説明

保管庫及び光触媒装置

【課題】 湿度管理だけでなく細菌や臭気も除去できる機能性の高い保管庫を得る。
【解決手段】 物品を収納する気密性の高い保管室1に気密性の高い気室2を、二つの連絡口6,7によって連通させて隣設させた保管庫を構成する。気室2には可逆的な吸放湿機能を有する除湿器を備えた吸着除湿装置4と、光触媒装置10とを併設する。吸着除湿装置4は、連絡口7から保管室1の空気を吸込み除湿器を通して除湿し、連絡口6から保管室1に吹出す除湿運転と、気室2外の空気を吸込み、除湿器を再生して気室2外へ排気する再生運転を交番して行う。光触媒装置10は、連絡口7から保管室1の空気を吸込み、紫外線が照射される光触媒フィルタを通して殺菌・脱臭し、連絡口6から保管室1に吹出す運転を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、薬品、皮革品等の各種の物品を乾燥状態に保管する保管庫及び保管庫に用いる光触媒によって空気の殺菌・脱臭を行う光触媒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品その他の物品を乾燥状態に保管する保管庫は大きく分けて、塩化カルシウムやペレット状のシリカゲル等の乾燥剤に庫内の湿気を吸湿させて庫内を乾燥雰囲気にするものと、吸湿材を備えた吸着除湿装置に庫内の空気を循環させて吸湿材に湿気を吸湿させて庫内を乾燥雰囲気にするものがある。吸湿材として天然ゼオライトやシリカゲルを使つたものは、水も溜まらず、吸湿した吸湿材に熱を加えて放湿させることで再生できるので、広く採用されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平4−114714号公報
【特許文献2】特開2003−93833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の保管庫は、食品その他の物品を乾燥状態に保管するものである。可逆的な吸放湿機能を持つ吸湿材を備えた吸着除湿装置により庫内を低湿にするものでは、例えば食品では、食品中に含まれる含水比率は、約10wt%以下の安定した状態で保管することができる。即ち、カビの発生や生育、繁殖しない環境下での物品の保管が可能である。しかしながら、湿度管理だけの保管庫では、種々の物品の保管には不向きである。湿度管理だけでなく細菌や臭気も除去できる機能性のより高い保管庫の開発が課題である。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、湿度管理だけでなく細菌や臭気も除去できる機能性の高い保管庫を得ることであり、光触媒によって空気の殺菌・脱臭を行う、保管庫に簡単に設けることができる光触媒装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、以下の手段を採用する。物品を収納する気密性の高い保管室に気密性の高い気室を、二つの連絡口によって連通させて隣設させて保管庫を構成する。その気室には可逆的な吸放湿機能を有する除湿器を備えた吸着除湿装置と、光触媒装置とを併設する。吸着除湿装置は、連絡口の一方から保管室の空気を吸込み除湿器を通して除湿し、他方の連絡口から同保管室に吹出す除湿運転と、気室外の空気を吸込み、除湿器を再生して同気室外へ排気する再生運転を交番して行うようにする。光触媒装置は、連絡口の一方から保管室の空気を吸込み、紫外線が照射される光触媒フィルタを通して殺菌・脱臭し、他方の連絡口から保管室に吹出す運転を行うようにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、気室に設けられた吸着除湿装置により、保管室は乾燥雰囲気におかれ、光触媒装置により保管室の空気の殺菌・脱臭が行われる。即ち、湿度管理だけでなく細菌や臭気も除去できる機能性の高い保管庫が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の保管庫は、食品、薬品、カメラや皮革品等の各種の物品を乾燥雰囲気及び滅菌・脱臭雰囲気で保管するものである。物品を収納する気密性の高い扉付きの保管室の下に気密性の高い気室を、対角線上に設けた二つの連絡口によって連通させて隣設させ保管庫の本体を構成する。気室には可逆的な吸放湿機能を有する除湿器と、空気を加熱する加熱手段と送風機を備えた吸着除湿装置と、光触媒装置とを併設する。吸着除湿装置は、送風機により連絡口の一方から保管室の空気を吸込み除湿器を通して除湿し、他方の連絡口から同保管室に吹出す除湿運転と、気室外の空気を送風機により吸込み、加熱手段で加熱した空気を除湿器に通し、除湿器を再生して気室外へ排気する再生運転を交番して行う。光触媒装置は、風洞構造の風胴に一方向の送風を行う送風機と、紫外線発光部と、紫外線発光部の紫外線を照射する光触媒フィルタとを所定の間隔をおいて設けた通気可能な光触媒である。光触媒装置の構成部材は、紫外線に対する耐候性を持つ金属や樹脂等の無機質系材料で構成され、連絡口の一方から保管室の空気を送風機により風洞に吸込み、紫外線が照射される光触媒フィルタを通して殺菌・脱臭し、他方の連絡口から保管室に吹出す運転を行う。この保管庫によれば、物品が収められた保管室は、吸着除湿装置の運転により乾燥雰囲気に維持され、光触媒装置の運転により滅菌・脱臭雰囲気におかれる。即ち、湿度管理だけでなく細菌や臭気も除去できる機能性の高い保管庫となる。
【0009】
実施の形態1.
図1〜図6によって示す本実施の形態は、乾燥、滅菌、脱臭雰囲気で物品を保管する保管庫に関するものである。図1は、保管庫の全体を示す透視斜視図、図2は、吸着除湿装置の断面図、図3は、気室の斜視図、図4は、光触媒装置の斜視図、図5は、光触媒装置の断面図、図6は、保管庫の運転形態を示すフローチャートである。
【0010】
この保管庫は、食品、薬品、皮革品等の各種の物品を乾燥雰囲気及び滅菌・脱臭雰囲気で保管するものである。保管庫の本体は、物品を収納する気密性の高い保管室1と、保管室1の空気を加工する気密性の高い気室2とにより構成されている。保管室1は、前面に開閉扉を備えた箱構造に構成され、扉との合わせ面には気密保持のためのガスケット3が設けられている。気室2も気密構造の箱体で、保管室1の下(横でもよい)に一体化されている。気室2には、その前部に吸着除湿装置4が設けられ、吸着除湿装置4の背後の気室2は、隔壁5により左右に二分されている。隔壁5で隔てられた左右の気室2と保管室1とは、対角線上に設けられた二つの連絡口6,7によって連通されている(図1参照)。気室2の前面の左右には吸着除湿装置4に連絡する外部開口8が開けられている。気室2には隔壁5に開設された取付窓9に図4,5に示す光触媒装置10が隔壁5を跨ぐように設けられている。
【0011】
吸着除湿装置4は、図2に示すように空気を通す直線状の多数の通路を持ち、可逆的な吸放湿機能を備えた除湿器11と、除湿器11の通路に通風させる送風機12と、除湿器11に通す空気を昇温させる加熱手段13とを直列状に組込んだ風路を、六面体の外殻内に構成したものである。吸着除湿装置4の風路の吸込口と吹出口はそれぞれ隣接する外殻の二面に対形態に開口されている。外殻内には一方の吸込口から風路を経て一方の吹出口に至る除湿経路と、他方の吸込口から風路を経て他方の吹出口に至る再生経路が設けられている。
【0012】
除湿経路と再生経路の各吸込口と各吹出口は開閉ダンパ機構14によって開閉される。開閉ダンパ機構14は、ステッピングモーター15の回転軸上に、吸込口開閉ブレード16と吹出口開閉ブレード17を取付けた構成で、再生経路を開通させたときには、除湿経路は遮断し、除湿経路を開通させたときには、再生経路は遮断する。再生経路の吸込口と吹出口はそれぞれ気室2の前面に開けられた外部開口8に気密状態に接続されている。開閉ダンパ機構14、送風機12、加熱手段13は、内蔵された制御回路18によって運転が制御される。制御回路18には除湿経路に設けられた湿度センサ19が繋がれ、湿度情報が取り込まれる。
【0013】
光触媒装置10は、図4,5に示すように風洞構造20の風胴に一方向の送風を行う送風機21と、紫外線発光部22と、紫外線発光部22の紫外線を照射する光触媒フィルタ23とを所定の間隔をおいて直列状に設けた通気可能な光触媒である。風洞構造20の中間に取付フランジ24が設けられていて、この取付フランジ24により、気室2の隔壁5の取付窓9に取付けられている。紫外線発光部22は複数設けられ、その各紫外線発光部22は、紫外線発光ダイオードをフレーム25内に直線状に複数並べて構成されている。これにより、光触媒フィルタ23に紫外線を均一に照射することができる。光触媒フィルタ23は、樹脂不織布26に酸化チタン及びアパタイトを添着した構成で、紫外線の照射を切れ目なく樹脂不織布26に当てることができる。
【0014】
光触媒装置10の構成部材は、紫外線に対する耐候性を持つ金属や樹脂等の無機質系材料で構成され、連絡口7から保管室1の空気を送風機21により風洞に吸込み、紫外線が照射される光触媒フィルタ23を通して殺菌・脱臭し、連絡口6から保管室1に吹出す運転を行う。連絡口6,7は対角線上に設けられているため保管室1の空気は滞ることなく円滑に加工される。即ち、光触媒フィルタ23に添着している酸化チタンにより、最も酸化力が強いとされる活性酸素種である原子状酸素(低温下でも酸化できる最も強い酸化力を持つ)ができ、光触媒フィルタ23に酸化チタンとともに添着しているアパタイトに吸着した有機物(炭素と水素の化合物)である臭気を酸化分解し炭酸ガスと水にする。細菌や病原菌も有機物であり、それぞれの表皮を酸化分解して死滅させることができる。
【0015】
紫外線発光ダイオードは、ピーク波長380nmの紫外線を発光するもので、光触媒フィルタ23との間隔は、紫外線発光ダイオードの光量(光強度)を低下させず、光触媒フィルタ23に万遍なく照射でき量子収率を維持できるものとされる。具体的には、紫外線発光ダイオードの光強度0.5mW/cm、紫外線発光ダイオードの間隔は、20mm、紫外線発光ダイオードと光触媒フィルタ23との間隔は、15mmほどに設定されている。なお、光触媒フィルタ23は、シリカゲルを主体にした粒子状体にアパタイト及び酸化チタンを添着させたものでもよい。
【0016】
この保管庫によれば、物品が収められた保管室1は、吸着除湿装置4の交番運転により乾燥雰囲気に維持され、光触媒装置10の運転により滅菌・脱臭雰囲気におかれる。即ち、湿度管理だけでなく細菌や臭気も除去できる機能性の高い保管庫である。具体的な保管庫の運転については、例えば図6のフローチャートに示すように行われる。
【0017】
制御回路18は、電源がONされると(ステップ♯1)、光触媒装置10を運転させ(ステップ♯2)、湿度センサ19の出力値を取込み、湿度が例えば30%を超えているか否かを判定する。(ステップ♯3)。30%を超えていれば吸着除湿装置4に再生経路による再生運転させ(ステップ♯4)、光触媒装置10をOFFさせる(ステップ♯5)。ステップ♯4で除湿器11の再生を行ったら除湿器11を冷却し(ステップ♯6)、除湿経路による除湿運転を行い(ステップ♯7)、ステップ♯8へ進む。ステップ♯8では湿度センサ19の出力値が例えば25%未満か否かを判定し、未満であれば、ステップ♯2に戻る処理を行い、未満でなければステップ♯4に戻り、吸着除湿装置4に再生運転と除湿運転を交番させる。これにより、保管室1は、乾燥雰囲気を維持しながら効果的に殺菌・脱臭が行われ、滅菌・脱臭雰囲気におかれる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
上述した保管庫は、ショーケースや美術・工芸品の展示ケースなど幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】保管庫の全体を示す透視斜視図である。(実施の形態1)
【図2】吸着除湿装置の断面図である。(実施の形態1)
【図3】気室の斜視図である。(実施の形態1)
【図4】光触媒装置の斜視図である。(実施の形態1)
【図5】光触媒装置の断面図である。(実施の形態1)
【図6】保管庫の運転形態を示すフローチャートである。(実施の形態1)
【符号の説明】
【0020】
1 保管室、 2 気室、 4 吸着除湿装置、 6,7 連絡口、 10 光触媒装置、 11 除湿器、 12 送風機、 13 加熱手段、 18 制御回路、 19 湿度センサ、 20 風洞構造、 21 送風機、 22 紫外線発光部、 23 光触媒フィルタ、 25 フレーム、 26 樹脂不織布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納する気密性の高い保管室に気密性の高い気室を、二つの連絡口によって連通させて隣設させた保管庫を構成する。前記気室には可逆的な吸放湿機能を有する除湿器を備えた吸着除湿装置と、光触媒装置とを併設する。その吸着除湿装置は、前記連絡口の一方から前記保管室の空気を吸込み前記除湿器を通して除湿し、前記他方の連絡口から同保管室に吹出す除湿運転と、前記気室外の空気を吸込み、前記除湿器を再生して同気室外へ排気する再生運転を交番して行う。前記光触媒装置は、前記連絡口の一方から前記保管室の空気を吸込み、紫外線が照射される光触媒フィルタを通して殺菌・脱臭し、前記他方の連絡口から同保管室に吹出す運転を行う。
【請求項2】
請求項1に記載の保管庫であって、光触媒装置は、風洞構造の風胴に一方向の送風を行う送風機と、紫外線発光部、この紫外線発光部の紫外線が照射される光触媒フィルタで構成される通気可能な光触媒であり、その構成部材は紫外線に対する耐候性を持つ無機質系材料で構成されている保管庫。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の保管庫であって、二つの連絡口を対角線上に設けた保管庫。
【請求項4】
風洞構造の風胴に一方向の送風を行う送風機と、紫外線発光部、この紫外線発光部の紫外線が照射される光触媒フィルタで構成される通気可能な光触媒を設け、構成部材を紫外線に対する耐候性を持つ無機質系材料で構成した光触媒装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光触媒装置であって、紫外線発光部を複数設け、その各紫外線発光部は、紫外線発光ダイオードをフレーム内に直線状に複数並べた構成である光触媒装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5のいずれかに記載の光触媒装置であって、光触媒フィルタを、不織布に酸化チタン及びアパタイトを添着して構成した光触媒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−236749(P2007−236749A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65541(P2006−65541)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】