説明

偏光変換素子及び該偏光変換素子を備える表示装置

【課題】構造が簡単で耐久性が高く、構成部材の増加による製造工程の複雑化や、コスト増大、表示装置の大型化を招くことなく、光の利用効率を向上することができる偏光変換素子及び該偏光変換素子を備える表示装置の提供。
【解決手段】本発明の偏光変換素子は、基材と、前記基材に設けられた偏光分離部及び偏光変換部と、を備え、入射する入射光の偏向方向を略一方向に揃えて射出する偏光変換素子であって、前記偏光分離部は、前記入射光を所定の偏光方向を有する一方の光と他の偏光方向を有する他方の光とに分離し、前記一方の光を透過させ、前記他方の光を反射し、前記偏光変換部は、前記偏光分離部で反射された前記他方の光の偏光方向を前記一方の光の偏光方向に変換し透過させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光変換素子及び該偏光変換素子を備える表示装置に関し、特に、液晶ディスプレイやプロジェクタなどの、液晶により画像を表示する表示装置に用いられる偏光変換素子及び該偏光変換素子を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶を用いた表示装置において、単一の偏光方向に偏光した光を得るため、偏光板が用いられている。
例えば、ヨウ素や有機系染料などで染色したPVA(ポリビニルアルコール)を一軸延伸したフィルムは、一の偏光のみを透過し、他の偏光を吸収する性質を有し、偏光板(偏光フィルム)として広く用いられている。
しかし、従来の偏光板は、入射光のうちの50%以上が吸収されることとなるため、光の利用効率が低いという問題点があった。
【0003】
そこで、光の偏光方向を一方向に揃え、光源からの光を効率的に利用する方法が検討されている。
例えば、特許文献1に記載の光学表示装置では、異方性積層干渉膜により、片方の偏光を透過させる一方、他方の偏光を反射させる。反射された偏光は、光共振器によって偏光配向がランダム化され、再び、異方性積層干渉膜へ入射し、その一部は透過され、他の一部は反射される。これを繰り返すことにより、最終的には、光源からの光の多く(70%程度)を、偏光方向が揃った状態で透過させることができる。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、所定のプリズム上に高屈折率材料と低屈折率材料とを交互に積層することで、片方の偏光を透過させる一方、他方の偏光を反射するように構成した再帰反射偏光子が提案されている。そして、この再帰反射偏光子と1/4波長板及び反射光源との組み合わせにより、光を効率的に利用する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のような従来の方法では、異方性積層干渉膜や再帰反射偏光子のような偏光分離部材の他に、これらに反射された光の偏光方向を変換し、再度、偏光分離部材へと射出するための偏光変換部材を要する。このような構成部材の増加により、構造が複雑化し、偏光変換素子が大型化するとともに、偏光変換素子の耐久性が低下するおそれがあった。また、製造工程が複雑化し、コストが増大するおそれもある。さらに、偏光変換素子を用いた表示装置の大型化を招くという問題があった。
【0006】
一方、特許文献3には、プリズム状凹凸の一部に、金属蒸着膜を形成し、広い範囲で明るい表示を得ることのできる再帰性反射板が開示されている。
しかしながら、特許文献3に記載の発明は、偏光能のない再帰性反射板に関する発明であって、本発明とは全く異なる技術的思想に基づいており、構成、作用、効果が全く異なるものである。
【0007】
【特許文献1】特表平9−506985号公報
【特許文献2】特開2002−196148号公報
【特許文献3】特開2004−37831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、構造が簡単で耐久性が高く、構成部材の増加による製造工程の複雑化や、コスト増大、表示装置の大型化を招くことなく、光の利用効率を向上できる偏光変換素子及び該偏光変換素子を備える表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 基材と、前記基材に設けられた偏光分離部及び偏光変換部と、を備え、入射する入射光の偏向方向を略一方向に揃えて射出する偏光変換素子であって、前記偏光分離部は、前記入射光を所定の偏光方向を有する一方の光と他の偏光方向を有する他方の光とに分離し、前記一方の光を透過させ、前記他方の光を反射し、前記偏光変換部は、前記偏光分離部で反射された前記他方の光の偏光方向を前記一方の光の偏光方向に変換し透過させることを特徴とする偏光変換素子である。
該<1>に記載の偏光変換素子において、前記偏光分離部は、前記入射光を所定の偏光方向を有する前記一方の光と他の偏光方向を有する前記他方の光とに分離する。そして、前記一方の光は、前記偏光分離部を透過して、偏光変換素子の外部へ射出される。また、前記他方の光は前記偏光分離部に反射されて、前記偏光変換部へと向かう。
前記偏光変換部は、前記他方の光が前記偏光変換部を透過する間に、前記他方の光の偏光方向を前記一方の光の偏光方向に変換する。前記一方の光と同一の偏光方向を有するに至った前記他方の光は、偏光変換素子の外部へ射出される。
ここで、前記入射光の偏向方向を略一方向に揃える前記偏光分離部及び前記偏光変換部は、一の前記基材に集約されている。
<2> 偏光分離部は、偏光変換部を透過した他方の光を反射し、前記偏光分離部を透過する一方の光の透過側に導光する前記<1>に記載の偏光変換素子である。
該<2>に記載の偏光変換素子において、前記偏光分離部は、前記偏光変換部で偏光方向が変換された前記他方の光を反射する。これにより、前記他方の光は、前記一方の光と同一の偏光方向を有した状態において、前記一方の光と同じ側に導光される。
<3> 偏光変換部は、他方の光を屈折させ、偏光分離部を透過する一方の光の透過側に導光する前記<1>から<2>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
該<3>に記載の偏光変換素子において、前記偏光変換部は、前記偏光変換部で偏光方向が変換された前記他方の光を屈折させる。これにより、前記他方の光は、前記一方の光と同一の偏光方向を有した状態において、前記一方の光と同じ側に導光される。
<4> 基材は、入射光が入射する入射部と、前記入射光が射出される射出部と、を有し、前記入射部及び前記射出部のいずれかは、複数の凸部を有する凹凸面であり、偏光分離部は、それぞれの前記凸部の一部に設けられ、偏光変換部は、それぞれの前記凸部の他の一部に設けられている前記<1>から<3>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
該<4>に記載の偏光変換素子において、前記基材は複数の前記凸部を有し、前記偏光分離部及び前記偏光変換部は複数の前記凸部のそれぞれに設けられている。それぞれの前記凸部に入射した前記入射光は、その前記凸部に設けられた前記偏光分離部及び前記偏光変換部により、偏向方向を略一方向に揃えられる。
<5> 凸部は、入射光の進行方向と略平行な平行面と、前記入射光の進行方向と非平行な斜面と、を有し、偏光分離部は、前記斜面に設けられ、偏光変換部は、前記平行面に設けられている前記<4>に記載の偏光変換素子である。
該<5>に記載の偏光変換素子において、前記偏光分離部は前記斜面に、前記偏光変換部は前記平行面に設けられている。ここで、前記平行面は前記入射光の進行方向と平行なので、前記入射光が前記偏光分離部を介することなく、直接に前記偏光変換部に入射しにくい。つまり、前記偏光変換部には、前記偏光分離部で反射された前記他方の光のみが入射することとなる。
<6> 偏光分離部と偏光変換部とは、連続して設けられている前記<1>から<5>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
該<6>に記載の偏光変換素子において、前記偏光分離部と前記偏光変換部とが連続して設けられているので、前記入射光は、両者を介し、偏向方向を略一方向に揃えられて射出される。
<7> 偏光分離部は、高屈折材料と低屈折材料とが交互に複数積層された積層構造である前記<1>から<6>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
該<7>に記載の偏光変換素子において、前記高屈折材料と前記低屈折材料とが交互に複数積層された積層構造の前記偏光分離部は、前記入射光を所定の偏光方向を有する前記一方の光と他の偏光方向を有する前記他方の光とに適切に分離し、前記一方の光を透過させ、前記他方の光を反射できる。
<8> 偏光変換部は、偏光方向を変換する材料の層である前記<1>から<7>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
該<8>に記載の偏光変換素子において、前記偏光方向を変換する材料の層である前記偏光変換部は、前記偏光分離部で反射された前記他方の光の偏光方向を前記一方の光の偏光方向に変換できる。
<9> 偏光変換部は、基材に形成された微細凹凸構造である前記<1>から<7>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
該<9>に記載の偏光変換素子において、前記微細凹凸構造である前記偏光変換部は、前記偏光分離部で反射された前記他方の光の偏光方向を前記一方の光の偏光方向に変換できる。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の偏光変換素子を備えることを特徴とする表示装置である。
該<10>に記載の表示装置は、前記<1>から<9>のいずれかに記載の偏光変換素子を備え、偏光変換素子から得られる偏光方向の揃えられた光を用いて、文字や画像などの情報を表示できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、構造が簡単で耐久性が高く、構成部材の増加による製造工程の複雑化や、コスト増大、表示装置の大型化を招くことなく、光の利用効率を向上できる偏光変換素子及び該偏光変換素子を備える表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の偏光変換素子及び該偏光変換素子を備える表示装置について、詳細に説明する。
【0012】
(偏光変換素子)
図1は、本発明の偏光変換素子の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の偏光変換素子1は、基材2と、基材2に設けられた偏光分離部3及び偏光変換部4と、を備えてなり、さらに必要に応じて、保護層5などのその他の構成を備えてなる。
このような偏光変換素子1の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、偏光板や偏光フィルムなどが挙げられる。
【0013】
<基材>
前記基材2の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長方形状、正方形状、円状などが挙げられる。
基材2は、例えば、図1に示すように、長方形状の外形を有し、入射光が入射する入射部21と、入射光が射出される射出部22と、を有する。ここで、入射部21及び射出部22のいずれかは、図1に示すように、複数の凸部23を有する凹凸面24とされていることが好ましい。
このような凹凸面24により、基材2の表面積を大きくし、後述する偏光分離部3及び偏光変換部4を設けるためのスペースを確保できる。これにより、偏光変換素子1を小さく、薄くすることが可能となる。
【0014】
基材2の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層、多層などが挙げられる。
基材2の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材2の平均厚みとしては、基材2として通常採用される範囲の厚みであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10μm〜10mmが好ましく、50μm〜5mmがより好ましく、100μm〜1mmが特に好ましい。
基材2の平均厚みは、例えば、基材2を測定計で挟んで基材2の厚みを測定する膜厚計、光学的な干渉を利用して基材2の厚みを測定する非接触膜厚計などを使用することにより、測定できる。
【0015】
基材2の材料としては、透明であり、ある程度の強度を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、樹脂、ガラスなどが挙げられる。
柔軟性があり、軽量である点において、基材2が樹脂であることが好ましい。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
また、従来の樹脂製の偏光フィルムと異なり、偏光変換素子1に耐熱性が付加できる点で、基材2がガラスであることも好ましい。
前記ガラスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、BK7などの光学ガラス、コーニング1737などの液晶用ガラスなどが挙げられる。
【0017】
また、基材2のヘイズとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、10%以下が特に好ましい。前記ヘイズが50%を超えると、入射光が基材2を透過しにくくなり、光の利用効率が低下することがある。
ここで、前記「ヘイズ」とは、曇り度合いの値を指し、例えば、JIS 7105に準拠したヘイズメータ(型番:HZ−1、スガ試験機(株)製)などの測定装置により評価される値である。
【0018】
<<凸部>>
前記凸部23の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、図2に示すように、入射光の進行方向と略平行な平行面23Aと、入射光の進行方向と非平行な斜面23Bと、を有することが好ましい。
ただし、凸部23の形状は、これに限定されることなく、例えば、図3に示すような円弧状の表面23Cを有するものであってもよい。また、例えば、図4に示すような、格子状に配設された四角錐形状であってもよい。
【0019】
また、各凸部23の寸法については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、2つの凸部23の間隔であるピッチp(図2参照)は、1μm〜10mmが好ましく、5μm〜5mmがより好ましく、10μm〜1mmが特に好ましい。このピッチpは、凸部23の幅に相当する。また、基材2を基準とした高さHは、10μm〜10mmが好ましく、50μm〜5mmがより好ましく、100μm〜1mmが特に好ましい。また、基材2に対する凸部23の仰角θは、5〜75°が好ましく、10〜60°がより好ましく、20〜45°が更に好ましく、30°が特に好ましい。
なお、ピッチp、高さH、仰角θは、例えば、測定顕微鏡により測定することができる。装置としてはオリンパス社STM6などが挙げられる。
【0020】
<偏光分離部>
前記偏光分離部3としては、入射光を所定の偏光方向を有する一方の光と他の偏光方向を有する他方の光とに分離し、一方の光を透過させ、他方の光を反射できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、高屈折材料(第1の材料)と低屈折材料(第2の材料)とが交互に複数積層された積層構造が、偏光分離能や透過率の点で、好ましい。
【0021】
<<高屈折材料(第1の材料)>>
前記高屈折材料(第1の材料)としては、前記低屈折材料(第2の材料)よりも屈折率の高い材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属酸化物、硫化物などが挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、TiO、ZrO、ZnS、Al、Ta、HfO、ZnO、SnOなどが挙げられる。中でも、TiOが、安定性の点で好ましい。
【0022】
<<低屈折材料(第2の材料)>>
前記低屈折材料(第2の材料)としては、前記高屈折材料(第1の材料)よりも屈折率の低い材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化物、フッ化物、などが挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、SiO、MgF、CaF、NaAlF、NaAlF1、SrFなどが挙げられる。中でも、SiO、MgFが、安定性の点で好ましい。
高屈折率材料(第1の材料)と低屈折材料(第2の材料)との屈折率の差としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1〜1.5が好ましく、0.2〜1がより好ましく、0.3〜0.7が特に好ましい。
高屈折率材料(第1の材料)と低屈折材料(第2の材料)の積層数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜200層が好ましく、10〜100層がより好ましく、15〜60層が特に好ましい。
高屈折率材料(第1の材料)と低屈折材料(第2の材料)の1層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜10μmが好ましく、0.02〜1μmがより好ましく、0.03〜0.5μmが特に好ましい。
本材料の積層は、真空成膜によって行う。通常の光学コーティングと同様に、蒸着やスパッタで行うことが好ましい。それぞれの厚さは、λ/(4n)の奇数倍±λ/(8n)が好ましい。λは、使用する中心波長を示し、nはそれぞれの材料の屈折率を示す。
それぞれの膜の表面粗さは、膜形成面の表面粗さの影響を大きく受ける。膜形成面の表面粗さRaは1μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましく、0.01μm以下が特に好ましい。膜形成面の表面粗さが粗すぎる場合、多層薄膜による偏光分離効果が低下してしまう。
【0023】
このような偏光分離部3は、例えば、図2に示すように、入射光をP波とS波に分離し、P波を所定の偏光方向を有する一方の光として透過させる。一方、S波を他の偏光方向を有する他方の光として反射し、反射された他方の光は、後述する偏光変換部4へと向かう。
【0024】
偏光分離部3は、図1から4に示すように、基材2に複数存在する個々の凸部23の一部に設けられることが好ましい。特に、偏光分離部3は、図2に示すように、凸部23の斜面23Bに設けられることが好ましい。
また、偏光分離部3は、例えば、図2に示すように、偏光変換部4を透過した他方の光を反射し、偏光分離部3を透過する一方の光の透過側に導光することが好ましい。これにより、他方の光を、一方の光と同一の偏光方向を有した状態において、一方の光と同じ側に射出することができ、偏光方向のみならず進行方向も揃った光を得ることができる。
【0025】
なお、図4に示すように、凸部23が4つの面によって構成される場合、すなわち、凸部23が、格子状に配設された四角錐形状であった場合は、各凸部23において、最大3面に偏光分離部3が形成される。
また、いずれの場合においても、各凸部23において共通した面に偏光分離部3が形成されることが好ましく、図1及び2に示すように、2つの面によって凸部23が構成される場合においては、断面視でルーバー状をなすように、偏光分離部3の形成位置が構成されることがより好ましい。
【0026】
<偏光変換部>
前記偏光変換部4は、偏光分離部3で反射された他方の光の偏光方向を、偏光分離部3を透過した一方の光の偏光方向に変換し透過させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、偏光方向を変換する材料の層(偏光変換材料層)や、基材2に形成された微細凹凸構造などが挙げられる。
【0027】
<<偏光変換材料層>>
前記偏光変換材料層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、位相差膜や波長板、構造性複屈折構造膜などが挙げられる。
前記偏光変換材料層は、簡易に形成できるなどの点で、好ましい。
【0028】
<<微細凹凸構造>>
前記微細凹凸構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回折格子、構造性複屈折構造などが挙げられる。
前記微細凹凸構造は、耐久性などの点で、好ましい。
【0029】
このような偏光変換部4は、例えば、図2に示すように、偏光分離部3に反射された他方の光(S波)の偏光方向を、一方の光(P波)の偏光方向に変換し、最終的にP波として他方の光を透過させる。
【0030】
偏光変換部4は、図1から4に示すように、基材2に複数存在する個々の凸部23のうち、偏光分離部3と異なる他の一部に設けられることが好ましい。偏光分離部3を凸部23の一部に設け、偏光変換部4を凸部23の他の一部に設けることにより、凹凸面24の広い表面を有効に活用し、偏光変換素子1を小さく、薄くすることが可能になる。
【0031】
特に、偏光変換部4は、図2に示すように、凸部23の平行面23Aに設けられることが好ましい。
もし、入射光が直接に偏光変換部4に入射した場合、この入射光は複数の偏光方向の光が混在したまま、偏光変換素子1から射出されることとなる。このため、通常は、入射光が直接、偏光変換部4に入射しないように制御することが必要となる。このため、全ての入射光が偏光分離部3に入射するように、スリットなどを用いて、入射光の入射位置が制御される。
これに対し、偏光分離部3を斜面23Bに、偏光変換部4を平行面23Aに設けた場合には、入射光が入射する部分を制御することが不要となる。平行面23Aは入射光の進行方向と平行なので、入射光は直接には偏光変換部4に入射しにくいためである。つまり、偏光変換部4には、偏光分離部3で反射された他方の光のみが入射することとなり、煩雑な入射光の制御をすることなく、効率よく偏向方向の揃った光を得ることができる。
【0032】
また、偏光変換部4は、例えば、図2に示すように、偏光分離部3で反射された他方の光を屈折させ、偏光分離部3を透過する一方の光の透過側に導光することが好ましい。これにより、他方の光を、一方の光と同一の偏光方向を有した状態において、一方の光と同じ側に射出することができ、偏光方向のみならず進行方向も揃った光を得ることができる。
特に、他方の光を大きく屈折させることができる偏光変換部4を用いた場合には、図5に示すように、隣接する偏光分離部3による反射を用いることなく、他方の光を一方の光と同じ側に射出できる。この場合、他方の光を反射させるために偏光分離部3の仰角θを精密に調整する必要がなくなるため好ましい。他方の光を大きく屈折させる偏光変換部4としては、例えば、構造性複屈折膜などが挙げられる。
【0033】
<偏光分離部及び偏光変換部の位置関係>
本発明の偏光変換素子1において、入射光の偏光方向を略一方向に揃える働きをする偏光分離部3及び偏光変換部4は、一の基材2に集約されているので、構造が簡単で耐久性が高く、構成部材の増加による製造工程の複雑化や、コスト増大、表示装置の大型化を招くことなく、光の利用効率を向上できる。
なお、偏光分離部3と偏光変換部4とは、連続して設けられていることが好ましい。
ここで、連続するとは、例えば、図1から5に示すように、偏光分離部3と偏光変換部4とが隣接、密着していることを意味する。なお、例えば、図6に示すように、凸部23上の一部に、偏光分離部3と偏光変換部4とが重複(積層)して設けられている場合もまた、両者は連続して設けられているといえる。
このように、偏光分離部3と偏光変換部4とが連続して設けられている場合、両者の隙間を介して偏光の混在する入射光がそのまま射出されることがなくなり、入射光は両者を介して射出されるので、効率よく入射光の偏光方向をそろえることができる。
【0034】
<その他の構成>
前記その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層5、平坦化膜、反射防止膜などが挙げられる。
【0035】
<<保護層>>
前記保護層5は、例えば、図1に示すように、偏光分離部3及び偏光変換部4が形成された凸部23(凹凸面24)を覆うように形成される。保護膜5は、凸部23(凹凸面24)を覆うことによって形成された面(保護膜5における凸部23側と反対側の面)が平坦面5Aとなっていることが好ましい。この平坦面5Aは、例えば、基材2の一方の面だけに凸部23が形成された場合には、基材2の入射部21に平行となるように形成される。
前記保護層5の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂などが挙げられる。中でも、紫外線硬化樹脂が、生産性や強度の点で好ましい。
前記保護層5の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜1000μmが好ましく、0.1〜500μmがより好ましく、1〜100μmが特に好ましい。保護層5の厚みが、0.01μm未満であると、強度が不十分となることがあり、1000μmを超えると、反りが発生することがある。
【0036】
(偏光変換素子の製造方法)
<凸部の形成>
偏光変換素子1を製造するにあたり、基材2上に凸部23を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0037】
基材2及び凸部23を樹脂で形成する場合には、例えば、(1)ダイより押し出したシート状の樹脂材料を、この樹脂材料の押し出し速度と略同速度で回転する転写ローラ(凸部23の反転型が表面に形成されている)と、この転写ローラに対向配置され、同速度で回転するニップローラ板とで挟圧し、転写ローラ表面の凹凸形状(凸部23の型形状)を樹脂材料に転写する形成方法が採用できる。
また、(2)ホットプレスにより、凸部23の反転型が表面に形成されている転写型板(スタンパー)と樹脂板とを積層し、熱転写によりプレス成形して、凸部23が形成された基材2を製造する方法が採用できる。
【0038】
さらに、他の製造方法として、(3)透明なフィルム(例えば、ポリエステル、セルロースアシレート、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィンなど)の表面に、凹凸ローラ(凸部23の反転型が表面に形成されている)表面の凹凸を転写形成する基材2の製造方法が採用できる。
より具体的には、表面に接着剤と樹脂とが順次塗布されることにより、接着剤層と樹脂層(例えばUV硬化性樹脂)とが2層以上に形成されている透明なフィルムを連続走行させ、この透明なフィルムを回転する凹凸ローラに巻き掛け、樹脂層に凹凸ローラ表面の凹凸を転写し、透明なフィルムが凹凸ローラに巻き掛けられている状態で樹脂層を硬化させる(例えばUV照射する)凹凸状シートの製造方法が採用できる。なお、接着剤はなくてもよい。
【0039】
さらに、他の製造方法として、(4)基材2上に凸部23が形成された形状の金型を用意し、この金型内に前述の成分の樹脂を流し込み、成形する製造方法が挙げられる。この場合は、基材2上に凸部23をエンボスローラなどで形成するのではなく、基材2と凸部23とを一体に成形する製造方法となる。
【0040】
図8は、凸部23を備えた基材2を製造する装置の一例を示す図である。図8に示すように、この装置80は、塗布手段82と、乾燥手段89と、エンボスローラ83と、樹脂硬化手段85とを備えている。
【0041】
基材2としては、例えば、幅500mm、厚み100μmの透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)のフィルムを使用する。
エンボスローラ83としては、長さ(基材2の幅方向)が700mm、直径が300mmのS45C製で表面の材料をニッケルとしたローラを使用する。
エンボスローラ83表面の略500mm幅の全周に、ダイヤモンドバイト(シングルポイント)を使用した切削加工により、エンボスローラ83の軸方向のピッチが50μmの溝が形成される。
溝の断面形状は、頂角が60°の三角形状で、溝の底部も平坦部分のない90°の三角形状である。即ち、溝幅は50μmであり、溝深さは約25μmである。
この溝は、エンボスローラ83の周方向に継ぎ目がないエンドレスとなるので、このエンボスローラ83により、基材2に断面が三角形の凸部23が形成できる。エンボスローラ83の表面には、溝加工後にニッケルメッキを施す。
塗布手段82として、エクストルージョンタイプの塗布ヘッド82Cを用いたダイコータを使用している。
塗布液(樹脂液)として、基材2の組成の樹脂液を使用した。塗布液(樹脂液)の湿潤状態の厚みは有機溶剤乾燥後の膜厚が20μmになるように、原料槽82Aから塗布ヘッド82Cへの各塗布液(樹脂液)の供給量を、供給装置82Bにより制御する。
乾燥手段89として熱風循環式の乾燥装置を用いた。熱風の温度は100℃とする。
ニップローラ84として、直径が200mmで、表面にゴム硬度が90度のシリコーンゴムの層を形成したローラを使用した。エンボスローラ83と、ニップローラ84とで基材2を押圧するニップ圧(実効のニップ圧)は、0.5Paとする。
樹脂硬化手段85としては、メタルハライドランプを使用し、1,000mJ/cmのエネルギーで照射を行う。
以上により、凸部23が形成された基材2を作製することができる。
【0042】
<偏光分離部の形成>
偏光分離部3の形成方法としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、真空蒸着装置による真空蒸着や、イオンプレーティング、スパッタリングなどが挙げられ、この中でも、真空蒸着やイオンプレーティングが、成膜対象となる凸部23の一部のみに成膜しやすいために好ましい。
また、蒸着物質の密着性を良くするための前処理として、プラズマ処理や、プライマ処理を成膜したい面に対して行うことが好ましい。
【0043】
[真空蒸着装置]
偏光分離部3は、例えば、図9に示すような、通常の真空蒸着装置90を用いて形成される。
この真空蒸着装置90は、被蒸着材料である基材2を保持する試料台91と、蒸着材料95を加熱し、基材2に対して蒸着させるための坩堝92と、これらが封入された系を真空にする排気系(図示省略)とを有する。排気系は、例えば、油拡散ポンプ、ロータリーポンプ、及びターボ分子ポンプのいずれか、又は二以上を複合させたものが設置される。これらの中でも、排気手順が簡易な点で、ターボ分子ポンプを採用することが好ましい。また、偏光分離部3の膜厚(層厚)を制御するために、シャッターや膜厚モニターが設置されることが好ましい。
ここで、図10に示すように、成膜したい部分(例えば、図2における凸部23の斜面23B)に選択的に成膜するために、蒸着源95と、成膜したい面とが対向するように基材2を設置する。例えば、成膜したい部分が影になってしまう場合には、影にならないような角度に基材2を設置する。
【0044】
<偏光変換部の形成>
偏光変換材料層を偏光変換部4とする場合には、上述の偏光分離部3と同様の方法にて、偏光変換部4を形成することができる。
一方、基材2の微細凹凸形状を偏光変換部4とする場合には、例えば、以下の方法により、偏光変換部4を形成することができる。
すなわち、回折格子が表面に凹凸形状として形成された金型に、紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、紫外線硬化することにより凹凸形状を転写して形成する方法が挙げられる。
【0045】
<保護層の形成>
保護層5の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、2液硬化樹脂、溶媒によるコーティングで成膜することが好ましく、これらの中でも、紫外線硬化樹脂によって成膜することが好ましい。
硬化前の粘度は、10cpsから2,000cpsが好ましい。粘度が2,000cpsより高いと、保護層5の平坦性が安定せず、粘度が10cpsより低いと、必要な保護層5の厚みが得られない。
保護層5と基材2との屈折率差は、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下が更に好ましく、ほぼ同じ屈折率であることが特に好ましい。屈折率差が0.2よりも大きいと、その界面で乱反射が生じるおそれがある。
【0046】
以上のようにして、基材2の少なくとも一方の面に、複数の凸部23が形成され、凸部23の、斜面23Bに偏光分離層3が、平行面23Aに偏光変換部4が形成され、凸部23を覆うように保護膜5が形成された偏光変換素子1が完成する。
【0047】
(表示装置)
本発明の表示装置は、前記偏光変換素子を備えるものであれば特に制限はないが、例えば、液晶ディスプレイやプロジェクタなどの、液晶により画像を表示する表示装置などが挙げられる。
【0048】
本発明の表示装置の概略構成の一例を図7に示す。
表示装置100は、バックライト101、偏光変換素子1、偏光板102、液晶パネル103、偏光板104を、この順に備えた液晶ディスプレイである。
このような表示装置100において、バックライト101から放出された光は、入射光として偏光変換素子1に入射する。入射光は、偏光変換素子1によって、偏光方向が揃えられ、偏光板102に入射する。
このとき、偏光板102は、偏光変換素子1から射出された入射光を透過するように、入射光の偏光方向に合わせて配置されている。このため、バックライト101からの光の多くが、液晶パネル103まで到達することとなる。
液晶パネル103は、画素ごとに入射光の偏光方向を制御し、所望の画素からの入射光のみが、偏光板104を透過して、表示装置100の外部に射出されることとなる。
従来の表示装置では、バックライトからの光の50%が偏光板で吸収されていたところ、本発明によれば、偏光変換素子1によって、偏光板102への入射光の吸収を大幅に削減し、バックライト101からの光の利用効率を飛躍的に向上できる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
(実施例)
<偏光変換素子の作製>
下記の材料を用い、図2に示すものと略同一の断面構成を有する偏光変換素子を作製した。
基板:表面にピッチ0.9mm、頂角40度の凹凸アクリルシート(日本特殊光学樹脂LP40)。厚さは2mm。
偏光変換部:位相差板(エドモンドオプティクス53334−J)を、光学接着剤(エドモンドオプティクス社製、NOA)で貼り付けた。
偏光分離部:次の表1の真空成膜(No.1から順に20層積層)を実施。図10の方法により、電子ビーム蒸着法により形成した。蒸着面の表面粗さは0.005μmだった。
なお、下層とは、基板側の層の意味である。
【0051】
【表1】

【0052】
(評価)
<偏光変換効率の評価>
光量計(マルチチャンネル分光器、オーシャンオプティクス社製)で測定。波長530nmでの透過率で評価した。
本偏光板(偏光変換素子)の透過率は、60%であった。
従来型の偏光板(偏光変換素子)では、原理的に50%以下の透過率となる。原理的な不透過光を50%とすると、そのうちの少なくとも20%を活用できたことになる。
【0053】
(比較例:エドモンドオプティクス社38493−J)
エドモンドオプティクス社38493−Jは、色素を含有させたポリマーを配向させ、これをフィルムではさんだ構造となっている。
この方式の偏光板(偏光変換素子)は、透過する偏光に直交する成分の光は吸収してしまうため、50%以上の光を吸収することになる。
透過率を測定したところ、40%であった。これは、原理的な不透過光を50%、それ以外の損失10%と考えることができる。原理的な不透過光50%のうちの活用率は0%と考えられる。
【0054】
(シミュレーション結果)
(計算例1)
基板屈折率を1.5、厚さ0.7mm、偏光変換部を微細な凹凸構造による構造複屈折位相差板とし、偏光分離部を実施例1と同様とした偏光板(偏光変換素子)について、光線追跡シミュレーションソフト「ZEMAX」(ZEMAX Development Corporation製)を用いてシミュレーションを行った。シミュレーション結果としては、本偏光板(偏光変換素子)の透過率が60%であり、実施例1の結果と同等であった。
なお、微細な凹凸構造は、KONIKA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT VOL.3(2006)にあるようなもので、ピッチ300nm、高さ1,500nmとした。
【0055】
(計算例2)
基板屈折率を1.5、厚さ0.7mm、偏光変換部を理想的位相差板とし、偏光分離部を、基板側からTiO層(厚み49.5nm)及びSiO層(厚み81.2nm)の繰り返し10組を積層したもの(合計20層)とした偏光板(偏光変換素子)について、光線追跡シミュレーションソフト「ZEMAX」(ZEMAX Development Corporation製)を用いてシミュレーションを行った。シミュレーション結果としては、本偏光板(偏光変換素子)の透過率が64%であった。
なお、理想的位相差板とは、偏光方向を理想的に変化させられる特性を持つ位相差板とした。
【0056】
(計算例3)
基板を屈折率を1.5、厚さ0.7mm、偏光変換部を理想的位相差板とし、偏光分離部を、基板側からTiO層(厚み49.5nm)及びSiO層(厚み81.2nm)の繰り返し30組を積層したもの(合計60層)とした偏光板(偏光変換素子)について、光線追跡シミュレーションソフト「ZEMAX」(ZEMAX Development Corporation製)を用いてシミュレーションを行った。シミュレーション結果としては、本偏光板(偏光変換素子)の透過率が65%であった。
【0057】
(計算例4)
基板を屈折率を1.5、厚さ0.7mm、偏光変換部を理想的位相差板とし、偏光分離部を、基板側からTiO層(厚み49.5nm)及びSiO層(厚み81.2nm)の繰り返し100組を積層したもの(合計200層)とした偏光板(偏光変換素子)について、光線追跡シミュレーションソフト「ZEMAX」(ZEMAX Development Corporation製)を用いてシミュレーションを行った。シミュレーション結果としては、本偏光板(偏光変換素子)の透過率が58%であった。
【0058】
(計算例5)
基板を屈折率を1.5、厚さ0.7mm、偏光変換部を理想的位相差板とし、偏光分離部を、基板側からTiO層(厚み49.5nm)及びSiO層(厚み81.2nm)の繰り返し150組を積層したもの(合計300層)とした偏光板(偏光変換素子)について、光線追跡シミュレーションソフト「ZEMAX」(ZEMAX Development Corporation製)を用いてシミュレーションを行った。シミュレーション結果としては、本偏光板(偏光変換素子)の透過率が51%であった。
【0059】
本発明所定の構成を備えた実施例の偏光変換素子は、所定の構成を欠く比較例の偏光変換素子に比べ、きわめて優れた偏光変換効率を有することがわかる。
具体的には、比較例の偏光変換素子では、60%以上の光が偏光変換素子を透過できずに失われるのに対し、実施例の偏光変換素子では、光の損失は50%以下であり、比較例の約5/6に抑えられている。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の偏光変換素子及び該偏光変換素子を備える表示装置は、構造が簡単で耐久性が高く、構成部材の増加による製造工程の複雑化や、コスト増大、表示装置の大型化を招くことなく、光の利用効率を向上することができる偏光変換素子及び該偏光変換素子を備える表示装置として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の偏光変換素子を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の偏光変換素子の凸部を拡大した正面図である。
【図3】図3は、本発明の偏光変換素子の他の実施形態における凸部を拡大した正面図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態における偏光変換素子を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明の偏光変換素子の他の実施形態における凸部を拡大した正面図である。
【図6】図6は、本発明の偏光変換素子の他の実施形態における凸部を拡大した正面図である。
【図7】図7は、本発明の表示装置の概略構成を示す図である。
【図8】図8は、凸部を備えた基材の製造に用いられる製造装置の構成を示す図である。
【図9】図9は、偏光分離部を形成する際に用いられる蒸着装置の構成を示す断面図である。
【図10】図10は、偏光分離部を形成する際の、蒸着源に対する支持体の設置態様を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 偏光変換素子
2 基材
3 偏光分離部
4 偏光変換部
5 保護層
5A 平坦面
21 入射部
22 射出部
23 凸部
23A 平行面
23B 斜面
24 凹凸面
80 製造装置
82 塗布手段
82A 原料槽
82B 供給装置
82C 塗布ヘッド
83 エンボスローラ
84 ニップローラ
85 樹脂硬化手段
89 乾燥手段
90 真空蒸着装置
91 試料台
92 坩堝
95 蒸着材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に設けられた偏光分離部及び偏光変換部と、を備え、入射する入射光の偏向方向を略一方向に揃えて射出する偏光変換素子であって、
前記偏光分離部は、前記入射光を所定の偏光方向を有する一方の光と他の偏光方向を有する他方の光とに分離し、前記一方の光を透過させ、前記他方の光を反射し、
前記偏光変換部は、前記偏光分離部で反射された前記他方の光の偏光方向を前記一方の光の偏光方向に変換し透過させる
ことを特徴とする偏光変換素子。
【請求項2】
偏光分離部は、偏光変換部を透過した他方の光を反射し、前記偏光分離部を透過する一方の光の透過側に導光する
請求項1に記載の偏光変換素子。
【請求項3】
偏光変換部は、他方の光を屈折させ、偏光分離部を透過する一方の光の透過側に導光する
請求項1から2のいずれかに記載の偏光変換素子。
【請求項4】
基材は、入射光が入射する入射部と、前記入射光が射出される射出部と、を有し、
前記入射部及び前記射出部のいずれかは、複数の凸部を有する凹凸面であり、
偏光分離部は、それぞれの前記凸部の一部に設けられ、
偏光変換部は、それぞれの前記凸部の他の一部に設けられている
請求項1から3のいずれかに記載の偏光変換素子。
【請求項5】
凸部は、入射光の進行方向と略平行な平行面と、前記入射光の進行方向と非平行な斜面と、を有し、
偏光分離部は、前記斜面に設けられ、
偏光変換部は、前記平行面に設けられている
請求項4に記載の偏光変換素子。
【請求項6】
偏光分離部と偏光変換部とは、連続して設けられている
請求項1から5のいずれかに記載の偏光変換素子。
【請求項7】
偏光分離部は、高屈折材料と低屈折材料とが交互に複数積層された積層構造である
請求項1から6のいずれかに記載の偏光変換素子。
【請求項8】
偏光変換部は、偏光方向を変換する材料の層である
請求項1から7のいずれかに記載の偏光変換素子。
【請求項9】
偏光変換部は、基材に形成された微細凹凸構造である
請求項1から7のいずれかに記載の偏光変換素子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の偏光変換素子を備える
ことを特徴とする表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−122382(P2010−122382A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294689(P2008−294689)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】