説明

偏光変換素子、偏光変換ユニット及び投写装置

【課題】接着剤として、耐熱・耐光性能に優れた紫外線硬化製樹脂接着剤を用い、複数の波長帯における広い範囲で1/2波長板として機能する波長板を備えた偏光変換素子の構造を実現する。
【解決手段】複数の透光性基板と、透光性基板間に交互に設けた偏光分離膜及び反射膜と、を有する光学素子と、光学素子の光出射面に配置し、光学素子からの出射光の偏光面をθ回転させる積層波長板20と、を備えた偏光変換素子において、透光性基板を接着する接着層の厚みを5μm以上10μm以下とし、積層波長板20は、複数の波長帯のうちの何れかに含まれる設計波長λの光に対して、位相差Γ1の第1の波長板30と、位相差Γ2の第2の波長板40と、を各々の光学軸方位角θ1、θ2が交差するように積層し、
Γ1=180+360×n(deg)
Γ2=180+360×n(deg)
|θ1−θ2|<45(deg)となるようにした(nは1からはじまる自然数)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からのランダム偏光光束を一種類の偏光光束に変換するための偏光変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクター等の投影型映像装置(投射装置)は、光源装置から出射された光を画像情報に応じて変調し、この変調された光学像をスクリーン上に拡大投射する装置である。
この投射装置では、光の利用効率を向上させるために、光源装置から出射されたランダムな偏光(互いに偏光面が直交するP偏光とS偏光や、偏光面の方向が様々な直線偏光が混在した光、円偏光、楕円偏光、等の偏光)を有する光(以下、ランダム光と称す)を複数の中間光束に分割し、この分割された中間光束を1種類の直線偏光光に変換し、統一して出射するために偏光変換素子が用いられている。
なお、かかる偏光変換素子は、特許文献1や特許文献2に開示されているような構造を有するものが一般的であった。
【0003】
かかる偏光変換素子は、一般に、両主面にPBS膜(互いに直交関係のP偏光とS偏光のうち、何れか一方の直線偏光を透過させ、他方の直線偏光を反射させる機能を有する光学機能膜、所謂、偏光分離膜)と反射ミラー膜とを夫々形成された無色透明なガラス等の透光性基板を幾重にも交互に積層してなる積層体を作成し、入射面(積層面)に対して所定の角度、例えば45(deg)(あるいは135(deg))の角度に切断して得た偏光ビームスプリッター(PBS:Polarizing Beam Splitter)アレイ(プリズムアレイ)の出射側表面に、有機系材料、例えばポリカーボネートフィルム製の1/2波長板を有機系の接着剤により接着した構成を備えており、光源から出射されたランダム光は、光路上に配置された遮光板により選択的にPBS膜に入射してS偏光光束とP偏光光束とに分離され、例えばP偏光光束は、前記PBS膜を透過し、S偏光光束は、前記PBS膜を反射する。
前記PBS膜を透過したP偏光光束は、1/2波長板に入射すると、位相が180(deg)ずれることにより、S偏光の光に変換されて1/2波長板から入射し、前記PBS膜を反射したS偏光光束は、反射ミラー膜でさらに反射して、前記PBSアレイの1/2波長板が配置されていない領域の出射面から出射する。
結果として、前記偏光変換素子から出射する光はS偏光の光に統一されることとなる。
ただし、上記とは逆に、前記PBS膜においてS偏光光束を透過してP偏光光束を反射するようにし、前記PBS膜を透過したS偏光光束を1/2波長板によりP偏光光束に変換し、前記PBS膜で反射したP偏光光束を反射ミラー膜で反射して前記PBSアレイの1/2波長板が配置されていない領域の出射面から出射させるようにすることで、偏光変換素子から出射する光をP偏光に統一することも出来る。
【0004】
図37は、一般的な偏光変換素子の構成を説明する図である。
偏光分離膜91及び反射(ミラー)膜92が形成された透光性基板98と、これらの膜が形成されていない透光性基板98と、を接着層93により交互に貼り合わせ、この貼り合わせた積層体を所定の角度、例えば45(deg)(あるいは135(deg))で切り出し、その切断面を研磨して、光入射面951及び光出射面952を形成した素子本体95に、接合層96を介して位相差板97を接合している。
ところで、上記のような構成を有する偏光変換素子を採用した液晶プロジェクター等に用いられる光源としての白色の光源ランプは、近年、高出力化、短アーク長化が進行しており、上述のPBSアレイ、及び1/2波長板に対する熱負荷が増大している。
そこで、図37に示したような偏光変換素子を作成する際に、透光性基板98を積層して接着するために従来用いられる接着剤(接着層93)だと、高輝度ランプ光に対応出来ず、劣化して光の透過率が低下してしまうという問題があった。
その原因としては、従来用いられる接着剤が短波長光の吸収率が高い成分で構成されていること、粘度が高いために塗布量が多くなって接着層93が厚くなりその結果光の吸収量が多くなること、分解温度が低い成分で構成されていること、などが考えられる。
【0005】
また、図37に示す従来の偏光変換素子においては、上記のように接着層93が厚くなるが、このように接着層93が厚い状態で積層体が切り出されると、接着層93の端部に歪みが生じてしまう。この歪みが生じた状態で、切断面が研磨されると、図38に示すように接着層93近傍における透光性基板98の角部981が削られてしまう。これにより、素子本体95に位相差板97を接合するための接合層96に隙間が生じて、位相差板97が剥がれやすくなり、また気泡961が形成されて、光の透過率が低下するなどの問題もある。
また、接着層93近傍における透光性基板98の角部981が削られることで、光が有効に透過する領域が小さくなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−298212公報
【特許文献2】特許第3309846号
【特許文献3】特許第2519198号
【特許文献4】特開2010−128329公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの問題に対して、特許文献3、4には、第1の波長板と第2の波長板からなる積層波長板の例においてこれらの波長板を積層せずに空間的に離間して配置する構成が開示されており、このような構成を偏光変換素子に適用して、偏光変換素子を構成する透光性基板同士を、接着剤を用いずに離間して配置することで、接着剤の劣化や、研磨時に透光性基板の角部が削られることに伴う偏光変換素子の光学特性の劣化の影響を回避することも可能であるが、透光性基板同士の光学軸の交差角度の制御や、各々の波長板の表裏面に反射防止膜を形成し設けなければならない、等の製造上の煩雑性やコスト高、光学素子の大型化等の問題が発生するために好ましくない。
さらに、以上説明したような偏光変換素子に用いられる1/2波長板(位相差板)としては、光の三原色であるR、G、Bの3波長帯を用いる液晶プロジェクターに適用可能なように、広帯域の波長で位相差が180(deg)となり、偏光変換効率が1となって確実にP偏光をS偏光に変換し、あるいはS偏光をP偏光に変換可能な仕様を有する1/2波長板が求められている。
本発明の目的は、上記の課題を解決するためになされたものであり、接着剤として、耐熱・耐光性能に優れた紫外線硬化製樹脂接着剤を用い、更に、複数の波長帯の光に対して1/2波長板として機能する波長板を備えた偏光変換素子の構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例の偏光変換素子は、互いに略平行な光入射面及び光出射面を有し、
前記光入射面あるいは前記光出射面に対して所定の傾斜角度を有する接合面によって接着剤を介して接合された複数の透光性基板と、複数の前記透光性基板の間の境界部に交互に設けられ、前記光入射面に入射した光を偏光方向が互いに直交する異なる2種類の直線偏光に分離して一方の直線偏光を透過させ、他方の直線偏光を反射する偏光分離部と、反射された前記他方の直線偏光光束を反射し、光路の向きを変える反射部と、を有する光学素子と、前記光出射面に配置され、前記2種類の直線偏光のうち何れか一方の直線偏光の偏光面を回転させて他方の直線偏光の偏光面と平行な直線偏光に変換して出射する位相差板と、を備え、前記接着層は、紫外線硬化型の接着剤であり、厚みが5μm以上10μm以下であり、前記位相差板は、前記光出射面であって、前記偏光分離部の上部の領域又は前記反射部の上部の領域に配置され、波長λの光に対して、位相差Γ1の第1の波長板と、波長λの光に対して、位相差Γ2の第2の波長板と、を各々の光学軸が交差するように積層してなり、互いに波長帯が異なる複数の波長帯において、入射する直線偏光の偏光面を回転角θ(deg)回転させた直線偏光に変換して出射する位相差板であって、前記波長λは、前記複数の波長帯のうちの何れかの波長帯に含まれる波長であり、下式(1)及び(2)を満足し、
Γ1=180+360×n(deg)・・・(1)
Γ2=180+360×n(deg)・・・(2)
但し、nは1からはじまる自然数
前記第1の波長板の光学軸方位角θ1と前記第2の波長板の光学軸方位角θ2が、
22.5(deg)<θ1<45.0(deg)
45.0(deg)<θ2<67.5(deg)
又は、
45.0(deg)<θ1<67.5(deg)
22.5(deg)<θ2<45.0(deg)
を満足し、
若しくは、
135.0(deg)<θ1<157.5(deg)
112.5(deg)<θ2<135(deg)
又は、
112.5(deg)<θ1<135.0(deg)
135.0(deg)<θ2<157.5(deg)
を満足することを特徴とする。
【0010】
本適用例によれば、光学素子を作成する際の接着剤として耐熱・耐光性能に優れた紫外線硬化製樹脂接着剤を用いることで高耐熱・高耐光性であり、更に、光学軸方位角を上記のように設定することで、複数の波長帯において、広い範囲で1/2波長板として機能する位相差板を備えた偏光変換素子の構造を実現することが出来る。
また、接着層の厚みが10μm以下であり、十分に薄いため、光入射面などを研磨する際に透光性基板の角部が削られてしまうことがない。従って、光の透過領域を狭くなるという問題もない。
【0011】
[適用例2]本適用例の偏光変換素子は、適用例1の偏光変換素子において、前記位相差板は、前記光学素子の端縁部に、前記偏光分離膜と前記反射膜とが交互に並べられた方向に沿って接合された基部と、該基部に連続して形成され、且つ前記偏光分離膜又は前記反射膜の前記光出射面側に配置された複数の位相差部本体と、を備えている。
【0012】
本適用例によれば、位相差板を構成する位相差部本体が、光学素子に直に接合されないので、両者の接合に接着剤を用いる必要が無く、接着剤の劣化による光学特性の劣化を防止出来る。
【0013】
[適用例3]本適用例の偏光変換素子は、適用例1又は2の偏光変換素子において、前記接着層は、変性アクリレート又は変性メタクリレートを主成分とする。
【0014】
本適用例によれば、透明基板の接着に耐熱・耐光性能に優れた紫外線硬化製樹脂接着剤を用いることで、偏光変換素子を高耐熱性・高耐光性として長寿命とすることが出来る。
【0015】
[適用例4]本適用例の偏光変換素子は、適用例1乃至3の何れかの偏光変換素子において、前記位相差板と前記光出射面とは、接合層により接合され、前記接合層は、シロキサン結合(Si−O)を含む原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基と、を含み、前記Si骨格のうち、前記脱離基が脱離したSi骨格の未結合手が活性手となって、前記位相差板と前記光出射面と接合している。
【0016】
本適用例によれば、無機的な方法で透光性基板と位相差板とを接合するため、接着剤が熱劣化することなく、偏光変換素子を高耐熱性・高耐光性として長寿命とすることが出来る。
【0017】
[適用例5]本適用例の偏光変換素子は、適用例1乃至3の何れかの偏光変換素子において、前記透光性基板と前記位相差板とは、接合層により接合され、前記接合層は、前記透光性基板に設けられた微結晶連続薄膜と、前記位相差板に設けられた微結晶連続薄膜とを接触させて、前記透光性基板の微結晶連続薄膜と前記位相差板の微結晶連続薄膜との接触界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせる原子拡散接合法により形成される、又は、前記透光性基板及び前記位相差板のうちの何れか一方に設けられた微結晶連続薄膜と、何れか他方に設けられた微結晶構造とを接触させて、前記微結晶連続薄膜と前記微結晶構造との接触界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせる原子拡散接合法により形成される。
【0018】
本適用例によれば、無機的な方法で透光性基板と位相差板とを接合するため、接着剤が熱劣化することなく、偏光変換素子を高耐熱性・高耐光性として長寿命とすることが出来る。
【0019】
[適用例6]本適用例の偏光変換素子は、適用例1乃至5の何れかの偏光変換素子において、前記位相差板の材質が、無機光学結晶である。
【0020】
本適用例によれば、位相差板として放熱性の高い無機光学結晶を用いることで、位相差板を高耐熱性・高耐光性として長寿命とすることが出来る。
【0021】
[適用例7]本適用例の偏光変換ユニットは、適用例1乃至6の何れかの偏光変換素子と、当該偏光変換素子を固定する固定枠と、を備える。
【0022】
本適用例によれば、本発明の偏光変換素子を備えることで、長寿命で光学特性に優れた偏光変換ユニットとすることが出来る。
【0023】
[適用例8]本適用例の偏光変換ユニットは、光を出射する光源装置と、該光源装置からの光を、1種類の偏光光に変換する適用例7の偏光変換ユニットと、当該偏光変換ユニットからの偏光光を画像情報に応じて光学像を形成する光変調装置と、該光変調装置にて形成された前記光学像を拡大投射する投射光学装置と、を備える。
【0024】
本適用例によれば、本発明の偏光変換素子を用いることで、長寿命で光学特性に優れた投光装置とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る偏光変換素子の一例を示す図。
【図2】プラズマ重合膜の組成を説明する概略図。
【図3】他の実施形態に係る偏光変換素子を示す分解斜視図。
【図4】図3の偏光変換素子の一部分を拡大して示した断面図。
【図5】本実施形態にかかる偏光変換素子の製造工程を説明する図。
【図6】本実施形態にかかる偏光変換素子の製造工程を説明する図。
【図7】硬化試験における引張強度の測定結果を示す図。
【図8】硬化試験におけるせん断強度の測定結果を示す図。
【図9】本実施形態にかかる偏光変換素子の製造工程を説明する図。
【図10】本実施形態にかかる偏光変換素子の製造工程を説明する図。
【図11】本実施形態にかかる偏光変換素子の製造工程を説明する図。
【図12】本実施形態にかかる実施例及び従来例の耐熱性試験を示す図。
【図13】本実施形態にかかる実施例の平坦度試験の結果を示す図。
【図14】本実施形態に係る実施例の平坦度試験の結果を示す図。
【図15】比較例の平坦度試験の結果を示す図。
【図16】高次モード積層1/2波長板の構成を示す図。
【図17】本発明の他の実施の形態に係る位相差板の一例としての高次モード積層1/2波長板構成を示す分解斜視図。
【図18】従来の積層1/2波長板における偏光状態の軌跡を示すポアンカレ球を示す図。
【図19】図16に示す積層1/2波長板における偏光状態の軌跡を示すポアンカレ球を示す図。
【図20】図14に示す場合において各波長板の光学軸方位角を入れ替えた場合の、直線偏光のポアンカレ球上での軌道の推移を説明するための図。
【図21】図15に示す構成の積層1/2波長板における直線偏光のポアンカレ球上での軌道の推移を説明するための図。
【図22】図18に示す場合において各波長板の光学軸方位角を入れ替えた場合の、直線偏光のポアンカレ球上での軌跡の推移を示す図。
【図23】積層1/2波長板の光学軸調整量aに対する変換効率を示す図。
【図24】異なる光学軸調整量aについて積層1/2波長板の周波数に対する変換効率を示す図。
【図25】光学軸調整量aに対する変換効率の最小値Tmin及び変換効率の最大値と最小値との差ΔTを示す図。
【図26】光学軸調整量aに対する変換比率RTを示す図。
【図27】異なる偏光面回転角度θについて光学軸調整量aに対する変換比率RTを示す図。
【図28】高次モード次数n=1の場合に、変換比率がa=0(deg)よりも良くなる光学軸調整量aの最大値amaxと偏光面回転角度ψとの関係を示す図。
【図29】高次モード次数n=2の場合に、変換比率がa=0(deg)よりも良くなる光学軸調整量aの最大値amaxと偏光面回転角度θとの関係を示す図。
【図30】青・緑・赤の各色光の波長域について波長に対する変換効率を示す図。
【図31】400nmから700nmに対する積層1/2波長板の変換効率を示す図。
【図32】400nmから700nmに対する積層1/2波長板の変換効率を示す図。
【図33】400nmから700nmに対する積層1/2波長板の変換効率を示す図。
【図34】本発明の実施の形態に係る偏光変換素子を組み込んだ偏光変換ユニットの外観を示す図。
【図35】図34の偏光変換ユニットの分解斜視図。
【図36】本発明の実施の形態に係る偏光変換素子を適用した投光装置の一例としての液晶プロジェクターを示す図。
【図37】一般的な偏光変換素子の構成を説明する図。
【図38】一般的な偏光変換素子の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態例を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る偏光変換素子の一例を示す図である。
図1に示すように、本発明に係る偏光変換素子1は、上述のPBSアレイである素子本体(光学素子)10と、素子本体10に選択的に接合された、水晶等の無機光学結晶からなる位相差板(積層1/2波長板)20と、を備える。
水晶等の無機光学結晶は、熱伝導性に優れるため、背景技術で述べた有機系材料で作製した位相板に比べ、耐熱性に優れ、高熱による光学特性の劣化の懸念がない。
また、位相差板の材質としては、水晶の他に、リチウムタンタレート、サファイアなども適用可能である。
なお、偏光変換素子1は、プロジェクター等の投光装置に組み込む際には、2つの素子本体10を連結して組み込むが、図1では、一部のみを表示している。
【0027】
図1に示すように、素子本体10は、複数の透光性基板11と、複数の透光性基板11の間に交互に設けられた偏光分離膜(偏光分離部)12及び反射膜(反射部)13と、複数の透光性基板11の間にそれぞれ設けられて、透光性基板11を接着する接着層14と、を備えている。
また、素子本体10は、互いに略平行な光入射面16と、光出射面17と、を有する。
また、素子本体10は、光入射面16あるいは光出射面17に対して所定の傾斜角度を有する接合面11aにより複数の透光性基板11を偏光分離膜(偏光分離部)12と反射膜(反射部)13とを交互に挟んで接着層14により接合されている。
偏光分離膜12は、外部からの入力光(S偏光光及びP偏光光)のうち、P偏光光を選択的に透過させ、S偏光光を反射させる。
反射膜13は、偏光分離膜12により反射されたS偏光光を、光出射面17に向けて反射させる。
【0028】
ここで、接着層14は、その厚みが5μm以上10μm以下である。
接着層14は、変性アクリレート又は変性メタクリレートを主成分とする紫外線硬化型の接着剤により形成されるため、上記のような厚みとすることが出来る。
従来の紫外線硬化型の接着剤では、変性アクレート又は変性メタクリレートを主成分としていなかったために、粘度が高く、接着層の厚みが10μm以上20μm以下となってしまっていた。
このように、接着層の厚みが10μmを超える場合、後に図5乃至図11を用いて説明する偏光変換素子の製造工程において、接着層の端部に歪みが生じてしまう。そのため、光入射面16及び光出射面17を研磨する(図11)際に、歪み近傍の透光性基板11の角部が削られてしまう。その結果、透光性基板11の光出射面17に、位相差板20を接合する際に、透光性基板11と、位相差板20との間に隙間が生じ、気泡が発生してしまう。
これにより、透光性基板11と位相差板20とが十分に接合されず、位相差板20が、剥がれやすくなる。
【0029】
また、透光性基板11と、位相差板20との間に発生した気泡により光の透過率が落ちる。
一方、接着層の厚みが、5μm未満の場合は、接着層にごみなどが混入した場合、ごみなどによって、接着層の接着強度が低下する。
しかし、接着層の厚みが5μm以上10μm以下であれば、透光性基板11の角部が削れにくい為に気泡が発生せず、位相差板20が透光性基板11から剥がれやすくなったり、光の透過率が落ちたりする不具合を解消することが出来る。
なお、本実施形態に用いられる接着剤としては、例えば、UT20、HR54(商品名、株式会社アーデル製)などが挙げられる。
【0030】
また、図1において、位相差板20は、接合層21により、透光性基板11の光出射面17おける偏光分離膜12の上部の領域に接合されている。
この位相差板20は、上記のように水晶により作製された1/2波長板であり、偏光分離膜12を透過したP偏光光をS偏光光に変換する。
ただし、偏光変換素子1において、P偏光光に統一して出射する場合には、位相差板20を反射膜13の上部に設けるようにする。
なお、接合層21は、分子接合するプラズマ重合膜であり、その主材料は、ポリオルガノシロキサンである。プラズマ重合膜は、プラズマ重合法により形成されてシロキサン結合を含み、結晶化度が45%以下であるSi骨格と、このSi骨格に結合する有機基からなる脱離機とを含む。そして、エネルギーを付与して表面付近に存在する脱離基がSi骨格から脱離することにより、接着性を発現する。
【0031】
図2は、プラズマ重合膜の組成を説明する概略図であり、(A)は、エネルギーを付与する前の組成を示し、(B)は、エネルギーを付与した後の組成を示している。
上記したが、図2(A)に示すように、プラズマ重合膜は、Si骨格21Bを含むシロキサン結合(Si−O)21Aと、Si骨格21Bと結合している脱離基21Cと、を含む。
図2(A)に示すようなプラズマ重合膜よりなる接合層21にエネルギーが付与されると、図2(B)に示す通り、図2(A)に示されていた脱離基21Cが、Si骨格21Bから脱離する。これにより、接合層21の表面及び内部に、活性手21Dが生じ、活性化される。
その結果、接合層21の表面に接着性が発現する。このような接着性が発現すると、接合層21は強固に接合可能となる。なお、接合層21のSi骨格21Bの結晶化度は45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。これにより、Si骨格21Bは充分にランダムな原子構造を含むものとなり、これにより、Si骨格21Bの特性が顕在化する。
ここで、「活性化させる」とは、接合層21の表面及び内部の脱離基21Cが脱離して、Si骨格21Bにおいて終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」ともいう。)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことをいう。
従って、活性手21Dとは、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことをいい、このような活性手21Dによれば、接合層21の強固な接合が可能となる。
【0032】
前述の通り、このプラズマ重合膜は、エネルギーが付与されると、その表面及び内部に活性手が生じるため、プラズマ重合膜に強力な接着性が発現する。
また、接着剤を用いない無機的な接合方法であるので、接着剤の劣化によって光学特性が影響を受けることがない。
また、接着層14の厚みが5μm以上10μ以下であることで、透光性基板11の角部が削れにくいことで、プラズマ重合法により隙間無く接合層21を形成して、透光性基板11と位相差板20とを強力に接合出来る。
なお、位相差板20と光出射面17との接合方法は、このプラズマ重合法に限ることはなく、上記した変性メタクリレート又は変性アクリレートを主成分とする接着剤によって接合してもよい。
【0033】
また、接合層21は、プラズマ重合法のみならず、原子拡散接合法により形成してもよい。
原子拡散接合法とは、まず、真空容器内におけるスパッタリングやイオンプレーティング等の真空成膜により、素子本体10を構成する透光性基板11及び位相差板20に、それぞれ微結晶連続薄膜を成膜する。そして、微結晶連続薄膜同士を、成膜中又は成膜後に重ね合わせて、接合界面及び結晶粒界において原子拡散を生じさせることにより、透光性基板11及び位相差板20の間で強固に接合する方法である。
なお、微結晶連続薄膜同士を重ね合わせるだけでなく、透光性基板11及び位相差板20のいずれか一方に微結晶連続薄膜を形成し、他方に微結晶構造を形成し、そしてこれらの微結晶連続薄膜と微結晶構造とを重ね合わせることにより、原子拡散接合を実施することも出来る。
この場合も、接着剤を用いない無機的な接合方法であるので、接着剤の劣化によって光学特性が影響を受けることがない。
【0034】
図3は、他の実施形態に係る偏光変換素子を示す分解斜視図である。
図4は、図3の偏光変換素子の一部分を拡大して示した断面図である。
なお、図1と同様の構成については、同じ符号を付して詳細な説明を省略している。
図3、図4に示す偏光変換素子は、PBSアレイとしての素子本体10と、素子本体10に接合され、1/2波長板として機能し、入射した直線偏光の偏光面を90(deg)回転させて出射する水晶製の位相差板20と、を備える。
素子本体10は、略直方体形状であり、2つの素子本体10A、10Bが向かい合う長手方向の端部同士を互いに接合し、接合面10Cに対して対称関係となっている。
この素子本体10は、互いに略平行な光入射面10Dと光出射面10Eとを有する。
また、素子本体10は、複数の透光性基板11との間に、長手方向に沿って交互に並んで配置された偏光分離膜12と反射膜13とを有する。
また、複数の透光性基板11は、それぞれ光入射面10D或いは、光出射面10Eに対して所定の傾斜角度を有した接合面11aによって接合されている。
偏光分離膜12と反射膜13とは、複数の透光性基板11との間の境界部11Bに交互に設けられている。
偏光分離膜12は、光入射面10Dに入射した光を、偏光方向が互いに直交する異なる2種類の直線偏光に分離して一方の直線偏光を透過させ、他方の直線偏光を反射させる。
【0035】
本実施形態では、偏光分離膜12は、光入射面10Dに入射したランダム偏光光のうちP偏光光を選択的に透過させ、S偏光光を反射させる。
反射膜13は、偏光分離膜12により反射された他方の直線偏光を反射し、光路の向きを変える。即ち、反射膜13は、偏光分離膜12にて反射されたS偏光光を光出射面10Eに向けて反射させる。
素子本体10は、図4に示すように、複数の透光性基板11を互いに接合する接着層14を有する。
【0036】
ここで、接着層14は、紫外線硬化型等の光学系接着剤を用いることが出来る。紫外線硬化型の接着剤を用いた場合、粘度が高く、接着層14の厚みは、およそ10μm以上20μm以下程度となる。
更に、変性アクリレート又は変性メタクリレートを主成分とする紫外線硬化型の接着剤を用いると、接着層14の厚みを5μm以上10μmと薄くできる。変性アクリレート又は変性メタクリレートを主成分とする紫外線硬化型の接着剤としては、例えば、UT20、HR154(商品名、株式会社アーデル製)などが挙げられる。接着層14は、所定の厚さW1を有する。
【0037】
位相差板20(20A、20B)は、2つの素子本体10A、10Bの光出射面10Eに夫々配置されている。
位相差板20は、偏光分離膜12を透過したP偏光光に180(deg)の位相差を生じさせて当該P偏光光の偏光面を90(deg)回転させるので、反射膜13により反射されたS偏光光の偏光面と平行な直線偏光、即ち、S偏光光に変換して出射する。
また、図3に示す位相差板20は、櫛状(すだれ状)である。
この位相差板20(20A、20B)は素子本体10に接合されて光が透過しない基部20C(20C1、20C2)と、この基部20Cから延在され、光が透過する位相差部20D(20D1、20D2)と、を有する。
即ち、基部20Cは、素子本体10の光学領域である有効エリア(E)の外に配置されている。基部20Cの長手方向、即ち、偏光分離膜12と反射膜13とが交互に並べられた方向に沿って、接合されている。
そして、一方の位相差板20Aの基部20C1は、素子本体10における長手方向に平行な端縁部のうち一方の端縁部10Fに接合され、他方の位相差板20Bの基部20C2は、一方の位相差板20Aにおける位相差部20D1の先端部20E1に接近している。
即ち、一方の位相差板20Aの基部20C1は、他方の位相差板20Bにおける位相差部20D2の先端部20E2に接近しており、他方の位相差板20Bの基部20C2は、一方の位相差板20Aにおける位相差部20D1の先端部20E1に接近している。
なお、基部20Cは、その主平面が、長尺の矩形状であり、その幅は、例えば3mmから4mm程度である。
【0038】
基部20Cは、素子本体10に、図示しない接合膜により接合されている。
この接合膜は、接着層14と同様に、紫外線硬化型等の光学系接着剤やプラズマ重合膜により設けられている。接合膜は、光路上に配置されない、光学領域である有効エリアEの外側に配置されることが望ましいため、基部20Cと素子本体10の長手方向に並行な端縁部10F、10Gとの間にのみ形成されていることが望ましい。
位相差板20(位相差部20D)は、いわば短冊状であり、その厚さは基部20Cと同じである。位相差部20Dは、基部20Cから延在され、素子本体10の光出射面10Eにおける偏光分離膜12の上部の領域に配置されている。隣り合う複数の位相差部20Dは、互いに所定幅の隙間W2をもって配置されており、隙間W2には、反射膜13で反射されたS偏光光がそのまま通過する。
位相差部20Dは、図4に示すように、それぞれ素子本体10の光出射面10Eに対向する光入射面20Fを有する。
【0039】
この位相差部20Dの光入射面20Fと、素子本体10の光出射面10Eとの間には、僅かな隙間W3が設けられている。そのため、位相差部20Dの光入射面20Fと光学素子310の光出射面10Eとには、それぞれ図示しない反射防止膜が形成されていることが望ましい。
図3、図4の構成によれば、位相差板20の位相差部20Dが、素子本体10に接着剤により接着されないので、接着剤の劣化による光学特性の劣化を回避することが出来る。
また、複数の位相差部20Dが、基部20Cと一体となっているため、位相差板20の素子本体10への組み付けも容易である。
【0040】
次に、図1乃至3における素子本体10の製造工程をより詳しく説明する。
製造工程は、大きく分けて膜形成工程と、接着工程と、切断工程と、研磨工程と、から成っている。
図5乃至図11は、本実施形態にかかる偏光変換素子、特に素子本体の製造工程を説明する図である。
[膜形成工程]
最初の膜形成工程では、図5に示すように、まず複数の透光性基板(ガラス等の無色透明基板)11Aが準備される。これらの透光性基板11Aは、互いに略平行な第1面11A1及び第2面11A2を有している。
複数の透光性基板11Aのうち、いくつかの透光性基板11Aの第1面11A1には、偏光分離膜12が形成され、第2面11A2には、反射膜13が形成される。
その他の透光性基板11Aの第1面11A1及び第2面11A2には、これらの膜の何れかが形成されるか、あるいは何れの膜も形成されていない。
【0041】
[接着工程]
図6に示す接着工程では、偏光分離膜12及び反射膜13が形成された透光性基板11Aと、これらの膜が形成されていない透光性基板11Aと、が接着剤14Aによって交互に貼り合わされる。このとき、偏光分離膜12と反射膜13とが透光性基板11Aを挟んで交互に積層されるようにする。
ここで、接着剤14Aとして変成アクリレート又は変性メタクリレートを主成分とする接着剤を使用し、その塗布量は、硬化後の厚みが5〜10μmとなるように調整する。
次に、図7に示すように、透光性基板11Aの第1面11A1にほぼ垂直な方向から紫外線が照射される。なお、紫外線は、偏光分離膜12及び反射膜13を通過するため、図7中全ての接着剤14Aは同時に硬化される。
これにより、偏光分離膜12と透光性基板11Aの間と、反射膜13及び第2の透光性基板の間に、それぞれ接着層14が形成される。そして、複数の透光性基板11Aが接合された積層体400が形成される。
なお、透光性基板11Aの第1面11A1にほぼ平行な方向から紫外線を照射してもよい。
【0042】
ここで、接着剤14Aの硬化条件と、各硬化条件によって得られる接着層14の接着強度との関係について説明する。
下記の表1に示したように、紫外線(UV)照射量を変化させて硬化試験1から硬化試験7までを実施した。その結果、引張強度については、表1、図8(A)、(B)に示すようになり、せん断強度については、表1、図9(A)、(B)に示すようになった。
すなわち、図8(A)、(B)に示すように、紫外線照射量が15,000mJ/cm以上45,000mJ/cm以下、特に20,000mJ/cm以上35,000mJ/cm以下の場合、接着層14の引張強度が高くなるため好ましい。また、図9(A)、(B)に示すように、紫外線照射量が15,000mJ/cm以上60,000mJ/cm以下、特に25,000mJ/cm以上50,000mJ/cm以下の場合は、接着層14のせん断強度が高くなるために好ましい。なお、表1中、各硬化試験は、2回ずつ実施している。
【0043】
引張強度試験、せん断強度試験は、以下の試験方法で実施した。すなわち、10mm×10mmの大きさの白色ガラス板2枚を接着剤14Aで接着して作成した試験品を、引張試験機で、接着面に対し垂直あるいは平行方向に引張加重をかけ、2枚の白色ガラス板が分離した時の加重を測定した。










[表1]

【0044】
次に、図10に示すように、切断工程として、第1面11A1と所定の角度θ(約45度)をなす切断面でほぼ平行に積層体400が切断されて、積層ブロック410が切り出される。
図11に示す、続く研磨工程では、切り出された積層ブロック410の切断面410Aを研磨装置500で研磨することにより、偏光変換素子1の素子本体10が得られる。
【0045】
[耐熱性試験]
実施例1及び比較例1により、本発明に用いる接着剤(接着層)の耐熱性について評価した。
図12は、実施例1及び従来例1の耐熱性試験を示す図である。
実施例1では、接着剤(UT20 株式会社アーデル製)により、2枚のガラス板を貼り合わせ、所定量の紫外線を照射した。これにより、実施例1の試験片600を作製した。
一方、比較例1では、従来の接着剤(PHOTOボンド300 サンライズMSI株式会社製)により2枚のガラス板を貼り合わせ、所定量の紫外線を照射した。これにより、比較例1の試験片601を作製した。
これら試験片600、601を固定枠610内に固定した後、試験片600、601をプロジェクターの偏光変換素子を設置すべき場所に組み込み、試験片600、601に光源ランプの光が照射された時、試験片の温度が120℃となるようにプロジェクターの冷却機構を調整した。図12では、3800時間この環境下に放置した場合の試験結果が示されている。
【0046】
図12に示すように、試験片601の接着層では、一部に黄変620が見られた一方で、試験片600の接着層では、黄変が見られなかった。
さらに、試験片600、601をこの環境下に放置し続けた結果、4800時間後に、試験601の接着層では激しい黄変が見られた。一方で、試験片600の接着層では、光学特性に影響のない程度の若干の黄変が見られるに留まった。
従って、本発明の接着剤により形成された接着層は耐熱性に優れていることが分かる。
【0047】
[平坦度試験]
(実施例2から実施例11まで、及び比較例2)
実施例2から実施例11まで、及び比較例2により、本発明の偏光変換素子における光入射面及び光出射面の平坦度を評価した。
図13は、本発明に係る実施例2から実施例6までの平坦度試験の結果を示す図であり、図14は、本発明に係る実施例7から実施例11までの平坦度試験の結果を示す図であり、図15は、比較例2の平坦度試験の結果を示す図である。
(実施例2から実施例6まで)
実施例2では、実施例1と同様の接着剤を用いて、後述する図35に示すような偏光変換素子1に用いる素子本体を作製した。そして、図35に示される左右の2つの素子本体のうち、左側の素子本体10を用いた。そして、下記の測定方法により、その素子本体10の光入射面16の略中央における断面図を得た。ここで、断面図は、図35の左右方向の断面図である。
得られた断面図において、比較的上側に大きく膨らんだ凸部を選び、その凸部の左右近傍の凹部の頂点を線で結んだ。この線から、凸部の頂点までの距離を縦軸のスケールで換算して、「高低差」を算出した。
実施例3から実施例6でも、実施例2と同様に素子本体10を作製して、その光入射面16について測定し、断面図を得た。そして、断面図より、実施例2と同様に、「高低差」を2点算出した。図13には、それらの結果が示されている。
【0048】
(実施例7から実施例11まで、及び比較例2)
実施例7から実施例11まででは、それぞれ実施例2から実施例6までで作製した素子本体10の光出射面17について、実施例2と同様に断面図を得た。得られた断面図により、実施例2と同様にして、「高低差」を2点算出した。
比較例2では、接着剤として、比較例1と同様の接着剤を用いた以外は、実施例2と同様にして素子本体を作製し、その光出射面を測定した断面図を得た。得られた断面図より実施例2と同様にして、「高低差」を2点算出した。
【0049】
実施例7から、実施例11まで及び比較例2の結果を、図14、15に示す。
断面図の測定方法としては、レーザー干渉計G102S(フジノン株式会社(現富士フイルム株式会社製))により、素子本体の光入射面又は光出射面を照射して、素子本体からの反射光と元々の平行光とを干渉させることによって、干渉縞を得る。なお、レーザー干渉計で設定した光の波長は、685nmである。
得られた干渉縞を干渉縞解析ソフトウェア(フジノン株式会社(現富士フイルム株式会社製))で解析することにより、光入射面又は光出射面の断面図を得る。
図13、14で示すように、本発明の接着剤を用いた実施例2から実施例11まででは、光入射面及び光出射面における高低差が小さいため、平坦度が優れていることがわかった。
一方、図15に示すように、従来の接着剤を用いた比較例では、光入射面における高低差が大きいため、平坦度が悪いことが分かった。
【0050】
[波長板の構造]
以下に、本発明の実施の形態に係る位相差板の構成を説明する。
図16は、本発明の実施の形態に係る位相差板の一例としての高次モード積層1/2波長板(以下、積層1/2波長板)の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
図16(a)に示すように、本発明に係る積層1/2波長板20は、水晶等の無機光学結晶を用いた高次モードの第1の波長板30と、第2の波長板40と、を夫々の光学軸31、41が交差するように貼り合わせた構成を備え、全体として、光源側から入射する直線偏光光Aの位相を180(deg)ずらし、偏光面を90(deg)回転させた直線偏光光Bに変換して出射する1/2波長板として機能するように構成する。
また、図16(b)に示すように、第1の波長板30の光学軸方位角をθ1、第2の波長板40の光学軸方位角をθ2とする。
なお、光学軸方位角とは、結晶光学軸と、積層波長板に入射する直線偏光光の偏光面とのなす角度である。
また、第1の波長板30及び第2の波長板40の切断角度は、夫々90(deg)Z(水晶板の主面における法線方向と光学軸(Z軸)の交差角度が90(deg))とである。
【0051】
本発明においては、積層1/2波長板20を液晶プロジェクターに組み込む偏光変換素子に用いる場合、所定の設計波長λ、例えば520nmの光(緑)に対する第1の波長板30の位相差をΓ1、第2の波長板40の位相差をΓ2とし、
Γ1=180+360×n(deg)・・・(1)
Γ2=180+360×n(deg)・・・(2)
を満足するように第1及び第2の波長板30、40の厚みを設定する。ここで、nは高次モードの次数で、1からはじまる自然数とする。
波長λの光に対する位相差Γと波長板の板厚tとの関係は、Γ=2π/λ×(ne−no)×t(neは異常光の屈折率、neは常光の屈折率)であり、第1の波長板430及び第2の波長板40の板厚t1、t2は、t1=t2=0.3168mmとした。
積層1/2波長板20は、液晶プロジェクターに必要な各波長帯(R(赤:400nm帯)、G(緑:500nm帯)、B(青:675nm))において、偏光変換効率が1となり、位相差が180(deg)となること求められる。
なお、上記のような位相差を有する1/2積層波長板において、偏光面を回転させるべき角度をθとした時に、(本発明の場合、1/2波長板であるのでθ=90(deg))、第1の波長板30の光学軸方位角θ1が、θ1=θ/4(θ=90(deg)の場合22.5(deg))、θ2=θ3/4(θ=90(deg)の場合67.5(deg))を満足し、|θ1−θ2|=45(deg)を満足することで、上記3波長帯の光に対して位相差が180(deg)となり、偏光変換効率がほぼ1となることが従来知られている(特許第4623042号)。
【0052】
それに対し、本発明においては、光学軸方位角θ1と光学軸方位角θ2との差をより少なくし(光学軸同士を寄らせ)|θ1−θ2|<45(deg)とすることにより、R、G、Bの各波長帯において、より広い波長帯で位相差がほぼ180(deg)となり、変更変換効率がほぼ1となるようにした。
且つ、θ1=θ/4、θ2=θ3/4の関係を満たす従来の光学軸方位角θ1、θ2に対し、光学軸調整量a(deg)を加算、減算してθ1=θ/4+a、θ2=θ3/4−aを満足するようにした。
このようにすると、設計波長の中心波長でこそ偏光変換効率が1にならないものの、許容可能な高い偏光変換効率を達成し、且つ設計波長λの中心波長の前後の波長で偏光変換効率が1となるようにして、広い範囲で位相差をほぼ180(deg)とすることが出来る。
従って、光源に用いられる発光素子の発熱等により、入力光Aに波長変動があったとしても、確実に入力光の偏光面を90(deg)回転させることが可能な1/2波長板とすることが出来る。
【0053】
特に、本発明においては、第1の波長板30の光学軸方位角θ1が、
22.5(deg)<θ1<45.0(deg)
を満足し、第2の波長板40の光学軸方位角θ2が、
45.0(deg)<θ2<67.5(deg)
を満足するようにしている。
例えば、光学軸方位角θ1、θ2は、θ1=26.5(deg)(θ/4+4)、θ2=63.5(deg)(θ3/4−4)を取りうる。
ここで、設計波長λの取りうる値の範囲は、505≦λ≦535(nm)となる(後述)。
なお、第1の波長板30及び第2の波長板40の光学軸方位角θ1、θ2は、必ずしもθ2>θ1の場合に限定されることはなく、|θ2−θ1|<45(deg)を満足すれば、第1の波長板30の光学軸方位角θ1が、
45.0(deg)<θ1<67.5(deg)
を満足し、第2の波長板40の光学軸方位角θ2が、
22.5(deg)<θ2<45.0(deg)
を満足するように構成してもよい。
【0054】
図17は、本発明の他の実施の形態に係る位相差板の一例としての高次モード積層1/2波長板(以下、積層1/2波長板)の構成を示す分解斜視図である。
図17では、図16の場合とは異なり、第1の波長板30の光学軸方位角θ1、第2の波長板40の光学軸方位角θ2を互いに(入射光の偏光面に対して)鈍角としている。
この場合、第1の波長板30の光学軸方位角θ1が、
135(deg)<θ1<157.5(deg)
を満足し、第2の波長板40の光学軸方位角θ2が、
112.5(deg)<θ2<135(deg)
を満足することにより、上記3波長帯の光に対して位相差が180(deg)となり、偏光変換効率がほぼ1となる。
【0055】
例えば、光学軸方位角θ1、θ2は、θ1=153.5(deg)、θ2=116.5(deg)を取り得る。
なお、この場合も、θ1>θ2に限らず、第1の波長板30の光学軸方位角θ1が、
112.5(deg)<θ1<135(deg)
を満足し、第2の波長板40の光学軸方位角θ2が、
135(deg)<θ2<157.5(deg)
を満足するように構成してもよい。
またこの場合も、設計波長λの取りうる値の範囲は、505≦λ≦535(nm)となる。
【0056】
ここで、従来知られる1/2積層波長板において上記3波長帯の光に対して位相差が180(deg)となる光学軸方位角(θ1=22.5(deg)、θ2=67.5(deg))が如何に見いだされたかを説明する。
第1及び第2の波長板30、40に高次モードの波長板を用いて全体として1/2波長板20を構成する場合、所望する複数の波長帯で位相差を180(deg)とするために、積層1/2波長板1の構成パラメータである第1及び第2の波長板30、40の夫々の高次モード次数n1、n2、所定の波長での夫々の位相差Γ1、Γ2、夫々の光学軸方位角θ1、θ2を、種々変化させて位相差、変換効率等を求める手法がとられる。
なお、各波長板に付する符号については本発明と同じ符号を使用する。
【0057】
はじめに、各光学軸方位角を導くための計算手法を簡単に説明する。
直線偏光が2枚の波長板を透過した後の偏光状態は、ミューラ行列、又はジョンズ行列を用いて表すことができる。
E=R2・R1・I・・・(4)
ここで、Iは入射光の偏光状態、Eは出射光の偏光状態を表すベクトルである。R1は積層1/2波長板20における第1の波長板30のミューラ行列、R2は第2の波長板40のミューラ行列で、夫々次式で表される。



第1及び第2の波長板30、40の高次モード次数nを決め、夫々の位相差Γ1、Γ2、光学軸方位角度θ1、θ2を設定して、式(5)、(6)よりミューラ行列R1、R2を求める。
【0058】
そして、入射光の偏光状態Iを設定すると、式(4)より出射光の偏光状態Eを算出することができる。
行列としてミューラ行列を用いた場合について説明すると、出射光の偏光状態Eは次式で表される。


Eの行列要素S01、S11、S21、S31はストークスパラメータと呼ばれ、偏光状態を表している。このストークスパラメータを用いて、波長板の位相差Γは次式のように表される。


Γ=(2m−1)×π 但し、mは正の整数
このように、式(8)を用いて位相差を算出することができる。
また、上記のように、積層1/2波長板20は、直線偏光の偏光面を、所定の回転角度θだけ回転させる機能を有しており、例えば、水平方向の振動面を持つ直線偏光Aを入力光として、偏光面をθ=90(deg)だけ回転(位相変調)させて水平方向の振動面を持つ直線偏光Bとして出射させる。
【0059】
図18は、従来の積層1/2波長板における偏光状態の軌跡を示すポアンカレ球を示す図である。
この位相変調(90(deg)回転)は図18のポアンカレ球で考えると、入射、偏光状態P0からP2へ変調させることであり、このとき必要な位相差は180(deg)である。
積層1/2波長板20が、完全に1/2波長板として機能している場合、赤道上の所定の位置P0から偏光方向が赤道に対して平行な方向となる直線偏光Aとして光線が入射すると、第1の波長板30によって光軸R1(2・θ1)を中心にして180(deg)回転しP1(赤道上)へ移され、さらに第2の波長板40によって光軸R2(2・θ2)を中心にして180(deg)回転しP2(赤道上)に到達し、直線偏光Aに対して偏光面がθ=90(deg)だけ回転した直線偏光Bとなって1/2波長板20を出射することになる。
なお、P2は、P0から180(deg)回転した赤道上の点である。
【0060】
図18(b)は、図18(a)に示したポアンカレ球において1/2波長板20に入射した光線の偏光状態の軌跡をS3軸方向から見た図(S1S2平面に投影した図)である。
第1の波長板30の光学軸方位角θ1、第2の波長板40の光学軸方位角θ2及び直線偏光A(入射光)に対する直線偏光B(出射光)の回転角θの関係は、ポアンカレ球上では図18(b)のように表すことができる。
点O、P0、P1を結んでなる三角形OP0P1は点Oを頂点とする二等辺三角形であり光軸R1は三角形OP0P1の二等分線となり、辺OP0と光軸R1とのなす角及び辺OP1と光軸R1とのなす角は2θ1となる。点O、P1、P2を結んでなる三角形OP1P2は点Oを頂点とする二等辺三角形であり、光軸R2は三角形OP1P2の二等分線となる。
【0061】
ここで、辺OP1と光軸R2とのなす角α及び辺OP2と光軸R2とのなす角αは、以下のように求められる。
2θ=2×2θ1+2α
α=θ−2θ1
従って、辺OP0と光軸R2とのなす角2θ2は、以下のように表すことができる。
2θ2=α+2×2θ1=θ−2θ1+2×2θ1=θ+2θ1
従って、θ2は、
θ2=θ1+θ/2・・・(9)
と表すことができる。
【0062】
しかしながら、図18のポアンカレ球において、P0からPaへ、P0からPbへ変調させた場合も、位相差は同じく180(deg)となる。即ち、位相差を用いて評価した場合、必要な偏光状態に変調されているかを判断することができない。ポアンカレ球上(赤道上)のP2と異なるPa、Pbの点は偏光面の方位である。
これを検出するため、出射光の偏光状態を表す行列Eと、偏光子の行列Pとの積を計算し、得られた光量を評価値とすれば、偏光状態を正確に判定することができる。これを変換効率と定義する。
具体的には、偏光子の行列Pの透過軸を90(deg)に設定し、行列Pと出射光偏光状態を表す行列Eとの積から得られる行列Tのストークスパラメータより、90(deg)方向の偏光面成分の光量を算出することができる。出射光偏光状態を表す行列Eと、偏光子の行列Pとの、積は次式のようになる。
即ち、偏光子の行列Pの透過軸を所定の角度に設定し、前記光射光の偏光状態Eを表わす行列Eと偏光子の行列Pとの積をTとすると、Tは次式で表される。
【0063】
T=P・E (10)
ここで、行列Tは変換効率を表し、その要素のストークスパラメータで表すと次式のように表される。

ここで、ベクトルTのストークスパラメータのS02が光量を表している。入射光量を1に設定すればS02が変換効率となる。
ここで、ベクトルTのストークスパラメータS02が光量を表し、入射光量を1に設定
すると、ストークスパラメータS02が変換効率となる。従って、積層1/2波長板1の
変換効率Tは、第1及び第2の波長板2、3の高次モード次数n、所定の波長(例えば波
長が、設計波長λ=520nmのとき)での位相差Γ1、Γ2、光学軸方位角θ1、θ2を様々に変化させて、シミュレーションすることができる。
位相差、変換効率とも積層1/2波長板を透過した後の偏光状態を表す行列Eから求めることができる。
【0064】
上記の変換効率を評価基準とし、積層1/2波長板の諸パラメータである第1及び第2の波長板30、40の高次モード次数n、所定の波長(例えば波長520nm)での夫々の位相差Γ1、Γ2、夫々の光学軸方位角θ1、θ2を種々変化させ、計算機を用いてシミュレーションする。
シミュレーションを繰り返し行い、所望の複数の波長帯において、変換効率が良い場合の上記パラメータを選び出した。高次モード次数nが大き過ぎると、変換効率が1に近い波長帯域幅が狭くなり、積層1/2波長板としても使いづらくなるので、製造し易さ等を含めて上記パラメータを選定する。
【0065】
その結果、積層1/2波長板20の第1及び第2の波長板30、40の切断角度が夫々90(deg)Z(水晶板の主面における法線方向と光学軸(Z軸)との交差角度が90(deg))、高次モードの次数nが4で、波長λを520nmとしたとき、第1の波長板30の位相差Γ1、光学軸方位角θ1が夫々1620(=180+360×4)(deg)、22.5(deg)、第2の波長板の位相差Γ2、光学軸方位角θ2が夫々1620(=180+360×4)(deg)、67.5(deg)に設定した場合に、または、高次モードの次数nが5で、波長λを520nmとしたとき、第1の波長板30の位相差Γ1、光学軸方位角θ1が夫々1980(=180+360×5)(deg)、22.5(deg)、第2の波長板の位相差Γ2、光学軸方位角θ2が夫々1980(=180+360×5)(deg)、67.5(deg)に設定した場合に、積層1/2波長板20の変換効率をシミュレーションにより求めた結果良好な波長−変換効率(偏光変換効率)が得られる。
【0066】
以上の説明を踏まえ、本発明の積層1/2波長板の偏光状態を、ポアンカレ球を使用して説明する。
図19は、図16に示す本発明の積層1/2波長板における偏光状態の軌跡を示すポアンカレ球を示す図である。
上記したように、図19の場合において各光学軸方位角θ1、θ2は、
22.5(deg)<θ1<45.0(deg)
45.0(deg)<θ2<67.5(deg)
|θ1−θ2|<45(deg)
を満足している。
また、例えばθ1=26.5(deg)、θ2=63.5(deg)である。
【0067】
図19(a)は、積層1/2波長板20に入射した直線偏光Aのポアンカレ球上での軌道の推移を説明するための図である。直線偏光Aが入射する赤道上の位置をS1軸上の点P0に設定した。
図19(b)は、図19(a)のポアンカレ球において、積層1/2波長板20に入射した偏光状態の軌跡をS2軸方向から見た図、即ちS1S3平面への投影図である。
図19(c)は、図19(a)のポアンカレ球において、積層1/2波長板20に入射した偏光状態の軌跡をS3軸方向から見た図、即ちS1S2平面への投影図である。
入射光の基準点をP0=(1,0,0)として、第1の波長板30の回転軸R11をS1軸から2θ1回転した位置に設定する。
【0068】
本実施例では、光学軸方位角θ1を上述したように設定したので、回転軸R11は、図18のθ1=22.5(deg)の場合の回転軸R1よりも更に角度2aだけ回転させた位置にくる。
また、第2の波長板40の回転軸R22を、同様にS1軸から2θ2回転した位置に設定する。
光学軸方位角θ2を上述したように設定したことにより、回転軸R22は、図18に示したθ2=67.5(deg)の場合の回転軸R2よりも角度2aだけ戻した位置にくる。
第1の波長板30の出射光の位置は、回転軸R11を中心に基準点P0を位相差Γ1だけ右方向に回転させたときにポアンカレ球に描かれる軌跡の円C1上の点である。
円C1は、S2軸とS3軸とを含むS2−S3平面と2点で交差している。従って、位相差Γ1が上記設定値の通りである場合、ポアンカレ球の点(0,1,0)から基準点P0とは逆方向に少しずれた赤道上の点P11が前記第1の波長板30の出射光の位置となる。
【0069】
第2の波長板40の出射光の位置は、回転軸R22を中心に点P11を位相差Γ2だけ右方向に回転させたポアンカレ球上の点である。
位相差Γ2が上記設定値の通りである場合、ポアンカレ球の点P2(−1,0,0)から基準点P0側に少し戻った赤道上の点P21が前記第2の波長板の出射光の位置、即ち積層1/2波長板40の出射光の位置となる。その結果、出射光は、偏光面の回転が所望の角度θ=90(deg)からずれることになる。
出射光の偏光面の回転角度が90(deg)となるためには、ポアンカレ球上で出射光の位置が点P2(−1,0,0)に到達する必要がある。その場合、第1の波長板30の出射光の位置は、回転軸R22を中心に点P11を位相差Γ2だけ逆方向即ち左方向に回転させたポアンカレ球上の点でなければならない。このとき、回転軸R22を中心に点P11を回転させることによりポアンカレ球上に描かれる軌跡の円C2は、S2−S3平面に関して円C1と対称即ち鏡像の関係になる。
円C1と円C2とは、S2−S3平面上に2つの交点P12、P13を有する。
【0070】
第1の波長板30と第2の波長板40とは、位相差Γ1、Γ2を等しく設定したので、入射光の波長のずれによる位相差のずれ量ΔΓ1,ΔΓ2も等しくなる。従って、ポアンカレ球上において、第1の波長板30の出射光の位置が、位相差Γ1のずれにより円C1と円C2との一方の交点P12又はP13となる場合、第2の波長板40の出射光の位置は、点P2(−1,0,0)に到達する。
その結果、積層1/2波長板20の出射光は、偏光面の回転角度が所望のθ=90(deg)となる波長が、設計波長λを中心としてその正負両側に各1点存在することになる。
設計波長λにおいて積層1/2波長板20が1/2波長板として要求される十分な機能を発揮する場合、設計された位相差Γ1、Γ2に対して、少なくともポアンカレ球上の2点P12、P13における位相差のずれ量ΔΓ1、ΔΓ2を許容されるずれの最大値とする位相差の範囲に対応する波長の範囲が、設計波長λを中心とする積層1/2波長板20の使用可能な波長範囲と解される。
【0071】
図20は、図16に示す積層1/2波長板において各積層1/2波長板の光学軸方位角を入れ替えた場合の偏光状態の軌跡を示すポアンカレ球を示す図である。
すなわち、図20の場合において、各光学軸方位角θ1、θ2は、
45.0(deg)<θ1<67.5(deg)
22.5(deg)<θ2<45.0(deg)
|θ1−θ2|<45(deg)
を満足している。
この場合、例えば光学軸方位角θ1、θ2は、それぞれθ1=63.5(deg)、θ2=26.5(deg)を取りうる。
この場合も、図19の場合と同様に、第2の波長板40からの出射光は点P2から外れた点P22に到達するが、ポアンカレ球上において、第1の波長板30の出射光の位置が、位相差Γ1のずれにより円C1と円C2との一方の交点P12又はP13となる場合、第2の波長板40の出射光の位置は、点P2(−1,0,0)に到達する。
その結果、積層1/2波長板20の出射光は、偏光面の回転角度が所望のθ=90(deg)となる波長が、設計波長λを中心としてその正負両側に各1点存在することになる。
【0072】
図21は、図17に示す積層1/2波長板における偏光状態の軌跡を示すポアンカレ球を示す図である。
図21の場合において、各光学軸方位角θ1、θ2は、
135.0(deg)<θ1<157.5(deg)
112.5(deg)<θ2<135(deg)
|θ1−θ2|<45(deg)
を満足している。
この場合、光学軸方位角θ1、θ2は、例えば、θ1=153.5(deg)、θ2=116.5(deg)を取りうる。
この場合も、図19の場合と同様に、第2の波長板40からの出射光は点P2から外れた点P22に到達するが、ポアンカレ球上において、第1の波長板30の出射光の位置が、位相差Γ1のずれにより円C1と円C2との一方の交点P12又はP13となる場合、第2の波長板40の出射光の位置は、点P2(−1,0,0)に到達する。
その結果、積層1/2波長板20の出射光は、偏光面の回転角度が所望のθ=90(deg)となる波長が、設計波長λを中心としてその正負両側に各1点存在することになる。
【0073】
図22は、図17に示す積層1/2波長板において、各積層波長板の光学軸方位角を入れ替えた場合の偏光状態の軌跡を示すポアンカレ球を示す図である。
図22の場合において、各光学軸方位角θ1、θ2は、
112.5(deg)<θ1<135(deg)
135.0(deg)<θ2<157.5(deg)
を満足している。
光学軸方位角θ1、θ2は、例えば、θ1=116.5(deg)、θ2=153.5(deg)を取りうる。
【0074】
この場合も、図19の場合と同様に、第2の波長板40からの出射光は点P2から外れた点P22に到達するが、ポアンカレ球上において、第1の波長板30の出射光の位置が、位相差Γ1のずれにより円C1と円C2との一方の交点P12又はP13となる場合、第2の波長板40の出射光の位置は、点P2(−1,0,0)に到達する。
その結果、積層1/2波長板20の出射光は、偏光面の回転角度が所望のθ=90(deg)となる波長が、設計波長λを中心としてその正負両側に各1点存在することになる。
従って、何れの場合(図19〜図22)も、設計波長では偏光変換効率が1にならないものの、その正負両側に偏光変換効率が1となる波長があり、結果的に、広帯域で1/2波長板として機能していることが分かる(ワイド化)。
この1/2波長板として要求される機能を発揮し得る使用可能な波長範囲は、ポアンカレ球上における回転軸R11、R22の設定位置によって、即ち光学軸調整量aの設定値によって決定される。そこで、光学軸調整量aに対する積層1/2波長板11の変換効率を、従来技術に関連して上述した計算手法を用いてシミュレーションした。
【0075】
図23は、0(deg)≦a≦3.0(deg)の範囲において、使用波長範囲を405nm±20nmとして算出した変換効率の平均値を示している。
同図に示すように、変換効率が最大値をとる光学軸調整量aが存在するので、変換効率の劣化を最小限にするaの最適範囲の存在が推測される。尚、以下の説明において、本発明の積層1/2波長板の変換効率は同じ計算手法を用いてシミュレーションしたものである。
更に、中心波長λ0=405nm、波長範囲355nm≦λ≦450nmとして、光学軸調整量aを0(deg)から3.5(deg)まで0.5(deg)毎に変換効率をシミュレーションした。その結果を図24に示す。
同図から、光学軸調整量aを大きくするほど、変換効率が1となる波長位置が中心波長λ0の正負両側に大きく移動する反面、中心波長λ0における変換効率が劣化することが分かる。
実際の使用時には、積層1/2波長板の用途、仕様に応じて、中心波長における変換効率の許容値、使用帯域幅を決定し、それに応じて光学軸調整量aを決定すればよい。
【0076】
第1及び第2の波長板30、40の位相差Γ1、Γ2の高次モード次数は、n=1又は2に設定することが好ましい。n=3以上に設定すると、1又は1に近い良好な変換効率が得られる波長帯域幅が狭くなり、本発明の広帯域化の効果を十分に発揮することが困難になる。以下のシミュレーションでは、特に明示しない限り、高次モード次数n=1の場合を説明したものである。
出射光の偏光面回転角度をθ=90(deg)に固定し、中心波長λ0=405nm、使用波長範囲375nm≦λ≦435nmとした場合に、光学軸調整量a(0(deg)≦a≦8.0(deg))に対する変換効率の最小値Tminをシミュレーションした。
更に、光学軸調整量aに対する変換効率の最大値と最小値との差ΔTをシミュレーションした。それらの結果を図25に示す。
【0077】
同図から、Tmin及びΔTがいずれもa=2(deg)付近で明確に最良値となることが分かる。
更に同図は、Tminが大きくかつΔTが小さくなるような光学軸調整量aが最適値であることを示している。
そこで、変換効率の最小値Tminを変換効率の最大値と最小値との差ΔTで除した値を変換比率RTと称し、これを変換効率の評価値として使用すると、図25は図26のように表すことができる。
即ち、図26は、光学軸調整量aに対する変換比率RTの変化を示している。同図から、0<a<3.5(deg)の範囲において、a=0(deg)よりも変換比率が良くなる、即ち変換効率が良いことが分かる。
更に、中心波長λ0=405nm、使用波長範囲375nm≦λ≦435nmとして、偏光面回転角度θを15(deg)、30(deg)、45(deg)、60(deg)、75(deg)、90(deg)とした場合に、光学軸調整量aに対する変換比率RTの変化をシミュレーションした。その結果を図27に示す。同図から、それぞれの偏光面回転角度θについて、a=0(deg)よりも変換比率を良くする光学軸調整量aの最大値amaxが存在することが確認された。
【0078】
図27から、変換比率がa=0(deg)よりも向上する各偏光面回転角度θの光学軸調整量最大値amaxを抽出し、その相関関係を図28に表した。この相関関係を近似式で表すと、次式のようになる。
max=A0+A1・θ+A2・θ
A0=−0.06032
A1=0.0717
A2=−0.00035
この関係式を用いることによって、本発明の積層1/2波長板が高次モード次数n=1の場合に、偏光面回転角度θを設定すれば、より広帯域の波長範囲で変換効率の劣化を最小限に抑制し、良好な変換効率が得られるための光学軸調整量aの最大値amaxを簡単に決定することができる。
更に、積層1/2波長板が高次モード次数n=2の場合についても、同様に偏光面回転角度ψを15(deg)、30(deg)、45(deg)、60(deg)、75(deg)、90(deg)とし、光学軸調整量aに対する変換比率RTの変化をシミュレーションした。このシミュレーション結果から、それぞれの偏光面回転角度ψについて、a=0(deg)よりも変換比率を良くする光学軸調整量aの最大値amaxを抽出した。
【0079】
その偏光面回転角度θと光学軸調整量最大値amaxとの相関関係を図29に示す。図29から、光学軸調整量aの最大値amaxの範囲は次のようになる。
0<amax<7.0
図29から、偏光面回転角度θと光学軸調整量最大値amaxとの相関関係を近似式で表すと、次式のようになる。
max=A0+A1・θ+A2・θ
A0=−0.15869
A1=0.13912
A2=−0.00066
この関係式を用いることによって、本発明の積層1/2波長板が高次モード次数n=2の場合にも、偏光面回転角度θを設定すれば、より広帯域の波長範囲で変換効率の劣化を最小限に抑制し、良好な変換効率が得られるための光学軸調整量aの最大値amaxを簡単に決定することができる。
上記シミュレーションは、いずれも405nmを中心波長とする波長域について行ったものであるが、これは他の波長域についても同様に適用することができる。
【0080】
図30は、中心波長405nmの青色光の波長域に加えて、530nm及び660nmをそれぞれ中心波長とする緑色光及び赤色光の各波長域について、波長に対する変換効率の変化を示している。同図において、実線で表した各線は、青・緑・赤の各色光にそれぞれ本発明を適用して、前記第1及び第2の波長板の光学軸調整量aを適当な値に設定した場合に得られる変換効率である。これに対し、破線で表した各線は、光学軸調整量aを設定しない従来技術の第1及び第2の波長板について得られる変換効率である。同図から、緑色光及び赤色光の各波長域についても、より広帯域の波長範囲で変換効率の劣化を最小限に抑制し、1に近い良好な変換効率を得られることが分かる。
【0081】
図31は波長400nmから700nmに対する本発明の積層1/2波長板20の変換効率を示す図であり、(a)は各波長板の設計波長λを505nm(G)として、入射角を−3(deg)から+3(deg)まで変化させた場合の、波長毎の偏光変換効率の変化を示すグラフ図であり、(b)は各波長板の設計波長λを505nmとして、入射角を−10(deg)から+10(deg)まで変化させた場合の、波長毎の偏光変換効率の変化を示すグラフ図である。
いずれの場合も、全ての曲線がほぼ重なった状態であり、液晶プロジェクターで用いる青、緑、赤の波長は夫々400nm帯、500nm帯、675nm帯であるので、上記パラメータの積層1/2波長板1の変換効率は、入射角に±10までのズレがあったとしても、図30と同様に、必要な波長帯において、広い範囲でほぼ1となることが判明した。
【0082】
図32は波長400nmから700nmに対する本発明の積層1/2波長板20の変換効率を示す図であり、(a)は各波長板の設計波長λを530nmとして、入射角を−3(deg)から+3(deg)まで変化させた場合の、波長毎の偏光変換効率の変化を示すグラフ図であり、(b)は、各波長板の設計波長λを530nmとして、入射角を−10(deg)から+10(deg)まで変化させた場合の、波長毎の偏光変換効率の変化を示すグラフ図である。
いずれの場合も、全ての曲線がほぼ重なった状態であり、液晶プロジェクターで用いる青、緑、赤の波長は夫々400nm帯、500nm帯、675nm帯であるので、上記パラメータの積層1/2波長板1の変換効率は、入射角に±10(deg)までのズレがあったとしても、必要な波長帯において、広い範囲でほぼ1となることが判明した。
【0083】
図33は波長400nmから700nmに対する本発明の積層1/2波長板20の変換効率を示す図であり、(a)は各波長板の設計波長λを535nmとして、入射角を−3(deg)から+3(deg)まで変化させた場合の、波長毎の偏光変換効率の変化を示すグラフ図であり、(b)は各波長板の設計波長λを535nmとして、入射角を−10(deg)から+10(deg)まで変化させた場合の、波長毎の偏光変換効率の変化を示すグラフ図である。
いずれの場合も、全ての曲線がほぼ重なった状態であり、液晶プロジェクターで用いる青、緑、赤の波長は夫々400nm帯、500nm帯、675nm帯であるので、上記パラメータの積層1/2波長板1の変換効率は、入射角に±10(deg)までのズレがあったとしても、必要な波長帯におおいて、広い範囲でほぼ1となることが判明した。
なお、積層1/2波長板が対応すべき波長帯は、RGBのみならず、他の波長の色を加えた、4波長、5波長にも対応可能としてもよい。
この場合、ピーク波長が図31〜図33に示したカーブに4つのピーク波長が出来る様にし、ピーク波長の何れかを設計波長とする。
【0084】
図34は、本発明の実施の形態に係る偏光変換素子を組み込んだ偏光変換ユニットの外観を示す図である。
図35は、図34の偏光変換ユニットの分解斜視図である。
図34、図35に示す偏光変換ユニット120は、ユニット枠200と、本発明の偏光変換素子1と、遮光板210と、レンズアレイ220と、クリップ230と、を備えている。ユニット枠200の一方の開口面(図35では下面)側からは、後述する2つの偏光変換素子本体を有する偏光変換素子1が挿入され、もう一方の開口面(図35では上面)側からは、遮光板210とレンズアレイ220とがこの順に挿入される。これらの光学素子210、220は、ユニット枠200に収納された状態で、4つのクリップ230で上下2方向から挟持される。クリップ230は弾性体で形成されているので容易に着脱することができ、偏光変換ユニット120の各部品もユニット枠に容易に着脱することができる。
かかるユニット枠200によって、偏光変換素子1を、光源からの光束が偏光変換素子1(特に後述のPBS膜)に入射する角度が常に一定になってPS変換が正確に行える姿勢で、液晶プロジェクターに組み込むことが出来る。
【0085】
図36は、本発明の実施の形態に係る偏光変換素子を適用した投光装置の一例としての液晶プロジェクターを示す図である。
図36に示す投写型表示装置(液晶プロジェクター)100は、光源110と、第1のレンズアレイ111と、本発明に係る偏光変換素子を組み込んだ偏光変換ユニット120と、重畳レンズ121と、で構成される照明光学系を備えている。また、ダイクロイックミラー131、132と、反射ミラー133とを含む色光分離光学系130を備えている。さらに、入射側レンズ140と、リレーレンズ141と、反射ミラー142、143とを含む導光光学系を備えている。また、3枚のフィールドレンズ144、145、146と、3枚の液晶ライトバルブ150R、150G、150Bと、クロスダイクロイックプリズム160と、投写レンズ170と、を備えている。
反射ミラー146は、重畳レンズ121から射出された光を色光分離光学系130の方向に反射する機能を有している。色光分離光学系130は、2枚のダイクロイックミラー131、132により、重畳レンズ121から射出される光を、赤、緑、青の3色の色光に分離する機能を有している。第1のダイクロイックミラー131は、重畳レンズ121から射出される光のうち赤色光成分を透過させるとともに、青色光成分と緑色光成分とを反射する。第1のダイクロイックミラー131を透過した赤色光は、反射ミラー133で反射され、フィールドレンズ144を通って赤光用の液晶ライトバルブ150Rに達する。このフィールドレンズ144は、重畳レンズ121から射出された各部分光束をその中心軸(主光線)に対して平行な光束に変換する。他の液晶ライトバルブの前に設けられたフィールドレンズ145、146も同様である。
【0086】
第1のダイクロイックミラー131で反射された青色光と緑色光のうちで、緑色光は第2のダイクロイックミラー132によって反射され、フィールドレンズ145を通って緑光用の液晶ライトバルブ150Gに達する。一方、青色光は、第2のダイクロイックミラー132を透過し、導光光学系、すなわち、入射側レンズ140、反射ミラー142、リレーレンズ141、反射ミラー143を通り、さらに、フィールドレンズ146を通って青色光用の液晶ライトバルブ150Bに達する。
なお、青色光に導光光学系が用いられているのは、青色光の光路の長さが他の色光の光路の長さよりも長いため、光の拡散等による光の利用効率の低下を防止するためである。すなわち、入射側レンズ140に入射した光束をそのまま、フィールドレンズ146に伝えるためである。
【0087】
3つの液晶ライトバルブ150R、150G、150Bは、入射した光を、与えられた画像情報(画像信号)に従って変調する光変調手段としての機能を有している。これにより、3つの液晶ライトバルブ150R、150G、150Bに入射した各色光は、与えられた画像情報に従って変調されて各色光の画像を形成する。
3つの液晶ライトバルブ150R、150G、150Bから射出された3色の変調光は、クロスダイクロイックプリズム160に入射する。
クロスダイクロイックプリズム160は、3色の変調光を合成してカラー画像を形成する色光合成部としての機能を有している。クロスダイクロイックプリズム160には、赤光を反射する誘電体多層膜と、青光を反射する誘電体多層膜と、が4つの直角プリズムの界面に略X字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3色の変調光が合成されて、カラー画像を投写するための合成光が形成される。クロスダイクロイックプリズム160で生成された合成光は、投写レンズ170の方向に射出される。投写レンズ170は、この合成光を投写スクリーン上に投写する機能を有し、投写スクリーン上にカラー画像を表示する。
【0088】
図34に示すような、耐熱・耐光性能に優れた本発明の偏光変換素子を備えた偏光変換ユニットを組み込むことで、高輝度・高発熱の光源を使って鮮明な映像を長時間投影可能な液晶プロジェクターとすることが出来る。
また、本発明にように、本発明の偏光変換素子は、後述する構成によって、異なる複数の波長帯で、確実に1/2波長板として機能する位相差板(積層1/2波長板)を備えているので、高輝度で鮮明な映像を投射可能な液晶プロジェクターを実現できる。
【符号の説明】
【0089】
1 偏光変換素子、10 PBSアレイ(素子本体)、10A 素子本体、10C 接合面、10D 光入射面、10E 光出射面、10F 端縁部、11 透光性基板、11A 透光性板材、12 偏光分離膜、13 反射膜、14 接着層、14A 接着剤、16 光入射面、17 光出射面、20 波長板、20A 位相差板、20B 位相差板、20C 基部、20C1 基部、20C2 基部、20D 位相差部、20D1 位相差部、20D2 位相差部、20E 先端部、20E1 先端部、20E2 先端部、20F 光入射面、21 接合層、30 波長板、31 光学軸、31A 接合面、31A1 境界部、40 波長板、91 偏光分離膜、92 反射膜、93 接着層、95 素子本体、96 接合層、97 位相差板、98 透光性基板、110 光源、111 レンズアレイ、120 偏光変換ユニット、121 重畳レンズ、130 色光分離光学系、131 ダイクロイックミラー、132 ダイクロイックミラー、133 反射ミラー、140 入射側レンズ、141 リレーレンズ、142 反射ミラー、143 反射ミラー、144 フィールドレンズ、145 フィールドレンズ、146 フィールドレンズ、
146 反射ミラー、150B 液晶ライトバルブ、150G 液晶ライトバルブ、
150R 液晶ライトバルブ、160 クロスダイクロイックプリズム、170 投写レンズ、200 ユニット枠、210 光学素子、210 遮光板、220 レンズアレイ、230 クリップ、310 光学素子、400 積層体、410 積層ブロック、410A 切断面、500 研磨装置、600 試験片、601 試験、601 試験片、
610 固定枠、620 黄変、951 光入射面、952 光出射面、961 気泡、
981 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに略平行な光入射面及び光出射面を有し、
前記光入射面あるいは前記光出射面に対して所定の傾斜角度を有する接合面によって接着剤を介して接合された複数の透光性基板と、
複数の前記透光性基板の間の境界部に交互に設けられ、前記光入射面に入射した光を偏光方向が互いに直交する異なる2種類の直線偏光に分離して一方の直線偏光を透過させ、他方の直線偏光を反射する偏光分離部と、反射された前記他方の直線偏光光束を反射し、光路の向きを変える反射部と、を有する光学素子と、
前記光出射面に配置され、前記2種類の直線偏光のうち何れか一方の直線偏光の偏光面を回転させて他方の直線偏光の偏光面と平行な直線偏光に変換して出射する位相差板と、を備え、
前記接着層は、紫外線硬化型の接着剤であり、厚みが5μm以上10μm以下であり、
前記位相差板は、前記光出射面であって、前記偏光分離部の上部の領域又は前記反射部の上部の領域に配置され、
波長λの光に対して、位相差Γ1の第1の波長板と、波長λの光に対して、位相差Γ2の第2の波長板と、を各々の光学軸が交差するように積層してなり、
互いに波長帯が異なる複数の波長帯において、入射する直線偏光の偏光面を回転角θ(deg)回転させた直線偏光に変換して出射する位相差板であって、
前記波長λは、前記複数の波長帯のうちの何れかの波長帯に含まれる波長であり、
下式(1)及び(2)を満足し、
Γ1=180+360×n(deg)・・・(1)
Γ2=180+360×n(deg)・・・(2)
但し、nは1からはじまる自然数
前記第1の波長板の光学軸方位角θ1と前記第2の波長板の光学軸方位角θ2が、
22.5(deg)<θ1<45.0(deg)
45.0(deg)<θ2<67.5(deg)
又は、
45.0(deg)<θ1<67.5(deg)
22.5(deg)<θ2<45.0(deg)
を満足し、
若しくは、
135.0(deg)<θ1<157.5(deg)
112.5(deg)<θ2<135(deg)
又は、
112.5(deg)<θ1<135.0(deg)
135.0(deg)<θ2<157.5(deg)
を満足することを特徴とする偏光変換素子。
【請求項2】
前記位相差板は、
前記光学素子の端縁部に、前記偏光分離部と前記反射部とが交互に並べられた方向に沿って接合された基部と、
該基部に連続して形成され、且つ前記偏光分離部又は前記反射部の前記光出射面側に配置された複数の位相差部本体と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の偏光変換素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の偏光変換素子において、
前記接着層は、変性アクリレート又は変性メタクリレートを主成分とすることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の偏光変換素子において、
前記位相差板と前記光出射面とは、接合層により接合され、
前記接合層は、シロキサン結合(Si−O)を含む原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基と、を含み、前記Si骨格のうち、前記脱離基が脱離したSi骨格の未結合手が活性手となって、前記位相差板と前記光出射面と接合していることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の偏光変換素子において、
前記透光性基板と前記位相差板とは、接合層により接合され、
前記接合層は、前記透光性基板に設けられた微結晶連続薄膜と、前記位相差板に設けられた微結晶連続薄膜とを接触させて、前記透光性基板の微結晶連続薄膜と前記位相差板の微結晶連続薄膜との接触界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせる原子拡散接合法により形成される、又は、前記透光性基板及び前記位相差板のうちの何れか一方に設けられた微結晶連続薄膜と、何れか他方に設けられた微結晶構造とを接触させて、前記微結晶連続薄膜と前記微結晶構造との接触界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせる原子拡散接合法により形成されることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の偏光変換素子において、
前記位相差板の材質が、無機光学結晶であることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の偏光変換素子と、当該偏光変換素子を固定する固定枠と、を備えることを特徴とする偏光変換ユニット。
【請求項8】
光を出射する光源装置と、
該光源装置からの光を、1種類の偏光光に変換する請求項7に記載の偏光変換ユニットと、
当該偏光変換ユニットからの偏光光を画像情報に応じて光学像を形成する光変調装置と、
該光変調装置にて形成された前記光学像を拡大投射する投射光学装置と、
を備えることを特徴とする投射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−220909(P2012−220909A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89823(P2011−89823)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】