説明

保湿シート

【課題】保湿層からの保湿剤の染み出しを抑制しつつ、保湿層に保湿剤を高含有することができ、かつ、皮膚への貼着により保湿剤を効率的に皮膚へ移行させ、貼着時のみならず、剥離後においても、優れた保湿効果を長時間維持することのできる保湿シートを提供すること。
【解決手段】
本発明の保湿シート1は、グリセリンを含む保湿剤および保湿剤を保持する高分子ゲル材料とを含む保湿層12を有し、保湿層12中にグリセリンが25質量%以上、かつ、保湿剤全体が40〜70質量%以上含有され、高分子ゲル材料は、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(共重合体A)と、ラクタム環を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(共重合体B)とを含み、高分子ゲル材料中の共重合体Aの含有量をW質量%とし、共重合体Bの含有量をW質量%としたとき、W/Wが40/60〜95/5の関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、かかと、肘または膝などの硬くなった皮膚の角質層を軟化させ、皮膚の水分を保持するための保湿剤として、シート状の貼付剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、皮膚に固定するための支持体(固定用粘着シート)と、この支持体に設けられ、保湿剤を保持する保湿層(保湿剤含有ポリマー層を有する保湿用パッド)とを備える保湿シートが開示されている。
【0004】
そして、特許文献1の保湿シートは、保湿剤として、グリセリンなどを用いることにより皮膚に対する保湿効果を向上させている。
【0005】
しかし、このような保湿シートにあっては、長期間にわたって、安定的に保湿層中に保湿剤を保持することができず、保湿層から保湿剤が染み出してしまうという問題がある。また、保湿層中に保湿剤を高含有に保持することができないため、十分な保湿効果を得ることも難しい。
【0006】
【特許文献1】特開2000−281565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、保湿層からの保湿剤の染み出しを抑制しつつ、保湿層に保湿剤を高含有させることができ、かつ、皮膚への貼着により保湿剤を効率的に皮膚へ移行させ、貼着時のみならず、剥離後においても、優れた保湿効果を長時間持続させることのできる保湿シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(4)の本発明により達成される。
(1) 支持体と、
前記支持体上に設けられた保湿層とを有し、
前記保湿層は、グリセリンを含む複数の保湿剤と、前記保湿剤を保持する機能を備える高分子ゲル材料とを含み、
前記保湿層中の前記グリセリンの含有量が25質量%以上で、かつ、前記保湿層中の前記保湿剤全体の含有量が40〜70質量%であり、
前記高分子ゲル材料は、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、ラクタム環を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体とを含み、
前記高分子ゲル材料中の前記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量をW質量%とし、前記高分子ゲル材料中の前記ラクタム環を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体の含有量をW質量%としたとき、W/Wが、40/60〜95/5(WとWの合計量を100として計算)の関係を満足することを特徴とする保湿シート。
【0009】
(2) 前記ラクタム環を有するビニルモノマーの含有量は、前記ラクタム環を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体中5〜50mol%である上記(1)に記載の保湿シート。
【0010】
(3) 前記ラクタム環を有するビニルモノマーは、N−ビニル−2−ピロリドンである上記(1)または(2)に記載の保湿シート。
【0011】
(4) 前記保湿層中の前記グリセリンの含有量をW質量%とし、前記保湿層中の前記グリセリンを除く保湿剤の含有量をW質量%としたとき、W/Wが、40/60〜80/20(WとWの合計量を100として計算)の関係を満足する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の保湿シート。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、保湿層からの保湿剤の染み出しを抑制しつつ、保湿層に保湿剤を高含有させることができる。そのため、皮膚への貼着により保湿剤を効果的に皮膚へ移行させることができ、貼付時のみならず、剥離後においても、優れた保湿効果を長時間持続させることのできる保湿シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の保湿シートの好適な実施形態について、以下詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の保湿シートの第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の保湿シートの第1実施形態を示す図である。
【0014】
保湿シート1は、図1に示すように、シート状をなす支持体11と、支持体11上に設けられ皮膚(被着体)の水分を保持するための保湿層12と、保湿層12上に設けられ保湿層12の乾燥や保湿層12への埃の付着などを防止するための剥離シート13とを有している。
【0015】
このような保湿シート1は、使用時にて、剥離シート13を保湿層12から剥離し、保湿層12を皮膚に貼着することで皮膚の水分を保持するように(すなわち、保湿効果を発揮するように)構成されている。なお、保湿シート1の形状、寸法については、特に限定されず、貼着する部位や範囲などに応じて決定することができる。
【0016】
以下、各構成要素について順次説明する。
1.支持体11
支持体11は、シート状をなしており、その一方の面上に後に詳述する保湿層12が設けられている。すなわち、支持体11は、保湿層12を支持する機能を有する。かかる支持体11は、それ自体、可撓性(柔軟性)を有し、貼着時における曲面追従性をもち、加工時における裁断または打ち抜き等に適したものが好ましい。
【0017】
このような支持体11としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、不織布、編布、織布などの繊維シート、アルミニウムやステンレス等の金属箔、グラシン紙、上質紙、コート紙、含浸紙、合成紙等の紙、これら紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートした紙等が挙げられ、これらのうちの1種からなるものであってもよいし、2種以上を組み合わせてなるものであってもよい。
【0018】
これらの中でも、繊維シートを用いることがより好ましい。繊維シートは、優れた曲面追従性を有しており、保湿層12と皮膚との密着性を向上させることができる。また、繊維シートは、保湿層12との密着性にも優れており、例えば、保湿シート1の貼着時において、支持体11と保湿層12とが剥離してしまうことを防止することができる。このような繊維シートを構成する材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、綿、絹などの天然繊維が挙げられ、これらのうちの1種からなるものであってもよいし、2種以上を組み合わせてなるものであってもよい。
【0019】
また、支持体11を前述したような繊維シートで構成する場合には、保湿層12とは反対側の面に気体難透過性を有する樹脂層等を設けてもよい。これにより、保湿シート1を皮膚に貼着した際に、保温効果を発揮させることができ、保湿剤をより効率的に皮膚へ移行させることができる。その結果、保湿シート1を貼着した部位における皮膚の保湿効果をより向上させることができる。このような気体難透過性を有する樹脂フィルムを構成する材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。
【0020】
2.保湿層12
保湿層12は、グリセリンを含む複数の保湿剤と、この保湿剤を保持する機能を備える高分子ゲル材料とを含んでいる。
【0021】
そして、このような高分子ゲル材料は、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下、単に「共重合体A」ともいう。)と、ラクタム環を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(以下、単に「共重合体B」ともいう。)とを含んでいる。
【0022】
ところで、従来、保湿剤を保持するための高分子ゲル材料として、架橋性官能基を有するアクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系共重合体が広く用いられてきた。このようなアクリル系共重合体は、柔軟性および粘着性を備えており、皮膚との密着性に優れている。
【0023】
しかしながら、従来の高分子ゲル材料を用いた場合、保湿剤を保湿層に高含有させることが難しく、また、保湿層から保湿剤が染み出し易いという問題があった。
【0024】
そこで、本発明者らは、上記問題を解決するため鋭意検討を行った結果、保湿剤を保持する高分子ゲル材料として、共重合体Aと共重合体Bとを所定の割合で配合した材料を用いることで、保湿層からの保湿剤の染み出しを効果的に抑制するとともに、保湿層に保湿剤を高含有させることができ、かつ、保湿シートの貼着時に保湿剤を皮膚へ効果的に移行させることができることを検知した。すなわち、本発明者らは、上述した材料を用いることで、保湿シートが皮膚に貼着されているときにはもちろんのこと、保湿シートが皮膚から剥離した後であっても皮膚の保湿効果を長時間持続(維持)することができることを検知した。
【0025】
特に、本発明では、保湿剤を保持する機能を備える高分子ゲル材料中の共重合体Aの含有量をW質量%とし、高分子ゲル材料中の共重合体Bの含有量をW質量%としたとき、W/Wが、40/60〜95/5(WとWの合計量を100として計算)の関係を満足することを特徴としている。本発明は、このような関係を満足することで、上述した効果を発揮する。すなわち、本発明の保湿シートは、保湿層からの保湿剤の染み出しを効果的に抑制し、かつ、保湿層中に保湿剤を高含有させることができる。その結果、保湿シートの貼着時に保湿剤を皮膚へ効果的に移行させることができるため、貼着時のみならず、剥離後においても、優れた保湿効果を長時間持続させることができる。
【0026】
このように、本発明では、W/Wが、40/60〜95/5(WとWの合計量を100として計算)の関係を満足することに特徴を有するが、W/Wが、45/55〜90/10の関係を満足することがより好ましく、50/50〜90/10の関係を満足することがさらに好ましい。これにより、前述の効果がより顕著なものとなる。これに対し、W/Wが上記下限値未満であると、保湿剤を十分に保持することができず、保湿層からの保湿剤の染み出し(すなわち、保湿層12の表面への保湿剤の浸出)を防止することができない。一方、W/Wが上記上限値を超えると、保湿層の凝集力が弱くなり(すなわち、保湿層としての形状を維持することができず)、保湿シートを剥離する際に保湿層の一部が皮膚に残余したり、剥離後のベタツキおよび糊残りが顕著となったりする。
【0027】
2−1.架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(共重合体A)
通常、共重合体Aは、架橋性官能基を有するビニルモノマーA1(以下、単に「ビニルモノマーA1」ともいう。)と、(メタ)アクリル酸エステルA2とを共重合することで得られる。このような共重合体Aを含む組成物を架橋剤により架橋させたものは、柔軟性(すなわち、優れた曲面追従性)および粘着性を有しており、保湿層12を皮膚に貼着させるための粘着組成物としても機能する。
【0028】
ビニルモノマーA1が有する架橋性官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基などの活性水素をもつ官能基が挙げられる。そして、このようなビニルモノマーA1としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシエチル等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよく、または、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステルA2としては、炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステルA2としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよく、または、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ビニルモノマーA1と(メタ)アクリル酸エステルA2との共重合体を架橋するための架橋剤としては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジエチレンウレアなどのアジリジン系架橋剤、ポリイソシアネートなどのイソシアネート系の架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラニン系架橋剤、カルボン酸系架橋剤などが挙げられる。
【0031】
ここで、共重合体Aの形成に用いるモノマー成分(ビニルモノマーA1および(メタ)アクリル酸エステルA2)中のビニルモノマーA1の含有量は、0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、2〜8質量%であることがさらに好ましい。ビニルモノマーA1の含有量が前記下限値未満であると、共重合体Aの架橋が不十分となり、保湿層12としての形状を維持することができない場合がある。すなわち、使用条件などによっては、保湿シート1を剥離する際に保湿層12の一部が皮膚に残ってしまう場合や、剥離後に皮膚のベタツキを感じてしまう場合がある。一方、ビニルモノマーA1の含有量が前記上限値を超えると、共重合体Aの凝集力が高くなり、十分な柔軟性を発揮することができず、保湿シートの貼着部位によっては、皮膚に対する追従性を十分に発揮することができない場合がある。
【0032】
また、以上のような共重合体Aの質量平均分子量(Mw)は、30万〜150万であるのが好ましく、35万〜120万であるのがより好ましく、40万〜100万であるのがさらに好ましい。共重合体Aの質量平均分子量が前記下限値未満であると、得られる共重合体Aの凝集力が不十分となり、保湿シート1を剥離した後に、糊残りやベタツキが生じる場合がある。一方、共重合体Aの質量平均分子量が前記上限値を超えると、共重合体Aの粘度が高くなり、保湿層12の形成の際に、他の成分(例えば、後述する共重合体B)と均一に混合することが困難となるため、保湿層中に保湿剤を均一に保持することができず、保湿層の部位によって保湿効果にムラが生じてしまう場合がある。
【0033】
なお、本明細書中における質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC解析)法によって測定し、標準ポリスチレンで換算した値とする。
【0034】
2−2.ラクタム環を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(共重合体B)
共重合体Bは、前述したように、ラクタム環を有するビニルモノマー(以下、単に「ビニルモノマーB1」ともいう。)と、(メタ)アクリル酸エステルB2との共重合体である。
【0035】
ビニルモノマーB1としては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等が挙げられる。これらの中でも、N−ビニル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。N−ビニル−2−ピロリドンは、グリセリンとの親和性が特に高いため、ビニルモノマーB1としてN−ビニル−2−ピロリドンを用いることで、保湿層12にグリセリンを高含有させることができる。さらに、N−ビニル−2−ピロリドンは、皮膚との親和性も高いため、保湿層12の保湿効果をより向上させることができる。
【0036】
共重合体Bの形成に用いるモノマー成分(ビニルモノマーB1および(メタ)アクリル酸エステルB2)中のビニルモノマーB1の含有量は、5〜50mol%であることが好ましく、10〜40mol%であることがより好ましい。このような関係を満足することにより、保湿層12からの保湿剤の染み出しをより効果的に抑制することができ、保湿層12中に保湿剤をより高含有させることができる。また、共重合体Bの粘度を適度なものとすることができ、共重合体Bを共重合体Aおよび保湿剤のそれぞれと均一に混合することができる。その結果、保湿層12中に保湿剤を均一に保持することができ、保湿シート1は、貼着部位の全体にわたって均一でかつ優れた保湿効果を発揮する。これに対し、ビニルモノマーB1の含有量が前記下限値未満であると、共重合体Aとの配合比(すなわち、前述したW/W)などによっては、保湿層12中に保湿剤(特に、グリセリン)を十分に保持させることができず、十分な保湿効果を発揮することができない場合がある(すなわち、皮膚に対する濡れ面積の増大効果を発揮することができない場合がある)。一方、ビニルモノマーB1の含有量が前記上限値を超えると、共重合体Bの粘度が高くなり、共重合体Aとの配合比(すなわち、前述したW/W)などによっては、共重合体Aと共重合体Bとを均一に混合することができない場合がある。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステルB2としては、アルキル基の炭素数が1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。このようなアクリル酸エステルB2としては、前述した共重合体Aを形成する(メタ)アクリル酸エステルA2で述べたものと同様であるため、その説明を省略する。
【0038】
このような(メタ)アクリル酸エステルB2としては、(メタ)アクリル酸エステルA2と同種のものを用いることが好ましい。これにより、共重合体Aおよび保湿剤との相溶性が高くなり、保湿層12からの保湿剤の染み出しを効果的に抑制することができる。
【0039】
また、以上のような共重合体Bの質量平均分子量(Mw)は、30万〜150万であるのが好ましく、35万〜120万であるのがより好ましく、40万〜100万であるのがさらに好ましい。共重合体Bの質量平均分子量が前記下限値未満であると、得られる共重合体Bの凝集力が不十分となり、保湿シート1を剥離した後に、糊残りやベタツキが生じる場合がある。一方、共重合体Bの質量平均分子量が前記上限値を超えると、共重合体Bの粘度が高くなり、保湿層12の形成の際に、他の成分(例えば、共重合体A)と均一に混合することが困難となるため、保湿層中に保湿剤を均一に保持することができず、保湿層の部位によって保湿効果にムラが生じてしまう場合がある。
【0040】
2−3.保湿剤
本発明において、保湿層12は、グリセリンを含む複数の保湿剤を含んでいる。すなわち、保湿層12は、グリセリンを必須の保湿剤とし、かつ、グリセリンの他にグリセリンとは異なる保湿剤を含んでいる。そして、本発明では、保湿層12中のグリセリンの含有量が25質量%以上で、かつ、保湿層12中の保湿剤全体(グリセリンおよび他の保湿剤)の含有量が40〜70質量%である。このような関係を満足することで、保湿層12中からの保湿剤の染み出しを効果的に抑制することができ、保湿層12中に保湿剤を高含有させることができる。その結果、貼着時に保湿剤を皮膚へ効果的に移行させることができるため、保湿シート1は、貼着時のみならず、剥離後においても、優れた保湿効果を長時間持続させることができる。
【0041】
特に、本発明では、上述したように、保湿剤を保持する機能を備えた高分子ゲル材料として、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(共重合体A)と、ラクタム環を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(共重合体B)とを所定の割合で配合したものを用いているため、グリセリンを含む複数の保湿剤を保湿層中に上述したように高含有させることができる。
【0042】
なお、必須の保湿剤成分であるグリセリンは、親水性(水溶性)を有しており、このようなグリセリンを保湿層中に高含有することで、皮膚への保湿効果が向上する。しかし、グリセリンのみを保湿剤として保湿層中に高含有させすぎてしまうと、保湿シート剥離後にベタツキなどが発生する場合がある。そこで、グリセリンと、グリセリンとは異なる保湿剤とを併用することにより、このような保湿シート剥離後のベタツキなどを効果的に防止することができる。
【0043】
このように、本発明では、保湿層中のグリセリンの含有量が25質量%以上であることに特徴を有するが、保湿層中のグリセリンの含有量が、25〜60質量%の関係を満足することがより好ましく、30〜50質量%の関係を満足することがさらに好ましい。これにより、本発明の保湿シートは、保湿シートの剥離後のベタツキを防止しつつ、優れた保湿効果を発揮する。これに対し保湿層中のグリセリンの含有量が上記下限値未満であると、十分な保湿効果が得られない。
【0044】
また、本発明では、保湿層中の保湿剤全体の含有量が40〜70質量%であることに特徴を有するが、保湿層中の保湿剤全体の含有量が45〜65質量%の関係を満足することがより好ましく、50〜60質量%の関係を満足することがさらに好ましい。これにより、本発明の保湿シートは、保湿シートの剥離後のベタツキおよび保湿層からの保湿剤の染み出しを防止しつつ、優れた保湿効果を発揮する。これに対し、保湿層中の保湿剤全体の含有量が上記下限値未満であると、保湿層の寸法などによっては、保湿剤を十分に保持することができず、十分な保湿効果が得られない。一方、保湿層中の保湿剤全体の含有量が上記上限値を超えた場合には、保湿層から保湿剤が染み出してしまう。
【0045】
グリセリンとは異なる保湿剤としては、1、3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトールなどの多価アルコール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸、グリチルリチン酸ジカリウムなどのカルボン酸またはその塩、ブドウ糖、果糖などの糖類、トリメチルグリシンなどのアミノ酸類、シソエキス、アロエエキス、菌糸エキス、プラセンタ(胎盤)エキス、ヨモギエキス、甘草エキス、アルニカエキス、マロニエエキス、酵母エキスなど水抽出エキス、ヒドロキシプロリン、ベタイン、尿素などの水溶性保湿剤と、ヒマワリオイル、ホホバオイル、オリーブオイル、ラッカセイオイル、ダイズオイル、ツバキオイル、馬油、ラノリン、ローズマリー、コモンライム、大豆リン脂質などの動植物からの抽出物、セタノール、バイオγリノレニン、レシチン、セラミド、コレステロール、スクワラン、ワセリン、脂肪酸類、脂肪酸エステル類などの油溶性保湿剤とが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ホホバオイル、ヒマワリオイルなどの油溶性保湿剤(この中でも、特に、植物性オイル)が好ましい。このように、水溶性保湿剤(グリセリン)と油溶性保湿剤とを併用することにより、保湿シート1の剥離後のベタツキを抑制しつつ、より優れた保湿効果を発揮することができる。
【0046】
なお、本明細書中、水溶性保湿剤とは、皮膚の水分量を保持し保湿に寄与する物質のうち水溶性のものを意味する。また、油溶性保湿剤とは、皮膚の水分量を保持し保湿に寄与する物質のうち油溶性のものを意味し、動植物油などのいわゆる油分も包含する意味である。これらの動植物油も皮膚表面を油膜で覆い皮膚の水分量を保つことができる。
【0047】
ここで、保湿層12中のグリセリン以外の保湿剤(以下、単に「他の保湿剤」ともいう。)の含有量は、8〜35質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。これにより、保湿シート1の剥離後のベタツキを効果的に抑制しつつ、より優れた保湿効果を発揮することができる。これに対し、保湿層12中の他の保湿剤の含有量が上記下限値未満であると、グリセリンの含有量などによっては、保湿シート剥離後にベタツキが生じてしまう場合がある。一方、保湿層12中の他の保湿剤の含有量が上記上限値を超えた場合には、グリセリンの含有量によっては、他の保湿剤がグリセリンと共に保湿層12中から染み出してしまう場合がある。
【0048】
また、保湿層12中のグリセリンの含有量をW質量%とし、保湿層12中の他の保湿剤の含有量をW質量%としたとき、W/Wが、40/60〜80/20(WとWの合計量を100として計算)の関係を満足することが好ましく、50/50〜75/25の関係を満足することがより好ましい。これにより、保湿シート1の剥離後のベタツキを効果的に抑制しつつ、より優れた保湿効果を発揮することができる。これに対し、W/Wが上記下限値未満であると、グリセリンの含有量などによっては、保湿効果を十分に発揮することができない場合がある。一方、W/Wが上記上限値を超えた場合には、グリセリンの含有量によっては、保湿シート1の剥離後のベタツキが生じてしまう場合がある。
【0049】
3.剥離シート
剥離シート13としては、紙や樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布したものであればよく、周知のものを用いることができる。また、このような剥離シート13は、省略してもよい。
【0050】
<第2実施形態>
次に、本発明の保湿シートの第2実施形態について説明する。
図2は、本発明の保湿シートの第2実施形態を示す図である。
【0051】
以下、第2実施形態の保湿シート1Aについて、前述した第1実施形態の保湿シート1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。また、前述した実施形態と同様の構成には同一符号を付してある。
【0052】
保湿シート1Aは、図2に示すように、支持層21と粘着層22とが積層してなる固定用粘着シート2と、固定用粘着シート2上(粘着層22側の面)に設けられた支持体11と、支持体11上に設けられた保湿層12と、保湿層12の全域および粘着層22の一部のそれぞれを覆うように形成された剥離シート13とで構成されている。すなわち、保湿シート1Aは、支持層21と、粘着層22と、支持体11と、保湿層12と、剥離シート13とが、この順にて積層する積層構造をなしている。
【0053】
そして、固定用粘着シート2は、その平面視にて、保湿層12全体を含むように、かつ、保湿層12よりも大きく形成されている。このような保湿シート1Aは、使用時にて、剥離シート13を保湿層12および粘着層22から剥離し、保湿層12を皮膚に貼着し、粘着層22により保湿層12を皮膚に固定するように構成されている。ここで、保湿層12は、前述した第1実施形態でも説明したように、皮膚へ貼着するための十分な粘着力を有しているが、本実施形態の様に、粘着層22によって保湿層12を皮膚に固定することにより、保湿層12の皮膚との密着性を向上させ、かつ、貼着状態をより長時間維持することができる。その結果、保湿シート1Aは、極めて優れた保湿効果をより長時間発揮することができる。
【0054】
以下、固定用粘着シート2について、説明する。
固定用粘着シート2は、支持層21と粘着層22との積層構造を有している。
【0055】
支持層21は、シート状をなしており、その一方の面上に後に詳述する粘着層22が設けられている。すなわち、支持層21は、粘着層22を支持する機能を有する。かかる支持層21は、それ自体、可撓性(柔軟性)を有し、貼着時における曲面追従性をもち、加工時における裁断または打ち抜き等に適したものが好ましい。
【0056】
このような支持層21の構成材料としては、第1実施形態で説明した支持体11の構成材料と同様の材料を用いることができるため、その説明を省略する。
【0057】
粘着層22は、粘着剤を主剤とした粘着剤組成物で構成されている。
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤が挙げられる。
【0058】
例えば、粘着剤がアクリル系粘着剤である場合、粘着性を与える主モノマー成分、接着性や凝集力を与えるコモノマー成分、架橋点や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体または共重合体から構成することができる。
【0059】
主モノマー成分としては、前述した(メタ)アクリル酸エステルA2と同様のものが使用できる。官能基含有モノマー成分としては、前述したビニルモノマーA1と同様のものが使用できる。
これらの各成分を含むことにより、粘着剤組成物の粘着力、凝集力が向上する。
【0060】
このような粘着剤組成物には、架橋処理を施す架橋型および架橋処理を施さない非架橋型のいずれのものを用いてもよいが、架橋型のものがより好ましい。架橋型のものを用いる場合、凝集力のより優れた粘着層22を形成することができる。
【0061】
架橋型粘着剤組成物に用いる架橋剤としては、エポキシ系化合物、イソシアナート化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物等があげられる。
【0062】
また、本発明に用いられる粘着剤組成物中には、必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、安定剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0063】
なお、粘着層22は、保湿層12を皮膚に固定することができれば、支持層21の面の全域に形成されていなくてもよく、例えば、支持層の面の縁部にのみ形成されているものであってもよい。
【0064】
以上のような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0065】
以上、本発明の保湿シートの好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、
また、前述した実施形態では、支持体が単層で構成されているものについて説明したが、これに限定されず、複数の層で構成されていてもよい。
【0066】
また、前述した実施形態では、保湿層が保湿剤を含有しているものについて説明したが、これに限定されず、例えば、保湿層が保湿剤の他に、メントール、カンフル等の清涼剤や、酢酸トコフェロール、酢酸レチノール、アロエ、米ぬか等の肌荒れ治療剤などを含有していてもよい。
【実施例】
【0067】
次に、本発明の保湿シートの具体的実施例について説明する。
1.保湿シートの作製
支持体の片面に保湿層を形成し、保湿シートを作製した。
【0068】
(実施例1)
まず、アクリル酸2−エチルヘキシル:アクリル酸ブチル:メタアクリル酸が58:37:5(質量%比)となるように調整した質量平均分子量(Mw)50万のアクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸ブチル/メタアクリル酸共重合体(以下、単に「共重合体Aa」ともいう。)の酢酸エチル溶液(50質量%濃度)と、アクリル酸2−エチルヘキシル:N−ビニル−2−ピロリドンが68:32(mol%比)となるように調整した質量平均分子量(Mw)85万のアクリル酸2−エチルヘキシル/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体(以下、単に「共重合体Ba」ともいう。)の酢酸エチル溶液(35質量%濃度)とを用意した。そして、共重合体Aaと共重合体Baの配合比(質量比)が3:2となるように、共重合体Aaと共重合体Baの酢酸エチル溶液を混合し、混合溶液Cを得た。なお、以下、説明の便宜上、アクリル酸2−エチルヘキシルを「2EHA」と、アクリル酸ブチルを「BA」と、メタアクリル酸を「MAA」と、N−ビニル−2−ピロリドンを「NVP」という。
【0069】
一方、ホホバオイルとヒマワリオイルとの配合比(質量比)が1:1となるように混合した混合液に、グリセリンをこの混合液とグリセリンとの配合比(質量比)が2:3となるように加え十分に撹拌して保湿剤を得た(すなわち、グリセリン:他の保湿剤=3:2(質量比))。
【0070】
次に、混合溶液C中に含まれる共重合体Aaおよび共重合体Baの合計量と、保湿剤との配合比(質量比)が1:1となるように、混合溶液Cに保湿剤を添加した。次に、共重合体Aa100質量部に対して0.4質量部(質量比)のヘキサメチレンジエチルウレア(架橋剤)を混合溶液Cに添加して十分撹拌した。
【0071】
その後、シリコーン樹脂で処理された剥離シート上に均一な面となるように塗布した。そして、乾燥機にて加熱して溶媒(酢酸エチル)を除去し、剥離シート上に保湿層を形成した。なお、乾燥後の保湿層の厚さは、60μmであった。
【0072】
このようにして得られた保湿層をポリエステル不織布(坪量50g/m)とポリエチレンフィルムとを貼り合わせてなる支持体のポリエステル不織布面と貼り合わせることにより保湿シートを得た。
【0073】
(実施例2)
共重合体Aa:共重合体Ba=13:7(質量比)とした以外は、実施例1と同様である。
【0074】
(実施例3)
共重合体Aa:共重合体Ba=1:1(質量比)とした以外は、実施例1と同様である。
【0075】
(実施例4)
共重合体Aa:共重合体Ba=9:1(質量比)とした以外は、実施例1と同様である。
【0076】
(実施例5)
共重合体Aa:共重合体Ba=5:3(質量比)とし、グリセリン:ホホバオイル:ヒマワリオイル=4:1:1(質量比)(すなわち、グリセリン:他の保湿剤=2:1(質量比))とし、(共重合体Aaおよび共重合体Baの合計量):保湿剤=2:3(質量比)とした以外は、実施例1と同様である。
【0077】
(実施例6)
グリセリン:ホホバオイル:ヒマワリオイル=3:1:1(質量比)(すなわち、グリセリン:他の保湿剤=3:2(質量比))とした以外は、実施例5と同様である。
【0078】
(実施例7)
共重合体Aa:共重合体Ba=2:1(質量比)とし、グリセリン:ホホバオイル:ヒマワリオイル=6:1:1(質量比)(すなわち、グリセリン:他の保湿剤=3:1(質量比))とし、(共重合体Aaおよび共重合体Baの合計量):保湿剤=3:2(質量比)とした以外は、実施例1と同様である。
【0079】
(実施例8)
共重合体Baに代えて、アクリル酸2−エチルヘキシル:N−ビニル−2−ピロリドンが9:1(mol%比)となるように調整した質量平均分子量(Mw)85万のアクリル酸2−エチルヘキシル/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体(以下、単に「共重合体Bb」ともいう。)の酢酸エチル溶液(35質量%濃度)を使用した以外は、実施例1と同様である。
【0080】
(実施例9)
共重合体Baに代えて、アクリル酸2−エチルヘキシル:N−ビニル−2−ピロリドンが1:1(mol%比)となるように調整した質量平均分子量(Mw)85万のアクリル酸2−エチルヘキシル/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体(以下、単に「共重合体Bc」ともいう。)の酢酸エチル溶液(35質量%濃度)を使用した以外は、実施例1と同様である。
【0081】
(比較例1)
共重合体Baの酢酸エチル溶液を用いず、共重合体Aaの酢酸エチル溶液のみを使用した以外は、実施例1と同様である。
【0082】
(比較例2)
共重合体Aa:共重合体Ba=33:67(質量比)とした以外は、実施例1と同様である。
【0083】
(比較例3)
グリセリン:ホホバオイル:ヒマワリオイル=2:1:1(質量比)(すなわち、グリセリン:他の保湿剤=1:1(質量比))とし、(共重合体Aaおよび共重合体Baの合計量):保湿剤=3:2(質量比)とした以外は、実施例1と同様である。
【0084】
(比較例4)
保湿剤としてグリセリンのみを用い、(共重合体Aaおよび共重合体Baの合計量):保湿剤=7:3(質量比)とした以外は、実施例1と同様である。
【0085】
(比較例5)
保湿剤としてホホバオイルとヒマワリオイルとを用い(すなわち、グリセリンを用いずに)、ホホバオイル:ヒマワリオイル=1:1(質量比)とした以外は、比較例4と同様である。
【0086】
(比較例6)
グリセリン:ホホバオイル:ヒマワリオイル=5:1:1(質量比)(すなわち、グリセリン:他の保湿剤=5:2(質量比))とし、(共重合体Aaおよび共重合体Baの合計量):保湿剤=13:7(質量比)とした以外は、実施例1と同様である。
【0087】
(比較例7)
グリセリン:ホホバオイル:ヒマワリオイル=7:4:4(質量比)(すなわち、グリセリン:他の保湿剤=7:8(質量比))とし、(共重合体Aaおよび共重合体Baの合計量):保湿剤=1:3(質量比)とした以外は、実施例1と同様である。
以上の実施例1〜9の配合を表1に示し、比較例1〜7の配合を表2に示す。
【0088】
2.評価
実施例1〜9および比較例1〜7によって得られた保湿シートについて、以下のような試験を行った。
【0089】
(2−1)保湿層からの保湿剤染み出し試験
保湿層からの保湿剤染み出し試験としては、80mm×50mmに裁断した保湿シートを180mm×85mmの粘着テープに固定し、保湿シートの保湿層に剥離シートをラミネートした製剤を用意した。そして、この製剤を両面からアルミニウムシートで挟み込み、60℃、20g/cm圧力で24時間放置し、保湿層からの保湿剤の染み出し面積を測定することにより評価した。
【0090】
5点‥‥‥0〜1cm
4点‥‥‥1〜5cm
3点‥‥‥5〜10cm
2点‥‥‥10〜20cm
1点‥‥‥20cm以上
【0091】
(2−2)保湿シート剥離直後の保湿感官能試験
被験者10名にて、適用部位(踵)に8時間貼付し、剥離直後の保湿効果(保湿感)をVAS(Visual Analog Scale)法を用いて行った。ここで、VAS法とは、任意の長さの線分上に使用感(保湿感)について感じたままに印を付けてもらい、その線分の一端から印までの長さを測定することで、使用感を客観的に評価する方法である。
【0092】
本試験では、横方向へ延びる50mmの線分の左端に「保湿感なし」と、右端に「保湿感あり」とそれぞれ記載したものを用い、左端から印までの長さを1mm単位で測定し、測定された長さを点数として用いた(例えば、左端から印までの長さが4.2cmであったときは、点数は4.2である)。したがって、点数が高いほど保湿シート剥離直後の保湿感が感じられるということとなる。
【0093】
(2−3)保湿シート剥離後4時間経過時での保湿感官能試験
被験者10名にて、適用部位(踵)に8時間貼付し、剥離後4時間経過時の保湿効果(保湿感)をVAS法を用いて行った。本試験では、横方向へ延びる50mmの線分の左端に「保湿感なし」と、右端に「保湿感あり」とそれぞれ記載したものを用い、左端から印までの長さを1mm単位で測定し、測定された長さを点数として用いた。したがって、点数が高いほど保湿シート剥離後4時間経過時での保湿感が感じられるということとなる。
結果を表3に示した(被験者10名の平均値を示す)。
【0094】
(2−4)保湿シート剥離後のベタツキ感官能試験
被験者10名にて、適用部位(踵)に8時間貼付し、剥離直後のベタツキ感をVAS法を用いて行った。本試験では、横方向へ延びる50mmの線分の左端に「ベタツキあり」と、右端に「ベタツキなし」とそれぞれ記載したものを用い、左端から印までの長さを1mm単位で測定し、測定された長さを点数として用いた。したがって、点数が高いほどベタツキがないということとなる。
【0095】
以上(2−1)〜(2−4)の各試験の試験結果を表3に示した。なお、(2−1)の試験については、保湿シート10枚の点数の平均値を示し、(2−2)〜(2−4)の各試験については、被験者10名の点数の平均値を示した。また、表3中「※1」が記載されている試験については、保湿シート剥離後のベタツキがひどかったため実施していない。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
表3から明らかなように、比較例の保湿シートは、保湿層からの保湿剤の浸出が大きかったり、保湿シート貼着時の保湿感および保湿シート剥離後4時間経過時での保湿感が低かったり、保湿シート剥離後のベタツキが感じられたりしているのに対して、各実施例では、保湿層からの保湿剤の浸出を十分に抑えたものであり、かつ、貼着時および剥離後の保湿感も高く、剥離後のベタツキも十分に抑えたものであった。
【0100】
また、実施例1〜9および比較例1〜7のそれぞれの保湿シートと、下記の様にして得られた固定用粘着シートとで図2に示すシートを作成し、このシートについて、上述した試験と同様の試験を行った結果、上述した試験結果と同様の結果が得られた。
【0101】
なお、以下の様にして、固定用粘着シートを得た。
まず、2HEA:BA:MAAが60:35:5(質量%比)となるように調整した2HEA/BA/MAA共重合体の酢酸エチル溶液を用意した後、2HEA/BA/MAA共重合体100質量部に対して1.5質量部のポリイソシアネート(架橋剤)を添加して十分撹拌した。
【0102】
次に、得られた溶液を平均厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製:商品名「PET38T−100」)の片面に均一の厚さになるように塗布した。そして、乾燥機にて加熱して溶媒(酢酸エチル)を除去し、剥離材上に粘着層を形成した。なお、乾燥後の粘着層の厚さは、60μmであった。このようにして得られた粘着層をポリエステル不織布(坪量50g/m)とポリエチレンフィルムとを貼り合わせてなる支持層のポリエステル不織布面と貼り合わせることにより固定用粘着シートを得た。そして、固定用粘着シートの剥離材を剥離した後、粘着層と、実施例1〜9および比較例1〜7のそれぞれの保湿シートの支持体とを貼り合わせた。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の保湿シートの第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の保湿シートの第2実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0104】
1、1A 保湿シート
11 支持体
12 保湿層
13 剥離シート
2 固定用粘着シート
21 支持層
22 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体上に設けられた保湿層とを有し、
前記保湿層は、グリセリンを含む複数の保湿剤と、前記保湿剤を保持する機能を備える高分子ゲル材料とを含み、
前記保湿層中の前記グリセリンの含有量が25質量%以上で、かつ、前記保湿層中の前記保湿剤全体の含有量が40〜70質量%であり、
前記高分子ゲル材料は、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、ラクタム環を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体とを含み、
前記高分子ゲル材料中の前記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量をW質量%とし、前記高分子ゲル材料中の前記ラクタム環を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体の含有量をW質量%としたとき、W/Wが、40/60〜95/5(WとWの合計量を100として計算)の関係を満足することを特徴とする保湿シート。
【請求項2】
前記ラクタム環を有するビニルモノマーの含有量は、前記ラクタム環を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体中5〜50mol%である請求項1に記載の保湿シート。
【請求項3】
前記ラクタム環を有するビニルモノマーは、N−ビニル−2−ピロリドンである請求項1または2に記載の保湿シート。
【請求項4】
前記保湿層中の前記グリセリンの含有量をW質量%とし、前記保湿層中の前記グリセリンを除く保湿剤の含有量をW質量%としたとき、W/Wが、40/60〜80/20(WとWの合計量を100として計算)の関係を満足する請求項1ないし3のいずれかに記載の保湿シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−201700(P2008−201700A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38448(P2007−38448)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】