偏光イメージングカメラを利用した偏光解析装置
【課題】顕微鏡にエリアセンサを設けて被測定物の偏光特性の面内での二次元分布を測定する際に、顕微鏡の倍率を容易に上げることができるようにする。
【解決手段】エリアセンサとして画素ごとに方位の異なる偏光素子を形成した偏光イメージングカメラを用い、被測定物にある方位の直線偏光を照射して透過光又は反射光の強度を検出する。偏光素子の偏光方位が異なる複数の偏光素子をもつCCD素子の検出光強度から楕円偏光を表現する下記の式に含まれる未知数I0,ψ及びCを決定した後、θを0°から180°まで変化させたときのI(θ)の最小値、最大値及び最大値を与えるθmaxから偏光特性を求め、その操作を二次元的に繰り返す。
I(θ)=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)}
【解決手段】エリアセンサとして画素ごとに方位の異なる偏光素子を形成した偏光イメージングカメラを用い、被測定物にある方位の直線偏光を照射して透過光又は反射光の強度を検出する。偏光素子の偏光方位が異なる複数の偏光素子をもつCCD素子の検出光強度から楕円偏光を表現する下記の式に含まれる未知数I0,ψ及びCを決定した後、θを0°から180°まで変化させたときのI(θ)の最小値、最大値及び最大値を与えるθmaxから偏光特性を求め、その操作を二次元的に繰り返す。
I(θ)=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)}
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの画素ごとの透過光の状態を解析する場合、プリズムシートのように表面に微細加工を施されたシートに直線偏光を入射させたときの透過光の状態を解析する場合、光ディスク反射光の偏光状態を解析する場合又は生物細胞を偏光観察する場合等で、被測定物を顕微鏡によって拡大し、かつ被測定物の各部からの透過光又は反射光の楕円率と楕円方位角とを求めて二次元分布図として表示する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な偏光解析方法の1つに、偏光子と検光子それぞれの偏光軸を平行に配置し、偏光子と検光子との間に被測定物を置き、偏光子と検光子とを平行ニコル状態を保って回転させ、そのときの透過光強度変化から被測定物の主屈折率方位とレターデーションとを求める方法(平行ニコル回転法)がある。また別の方法に、被測定物に直線偏光を照射し、検光子を回転させたときの透過光強度変化から被測定物のレターデーションを求める方法(回転検光子法)がある。これらの測定法において、CCDカメラ等のエリアセンサを検出器として用い、CCDカメラの画素ごとに各測定値を求めれば、それらを二次元分布図に描くことができる。
【0003】
また、レーザのように小さなスポット径をもつ光で測定を行い、測定光又は被測定物を二次元的に移動しながら多数の点を測定することにより、測定値を二次元分布として描くこともできる。
【特許文献1】特許第2924938号公報
【特許文献2】特許第3539006号公報
【特許文献1】特開平5−209823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術のCCDカメラ等のエリアセンサを利用する方法で微小な被測定物を測定する場合、一般的にCCDカメラを顕微鏡に取り付ける。しかし、平行ニコル回転法と回転検光子法のいずれの場合も測定系に回転可能な検光子を設ける必要があるので、顕微鏡の対物レンズの前に検光子を設置するにはレンズの焦点距離と検光子を設置するための寸法的制約の問題から、高倍率の顕微鏡は利用できない。したがって、顕微鏡の拡大倍率は最大でも十数倍程度に制限され、寸法が1mm程度以下の微小な被測定物の面内の分布測定は困難であった。
【0005】
また、レーザのように小さなスポット径をもつ光を用いて測定する場合も、そのスポット径は0.1mm程度あるため、寸法が1mm程度以下の被測定物全体を二次元分布として測定するには十分に小さいスポット径とは言えない。
【0006】
本発明は顕微鏡にCCDカメラ等のエリアセンサを設けて被測定物の偏光特性の面内での二次元分布を測定する際に、顕微鏡の倍率を容易に上げることのできる偏光解析装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の偏光解析装置は、被測定物を観察する光学顕微鏡と、光学顕微鏡に載置された被測定物に直線偏光を照射する照射光学系と、隣接する画素間で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が各画素の光入射側に設けられている受光部をもち、光学顕微鏡において被測定物からの反射光又は透過光を受光する位置に配置された偏光イメージングカメラと、偏光イメージングカメラの各画素による検出光強度をデータとして取り込み、被測定物の偏光特性の二次元的な分布を算出する演算処理部と、演算処理部により算出された被測定物の偏光特性の二次元的な分布を表示する表示部と、を備えている。
【0008】
そして、演算処理部は、図3に示されるように、偏光イメージングカメラからの検出光強度データを保持するデータメモリ12と、偏光イメージングカメラの受光部における隣接する複数の画素で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が設けられている複数の画素による検出光強度データを含む1組のデータをデータメモリ12から読み出し、それらのデータを使って、偏光イメージングカメラの受光部の偏光素子を検光子としたときのその偏光方位と検出光強度との関係を表す関係式を算出する関係式算出部16と、関係式算出部16で求められた関係式に基づいてそれらの1組のデータを与えた被測定物上の位置での偏光特性を算出する偏光特性算出部18と、被測定物上の複数の位置について偏光特性の算出を行って被測定物の偏光特性の二次元的な分布を得るように関係式算出部による前記データメモリからのデータの読出し動作を制御する二次元分布測定制御部20と、を備えている。
【0009】
微小な被測定物にある方位の直線偏光を照射し、そのときの透過光又は反射光を光学顕微鏡に取り付けた偏光イメージングカメラで画像として取り込む。偏光イメージングカメラではCCDなどの受光素子からなる画素ごとに偏光素子が設けられており、それらの偏光素子の偏光軸が隣接する画素間で互いに方位が異なるように、例えば45°ずつ異なるように設定されているので、それらの偏光素子が回転検光子法における検光子に代わる働きをする。そのため顕微鏡の対物レンズと被測定物との間に検光子を配置する必要がなくなる。
【0010】
演算処理部での具体的な演算方法を示すと、偏光イメージングカメラの各画素の光入射側に設けられている検光子としての偏光素子の偏光度が高い場合は、その偏光素子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との間の関係式は次式、
I(θ)=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)
により表されるものであり、関係式算出部16はその式中のI0,ψ,Cを算出するものであり、偏光特性算出部18では式I(θ)の最小値=Imin、最大値=Imax及び最大値を与えるθ=θmaxを算出し、偏光特定として楕円率(Imin /Imax )1/2と、楕円方位角θmaxを求める。ここで、C=cos(2πR/λ)、θは検光子の回転角度、I0 は最大検出光強度、ψは入射直線偏光の透過軸と被測定物の遅相軸とのなす角度、λは測定波長、Rは被測定物のレターデーションである。
【0011】
一方、偏光イメージングカメラの各画素の光入射側に設けられている検光子としての偏光素子の偏光度が低い場合は、その偏光素子の吸収軸方向の検出光を考慮に入れた解析を行うことにより、偏光度の高い偏光素子で解析したときと同じ結果を導き出すようにする。その場合、具体的な方法では、その偏光素子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との関係は次式、
It(θ)=Ia(θ)+Ib(θ)
として表されるものであり、Ia(θ)は検光子の透過軸方向の検出光強度、Ib(θ)は検光子の吸収軸方向の検出光強度で、それぞれ
Ia(θ)
=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)}
Ib(θ)
=I0T{cos2ψsin2(θ−ψ)+sin2ψcos2(θ−ψ)
+C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)}
として表されるものであり、関係式算出部16ではIt(θ)の式を偏光素子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との間の関係式として用いて式中のI0,ψ,Cを算出し、偏光特性算出部18では式Ia(θ)を用いて、その最小値=Imin、最大値=Imax及び最大値を与えるθ=θmaxを算出し、偏光特性として楕円率(Imin/Imax)1/2と楕円方位角θmaxを求める。この場合も、C=cos(2πR/λ)、θは検光子の回転角度、I0は最大検出光強度、ψは入射直線偏光の透過軸と被測定物の遅相軸とのなす角度、λは測定波長、Rは被測定物のレターデーション、T=τ2(τは検光子の透過軸に対する吸収軸の振幅透過率である。)である。
【0012】
さらに、偏光イメージングカメラの画素ごとの暗電流及び感度の補正を、暗視野及び2つの異なる照度条件での光量取り込み値をもとに行ってデータメモリ12に保持された検出光強度データを補正するデータ補正部14をさらに備えていてもよい。その場合には、偏光イメージングカメラの画素の暗電流又は感度にばらつきがあっても、被測定物の偏光特性の正確な二次元分布を得ることができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の偏光解析装置では、被測定物を直線偏光で照射し、被測定物からの反射光又は透過光を光学顕微鏡を介して偏光イメージングカメラで受光し、偏光イメージングカメラの各画素による検出光強度データから被測定物の偏光特性の二次元的な分布を算出するようにしたので、顕微鏡の対物レンズと被測定物との間に検光子を配置する必要がなくなり、従来よりも拡大倍率の大きい光学顕微鏡が適用可能になり、今まで測定が困難であった微小面積の被測定物であっても、十分な空間分解能で偏光状態の二次元分布を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[実施例1]
図1は、本発明の装置を透過測定に適用した一実施例の概略構成図である。光学顕微鏡4の試料台に被測定物3が載置される。試料台に載置された被測定物3に直線偏光を照射する照射光学系として、試料台の下方に光源1と偏光子2が配置されている。光源1は、例えばハロゲンランプの光をライトガイドで導いた発光源、又は白色LED(発光ダイオード)を用いた光源であり、偏光子2は偏光軸の方位が変えられるように回転可能な構造になっている。偏光子2を透過した光が直線偏光となって被測定物3に裏面側から照射される。
【0015】
光学顕微鏡4において被測定物3からの反射光又は透過光(この場合は透過光であるが、照射光学系の配置を試料台の上方に配置することにより反射光になる。)を受光する位置に偏光イメージングカメラ5が配置されている。偏光イメージングカメラ5の受光部は、図2に示されるように、隣接する画素間で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が各画素の光入射側に設けられている。図2は受光部の一部で、横方向に6個の画素、縦方向に4個の画素が配列された24個の画素を含む部分を示している。各画素はCCD素子であり、矢印は各CCD素子の光入射側に配置された偏光素子の偏光方位を表している。この例では、CCDの隣接する素子に対して45°ずつ偏光方位を異にした偏光素子が配設されており、隣接する4個で1組のCCD素子によって0°,45°,90°及び135°方位の偏光方位に対応した光量を取り込むことができる。
【0016】
偏光イメージングカメラ5としては、具体的にはフォトニック結晶技術を利用した偏光イメージングカメラ(例えば、フォトニックラティス社製のカメラ)が利用できる。そのような偏光イメージングカメラは、偏光特性を発現する波長帯域が限定されるため、その波長帯域のみを測定に使用するようにCCDカメラ内にバンドパスフィルタが取り付けてある。
【0017】
偏光イメージングカメラ5の各画素による検出光強度をデータとして取り込み、被測定物3の偏光特性の二次元的な分布を算出するために演算処理部6が接続されている。演算処理部6は図3に示される機能を果たすものであり、マイクロプロセッサ、マイクロプロコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータにより実現される。
演算処理部6により算出された被測定物3の偏光特性の二次元的な分布を表示するために、演算処理部6にはLCD(液晶表示装置)などの表示部7が接続されている。
【0018】
この実施例の動作を図3、図4も参照して説明する。
被測定物3に、ある方位の直線偏光を照射し、偏光イメージングカメラ5の受光部のCCD素子による検出光強度をデータとして取り込み、RAMなどの記憶装置からなるデータメモリ12に検出光強度データとして記憶する(ステップS1,S2)。
【0019】
(未知数I0、ψ及びCの決定)
関係式算出部16では、偏光イメージングカメラ5の受光部における隣接する複数の画素で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が設けられている複数の画素による検出光強度データを含む1組のデータをデータメモリ12から読み出し、それらのデータを使って、それらの偏光素子を検光子としたときのその偏光方位と検出光強度との関係を表す関係式を算出する(ステップS3)。具体的には次のように行う。
【0020】
検光子を回転したときに検出する透過光又は反射光の検出光強度をI(θ)とすると、検光子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との間の関係式は一般的に次式(1)で表される(特許文献1,2参照。)。実施例では、検光子を回転させる代わりに、隣接する複数の画素のCCD素子であって、偏光方位の異なる偏光子を備えたCCD素子からの検出光強度データを使用する。
I(θ)
=I0{cos2ψcos2(θ−φp−ψ)+sin2ψsin2(θ−φp−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−φp−ψ)} (1)
【0021】
ここで、C=cos(2πR/λ)、θは検光子の回転角度、I0 は最大検出光強度、ψは入射直線偏光の透過軸と被測定物の遅相軸とのなす角度、φpは入射直線偏光の透過軸方位、λは測定波長及びRは被測定物のレターデーションである。今の目的は、θ=0°,45°,90°,135°の4つの光量取り込み値から式中の未知数I0 、ψ、Cを決定した後に、図5に示すI(θ)の図形を再現し、θを0°から180°まで変化させたときの最大値Imax、最小値Imin及び最大値を与える角度θmaxを求めることである。I(θ)の図形を再現するにはφpはいくらでもよく、必ずしも実際の測定条件の入射直線偏光方位である必要はない。そこで簡単のために常にφp=0と置く。特許請求の範囲及び明細書の他の説明においてもφp=0と置いて、φpの記載を省略している。さらにここではレターデーションRも求める必要はないので波長λを具体的に考える必要がない。
【0022】
θ=0°,45°,90°,135°の4つの検出光強度I(θ)取込み値(I(θ)としては、以下に示す(2)式で補正されたI’(θ)を用いる。)をデータメモリ12から読み出し、それを基に数値演算、例えば既知のカーブフッイティング法を行って3つの未知数I0、ψ及びC(ただし、−1≦C≦1)の各値を決定する。カーブフッイティング法については、例えば特許文献3を参照する。
【0023】
データメモリ12に保持されたI(θ)の数値は、データ補正部14により予め以下の手順でCCDの画素ごとの補正処理を行ってから数値演算に持ち込む。まず、光学顕微鏡4の対物レンズに不透明のキャップをかぶせた状態で暗視野の検出光強度IB(θ)を取り込む。次に、検出光強度が2つの状態、例えば256階調のCCDカメラの場合、被測定物を置かない状態で光源の強さを変えて検出光強度値が100程度と200程度になるようにし、それぞれの状態で光強度を取り込み、それらをI1(θ)とI2(θ)とする。被測定物を測定したときの検出光強度をI(θ)、さらにI1 (θ)及びI2 (θ)の全画素の平均値をそれぞれIAVE1及びIAVE2として、次の式(2)によってI(θ)を補正する。
この補正したI’(θ)の数値をI(θ)として数値演算を行う。
【0024】
(偏光特性の算出)
偏光特性として偏光の楕円率と楕円方位角を算出する(ステップS4)。
具体的には、関係式算出部16で求められた未知数I0、ψ及びCを(1)式に当てはめ、図5に示すI(θ)の図形を再現する。その再現された図形に基づいて、θを0°から180°まで変化させたときの最大値Imax、最小値Imin及び最大値を与える角度θmax を求め、偏光特性として(Imin/Imax)1/2 を楕円率、θmaxを楕円方位角とする。
【0025】
(二次元分布測定)
二次元分布制御部20は、偏光特性の二次元分布を測定する(ステップS5,S6)ようにデータメモリ12から関係式算出部16へのデータ読出しを制御する。そのために、図2において、45°ごとに偏光方位の異なる隣接する4つのCCD素子を1組とし、その組をまず1素子分ずつ横にずらしながら演算処理をし、次に1素子分縦にずらした後、再度1素子分ずつ横にずらしながら全画面を処理する。この場合は、空間分解能は元のCCDカメラの取り込み画面の1画素と同じになる。
【0026】
高分解能のCCDカメラは100万画素前後あり、演算処理に時間がかかる場合は、4つの画素の組を縦横に2画素分ずつずらせば演算数はもとの1/4になる。このとき、空間分解能は元の取り込み画面における2画素分の寸法になる。さらに、演算時間を短縮する場合は、図2において、縦4画素×横4画素の16画素を1組にし、その中の同じ方位の偏光成分の光量を合計又は平均した値を演算処理に持ち込めば、処理時間は元の1/16になり、元の画面の4画素分の寸法が空間分解能になる。
【0027】
二次元分布の測定が完了したら、求めた偏光特性としての楕円率(Imin /Imax )1/2と楕円方位角θmaxを数値として、又は色分けもしくは濃淡によって表示部7に二次元表示する(ステップS7)。
【0028】
[実施例2]
フォトニック結晶技術で作製された偏光素子は、偏光特性を発現する波長域が限定されるだけでなく、十分な偏光度を有しているとは限らない。そこで、偏光イメージングカメラに取り付けられた偏光素子の偏光度が低く、検出光強度に対して吸収軸方向の検出光を無視できない場合を実施例2として説明する。
【0029】
図6は、検光子の透過軸方向の検出光の振幅ベクトルを説明する図であり、PP'は入射直線偏光の軸、aa’、bb’はそれぞれ被測定物の遅相軸、進相軸、AA’は検光子の透過軸を表し、入射直線偏光の振幅をAとしたとき各軸方向の振幅は以下のようになる。
A1=Acosψ
A2=Asinψ
A1≡=A1cos(θ−ψ)=Acosψcos(θ−ψ)
A2≡=A2sin(θ−ψ)=Asinψsin(θ−ψ)
【0030】
検光子の透過軸方向の検出光強度をIa(θ)とすると、前述I(θ)の式(1)と同じで次のように表される。
Ia(θ)=A1≡2+A2≡2+2A1≡A2≡cosδ
=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)} (3)
ただし、C=cosδ、I0=A2である。
【0031】
図7は、検光子の吸収軸方向の検出光の振幅ベクトルを説明する図であり、PP'は入射直線偏光の軸、aa’、bb’はそれぞれ被測定物の遅相軸、進相軸、BB’は検光子の吸収軸を表し、入射直線偏光の振幅をA、検光子の透過軸に対する吸収軸の振幅透過率をτとしたとき、各軸方向の振幅は以下のようになる。
A1=Acosψ
A2=Asinψ
A1”=τA1sin(θ−ψ)=τAcosψsin(θ−ψ)
A2”=−τA2cos(θ−ψ)=−τAsinψcos(θ−ψ)
【0032】
検光子の吸収軸方向の検出光強度をIb(θ)とすると、次のように表される。
Ib(θ)=A1”2+A2”2+2A1”A2”cosδ
=I0T{cos2ψsin2(θ−ψ)+sin2ψcos2(θ−ψ)
+C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)} (4)
ただし、C=cosδ、I0=A2、T=τ2である。
【0033】
したがって、検光子の吸収軸方向の透過光が無視できない程度に偏光度が低いとき、検出される光の強度It(θ)は、
It(θ)=Ia(θ)+Ib(θ) (5)
となる。例えば、被測定物として直線偏光板を測定した場合、偏光度が十分に高い検光子を用いて測定したとき、検出光強度図形は図8のIa(θ)のようになる。一方、偏光度が低い検光子を用いて測定したときは、検出光強度図形はIa(θ)にIb(θ)が加算されて図8のIt(θ)のようになる。そのため、その検出光強度の測定値It(θ)を基にして楕円率を算出しても0にはならず、偏光板を測定した結果にはならない。
【0034】
この実施例では、検光子の偏光度が低い場合も検出光強度It(θ)の式中の未知数はI0、C、ψであるので、あらかじめ検光子の透過軸方向に対する吸収軸方向の透過率Tを調べておき定数として扱うことによって、偏光方位の異なる4つ検出光強度取り込み値から数値演算によって未知数I0、C及びψを決定する。吸収軸方向の透過率Tは、例えば直線偏光板を被測定物として測定したときに、測定値として得られる楕円率ができるだけゼロになるようにTの値を少しずつ変えながら探し出せばよい。そして、3つの未知数が決定できれば、十分に偏光度の高い検光子を用いて測定したとした場合の検出光強度に相当する項はIa(θ)であるから、Ia(θ)の最小値=Iamin、最大値=Iamax及び最大値を与えるθ=θamaxを算出し、(Iamin/Iamax)1/2 を楕円率、θamaxを楕円方位角とする。
【0035】
すなわち、この実施例では、関係式算出部16ではIt(θ)の式(5)を用いて式中のI0,ψ,Cを算出し、偏光特性算出部18ではIa(θ)の式(3)を用いて、その最小値=Imin、最大値=Imax及び最大値を与えるθ=θmaxを算出し、(Imin/Imax)1/2を楕円率、θmaxを楕円方位角とする。
【0036】
偏光状態の表現方法の1つにポアンカレ球が利用される。図9は実際に偏光イメージングカメラを用いて、直線偏光板を測定したときの偏光状態をポアンカレ球の赤道面への投影図で表したもので、偏光イメージングカメラの偏光度が十分高いと仮定して評価した場合(a)と、偏光度が低いとして上記の[実施例2]の方法により吸収軸方向の透過率を取り入れて補正した場合(b)のそれぞれの結果の比較である。図9において中心は円偏光(楕円率=1)を表し、最外周の円は楕円方位角の異なる直線偏光(楕円率=0)を表す。偏光イメージングカメラの偏光度が十分高いと仮定して評価した場合の結果(a)は、直線偏光板を測定したにもかかわらず楕円率が0.4程度になって直線偏光板を測定した正しい結果とは言えない。一方、吸収軸方向の透過率を取り入れて補正した場合の結果(b)は、外円周に近いところに測定点が集まってほぼ楕円率が0になっており、直線偏光を測定したとみなせるよい結果が得られている。
【0037】
図10は、TFT型液晶ディスプレイの視認側の偏光板と位相差板を剥がした状態で、B(ブルー)のサブピクセルに電圧を印加、G(グリーン)のサブピクセルに電圧を無印加の条件にしたときの、透過光の偏光状態を光学顕微鏡を用いて測定したときの偏光イメージングカメラの取り込み画像である。なお、R(レッド)のサブピクセルは偏光イメージングカメラの波長特性上、観察することができない。液晶ディスプレイのその2つのサブピクセルを顕微鏡で拡大して偏光イメージングカメラの受光部上では枠で囲んだ約218μm×137μmの大きさにし、そのエリア内を空間分解能0.5μmの条件で測定した。このとき、液晶ディスプレイのバックライトが光源となり、さらに液晶セルのバックライト側には偏光板が貼合されているため、図1の装置構成図における光源及び偏光子は使用しない。
【0038】
図11はこのときの楕円率及び楕円方位角の測定結果の分布図であり、楕円率を色分けで、また楕円方位を矢印で表したもので、BとGサブピクセル内で楕円方位が異なっていることがよく分かる。
さらに図12は、図11の楕円偏光状態をポアンカレ球の赤道面への投影図にしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の偏光解析装置の概略構成図である。
【図2】偏光イメージングカメラのCCD画素ごとの偏光素子の配置例である。
【図3】本発明を概略的に示すブロック図である。
【図4】一実施例の動作を示すフローチャートである。
【図5】楕円率と検出光強度図形の説明図である。
【図6】検光子の透過軸方向の検出光の振幅ベクトルの説明図である。
【図7】検光子の吸収軸方向の検出光の振幅ベクトルの説明図である。
【図8】偏光度の低い検光子を用いて偏光板を測定したときの検出光強度図形の説明図である。
【図9】偏光板を測定したときに、偏光イメージングカメラの偏光度が高いとして解析した場合(a)と、偏光度が低いとして補正方法を取り入れて解析した場合(b)の比較図である。
【図10】TFT液晶セルを例にしたときの偏光イメージングカメラの取り込み画像である。
【図11】TFT液晶セルのBとGのサブピクセル内の透過光の楕円率と楕円方位角の分布図である。
【図12】TFT液晶セルのBとGのサブピクセル内の透過光の偏光状態を測定した結果をポアンカレ球の赤道面へ投影した図である。
【符号の説明】
【0040】
1 光源
2 偏光子
3 被測定物
4 光学顕微鏡
5 偏光イメージングカメラ
6 演算処理部
7 表示部
12 データメモリ
14 データ補正部
16 関係式算出部
18 偏光特性算出部
20 二次元分布測定制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの画素ごとの透過光の状態を解析する場合、プリズムシートのように表面に微細加工を施されたシートに直線偏光を入射させたときの透過光の状態を解析する場合、光ディスク反射光の偏光状態を解析する場合又は生物細胞を偏光観察する場合等で、被測定物を顕微鏡によって拡大し、かつ被測定物の各部からの透過光又は反射光の楕円率と楕円方位角とを求めて二次元分布図として表示する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な偏光解析方法の1つに、偏光子と検光子それぞれの偏光軸を平行に配置し、偏光子と検光子との間に被測定物を置き、偏光子と検光子とを平行ニコル状態を保って回転させ、そのときの透過光強度変化から被測定物の主屈折率方位とレターデーションとを求める方法(平行ニコル回転法)がある。また別の方法に、被測定物に直線偏光を照射し、検光子を回転させたときの透過光強度変化から被測定物のレターデーションを求める方法(回転検光子法)がある。これらの測定法において、CCDカメラ等のエリアセンサを検出器として用い、CCDカメラの画素ごとに各測定値を求めれば、それらを二次元分布図に描くことができる。
【0003】
また、レーザのように小さなスポット径をもつ光で測定を行い、測定光又は被測定物を二次元的に移動しながら多数の点を測定することにより、測定値を二次元分布として描くこともできる。
【特許文献1】特許第2924938号公報
【特許文献2】特許第3539006号公報
【特許文献1】特開平5−209823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術のCCDカメラ等のエリアセンサを利用する方法で微小な被測定物を測定する場合、一般的にCCDカメラを顕微鏡に取り付ける。しかし、平行ニコル回転法と回転検光子法のいずれの場合も測定系に回転可能な検光子を設ける必要があるので、顕微鏡の対物レンズの前に検光子を設置するにはレンズの焦点距離と検光子を設置するための寸法的制約の問題から、高倍率の顕微鏡は利用できない。したがって、顕微鏡の拡大倍率は最大でも十数倍程度に制限され、寸法が1mm程度以下の微小な被測定物の面内の分布測定は困難であった。
【0005】
また、レーザのように小さなスポット径をもつ光を用いて測定する場合も、そのスポット径は0.1mm程度あるため、寸法が1mm程度以下の被測定物全体を二次元分布として測定するには十分に小さいスポット径とは言えない。
【0006】
本発明は顕微鏡にCCDカメラ等のエリアセンサを設けて被測定物の偏光特性の面内での二次元分布を測定する際に、顕微鏡の倍率を容易に上げることのできる偏光解析装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の偏光解析装置は、被測定物を観察する光学顕微鏡と、光学顕微鏡に載置された被測定物に直線偏光を照射する照射光学系と、隣接する画素間で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が各画素の光入射側に設けられている受光部をもち、光学顕微鏡において被測定物からの反射光又は透過光を受光する位置に配置された偏光イメージングカメラと、偏光イメージングカメラの各画素による検出光強度をデータとして取り込み、被測定物の偏光特性の二次元的な分布を算出する演算処理部と、演算処理部により算出された被測定物の偏光特性の二次元的な分布を表示する表示部と、を備えている。
【0008】
そして、演算処理部は、図3に示されるように、偏光イメージングカメラからの検出光強度データを保持するデータメモリ12と、偏光イメージングカメラの受光部における隣接する複数の画素で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が設けられている複数の画素による検出光強度データを含む1組のデータをデータメモリ12から読み出し、それらのデータを使って、偏光イメージングカメラの受光部の偏光素子を検光子としたときのその偏光方位と検出光強度との関係を表す関係式を算出する関係式算出部16と、関係式算出部16で求められた関係式に基づいてそれらの1組のデータを与えた被測定物上の位置での偏光特性を算出する偏光特性算出部18と、被測定物上の複数の位置について偏光特性の算出を行って被測定物の偏光特性の二次元的な分布を得るように関係式算出部による前記データメモリからのデータの読出し動作を制御する二次元分布測定制御部20と、を備えている。
【0009】
微小な被測定物にある方位の直線偏光を照射し、そのときの透過光又は反射光を光学顕微鏡に取り付けた偏光イメージングカメラで画像として取り込む。偏光イメージングカメラではCCDなどの受光素子からなる画素ごとに偏光素子が設けられており、それらの偏光素子の偏光軸が隣接する画素間で互いに方位が異なるように、例えば45°ずつ異なるように設定されているので、それらの偏光素子が回転検光子法における検光子に代わる働きをする。そのため顕微鏡の対物レンズと被測定物との間に検光子を配置する必要がなくなる。
【0010】
演算処理部での具体的な演算方法を示すと、偏光イメージングカメラの各画素の光入射側に設けられている検光子としての偏光素子の偏光度が高い場合は、その偏光素子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との間の関係式は次式、
I(θ)=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)
により表されるものであり、関係式算出部16はその式中のI0,ψ,Cを算出するものであり、偏光特性算出部18では式I(θ)の最小値=Imin、最大値=Imax及び最大値を与えるθ=θmaxを算出し、偏光特定として楕円率(Imin /Imax )1/2と、楕円方位角θmaxを求める。ここで、C=cos(2πR/λ)、θは検光子の回転角度、I0 は最大検出光強度、ψは入射直線偏光の透過軸と被測定物の遅相軸とのなす角度、λは測定波長、Rは被測定物のレターデーションである。
【0011】
一方、偏光イメージングカメラの各画素の光入射側に設けられている検光子としての偏光素子の偏光度が低い場合は、その偏光素子の吸収軸方向の検出光を考慮に入れた解析を行うことにより、偏光度の高い偏光素子で解析したときと同じ結果を導き出すようにする。その場合、具体的な方法では、その偏光素子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との関係は次式、
It(θ)=Ia(θ)+Ib(θ)
として表されるものであり、Ia(θ)は検光子の透過軸方向の検出光強度、Ib(θ)は検光子の吸収軸方向の検出光強度で、それぞれ
Ia(θ)
=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)}
Ib(θ)
=I0T{cos2ψsin2(θ−ψ)+sin2ψcos2(θ−ψ)
+C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)}
として表されるものであり、関係式算出部16ではIt(θ)の式を偏光素子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との間の関係式として用いて式中のI0,ψ,Cを算出し、偏光特性算出部18では式Ia(θ)を用いて、その最小値=Imin、最大値=Imax及び最大値を与えるθ=θmaxを算出し、偏光特性として楕円率(Imin/Imax)1/2と楕円方位角θmaxを求める。この場合も、C=cos(2πR/λ)、θは検光子の回転角度、I0は最大検出光強度、ψは入射直線偏光の透過軸と被測定物の遅相軸とのなす角度、λは測定波長、Rは被測定物のレターデーション、T=τ2(τは検光子の透過軸に対する吸収軸の振幅透過率である。)である。
【0012】
さらに、偏光イメージングカメラの画素ごとの暗電流及び感度の補正を、暗視野及び2つの異なる照度条件での光量取り込み値をもとに行ってデータメモリ12に保持された検出光強度データを補正するデータ補正部14をさらに備えていてもよい。その場合には、偏光イメージングカメラの画素の暗電流又は感度にばらつきがあっても、被測定物の偏光特性の正確な二次元分布を得ることができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の偏光解析装置では、被測定物を直線偏光で照射し、被測定物からの反射光又は透過光を光学顕微鏡を介して偏光イメージングカメラで受光し、偏光イメージングカメラの各画素による検出光強度データから被測定物の偏光特性の二次元的な分布を算出するようにしたので、顕微鏡の対物レンズと被測定物との間に検光子を配置する必要がなくなり、従来よりも拡大倍率の大きい光学顕微鏡が適用可能になり、今まで測定が困難であった微小面積の被測定物であっても、十分な空間分解能で偏光状態の二次元分布を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[実施例1]
図1は、本発明の装置を透過測定に適用した一実施例の概略構成図である。光学顕微鏡4の試料台に被測定物3が載置される。試料台に載置された被測定物3に直線偏光を照射する照射光学系として、試料台の下方に光源1と偏光子2が配置されている。光源1は、例えばハロゲンランプの光をライトガイドで導いた発光源、又は白色LED(発光ダイオード)を用いた光源であり、偏光子2は偏光軸の方位が変えられるように回転可能な構造になっている。偏光子2を透過した光が直線偏光となって被測定物3に裏面側から照射される。
【0015】
光学顕微鏡4において被測定物3からの反射光又は透過光(この場合は透過光であるが、照射光学系の配置を試料台の上方に配置することにより反射光になる。)を受光する位置に偏光イメージングカメラ5が配置されている。偏光イメージングカメラ5の受光部は、図2に示されるように、隣接する画素間で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が各画素の光入射側に設けられている。図2は受光部の一部で、横方向に6個の画素、縦方向に4個の画素が配列された24個の画素を含む部分を示している。各画素はCCD素子であり、矢印は各CCD素子の光入射側に配置された偏光素子の偏光方位を表している。この例では、CCDの隣接する素子に対して45°ずつ偏光方位を異にした偏光素子が配設されており、隣接する4個で1組のCCD素子によって0°,45°,90°及び135°方位の偏光方位に対応した光量を取り込むことができる。
【0016】
偏光イメージングカメラ5としては、具体的にはフォトニック結晶技術を利用した偏光イメージングカメラ(例えば、フォトニックラティス社製のカメラ)が利用できる。そのような偏光イメージングカメラは、偏光特性を発現する波長帯域が限定されるため、その波長帯域のみを測定に使用するようにCCDカメラ内にバンドパスフィルタが取り付けてある。
【0017】
偏光イメージングカメラ5の各画素による検出光強度をデータとして取り込み、被測定物3の偏光特性の二次元的な分布を算出するために演算処理部6が接続されている。演算処理部6は図3に示される機能を果たすものであり、マイクロプロセッサ、マイクロプロコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータにより実現される。
演算処理部6により算出された被測定物3の偏光特性の二次元的な分布を表示するために、演算処理部6にはLCD(液晶表示装置)などの表示部7が接続されている。
【0018】
この実施例の動作を図3、図4も参照して説明する。
被測定物3に、ある方位の直線偏光を照射し、偏光イメージングカメラ5の受光部のCCD素子による検出光強度をデータとして取り込み、RAMなどの記憶装置からなるデータメモリ12に検出光強度データとして記憶する(ステップS1,S2)。
【0019】
(未知数I0、ψ及びCの決定)
関係式算出部16では、偏光イメージングカメラ5の受光部における隣接する複数の画素で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が設けられている複数の画素による検出光強度データを含む1組のデータをデータメモリ12から読み出し、それらのデータを使って、それらの偏光素子を検光子としたときのその偏光方位と検出光強度との関係を表す関係式を算出する(ステップS3)。具体的には次のように行う。
【0020】
検光子を回転したときに検出する透過光又は反射光の検出光強度をI(θ)とすると、検光子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との間の関係式は一般的に次式(1)で表される(特許文献1,2参照。)。実施例では、検光子を回転させる代わりに、隣接する複数の画素のCCD素子であって、偏光方位の異なる偏光子を備えたCCD素子からの検出光強度データを使用する。
I(θ)
=I0{cos2ψcos2(θ−φp−ψ)+sin2ψsin2(θ−φp−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−φp−ψ)} (1)
【0021】
ここで、C=cos(2πR/λ)、θは検光子の回転角度、I0 は最大検出光強度、ψは入射直線偏光の透過軸と被測定物の遅相軸とのなす角度、φpは入射直線偏光の透過軸方位、λは測定波長及びRは被測定物のレターデーションである。今の目的は、θ=0°,45°,90°,135°の4つの光量取り込み値から式中の未知数I0 、ψ、Cを決定した後に、図5に示すI(θ)の図形を再現し、θを0°から180°まで変化させたときの最大値Imax、最小値Imin及び最大値を与える角度θmaxを求めることである。I(θ)の図形を再現するにはφpはいくらでもよく、必ずしも実際の測定条件の入射直線偏光方位である必要はない。そこで簡単のために常にφp=0と置く。特許請求の範囲及び明細書の他の説明においてもφp=0と置いて、φpの記載を省略している。さらにここではレターデーションRも求める必要はないので波長λを具体的に考える必要がない。
【0022】
θ=0°,45°,90°,135°の4つの検出光強度I(θ)取込み値(I(θ)としては、以下に示す(2)式で補正されたI’(θ)を用いる。)をデータメモリ12から読み出し、それを基に数値演算、例えば既知のカーブフッイティング法を行って3つの未知数I0、ψ及びC(ただし、−1≦C≦1)の各値を決定する。カーブフッイティング法については、例えば特許文献3を参照する。
【0023】
データメモリ12に保持されたI(θ)の数値は、データ補正部14により予め以下の手順でCCDの画素ごとの補正処理を行ってから数値演算に持ち込む。まず、光学顕微鏡4の対物レンズに不透明のキャップをかぶせた状態で暗視野の検出光強度IB(θ)を取り込む。次に、検出光強度が2つの状態、例えば256階調のCCDカメラの場合、被測定物を置かない状態で光源の強さを変えて検出光強度値が100程度と200程度になるようにし、それぞれの状態で光強度を取り込み、それらをI1(θ)とI2(θ)とする。被測定物を測定したときの検出光強度をI(θ)、さらにI1 (θ)及びI2 (θ)の全画素の平均値をそれぞれIAVE1及びIAVE2として、次の式(2)によってI(θ)を補正する。
この補正したI’(θ)の数値をI(θ)として数値演算を行う。
【0024】
(偏光特性の算出)
偏光特性として偏光の楕円率と楕円方位角を算出する(ステップS4)。
具体的には、関係式算出部16で求められた未知数I0、ψ及びCを(1)式に当てはめ、図5に示すI(θ)の図形を再現する。その再現された図形に基づいて、θを0°から180°まで変化させたときの最大値Imax、最小値Imin及び最大値を与える角度θmax を求め、偏光特性として(Imin/Imax)1/2 を楕円率、θmaxを楕円方位角とする。
【0025】
(二次元分布測定)
二次元分布制御部20は、偏光特性の二次元分布を測定する(ステップS5,S6)ようにデータメモリ12から関係式算出部16へのデータ読出しを制御する。そのために、図2において、45°ごとに偏光方位の異なる隣接する4つのCCD素子を1組とし、その組をまず1素子分ずつ横にずらしながら演算処理をし、次に1素子分縦にずらした後、再度1素子分ずつ横にずらしながら全画面を処理する。この場合は、空間分解能は元のCCDカメラの取り込み画面の1画素と同じになる。
【0026】
高分解能のCCDカメラは100万画素前後あり、演算処理に時間がかかる場合は、4つの画素の組を縦横に2画素分ずつずらせば演算数はもとの1/4になる。このとき、空間分解能は元の取り込み画面における2画素分の寸法になる。さらに、演算時間を短縮する場合は、図2において、縦4画素×横4画素の16画素を1組にし、その中の同じ方位の偏光成分の光量を合計又は平均した値を演算処理に持ち込めば、処理時間は元の1/16になり、元の画面の4画素分の寸法が空間分解能になる。
【0027】
二次元分布の測定が完了したら、求めた偏光特性としての楕円率(Imin /Imax )1/2と楕円方位角θmaxを数値として、又は色分けもしくは濃淡によって表示部7に二次元表示する(ステップS7)。
【0028】
[実施例2]
フォトニック結晶技術で作製された偏光素子は、偏光特性を発現する波長域が限定されるだけでなく、十分な偏光度を有しているとは限らない。そこで、偏光イメージングカメラに取り付けられた偏光素子の偏光度が低く、検出光強度に対して吸収軸方向の検出光を無視できない場合を実施例2として説明する。
【0029】
図6は、検光子の透過軸方向の検出光の振幅ベクトルを説明する図であり、PP'は入射直線偏光の軸、aa’、bb’はそれぞれ被測定物の遅相軸、進相軸、AA’は検光子の透過軸を表し、入射直線偏光の振幅をAとしたとき各軸方向の振幅は以下のようになる。
A1=Acosψ
A2=Asinψ
A1≡=A1cos(θ−ψ)=Acosψcos(θ−ψ)
A2≡=A2sin(θ−ψ)=Asinψsin(θ−ψ)
【0030】
検光子の透過軸方向の検出光強度をIa(θ)とすると、前述I(θ)の式(1)と同じで次のように表される。
Ia(θ)=A1≡2+A2≡2+2A1≡A2≡cosδ
=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)} (3)
ただし、C=cosδ、I0=A2である。
【0031】
図7は、検光子の吸収軸方向の検出光の振幅ベクトルを説明する図であり、PP'は入射直線偏光の軸、aa’、bb’はそれぞれ被測定物の遅相軸、進相軸、BB’は検光子の吸収軸を表し、入射直線偏光の振幅をA、検光子の透過軸に対する吸収軸の振幅透過率をτとしたとき、各軸方向の振幅は以下のようになる。
A1=Acosψ
A2=Asinψ
A1”=τA1sin(θ−ψ)=τAcosψsin(θ−ψ)
A2”=−τA2cos(θ−ψ)=−τAsinψcos(θ−ψ)
【0032】
検光子の吸収軸方向の検出光強度をIb(θ)とすると、次のように表される。
Ib(θ)=A1”2+A2”2+2A1”A2”cosδ
=I0T{cos2ψsin2(θ−ψ)+sin2ψcos2(θ−ψ)
+C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)} (4)
ただし、C=cosδ、I0=A2、T=τ2である。
【0033】
したがって、検光子の吸収軸方向の透過光が無視できない程度に偏光度が低いとき、検出される光の強度It(θ)は、
It(θ)=Ia(θ)+Ib(θ) (5)
となる。例えば、被測定物として直線偏光板を測定した場合、偏光度が十分に高い検光子を用いて測定したとき、検出光強度図形は図8のIa(θ)のようになる。一方、偏光度が低い検光子を用いて測定したときは、検出光強度図形はIa(θ)にIb(θ)が加算されて図8のIt(θ)のようになる。そのため、その検出光強度の測定値It(θ)を基にして楕円率を算出しても0にはならず、偏光板を測定した結果にはならない。
【0034】
この実施例では、検光子の偏光度が低い場合も検出光強度It(θ)の式中の未知数はI0、C、ψであるので、あらかじめ検光子の透過軸方向に対する吸収軸方向の透過率Tを調べておき定数として扱うことによって、偏光方位の異なる4つ検出光強度取り込み値から数値演算によって未知数I0、C及びψを決定する。吸収軸方向の透過率Tは、例えば直線偏光板を被測定物として測定したときに、測定値として得られる楕円率ができるだけゼロになるようにTの値を少しずつ変えながら探し出せばよい。そして、3つの未知数が決定できれば、十分に偏光度の高い検光子を用いて測定したとした場合の検出光強度に相当する項はIa(θ)であるから、Ia(θ)の最小値=Iamin、最大値=Iamax及び最大値を与えるθ=θamaxを算出し、(Iamin/Iamax)1/2 を楕円率、θamaxを楕円方位角とする。
【0035】
すなわち、この実施例では、関係式算出部16ではIt(θ)の式(5)を用いて式中のI0,ψ,Cを算出し、偏光特性算出部18ではIa(θ)の式(3)を用いて、その最小値=Imin、最大値=Imax及び最大値を与えるθ=θmaxを算出し、(Imin/Imax)1/2を楕円率、θmaxを楕円方位角とする。
【0036】
偏光状態の表現方法の1つにポアンカレ球が利用される。図9は実際に偏光イメージングカメラを用いて、直線偏光板を測定したときの偏光状態をポアンカレ球の赤道面への投影図で表したもので、偏光イメージングカメラの偏光度が十分高いと仮定して評価した場合(a)と、偏光度が低いとして上記の[実施例2]の方法により吸収軸方向の透過率を取り入れて補正した場合(b)のそれぞれの結果の比較である。図9において中心は円偏光(楕円率=1)を表し、最外周の円は楕円方位角の異なる直線偏光(楕円率=0)を表す。偏光イメージングカメラの偏光度が十分高いと仮定して評価した場合の結果(a)は、直線偏光板を測定したにもかかわらず楕円率が0.4程度になって直線偏光板を測定した正しい結果とは言えない。一方、吸収軸方向の透過率を取り入れて補正した場合の結果(b)は、外円周に近いところに測定点が集まってほぼ楕円率が0になっており、直線偏光を測定したとみなせるよい結果が得られている。
【0037】
図10は、TFT型液晶ディスプレイの視認側の偏光板と位相差板を剥がした状態で、B(ブルー)のサブピクセルに電圧を印加、G(グリーン)のサブピクセルに電圧を無印加の条件にしたときの、透過光の偏光状態を光学顕微鏡を用いて測定したときの偏光イメージングカメラの取り込み画像である。なお、R(レッド)のサブピクセルは偏光イメージングカメラの波長特性上、観察することができない。液晶ディスプレイのその2つのサブピクセルを顕微鏡で拡大して偏光イメージングカメラの受光部上では枠で囲んだ約218μm×137μmの大きさにし、そのエリア内を空間分解能0.5μmの条件で測定した。このとき、液晶ディスプレイのバックライトが光源となり、さらに液晶セルのバックライト側には偏光板が貼合されているため、図1の装置構成図における光源及び偏光子は使用しない。
【0038】
図11はこのときの楕円率及び楕円方位角の測定結果の分布図であり、楕円率を色分けで、また楕円方位を矢印で表したもので、BとGサブピクセル内で楕円方位が異なっていることがよく分かる。
さらに図12は、図11の楕円偏光状態をポアンカレ球の赤道面への投影図にしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の偏光解析装置の概略構成図である。
【図2】偏光イメージングカメラのCCD画素ごとの偏光素子の配置例である。
【図3】本発明を概略的に示すブロック図である。
【図4】一実施例の動作を示すフローチャートである。
【図5】楕円率と検出光強度図形の説明図である。
【図6】検光子の透過軸方向の検出光の振幅ベクトルの説明図である。
【図7】検光子の吸収軸方向の検出光の振幅ベクトルの説明図である。
【図8】偏光度の低い検光子を用いて偏光板を測定したときの検出光強度図形の説明図である。
【図9】偏光板を測定したときに、偏光イメージングカメラの偏光度が高いとして解析した場合(a)と、偏光度が低いとして補正方法を取り入れて解析した場合(b)の比較図である。
【図10】TFT液晶セルを例にしたときの偏光イメージングカメラの取り込み画像である。
【図11】TFT液晶セルのBとGのサブピクセル内の透過光の楕円率と楕円方位角の分布図である。
【図12】TFT液晶セルのBとGのサブピクセル内の透過光の偏光状態を測定した結果をポアンカレ球の赤道面へ投影した図である。
【符号の説明】
【0040】
1 光源
2 偏光子
3 被測定物
4 光学顕微鏡
5 偏光イメージングカメラ
6 演算処理部
7 表示部
12 データメモリ
14 データ補正部
16 関係式算出部
18 偏光特性算出部
20 二次元分布測定制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を観察する光学顕微鏡と、
前記光学顕微鏡に載置された被測定物に直線偏光を照射する照射光学系と、
隣接する画素間で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が各画素の光入射側に設けられている受光部をもち、前記光学顕微鏡において被測定物からの反射光又は透過光を受光する位置に配置された偏光イメージングカメラと、
前記偏光イメージングカメラの各画素による検出光強度をデータとして取り込み、被測定物の偏光特性の二次元的な分布を算出する演算処理部と、
前記演算処理部により算出された被測定物の偏光特性の二次元的な分布を表示する表示部と、を備え、
前記演算処理部は、
前記偏光イメージングカメラからの検出光強度データを保持するデータメモリと、
前記偏光イメージングカメラの受光部における隣接する複数の画素で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が設けられている複数の画素による検出光強度データを含む1組のデータを前記データメモリから読み出し、それらのデータを使って、前記偏光素子を検光子としたときのその偏光方位と検出光強度との関係を表す関係式を算出する関係式算出部と、
前記関係式算出部で求められた関係式に基づいてそれらの1組のデータを与えた被測定物上の位置での偏光特性を算出する偏光特性算出部と、
被測定物上の複数の位置について偏光特性の算出を行って被測定物の偏光特性の二次元的な分布を得るように関係式算出部による前記データメモリからのデータの読出し動作を制御する二次元分布測定制御部と、を備えている偏光解析装置。
【請求項2】
前記関係式は検光子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との間の関係を示す次式、
I(θ)=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)
であり、
前記関係式算出部は前記式中のI0,ψ,Cを算出するものであり、
前記偏光特性算出部では前記式I(θ)の最小値=Imin、最大値=Imax及び最大値を与えるθ=θmaxを算出し、前記偏光特性として楕円率(Imin/Imax)1/2と楕円方位角θmaxを求める請求項1に記載の偏光解析装置。
ただし、C=cos(2πR/λ)、θは検光子の回転角度、I0は最大検出光強度、ψは入射直線偏光の透過軸と被測定物の遅相軸とのなす角度、λは測定波長、Rは被測定物のレターデーションである。
【請求項3】
偏光イメージングカメラの検光子としての偏光素子の吸収軸方向の検出光を考慮に入れた解析を行う請求項1又は2に記載の偏光解析装置。
【請求項4】
検光子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との関係は次式、
It(θ)=Ia(θ)+Ib(θ)
として表されるものであり、Ia(θ)は検光子の透過軸方向の検出光強度、Ib(θ)は検光子の吸収軸方向の検出光強度で、それぞれ
Ia(θ)=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)}
Ib(θ)=I0T{cos2ψsin2(θ−ψ)+sin2ψcos2(θ−ψ)
+C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)}
として表されるものであり、
前記関係式算出部ではIt(θ)の式を前記関係式として用いて前記式中のI0,ψ,Cを算出し、
前記偏光特性算出部では前記式Ia(θ)を用いて、その最小値=Imin、最大値=Imax及び最大値を与えるθ=θmaxを算出し、前記偏光特性として楕円率(Imin/Imax)1/2と楕円方位角θmaxを求める請求項3に記載の偏光解析装置。
ただし、C=cos(2πR/λ)、θは検光子の回転角度、I0は最大検出光強度、ψは入射直線偏光の透過軸と被測定物の遅相軸とのなす角度、λは測定波長、Rは被測定物のレターデーション、T=τ2(τは検光子の透過軸に対する吸収軸の振幅透過率である。)である。
【請求項5】
前記偏光イメージングカメラの画素ごとの暗電流及び感度の補正を、暗視野及び2つの異なる照度条件での光量取り込み値をもとに行って前記データメモリに保持された検出光強度データを補正するデータ補正部をさらに備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の偏光解析装置。
【請求項1】
被測定物を観察する光学顕微鏡と、
前記光学顕微鏡に載置された被測定物に直線偏光を照射する照射光学系と、
隣接する画素間で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が各画素の光入射側に設けられている受光部をもち、前記光学顕微鏡において被測定物からの反射光又は透過光を受光する位置に配置された偏光イメージングカメラと、
前記偏光イメージングカメラの各画素による検出光強度をデータとして取り込み、被測定物の偏光特性の二次元的な分布を算出する演算処理部と、
前記演算処理部により算出された被測定物の偏光特性の二次元的な分布を表示する表示部と、を備え、
前記演算処理部は、
前記偏光イメージングカメラからの検出光強度データを保持するデータメモリと、
前記偏光イメージングカメラの受光部における隣接する複数の画素で互いに方位の異なる偏光軸をもつ偏光素子が設けられている複数の画素による検出光強度データを含む1組のデータを前記データメモリから読み出し、それらのデータを使って、前記偏光素子を検光子としたときのその偏光方位と検出光強度との関係を表す関係式を算出する関係式算出部と、
前記関係式算出部で求められた関係式に基づいてそれらの1組のデータを与えた被測定物上の位置での偏光特性を算出する偏光特性算出部と、
被測定物上の複数の位置について偏光特性の算出を行って被測定物の偏光特性の二次元的な分布を得るように関係式算出部による前記データメモリからのデータの読出し動作を制御する二次元分布測定制御部と、を備えている偏光解析装置。
【請求項2】
前記関係式は検光子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との間の関係を示す次式、
I(θ)=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)
であり、
前記関係式算出部は前記式中のI0,ψ,Cを算出するものであり、
前記偏光特性算出部では前記式I(θ)の最小値=Imin、最大値=Imax及び最大値を与えるθ=θmaxを算出し、前記偏光特性として楕円率(Imin/Imax)1/2と楕円方位角θmaxを求める請求項1に記載の偏光解析装置。
ただし、C=cos(2πR/λ)、θは検光子の回転角度、I0は最大検出光強度、ψは入射直線偏光の透過軸と被測定物の遅相軸とのなす角度、λは測定波長、Rは被測定物のレターデーションである。
【請求項3】
偏光イメージングカメラの検光子としての偏光素子の吸収軸方向の検出光を考慮に入れた解析を行う請求項1又は2に記載の偏光解析装置。
【請求項4】
検光子の偏光方位θと検出光強度I(θ)との関係は次式、
It(θ)=Ia(θ)+Ib(θ)
として表されるものであり、Ia(θ)は検光子の透過軸方向の検出光強度、Ib(θ)は検光子の吸収軸方向の検出光強度で、それぞれ
Ia(θ)=I0{cos2ψcos2(θ−ψ)+sin2ψsin2(θ−ψ)
−C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)}
Ib(θ)=I0T{cos2ψsin2(θ−ψ)+sin2ψcos2(θ−ψ)
+C/2・sin2ψsin2(θ−ψ)}
として表されるものであり、
前記関係式算出部ではIt(θ)の式を前記関係式として用いて前記式中のI0,ψ,Cを算出し、
前記偏光特性算出部では前記式Ia(θ)を用いて、その最小値=Imin、最大値=Imax及び最大値を与えるθ=θmaxを算出し、前記偏光特性として楕円率(Imin/Imax)1/2と楕円方位角θmaxを求める請求項3に記載の偏光解析装置。
ただし、C=cos(2πR/λ)、θは検光子の回転角度、I0は最大検出光強度、ψは入射直線偏光の透過軸と被測定物の遅相軸とのなす角度、λは測定波長、Rは被測定物のレターデーション、T=τ2(τは検光子の透過軸に対する吸収軸の振幅透過率である。)である。
【請求項5】
前記偏光イメージングカメラの画素ごとの暗電流及び感度の補正を、暗視野及び2つの異なる照度条件での光量取り込み値をもとに行って前記データメモリに保持された検出光強度データを補正するデータ補正部をさらに備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の偏光解析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【公開番号】特開2009−42040(P2009−42040A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206691(P2007−206691)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(398023874)王子計測機器株式会社 (11)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(398023874)王子計測機器株式会社 (11)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
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