十分大きくすることもでき、厳密な加工精度を必要としない。また、貫通孔14の長さも、ノズル本体6の外周からテーパー面8の中間までと、それほど長くないため、難しい加工ではない。
さらに、上記供給パイプ16を用いることによって、線状凹部を形成した薄板を張り合わせて供給通路を形成する場合のように、広範囲にわたる強固な接着も不要にでき、接着のためのコストがかかることもない。
【0034】
また、第1実施形態では、支持部材15のスリット15c内に供給パイプ16を収容しているので、支持部材15部分の厚みも、供給パイプ16の太さの範囲で薄くすることができる。支持部材15部分の厚みが薄くできれば、狭い箇所にノズル本体6とともに支持部材15を挿入することができ、狭い場所に収容されているワークをより保持し易くなる。
さらにまた、厚みを薄くした支持部材15とは別に、接続用ブロック18を設けるようにしたため、ノズル本体や支持部材15などの厚みを薄くしながら、接続用ブロック18の圧力流体源接続部を大きくして、圧力流体源に接続する保持装置外部の配管は一般的な寸法のものを利用することもできる。
【0035】
図5〜図7に示す第2実施形態は、中継室7を備えたノズル本体22と、中継室7の周囲に設けた流体誘導面を構成する流体誘導部23とを別部材とし、上記第1実施形態の支持部材15に相当する支持部24を、上記流体誘導部23と一体的に形成し、外輪部材25としている。なお、第1実施形態と同様の構成要素には、第1実施形態と同じ符号を用いている。
【0036】
ノズル本体22は、円盤状の部材で、内部に中継室7と、この中継室7に連通する複数の絞り噴出口11を形成している。これら複数の絞り噴出口11がノズルを構成している。
また、このノズル本体22には、側面から中継室7まで貫通する挿入孔13を設けている。
【0037】
一方、外輪部材25は、ノズル本体22と同心円の外周を持つ流体誘導部23と、この流体誘導部23の外周の一箇所から外方へ突出した平板状の支持部24とからなる。
流体誘導部23は、中央に上記ノズル本体22を挿入する中央穴26を備えるとともに、この円形穴から外方に向かったテーパー面8及び平面10を備え、これらテーパー面8及び平面10で、流体誘導面を構成している。
また、外輪部材25には、上記中央穴26から支持部24の中央に連続し、支持部24の長さ方向に沿ったスリット25aを形成している。
【0038】
このようにした外輪部材25を、ノズル本体22の外周を囲むように設け、中央穴26にノズル本体22を固定しているが、その状態でノズル本体22の平面9と流体誘導部23の平面10とをほぼ同レベルにしている。
また、供給パイプ16を上記スリット25a内に配置して、その一端側をノズル本体22の挿入孔13に挿入して接着するとともに、他端側を支持部24から突出させ、その突出部分にOリング17を嵌めている。
そして、供給パイプ16を突出させた側の支持部24の端部には、接続用ブロック18を取り付けている。この接続用ブロック18は図4に示す第1実施形態のものと同じであり、第1実施形態と同様に機能する。
【0039】
この第2実施形態の保持装置も、上記接続用ブロック18に接続した圧力流体源側の配管及び供給パイプ16から供給されるエアが、中継室7を介して絞り噴出口11から噴出することによって発生する負圧の吸引力でワークを保持搬送する。
そして、この第2実施形態でも、ノズル本体22の側面から中継室7に連通する供給パイプ16を用いることによって、装置の厚みを薄くすることができる。そのため、狭い箇所でのワークの搬送作業の作業性を上げることができる。
また、この第2実施形態でも、供給パイプ16がテーパー面8に交差して中継室7と連通するように構成しているため、供給パイプ16がテーパー面8を回避する場合と比べて、ノズル本体22及び外輪部材25の厚みを薄くできる。
【0040】
しかも、中継室7にエアを供給するために供給パイプ16を用いているので、長い供給通路をノズル本体22や外輪部材25に直接形成する必要がない。
つまり、高い加工コストをかけることなく、厚みの薄い保持装置を実現できる。
また、この第2実施形態でも、支持部24のスリット25a内に供給パイプ16の全部を収容しているので、支持部24から供給パイプ16がはみ出すことがなく、供給パイプ16によって支持部24の厚みが厚くなることはない。
【0041】
なお、この第2実施形態では、供給パイプ16を配置するためのスリット25aを、上記テーパー面8まで連続して形成しているので、上記第1実施形態のように、供給パイプ16を貫通させる貫通孔14を形成する必要がない。そのため、さらに加工が容易になる。但し、この実施形態のように、テーパー面8にスリットを形成すると、テーパー面8で誘導される流体がスリットから外部へ放出されてしまい、第1実施形態の構成と比べて負圧が生成される効率が悪くなる。そのため、スリット幅はあまり大きくしない方がよい。
【0042】
図8に示す第3実施形態は、ノズル本体27の内部形状が、第1実施形態のノズル本体6とは異なるが、外形状は上記ノズル本体6と同じであり、その他の構成及び機能も第1実施形態と同じである。第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を用いるとともに、各要素の機能についての詳細な説明も省略する。
また、ノズル本体27の外周には、上記第1実施形態と同様の支持部材15を接続している。
【0043】
この第3実施形態のノズル本体27は、円盤状の部材の中央に凹部28を形成し、この凹部28の側面を環状のテーパー面28aとするとともに、凹部28の底面には支柱29を設けている。この支柱29の先端には、円盤部材30を設け、この円盤部材30の外側の平面31を、テーパー面28aの外周に沿った環状の平面10とを同レベルにしている。また、上記円盤部材30は、外周が上記テーパー面28aに近接する外径を備え、円盤部材30の外周とテーパー面28aとの間に、この発明のノズルを構成する環状スリット31を形成している。
【0044】
また、上記円盤部材30と上記テーパー面28aとで囲まれた凹部28内を、中継室32とし、ノズル本体27の側面からこの中継室32に連通する挿入孔13を形成している。
さらに、上記ノズル本体28の外周には、上記支持部材15を連接するが、支持部材15の中央に形成したスリット15c(図2参照)が上記挿入孔13に連通するようにしている。
【0045】
そして、支持部材15のスリット15cに供給パイプ16を配置し、その一方の端部を上記挿入孔13に貫通し、中継室32に連通させて固定する。
なお、挿入孔13を貫通した供給パイプ16はその外周を接着剤などで封止するようにしている。
さらに、供給パイプ16の他方の端部は、支持部材15の端部から突出させて、その突出部分にはOリング17を嵌めるとともに、支持部材15の端部には上記他の実施形態と同様に、接続用ブロック18を取り付けている。この接続用ブロック18は図4に示す第1実施形態のものと同じであり、第1実施形態と同様に機能する。
【0046】
この第3実施形態の保持装置は、接続用ブロック18から供給パイプ16を介して供給されたエアが、中継室32を経由してスリット31から高速で噴出し、テーパー面28a及び平面10に誘導されて外周方向へ流出する。このエアの流れによって負圧の領域が形成され、負圧による吸引力でワークを保持搬送する。
この第3実施形態も、ノズル本体27の側面から中継室32に連通する供給パイプ16を用いることによって、装置の厚みを薄くすることができる。そのため、狭い箇所でのワークの搬送作業の作業性を上げることができる。
【0047】
しかも、中継室32にエアを供給するために供給パイプ16を用いているので、長い供給通路を、ノズル本体27や支持部材15に直接形成する必要がない。
つまり、高い加工コストをかけることなく、厚みの薄い保持装置を実現できる。
この第3実施形態でも、支持部材15のスリット15c内に供給パイプ16の全体を配置しているので、供給パイプ16によって支持部材15部分の厚みが厚くなることはない。従って、支持部材15も狭い場所に挿入することができる。
【0048】
上記第1〜第3実施形態では、ノズル本体と流体誘導面とからなり、ワークを保持する部分を円形にしているが、その形状は円に限らない。保持すべきワークの形状に合わせて様々な形状にすることもできる。
例えば、図9に示す第4実施形態は、図5〜図7に示す第2実施形態のノズル本体22の周囲に、長方形の外輪部材33を設けた保持装置である。
なお、図9はワークを保持する面の平面図であり、二点鎖線で四角形のワークwを示している。
この第4実施形態において、上記第2実施形態と同じ符号を付した要素は、第2実施形態と同じ機能を有するものであり、個々の要素についての詳細な説明は省略する。
【0049】
この第4実施形態の保持装置では、外輪部材33の中央に上記ノズル本体22を挿入する中央穴26を備えるとともに、この円形穴から外方に向かったテーパー面8及び平面10を備え、これらテーパー面8及び平面10で、流体誘導面を構成している。
また、外輪部材33には、上記中央穴26から長辺に沿って長さを有するスリット33aを形成している。
【0050】
このようにした外輪部材33を、ノズル本体22の外周を囲むように設け、中央穴26にノズル本体22を固定しているが、その状態でノズル本体22の平面9と外輪部材33の平面10とをほぼ同レベルにしている。
また、供給パイプ16を上記スリット33a内に配置して、その一端側をノズル本体22の挿入孔13に挿入して接着するとともに、他端側を外輪部財33から突出させ、その突出部分にOリング17を嵌めている。
また、供給パイプ16を突出させた側の外輪部材33の端部であって、二点鎖線で示したワークwと干渉しない位置を、支持部33bとし、この支持部33bに接続用ブロック18を取り付けている。この接続用ブロック18は図4に示す第1実施形態のものと同じであり、第1実施形態と同様に機能する。
【0051】
この第4実施形態の保持装置も、上記接続用ブロック18に接続した圧力流体源側の配管及び供給パイプ16から供給されるエアが、中継室7を介して絞り噴出口1から噴出することによって発生する負圧の吸引力でワークを保持搬送する。
そして、この第4実施形態でも、ノズル本体22の側面から中継室7に連通する供給パイプ16を用いることによって、装置の厚みを薄くすることができる。そのため、狭い箇所でのワークの搬送作業の作業性を上げることができる。
また、この第4実施形態でも、供給パイプ16がテーパー面8に交差して中継室7と連通するように構成しているため、供給パイプ16がテーパー面8を回避する場合と比べて、ノズル本体22及び外輪部材25の厚みを薄くできる。
【0052】
しかも、中継室7にエアを供給するために供給パイプ16を用いているので、長い供給通路をノズル本体22や外輪部材33に直接形成する必要がない。
つまり、高い加工コストをかけることなく、厚みの薄い保持装置を実現できる。
この第4実施形態では、スリット33a内に供給パイプ16の全部を収容しているので、保持装置の厚み方向に供給パイプ16がはみ出すことがなく、供給パイプ16によって保持装置の厚みが厚くなることはない。
【0053】
なお、上記第1〜第4実施形態では、保持部に形成したスリット内に供給パイプ16を収容しているが、保持部にはスリットではなく溝を形成し、その溝に供給パイプ16を収容するようにしてもよい。あるいは、結束部材などを用いて保持部に供給パイプ16を固定し、沿わせるようにしても良い。
また、上記供給パイプ16には、断面形状が真円の一般的なものを用いることができることはもちろん、断面形状が真円でないパイプを用いることもできる。例えば、供給パイプ16として扁平なパイプを用い、短径をノズル本体の厚み方向に合わせて配置すれば、厚みを薄くしながら圧力流体の供給流量を増やすこともできる。
【0054】
また、上記第1〜第4実施形態では、供給パイプ16の端部を中継室内に突出させているが、供給パイプ16の端部は、ノズル本体に形成した挿入孔13中にとどめ、この挿入孔13を介して供給パイプ16と中継室とを連通させるようにしてもよい。
さらに、上記実施形態においては、供給パイプと圧力流体源とを接続するための供給用ブロックを支持部の端部に設けているが、この供給用ブロックを設けないで、供給パイプ16の端部に圧力流体源側の配管を接続するようにしてもよい。
また、この発明の保持装置は、ノズル本体に連接した支持部を供えていないものでもよい。支持部を備えていない場合には、他の装置の可動アームによってノズル本体を支持すれば、保持装置で保持したワークを搬送することができる。
【0055】
さらにまた、上記実施形態では、保持対象となるワークに接触するパッド12を備えているが、このパッド12も必須の構成要素ではない。
この発明の保持装置によってワークを上から保持する場合、パッド12がなくても、上記吸引力とワークに作用する重力とのバランスによってワークを非接触で保持することができる。
【0056】
一方、ワークを下から保持する場合に、上記パッド12がなければ、ワークは吸引力ではなく流体の正圧による揚力と重力とのバランスによって非接触状態で保持される。但し、パッド12の先端を吸引力が得られる位置に設ければ、ワークを下から保持する場合にも、吸引力によってワークをパッド12に接触させて保持することができる。
つまり、上記パッド12は必須のものではないが、パッド12があればノズル本体6とワークとの距離を一定に保ち、ワークを吸引力によってより安定して保持することができる。
【0057】
また、上記第1〜第4実施形態の保持装置は、それぞれ一つのノズル本体を備えているが、一つの保持装置に複数のノズル本体を備えてもよい。ノズル本体を複数備え、各ノズルの周囲にそれぞれ流体誘導面を備えれば、負圧が発生する面積を大きくすることができるので、大きなワークを保持することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
半導体基板の収容カセットなど、狭い箇所にあるワークを直接保持して搬送する装置に適している。
【符号の説明】
【0059】
6 ノズル本体
7 中継室
8 テーパー面
10 平面
15 支持部材
15a 第1部材
15b 第2部材
15c スリット
16 供給パイプ
17 Oリング
18 接続用ブロック
19 (支持部側保持部である)スリット
20 筒状凹部
21 連通路
22 ノズル本体
23 流体誘導部
24 支持部
25a スリット
27 ノズル本体
28a テーパー面
31 スリット
32 中継室
33a スリット
33b 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを構成するノズル本体内に、ノズルに連通するとともに圧力流体源に接続した中継室を備えるとともに、上記中継室の周囲には流体誘導面を設け、上記圧力流体源からの流体を上記中継室を経由して上記ノズルから噴出させ、この噴出させた流体を流体誘導面に沿って流出させ、ベルヌーイの原理を用いてワークを保持して搬送する保持装置において、上記ノズル本体の側面を通過して上記中継室に連通し、上記中継室に圧力流体を供給する供給パイプを設けた保持装置。
【請求項2】
上記ノズルを、中継室の側面に設けるとともに、このノズルから噴出させた流体を誘導するテーパー面を備えるとともに、上記供給パイプは上記テーパー面に交差する角度で中継室の側面に連通させた請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
上記ノズル本体の側面に連接した支持部を備え、上記供給パイプを上記支持部に沿わせて設けた請求項1または2に記載の保持装置。
【請求項4】
上記供給パイプの一部あるいは全部を、上記支持部内に位置させた請求項3に記載の保持装置。
【請求項5】
上記支持部の端部に、上記供給パイプと上記圧力流体源とを接続するための接続用ブロックを設けた請求項3または4に記載の保持装置。
【請求項6】
上記供給パイプにおける上記中継室と反対側の端部を、上記支持部の端部から突出させ、この供給パイプの突出部分の外周に環状シール部材を設けるとともに、上記接続用ブロックには、上記支持部の端部を保持する支持部側保持部と、この支持部側保持部に連続し、上記環状シール部材の外周よりわずかに小さくした内周を備えた筒状凹部と、この筒状凹部の軸方向に連続し、その内径を筒状凹部よりも小さくした連通路と、この連通路に上記圧力流体源側の配管を接続するための圧力流体源接続部とを備え、上記供給パイプに設けた上記環状シール部材を上記筒状凹部内に位置させた請求項5に記載の保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−245588(P2011−245588A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120790(P2010−120790)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(592189701)日本空圧システム株式会社 (17)
【Fターム(参考)】