説明

保護膜形成用薬液、および、ウェハ表面の洗浄方法

【課題】表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコンを含むウェハの製造方法において、パターン倒れを誘発しやすい洗浄工程を改善するための、ウェハの凹凸パターン部の毛細管力を低減させる保護膜形成用薬液を提供することを課題とする。
【解決手段】表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコンを含むウェハの洗浄時に、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に撥水性保護膜を形成するための薬液であり、一般式RSi(H)4−a−bで表されるケイ素化合物Aを0.01〜30質量%、および、非プロトン性有機溶媒を含む保護膜形成用薬液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造などにおいて、特に微細でアスペクト比の高い回路パターン化されたデバイスの製造歩留まりの向上を目的とした基板(ウェハ)の洗浄技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークやデジタル家電用の半導体デバイスにおいて、さらなる高性能・高機能化や低消費電力化が要求されている。そのため回路パターンの微細化が進行しており、それに伴い製造歩留まりの低下を引き起こすパーティクルサイズも微小化している。その結果、微小化したパーティクル等の汚染物質の除去を目的とした洗浄工程が多用されており、その結果、半導体製造工程全体の3〜4割にまで洗浄工程が占めている。
【0003】
その一方で、従来行われていたアンモニアの混合洗浄剤による洗浄では、回路パターンの微細化に伴い、その塩基性によるウェハへのダメージが問題となっている。そのため、よりダメージの少ない例えば希フッ酸系洗浄剤への代替が進んでいる。
【0004】
これにより、洗浄によるウェハへのダメージの問題は改善されたが、半導体デバイスの微細化に伴うパターンのアスペクト比が高くなることによる問題が顕在化している。すなわち洗浄またはリンス後、気液界面がパターンを通過する時にパターンが倒れる現象を引き起こし、歩留まりが大幅に低下することが大きな問題となっている。
【0005】
このパターン倒れは、ウェハを洗浄液またはリンス液から引き上げるときに生じる。これは、パターンのアスペクト比が高い部分と低い部分との間において、残液高さの差ができ、それによってパターンに作用する毛細管力に差が生じることが原因と言われている。尚、「倒れ」という表記は、以降「倒壊」ということがある。
【0006】
このため、毛細管力を小さくすれば、残液高さの違いによる毛細管力の差が低減し、パターン倒れが解消すると期待できる。毛細管力の大きさは、以下に示される式で求められるPの絶対値であり、この式からγ、もしくは、cosθを小さくすれば、毛細管力を低減できると期待される。
P=2×γ×cosθ/S(γ:表面張力、θ:接触角、S:パターン寸法)
【0007】
特許文献1には、γを小さくしてパターン倒れを抑制する手法として気液界面を通過する前に洗浄液を水から2−プロパノールへ置換する技術が開示されている。しかし、この手法では、パターン倒れ防止に有効である一方、γが小さい2−プロパノール等の溶媒は通常の接触角も小さくなり、その結果、cosθが大きくなる傾向にある。そのため、対応できるパターンのアスペクト比が5以下である等、限界があると言われている。
【0008】
また、特許文献2には、cosθを小さくしてパターン倒れを抑制する手法として、レジストパターンを対象とする技術が開示されている。この手法は接触角を90°付近とすることで、cosθを0に近づけ毛細管力を極限まで下げることによって、パターン倒れを抑制する手法である。しかし、この開示された技術はレジストパターンを対象としており、レジスト自体を改質するものであり、さらに最終的にレジストと共に除去が可能であるため、乾燥後の処理剤の除去方法を想定する必要がなく、本目的には適用できない。
【0009】
また、特許文献3には、シリコンを含む膜により凹凸形状パターンを形成したウェハ表面を酸化等により表面改質し、該表面に水溶性界面活性剤又はシランカップリング剤を用いて撥水性保護膜を形成し、毛細管力を低減し、パターンの倒壊を防止する洗浄方法が開示されている。
【0010】
また、半導体デバイスのパターン倒れを防止する手法として、臨界流体の利用や液体窒素の利用等が提案されている。しかし、いずれも一定の効果があるものの、従来の洗浄プロセスよりもスループットが悪いなど、量産工程への適用が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−198958号公報
【特許文献2】特開平5−299336号公報
【特許文献3】特許第4403202号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
半導体デバイスの製造時には、ウェハ表面は微細な凹凸パターンを有する面とされる。表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコンを含むウェハ(以降、「シリコンウェハ」または単に「ウェハ」と記載する)の洗浄時において、ウェハの凹凸パターン部の毛細管力を低減させる撥水性保護膜(「保護膜」と表記される場合あり)は、シランカップリング剤などのケイ素化合物がウェハ表面に導入されたOH基と反応することで形成される。
【0013】
洗浄過程の短縮化のためには、保護膜を効率よく形成させる必要があるが、保護膜の形成効率は、ウェハ表面に導入されたOH基とケイ素化合物との接触確率に依存する点がある。特許文献3は、シランカップリング剤(無希釈)の使用例を開示している。シランカップリング剤を、シンナーで希釈して用いてもよいとの示唆はあるものの、液温上昇や、紫外線照射などによるシランカップリング剤のエステル反応の促進、すなわちOH基との反応の促進の必要性を示唆している。
【0014】
OH基との反応の促進化を、薬液の観点からみると、ケイ素化合物の量を増やして、OH基とケイ素化合物との接触確率を増やす検討がなされる。これは、薬液中のケイ素化合物量を増加させることにつながり、たとえ、ケイ素化合物のシンナーによる希釈がなされたとしても、それほど希釈されるべきではないとの結論を導き出しやすい。
【0015】
本発明は、パターン倒れを誘発しやすい洗浄工程を改善するための、ウェハの凹凸パターン部の毛細管力を低減させる保護膜形成用薬液に関し、特には薬液のコストを下げることに奏功する薬液、および、該薬液を用いてウェハ表面を洗浄する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のウェハの凹凸パターン部の毛細管力を低減させる保護膜形成用薬液(以降「保護膜形成用薬液」または単に「薬液」と記載する)は、表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコンを含むウェハの洗浄時に、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に撥水性保護膜を形成するための薬液であり、下記一般式[1]で表されるケイ素化合物Aを0.01〜30質量%、および、非プロトン性有機溶媒を含むことを特徴とする保護膜形成用薬液。
【0017】
【化1】

【0018】
ここで、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Xは、それぞれ互いに独立して、Siと結合する元素が窒素である1価の有機基、Siと結合する元素が酸素である1価の有機基、および、ハロゲン基から選ばれる少なくとも1つの基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、aとbの合計は1〜3である。
【0019】
非プロトン性有機溶媒が薬液中の主成分を占める本発明の薬液の技術思想は、保護膜を形成するケイ素化合物Aの含有量が、0.01〜30質量%と少ない含有量であっても、意外にも保護膜の形成効率が良好であったとの新たな知見に基づいている。
【0020】
また、前記ケイ素化合物Aは、塩基性や酸性を示す場合がある。XがSiと結合する元素が窒素である1価の有機基の場合、塩基性を呈し、たとえば、ヘキサメチルジシラザンの場合、100%の状態で、pHが10となる。Xがハロゲン基の場合、酸性を呈し、たとえば、トリメチルクロロシランの場合、100%の状態で、pHが0となる。薬液は、半導体の洗浄に使用されるものであるから、高純度化のために精製される必要があるが、前記ケイ素化合物Aの塩基性度や酸性度が高い場合でも、本発明の薬液では、ケイ素化合物Aは、これら3割以下に希釈されていることから、薬液の塩基性度又は酸性度が緩和されたものとなり、イオン交換による精製を行いやすくなるなどの効果が生じることがわかった。このことは、薬液のコスト低減に奏功するであろう。また、本発明の好適な薬液は、非プロトン性有機溶媒の含有量が50〜99.99質量%と薬液の主成分となる量を占め、薬液の塩基性度又は酸性度が緩和という観点からより好ましいものとなる。
【0021】
本明細書では、薬液の塩基性度又は酸性度を示す指標として、pHの値を用いてもよい。ここで、薬液のpHは、例えば、25℃でpH試験紙(ADVANTEC社製WR)を用いて測定できる。たとえば、ヘキサメチルジシラザンの場合、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを希釈溶媒として、ヘキサメチルジシラザンを20〜30質量%とすると、pHが9となる。
【0022】
本発明の薬液において、前記ケイ素化合物Aの含有量は、0.01〜30質量%であることが好ましい。前記含有量が0.01質量%未満では、凹凸パターンの倒れ防止効果が不十分となり、30質量%超では凹凸パターンの倒れ防止効果はあまり増加せず材料費が増加するので好ましくない。より好ましくは0.05〜25質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%である。
【0023】
本発明の薬液において、前記非プロトン性有機溶媒は、水100質量部に対する溶解度が5質量部以上であることが好ましい。この場合、薬液は、水との相溶性が良好であることから、表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコンを含むウェハの洗浄時に、凹凸パターンの凹部に水が蓄えられた状態で、この水と薬液との置換を行うことができる。さらには、凹部に薬液が蓄えられた状態で、この薬液と水との置換も行うことができる。洗浄時の凹部での置換工程は、ケイ素化合物Aが水の相溶性が良くなかったとしても、「水→アルコール→薬液→アルコール→水」、「水→薬液→水」のいずれにも対応できることができる。非プロトン性有機溶媒の薬液中の含有量が小さくなると、薬液と水との置換が遅くなってスループットが低くなる、あるいは、薬液使用量が増えるため好ましくない。また、含有量が多くなるのに伴って前記ケイ素化合物Aの含有量が減少すると、凹凸パターンの倒れ防止効果が不十分となる。このため、前記薬液中の非プロトン性有機溶媒の含有量は50〜99.99質量%であることが好ましく、より好ましくは60〜99.95質量%、さらに好ましくは65〜99.9質量%である。
【0024】
また、非プロトン性有機溶媒に対する水の溶解度が小さくなると、薬液と水との置換が遅くなってスループットが低くなる、あるいは、薬液使用量が増えるため好ましくない。このため、非プロトン性有機溶媒に対する水の溶解度は、水100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは20質量部以上である。
【0025】
前記一般式[1]のRは、前記保護膜の表面エネルギーを低減させて、水やその他の液体と該保護膜表面との間(界面)で相互作用、例えば、水素結合、分子間力などを低減させる。特に水に対して相互作用を低減させる効果が大きいが、水と水以外の液体の混合液や、水以外の液体に対しても相互作用を低減させる効果を有する。これにより、物品表面に対する液体の接触角を大きくすることができる。
【0026】
前記保護膜は、前記一般式[1]のXがシリコンウェハのSiと化学的に結合することによって形成される。従って、前記シリコンウェハの凹部から洗浄液が除去されるとき、すなわち、乾燥されるとき、前記凹部表面に前記保護膜が形成されているので、該凹部表面の毛細管力が小さくなり、パターン倒れが生じにくくなる。
【0027】
また、前記ケイ素化合物A中のXが、Siと結合する元素が窒素である1価の有機基であり、薬液が酸Aを含むことが好ましい。この場合、前記ケイ素化合物AとシリコンウェハのSiとの反応が早く、撥水性保護膜を短時間で形成できるので好ましい。
【0028】
なお、酸Aがブレンステッド酸であると、該酸が前記ケイ素化合物Aと反応して、ケイ素化合物Aが減少、あるいは、ケイ素化合物Aの反応性を低下させることがある。このため、該酸Aはルイス酸であることが好ましい。
【0029】
また、前記薬液は、沸点が70〜220℃にあることが好ましい。沸点がこの範囲であることは、特に、前記薬液がウェハの回転の遠心力によって微細な凹凸パターンを有するウェハ表面に供給されるものである場合に好ましい。沸点が低くなると、前記薬液がウェハ全面に濡れ広がる前に薬液が乾燥しやすくなるため好ましくない。一方、沸点が高くなると、薬液の粘度が高くなるため、前記薬液がウェハ全面に均一に濡れ広がり難くなるので好ましくない。このため、前記沸点は70〜220℃、特に75〜200℃が好ましい。
【0030】
本発明において、撥水性保護膜とは、ウェハ表面に形成されることにより、該ウェハ表面の濡れ性を低くする膜、すなわち撥水性を付与する膜のことである。本発明において撥水性とは、物品表面の表面エネルギーを低減させて、水やその他の液体と該物品表面との間(界面)で相互作用、例えば、水素結合、分子間力などを低減させる意味である。特に水に対して相互作用を低減させる効果が大きいが、水と水以外の液体の混合液や、水以外の液体に対しても相互作用を低減させる効果を有する。該相互作用の低減により、物品表面に対する液体の接触角を大きくすることができる。
【0031】
本発明では、洗浄液が凹部から除去されるとき、すなわち、乾燥されるとき、前記凹凸パターンの少なくとも凹部表面に前記保護膜が形成されているので、該凹部表面の毛細管力が小さくなり、パターン倒れが生じにくくなる。
【0032】
本発明の保護膜形成用薬液は、凹凸パターンが形成されたウェハの洗浄工程において洗浄液を該薬液に置換して使用される。また、前記置換した薬液は他の洗浄液に置換されてもよい。
【0033】
前記のように洗浄液を保護膜形成用薬液に置換し、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に該薬液が保持されている間に、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に前記保護膜が形成される。本発明の保護膜は、必ずしも連続的に形成されていなくてもよく、また、必ずしも均一に形成されていなくてもよいが、より優れた撥水性を付与できるため、連続的に、また、均一に形成されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の保護膜形成用薬液によって形成される保護膜は優れたパターン倒れ防止効果を示すので、該薬液を用いると、表面に微細な凹凸パターンを有するウェハの製造方法中の洗浄工程が、スループットが低下することなく改善される。従って、本発明の保護膜形成用薬液を用いて行われる表面に微細な凹凸パターンを有するウェハの製造方法は、生産性が高いものとなる。
【0035】
本発明の保護膜形成用薬液は、今後益々高くなると予想される例えば7以上のアスペクト比を有する凹凸パターンにも対応可能であり、より高密度化された半導体デバイス生産のコストダウンを可能とする。しかも従来の装置から大きな変更がなく対応でき、その結果、各種の半導体デバイスの製造に適用可能なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】表面が微細な凹凸パターン2を有する面とされたウェハ1を斜視したときの模式図を示す図である。
【図2】図1中のa−a’断面の一部を示したものである。
【図3】洗浄工程にて凹部4が保護膜形成用薬液8を保持した状態の模式図を示している。
【図4】撥水性保護膜が形成された凹部4に洗浄液および/または薬液が保持された状態の模式図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の保護膜形成用薬液を用いる、表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコンを含むウェハの好適な洗浄方法は、
(工程1)ウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とした後、水系洗浄液を当該面に供し、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に水系洗浄液を保持する工程、
(工程2)凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持された水系洗浄液を該水系洗浄液とは異なる洗浄液Aで置換する工程、
(工程3)前記洗浄液Aを保護膜形成用薬液で置換し、該薬液を凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持する工程、
(工程4)乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程、
(工程5)ウェハ表面を光照射すること、ウェハを加熱すること、及び、ウェハをオゾン曝露することから選ばれる少なくとも1つの処理を行うことにより、撥水性保護膜を除去する工程
を有する。
【0038】
さらに、保護膜形成用薬液を凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持する工程(工程3)の後で、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持された前記薬液を該薬液とは異なる洗浄液Bに置換した後に、乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程(工程4)に移ってもよい。また、前記洗浄液Bへの置換を経て、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に水系溶液からなる水系洗浄液を保持した後に、乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程(工程4)に移ってもよい。なお、前記(工程4)において除去される液体とは、洗浄液および/または薬液である。
【0039】
なお、本発明において、保護膜形成用薬液に含まれる非プロトン性有機溶媒が、水100質量部に対する溶解度が5質量部以上である場合、該保護膜形成用薬液は、水系洗浄液と置換可能であるので、前記洗浄液Aによる置換および前記洗浄液Bによる置換が省略できる。
【0040】
本発明において、ウェハの凹凸パターンの少なくとも凹部表面に前記薬液や洗浄液を保持できるのであれば、該ウェハの洗浄方式は特に限定されない。ウェハの洗浄方式としては、ウェハをほぼ水平に保持して回転させながら回転中心付近に液体を供給してウェハを1枚ずつ洗浄するスピン洗浄に代表される枚葉方式や、洗浄槽内で複数枚のウェハを浸漬し洗浄するバッチ方式が挙げられる。なお、ウェハの凹凸パターンの少なくとも凹部表面に前記薬液や洗浄液を供給するときの該薬液や洗浄液の形態としては、該凹部表面に保持された時に液体になるものであれば特に限定されず、たとえば、液体、蒸気などがある。
【0041】
前記薬液中のケイ素化合物Aは、下記一般式[1]で表される化合物であることが好ましい。
【0042】
【化2】

【0043】
ここで、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Xは、それぞれ互いに独立して、Siと結合する元素が窒素である1価の有機基、Siと結合する元素が酸素である1価の有機基、および、ハロゲン基から選ばれる少なくとも1つの基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、aとbの合計は1〜3である。
【0044】
前記一般式[1]において、XとしてのSiに結合する元素が窒素や酸素の1価の有機基には、水素、炭素、窒素、酸素だけでなく、ケイ素、硫黄、ハロゲン元素などが含まれていても良い。Siと結合する元素が窒素の1価の有機基の例としては、イソシアネート基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、イソチオシアネート基、アジド基、アセトアミド基、−N(CH)C(O)CH、−N(CH)C(O)CF、−N=C(CH)OSi(CH、−N=C(CF)OSi(CH、−NHC(O)−OSi(CH、−NHC(O)−NH−Si(CH、イミダゾール環(下式[2])、オキサゾリジノン環(下式[3])、モルホリン環(下式[4])、−NH−C(O)−Si(CH、−N(H)2−c(Si(H)3−d(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基、cは1または2、dは0〜2の整数)などがある。また、XとしてのSiと結合する元素が酸素の1価の有機基としては、Si−O−CやSi−O−SでSiと結合するものがあり、Si−O−Cで結合するものの例としては、アルコキシ基、−OC(CH)=CHCOCH、−OC(CH)=N−Si(CH、−OC(CF)=N−Si(CH、−OC(O)−R(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8のアルキル基)などがあり、Si−O−Sで結合するものの例としては、−OS(O)−R(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基)などが挙げられる。さらに、Xとしてのハロゲン基の例としては、クロロ基、ブロモ基などが挙げられる。このようなケイ素化合物Aは、前記反応性部位がシリコンウェハの凹凸パターン表面のシラノール基と速やかに反応し、ケイ素化合物Aがシロキサン結合を介してシリコンウェハのSiと化学的に結合することによって、ウェハ表面を疎水性のR基で覆うことができるため、短時間で該ウェハの凹部表面の毛細管力を小さくできる。
【0045】
【化3】

【0046】
また、前記一般式[1]において4−a−bで表されるケイ素化合物AのXの数が1であると、前記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。
【0047】
前記一般式[1]におけるRは、それぞれ互いに独立して、C2m+1(m=1〜18)、および、C2n+1CHCH(n=1〜8)から選ばれる少なくとも1つの基であると、前記凹凸パターン表面に保護膜を形成した際に、該表面の濡れ性をより低くできる、すなわち、該表面により優れた撥水性を付与できるためより好ましい。また、mとnが1〜8であると、前記凹凸パターン表面に保護膜を短時間に形成できるためより好ましい。
【0048】
前記一般式[1]で表されるケイ素化合物Aとしては、例えば、CHSi(NH、CSi(NH、CSi(NH、CSi(NH、C11Si(NH、C13Si(NH、C15Si(NH、C17Si(NH、C19Si(NH、C1021Si(NH、C1123Si(NH、C1225Si(NH、C1327Si(NH、C1429Si(NH、C1531Si(NH、C1633Si(NH、C1735Si(NH、C1837Si(NH、(CHSi(NH、CSi(CH)(NH、(CSi(NH、CSi(CH)(NH、(CSi(NH、CSi(CH)(NH、(CSi(NH、C11Si(CH)(NH、C13Si(CH)(NH、C15Si(CH)(NH、C17Si(CH)(NH、C19Si(CH)(NH、C1021Si(CH)(NH、C1123Si(CH)(NH、C1225Si(CH)(NH、C1327Si(CH)(NH、C1429Si(CH)(NH、C1531Si(CH)(NH、C1633Si(CH)(NH、C1735Si(CH)(NH、C1837Si(CH)(NH、(CHSiNH、CSi(CHNH、(CSi(CH)NH、(CSiNH、CSi(CHNH、(CSi(CH)NH、(CSiNH、CSi(CHNH、(CSiNH、C11Si(CHNH、C13Si(CHNH、C15Si(CHNH、C17Si(CHNH、C19Si(CHNH、C1021Si(CHNH、C1123Si(CHNH、C1225Si(CHNH、C1327Si(CHNH、C1429Si(CHNH、C1531Si(CHNH、C1633Si(CHNH、C1735Si(CHNH、C1837Si(CHNH、(CHSi(H)NH、CHSi(H)NH、(CSi(H)NH、CSi(H)NH、CSi(CH)(H)NH、(CSi(H)NH、CSi(H)NH、CFCHCHSi(NH、CCHCHSi(NH、CCHCHSi(NH、CCHCHSi(NH、C11CHCHSi(NH、C13CHCHSi(NH、C15CHCHSi(NH、C17CHCHSi(NH、CFCHCHSi(CH)(NH、CCHCHSi(CH)(NH、CCHCHSi(CH)(NH、CCHCHSi(CH)(NH、C11CHCHSi(CH)(NH、C13CHCHSi(CH)(NH、C15CHCHSi(CH)(NH、C17CHCHSi(CH)(NH、CFCHCHSi(CHNH、CCHCHSi(CHNH、CCHCHSi(CHNH、CCHCHSi(CHNH、C11CHCHSi(CHNH、C13CHCHSi(CHNH、C15CHCHSi(CHNH、C17CHCHSi(CHNH、CFCHCHSi(CH)(H)NH等のアミノシラン、あるいは、前記アミノシランのアミノ基(−NH基)を、−N=C=O、−N(CH、−N(C、−N=C=S、−N、−NHC(O)CH、−N(CH)C(O)CH、−N(CH)C(O)CF、−N=C(CH)OSi(CH、−N=C(CF)OSi(CH、−NHC(O)−OSi(CH、−NHC(O)−NH−Si(CH、イミダゾール環、オキサゾリジノン環、モルホリン環、−NH−C(O)−Si(CH、−N(H)2−c(Si(H)3−d(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基、cは1または2、dは0〜2の整数)、アルコキシ基、−OC(CH)=CHCOCH、−OC(CH)=N−Si(CH、−OC(CF)=N−Si(CH、−OS(O)−R(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基)、−OC(O)−R(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8のアルキル基)、クロロ基、ブロモ基に置き換えたものなどが挙げられる。
【0049】
この中でも、前記一般式[1]の左辺のケイ素化合物AのXは、−N(CH、−NH、−N(C、−N(CH)C(O)CH、−N(CH)C(O)CF、−NHC(O)−NH−Si(CH、イミダゾール環、−NH−C(O)−Si(CH、−N(H)2−r(Si(H)3−s(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8の1価の炭化水素基、rは1または2、sは0〜2の整数)が好ましい。
【0050】
前記薬液は、非プロトン性有機溶媒を50〜99.99質量%含むことが好ましい。ここで、前記非プロトン性有機溶媒は、水100質量部に対する溶解度が5質量部以上であることが好ましい。なお、水に対する溶解度は20℃における値を指す。このような溶媒としては、例えば、エーテル類、ケトン類、スルホキシド系溶媒、OH基を持たない多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒などがある。前記エーテル類の例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあり、前記ケトン類の例としては、アセチルアセトン、アセトン、シクロヘキサノンなどがあり、前記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドなどがあり、前記多価アルコールの誘導体でOH基を持たないものの例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテルなど、含窒素化合物溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジンなどがある。この中でも、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノンが好ましい。
【0051】
上記のように、前記非プロトン性有機溶媒は、水100質量部に対する溶解度が5質量部以上であることが好ましいが、前記薬液には、水100質量部に対する溶解度が5質量部以上の非プロトン性有機溶媒以外の有機溶媒が含まれていても良い。そのような有機溶媒としては、例えば、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒などがある。これらの中でも、非プロトン性の炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、多価アルコールの誘導体のうちOH基を持たないものを用いるのが好ましい。前記炭化水素類の例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどがあり、前記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチルなどがあり、前記エーテル類の例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどがあり、前記ケトン類の例としては、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどがあり、前記含ハロゲン溶媒の例としては、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンなどのパーフルオロカーボン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、オクタフルオロシクロペンタン、2,3−ジハイドロデカフルオロペンタン、ゼオローラH(日本ゼオン製)などのハイドロフルオロカーボン、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル、アサヒクリンAE−3000(旭硝子製)、Novec HFE−7100、Novec HFE−7200、Novec7300、Novec7600(いずれも3M製)などのハイドロフルオロエーテル、テトラクロロメタンなどのクロロカーボン、クロロホルムなどのハイドロクロロカーボン、ジクロロジフルオロメタンなどのクロロフルオロカーボン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどのハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテルなどがあり、前記多価アルコールの誘導体でOH基を持たないものの例としては、エチレングリコールジブチルエーテルなどがある。また、前記薬液には、水100質量部に対する溶解度が5質量部以上の非プロトン性有機溶媒が含まれていなくても良い。
【0052】
また、前記薬液は、沸点が70〜220℃にあることが好ましい。沸点がこの範囲であることは、特に、前記薬液がウェハの回転の遠心力によって微細な凹凸パターンを有するウェハ表面に供給されるものである場合に好ましい。
【0053】
また、前記ケイ素化合物A中のXが、Siと結合する元素が窒素である1価の有機基であり、薬液が酸Aを含むことが好ましい。この場合、前記ケイ素化合物AとシリコンウェハのSiとの反応が早く、撥水性保護膜を短時間で形成できるので好ましい。
【0054】
前記酸Aの濃度は、前記ケイ素化合物Aの総量100質量%に対して0.01〜50質量%であることが好ましい。添加量が少ないと酸の触媒効果が低下するので好ましくなく、過剰に多くしても触媒効果は向上せず、逆に、ウェハ表面を浸食したり、不純物としてウェハに残留する懸念もある。このため、酸Aの濃度は、前記ケイ素化合物Aの総量100質量%に対して0.02〜40質量%、さらに0.05〜30質量%であることが特に好ましい。
【0055】
酸Aは、水を含有するものであると、前記薬液中に含まれる水の増加につながり、前記保護膜が形成されにくくなる。このため、該酸Aは、水の含有量が少ないものほど好ましく、好ましい水の含有率は、35質量%以下であり、特に好ましくは10質量%、さらに好ましくは5質量%以下であり、限りなく0質量%に近いことが理想的である。
【0056】
前記酸Aとしては、無機酸や有機酸がある。水の含有量が少ない無機酸の例としては、ハロゲン化水素、硫酸、過塩素酸、リン酸など、有機酸の例としては、一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良いアルカンスルホン酸やカルボン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などがある。
【0057】
また、前記酸としてはルイス酸も用いることができる。ルイス酸の定義については、例えば「理化学辞典(第五版)」に記載されている。ルイス酸としては、酸無水物、ホウ素化合物、ケイ素化合物があり、酸無水物の例としては、無水トリフルオロメタンスルホン酸などの一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良い無水アルカンスルホン酸、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ペンタフルオロプロピオン酸などの一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良い無水カルボン酸など、ホウ素化合物の例としては、アルキルホウ酸エステル、アリールホウ酸エステル、トリス(トリフルオロアセトキシ)ホウ素、トリアルコキシボロキシン、トリフルオロホウ素など、ケイ素化合物の例としては、クロロシラン、一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良いアルキルシリルアルキルスルホネート、一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良いアルキルシリルエステルなどが挙げられる。なお、前記ケイ素化合物が用いられた場合、該ケイ素化合物で前記保護膜の少なくとも一部が形成されても良い。
【0058】
なお、前記酸Aがブレンステッド酸であると、該酸が前記ケイ素化合物Aと反応して、ケイ素化合物Aが減少、あるいは、ケイ素化合物Aの反応性を低下させることがあるため、該酸はルイス酸を含むことが好ましく、特に、酸無水物、および、下記一般式[5]で表されるケイ素化合物αが好ましい。
【0059】
【化4】

【0060】
ここで、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Yは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン基、−O−S(O)−R’、および、−O−C(O)−R’(R’は一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8の1価の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つの基である。また、eは1〜3の整数、fは0〜2の整数であり、eとfの合計は1〜3である。
【0061】
前記酸Aとしては、例えば、CHSiCl、CSiCl、CSiCl、CSiCl、C11SiCl、C13SiCl、C15SiCl、C17SiCl、C19SiCl、C1021SiCl、C1123SiCl、C1225SiCl、C1327SiCl、C1429SiCl、C1531SiCl、C1633SiCl、C1735SiCl、C1837SiCl、(CHSiCl、CSi(CH)Cl、(CSiCl、CSi(CH)Cl、(CSiCl、CSi(CH)Cl、(CSiCl、C11Si(CH)Cl、C13Si(CH)Cl、C15Si(CH)Cl、C17Si(CH)Cl、C19Si(CH)Cl、C1021Si(CH)Cl、C1123Si(CH)Cl、C1225Si(CH)Cl、C1327Si(CH)Cl、C1429Si(CH)Cl、C1531Si(CH)Cl、C1633Si(CH)Cl、C1735Si(CH)Cl、C1837Si(CH)Cl、(CHSiCl、CSi(CHCl、(CSi(CH)Cl、(CSiCl、CSi(CHCl、(CSi(CH)Cl、(CSiCl、CSi(CHCl、(CSiCl、C11Si(CHCl、C13Si(CHCl、C15Si(CHCl、C17Si(CHCl、C19Si(CHCl、C1021Si(CHCl、C1123Si(CHCl、C1225Si(CHCl、C1327Si(CHCl、C1429Si(CHCl、C1531Si(CHCl、C1633Si(CHCl、C1735Si(CHCl、C1837Si(CHCl、(CHSi(H)Cl、CHSi(H)Cl、(CSi(H)Cl、CSi(H)Cl、CSi(CH)(H)Cl、(CSi(H)Cl、CSi(H)Cl、CFCHCHSiCl、CCHCHSiCl、CCHCHSiCl、CCHCHSiCl、C11CHCHSiCl、C13CHCHSiCl、C15CHCHSiCl、C17CHCHSiCl、CFCHCHSi(CH)Cl、CCHCHSi(CH)Cl、CCHCHSi(CH)Cl、CCHCHSi(CH)Cl、C11CHCHSi(CH)Cl、C13CHCHSi(CH)Cl、C15CHCHSi(CH)Cl、C17CHCHSi(CH)Cl、CFCHCHSi(CHCl、CCHCHSi(CHCl、CCHCHSi(CHCl、CCHCHSi(CHCl、C11CHCHSi(CHCl、C13CHCHSi(CHCl、C15CHCHSi(CHCl、C17CHCHSi(CHCl、CFCHCHSi(CH)(H)Clなどのクロロシラン、あるいは、前記クロロシランのクロロ基を他のハロゲン基、−O−S(O)−R’、あるいは、−O−C(O)−R’(R’は一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8の1価の炭化水素基)等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0062】
前記一般式[5]の−Y基になることのある−O−S(O)−R’基、および、−O−C(O)−R’基のR’は、例えば、−CH、−C、−C、−C、−C、−C−CH、−CF、−C−CF、−C、−C、−C−CHなどがある。
【0063】
これらのうち、−Y基がクロロ基、−OC(O)−CF、−OS(O)−CFであると前記凹凸パターン表面に保護膜を短時間に形成できるためより好ましい。
【0064】
また、前記酸Aは、反応によって得られたものであってもよい。例えば、下記一般式[6]で表されるようにケイ素化合物Bと酸Bとを反応させて得られたものであってもよい。
【0065】
【化5】

【0066】
ここで、R(H)Si−Z4−g−hはケイ素化合物B、A−Hは酸B、R(H)Si−A4−g−hは反応から得られる酸Aを表す。Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Aは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン基、−O−S(O)−R’、および、−O−C(O)−R’(R’は、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8の1価の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つの基である。また、Zは、それぞれ互いに独立して、Siと結合する元素が窒素の1価の有機基を示す。また、gは1〜3の整数、hは0〜2の整数であり、gとhの合計は1〜3である。なお、式[6]において、Z−Hは副生成物であり、前記保護膜形成に寄与しない成分であっても良い。
【0067】
本発明の保護膜形成用薬液は、前記ケイ素化合物Aと前記式[6]の反応で得られた触媒としての酸Aを混合して含有するものであってもよい。また、前記酸Bに対し前記ケイ素化合物Bを過剰に添加し、前記式[6]の反応で消費されなかったケイ素化合物Bが、前記反応により生成した酸Aと反応して前記保護膜を形成するものであってもよい。すなわち、前記式[6]の反応で消費されなかったケイ素化合物Bの余剰分はケイ素化合物Aとして前記保護膜形成に寄与するものであってもよい。なお、前記ケイ素化合物Bは、前記酸Bに対して、モル比で0.2〜100000モル倍とすることが好ましく、0.5〜50000モル倍、さらに1〜10000モル倍とすることが好ましい。
【0068】
なお、前記式[6]の右辺のように触媒としての酸Aが得られるのであれば、前記のケイ素化合物Bと酸Bとの反応以外の反応を利用してもよい。
【0069】
前記式[6]の左辺のケイ素化合物BのZとしてのSiに結合する元素が窒素の1価の有機基には、水素、炭素、窒素、酸素だけでなく、ケイ素、硫黄、ハロゲン元素などが含まれていても良い。Siと結合する元素が窒素の1価の有機基の例としては、イソシアネート基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、イソチオシアネート基、アジド基、アセトアミド基、−N(CH)C(O)CH、−N(CH)C(O)CF、−N=C(CH)OSi(CH、−N=C(CF)OSi(CH、−NHC(O)−OSi(CH、−NHC(O)−NH−Si(CH、イミダゾール環、オキサゾリジノン環、モルホリン環、−NH−C(O)−Si(CH、−N(H)2−i(Si(H)3−j(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基、iは1または2、jは0〜2の整数)などがある。
【0070】
この中でも、前記式[6]の左辺のケイ素化合物BのZは、−N(CH、−NH、−N(C、−N(CH)C(O)CH、−N(CH)C(O)CF、−NHC(O)−NH−Si(CH、イミダゾール環、−NH−C(O)−Si(CH、−N(H)2−p(Si(H)3−q(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8の1価の炭化水素基、pは1または2、qは0〜2の整数)が好ましい。
【0071】
また、前記式[6]の左辺の酸Bとしては、例えば、無機酸や有機酸があり、無機酸の例としては、ハロゲン化水素、硫酸、過塩素酸、リン酸など、有機酸の例としては、一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良いアルカンスルホン酸やカルボン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などがある。特に、塩化水素、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸が好ましい。
【0072】
前記薬液中の水分量は、該薬液総量に対し5000質量ppm以下であることが好ましい。水分量が5000質量ppm超の場合、前記ケイ素化合物Aの活性、および/または、前記酸Aの反応促進効果が低下し、前記保護膜を短時間で形成しにくくなる。従って、前記薬液に含まれるケイ素化合物Aや非プロトン性有機溶媒は水を多く含まないものであることが好ましい。なお、前記薬液中の水分量は10ppm以上であってもよい。
【0073】
また、前記薬液中の液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個以下であることが好ましい。前記0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個超であると、パーティクルによるパターンダメージを誘発する恐れがありデバイスの歩留まり低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個以下であれば、前記保護膜を形成した後の、溶媒や水による洗浄を省略または低減できるため好ましい。このため、前記薬液中の0.5μmより大きい粒子の該薬液1mL当たりの個数は少ないほど好ましいが、前記0.5μmより大きい粒子の数は該薬液1mL当たり1個以上であってもよい。なお、本発明における薬液中の液相でのパーティクル測定は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して測定するものであり、パーティクルの粒径とは、PSL(ポリスチレン製ラテックス)標準粒子基準の光散乱相当径を意味する。
【0074】
また、前記薬液中のNa、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物含有量が、該薬液総量に対しそれぞれ100質量ppb以下であることが好ましい。前記の各元素の金属不純物としては、金属微粒子、イオン、コロイド、錯体、酸化物や窒化物といった形で、溶解、未溶解に係らず薬液中に存在するもの全てが対象となる。前記金属不純物含有量が、該薬液総量に対しそれぞれ100質量ppb超であると、デバイスの接合リーク電流が増大する恐れがありデバイスの歩留まり低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、前記金属不純物含有量が、該薬液総量に対しそれぞれ100質量ppb以下であると、前記保護膜を形成した後の、溶媒や水による洗浄を省略または低減できるため好ましい。なお、前記金属不純物含有量は、該薬液総量に対し各0.01質量ppb以上であってもよい。
【0075】
前記一般式[1]で表されるケイ素化合物Aと触媒としての酸Aを混合して含有させる保護膜形成用薬液の調製方法において、混合前のケイ素化合物A、酸A、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つを精製することが好ましい。また、保護膜形成用薬液が溶媒を含有する場合は、前記の混合前のケイ素化合物A及び酸Aは、溶媒を含んだ溶液状態であってもよく、この場合前記精製は、混合前のケイ素化合物Aまたはその溶液、酸Aまたはその溶液、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つを対象とするものであってもよい。
【0076】
前記精製は、モレキュラーシーブ等の吸着剤や蒸留等による水分子の除去、イオン交換樹脂や蒸留等によるNa、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物の除去、及び、フィルターろ過によるパーティクル等の汚染物質の除去のうち少なくとも1つの除去手段を用いて行われるものである。保護膜形成用薬液の活性やウェハの清浄度を考慮して、水分子を除去し、かつ、金属不純物を除去し、かつ、汚染物質を除去することが好ましく、除去する順番は問わない。
【0077】
また、本発明の保護膜形成用薬液は、原料を2つ以上に分けた状態で保管し、使用前に混合して使うこともできる。例えば、前記保護膜形成用薬液の原料の一部としてケイ素化合物A、触媒としての酸Aを用いる場合、ケイ素化合物Aと触媒としての酸Aを個別に保管し、使用前に混合することもできる。ケイ素化合物B、及び酸Bを用いる場合、ケイ素化合物Bと酸Bを個別に保管して使用前に混合することもできる。なお、混合前のケイ素化合物と酸はそれぞれ溶液状態であっても良い。また、上記のケイ素化合物と酸を同じ溶液で保管して使用前に別の原料と混合することもできる。
【0078】
以下、ウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とする方法について説明する。まず、該ウェハ表面にレジストを塗布したのち、レジストマスクを介してレジストに露光し、露光されたレジスト、または、露光されなかったレジストをエッチング除去することによって所望の凹凸パターンを有するレジストを作製する。また、レジストにパターンを有するモールドを押し当てることでも、凹凸パターンを有するレジストを得ることができる。次に、ウェハをエッチングする。このとき、レジストパターンの凹の部分が選択的にエッチングされる。最後に、レジストを剥離すると、微細な凹凸パターンを有するウェハが得られる。
【0079】
表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコンを含むウェハとしては、ウェハ表面にシリコン、または酸化ケイ素、窒化ケイ素などシリコンを含む膜が形成されたもの、あるいは、上記凹凸パターンを形成したときに、該凹凸パターンの表面の少なくとも一部がシリコン、または酸化ケイ素、窒化ケイ素などシリコンを含むものが含まれる。
【0080】
また、シリコン、酸化ケイ素、および、窒化ケイ素から選ばれる少なくとも1つを含む複数の成分から構成されたウェハに対しても、シリコン、酸化ケイ素、および、窒化ケイ素から選ばれる少なくとも1つの表面に撥水性保護膜を形成することができる。該複数の成分から構成されたウェハとしては、シリコン、酸化ケイ素、および、窒化ケイ素から選ばれる少なくとも1つがウェハ表面に形成したもの、あるいは、凹凸パターンを形成したときに、該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコン、酸化ケイ素、および、窒化ケイ素から選ばれる少なくとも1つとなるものも含まれる。
【0081】
前記ウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とした後、水系洗浄液で表面の洗浄を行い、乾燥等により水系洗浄液を除去すると、凹部の幅が小さく、凸部のアスペクト比が大きいと、パターン倒れが生じやすくなる。該凹凸パターンは、図1及び図2に記すように定義される。図1は、表面が微細な凹凸パターン2を有する面とされたウェハ1を斜視したときの模式図を示し、図2は図1中のa−a’断面の一部を示したものである。凹部の幅5は、図2に示すように凸部3と凸部3の間隔で示され、凸部のアスペクト比は、凸部の高さ6を凸部の幅7で割ったもので表される。洗浄工程でのパターン倒れは、凹部の幅が70nm以下、特には45nm以下、アスペクト比が4以上、特には6以上のときに生じやすくなる。
【0082】
本発明の好ましい態様では、前記(工程1)に記したように、ウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とした後、水系洗浄液を当該面に供し、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に水系洗浄液を保持する。そして、前記(工程2)に記したように、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持された水系洗浄液を該水系洗浄液とは異なる洗浄液Aで置換する。該洗浄液Aの好ましい例としては、本発明で特定する保護膜形成用薬液、水、有機溶媒、あるいは、それらの混合物、あるいは、それらに酸、アルカリ、界面活性剤、酸化剤のうち少なくとも1種が混合されたもの等が挙げられる。また、洗浄液Aとして前記薬液以外を使用したときは、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に洗浄液Aが保持された状態で、該洗浄液Aを該保護膜形成用薬液に置換していくことが好ましい。
【0083】
また、該洗浄液Aの好ましい例の一つである有機溶媒の例としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒等が挙げられる。
【0084】
前記炭化水素類の例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどがあり、前記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチルなどがあり、前記エーテル類の例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあり、前記ケトン類の例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどがあり、前記含ハロゲン溶媒の例としては、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンなどのパーフルオロカーボン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、オクタフルオロシクロペンタン、2,3−ジハイドロデカフルオロペンタン、ゼオローラH(日本ゼオン製)などのハイドロフルオロカーボン、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル、アサヒクリンAE−3000(旭硝子製)、Novec HFE−7100、Novec HFE−7200、Novec7300、Novec7600(いずれも3M製)などのハイドロフルオロエーテル、テトラクロロメタンなどのクロロカーボン、クロロホルムなどのハイドロクロロカーボン、ジクロロジフルオロメタンなどのクロロフルオロカーボン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどのハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテルなどがあり、前記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドなどがあり、アルコール類の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールなどがあり、前記多価アルコールの誘導体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどがあり、含窒素化合物溶媒の例としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどがある。
【0085】
また、該洗浄液Aに混合されることのある酸としては、無機酸や有機酸がある。無機酸の例としては、フッ酸、バッファードフッ酸、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸など、有機酸の例としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸などが挙げられる。該洗浄液Aに混合されることのあるアルカリとしては、アンモニア、コリンなどが挙げられる。該洗浄液Aに混合されることのある酸化剤としては、オゾン、過酸化水素などが挙げられる。
【0086】
なお、該洗浄液Aが有機溶媒であれば、前記保護膜形成用薬液を水と接触させることなく凹部に供すことができるので好ましい。また、該洗浄液Aが酸水溶液を含んでいれば、前記保護膜が短時間で形成できるので好ましい。
【0087】
また、前記洗浄液Aとして、複数の洗浄液を用いても良い。例えば、前記酸水溶液を含む洗浄液と前記有機溶媒の洗浄液の2種類を用いることができる。
【0088】
図3は、洗浄工程にて凹部4が保護膜形成用薬液8を保持した状態の模式図を示している。図3の模式図のウェハは、図1のa−a’断面の一部を示すものである。洗浄工程の際に、保護膜形成用薬液が、凹凸パターン2が形成されたウェハ1に供される。この際、前記薬液は図3に示したように凹部4に保持された状態となり、凹部4の表面に保護膜が形成されることにより該表面が撥水化される。
【0089】
保護膜形成用薬液は、温度を高くすると、より短時間で前記保護膜を形成しやすくなる。均質な保護膜を形成しやすい温度は、10℃以上、該薬液の沸点未満であり、特には15℃以上、該薬液の沸点よりも10℃低い温度未満で保持されることが好ましい。前記薬液の温度は、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持されているときも当該温度に保持されることが好ましい。
【0090】
なお、他の洗浄液についても、10℃以上、洗浄液の沸点未満の温度で保持しても良い。例えば、洗浄液Aが酸水溶液を含む、特に好ましくは酸水溶液と沸点が100℃以上の有機溶媒を含む溶液を用いる場合、洗浄液の温度を該洗浄液の沸点付近に高くすると、前記保護膜が短時間で形成しやすくなるので好ましい。
【0091】
前記凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保護膜形成用薬液を保持する工程(工程3)の後で、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持された前記薬液を該薬液とは異なる洗浄液Bに置換した後に、乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程(工程4)に移ってもよく、この洗浄液Bの例としては、水系溶液からなる水系洗浄液、または、有機溶媒、または、前記水系洗浄液と有機溶媒の混合物、それらに酸、アルカリ、界面活性剤のうち少なくとも1種が混合されたもの、またはそれらに保護膜形成用薬液に含まれるケイ素化合物A、及び触媒としての酸Aが該薬液よりも低濃度になるように添加されたもの等が挙げられる。
【0092】
また、該洗浄液Bの好ましい例の一つである有機溶媒の例としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒等が挙げられる。
【0093】
前記炭化水素類の例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどがあり、前記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチルなどがあり、前記エーテル類の例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあり、前記ケトン類の例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどがあり、前記含ハロゲン溶媒の例としては、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンなどのパーフルオロカーボン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、オクタフルオロシクロペンタン、2,3−ジハイドロデカフルオロペンタン、ゼオローラH(日本ゼオン製)などのハイドロフルオロカーボン、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル、アサヒクリンAE−3000(旭硝子製)、Novec HFE−7100、Novec HFE−7200、Novec7300、Novec7600(いずれも3M製)などのハイドロフルオロエーテル、テトラクロロメタンなどのクロロカーボン、クロロホルムなどのハイドロクロロカーボン、ジクロロジフルオロメタンなどのクロロフルオロカーボン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどのハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテルなどがあり、前記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドなどがあり、アルコール類の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールなどがあり、前記多価アルコールの誘導体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどがあり、含窒素化合物溶媒の例としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどがある。
【0094】
また、前記洗浄液Bへの置換を経て、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に水系溶液からなる水系洗浄液を保持した後に、乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程(工程4)に移ってもよい。
【0095】
また、前記洗浄液Bとして、複数の洗浄液を用いても良い。例えば、有機溶媒(好ましくは水溶性有機溶媒を含む)と水系洗浄液の2種類を用いることができる。
【0096】
水系洗浄液の例としては、水、あるいは、水に有機溶媒、酸、アルカリのうち少なくとも1種が混合された水を主成分(例えば、水の含有率が50質量%以上)とするものが挙げられる。特に、水系洗浄液に水を用いると、前記薬液によって撥水化された凹凸パターンの少なくとも凹部表面の該液との接触角θが大きくなって該凹部表面の毛細管力Pが小さくなり、さらに乾燥後にウェハ表面に汚れが残りにくくなるので好ましい。
【0097】
保護膜形成用薬液により撥水化された凹部4に水系洗浄液が保持された場合の模式図を図4に示す。図4の模式図のウェハは、図1のa−a’断面の一部を示すものである。凹凸パターン表面は前記薬液により撥水性保護膜10が形成され撥水化されている。そして、該保護膜10は、水系洗浄液9が凹凸パターン表面から除去されるときもウェハ表面に保持される。
【0098】
ウェハの凹凸パターンの少なくとも凹部表面に、保護膜形成用薬液により前記保護膜10が形成されたとき、該表面に水が保持されたと仮定したときの接触角は50〜130°であると、パターン倒れが発生し難いため好ましい。また、接触角は90°に近いほど該凹部表面の毛細管力が小さくなり、パターン倒れが更に発生し難くなるため、60〜120°が特に好ましく、70〜110°がさらに好ましい。また、毛細管力は2.1MN/m以下であることが好ましい。該毛細管力が2.1MN/m以下であれば、パターン倒れが発生し難いため好ましい。また、該毛細管力が小さくなると、パターン倒れは更に発生し難くなるため、該毛細管力は1.5MN/m以下が特に好ましく、1.0MN/m以下がさらに好ましい。さらに、洗浄液との接触角を90°付近に調整して毛細管力を限りなく0.0MN/mに近づけることが理想的である。
【0099】
次に、前記(工程4)に記したように、乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程が行われる。該工程では、凹凸パターン表面に保持された液体が乾燥により除去される。当該乾燥は、スピン乾燥法、IPA(2−プロパノール)蒸気乾燥、マランゴニ乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、真空乾燥などの周知の乾燥方法によって行うことが好ましい。
【0100】
前記凹凸パターン表面から液体が除去されるときに、該表面に保持されている液体は、前記薬液、洗浄液B、水系洗浄液、及びそれらの混合液でもよい。なお、前記薬液を含む混合液は、前記薬液を洗浄液Bに置換する途中の状態の液でもよいし、あらかじめ前記薬液を該薬液とは異なる洗浄液に混合して得た混合液でもよい。また、前記凹凸パターン表面から液体が一旦除去された後で、前記凹凸パターン表面に、洗浄液B、水系洗浄液、および、それらの混合液から選ばれる少なくとも1つを保持させて、その後、乾燥しても良い。
【0101】
次に、前記(工程5)に記したように、ウェハ表面を光照射すること、ウェハを加熱すること、及び、ウェハをオゾン曝露することから選ばれる少なくとも1つの処理を行うことにより、撥水性保護膜10を除去する工程が行われる。
【0102】
光照射で前記保護膜10を除去する場合、該保護膜10中のC−C結合、C−F結合を切断することが有効であり、このためには、それらの結合エネルギーである83kcal/mol、116kcal/molに相当するエネルギーである340nm、240nmよりも短い波長を含む紫外線を照射することが好ましい。この光源としては、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、エキシマランプ、カーボンアークなどが用いられる。紫外線照射強度は、メタルハライドランプであれば、例えば、照度計(コニカミノルタセンシング製照射強度計UM−10、受光部UM−360〔ピーク感度波長:365nm、測定波長範囲:310〜400nm〕)の測定値で100mW/cm以上が好ましく、200mW/cm以上が特に好ましい。なお、照射強度が100mW/cm未満では前記保護膜10を除去するのに長時間要するようになる。また、低圧水銀ランプであれば、より短波長の紫外線を照射することになるので、照射強度が低くても短時間で前記保護膜10を除去できるので好ましい。
【0103】
また、光照射で前記保護膜10を除去する場合、紫外線で前記保護膜10の構成成分を分解すると同時にオゾンを発生させ、該オゾンによって前記保護膜10の構成成分を酸化揮発させると、処理時間が短くなるので特に好ましい。この光源としては、低圧水銀ランプやエキシマランプが用いられる。また、光照射しながらウェハを加熱してもよい。
【0104】
ウェハを加熱する場合、400〜700℃、好ましくは、500〜700℃でウェハの加熱を行う。この加熱時間は、0.5〜60min、好ましくは1〜30minの保持で行うことが好ましい。また、当該工程では、オゾン曝露、プラズマ照射、コロナ放電などを併用してもよい。また、ウェハを加熱しながら光照射を行ってもよい。
【0105】
ウェハをオゾン曝露する場合、低圧水銀灯などによる紫外線照射や高電圧による低温放電等で発生させたオゾンをウェハ表面に供することが好ましい。ウェハをオゾン曝露しながら光照射してもよいし、加熱してもよい。
【0106】
前記のウェハ表面の保護膜を除去する工程では、前記光照射処理、前記加熱処理、前記オゾン曝露処理を組み合わせることによって、効率的にウェハ表面の保護膜を除去することができる。また、当該工程では、プラズマ照射、コロナ放電などを併用してもよい。
【実施例】
【0107】
ウェハの表面を微細な凹凸パターンを有する面とすること、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持された洗浄液を他の洗浄液で置換することは、他の文献等にて種々の検討がなされ、既に確立された技術であるので、本発明では、前記保護膜形成用薬液の評価を中心に行った。また、背景技術等で述べた式
P=2×γ×cosθ/S(γ:表面張力、θ:接触角、S:パターン寸法)
から明らかなようにパターン倒れは、洗浄液のウェハ表面への接触角、すなわち液滴の接触角と、洗浄液の表面張力に大きく依存する。凹凸パターン2の凹部4に保持された洗浄液の場合、液滴の接触角と、パターン倒れと等価なものとして考えてよい該凹部表面の毛細管力とは相関性があるので、前記式と撥水性保護膜10の液滴の接触角の評価から毛細管力を導き出してもよい。なお、実施例において、前記洗浄液として、水系洗浄液の代表的なものである水を用いた。
【0108】
しかしながら、表面に微細な凹凸パターンを有するウェハの場合、パターンは非常に微細なため、該凹凸パターン表面に形成された前記保護膜10自体の接触角を正確に評価できない。
【0109】
水滴の接触角の評価は、JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」にもあるように、サンプル(基材)表面に数μlの水滴を滴下し、水滴と基材表面のなす角度の測定によりなされる。しかし、パターンを有するウェハの場合、接触角が非常に大きくなる。これは、Wenzel効果やCassie効果が生じるからで、接触角が基材の表面形状(ラフネス)に影響され、見かけ上の水滴の接触角が増大するためである。
【0110】
そこで、本発明では前記薬液を表面が平滑なウェハに供して、ウェハ表面に保護膜を形成して、該保護膜を表面に微細な凹凸パターン2が形成されたウェハ1の表面に形成された保護膜10とみなし、種々評価を行った。なお、本発明では、表面が平滑なウェハとして、表面に熱酸化膜層または窒化ケイ素層またはシリコン層を有し表面が平滑なシリコンウェハを用いた。
【0111】
詳細を下記に述べる。以下では、保護膜形成用薬液の評価方法、保護膜形成用薬液が供されたウェハの評価方法、該保護膜形成用薬液の調製、そして、ウェハに該保護膜形成用薬液を供した後の評価結果が述べられる。
【0112】
〔保護膜形成用薬液の評価方法〕
保護膜形成用薬液の評価方法として、以下の(1)〜(2)の評価を行った。
【0113】
(1)保護膜形成用薬液の水置換性
平滑な熱酸化膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ1μmの熱酸化膜層を有するSiウェハ)を室温で1質量%のフッ酸水溶液に2min浸漬し、次いで純水に1min浸漬した。次いで、ウェハが純水に濡れた状態で、ウェハを保護膜形成用薬液に5min浸漬した。浸漬後、目視観察でウェハ表面に水が残ってないものを合格(表中で○と表記)とした。
【0114】
(2)保護膜形成用薬液のpH測定
pH試験紙(ADVANTEC社製WR)に25℃の薬液を付着させ、pHを測定した。
【0115】
〔保護膜形成用薬液が供されたウェハの評価方法〕
保護膜形成用薬液が供されたウェハの評価方法として、以下の(1)〜(4)の評価を行った。
【0116】
(1)ウェハ表面に形成された保護膜の接触角評価
保護膜が形成されたウェハ表面上に純水約2μlを置き、水滴とウェハ表面とのなす角(接触角)を接触角計(協和界面科学製:CA−X型)で測定した。ここでは保護膜の接触角が50〜130°の範囲であったものを合格(表中で○と表記)とした。
【0117】
(2)毛細管力の評価
下式を用いてPを算出し、毛細管力(Pの絶対値)を求めた。
P=2×γ×cosθ/S
ここで、γは表面張力、θは接触角、Sはパターン寸法を示す。なお、線幅:45nmのパターンでは、ウェハが気液界面を通過するときの洗浄液が水の場合はパターンが倒れやすく、2−プロパノールの場合はパターンが倒れ難い傾向がある。パターン寸法:45nm、ウェハ表面:酸化ケイ素の場合、洗浄液が、2−プロパノール(表面張力:22mN/m、酸化ケイ素との接触角:1°)では毛細管力は0.98MN/mとなる。一方、水銀を除く液体の中で表面張力が最も大きい水(表面張力:72mN/m、酸化ケイ素との接触角:2.5°)では毛細管力は3.2MN/mとなる。そこで中間の2.1MN/mを目標とし、水が保持されたときの毛細管力が2.1MN/m以下になれば合格(表中で○と表記)とし、2.1MN/mを越えるものは不合格(表中で×と表記)とした。
【0118】
(3)保護膜の除去性
以下の条件でメタルハライドランプのUV光をサンプルに2時間照射した。照射後に水滴の接触角が30°以下となったものを合格(表中で○と表記)とした。
・ランプ:アイグラフィックス製M015−L312(強度:1.5kW)
・照度:下記条件における測定値が128mW/cm
・測定装置:紫外線強度計(コニカミノルタセンシング製、UM−10)
・受光部:UM−360
(受光波長:310〜400nm、ピーク波長:365nm)
・測定モード:放射照度測定
【0119】
(4)保護膜除去後のウェハの表面平滑性評価
原子間力電子顕微鏡(セイコ−電子製:SPI3700、2.5μm四方スキャン)によって表面観察し、中心線平均面粗さ:Ra(nm)を求めた。なお、Raは、JIS B 0601で定義されている中心線平均粗さを測定面に対し適用して三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」として次式で算出した。保護膜を除去した後のウェハのRa値が1nm以下であれば、洗浄によってウェハ表面が浸食されていない、および、前記薬液の残渣がウェハ表面にないとし、合格(表中で○と表記)とした。
【0120】
【数1】

【0121】
ここで、X、X、Y、Yは、それぞれ、X座標、Y座標の測定範囲を示す。Sは、測定面が理想的にフラットであるとした時の面積であり、(X−X)×(Y−Y)の値とした。また、F(X,Y)は、測定点(X,Y)における高さ、Zは、測定面内の平均高さを表す。
【0122】
実施例1
(1)保護膜形成用薬液の調製
ケイ素化合物Aとしてトリメチルクロロシラン〔(CHSiCl〕;5g、水溶性の非プロトン性有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、水100重量部の溶解度:22重量部);95gを混合し、約5min撹拌して、撥水性洗浄液の総量に対するケイ素化合物Aの濃度(以降「ケイ素化合物濃度」と記載する)が5質量%、撥水性洗浄液の総量に対する水溶性非プロトン性有機溶媒の濃度(以降「水溶性有機溶媒濃度」と記載する)が95質量%の保護膜形成用薬液を得た。さらに、モレキュラーシーブ4A(ユニオン昭和製)により該薬液から水分を除去し、次いで、イオン交換樹脂(日本ポール製イオンクリーンSL)により該薬液から金属不純物を除去し、次いで、フィルターろ過(日本インテグリス製オプチマイザー)により該薬液からパーティクルを除去し精製を行った。精製後の該薬液中の水分量をカールフィッシャー式水分計(京都電子製、ADP−511型)により測定を行ったところ、精製後の該薬液中の水分量は、該薬液総量に対し6質量ppmであった。また、精製後の該薬液中の金属不純物含有量を誘導結合プラズマ質量分析装置(横河アナリティカルシステムズ製、Agilent 7500cs型)により測定したところ、精製後の該薬液中のNa、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物含有量は、該薬液総量に対しそれぞれ、Na=2質量ppb、Mg=0.04質量ppb、K=0.2質量ppb、Ca=1質量ppb、Mn=0.005質量ppb、Fe=0.08質量ppb、Cu=0.06質量ppbであった。また、液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.5μmより大きい粒子の数を光散乱式液中粒子測定装置(リオン社製、KS−42AF型)により測定したところ、0.5μmより大きい粒子の数は該薬液1mL当たり2個であった。なお、本実施例以降の実施例においても、同様の精製を行い、水分量が薬液総量に対し5000質量ppm以下であり、Na、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物含有量は、該薬液総量に対しそれぞれ100質量ppb以下であり、0.5μmより大きい粒子の数は該薬液1mL当たり100個以下であることを確認した薬液を用いた。
【0123】
(2)シリコンウェハの洗浄
平滑なSiO膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ1μmの熱酸化膜層を有するSiウェハ)を室温で1質量%のフッ酸水溶液に2min浸漬し、次いで純水に1min、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した。また、LP−CVDで作製したSiN膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ50nmの窒化ケイ素膜を有するシリコンウェハ)、および、ポリシリコン膜付きシリコンウェハを1質量%のフッ酸水溶液に2min浸漬し、次いで純水に1min、28質量%アンモニア水:30質量%過酸化水素水:水を1:1:5で混合した洗浄液に1min、純水に1min浸漬した。
【0124】
(3)シリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理
シリコンウェハを、上記「(1)保護膜形成用薬液の調製」で調製した保護膜形成用薬液に20℃で10min浸漬させた。その後、シリコンウェハをiPAに1min浸漬し、次いで、水系洗浄液としての純水に1min浸漬した。最後に、シリコンウェハを純水から取出し、エアーを吹き付けて、表面の純水を除去した。
【0125】
得られたウェハを上記「保護膜形成用薬液が供されたウェハの評価方法」に記載した要領で評価したところ、表1に示すとおり、表面処理前の初期接触角が10°未満であったものが、表面処理後の接触角は60°となり、撥水性付与効果を示した。また、上記「毛細管力の評価」に記載した式を使って、水が保持されたときの毛細管力を計算したところ、毛細管力は1.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0126】
【表1】

【0127】
実施例2
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物A濃度を10質量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は68°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0128】
実施例3
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、ジメチルクロロシラン〔(CHSi(H)Cl〕を用いた以外はすべて実施例2と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は78°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.7MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0129】
実施例4
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、(トリフルオロプロピル)トリクロロシラン〔CFCHCHSiCl〕を用いた以外はすべて実施例2と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は74°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.9MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0130】
実施例5
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、(トリフルオロプロピル)ジメチルクロロシラン〔CFCHCHSi(CHCl〕を用いた以外はすべて実施例2と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0131】
実施例6
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、(オクチル)ジメチルクロロシラン〔C17Si(CHCl〕を用いた以外はすべて実施例2と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0132】
実施例7
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート〔(CHSi−OS(O)CF〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0133】
実施例8
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとしてトリメチルメトキシシラン〔(CHSi−OCH〕;3g、触媒としての酸としてトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート〔(CHSi−OS(O)CF〕;1g、水溶性の非プロトン性有機溶媒としてPGMEA;96gを混合して保護膜形成用薬液を得た以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0134】
実施例9
触媒としての酸を無水トリフルオロメタンスルホン酸〔(CFSOO〕とした以外はすべて実施例8と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0135】
実施例10
触媒としての酸をトリフルオロメタンスルホン酸〔CHS(O)OH〕とした以外はすべて実施例8と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0136】
実施例11
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物A濃度を10質量%とした以外はすべて実施例10と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は88°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0137】
実施例12
触媒としての酸を98%硫酸〔HSO〕とした以外はすべて実施例8と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0138】
実施例13
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとしてヘキサメチルジシラザン〔(HC)Si−NH−Si(CH〕;1g、水溶性の非プロトン性有機溶媒としてPGMEA;98.9gを混合した。さらに、触媒としての酸としてトリメチルシリルトリフルオロアセテート〔(CHSi−OC(O)CF〕;0.1gを混合して、保護膜形成用薬液を得た以外はすべて実施例1と同じとした。ヘキサメチルジシラザンとPGMEAの混合液、および、保護膜形成用薬液のpH値は、それぞれ、8、および、7であった。また、保護膜の評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0139】
実施例14
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物A濃度を5質量%とした以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0140】
実施例15
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物A濃度を10質量%とした以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は88°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0141】
実施例16
保護膜形成用薬液中の水溶性の非プロトン性有機溶媒としてエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(EGMEA、水の溶解度:任意に溶解)を用いた以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0142】
実施例17
保護膜形成用薬液中の水溶性の非プロトン性有機溶媒としてエチレングリコールジメチルエーテル(モノグリム、水の溶解度:任意に溶解)を用いた以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は82°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.4MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0143】
実施例18
保護膜形成用薬液中の水溶性の非プロトン性有機溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム、水の溶解度:任意に溶解)を用いた以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は82°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.4MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0144】
実施例19
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとしてヘキサメチルジシラザン〔(HC)Si−NH−Si(CH〕;1g、触媒としての酸としてトリメチルシリルトリフルオロアセテート〔(CHSi−OC(O)CF〕;0.1g、水溶性の非プロトン性有機溶媒としてPGMEA;88.9g、その他の有機溶媒としてフッ素系溶剤(住友3M製Novec HFE−7100:ハイドロフルオロエーテル);10.0gを混合して保護膜形成用薬液を得た以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0145】
実施例20
保護膜形成用薬液中のその他の溶媒として1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CTFP)を用いた以外はすべて実施例19と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0146】
実施例21
保護膜形成用薬液中のその他の溶媒として1,2ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(DCTFP)を用いた以外はすべて実施例19と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0147】
実施例22
保護膜形成用薬液中の酸として、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート〔(CHSiOS(O)CF〕を用いた以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0148】
実施例23
保護膜形成用薬液中の酸として、無水トリフルオロ酢酸〔{CFC(O)}O〕を用いた以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は82°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.4MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0149】
実施例24
保護膜形成用薬液中の酸として、無水トリフルオロメタンスルホン酸〔{CFS(O)}O〕を用いた以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0150】
実施例25
保護膜形成用薬液中の酸として、トリメチルシリルクロロシラン〔(CHSiCl〕を用いた以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は78°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.7MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0151】
実施例26
保護膜形成用薬液中の酸として、トリフルオロ酢酸〔CFC(O)OH〕を用いた以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0152】
実施例27
保護膜形成用薬液中の酸として、トリフルオロメタンスルホン酸〔CFS(O)OH〕を用いた以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0153】
実施例28
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、テトラメチルジシラザン〔(HC)Si(H)−NH−Si(H)(CH〕を用いた以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0154】
実施例29
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、ジフェニルテトラメチルジシラザン〔CSi(CH−NH−Si(CH〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0155】
実施例30
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、1,3−ビス(トリフルオロプロピル)テトラメチルジシラザン〔CFCHCHSi(CH−NH−Si(CHCHCHCF〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0156】
実施例31
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、トリメチルシリルジメチルアミン〔(CHSi−N(CH〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は82°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.4MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0157】
実施例32
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、トリメチルシリルジエチルアミン〔(CHSi−N(C〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0158】
実施例33
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、トリメチルシリルイソシアネート〔(CHSi−NCO〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0159】
実施例34
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、下式に示すトリメチルシリルイミダゾールを用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は82°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.4MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0160】
【化6】

【0161】
実施例35
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、ブチルジメチル(ジメチルアミノ)シラン〔CSi(CH−N(CH〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は92°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0162】
実施例36
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、オクチルジメチル(ジメチルアミノ)シラン〔C17Si(CH−N(CH〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は104°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.8MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0163】
実施例37
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、テトラメチルジシラザン〔(HC)Si(H)−NH−Si(H)(CH〕を用いた以外はすべて実施例19と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0164】
実施例38
保護膜形成用薬液中の酸として、無水トリフルオロ酢酸〔{CFC(O)}O〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0165】
実施例39
保護膜形成用薬液中の酸として、無水トリフルオロメタンスルホン酸〔{CFS(O)}O〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は82°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.4MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0166】
実施例40
保護膜形成用薬液中の酸として、トリメチルシリルクロロシラン〔(CHSiCl〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0167】
実施例41
保護膜形成用薬液中の酸として、トリフルオロ酢酸〔CFC(O)OH〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0168】
【表2】

【0169】
実施例42
保護膜形成用薬液中の酸として、トリフルオロメタンスルホン酸〔CFS(O)OH〕を用いた以外はすべて実施例28と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は82°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.4MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0170】
実施例43
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、トリメチルシリルジメチルアミン〔(CHSi−N(CH〕を用いた以外はすべて実施例41と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0171】
実施例44
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、トリメチルシリルジエチルアミン〔(CHSi−N(C〕を用いた以外はすべて実施例41と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0172】
実施例45
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、ブチルジメチル(ジメチルアミノ)シラン〔CSi(CH−N(CH〕を用いた以外はすべて実施例41と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は92°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0173】
実施例46
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、オクチルジメチル(ジメチルアミノ)シラン〔C17Si(CH−N(CH〕を用いた以外はすべて実施例41と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は104°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.8MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0174】
実施例47
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、トリメチルシリルジメチルアミン〔(CHSi−N(CH〕を用いた以外はすべて実施例42と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0175】
実施例48
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、ブチルジメチル(ジメチルアミノ)シラン〔CSi(CH−N(CH〕を用いた以外はすべて実施例42と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は94°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0176】
実施例49
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとして、オクチルジメチル(ジメチルアミノ)シラン〔C17Si(CH−N(CH〕を用いた以外はすべて実施例42と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は104°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.8MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0177】
実施例50
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」で、平滑な熱酸化膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ1μmの熱酸化膜層を有するSiウェハ)を1質量%のフッ酸水溶液に室温で2min浸漬し、純水に1min浸漬した。さらに、0.3質量%の塩酸水溶液に98℃で1min浸漬し、次いで室温で純水に1min浸漬したのち、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した以外は、実施例13と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0178】
実施例51
平滑な窒化ケイ素膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ0.3μmの窒化ケイ素層を有するSiウェハ)を用いた以外は実施例50と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は78°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.7MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0179】
実施例52
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」で、平滑な窒化ケイ素膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ0.3μmの窒化ケイ素層を有するSiウェハ)を1質量%のフッ酸水溶液に室温で2min浸漬し、純水に1min浸漬した。さらに、0.6質量%の塩酸水溶液とエチレングリコールの質量比が50:50の混合液に98℃で1min浸漬し、次いで室温で純水に1min浸漬したのち、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した以外は、実施例51と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0180】
実施例53
保護膜形成用薬液中の酸として、トリフルオロ酢酸〔CFC(O)OH〕を用いた以外はすべて実施例51と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は78°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.7MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0181】
実施例54
平滑なポリシリコン膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ0.3μmのポリシリコン層を有するSiウェハ)を用いた以外は実施例51と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は78°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.7MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0182】
実施例55
平滑なポリシリコン膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ0.3μmのポリシリコン層を有するSiウェハ)を用いた以外は実施例52と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0183】
実施例56
平滑なポリシリコン膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ0.3μmのポリシリコン層を有するSiウェハ)を用いた以外は実施例53と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。また、保護膜形成用薬液の水置換性は良好であった。
【0184】
比較例1
シリコンウェハに保護膜形成用薬液を供さなかった以外は、実施例1と同じとした。すなわち、本比較例では、撥水化されていない表面状態のウェハを評価した。評価結果は表2に示すとおり、ウェハの接触角は3°と低く、水が保持されたときの毛細管力は3.2MN/mと大きかった。
【0185】
比較例2
保護膜形成用薬液中の溶媒としてフッ素系溶剤(住友3M製Novec HFE−7100:ハイドロフルオロエーテル)のみを用いた以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表2に示すとおり、保護膜形成用薬液の水置換性が悪かった。
【0186】
実施例57
ケイ素化合物Bとして、ヘキサメチルジシラザン〔(HC)Si−NH−Si(CH〕;1g、酸Bとしてトリフルオロ酢酸〔CFC(O)OH〕;0.1gと有機溶媒としてPGMEA;98.9gを混合し、下式のように反応させることにより、酸触媒(酸A)としてトリメチルシリルトリフルオロアセテート、ケイ素化合物Aとしてヘキサメチルジシラザン、有機溶媒としてPGMEAを含む保護膜形成用薬液を得た以外は実施例1と同じとした。本実施例の薬液に含まれるヘキサメチルジシラザンは、前記の酸Aを得るための反応で消費されなかったケイ素化合物Bであり、該成分はケイ素化合物Aとして機能するものである。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0187】
【化7】

【0188】
【表3】

【0189】
実施例58
保護膜形成用薬液中の有機溶媒として、HFE−7100とPGMEAの質量比が95:5の混合溶媒を用いた以外はすべて実施例57と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0190】
実施例59
保護膜形成用薬液中の有機溶媒として、CTFPとPGMEAの質量比が95:5の混合溶媒を用いた以外はすべて実施例57と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0191】
実施例60
保護膜形成用薬液中の有機溶媒として、DCTFPとPGMEAの質量比が95:5の混合溶媒を用いた以外はすべて実施例57と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0192】
実施例61
酸Bとして、トリフルオロメタンスルホン酸〔CFS(O)OH〕を用いた以外はすべて実施例58と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0193】
実施例62
保護膜形成用薬液中の有機溶媒として、CTFPとPGMEAの質量比が95:5の混合溶媒を用いた以外はすべて実施例61と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0194】
実施例63
ケイ素化合物Bとして、テトラメチルジシラザン〔(HC)Si(H)−NH−Si(H)(CH〕;1g、酸Bとしてトリフルオロ酢酸〔CFC(O)OH〕;0.1gと有機溶媒としてPGMEA;98.9gを混合し、下式のように反応させることにより、酸触媒(酸A)としてジメチルシリルトリフルオロアセテート、ケイ素化合物Aとしてテトラメチルジシラザン、有機溶媒としてPGMEAを含む保護膜形成用薬液を得た以外は実施例1と同じとした。本実施例の薬液に含まれるテトラメチルジシラザンは、前記の酸Aを得るための反応で消費されなかったケイ素化合物Bであり、該成分はケイ素化合物Aとして機能するものである。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0195】
【化8】

【0196】
実施例64
ケイ素化合物B濃度を10質量%とした以外はすべて実施例63と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は88°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0197】
実施例65
保護膜形成用薬液中の有機溶媒として、HFE−7100とPGMEAの質量比が95:5の混合溶媒を用いた以外はすべて実施例63と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0198】
実施例66
酸Bとして、トリフルオロメタンスルホン酸〔CFS(O)OH〕を用いた以外はすべて実施例65と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0199】
実施例67
ケイ素化合物Bとして、トリメチルシリルジメチルアミン〔(CHSi−N(CH〕を用い、下式のように反応させることにより、酸触媒(酸A)としてトリメチルシリルトリフルオロアセテート、ケイ素化合物Aとしてトリメチルシリルジメチルアミンを含む保護膜形成用薬液を得た以外は実施例63と同じとした。本実施例の薬液に含まれるトリメチルシリルジメチルアミンは、前記の酸Aを得るための反応で消費されなかったケイ素化合物Bであり、該成分はケイ素化合物Aとして機能するものである。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0200】
【化9】

【0201】
実施例68
ケイ素化合物Bとして、トリメチルシリルジエチルアミン〔(CHSi−N(C〕を用い、下式のように反応させることにより、酸触媒(酸A)としてトリメチルシリルトリフルオロアセテート、ケイ素化合物Aとしてトリメチルシリルジエチルアミンを含む保護膜形成用薬液を得た以外は実施例63と同じとした。本実施例の薬液に含まれるトリメチルシリルジエチルアミンは、前記の酸Aを得るための反応で消費されなかったケイ素化合物Bであり、該成分はケイ素化合物Aとして機能するものである。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0202】
【化10】

【0203】
実施例69
ケイ素化合物Bとして、ブチルジメチル(ジメチルアミノ)シラン〔CSi(CH−N(CH〕を用い、下式のように反応させることにより、酸触媒(酸A)としてブチルジメチルシリルトリフルオロアセテート、ケイ素化合物Aとしてブチルジメチル(ジメチルアミノ)シランを含む保護膜形成用薬液を得た以外は実施例63と同じとした。本実施例の薬液に含まれるブチルジメチル(ジメチルアミノ)シランは、前記の酸Aを得るための反応で消費されなかったケイ素化合物Bであり、該成分はケイ素化合物Aとして機能するものである。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は92°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0204】
【化11】

【0205】
実施例70
ケイ素化合物Bとして、オクチルジメチル(ジメチルアミノ)シラン〔C17Si(CH−N(CH〕を用い、下式のように反応させることにより、酸触媒(酸A)としてオクチルジメチルシリルトリフルオロアセテート、ケイ素化合物Aとしてオクチルジメチル(ジメチルアミノ)シランを含む保護膜形成用薬液を得た以外は実施例63と同じとした。本実施例の薬液に含まれるオクチルジメチル(ジメチルアミノ)シランは、前記の酸Aを得るための反応で消費されなかったケイ素化合物Bであり、該成分はケイ素化合物Aとして機能するものである。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は104°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.8MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0206】
【化12】

【0207】
実施例71
酸Bとして、トリフルオロメタンスルホン酸〔CFS(O)OH〕を用いた以外はすべて実施例67と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0208】
実施例72
酸Bとして、トリフルオロメタンスルホン酸〔CFS(O)OH〕を用いた以外はすべて実施例69と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は94°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0209】
実施例73
酸Bとして、トリフルオロメタンスルホン酸〔CFS(O)OH〕を用いた以外はすべて実施例70と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は104°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.8MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0210】
実施例74
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」で、平滑な熱酸化膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ1μmの熱酸化膜層を有するSiウェハ)を1質量%のフッ酸水溶液に室温で2min浸漬し、純水に1min浸漬した。さらに、0.3質量%の塩酸水溶液に98℃で1min浸漬し、次いで室温で純水に1min浸漬したのち、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した以外は、実施例57と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0211】
実施例75
平滑な窒化ケイ素膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ0.3μmの窒化ケイ素層を有するSiウェハ)を用いた以外は実施例74と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は78°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.7MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0212】
実施例76
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」で、平滑な窒化ケイ素膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ0.3μmの窒化ケイ素層を有するSiウェハ)を1質量%のフッ酸水溶液に室温で2min浸漬し、純水に1min浸漬した。さらに、0.6質量%の塩酸水溶液とエチレングリコールの質量比が50:50の混合液に98℃で1min浸漬し、次いで室温で純水に1min浸漬したのち、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した以外は、実施例75と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0213】
実施例77
保護膜形成用薬液中の有機溶媒として、HFE−7100とPGMEAの質量比が95:5の混合溶媒を用いた以外はすべて実施例75と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は78°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.7MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0214】
実施例78
保護膜形成用薬液中の有機溶媒として、HFE−7100とPGMEAの質量比が95:5の混合溶媒を用いた以外はすべて実施例76と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0215】
実施例79
平滑なポリシリコン膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ0.3μmのポリシリコン層を有するSiウェハ)を用いた以外は実施例75と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【0216】
実施例80
平滑なポリシリコン膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ0.3μmのポリシリコン層を有するSiウェハ)を用いた以外は実施例76と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水性保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜形成用薬液の残渣は残らないことが確認できた。
【符号の説明】
【0217】
1 ウェハ
2 ウェハ表面の微細な凹凸パターン
3 パターンの凸部
4 パターンの凹部
5 凹部の幅
6 凸部の高さ
7 凸部の幅
8 凹部4に保持された洗浄液
9 凹部4に保持された水系洗浄液
10 撥水性保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコンを含むウェハの洗浄時に、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に撥水性保護膜を形成するための薬液であり、
下記一般式[1]で表されるケイ素化合物Aを0.01〜30質量%、および、非プロトン性有機溶媒を含むことを特徴とする保護膜形成用薬液。
【化1】

ここで、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Xは、それぞれ互いに独立して、Siと結合する元素が窒素である1価の有機基、Siと結合する元素が酸素である1価の有機基、および、ハロゲン基から選ばれる少なくとも1つの基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、aとbの合計は1〜3である。
【請求項2】
前記非プロトン性有機溶媒は、水100質量部に対する溶解度が5質量部以上であり、
前記保護膜形成用薬液は、前記非プロトン性有機溶媒を50〜99.99質量%含む
ことを特徴とする請求項1に記載の保護膜形成用薬液。
【請求項3】
前記ケイ素化合物A中のXが、Siと結合する元素が窒素である1価の有機基であり、前記保護膜形成用薬液が酸Aを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の保護膜形成用薬液。
【請求項4】
前記保護膜形成用薬液は、沸点が70〜220℃にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の保護膜形成用薬液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の保護膜形成用薬液を用いる、表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコンを含むウェハ表面の洗浄方法であり、該方法は、
洗浄液を用いて前記ウェハ表面を洗浄する工程と、
前記保護膜形成用薬液を用いて該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に撥水性保護膜を形成する工程と、
該凹凸パターンの表面に保持された液体を該凹凸パターンの表面から除去する工程と、
前記液体を除去する工程の後に、該ウェハ表面を光照射すること、該ウェハを加熱すること、該ウェハをオゾン曝露することから選ばれる少なくとも1つ以上の処理を行うことにより前記保護膜を除去する工程を有することを特徴とする表面に微細な凹凸パターンを有するウェハ表面の洗浄方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−15335(P2012−15335A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150534(P2010−150534)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】