説明

保湿剤

【課題】ウコン根茎に含まれる水(ウコン根茎の細胞水)の新たな用途を提供する。
【解決手段】ウコン根茎の細胞水を含むことを特徴とする保湿剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウコン根茎の細胞水を含有する保湿剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコンは、地下に肥大した根茎をもつショウガ科ウコン属に属する多年草植物であり、春ウコン(学名:Curcuma aromatica Salisb.)、秋ウコン(学名:Curcuma longa Linn)、白ウコン(学名:Curcuma caesia)、紫ウコン(学名:Curcuma zedoaria Roscoe)などの品種が良く知られている。ウコンは、抗腫瘍作用、抗酸化作用、抗炎症作用、利胆作用(胆汁の分泌を促進)等を有するとされるクルクミン;利胆作用があるとされるターメロン;防腐作用があるとされるシネオールなどの薬理活性を有する成分を含むことから、食品、化粧品、漢方薬、医薬などの材料として広く利用されている。また、秋ウコンの根茎の乾燥粉末は、ターメリックという名称で食用色素等に広く利用されている。
【0003】
従来ウコンを利用する際には、土の中にできる根茎を利用するのが一般的であり、ウコン根茎を乾燥させ、これをさらに粉末状にして食用、薬用又は染料等に利用する。また、このウコン根茎の乾燥粉末を溶媒等で処理することにより、クルクミン等の薬効成分が抽出される。
【0004】
しかしながら、ウコン根茎はその約90質量%が水分であるが、上記のようにウコン根茎から乾燥ウコン粉末を製造する際、ウコン根茎から除去された水(ウコン根茎の細胞水)は、全て廃棄処分されている。したがって、このウコン根茎の細胞水の有効利用が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ウコン根茎に含まれる水(ウコン根茎の細胞水)の新たな用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行ったところ、ウコン根茎に含まれる細胞水を皮膚に適用すると、皮膚の水分量が保持されて、皮膚の柔軟性が維持され、良好な肌状態が保たれることを見出した。本発明者らは、さらに研究を重ね、本発明を完成した
【0007】
すなわち、本発明は、
項1. ウコン根茎の細胞水を含むことを特徴とする保湿剤、
項2. ウコン根茎の細胞水が、生ウコン根茎を減圧蒸留することにより得られる蒸留画分である項1に記載の保湿剤、
項3. 蒸留画分が、温度25〜40℃かつ圧力−98〜−93kPaの条件で蒸留される画分である項2に記載の保湿剤、
項.4 ウコン根茎の細胞水が、生ウコン根茎をセルラーゼ、ペクチナーゼ、キチナーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、グルコシダーゼ、及びセロビアーゼから選択される少なくとも1種の酵素で処理する工程を含む方法により得られるものである項1に記載の保湿剤、及び
項.5 ウコン根茎が、春ウコンの根茎である項1〜4のいずれかに記載の保湿剤、
に関する。
【0008】
さらに本発明は、ヒトの肌(特に乾燥肌)にウコン根茎の細胞水を塗布することにより、皮膚の水分を保つ方法、肌(特に乾燥肌)の保湿のためのウコン根茎の細胞水、ウコン根茎の細胞水の保湿剤としての使用、及びウコン根茎の細胞水の保湿剤の製造のための使用に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る保湿剤は、皮膚に適用することにより、皮膚において十分な水分量を保持することができ、その結果、皮膚の柔軟性を維持でき、肌に潤いを与えることができる。また、本発明に係る保湿剤は、乾燥により低下または損失した皮膚表面の角質層の水和能とバリア機能を補い、角質層の損傷によるウイルスなどの進入を抑制できる。さらに、本発明に係る保湿剤は化粧品などの皮膚外用組成物に配合した場合であっても、ベタツキ感がなく使用感に優れるという利点がある。
このため、本発明に係る保湿剤は、日常の基礎化粧品として、また、例えばアトピー性皮膚炎や、乾皮症などの乾燥肌の皮膚への水分の補給と保湿を目的とした化粧品や医薬品、医薬部外品として好適に使用できる。
本発明に係る保湿剤の原料となるウコン根茎は天然物で安全性が高いものである。また、ウコン根茎からウコン乾燥粉末を製造する際に廃棄されていた細胞水を、そのまま本発明に係る保湿剤の原料のウコン根茎の細胞水として使用し得るので、本発明の保湿剤は、廃棄物の有効利用になり得るとともに、安価である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ウコン根茎の細胞水
本発明において、ウコン根茎としては特に限定されず、例えば、ショウガ科に属する植物の根茎であればよい。例えば、春ウコン(学名:Curcuma aromatica Salisb.)、秋ウコン(学名:Curcuma longa Linn)、白ウコン(学名:Curcuma caesia)、紫ウコン(学名:Curcuma zedoaria Roscoe)等のショウガ科ウコン属植物;ショウガ(学名:Z. officinale)、ミョウガ(学名:Z. mioga (Thumb.) Roscoe)等のショウガ科ショウガ属植物等の根茎を用いることができる。中でも、ショウガ科ウコン属植物の根茎が好ましく、秋ウコン、春ウコン及び紫ウコンからなる群より選択される少なくとも1種のウコンの根茎が好ましく、春ウコンの根茎が特に好ましい。
本発明におけるウコン根茎としては、生ウコン根茎(乾燥させていないウコン根茎)を用いることが好ましい。ウコン根茎は、外皮を除いたものであってもよく、外皮がついたままのものであってもよい。
【0011】
「細胞水」は、ウコン根茎の細胞に含まれる細胞内液である。細胞水は、公知の方法でウコン根茎を蒸留、抽出または分解などして得ることができる。このため、本発明に係る細胞水としては、例えば、ウコン根茎を蒸留、好ましくは減圧蒸留して得られる蒸留画分や、ウコン根茎の酵素処理物、又はさらにこの分解酵素や酵素分解物(細胞壁や細胞実質)のような固形物を除去した画分を使用できる。中でも、生ウコン根茎を減圧蒸留することにより得られる蒸留画分が、本発明におけるウコン根茎の細胞水として好ましい。
【0012】
以下に細胞水の調製方法につき、その好ましい例を説明する。
先ず、ウコン根茎を洗浄処理後、所望により外皮を剥く。次いで、ウコン根茎を蒸留、好ましくは減圧蒸留し、蒸留画分を分取する。ウコン根茎は、そのまま蒸留に用いてもよく、または、切断、粉砕、粗切、中切、薄切りもしくは細切などして用いてもよいが、表面積を大きくすると効率よく細胞水を蒸留することができることから、切断、粉砕、粗切、中切、薄切りまたは細切りしたウコン根茎を用いて蒸留を行なうことが好ましい。より好ましくは、薄切りまたは細切りしたウコン根茎を用いる。
【0013】
減圧蒸留は低温下で、しかも酸素が少ない密閉条件下で細胞水を分離できるので、細胞に含まれる成分の変質、変性、または分解(以下、変質等と略記する。)を抑制できる。減圧蒸留における温度及び圧力は、細胞に含まれる成分の変質等を抑制でき、かつ細胞水を蒸留分別できる温度及び圧力が好ましい。温度及び圧力の条件は、通常、約25〜40℃かつ約−98〜−93kPaであり、約25℃かつ約−98KPaが好ましい。処理時間は、減圧蒸留に用いるウコン根茎の量、形状等によるが、通常、約8〜10時間とすることが好ましい。
蒸留により得られる蒸留画分は、そのまま本発明にかかる細胞水として利用し得る。なお、蒸留画分(ウコン根茎の細胞水)を蒸留した後のウコン根茎は、乾燥粉末の原料として、従来用いられている食品、薬品等の用途に用いることができる。
【0014】
本発明においてウコン根茎の蒸留を行なう装置として、F・E・C社製の真空蒸留装置(商品名「真空乾燥機 FED−50」)等が好適である。このような真空蒸留装置を用いて上記条件によりウコン根茎を蒸留して得られる蒸留画分は、優れた保湿効果を奏するものであり、本発明におけるウコン根茎の細胞水の好ましい態様の1つである。
【0015】
また、生ウコン根茎を、そのまま、または、切断、粉砕、粗切、中切、薄切りもしくは細切などした後、例えばセルラーゼ、ペクチナーゼ、キチナーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、グルコシダーゼ、及びセロビアーゼなどの酵素で分解処理することによっても細胞水を得ることができる。酵素処理温度及びpHは、酵素の至適温度及びpHとすればよいが、通常約20〜35℃、pH約5〜8とすればよい。酵素処理は、例えば、例えば塩酸溶液のような反応停止液を加えたり、例えば約90〜100℃に加熱したりすることにより停止させればよい。
【0016】
このような酵素処理物をそのまま細胞水として用いてもよいが、遠心分離、膜ろ過、各種クロマトグラフィーなどにより分解酵素や固形夾雑物を除去してから用いてもよい。
【0017】
製剤
本発明に係る保湿剤は、例えば化粧品組成物、医薬部外品組成物、または医薬品組成物とすることができる。また、皮膚(頭皮、毛髪を含む)に適用される皮膚外用組成物とすることができる。
保湿剤中のウコン根茎の細胞水の含有量は、通常、約10〜100質量%、好ましくは約50〜100質量%である。
【0018】
その際、本発明の効果を損なわない範囲において、皮膚外用組成物に使用し得る添加剤等を配合できる。添加剤としては、油性成分、高級アルコール、界面活性剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料、保存剤、キレート剤、噴射剤などが挙げられる。
【0019】
油性成分は、液状または固形のいずれでもよい。油性成分としては、例えば、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、月見草油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウまたは硬化ヒマシ油等の油脂;ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カボックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコールまたはPOE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類;流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワラン、ワセリンまたはマイクロクリスタリンワックス等の炭化水素;ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアレン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル−2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸−2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソプロピル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セパチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸−2−ヘキシルデシル、パルミチン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、セバチル酸ジイソプロピル、コハク酸−2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルまたはクエン酸トリエチル等の脂肪酸エステル;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸(ベヘニル)酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、ラノリン脂肪酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸等の高級脂肪酸;または、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油などが挙げられる。
【0020】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリンアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、モノステアリルグリセレンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコールもしくはオクチルドデカノール等の直鎖または分岐高級アルコールなどが挙げられる。
【0021】
界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ラウロマクロゴール、セトマクロゴール、モノステアリン酸グリセリン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はステアリン酸ポリオキシルなどが挙げられる。
【0022】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2エチルヘキシル(オクチル)、パラジメチルアミノ安息香酸2エチルヘキシル(オクチル)、オキシベンゾン(ベンゾフェノン3)、サリチル酸2エチルヘキシル(オクチル)、4−tert−ブチル−4−メトキシ-ベンゾイルメタン、サリチル酸フェニルシノキサート、パラアミノ安息香酸エステル2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールまたはグアイアズレンなどが挙げられる。
【0023】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール類、ベータカロチン、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、コーヒー豆抽出物(クロロゲン酸)、緑茶抽出物(カテキン)、ローズマリー抽出物などが挙げられる。
【0024】
香料としては、例えば、ジャコウジカから得られるムスク、ジャコウネコから得られるシベット)、ビーバーから得られるカストリウム、マッコウクジラから得られるアンバーグリスなどの天然香料、メントール、カンファーまたは合成香料などが挙げられる。
【0025】
保存剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどのパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸またはソルビン酸カリウムなどが挙げられる。
【0026】
キレート剤としては、例えば、ニトリロ三酢酸(NTA)、トランス−1,2−シクロヘキサジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(CyDTA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはクエン酸などが挙げられる。
【0027】
噴射剤としては、例えば、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、圧縮ガス(N、CO、NO、空気等)等が挙げられる。
【0028】
また、本発明に係る保湿剤を配合される皮膚外用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、ウコン根茎の細胞水以外の公知の保湿剤、皮膚コンディショニング剤、皮膚細胞賦活剤、美白剤、抗炎症剤、ホルモン剤またはビタミン剤などを配合してもよい。
【0029】
ウコン根茎の細胞水以外の公知の保湿剤としては、例えば、アミノ酸、ピロリドンカルボン酸もしくは乳酸などのNMF(天然保湿成分);グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールもしくはソルビットなどの多価アルコール類;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムもしくはコンドロイチン硫酸などのムコ多糖類;可溶性コラーゲン、ユラスチンまたはケラチンなどのたんぱく質加水分解物;プラセンタエキス、ムチン、キチン、キトサン、ビフィズス菌代謝物、酵母発酵代謝産物または酵母抽出物などが挙げられる。
【0030】
皮膚コンディショニング剤としては、例えば、パーフルオロデカリン、パーフルオロヘキサンまたはトリパーフルオロ−n−ブチルアミンなどが挙げられる。
【0031】
皮膚細胞賦活剤としては、例えば、センブリエキス、ニンニクエキス、ニンジンエキス、ローズマリーエキス、アロエエキス、胎盤抽出液、竹節ニンジンエキス、干姜、紅花、オウギ、桃仁、補骨脂、当帰、センキュウ、丹参、D−パントテニルアルコール誘導体、プラセンタエキス、ビオチンまたはペンタデカン酸グリセリドなど挙げられる。
【0032】
美白剤としては、例えば、アルブチン等のハイドロキノン誘導体、コウジ酸及びその誘導体、L−アスコルビン酸及びその誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、美白作用を有する植物抽出物などが挙げられる。ハイドロキノン誘導体としては、例えば、ハイドロキノンと糖との縮合物、ハイドロキノンに炭素数1〜4のアルキル基を一つ導入したアルキルハイドロキノンと糖との縮合物等が挙げられる。コウジ酸誘導体としては、例えば、コウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸モノステアレート、コウジ酸モノシンナモエート、コウジ酸モノベンゾエート等のモノエステル、コウジ酸ジブチレート、コウジ酸ジパルミテート、コウジ酸ジステアレート、コウジ酸ジオレート等のジエステルなどが挙げられる。L−アスコルビン酸誘導体としては、例えば、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルなどのL−アスコルビン酸モノエステル類やこれらの塩、L−アスコルビン酸−2−グルコシドなどのL−アスコルビン酸グルコシド類やこれらの塩、アスコルビン酸グルコシドのアシル化誘導体、エチル化ビタミンCなどが挙げられる。トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸の二量体(例えば、塩酸トランス−4−(トランス−アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4’−ヒドロキシフェニルエステル等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2−(トランス−4−アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)−5−ヒドロキシ安息香酸及びその塩等)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸メチルアミド及びその塩、トランス−4−(p−メトキシベンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸及びその塩、トランス−4−グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸及びその塩等)などが挙げられる。エラグ酸誘導体としては、例えば、エラジタンニン、ヴァロン酸ジラクトンまたはガラジルジラクトンなどが挙げられる。レゾルシノール誘導体としては、例えば、レゾルシノール、ルシノールまたはそれらの塩などが挙げられる。
【0033】
抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン、グリチルリチン酸塩(例えばグリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、等)、グアイアズレン、カルベノキソロン二ナトリウム、アラントイン、塩酸ジフェンヒドラミン、ブフェキサマクもしくはブロムフェナクナトリウムなどの非ステロイド性抗炎症剤、酢酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロンもしくはデキサメタゾンなどのステロイド性抗炎症剤、甘草エキス、シコンエキス、エイジツまたはl−メントールなどが挙げられる。
【0034】
ホルモン剤としては、例えばオキシトシン、コルチコトロピン、バソプレッシン、セクレチン、ガストリン、カルシトニン、エチニルエストラジオールなどが挙げられる。
【0035】
ビタミン剤としては、例えば、ビタミンA及びその誘導体(例えば、レチノール、ビタミンAパルミテートなど)、ビタミンC及びその誘導体(例えば、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウなど)、ビタミンD及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体(例えばトコフェリルリン酸ナトリウム、コハク酸トコフェロールカルシウムなど)、ビタミンB6及びその誘導体またはニコチン酸およびその誘導体(例えば、ニコチン酸アミドなど)などが挙げられる。
【0036】
本発明に係る保湿剤の形態としては、例えば、液剤、ローション剤、クリーム剤、喉や鼻腔の噴霧剤、乳液、化粧水、美容液、ジェル剤、またはパック剤などの形態が挙げられる。また、ボディーローション、洗顔料などのスキンケア製剤、メーキャップ製剤、ヘアケア製剤、ハンドソープ、石鹸、手指消毒剤または入浴剤なども挙げられる。
【0037】
使用方法
本発明に係る保湿剤は、1日に適量(例えば細胞水に換算して10〜100質量%)を皮膚に塗布又は噴霧などすればよい。これにより皮膚の水分を保つことができる。本発明の保湿剤の使用対象としては、健康な肌(皮膚)を有する人の他、乾燥肌の人、アトピー性皮膚炎のような乾燥症状を示す皮膚疾患の人も好適である。
実施例
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
春ウコンの根茎(生ウコン根茎)を厚さ約3mmにスライスし、この切断片20Kgを真空蒸留装置(F・E・C社製、商品名「真空乾燥機 FED−50」)に入れ、真空圧力−95KPa、蒸発温度約35℃、真空釜加熱温度105℃の条件で、抽出された画分15Kgをウコン根茎の細胞水とした。このウコン根茎の細胞水を、保湿剤として使用した。
【0039】
ヒト肌に対する保湿試験
方法
クロスオーバー(交差)試験を行なった。試験を行う前に、被験候補者に試験の説明をし、同意を得られた者(20〜46歳の健康な成人女性46名)を被験者とした。あらかじめ小部分に被験剤を塗布し、変化のないことを確認後、試験した。被験剤は、実施例1で調製した保湿剤を使用した。
【0040】
試験1
まず、被験者の左腕(上腕部、0.5×2.0cm)に被験剤を塗布し、後述の方法により皮膚水分量を測定した(1回目)。被験剤塗布から10〜15分後に、同じ左腕(上腕部、0.5×2.0cm)に水道水を塗布し、後述の方法により皮膚水分量を測定した(2回目)。なお、水道水は、被験剤を塗布した箇所の横に、該箇所と重ならないようにして、塗布した。
【0041】
試験1を行なった10〜15分後、同じ被験者群の右腕に、被験剤と水道水を塗布する順番を変えて塗布し、皮膚水分量を測定した。
試験2
まず、被験者の右腕(上腕部、0.5×2.0cm)に水道水を塗布し、後述の方法により皮膚水分量を測定した(1回目)。水道水塗布から10〜15分後に、同じ右腕(上腕部、0.5×2.0cm)に被験剤を塗布し、後述の方法により皮膚水分量を測定した(2回目)。なお、被験剤は、水道水を塗布した箇所の横に、該箇所と重ならないようにして、塗布した。
【0042】
試験1及び2においては、上記被験剤又は水道水を塗布直後及び塗布10分後の皮膚水分量を肌水分計(トリプルセンス、株式会社モリテックス)を用いて、以下の手順(1)〜(4)に従って測定した。
(1)平常時の腕の皮膚水分量を肌水分計にて5回測定した。5回の測定値の平均値を被験剤使用前データ(使用前水分値)とした。
(2)水道水または被験剤を塗布し、肌表面に水滴がなくなるまで手でのばしてなじませた。
(3)上記(2)直後に、水道水または被験剤を塗布した部位の皮膚水分量をそれぞれ5回測定した。各平均値をそれぞれの使用直後データ(使用直後水分値)とした。
(4)水道水または被験剤塗布後10分後に腕の皮膚水分量をそれぞれ5回測定した。各平均値をそれぞれの使用10分後データ(10分後水分値)とした。
【0043】
保湿効果評価のためのデータの処理は、以下の式による計算にて行った。
保湿効果(使用直後)=(使用直後水分値)/(使用前水分値)
保湿効果(10分後)=(10分後水分値)/(使用前水分値)
【0044】
結果
表1に、試験1の結果を示す。すなわち表1は、実施例1で調製した保湿剤を46名の被験者に塗布した場合の保湿効果(1回目)、及び続いて水道水を塗布した場合の保湿効果(2回目)を示す。
表2に、試験2の結果を示す。すなわち表2は、試験1と同じ被験者群(46名)にまず水道水を塗布した場合の保湿効果(1回目)、及び続いて保湿剤を塗布した保湿効果(2回目)を示す。
保湿効果(10分後)が1未満であることは、保湿剤(又は水道水)使用前と比較して使用(塗布)後10分後に肌水分量が低下したことを意味し、保湿効果(10分後)が1より大きいことは、保湿剤(又は水道水)使用前と比較して使用(塗布)後10分後に肌水分量が増加したことを意味する。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表1及び2より、実施例1で調製した保湿剤を塗布すると、水道水を塗布するより皮膚水分量を高く保持できることが分った。
【実施例2】
【0048】
実施例1で調製した保湿剤(ウコン根茎の細胞水)の成分を分析した。
実施例1で調製したウコン根茎の細胞水は、無色であったが、水層と疎水(油)層に分かれた。
【0049】
ウコン根茎を上記F・E・C社の装置で、上記条件で減圧蒸留すると、蒸留が進むにつれて液相の組成と平衡状態にある蒸気相の組成が同じになることがあり、それぞれの成分に完全分離できない現象が生じたと考えられた。すなわち共沸混合物として、水成分と精油成分との混合物が得られたものと予測された。蒸発水の水層について高速液体クロマトグラフ法で分析した結果、クルクミンは検出限界(0.0001g/試料100g)以下であった。また精油成分と予測された層(疎水層)をエチルアルコールで抽出後、モノテルペン類及びセスキテルペン類を分析したが、同様に検出限界(0.0001g/試料100g)以下であった。当該精油成分層はかすかな芳香を有する無色の液体で、純水とは交じり合わず分離するが、エチルアルコールに溶解する精油の特徴を示した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る保湿剤は、化粧品、医薬部外品または医薬品として、皮膚(頭皮、毛髪を含む)に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウコン根茎の細胞水を含むことを特徴とする保湿剤。
【請求項2】
ウコン根茎の細胞水が、生ウコン根茎を減圧蒸留することにより得られる蒸留画分である請求項1に記載の保湿剤。
【請求項3】
蒸留画分が、温度25〜40℃かつ圧力−98〜−93kPaの条件で蒸留される画分である請求項2に記載の保湿剤。
【請求項4】
ウコン根茎の細胞水が、生ウコン根茎をセルラーゼ、ペクチナーゼ、キチナーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、グルコシダーゼ、及びセロビアーゼから選択される少なくとも1種の酵素で処理する工程を含む方法により得られるものである請求項1に記載の保湿剤。
【請求項5】
ウコン根茎が、春ウコンの根茎である請求項1〜4のいずれかに記載の保湿剤。

【公開番号】特開2011−16767(P2011−16767A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163478(P2009−163478)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(599125249)学校法人武庫川学院 (24)
【出願人】(504017256)株式会社F・E・C (4)
【Fターム(参考)】