説明

保護膜形成用フィルムおよび半導体チップの製造方法

【課題】 半導体ウエハ、チップに特別な処理を施すことなく、得られる半導体装置にゲッタリング機能を付与すること。
【解決手段】 本発明に係る保護膜形成用フィルムは、エネルギー線重合性化合物(A)およびゲッタリング剤(B)を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ裏面に効率良くゲッタリング効果を有する保護膜を形成でき、かつチップの製造効率の向上が可能な保護膜形成用フィルムに関する。特にいわゆるフェースダウン(face down)方式で実装される半導体チップの製造に用いられる保護膜形成用フィルムに関する。また、本発明は、上記保護膜形成用フィルムを用いた半導体チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、素子の小型化の要請から、半導体チップの厚さを薄くすることが要望されている。半導体ウエハは表面に回路が形成された後、裏面研削により所定の厚さまで研削される。したがって、素子の小型化のためには、裏面研削によりウエハをさらに薄く研削することになる。しかし、ウエハの厚さが薄くなるにしたがい、ウエハ強度は低下し、僅かな衝撃によってもウエハが破損することがある。ウエハ破損の要因としては、裏面研削時に使用したグラインダーの切削痕や酸化被膜などが複合した「破砕層」が主因であると考えられている。
【0003】
破砕層は、研削されたウエハ表面の微細な凹凸であり、シリコンの多結晶またはシリコンが少量の酸素により酸化された状態にあり、格子欠陥も包含されていると考えられている。表面の凹凸や組成変化等によるストレスのため、僅かな衝撃によってもひび割れを起こし、ウエハの破損を招くことがある。このため、裏面研削終了後には、破砕層を除去するため、裏面にケミカルエッチングやプラズマエッチングなどを施すことが一般化している。破砕層を除去することで、ウエハの強度は向上し、極薄にまで研削されたウエハであっても、良好なハンドリング性が維持される。
【0004】
しかし、破砕層を除去することで、得られるウエハ、チップの金属に対する耐汚染性が低下することが懸念されている。
【0005】
半導体ウエハは、回路の形成時、裏面研削時および実装時には、種々の部材と接触する。この際に、これら他の部材から銅などの金属が放出され、ウエハが金属汚染を受けることがある。不純物金属はウエハ内に蓄積され、IRリフローなどの加熱条件下ではイオン化し、ウエハ内を移動することがある。そして、回路表面に到達した金属イオンは、製品の電気的動作を阻害し誤作動の原因となる。また、回路表面に到達した金属イオンは、回路面で金属を生成することがある(これらはマイグレーションと呼ばれることがある)。特に配線が微細化されている半導体ウエハ表面で金属が生成すると、回路を短絡し、製品の歩留まりが低下する。
【0006】
一方、破砕層は、上記のように、微細な凹凸であり、シリコンの多結晶またはシリコンが少量の酸素により酸化された状態にあり、格子欠陥も包含されていると考えられ、これらの組成、構造の不均一性に起因して、前述の不純物金属を捕捉しやすく、金属汚染の影響を低減する作用があると考えられている。このような破砕層の機能はゲッタリング機能とも呼ばれている。
【0007】
このように、ウエハの裏面研削終了後、破砕層を除去することで、ウエハの強度は向上するものの、ゲッタリング機能が損なわれ、製品歩留まりが低下する。このため、破砕層を除去後の半導体ウエハ、チップに種々の処理を行うことで、ゲッタリング機能を付与する技術が提案されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−277116号公報
【特許文献2】特開2007−242713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1,2のように、半導体ウエハ、チップにゲッタリング機能を付与するための処理を施すことは、工程数が増加し、プロセスの煩雑化、コストの上昇を招く。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、工程数が増加したり、プロセスが煩雑化するような特別な処理を施すことなく、得られる半導体装置にゲッタリング機能を付与することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題の解決を目的として鋭意研究した結果、半導体チップの裏面に形成される保護膜に着目するに至った。半導体チップの裏面には、チップを保護し、また品番等を印字するために、保護膜が形成される。本発明者らは、この保護膜にゲッタリング性能を付与することで、特殊な付加工程なしに、半導体装置内にゲッタリング機能を導入できることを着想し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明は、以下の要旨を含む。
(1)エネルギー線重合性化合物(A)およびゲッタリング剤(B)を含有する保護膜形成用フィルム。
【0013】
(2)下記により定義されるゲッタリング剤(B)の銅イオン吸着能が30%以上である(1)に記載の保護膜形成用フィルム:
ゲッタリング剤1gを、銅イオン濃度が3ppmの塩化銅水溶液50gに投入し、121℃、2気圧下、24時間放置した後の該銅イオン水溶液の銅イオン濃度を測定し、
銅イオン吸着能=(3ppm−残留銅イオン濃度(ppm))×100/3ppmより銅イオン吸着能を求める。
【0014】
(3)ゲッタリング剤(B)が、重金属不活性化剤(B1)、有機キレート剤(B2)および銅イオン捕捉金属化合物(B3)からなる群から選ばれる(1)または(2)に記載の保護膜形成用フィルム。
【0015】
(4)さらに着色剤(C)を含有する(1)〜(3)の何れかに記載の保護膜形成用フィルム。
【0016】
(5)該保護膜形成用フィルムを構成する全固形分100質量部あたりゲッタリング剤(B)を1〜35質量部含有する(1)〜(4)の何れかに記載の保護膜形成用フィルム。
【0017】
(6)表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面またはチップの裏面に保護膜を形成するために用いる(1)〜(5)の何れかに記載の保護膜形成用フィルム。
【0018】
(7)剥離シートと、該剥離シートの剥離面上に形成された(1)〜(5)の何れかに記載の保護膜形成用フィルムとを有する、保護膜形成用シート。
【0019】
(8)表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、(1)〜(5)の何れかに記載の保護膜形成用フィルムを貼付し、該保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して、半導体ウエハ裏面に保護膜を有する半導体チップを得る半導体チップの製造方法。
【0020】
(9)表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、請求項7に記載の保護膜形成用シートの保護膜形成用フィルムを貼付し、以下の工程(1)〜(3)を任意の順で行う(8)に記載の半導体チップの製造方法:
工程(1):保護膜形成用フィルムと剥離シートとを剥離、
工程(2):保護膜形成用フィルムをエネルギー線により硬化、
工程(3):半導体ウエハおよび保護膜形成用フィルムをダイシング。
【0021】
(10)該半導体ウエハが、裏面研削後、裏面研削により生じた破砕層を厚み50nm以下にまで低減されたものである(8)または(9)に記載の半導体チップの製造方法。
【0022】
(11)該保護膜形成用フィルムの硬化膜が、半導体チップの保護膜である(8)〜(10)の何れかに記載の半導体チップの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
半導体チップ裏面に保護膜を形成する際に、本発明に係る保護膜形成用フィルムを用いることで、半導体ウエハ、チップに特別な処理を施すことなく、得られる半導体装置にゲッタリング機能を導入することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について、その最良の形態も含めてさらに具体的に説明する。本発明に係る保護膜形成用フィルムは、エネルギー線重合性化合物(A)およびゲッタリング剤(B)を含有する。該保護膜形成用フィルムは、通常は剥離シート上に剥離可能に形成され、積層品である保護膜形成用シートとして使用される。以下、本発明の保護膜形成用フィルムおよび、剥離シートと保護膜形成用フィルムとの積層品である保護膜形成用シート、ならびにこれらの使用方法について、説明する。
【0025】
(保護膜形成用フィルム)
保護膜形成用フィルムは、エネルギー線重合性化合物(A)およびゲッタリング剤(B)を含むフィルムである。
【0026】
(A)エネルギー線重合性化合物
エネルギー線重合性化合物(A)は、エネルギー線重合性基を含み、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する。このようなエネルギー線重合性化合物(A)として具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジぺンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレートおよびイタコン酸オリゴマーなどのアクリレート系化合物が挙げられる。このような化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有し、通常は、重量平均分子量が100〜30000、好ましくは300〜10000程度である。エネルギー線重合性化合物(A)の配合量は、特に限定はされないが、保護膜形成用フィルムを構成する全固形分100質量部に対して、1〜50質量部程度の割合で用いることが好ましい。
【0027】
エネルギー線重合性化合物(A)として、バインダーポリマーの主鎖または側鎖に、エネルギー線重合性基が結合されてなるエネルギー線硬化型重合体を用いてもよい。このようなエネルギー線硬化型重合体は、後述するバインダーポリマーとしての機能と、エネルギー線重合性化合物としての機能を兼ね備える。
【0028】
エネルギー線硬化型重合体の主骨格は特に限定はされず、バインダーポリマーとして汎用されているアクリル系重合体であってもよく、またエステル型、エーテル型の何れであっても良いが、合成および物性の制御が容易であることから、アクリル系重合体を主骨格とすることが特に好ましい。
【0029】
エネルギー線硬化型重合体の主鎖または側鎖に結合するエネルギー線重合性基は、たとえばエネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合を含む基であり、具体的には(メタ)アクリロイル基等を例示することができる。エネルギー線重合性基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基を介してエネルギー線硬化型重合体に結合していてもよい。
【0030】
エネルギー線重合性基が結合されたエネルギー線硬化型重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。また、エネルギー線硬化型重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−60〜50℃、さらに好ましくは−50〜40℃、特に好ましくは−40〜30℃の範囲にある。
【0031】
エネルギー線硬化型重合体は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有するアクリル系重合体と、該官能基と反応する置換基とエネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を1分子毎に1〜5個を有する重合性基含有化合物とを反応させて得られる。
【0032】
重合性基含有化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0033】
アクリル系重合体は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーまたはその誘導体と、これと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とからなる共重合体であることが好ましい。
【0034】
ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーまたはその誘導体としては、たとえば、ヒドロキシル基を有する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸;エポキシ基を有するグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどが挙げられる。
【0035】
上記モノマーと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;環状骨格を有する(メタ)アクリレート、例えばシクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イミドアクリレートなどが挙げられる。また、上記アクリル系重合体には、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルアセテートなどが共重合されていてもよい。
【0036】
エネルギー線硬化型重合体を使用する場合であっても、前記したエネルギー線重合性化合物を併用してもよく、また後述するバインダーポリマー成分を併用してもよい。
【0037】
保護膜形成用フィルムにエネルギー線硬化性を付与することで、保護膜形成用フィルムを簡便かつ短時間で硬化でき、保護膜付チップの生産効率が向上する。従来、チップ用の保護膜は、一般にエポキシ樹脂などの熱硬化樹脂により形成されていたが、熱硬化樹脂の硬化温度は200℃を超え、また硬化時間は2時間程度を要しているため、生産効率向上の障害となっていた。しかし、エネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムは、エネルギー線照射により短時間で硬化するため、簡便に保護膜を形成でき、生産効率の向上に寄与しうる。
【0038】
(B)ゲッタリング剤
ゲッタリング剤(B)は、銅イオンなどの金属イオンを捕捉する作用を有する限り特に限定はされないが、好ましくは重金属不活性化剤(B1)、有機キレート剤(B2)および銅イオン捕捉金属化合物(B3)からなる群から選ばれる少なくとも1種が用いられる。保護膜形成用フィルムにゲッタリング剤(B)を配合することで、保護膜形成用フィルムを硬化してなる保護膜にはゲッタリング性能が付与され、半導体装置内にゲッタリング機能が導入される。
【0039】
(B1)重金属不活性化剤
重金属不活性化剤は、触媒残渣などの金属によって、プラスチックが劣化することを防止するために、各種のプラスチックに少量配合される添加剤である。重金属不活性化剤は、金属成分を捕捉することで、その作用を軽減しプラスチックの劣化を防止していると考えられている。このような重金属不活性化剤としては、無機系あるいは有機系の各種不活性化剤が知られているが、本発明では、有機系重金属不活性化剤を使用することが好ましい。有機系重金属不活性化剤は、保護膜形成用フィルム中における分散性に優れる。
【0040】
このような重金属不活性化剤としては、特に分子の一部に下記の構造を有する化合物が好ましく使用される。
【化1】

【0041】
上記式において、Rは、水素、またはヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素骨格であり、特に窒素原子および/または酸素原子を含有する炭化水素骨格であることが好ましい。
【0042】
このような重金属不活性化剤の特に好ましい例としては、下記化合物があげられる。
3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール(ADEKA社製、CDA-1、CAS No. 36411-52-6)
【化2】

【0043】
デカメチレンジカルボキシジサリチロイルヒドラジド(ADEKA社製、CDA-6、CAS No.63245-38-5)
【化3】

【0044】
(B2)有機キレート剤
有機キレート剤(B2)は、特に限定されないが、多価カルボン酸を官能基として有し、その酸価が100〜600mg/gであることが好ましく、260〜330mg/gであることがより好ましい。有機キレート剤(B2)の酸価が100mg/gよりも小さいと、目的とするゲッタリング機能が不十分であり、600mg/gよりも大きいと塩基系熱硬化剤と相互作用を起こす場合がある。
【0045】
また、有機キレート剤(B2)の示差走査熱分析(TG/DTA)による質量減少開始温度は、190℃以上であることが好ましく、196℃以上がより好ましい。有機キレート剤(B2)の示差走査熱分析(TG/DTA)による質量減少開始温度が190℃より低いと、半導体装置の耐IRリフロー性が低下することがある。
【0046】
(B3)銅イオン捕捉金属化合物
銅イオン捕捉金属化合物(B3)は、銅イオンを捕捉する効果がある。たとえばアンチモン、ビスマス、マグネシウム、アルミニウム等の酸化物、水酸化物、硝酸塩および炭酸塩が挙げられる。これらは少量で効果が得られる点で好ましい。その例として、好ましくは、アンチモン酸化物、ビスマス酸化物、およびこれらの混合物、ならびにマグネシウム・アルミニウム系酸化物であるハイドロタルサイトおよびその焼成物が挙げられる。なお、ハイドロタルサイト中のAlは、Cr またはFeに置換されていてもよい。
【0047】
ゲッタリング剤(B)は、上記の1種単独でまたは2種以上混合して使用することができる。また、ゲッタリング剤(B)の配合量は、保護膜形成用フィルムを構成する全固形分100質量部に対して、好ましくは1〜35質量部、さらに好ましくは10〜35質量部、特に好ましくは20〜30質量部である。ゲッタリング剤(B)の配合量が少なすぎる場合には、目的とするゲッタリング機能が不十分になり、配合量が多すぎる場合には、接着性能が損なわれることがある。
【0048】
このようなゲッタリング剤(B)を、半導体チップの保護膜に配合することで、半導体装置内にゲッタリング機能を導入できる。このため、ウエハ内に蓄積された不純物金属が、IRリフローなどの加熱条件下において、移動した場合であっても、保護膜中のゲッタリング剤(B)により捕捉されるため、マイグレーションが起こることはない。
【0049】
ゲッタリング剤(B)のゲッタリング機能は、たとえば下記の銅イオン吸着能により評価することができる。
【0050】
すなわち、超純水1リットルに関東化学社製塩化銅(II)二水和物0.805gを溶解し、さらに100倍に希釈して作成した銅イオン濃度が3ppmの塩化銅水溶液50gに、ゲッタリング剤1gを投入し、この水溶液を、121℃、2気圧下で、24時間放置した後に該銅イオン水溶液の銅イオン濃度(残留銅イオン濃度)を測定し、初期銅イオン濃度(3ppm)と、残留銅イオン濃度(ppm)とから、下記式により銅イオン吸着能を評価する。
【0051】
銅イオン吸着能(%)=(3ppm−残留銅イオン濃度(ppm))×100/3ppm
【0052】
銅イオン吸着能は、ゲッタリング剤に捕捉(吸着または吸収)された銅イオン量の比率を示し、銅イオン吸着能が高いほど、ゲッタリング機能が高いと考えられる。本発明で使用するゲッタリング剤(B)の銅イオン吸着能は、好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは95%以上である。
【0053】
また、ゲッタリング機能は、ゲッタリング剤単位質量当たりに吸着される銅イオンの吸着量(以下、「銅イオン吸着率」と呼ぶ)によっても評価することができる。具体的には、上記と同様にゲッタリング剤を銅イオン水溶液に投入し、下記式にて銅イオン吸着率を求める。
【0054】
銅イオン吸着率(%)=(3ppm−残留銅イオン濃度(ppm))×溶液量(g)×10−6×100/試料質量(g)
【0055】
本発明で使用するゲッタリング剤(B)の銅イオン吸着率は、好ましくは0.003%以上であり、さらに好ましくは0.01%以上、特に好ましくは0.013%以上である。
【0056】
ゲッタリング剤(B)は、一般に粒径が小さいほど、質量当たりの表面積がひろくなるため、不純物金属を捕捉しやすくなり、ゲッタリング機能が高くなる。また、一般に粒径が小さいほど、薄厚の保護膜形成用フィルムの形成は容易となる。したがって、本発明で使用するゲッタリング剤(B)の平均粒径は、好ましくは1nm〜30μm、さらに好ましくは2nm〜10μm、特に好ましくは3nm〜1μmの範囲にある。
【0057】
原材料の状態で粒子径が大きい場合は適当な方法(ボールミル、3本ロール等)によって、事前に粉砕してもよく、また他の成分との混合時に粉砕してもよい。
【0058】
なお、ゲッタリング剤(B)の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、100個の粒子から算術平均を求めている。粒形が球状でない場合には、最長径を粒径としている。
【0059】
(その他の成分)
保護膜形成用フィルムは、上記エネルギー線重合性化合物(A)およびゲッタリング剤(B)に加えて下記成分を含むことができる。
【0060】
(C)着色剤
保護膜形成用フィルムには、着色剤(C)を配合することができる。着色剤を配合することで、半導体装置を機器に組み込んだ際に、周囲の装置から発生する赤外線等による半導体装置の誤作動を防止することができ、また保護膜形成用フィルムを硬化して得た保護膜に、製品番号等を印字した際の文字の視認性が向上する。着色剤としては、有機または無機の顔料および染料が用いられる。これらの中でも電磁波や赤外線遮蔽性の点から黒色顔料が好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が用いられるが、これらに限定されることはない。半導体装置の信頼性を高める観点からは、カーボンブラックが特に好ましい。着色剤(C)の配合量は、保護膜形成用フィルムを構成する全固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜35質量部、さらに好ましくは0.5〜25質量部、特に好ましくは1〜15質量部である。
【0061】
(D)バインダーポリマー成分
保護膜形成用フィルムに十分な接着性および造膜性(シート加工性)を付与するためにバインダーポリマー成分(D)を配合してもよい。バインダーポリマー成分(D)としては、従来公知のアクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ウレタンポリマー、アクリルウレタンポリマー、シリコーンポリマー、ゴム系ポリマー等を用いることができる。
【0062】
バインダーポリマー成分(D)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。バインダーポリマー成分(D)の重量平均分子量が低過ぎると保護膜形成用フィルムと剥離シートとの粘着力が高くなり、保護膜形成用フィルムの転写不良が起こることがあり、高過ぎると保護膜形成用フィルムの接着性が低下し、ウエハ、チップ等に転写できなくなったり、あるいは転写後にチップ等から保護膜が剥離することがある。
【0063】
バインダーポリマー成分(D)として、アクリルポリマーが好ましく用いられる。アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−60〜50℃、さらに好ましくは−50〜40℃、特に好ましくは−40〜30℃の範囲にある。アクリルポリマーのガラス転移温度が低過ぎると保護膜形成用フィルムと剥離シートとの剥離力が大きくなって保護膜形成用フィルムの転写不良が起こることがあり、高過ぎると保護膜形成用フィルムの接着性が低下し、ウエハ、チップ等に転写できなくなったり、あるいは転写後にチップ等から保護膜が剥離することがある。
【0064】
上記アクリルポリマーを構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体が挙げられる。例えば、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;環状骨格を有する(メタ)アクリレート、例えばシクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどが挙げられ;水酸基を有するヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;その他、エポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中では、水酸基を有しているモノマーを重合して得られるアクリルポリマーが、他の成分との相溶性が良いため好ましい。また、上記アクリルポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどが共重合されていてもよい。
【0065】
バインダーポリマー成分(D)は、保護膜形成用フィルムを構成する固形分の合計100質量部に対して、通常3〜95質量部、好ましくは5〜90質量部、より好ましくは10〜50質量部の割合で含まれる。バインダーポリマー成分(D)の含有量が3質量部未満だと上記の効果が得られない可能性があり、95質量部を超えるとエネルギー線硬化性やゲッタリング性が相対的に低下する可能性がある。エネルギー線重合性化合物(A)として、前述したエネルギー線硬化型重合体を使用した場合には、エネルギー線硬化型重合体はバインダーポリマー成分としての機能も有する。したがって、その配合量は、エネルギー線硬化型重合体中に含まれるエネルギー線重合性基の量は、バインダーポリマーとしての機能を勘案した上で決定することが好ましい。
【0066】
(E)光重合開始剤
保護膜形成用フィルムは、前述したエネルギー線重合性化合物(A)(またはエネルギー線重合性基)を含有する。保護膜形成用フィルムの使用に際して、紫外線等のエネルギー線を照射して、エネルギー線重合性化合物(またはエネルギー線重合性基)を重合し、保護膜形成用フィルムを硬化させる。この際、保護膜形成用フィルム中に光重合開始剤(E)を含有させることで、重合硬化時間ならびに光線照射量を少なくすることができる。
【0067】
このような光重合開始剤(E)として具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、1,2−ジフェニルメタン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドおよびβ−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。光重合開始剤(E)は1種類単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
光重合開始剤(E)の配合割合は、エネルギー線重合性化合物(A)(またはエネルギー線重合性基)100質量部に対して0.1〜10質量部含まれることが好ましく、1〜5質量部含まれることがより好ましい。0.1質量部未満であると光重合の不足で満足な十分な硬度の保護膜が得られないことがあり、10質量部を超えると光重合に寄与しない残留物が生成し、保護膜形成用フィルムの硬化性が不十分となることがある。
【0069】
(F)カップリング剤
カップリング剤(F)は、保護膜形成用フィルムのチップに対する接着性、密着性を向上させるために用いてもよい。また、カップリング剤(F)を使用することで、保護膜形成用フィルムを硬化して得られる保護膜の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上することができる。
【0070】
カップリング剤(F)としては、シランカップリング剤が望ましい。このようなカップリング剤としてはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。これらの中でも、ビニル基を有するカップリング剤が好ましく用いられる。ビニル基を有するカップリング剤を用いることで、エネルギー線重合性化合物(A)の硬化物を含む保護膜のチップに対する接着性、密着性が向上する。
【0071】
カップリング剤(F)は、保護膜形成用フィルムを構成する固形分の合計100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部の割合で含まれる。カップリング剤(F)の含有量が0.1質量部未満だと上記の効果が得られない可能性があり、20質量部を超えるとアウトガスの原因となる可能性がある。
【0072】
(G)無機充填材
無機充填材(G)を保護膜形成用フィルムに配合することにより、硬化後の保護膜における熱膨張係数を調整することが可能となり、半導体チップに対して硬化後の保護膜の熱膨張係数を最適化することで半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、硬化後の保護膜の吸湿率を低減させることも可能となる。
【0073】
好ましい無機充填材としては、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられる。これらのなかでも、シリカフィラーが好ましい。上記無機充填材(G)は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。無機充填材(G)の含有量は、保護膜形成用フィルムを構成する全固形分100質量部に対して、通常1〜80質量部の範囲で調整が可能である。
【0074】
(H)熱可塑性樹脂
保護膜形成用フィルムには、熱可塑性樹脂(H)を配合してもよい。熱可塑性樹脂(H)は、硬化後の保護膜の可とう性を保持するために配合される。熱可塑性樹脂(H)としては、重量平均分子量が1000〜10万のものが好ましく、3000〜1万のものがさらに好ましい。上記範囲の熱可塑性樹脂(H)を含有することにより、半導体ウエハまたはチップへの保護膜形成用フィルムの転写時における剥離シートと保護膜形成用フィルムとの層間剥離を容易に行うことができ、さらに転写面に保護膜形成用フィルムが追従しボイドなどの発生を抑えることができる。
【0075】
熱可塑性樹脂(H)のガラス転移温度は、好ましくは−30〜150℃、さらに好ましくは−20〜120℃の範囲にある。熱可塑性樹脂(H)のガラス転移温度が低過ぎると保護膜形成用フィルムと剥離シートとの剥離力が大きくなって保護膜形成用フィルムの転写不良が起こることがあり、高過ぎると保護膜形成用フィルムとチップとの接着力が不十分となるおそれがある。
【0076】
熱可塑性樹脂(H)としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレンなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0077】
熱可塑性樹脂(H)は、保護膜形成用フィルムを構成する全固形分100質量部に対して、通常5〜50質量部の範囲で調整が可能である。熱可塑性樹脂(H)の含有量がこの範囲にあることにより、上記の効果を得ることができる。
【0078】
(I)架橋剤
バインダーポリマー成分(D)を用いた場合には、保護膜形成用フィルムの初期接着力および凝集力を調節するために、架橋剤を添加することもできる。架橋剤(I)としては有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物などが挙げられる。
【0079】
上記有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0080】
有機多価イソシアネート化合物としては、たとえば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネートおよびリジンイソシアネートが挙げられる。
【0081】
上記有機多価イミン化合物としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
【0082】
架橋剤(I)はバインダーポリマー成分(D)100質量部に対して通常0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部の比率で用いられる。
【0083】
(J)汎用添加剤
保護膜形成用フィルムには、上記の他に、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。各種添加剤としては、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0084】
さらに、保護膜形成用フィルムには、熱硬化性を付与するために、熱硬化性成分、熱硬化剤、硬化促進剤等が配合されていてもよい。保護膜形成用フィルムが熱硬化性を有する場合には、チップを接着するためのリフロー時に保護膜形成用フィルム中の熱硬化性成分が硬化するため、保護膜の耐熱性をさらに向上することができる。
【0085】
(保護膜形成用フィルムおよびシート)
上記のような各成分からなる保護膜形成用フィルムは、接着性とエネルギー線硬化性とを有し、未硬化状態では半導体ウエハ、チップ等に押圧することで容易に接着する。そしてエネルギー線硬化を経て最終的には耐衝撃性の高い保護膜を与えることができ、接着強度にも優れ、厳しい高温度高湿度条件下においても十分な保護機能を保持し得る。
【0086】
なお、保護膜形成用フィルムは単層構造であってもよく、また上記成分を含む層を1層以上含む限りにおいて多層構造であってもよい。さらに、保護膜形成用フィルムが、厚み方向に対してゲッタリング剤(B)の濃度勾配を有してもよい。
【0087】
保護膜形成用フィルムは、上記各成分を適宜の割合で、適当な溶媒中で混合してなる保護膜形成用フィルム用組成物を、適当な工程フィルム上に塗布乾燥して得られる。しかしながら、本発明の保護膜形成用フィルムは、通常は剥離シートに剥離可能に積層された保護膜形成用シートとして用いられる。したがって、保護膜形成用フィルムは、上記各成分からなる保護膜形成用フィルム用組成物を、剥離シート上に塗布乾燥して得ることが好ましい。また、剥離シートとは別の工程フィルム上に保護膜形成用フィルム用組成物を塗布、乾燥して成膜し、これを剥離シート上に転写してもよい。
【0088】
本発明に係る保護膜形成用シートは、上記保護膜形成用フィルムを剥離シート上に剥離可能に形成してなる。本発明に係る保護膜形成用フィルムおよびシートの形状は、テープ状、ラベル状などあらゆる形状をとり得る。
【0089】
剥離シートとしては、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどの透明フィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。また、これらを着色したフィルム、不透明フィルムなどを用いることができる。
【0090】
本発明の保護膜形成用シートにおいては、その使用に際して剥離シートを剥離し、保護膜形成用フィルムを半導体ウエハまたはチップに転写する。特に保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化後に剥離シートを剥離する場合には、剥離シートはエネルギー線透過性を有する必要がある。したがって、エネルギー線として紫外線を使用する場合には、剥離シートとしては紫外線透過性のシートを用いる。保護膜形成用シートの剥離シートとしては、たとえばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルムが好ましく用いられる。保護膜形成用フィルムと剥離シートとの間での剥離を容易にするため、剥離シートの表面張力は、好ましくは40mN/m以下、さらに好ましくは37mN/m以下、特に好ましくは35mN/m以下である。下限値は通常25mN/m程度である。このような表面張力が低い基材は、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、また基材の表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。
【0091】
剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系などが用いられるが、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するので好ましい。
【0092】
上記の剥離剤を用いてシートの表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、常温もしくは加熱または電子線硬化させたり、ウェットラミネーションやドライラミネーション、熱溶融ラミネーション、溶融押出ラミネーション、共押出加工などで積層体を形成すればよい。
【0093】
また、剥離シートとしては、基材の表面に保護膜形成用フィルムが剥離できる程度に弱い粘着力を有する粘着剤を塗布した粘着シートを用いてもよいし、基材の表面にエネルギー線照射により保護膜形成用フィルムが剥離できる程度に粘着力が低下する粘着剤を塗布した粘着シートを用いてもよい。ただし、粘着シートを剥離シートとして用いる場合、熱が加わる工程があったり、長期に保護膜形成用フィルムと剥離シートとが密着していると、保護膜形成用フィルムと剥離シートとが固着して剥離できなくなるおそれがあるので、粘着シート以外の剥離シートを使用することが好ましい。
【0094】
剥離シートの厚さは、通常は10〜500μm、好ましくは15〜300μm、特に好ましくは20〜250μm程度である。また、保護膜形成用フィルムの厚みは、通常は1〜500μm、好ましくは5〜300μm、特に好ましくは10〜150μm程度である。
【0095】
なお、保護膜形成用フィルムの使用前に、保護膜形成用フィルムを保護するために、保護膜形成用フィルムの上面に、前記剥離シートとは別に、軽剥離性の剥離フィルムを積層しておいてもよい。
【0096】
(半導体チップの製造方法)
本発明に係る半導体チップの製造方法は、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、保護膜形成用フィルムを貼付し、該保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して、半導体ウエハ裏面に保護膜を有する半導体チップを得ることを特徴とする。保護膜形成用フィルムの貼付方法は、特に限定はされないが、剥離シート上に保護膜形成用フィルムを積層した保護膜形成用シートを用いた半導体チップの製造方法を例にとってさらに詳細に説明する。
【0097】
本発明に係る半導体チップの製造方法は、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、上記保護膜形成用シートの保護膜形成用フィルムを貼付し、裏面に保護膜を有する半導体チップを得ることを特徴とする。該保護膜は、半導体チップの保護膜であることが好ましい。また、本発明に係る半導体チップの製造方法は、好ましくは、以下の工程(1)〜(3)をさらに含み、工程(1)〜(3)を任意の順で行うことを特徴としている。
工程(1):保護膜形成用フィルムと剥離シートとを剥離、
工程(2):保護膜形成用フィルムをエネルギー線により硬化、
工程(3):半導体ウエハおよび保護膜形成用フィルムをダイシング。
【0098】
半導体ウエハはシリコンウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。ウエハ表面への回路の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来より汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。次いで、半導体ウエハの回路面の反対面(裏面)を研削する。研削法は特に限定はされず、グラインダーなどを用いた公知の手段で研削してもよい。裏面研削時には、表面の回路を保護するために回路面に、表面保護シートと呼ばれる粘着シートを貼付する。裏面研削は、ウエハの回路面側(すなわち表面保護シート側)をチャックテーブル等により固定し、回路が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。ウエハの研削後の厚みは特に限定はされないが、通常は50〜500μm程度である。
【0099】
その後、必要に応じ、裏面研削時に生じた破砕層を除去する。破砕層の除去は、ケミカルエッチングや、プラズマエッチングなどにより行われる。破砕層の除去によりウエハが有していたゲッタリング機能は低下するが、本発明の保護膜形成用フィルムを使用することで、得られる半導体装置にはゲッタリング機能が付与される。したがって、本発明の半導体チップの製造方法は、特に破砕層を除去した半導体ウエハに対して好適に適用することができる。すなわち、本発明の本発明の半導体チップの製造方法は、破砕層の厚みを50nm以下、さらには30nm以下、特に10nm以下にまで低下した半導体ウエハに対して好適に適用することができる。
【0100】
次いで、半導体ウエハの裏面に、上記保護膜形成用シートの保護膜形成用フィルムを貼付する。その後、工程(1)〜(3)を任意の順で行う。このプロセスの詳細については、特開2002−280329号公報に詳述されている。一例として、工程(1)、(2)、(3)の順で行う場合について説明する。
【0101】
まず、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、上記保護膜形成用シートの剥離シート上に形成された保護膜形成用フィルムを貼付する。次いで保護膜形成用フィルムから剥離シートを剥離し、半導体ウエハと保護膜形成用フィルムとの積層体を得る。次いで保護膜形成用フィルムを硬化し、ウエハの全面に保護膜を形成する。保護膜形成用フィルムには、エネルギー線硬化性化合物(A)が含まれているため、エネルギー線照射により保護膜形成用フィルムを硬化する。この結果、ウエハ裏面に硬化樹脂からなる保護膜が形成され、ウエハ単独の場合と比べて強度が向上するので、取扱い時の薄くなったウエハの破損を低減でき、さらに保護膜に含まれるゲッタリング剤(B)によりゲッタリング機能が付与される。また、ウエハやチップの裏面に直接保護膜用の塗布液を塗布・被膜化するコーティング法と比較して、保護膜の厚さの均一性に優れる。
【0102】
次いで、半導体ウエハと保護膜との積層体を、ウエハ表面に形成された回路毎にダイシングする。ダイシングは、ウエハと保護膜をともに切断するように行われる。ウエハのダイシングは、ダイシングシートを用いた常法により行われる。この結果、裏面に保護膜を有する半導体チップが得られる。
【0103】
最後に、ダイシングされたチップをコレット等の汎用手段によりピックアップすることで、裏面に保護膜を有する半導体チップが得られる。このような本発明によれば、均一性の高い保護膜を、チップ裏面に簡便に形成でき、ダイシング工程やパッケージングの後のクラックが発生しにくくなる。さらに得られる半導体装置にはゲッタリング機能が付与されるため、リフロー環境のおいてもマイグレーションの発生が低減される。そして、半導体チップをフェースダウン方式で所定の基台上に実装することで半導体装置を製造することができる。また、裏面に保護膜を有する半導体チップを、ダイパッド部または別の半導体チップなどの他の部材上(チップ搭載部上)に接着することで、半導体装置を製造することもできる。
【0104】
なお、エネルギー線硬化性化合物(A)は、該化合物の種類にもよるが、酸素が存在する環境下では、重合不全を引き起こす場合がある。この場合には、保護膜形成用フィルムが直接酸素に曝されない環境下で保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化を行うことが好ましく、特に工程(2)、(1)、(3)の順で行うことが好ましい。この順序で工程(1)〜(3)を実施すると、保護膜形成用フィルムのエネルギー線による硬化時には、保護膜形成用フィルムは、剥離シートにより覆われているため、酸素による重合不全は起こらない。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、<銅イオン吸着能>、<ゲッタリング性能評価>および<質量減少開始温度測定>は次のように行った。
【0106】
<銅イオン吸着能および銅イオン吸着率>
実施例および比較例で準備したゲッタリング剤1gを、超純水1リットルに関東化学社製塩化銅(II)二水和物0.805gを溶解し、さらに100倍に希釈して作成した銅イオン濃度が3ppmの塩化銅水溶液50gに投入し、121℃、2気圧、24時間の条件に保った。その後、孔径0.10μmメンブレンフィルターを用いてろ過した。ろ液中の該銅イオン水溶液の残留銅イオン濃度を原子吸光分析法(測定装置:日立製作所社製、原子吸光光度計Z5310、フレーム法)により測定し、初期銅イオン濃度(3ppm)と、残留銅イオン濃度(ppm)とから、下記式により銅イオン吸着能および銅イオン吸着率を評価する。
【0107】
銅イオン吸着能(%)=(3ppm−残留銅イオン濃度(ppm))×100/3ppm
【0108】
銅イオン吸着率(%)=(3ppm−残留銅イオン濃度(ppm))×溶液量(g)×10−6×100/試料質量(g)
【0109】
<ゲッタリング性能評価>
ディスコ社製DGP8760を用いて、シリコンウエハの裏面をドライポリッシュ処理した(200mm径、厚さ75μm、破砕層の厚み10nm)。シリコンウエハのドライポリッシュ処理した面(ウエハ裏面)に、塩化銅(II)粉末(関東化学社製、品名:塩化銅(II)二水和物)1gを均一に散布し、擬似リフロー条件(300℃、30分)に投入し、シリコンウエハ内に銅イオンを拡散させた。その後、ウエハ裏面に弱粘着テープ(紫外線硬化後のリンテック社製Adwill D−675)を貼付・剥離を繰り返し、ウエハ裏面から塩化銅(II)粉末を除去した。
【0110】
この銅イオンで汚染したシリコンウエハの裏面に実施例および比較例で準備した保護膜形成用シートの保護膜形成用フィルムを貼付し、紫外線照射装置(リンテック社製、Adwill RAD−2000 m/12)を用いて剥離シート面から紫外線照射(200mW/cm、500mJ/cm)を行い、剥離シートを剥離した。その後、疑似リフロー条件(300℃、30分)に投入した。
【0111】
ウエハ表面(ミラー面、保護膜形成用フィルム非貼付面)をふっ酸にて事前洗浄し、表面に付着したコンタミと自然酸化膜(約10nm)を除去した。その後、ウエハ外周10mmをテフロン製治具により挟み込む形でマスキングし、ウエハ表面から5μmを硝酸/ふっ酸混合液(比率3:1)でエッチングした。得られたエッチング液の全量を蒸発皿に採取した。採取したエッチング液を加熱・蒸発乾固した後、残渣物を一定量の硝酸/ふっ酸混合液で溶解し、銅イオン濃度測定用試料した。なお試料調製は、クリーンルーム(クラス100)内に設置したクリーンドラフト(クラス10)内で実施した。
【0112】
ICP−MS測定によりシリコンウエハ中の銅イオンの濃度を定量測定した。
装置:パーキンエルマー社製 ELAN6100DRC Plus
条件等:プラズマパワー1500W。銅イオン定量下限は、3.0×1012atoms/cm(単位体積あたりの原子数)。
【0113】
エッチング液中に溶出した銅イオン濃度を測定することで、保護膜形成用フィルムのゲッタリング性能を評価した。エッチング液中に溶出した銅イオン量が少ないほど、保護膜により捕捉された銅イオン量が多く、ゲッタリング性能が高いことを示す。銅イオン検出量が50×1012atoms/cm以下を良好とし、銅イオン検出量が50×1012atoms/cmを超えるものを不良とした。
【0114】
なお、銅イオン濃度の定量分析方法は、原子吸光分析法、ICP−OES、TOF−SIMSなどの方法で行ってもよい。
【0115】
<質量減少開始温度測定>
質量減少開始温度の測定は、示差熱分析装置(島津製作所社製、TG/DTA分析器DTG−60)を用いて行った。実施例および比較例で準備した有機キレート剤を測定試料とし、約10mgの測定試料を精密に秤量した。測定試料を昇温温度10℃/分にて40〜500℃まで昇温し、質量減少開始温度を測定した。
【0116】
<保護膜形成用フィルム用組成物>
保護膜形成用フィルムを構成する各成分を下記に示す。
(A)エネルギー線重合性化合物:多官能アクリレートオリゴマー(日本化薬社製:KAYARAD R−684)
(B)ゲッタリング剤:
(B1−1)3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール(ADEKA社製、CDA-1、CAS No. 36411-52-6)(銅イオン吸着能99.7%、銅イオン吸着率0.015%、粒径1μm)
【化4】


(B1−2)デカメチレンジカルボキシジサリチロイルヒドラジド(ADEKA社製、CDA-6、CAS No.63245-38-5)(銅イオン吸着能95%、銅イオン吸着率0.014%、粒径0.5μm)
【化5】

(B2)有機キレート剤:多価カルボン酸を官能基として有する有機キレート剤(ナガセケムテックス社製:テークランDO、酸価260〜330mg/g、質量減少開始温度200℃)(銅イオン吸着能95.7%、銅イオン吸着率0.014%、粒径1μm)
(B3)協和化学工業社製KW-2200(マグネシウムとアルミニウムの酸化物からなるハイドロタルサイト)(銅イオン吸着能99.8%、銅イオン吸着率0.015%、粒径1μm)
(C)着色剤:黒色顔料(カーボンブラック、三菱化学社製、#MA650、平均粒径28nm)
(D)バインダーポリマー成分:n−ブチルアクリレート55質量部、メチルアクリレート15質量部、グリシジルメタクリレート20質量部、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部からなるアクリルポリマー(重量平均分子量:90万、ガラス転移温度:−28℃)
(E)光重合開始剤:ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」)(重量平均分子量:204)
(F)カップリング剤:ビニルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製、Z−6300)
(G)無機充填剤:シリカフィラー(熔融石英フィラー、平均粒径8μm)
【0117】
(実施例および比較例)
上記各成分を表1に記載の量で配合し、保護膜形成用フィルム用組成物を得た。得られた組成物のメチルエチルケトン溶液(固形濃度61質量%)を、シリコーンで剥離処理された剥離シート(リンテック株式会社製、SP−PET3811、厚さ38μm、表面張力33mN/m、融点200℃以上)の剥離処理面上に乾燥後40μmの厚みになるように塗布、乾燥(乾燥条件:オーブンにて100℃、3分間)して、剥離シート上に保護膜形成用フィルムを形成し、保護膜形成用フィルムを得た。
【0118】
【表1】

【0119】
得られた保護膜形成用フィルムを用いて<銅イオン吸着能>および<ゲッタリング性能評価>を行った。上記の保護膜形成用フィルム中の全固形分100質量部に対するゲッタリング剤の含有量及び結果を表2に示す。
【0120】
【表2】

【0121】
なお、銅イオン汚染を行わなかったウエハ(参考例1)と銅イオン汚染を行ったウエハ(参考例2)の接着シートを貼付しなかったもののゲッタリング性能を測定した。
実施例の保護膜形成用フィルムは、優れた銅イオン吸着能、ゲッタリング性能を示した。この結果から、ゲッタリング剤(C)を保護膜形成用フィルムに用いることで、高信頼性の半導体チップが得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー線重合性化合物(A)およびゲッタリング剤(B)を含有する保護膜形成用フィルム。
【請求項2】
下記により定義されるゲッタリング剤(B)の銅イオン吸着能が30%以上である請求項1に記載の保護膜形成用フィルム。
ゲッタリング剤1gを、銅イオン濃度が3ppmの塩化銅水溶液50gに投入し、121℃、2気圧下、24時間放置した後の該銅イオン水溶液の銅イオン濃度を測定し、
銅イオン吸着能=(3ppm−残留銅イオン濃度(ppm))×100/3ppmより銅イオン吸着能を求める。
【請求項3】
ゲッタリング剤(B)が、重金属不活性化剤(B1)、有機キレート剤(B2)および銅イオン捕捉金属化合物(B3)からなる群から選ばれる請求項1または2に記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項4】
さらに着色剤(C)を含有する請求項1〜3の何れかに記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項5】
該保護膜形成用フィルムを構成する全固形分100質量部あたりゲッタリング剤(B)を1〜35質量部含有する請求項1〜4の何れかに記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項6】
表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面またはチップの裏面に保護膜を形成するために用いる請求項1〜5の何れかに記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項7】
剥離シートと、該剥離シートの剥離面上に形成された請求項1〜5の何れかに記載の保護膜形成用フィルムとを有する、保護膜形成用シート。
【請求項8】
表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、請求項1〜5の何れかに記載の保護膜形成用フィルムを貼付し、該保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して、半導体ウエハ裏面に保護膜を有する半導体チップを得る半導体チップの製造方法。
【請求項9】
表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、請求項7に記載の保護膜形成用シートの保護膜形成用フィルムを貼付し、以下の工程(1)〜(3)を任意の順で行う請求項8に記載の半導体チップの製造方法:
工程(1):保護膜形成用フィルムと剥離シートとを剥離、
工程(2):保護膜形成用フィルムをエネルギー線により硬化、
工程(3):半導体ウエハおよび保護膜形成用フィルムをダイシング。
【請求項10】
該半導体ウエハが、裏面研削後、裏面研削により生じた破砕層を厚み50nm以下にまで低減されたものである請求項8または9に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項11】
該保護膜形成用フィルムの硬化膜が、半導体チップの保護膜である請求項8〜10の何れかに記載の半導体チップの製造方法。

【公開番号】特開2012−84744(P2012−84744A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230826(P2010−230826)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】