説明

保温筒及び保温筒の製造方法

【課題】 内層にシワが発生することを抑制できる保温筒を提供する。
【解決手段】 管路1の外面11を被覆するように取り付けられて管路1の温度を保持する保温筒2である。
そして、管路1の外面11に接する円筒状の内層21と、内層21より径が大きい円筒状の外層25と、内層21と外層25との間に充填される発泡樹脂層26と、を備えるとともに、内層21は、紙層22と、紙層22の発泡樹脂層26に接する側に積層される不透水層23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路の外面を被覆するように取り付けられて管路の温度を保持する保温筒と、この保温筒の製造方法と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、管路に水や湯などを流す際に、結露防止や保温のために、管路の外面を被覆するように保温筒を取り付けることが一般的である。
【0003】
この保温筒の製造方法として、例えば特許文献1では、成形部と加熱部と引取装置とを備える保温筒の製造方法が開示されている。
【0004】
この特許文献1では、成形部で成形された保温筒がキュアのための加熱部を通過した後、保温筒の耳部を挟持して移動させられるから、樹脂が硬化する前に内層材や外層材に無理な張力をかけずにすむため、均一な発泡密度の製品を得ることができる。
【0005】
ところで、従来、発泡硬化性合成樹脂液を発泡させる発泡剤として、いわゆるフロンを用いることが一般的であった。
【0006】
しかし、このフロンは、人体にとって有害な紫外線を遮断するオゾン層を破壊することが知られるようになり、使用が禁止されたため、代替フロンと総称される物質が用いられるようになった。
【0007】
ところが、この代替フロンは、二酸化炭素などと比べて温室効果がきわめて大きいため、地球温暖化の防止の点で大きな問題があった。
【0008】
この問題を解決するために、特許文献2では発泡剤として水を用いた硬質ウレタン樹脂発泡体の製造方法が開示されている。
【0009】
この特許文献2のように、発泡剤として水を用いた場合、反応によって得られる気体は二酸化炭素であるため、地球温暖化防止の点でも、オゾン層破壊防止の点でも、その効果は大きいといえる。
【特許文献1】特公平2−40489号公報
【特許文献2】特開平5−140257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記した特許文献1の保温筒の製造方法では、樹脂に含有される水分や空気中の湿気などによって内層材が伸びてしまい、内層材にシワが発生する場合があった。特に、発泡剤として水を用いた場合には、シワの発生が顕著に見られることが知られていた。
【0011】
このように、内層にシワが発生すると、管路の外面と内層との間に隙間が生じることとなるため、保温性能が悪化するうえに、内層の耐久性が劣るという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、内層にシワが発生することを抑制できる保温筒と、この保温筒の製造方法と、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の保温筒は、管路の外面を被覆するように取り付けられて前記管路の温度を保持する保温筒であって、前記管路の外面に接する円筒状の内層と、前記内層より径が大きい円筒状の外層と、前記内層と前記外層との間に充填される発泡樹脂層と、を備えるとともに、前記内層は、紙層と、前記紙層の前記発泡樹脂層に接する側に積層される不透水層と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、管路の外面を被覆するように取り付けられて前記管路の温度を保持する保温筒であって、前記管路の外面に接する円筒状の内層と、前記内層より径が大きい円筒状の外層と、前記内層と前記外層との間に充填される発泡樹脂層と、を備えるとともに、前記内層は、不透水層として形成されることを特徴とする。
【0015】
さらに、前記発泡樹脂層はウレタン樹脂層であって、発泡剤として水を用いることができる。
【0016】
そして、本発明の保温筒の製造方法は、管路の外面を被覆するように取り付けられて前記管路の温度を保持する保温筒の製造方法であって、頂部に縦スリットが設けられた筒状成形通路と前記筒状成形通路の内部に配設された芯型コアとを備える成形部の入口において、シート状の外層と、紙層と不透水層とを積層したシート状の内層と、の間に発泡硬化性樹脂液を注入し、前記外層及び前記内層の両端縁を前記縦スリットから突出させて耳部が形成された状態で、前記外層を前記筒状成形通路の内面に添うように移動させるとともに、前記内層を前記芯型コア外面に添うように移動させながら、前記発泡硬化性樹脂液を発泡させて前記外層及び前記内層を一体に結合し、一対の無端挟圧ベルトによって前記耳部を挟持して、中空状の加熱部の内部を移動させながら硬化のために加熱し、無端キャタピラを備える引取装置によって前記耳部を挟持して連続的に引取ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明の保温筒は、管路の外面に接する円筒状の内層と、内層より径が大きい円筒状の外層と、内層と外層との間に充填される発泡樹脂層と、を備えるとともに、内層は、紙層と、紙層の前記発泡樹脂層に接する側に積層される不透水層と、を備えている。
【0018】
したがって、発泡樹脂層と紙層との間に不透水層を備えることで、発泡樹脂層から紙層に水分が供給されることはないため、この水分によって紙層にシワが発生することを抑制できる。
【0019】
加えて、紙層と不透水層とを積層することで、紙層だけで形成される場合と比べて内層を補強することができる。
【0020】
また、本発明の保温筒は、管路の外面に接する円筒状の内層と、内層より径が大きい円筒状の外層と、内層と外層との間に充填される発泡樹脂層と、を備えるとともに、内層は不透水層として形成されている。
【0021】
したがって、内層が不透水層として形成されることで、内層が水分を吸収することはないため、この水分によって内層にシワが発生することを抑制できる。
【0022】
さらに、発泡樹脂層はウレタン樹脂層であって発泡剤として水を用いる場合のように、内層にシワが発生しやすい状況下においても、シワの発生を抑制することができる。
【0023】
そして、本発明の保温筒の製造方法は、外層及び内層の両端縁を縦スリットから突出させて耳部が形成された状態で、外層を筒状成形通路の内面に添うように移動させるとともに、内層を芯型コア外面に添うように移動させながら、発泡硬化性樹脂液を発泡させて外層及び内層を一体に結合し、一対の無端挟圧ベルトによって前記耳部を挟持して、中空状の加熱部の内部を移動させながら硬化のために加熱し、無端キャタピラを備える引取装置によって前記耳部を挟持して連続的に引取るようにしている。
【0024】
したがって、樹脂が硬化する前に内層や外層に無理な張力をかけずにすむため、均一な発泡密度の製品を得ることができるうえに、樹脂が含有する水分によって内層にシワが発生することを抑制した保温筒を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
まず、図2を用いて本発明の保温筒2を備える管路の保温構造Cの全体構成を説明する。
【0027】
本発明の管路の保温構造Cは、図2に示すように、管路1と、管路1の外面11を保温又は保冷のために被覆する保温筒2と、を備えている。
【0028】
この管路1は、樹脂や金属などによって円筒状に形成され、円筒の内部に湯や水などを流すもので、建物などの床下や小屋裏や壁内などに配設されている。
【0029】
そうすると、この管路1に湯を流す場合には保温筒2によって保温することが必要であり、水を流す場合には結露が生じないように保温筒2によって保冷することが必要となる。
【0030】
そして、本実施の形態の保温筒2は、図1,3に示すように、管路1の外面11に接する円筒状の内層21と、この内層21より径が大きい円筒状の外層25と、この内層21と外層25との間に充填される発泡樹脂層26と、を備えている。
【0031】
この内層21は、管路1の外面11に隙間なく接する紙層22と、この紙層22の発泡樹脂層26と接する外側に積層される不透水層23と、を備えている。
【0032】
紙層22は、シート状のいわゆるクラフト紙が丸められて管路1の外径と略同一の内径を有する円筒状に形成されたもので、管路1と接する内面にはシワがなく滑らかになっている。加えて、この円筒状の紙層22は、両端縁近傍が向かい合うように合わされて円筒から径方向に突出する耳部22aを備えている。
【0033】
また、不透水層23は、ポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン−ビニルアルコール共重合体などの樹脂やアルミニウムなどの金属によってシート状に形成され、円筒状の紙層22の発泡樹脂層26と接する外面にラミネート加工によって積層されて一体化している。したがって、紙層22の耳部22aに添うようにして、円筒から突出する耳部23aを備えている。
【0034】
さらに、外層25は、シート状のポリ塩化ビニルなどの樹脂によって、内層21よりも径の大きい円筒状に形成されたもので、内層21の外側を取り巻くように配設されている。加えて、この円筒状の外層25は、片方の端縁近傍が円筒から径方向に折り曲げられるようにして突出する耳部25aを備えている。
【0035】
この耳部25aは、図1に示すように、管路1に取り付けられる前には円筒から径方向に突出しているが、図2に示すように、管路1に取り付けられた後では、反対側の端縁部に重ね合わされるようにして接着されている。
【0036】
そして、発泡樹脂層26は、ポリオールとイソシアネートとを反応させたウレタン発泡樹脂層として形成されるもので、後述するように、内層21と外層25との間に注入された発泡硬化性樹脂を生産ラインの成形部3において成形し、加熱部4において硬化させることで製造される。
【0037】
したがって、この発泡樹脂層26は、円筒状の内層21と円筒状の外層25との間に挟まれる厚肉の円筒状のスペースに充填されることとなり、内層21と外層25との半径の差に相当する厚みを有する円筒状に形成されている。
【0038】
さらに、この発泡樹脂層26には、反応の際の発泡剤として水が用いられているため、内部に二酸化炭素の小気泡が無数に形成されている。したがって、保温性能は、従来のフロンよりは劣るが空気よりは優れている。
【0039】
そして、上記した円筒状の内層21の内側の円柱状の空隙として、管路1を挿入するための挿入孔27が形成されている。
【0040】
ここで、管路1を挿入孔27に設置する方法について簡単に説明すると、まず、保温筒2の耳部22a,23aを両端縁の合わされた面を引き離すように開き、次に、開かれて生じたスリットを通じて挿入孔27に管路1を嵌め込み、最後に、外層25から突出した耳部25aを外層25の外周面に添わせて接着して、設置が完了する。
【0041】
次に、本実施の形態の保温筒2の製造方法を、図4(a),(b)を用いて説明する。
【0042】
まず、別工程において、紙層22に不透水層23をラミネート加工によって積層し、一体となった内層21を製造しておく。このラミネート加工は、不透水層23に接着剤を塗布したうえで紙層22と熱プレスすることによって行われる。なお、このようにして紙層22と不透水層23とが積層された内層21は、ロール状に巻かれた巻重体となっている。
【0043】
次に、巻重体を解く方向に回転させて、外層25及び内層21を引き出すとともに、それぞれを上に開いた略U字状に湾曲させる。そして、内層21を上にして両者を重ねた状態で、内層21と外層25との間に発泡硬化性樹脂としてのウレタン樹脂を注入した後に、成形部3に導入する。ここにおいて、内層21は、外層25に対向する側に不透水層23を向けておく。
【0044】
この成形部3は、図4(a)に示すように、頂部に縦スリット31aが設けられた筒状成形通路31と、この筒状成形通路31の円柱状の中空部の中央近傍に軸方向を合わせて配設された芯型コア32と、を備えている。
【0045】
さらに、この筒状成形通路31は、一対の割型が向かい合わせに嵌合されて形成されており、無端ベルトに取り付けられることで結合物を軸方向に移動させることができるように形成されている。なお、芯型コア32から伸びるヒレ状の部分は、内層21及び外層25を突出させる際のガイドとなるものである。
【0046】
そして、成形部3の内部では、外層25を筒状成形通路31の内面に添わせるとともに、内層21を芯型コア32の外面に添わせる。加えて、外層25及び内層21の両端縁部を縦スリット31aから突出させて、それぞれ耳部25a,22a,23aを形成するようにさせる。
【0047】
このようにして、成形部3を通過させる間に、発泡硬化性樹脂液を発泡させることで、発泡硬化性樹脂と外層25と内層21とを一体に結合させる。
【0048】
次に、成形部3を通過した結合物を、加熱部4に導入して加熱することで硬化させる。
【0049】
この加熱部4は、図4(b)に示すように、内部に中空状の加熱スペース44を有する箱状の本体部40と、この本体部40の頂部に設けられた縦スリット41と、この縦スリット41の上方に設けられた一対の無端挟圧ベルト42,42と、を備えている。
【0050】
そして、この無端挟圧ベルト42,42によって耳部22a,23a,25aを挟持しながら、加熱スペース44に吹出口43から熱風を吹き込んで、結合物を硬化のために加熱する。
【0051】
つづいて、加熱部4を通過した結合物を、無端キャタピラよりなる引取装置(不図示)によって耳部22a,23a,25aを挟持して連続的に引取る。
【0052】
最後に、外層材25の片方の耳部25aのみを残して、他の耳部22a,23aを切断することで、保温筒2の製造が完了する。
【0053】
次に、本実施の形態の保温筒2の作用について説明する。
【0054】
このように、本実施の形態の保温筒2は、管路1の外面11に接する円筒状の内層21と、内層21より径が大きい円筒状の外層25と、内層21と外層25との間に充填される発泡樹脂層26と、を備えるとともに、内層21は、紙層22と、紙層22の発泡樹脂層26に接する側に積層される不透水層23と、を備えている。
【0055】
したがって、発泡樹脂層26と紙層22との間に不透水層23を備えることで、発泡樹脂層26から紙層22に水分が供給されることはないため、この水分によって紙層22にシワが発生することを抑制できる。
【0056】
すなわち、一般に、発泡樹脂層26は、化学反応の段階で水を生成することが多いため、従来はこの発泡樹脂層26中の水分を紙によって形成された内層が吸収することによって、内層が円周方向に伸び、局所的に円周から突出して、保温筒2の軸方向に連続したシワを形成することが多かった。
【0057】
このように、内層にシワが発生すると、管路の外面と内層との間に隙間が生じることとなるため、保温性能が悪化するうえに、内層の耐久性が劣るという問題があった。
【0058】
これに対して、本実施の形態の内層21は、紙層22の発泡樹脂層26に接する外面に不透水層23を備えており、この不透水層23で水分を遮断することで、紙層22に発生するシワを抑制することができる。
【0059】
加えて、紙層22と不透水層23とを積層することで、紙層22だけで形成される場合と比べて内層21を補強することができる。
【0060】
つまり、紙層22に不透水層23が積層されれば、性質の異なる2つの材料によって内層21が形成されることとなり、それぞれの材料の弱点を補うことができる。
【0061】
すなわち、紙層22のみで内層21を構成すれば、透水性があることに加えて、破れやすいという弱点があるが、樹脂などによって形成される不透水層23を積層すれば、破れにくくなる。
【0062】
一方、樹脂などによって形成される不透水層23のみで内層21を構成すれば、形状を保持しようとする性能、いわゆるコシがなくなるという弱点があるが、紙層22を積層すれば、コシを備えることができる。
【0063】
さらに、内層21を紙層22と不透水層23とを積層して形成することで、発泡樹脂層26の内部の二酸化炭素の気泡が、この内層21を通じて空気と入れ替わることを抑制できる。
【0064】
そうすると、保温筒2に必要な断熱性を長期間にわたって保持することができる。
【0065】
つまり、一般に、熱伝導率は、フロンより二酸化炭素が大きく、二酸化炭素より空気が大きい。このことを逆にいうと、断熱性の点では、フロンが二酸化炭素より優れており、二酸化炭素が空気より優れているといえる。
【0066】
したがって、断熱性の点では、発泡樹脂層26の内部の二酸化炭素の気泡は、空気と入れ替わらないことが望ましいことになるが、本実施の形態のように、紙層22に不透水層23を積層すれば、気体も通過しにくくなるため、二酸化炭素と空気との入れ替わりを抑制できることになる。
【0067】
加えて、不透水層23が樹脂によって形成されている場合には、発泡樹脂層26との親和性が高く、保温筒2の製造の際には、内層21と発泡樹脂層26とが接着しやすくなっている。
【0068】
さらに、発泡樹脂層26はウレタン樹脂層であって発泡剤として水を用いる場合のように、内層21にシワが発生しやすい状況下においても、シワの発生を抑制した保温筒2とすることができる。
【0069】
つまり、近年、発泡樹脂層26をウレタン樹脂層によって形成する際には、発泡剤として、従来の代替フロンを用いた場合に比べて温室効果の小さい水を用いる場合が多い。
【0070】
しかしながら、このように発泡剤として水を用いた場合には、発泡樹脂層26中に水が残留することとなり、この水によって紙層22にシワが生じる可能性が高くなるが、本実施の形態のように紙層22に不透水層23を積層すればこのシワを抑制できる。
【0071】
そうすると、発泡剤として代替フロンを用いなくてもよくなるため、温室効果が小さく地球温暖化を抑制できるうえに、フロンを使用しないため、オゾン層を破壊することがなく生物にとってやさしい保温筒2となる。
【0072】
そして、本発明の保温筒の製造方法は、紙層22に不透水層23を積層して一体化することで内層21を形成し、頂部に縦スリット31aを有する筒状成形通路31の内部に芯型コア32を備える成形部3に、外層25及び内層21を導入し、外層25を筒状成形通路31の内面に内層21を芯型コア32外面にそれぞれ添わせ、かつ、外層25及び内層21の端部を縦スリット31aから突出して耳部25a,22a,23aを形成させるとともに、成形部3の入口において、外層25と内層21との間に発泡硬化性樹脂液を注入し、成形部3を通過する間に発泡硬化性樹脂液の発泡を完了させて外層25及び内層21を一体に結合し、成形部3を通過した結合物を、頂部に設けられた縦スリット41の上方に一対の無端挟圧ベルト42,42を有する中空状の加熱部4に導入し、無端挟圧ベルト42,42によって耳部25a,22a23aを挟持しながらキュアのために加熱し、加熱部4を通過した結合物を、無端キャタピラよりなる引取装置によって耳部25a,22a,23aを挟持して連続的に引取るようにしている。
【0073】
したがって、樹脂が硬化する前に内層21や外層25に無理な張力をかけずにすむため、均一な発泡密度の製品を得ることができるうえに、樹脂が含有する水分によって内層21にシワが発生することを抑制できる。
【0074】
すなわち、保温筒2は、成形部3及び加熱部4を通過した後に、引取装置によって耳部22a,23a,25aを挟んで引っ張ることで移動させられるから、成形部3における発泡や加熱部4における硬化の時点では、局所的な張力をかけられないため、均一な発泡密度であるうえに、断面が真円の製品を得ることができる。
【0075】
また、紙層22の発泡樹脂層26に接する外面に不透水層23を備えており、この不透水層23で水分を遮断することで、紙層22に発生するシワを抑制することができる。
【0076】
そして、このように芯型コア32に接する紙層22にシワが発生することを抑制できれば、製造工程において保温筒2をスムーズに引っ張ることができるうえに、保温筒2が捩れて発生する局所的な張力を防止することができる。
【0077】
また、紙層22と不透水層23とを積層することで、紙層22だけで形成される場合と比べて内層21を補強する保温筒2とすることができる。
【0078】
さらに、内層21を紙層22と不透水層23とを積層して形成することで、発泡樹脂層26の内部の二酸化炭素の気泡が、この内層21を通じて空気と入れ替わることを抑制できるため、必要な断熱性を長期間にわたって保持できる保温筒2とすることができる。
【実施例1】
【0079】
以下、図5、6(a)(b)を用いて、保温筒2の内層21のシワの発生を抑制する効果について確認するためにおこなった実験について説明する。
【0080】
なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0081】
この実験では、図5に示される表1のように、発泡剤の種類と内層21の構成とを変えたケース1からケース4まで4通りの条件において保温筒2,2Aを製造し、内層21のシワを確認した。
【0082】
はじめに、各ケースに共通する条件について説明すると、本実験においては、保温筒2の外層25として厚さ0.2mmのPVCシート、発泡樹脂層26として厚さ20mmのウレタン発泡体、筒内径として89mm、という条件を採用して実験をおこなった。
【0083】
次に、ケース1からケース4のそれぞれの条件の特徴を説明する。
【0084】
まず、ケース1は、発泡剤に代替フロンとしてのHFC245faとHFC365mfcとを混合したものを用いるとともに、紙層22としての厚さ0.15mmのクラフト紙に不透水層23としての厚さ150μmのポリエチレンを積層した内層21としてのPEラミネートクラフト紙を用いた。
【0085】
また、ケース2は、発泡剤に水を用いるとともに、紙層22としての厚さ0.15mmのクラフト紙に不透水層23としての厚さ150μmのポリエチレンを積層した内層21としてのPEラミネートクラフト紙を用いた。
【0086】
さらに、ケース3は、発泡剤に代替フロンとしてのHFC245faとHFC365mfcとを混合したものを用いるとともに、内層21として厚さ0.15mmのクラフト紙を用いた。
【0087】
そして、ケース4は、発泡剤に水を用いるとともに、内層21として厚さ0.15mmのクラフト紙を用いた。
【0088】
次に、実験結果について、図6を参照しながら説明する。
【0089】
まず、ケース1とケース2とについては、内層21の内面に特にシワは見られず、滑らかな状態であった。
【0090】
つづいて、ケース3については、図6(a)に示すように、紙層22の1箇所が発泡樹脂層26側に突出するように変形して、保温筒2の軸方向に連続したシワ51が発生した。
【0091】
そして、ケース4については、図6(b)に示すように、紙層22の2箇所が発泡樹脂層26側に突出するように変形して、保温筒2の軸方向に連続したシワ51,51が発生した。
【0092】
上記したように、ケース3及びケース4のように、内層21が紙層22のみで形成されて不透水層23を備えない場合には、紙層22にシワ51,・・・が発生した。
【0093】
このシワ51,・・・は、発泡樹脂層26中の水分を紙層22が吸収することによって、紙層22が円周方向に伸び、局所的に円周から突出して、保温筒2Aの軸方向に連続するように発生したものである。
【0094】
一方、ケース1及びケース2のように、内層21が紙層22の発泡樹脂層26に接する外面に不透水層23を備える場合には、紙層22にシワが発生することはなかった。
【0095】
したがって、紙層22の発泡樹脂層26に接する外面に不透水層23を備えていれば、この不透水層23で水分を遮断することができるため、紙層22に発生するシワ51を抑制することができるといえる。
【0096】
つまり、発泡樹脂層26と紙層22との間に不透水層23を備えることで、発泡樹脂層26から紙層22に水分が供給されることはないため、この水分によって紙層22にシワが発生することを抑制できる。
【0097】
加えて、ケース3とケース4とを比較すればわかるように、発泡剤として水を用いたケース4では、シワ51がより発生しやすいといえるが、この場合でもケース2のように不透水層23を備えていれば、シワの発生を抑制することができる。
【0098】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【実施例2】
【0099】
以下、図7を用いて、前記実施の形態及び実施例1とは別の形態の保温筒2Bについて説明する。
【0100】
なお、前記実施の形態及び実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0101】
本実施例の保温筒2Bは、管路1の外面11に接する円筒状の内層としての不透水層24と、この不透水層24より径が大きい円筒状の外層25と、不透水層24と外層25との間に充填される発泡樹脂層26と、を備えている。
【0102】
この内層としての不透水層24は、ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどの樹脂やアルミニウムなどの金属によって形成され、管路1の外径と略同一の内径を有する円筒状に形成されたもので、管路1と接する内面にはシワがなく滑らかになっている。加えて、この円筒状の不透水層24は、両端縁近傍が向かい合うように合わされて円筒から径方向に突出する耳部24aを備えている。
【0103】
このように、内層が不透水層24として形成されることで、発泡樹脂層26から不透水層24に水分が供給されることはないため、この水分によって内層にシワが発生することを抑制できる。
【0104】
つまり、本実施の形態の内層は、不透水層24として形成されており、この不透水層24は水分を吸収しないことで、不透水層24の管路と接する内面に発生するシワを抑制することができる。
【0105】
したがって、発泡剤として代替フロンを用いなくてもよくなるため、温室効果が小さく地球温暖化を抑制できるうえに、フロンを使用しないため、オゾン層を破壊することがなく生物にとってやさしい保温筒2Bとなる。
【0106】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と略同様であるため説明を省略する。
【0107】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0108】
例えば、前記実施の形態及び実施例1,2では、発泡樹脂層26としてウレタン発泡樹脂層を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、断熱性を有するものであれば、どのような材料によって形成されるものであってもよい。
【0109】
また、前記実施の形態では、ウレタン樹脂層の発泡剤として水を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、いわゆる代替フロンを用いるものであってもよい。
【0110】
さらに、前記実施の形態及び実施例1,2では、紙層22や不透水層23,24や外層25が耳部22a,23a,24a,25aを備える場合について説明したが、これに限定されるものではなく、耳部を備えないものであってもよい。
【0111】
そして、前記実施の形態では、成形部3や加熱部4を経て保温筒2が製造される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の製造方法によって製造される保温筒であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の最良の実施の形態の保温筒の構成を説明する斜視図である。
【図2】本発明の最良の実施の形態の管路の保温構造の全体構成を説明する斜視図である。
【図3】本発明の最良の実施の形態の保温筒の構成を説明する断面図である。(a)は軸方向に直角に切断した横断面図であり、(b)は軸方向に平行に切断した縦断面図である。
【図4】本発明の最良の実施の形態の保温筒の製造方法を説明する説明図である。(a)は成形部の断面図であり、(b)は加熱部の断面図である。
【図5】本発明の実施例1の実験条件を説明する表1である。
【図6】本発明の実施例1の実験結果を説明する説明図である。(a)は比較例1の実験結果を示す断面図であり、(b)は比較例2の実験結果を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例2の保温筒の構成を説明する断面図である。(a)は軸方向に直角に切断した横断面図であり、(b)は軸方向に平行に切断した縦断面図である。
【符号の説明】
【0113】
C 管路の保温構造
1 管路
11 外面
2,2A,2B 保温筒
21 内層
22 紙層
23,24 不透水層
25 外層
22a,23a,24a,25a 耳部
26 発泡樹脂層
3 成形部
31 筒状成形通路
31a 縦スリット
32 芯型コア
4 加熱部
41 縦スリット
42 無端挟圧ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の外面を被覆するように取り付けられて前記管路の温度を保持する保温筒であって、
前記管路の外面に接する円筒状の内層と、前記内層より径が大きい円筒状の外層と、前記内層と前記外層との間に充填される発泡樹脂層と、を備えるとともに、
前記内層は、紙層と、前記紙層の前記発泡樹脂層に接する側に積層される不透水層と、を備えることを特徴とする保温筒。
【請求項2】
管路の外面を被覆するように取り付けられて前記管路の温度を保持する保温筒であって、
前記管路の外面に接する円筒状の内層と、前記内層より径が大きい円筒状の外層と、前記内層と前記外層との間に充填される発泡樹脂層と、を備えるとともに、
前記内層は、不透水層として形成されることを特徴とする保温筒。
【請求項3】
前記発泡樹脂層はウレタン樹脂層であって、発泡剤として水が用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保温筒。
【請求項4】
管路の外面を被覆するように取り付けられて前記管路の温度を保持する保温筒の製造方法であって、
頂部に縦スリットが設けられた筒状成形通路と前記筒状成形通路の内部に配設された芯型コアとを備える成形部の入口において、シート状の外層と、紙層と不透水層とを積層したシート状の内層と、の間に発泡硬化性樹脂液を注入し、
前記外層及び前記内層の両端縁を前記縦スリットから突出させて耳部が形成された状態で、前記外層を前記筒状成形通路の内面に添うように移動させるとともに、前記内層を前記芯型コア外面に添うように移動させながら、前記発泡硬化性樹脂液を発泡させて前記外層及び前記内層を一体に結合し、
一対の無端挟圧ベルトによって前記耳部を挟持して、中空状の加熱部の内部を移動させながら硬化のために加熱し、
無端キャタピラを備える引取装置によって前記耳部を挟持して連続的に引取ることを特徴とする保温筒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−97570(P2009−97570A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267926(P2007−267926)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】