説明

信号機システム

【課題】 太陽電池モジュールの新たな設置スペース及び太陽電池モジュールを設置するための部品を不要にして、太陽電池モジュールの設置作業の容易化を図るとともに、設置コストを低くできる信号機システムを提供する。
【解決手段】この信号機システム10は、交通信号機11,12と該交通信号機11,12を制御する交通信号制御装置13の少なくとも一方の表面に、柔軟性を有するフィルム状の太陽電池モジュール18が一体的に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機システムに関し、特に、交通信号機に電力を供給する信号機システムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点やT字路等には、安全な通行を促すために交通信号機が設置されている。交通信号機は、図3に示すように、一般に、車両灯器1及び歩行者灯器2を備える。例えば、図3に示すような標準的な十字交差点では、4灯の車両灯器1と8灯の歩行者灯器2が設置されている。これらの車両灯器1及び歩行者灯器2は図示しない交通信号制御装置によって予め定められたタイミングで点灯するように制御されており、車両灯器1、歩行者灯器2及び交通信号制御装置は信号機システムを構成している。
【0003】
従来、車両灯器1及び歩行者灯器2には白熱灯(70W:車両灯器、60W:歩行者灯器)が用いられていたが、近年、白熱灯に代わり、消費電力が白熱灯の1/3〜1/4以下と少ないLED(発光ダイオード)が使用されるようになっている。
【0004】
これにより、信号機システム全体の消費電力は、白熱灯では合計で約800Wであったものが、LEDでは約300Wと大幅に減少することができる。しかしながら、いずれの場合も、信号機システムが全国各地に多数設置されていることを考えると、その消費電力をさらに減らすことができればより大きな省エネルギー効果に繋がる。
【0005】
そこで、従来においては、信号機システムの省エネルギー化を図るべく、車両灯器1及び歩行者灯器2の主電源や補助電源として、太陽電池モジュールを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−281691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の信号機システムでは、太陽電池モジュールの設置については考慮されておらず、仮に太陽電池モジュールが単独で設置される場合には、設置スペースや設置するための部品が必要となり、太陽電池モジュールの設置作業が面倒になるとともに、設置コストが高くつくという問題がある。
【0007】
また、太陽電池モジュールは、その多くが単結晶、多結晶のシリコン系の太陽電池を使用しているため、セルが硬くて厚く、通常のモジュール形状は平面板になっている。そのため、このような太陽電池モジュールの設置には、この平面板に対応した取り付け面を有する構造物を設ける必要がある。
【0008】
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、太陽電池モジュールを設置するための新たな設置スペースや部品を不要にすることができ、これにより、太陽電池モジュールの設置作業の容易化を図ることができるとともに、設置コストを低減することができる信号機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 交通信号機と該交通信号機を制御する交通信号制御装置の少なくとも一方の表面には、柔軟性を有するフィルム状の太陽電池モジュールが一体的に装着され、前記太陽電池モジュールで発生した電力が、前記交通信号機の主電源又は補助電源として利用されることを特徴とする信号機システム。
【0010】
(2) 前記太陽電池モジュールは、車両灯器と歩行者灯器の少なくとも一方の本体上面、本体側面及び庇、並びに前記交通信号制御装置の上面及び側面の少なくとも一面に装着されることを特徴とする(1)に記載の信号機システム。
【0011】
(3) 前記太陽電池モジュールは、前記交通信号機と前記交通信号制御装置の少なくとも一方の湾曲した表面に一体的に装着されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の信号機システム。
【0012】
(4) 前記太陽電池モジュールは、前記交通信号機と前記交通信号制御装置の少なくとも一方の角部を有した表面に一体的に装着されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の信号機システム。
【0013】
(5) 前記太陽電池モジュールは、前記交通信号機と前記交通信号制御装置の少なくとも一方の前記表面に両面テープ又は接着剤により装着されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の信号機システム。
【0014】
(6) 前記太陽電池モジュールは、フィルム状の色素増感型太陽電池であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の信号機システム。
【0015】
(7) 前記太陽電池モジュールは、フィルム状のアモルファス太陽電池であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の信号機システム。
【0016】
(8) 前記太陽電池モジュールは、フィルム状の有機薄膜太陽電池であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の信号機システム。
なお、本発明の側面とは、庇が設けられる面以外の側面であり、本体の横側面と背面を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、柔軟性を有するフィルム状の太陽電池モジュールを、交通信号機や交通信号制御装置の表面に直接装着して一体化するので、太陽電池モジュールを装着するための新たな設置スペースや部品を不要とすることができ、太陽電池モジュールの設置作業の容易化を図ることができるとともに、設置コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る信号機システムについて図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態の信号機システム10は、交通信号機としての車両灯器11及び歩行者灯器12と、これらの車両灯器11及び歩行者灯器12を予め定められたタイミングで点灯するように制御する交通信号制御装置13と、車両灯器11、歩行者灯器12及び交通信号制御装置13に電力を供給する電源(図示せず)とを具備しており、車両灯器11、歩行者灯器12、及び交通信号制御装置13は、信号機用支柱19に取り付けられている。
【0020】
車両灯器11は、本体14と、本体14内に収容された赤、黄、青の発光ダイオード(LED:図示せず)と、本体14の各色の発光ダイオードの上方位置にそれぞれ取り付けられた庇15とを備えている。歩行者灯器12についても、同様に、本体16と、本体16内に収容された赤、青の発光ダイオード(図示せず)と、本体16の各発光ダイオードの上方位置にそれぞれ取り付けられた庇17とを備えている。
【0021】
車両灯器11の本体14、庇15及び歩行者灯器12の本体16、庇17、交通信号制御装置13の筐体は、いずれも樹脂(ポリカーボネイト)、鉄、アルミニウム等で形成されている。特に、車両灯器11の本体14の横側面や庇15の外表面は、湾曲して形成されており、また、歩行者灯器12の庇の外表面は、角部を有して形成されている。
【0022】
また、電源は、太陽電池モジュール18と商用電源(例えば、100V交流電源:図示せず)とを有しており、太陽電池モジュール18で発生した電力は主電源或いは補助電源として利用される。
【0023】
例えば、商用電源を主電源、太陽電池モジュール18を補助電源として利用する場合、交通信号制御装置13は、車両灯器11及び歩行者灯器12に供給する電力を通常時は商用電源とし、車両灯器11及び歩行者灯器12を点灯させるのに必要な電力が太陽電池モジュール18から十分に電力供給可能と判定した場合に、車両灯器11及び歩行者灯器12に供給する電力を商用電源から太陽電池モジュール18に切り替える制御を行う。なお、交通信号制御装置13内には、太陽電池モジュール18で発生した電力を蓄電するバッテリー(図示せず)が内蔵されており、各太陽電池モジュール18とバッテリが電気的に接続されている。
【0024】
ここで、本実施形態の太陽電池モジュール18は、柔軟性を有するフィルム状に形成されており、車両灯器11の本体14の上面、側面及び庇15、歩行者灯器12の本体16の上面、側面及び庇17、並びに交通信号制御装置13の筐体の上面及び側面に、両面テープ又は接着剤によって一体的に装着される。
【0025】
フィルム状の太陽電池モジュール18としては、例えば、色素増感型太陽電池、有機薄膜太陽電池(色素増感型を除いたもの)、アモルファスシリコン系太陽電池のように、フィルム化が可能な太陽電池を挙げることができる。
【0026】
具体的には、例えば、色素増感型太陽電池のフィルムは、次のようなITO膜を蒸着した透明導電性フィルム(トータル厚さ:0.1〜0.5mm程度)を例示することができる。
(株)トービ製「OTEC」(登録商標)
材質:PET(ポリエチレンテレフタレート)
フィルム厚さ:75μm,125μm、188μmのいずれでも可能
透過率:76〜86%程度
表面電気抵抗:7〜100Ω/□
【0027】
なお、フィルム状の有機薄膜太陽電池(色素増感型を除いたもの)についても、上記とほぼ同様のものを使用することができる。
【0028】
フィルム状のアモルファス太陽電池については、例えば、(株)三洋電機製のフィルムタイプのアモルファス太陽電池で製品名アモルトンフィルム(登録商標)を好適に使用することができる。
【0029】
この太陽電池はプラスチックフィルムを基板材料として太陽電池を形成しているため、薄い、軽い、曲げられる、割れないという長所をもち、プラスチックフィルム基板上に形成したa−Si太陽電池を保護フィルムによりカバーした構造で、この状態での厚みは約0.4mmとなっている。フィルムは耐熱性プラスチックフィルムを使用しており、アモルトンフィルムの外側面を透明シートで覆うことで、防水処置を施している。
【0030】
また、これら太陽電池モジュール18を装着するための両面テープとしては、例えば、(株)寺岡製作所製のプラスチック用高性能両面テープ「HOME STAFF」(登録商標)を好適に使用することができ、接着剤としては、コニシ(株)製の溶剤系接着材「ペットボトル用」を好適に使用することができる。
【0031】
このように、本実施形態では、柔軟性を有するフィルム状の太陽電池モジュール18を車両灯器11の本体14の上面、側面及び庇15、歩行者灯器12の本体16の上面、側面及び庇17、並びに交通信号制御装置13の筐体の上面及び側面に直接装着して一体化するので、太陽電池モジュールを装着するための新たな設置スペースや部品を不要とすることができ、太陽電池モジュールの設置作業の容易化を図ることができるとともに、設置コストを低減することができる。さらに、太陽電池モジュール18がフィルム状に形成されているため、太陽電池モジュール18は、車両灯器11や歩行者灯器12が大型化したり、外観を変更することなく、これら灯器11,12に装着することができる。
【0032】
また、フィルム状の太陽電池モジュール18は、車両灯器11の本体14の横側面や庇15の外表面のような湾曲した表面、或いは、歩行者灯器12の庇17の外表面のような角部を有した表面にも一体的に装着されているので、太陽電池モジュール18は、交通信号機や交通信号制御装置の形状によらず、太陽光を集光しやすいより多くの位置に装着することができる。
【0033】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変形、改良等が可能である。
【0034】
本実施形態では、柔軟性を有するフィルム状の太陽電池モジュール18は、車両灯器11の本体14の上面、側面及び庇15、歩行者灯器12の本体16の上面、側面及び庇17、並びに交通信号制御装置13の筐体の上面及び側面に装着されるが、これらの表面の少なくとも一つの表面、即ち、交通信号機と交通信号制御装置の少なくとも一つの表面に装着されてもよい。
【0035】
また、本発明の太陽電池モジュールの装着は、上述した車両灯器11や歩行者灯器12の表面や交通信号制御装置13の表面に限定されるものでなく、任意の交通信号機の表面や交通信号制御装置の表面であればよく、踏切等の警報灯であってもよい。
【0036】
さらに、本実施形態では、バッテリを交通信号制御装置13内に内蔵し、各太陽電池モジュール18で発生した電力を蓄電するようにしたが、車両灯器11、歩行者灯器12、交通信号制御装置13にそれぞれバッテリを配置して、これらに装着された各太陽電池モジュール18を各々のバッテリと接続するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態である信号機システムの要部を正面側から見た斜視図である。
【図2】図1の信号機システムを背面側から見た斜視図である。
【図3】従来の信号機システムの一例を説明するための概略平面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 信号機システム
11 車両灯器(交通信号機)
12 歩行者灯器(交通信号機)
13 交通信号制御装置
18 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通信号機と該交通信号機を制御する交通信号制御装置の少なくとも一方の表面には、柔軟性を有するフィルム状の太陽電池モジュールが一体的に装着され、前記太陽電池モジュールで発生した電力が、前記交通信号機の主電源又は補助電源として利用されることを特徴とする信号機システム。
【請求項2】
前記太陽電池モジュールは、車両灯器と歩行者灯器の少なくとも一方の本体上面、本体側面及び庇、並びに前記交通信号制御装置の上面及び側面の少なくとも一面に装着されることを特徴とする請求項1に記載の信号機システム。
【請求項3】
前記太陽電池モジュールは、前記交通信号機と前記交通信号制御装置の少なくとも一方の湾曲した表面に一体的に装着されることを特徴とする請求項1又は2に記載の信号機システム。
【請求項4】
前記太陽電池モジュールは、前記交通信号機と前記交通信号制御装置の少なくとも一方の角部を有した表面に一体的に装着されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の信号機システム。
【請求項5】
前記太陽電池モジュールは、前記交通信号機と前記交通信号制御装置の少なくとも一方の前記表面に両面テープ又は接着剤により装着されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の信号機システム。
【請求項6】
前記太陽電池モジュールは、フィルム状の色素増感型太陽電池であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の信号機システム。
【請求項7】
前記太陽電池モジュールは、フィルム状のアモルファス太陽電池であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の信号機システム。
【請求項8】
前記太陽電池モジュールは、フィルム状の有機薄膜太陽電池であることを特徴とするセ請求項1〜5のいずれかに記載の信号機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−338369(P2006−338369A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162788(P2005−162788)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】