説明

偏光性積層体及びその製造方法

【課題】簡単な構造を有するともに、耐衝撃性及び成形加工性が高く、偏光層と保護シートとの密着性(又は保護シートと熱成形性樹脂層との密着性)が高く、レンズ基材などとして有用な偏光性積層体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】イソシアネート基又はウレタン基を有する接着剤(二液硬化型ウレタン系接着剤など)を用い、偏光層の両面にポリアミド樹脂(少なくともアミノ基を有する透明ポリアミド樹脂など)で構成された保護層を積層し、偏光性シート層で構成された偏光性積層体を製造する。また、偏光層の両面に保護層を積層し、さらに、少なくとも一方の前記保護層にポリアミド樹脂(少なくともアミノ基を有する透明ポリアミド樹脂など)で構成された熱成形性樹脂層を形成して偏光性積層体を製造する。偏光性シート層をインサート成形に供し、少なくとも一方の保護層に射出成形により熱成形性樹脂層を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性及び一体性が高く、サングラス、ゴーグルなどのレンズ基材(又は光学用基材)などとして有用な偏光性積層体とその製造方法、および前記積層体で構成された機能性光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
直射光や反射光の防眩や、風雨、塵芥、薬品などからの眼の保護のため、サンバイザー、サングラス(度付きサングラスを含む)、ゴーグルなどが利用されている。また、ファッション性、軽量性などの点から、フレームのないサングラスも利用されている。
【0003】
特許第3373492号公報(特許文献1)には、ポリビニルアルコール系偏光フィルムの少なくとも片面に、一液型シリコーン系湿気硬化型接着剤により、保護フィルムが積層された偏光板が開示されている。この文献には、保護フィルムとして、アシルセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などが記載されている。特開平7−120617号公報(特許文献2)には、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と分子中にイソシアネート基と反応する活性水素を有する化合物とを反応させたウレタンプレポリマーを接着剤として用い、含水率8重量%以上の偏光フィルムと酢酸セルロース系保護フィルムを接着した偏光板が開示されている。
【0004】
しかし、これらの偏光板では、偏光フィルムが水分を含むため、偏光フィルムと保護シートとの密着性が低下する場合がある。また、フレームのないサングラスなどを調製するため、これらの偏光板に孔を開けると、孔の周辺部に割れやクラックが生じるだけでなく、光学歪みが生じる。そのため、前記偏光板には、高い成形加工性を付与できない。
【0005】
特開平8−101307号公報(特許文献3)には、ポリビニルアルコール系重合体からなる偏光膜と支持体とが、ポリエステルポリオールと脂肪族ポリイソシアネートとからなる接着剤層を介して積層された偏光板が開示されている。この文献には、支持体として、セルロースエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系などのフィルムも記載されている。また、偏光板の積層構造として、偏光膜/接着層/支持体、偏光膜/接着層/偏光層/接着層/支持体が例示されている。
【0006】
しかし、この偏光板の表面に偏光膜が位置するため、偏光膜が損傷する可能性がある。また、フレームのないサングラスやレンズを調製するため、偏光板に孔を開けると、孔の周辺部に割れやクラックが生じるとともに光学歪みが生じる場合がある。そのため、前記偏光板には、高い成形加工性を確実に付与できない。
【0007】
特開2002−189199号公報(特許文献4)には、2枚の保護シート層の間に偏光子シート層を挟持した偏光板を含む積層構造の偏光性成形体であって、保護シート層1層とポリウレタンシート層又はポリアミドシート層の樹脂シート層とが接着剤又は粘着剤で接合され、さらに樹脂シート層と熱成形樹脂層とが熱接着されている偏光性成形体が開示されている。この文献には、ポリアミドシート層が透明ポリアミドシートであること、熱成形樹脂層の樹脂が、ポリアミド(透明ポリアミドなど)、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネートであることも記載されている。
【0008】
しかし、この偏光性成形体は、複雑な積層構造を有し、経済的に不利であるだけでなく、偏光性シートと保護シートとの密着性、保護シートと樹脂シート層との密着性を向上させることが困難である。そのため、フレームのないプラスチック眼鏡などを調製するため、偏光性成形体を孔あけ加工などに供すると、クラックが生じたり光学歪みが生じやすい。
【0009】
なお、ポリカーボネート樹脂は高分散性(低アッベ数)であるため光の色分散が起こり、光がにじみ、斜めから見ると虹色の色むらが生じやすい。このようなポリカーボネート樹脂の使用により生じる色むらの生成を抑制するため、特許第2838514号公報(特許文献5)には、偏光膜の片面または両面に、偏光膜用保護フィルムとして、3000〜6000nmのリタデーション値を有するポリカーボネート樹脂シートを積層した偏光板が開示されている。この文献には、リタデーション値を大きくすることにより、レンズ形状に曲げ加工を施す際に発生する虹色の色むらが生じ難いと記載されている。しかし、このような保護シートでは、ポリカーボネート樹脂で構成されているため、依然として密着性が悪く、クラックが生じたり光学歪みが生じやすい。また、眼鏡等のフレームは酢酸セルロースなどの可塑剤を含むプラスチックで形成される場合が多く、このような可塑剤は、ブリードアウトして偏光板に移行し、ポリカーボネート樹脂で構成される偏光膜用保護フィルムにクラックを生じさせる虞がある。
【特許文献1】特許第3373492号公報(特許請求の範囲、段落番号[0016])
【特許文献2】特開平7−120617号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平8−101307号公報(特許請求の範囲、段落番号[0007][0010])
【特許文献4】特開2002−189199号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特許第2838514号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、簡便な構造であっても、優れた特性(耐衝撃性、耐溶剤性、軽量性など)を効率よく付与できる偏光性積層体及びその製造方法及び前記積層体で構成された機能性光学部品を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、簡単な構造を有するともに、耐衝撃性が高く、偏光層と保護シートとの密着性が高い偏光性積層体及びその製造方法及び前記積層体で構成された機能性光学部品を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、成形加工性を向上でき、レンズ基材として有用な偏光性積層体及びその製造方法及び前記積層体で構成された機能性光学部品を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、曲げ加工(曲面形状加工など、特に熱成形による曲げ加工)に供しても、色むらの発生がないだけでなく、白抜けを防止(又は抑制)でき、かつ成形加工性に優れた偏光性積層体及びその製造方法及び前記積層体で構成された機能性光学部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、(i)偏光層の両面に接着剤で積層された保護層を備えた積層体において、イソシアネート基又はウレタン基を有する接着剤と、ポリアミド樹脂で構成された保護層とを組み合わせるか、又は(ii)偏光層の両面に積層された保護層(特に、ポリアミド樹脂で構成された保護層)の少なくとも一方の面にポリアミド樹脂で構成された熱成形性樹脂層を形成すると、簡便な構造で、耐衝撃性、耐溶剤性などに優れ、各層間の密着性が高く、成形加工性にも優れる積層体が得られること、保護層のリタデーション値を著しく大きな値にすると、例えば、保護層(ポリアミド樹脂で構成された保護層)を曲げ加工に供しても、白抜けの生成および色むらの発生を防止(又は抑制)でき、成形加工性に優れた積層体が得られること、このような偏光層と保護層とで構成された偏光性シート層をインサート成形に供し、射出成形などにより一方の保護層に熱成形性樹脂層(特に、ポリアミド樹脂で構成された熱成形性樹脂層)を形成すると、前記保護層と樹脂層とが強固に熱接着することを見いだし、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の偏光性積層体(以下、偏光性積層体Aということがある)は、接着剤を介して偏光層の両面に保護層が積層された偏光性シート層で構成された偏光性積層体であって、前記接着剤が、イソシアネート基又はウレタン基を有する接着剤で構成され、前記保護層がポリアミド樹脂で構成されている。
【0016】
また、本発明の偏光性積層体(以下、偏光性積層体Bということがある)は、偏光層の両面に保護層が積層された偏光性シート層と、少なくとも一方の前記保護層に熱接着(又は熱融着)した熱成形性樹脂層とで構成されている偏光性積層体であって、前記熱成形性樹脂層がポリアミド樹脂で構成されている。すなわち、このような偏光性積層体(偏光性積層体B)では、通常、前記偏光性シート層の少なくとも一方の保護層(特に、ポリアミド樹脂で構成された保護層)に、接着剤(又は接着剤層)などを介在させることなく、直接的にポリアミド樹脂で構成された熱成形性樹脂層が熱接着又は熱融着している。なお、前記偏光性積層体(B)において、保護層は、接着剤(前記イソシアネート基又はウレタン基を有する接着剤など)を介して偏光層の両面に保護層が積層されていてもよい。
【0017】
前記積層体(積層体(A)又は積層体(B))において、前記保護層は、少なくともアミノ基を有するポリアミド(特に、透明ポリアミド樹脂)で構成してもよい。また、前記保護層は、アッベ数40〜60のポリアミド樹脂で構成されていてもよい。さらに、保護層は、300nm以上のリタデーション値を有していてもよい。本発明の偏光性積層体において、代表的な前記保護層は、ビス(アミノC5−10シクロアルキル)C1−6アルカン類とC4−18アルカンジカルボン酸類とを構成成分とするアッベ数40〜60の脂環族ポリアミド樹脂で構成され、かつ300nm以上のリタデーション値を有していてもよい。
【0018】
また、接着剤は、二液硬化型ウレタン系接着剤、例えば、遊離のイソシアネート基を有する化合物(オリゴマーを含む)とポリオールとを含む接着剤で構成してもよい。さらに、少なくとも一方の保護層には、熱接着した熱成形性樹脂層を形成してもよい。このような熱成形性樹脂層は、ポリアミド樹脂(特に、前記保護層と同様のポリアミド樹脂)で構成されていてもよい。熱成形性樹脂層および保護層をポリアミド樹脂で構成すると、機械的特性(耐衝撃性など)や耐薬品性に優れるだけでなく、射出成形(インサート射出成形など)などにより成形しても、熱成形性樹脂と保護層との剥離などを生じることなく、簡便にかつ効率よく成形でき、成形性又は成形加工性をより一層向上できる。
【0019】
本発明の方法では、イソシアネート基又はウレタン基を有する接着剤を用い、偏光層の両面にポリアミド樹脂で構成された保護層を積層し、偏光性シート層で構成された前記偏光性積層体(又は偏光性積層体A)を製造する。この方法において、300nm以上のリタデーション値を有する保護層を用い、この保護層を積層した後、曲げ加工(熱成形により曲げ加工)してもよい。このような高いリタデーション値を有する保護層を用いると、ポリアミド樹脂で保護層を構成しても、白抜け又は白抜け現象[詳細には、曲面形状加工又は曲げ加工を行った後、もう一枚の偏光性積層体(偏光板)を重ねて透過光で観察したとき、クロスニコル状に白く抜けて見える白抜け現象]の生成を効率よく防止又は抑制できる。また、前記製造方法において、偏光性シート層をインサート成形に供し、少なくとも一方の保護層に射出成形により熱成形性樹脂層を形成してもよい。
【0020】
このような積層体では、特定の接着剤とポリアミド樹脂で構成された保護層とを組み合わせているため、簡単な構造で高い密着性が得られる。そのため、孔あけ加工などに供しても、積層体に割れやクラックなどが生成することがなく、光学的歪みが生じることもない。
【0021】
また、本発明の方法では、偏光層の両面に保護層が積層された偏光性シート層の少なくとも一方の保護層に射出成形によりポリアミド樹脂で構成された熱成形性樹脂層を形成し、前記偏光性積層体(偏光性積層体B)を製造する。この方法では、特に、前記偏光性シート層をインサート成形に供し、少なくとも一方の保護層に射出成形によりポリアミド樹脂で構成された熱成形性樹脂層を形成してもよい。
【0022】
本発明には、前記偏光性積層体(例えば、前記偏光性積層体A)で構成されたレンズを除く(又はレンズ以外の)機能性光学部品も含まれる。また、前記偏光性積層体(例えば、前記偏光性積層体B)で構成されたレンズ(又はレンズで構成された機能性光学部品)も含まれる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、特定の接着剤を用いてポリアミド樹脂で構成された保護層を接着するか、又は保護層にポリアミド樹脂で構成された熱成形性樹脂層を形成するため、簡便な構造であっても、優れた特性(耐衝撃性、耐溶剤性、軽量性など)を効率よく偏光性積層体に付与できる。すなわち、特定の接着剤とポリアミド樹脂との組み合わせにより、偏光層と保護層との密着性を高めることができるため、耐衝撃性が高く、また保護層がポリアミド樹脂で構成されているため、ポリカーボネート樹脂で構成された偏光性積層体などに比べて、耐溶剤性や軽量性に優れた偏光性積層体を簡便な構造で得ることができる。一方、保護層に、ポリアミド樹脂で構成された熱成形性樹脂層を、接着剤層などを介することなく直接的に形成することにより、保護層に対する高い密着性で、積層体の表面層を構成する熱成形樹脂層を形成できるため、構造を複雑化することなく、前記のような特性(耐衝撃性、耐溶剤性、軽量性など)を向上できる。
【0024】
また、本発明では、特定の接着剤を用いてポリアミド樹脂で構成された保護層を接着するか、又は保護層にポリアミド樹脂で構成された熱成形性樹脂層を形成すればよいため、簡単な構造を有し、軽量であるとともに、耐衝撃性及び一体性が高く、偏光層と保護層との密着性を大きく改善できる。また、偏光性積層体に孔あけなどの加工を施してもクラックや割れを生じることなく、光学的歪みが生成するのを有効に防止できる。そのため、成形加工性を向上でき、レンズ基材などとして有用である。さらに、本発明の偏光性積層体は、前記保護層において、ポリアミド樹脂と特定のリタデーション値とを組みあわせることにより、曲げ加工(曲面形状加工など、特に熱成形による曲げ加工)に供しても、色むらの発生がないだけでなく、白抜けを防止(又は抑制)でき、かつ成形加工性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の偏光性積層体(偏光性積層体A)は、少なくとも偏光性シート層(又は偏光性シート又は偏光板)で構成されており、この偏光性シート層は、接着剤(又は接着剤で構成された接着剤層)を介して偏光層(又は偏光膜)の両面に保護層が積層された構造を有する。また、偏光性シート層の少なくとも一方の保護層には、熱成形性樹脂層を熱接着することにより、偏光性積層体を得てもよい。
【0026】
また、本発明の偏光性積層体(偏光性積層体B)は、本発明の偏光性積層体は、偏光性シート層と、少なくとも一方の前記保護層に熱接着した熱成形性樹脂層とで構成されている。
【0027】
(偏光層)
前記偏光層は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで構成されており、この偏光フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムと、二色性物質(ヨウ素や二色性染料など)とで構成されている。ポリビニルアルコール系樹脂は、酢酸ビニルの重合体、酢酸ビニルと少量の共重合性単量体(不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、カチオン性モノマーなど)との共重合体のケン化物、このケン化物からの誘導体(ホルマール、アセタールなど)であってもよい。具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂として、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどが例示できる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、例えば、1000〜10000、好ましくは3000〜5000程度であってもよい。また、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、85モル%以上、好ましくは90モル%以上(例えば、90〜100モル%)、さらに好ましくは95モル%以上(例えば、98〜100モル%)程度である。
【0028】
偏光層又は偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、膨潤処理、二色性物質による染色処理、架橋処理、延伸処理(倍率3〜7倍程度の一軸延伸処理)などを施すことにより得ることができる。偏光層の厚みは、例えば、5〜100μm(例えば、10〜80μm)程度であってもよい。偏光層又は偏光フィルムの表面は、密着性を向上させるため、種々の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、アンカーコート処理など)を施してもよい。
【0029】
(保護層)
前記偏光層の両面には、ポリアミド樹脂で構成された保護層(又は保護フィルム又は偏光膜用保護フィルム)が形成されていてもよい。なお、前記のように、前記偏光性積層体(偏光性積層体A)においては、前記保護層が、ポリアミド樹脂で構成されている。前記ポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミド樹脂(脂肪族ポリアミド)、脂環族ポリアミド樹脂(脂環族ポリアミド)、芳香族ポリアミド樹脂(芳香族ポリアミド)などが挙げられる。前記ポリアミド樹脂は、ホモポリアミド又はコポリアミドであってもよい。
【0030】
脂肪族ポリアミドとしては、ホモポリアミド、例えば、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカンジアミンなどのC4−14アルキレンジアミンなど)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC6−14アルカンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010など)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウルラクタムなどの炭素数4〜16の程度のラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ε−アミノウンデカン酸などの炭素数4〜16程度のアミノカルボン酸など)のホモポリアミド(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12など)など;コポリアミド、例えば、前記脂肪族ジアミン成分、脂肪族ジカルボン酸成分、ラクタム及びアミノカルボン酸などのポリアミドを構成し得るモノマー成分が共重合したコポリアミド(例えば、6−アミノカプロン酸と12−アミノドデカン酸との共重合体;6−アミノカプロン酸、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸の共重合体;ポリアミド6/11、ポリアミド6/12、ポリアミド66/11、ポリアミド66/12など)などが例示できる。
【0031】
脂環族ポリアミドとしては、脂環族ジアミン及び脂環族ジカルボン酸から選択された少なくとも一種を構成成分とするホモ又はコポリアミドなどが挙げられる。脂環族ジアミンとしては、ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノC5−10シクロアルカン類;ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4’−アミノシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノC5−10シクロアルキル)C1−6アルカン類などが挙げられる。脂環族ジアミンは、アルキル基(メチル基、エチル基などのC1−6アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基、さらに好ましくはC1−2アルキル基)などの置換基を有していてもよい。また、脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などのC5−10シクロアルカンジカルボン酸類などが挙げられる。
【0032】
脂環族ポリアミドは、前記ジアミン成分及びジカルボン酸成分として、脂環族ジアミン及び/又は脂環族ジカルボン酸と共に、脂肪族ジアミン(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカンジアミンなどのC4−14アルキレンジアミンなど)及び/又は脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4−18アルカンジカルボン酸など)を構成成分とする樹脂であってもよい。
【0033】
好ましい脂環族ポリアミドとしては、例えば、脂環族ジアミン類[例えば、ビス(アミノC5−10シクロアルキル)C1−6アルカン類、好ましくはビス(アミノC6−8シクロアルキル)C1−6アルカン類、さらに好ましくはビス(アミノシクロヘキシル)C1−3アルカン類]と脂肪族ジカルボン酸類(例えば、C4−18アルカンジカルボン酸類、好ましくはC6−16アルカンジカルボン酸類、さらに好ましくはC8−14アルカンジカルボン酸類)とを構成成分とする樹脂(ホモ又はコポリアミド)などが例示できる。代表的な脂環族ポリアミド樹脂(脂環族ジアミン類と脂肪族ジカルボン酸類とを構成成分とする脂環族ポリアミド樹脂)には、下記式(1)で表される脂環族ポリアミドなどが含まれる。
【0034】
【化1】

【0035】
(式中、Xは、直接結合、アルキレン基又はアルケニレン基を示し、R及びRは、同一又は異なったアルキル基を示し、m及びnは0又は1〜4の整数、pおよびqは1以上の整数を示す)
前記式(1)において、基Xで表されるアルキレン基(又はアルキリデン基)としては、メチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロパン−1,3−ジイル、2−プロピリデン、ブチレンなどのC1−6アルキレン基(又はアルキリデン基)、好ましくはC1−4アルキレン基(又はアルキリデン基)、さらに好ましくはC1−3アルキレン基(又はアルキリデン基)が挙げられる。また、基Xで表されるアルケニレン基としては、ビニレン、プロぺニレンなどのC2−6アルケニレン基、好ましくはC2−4アルケニレン基などが挙げられる。
【0036】
置換基R及びRにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基などのC1−6アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基、さらに好ましくはC1−2アルキル基(メチル、エチルなど)が挙げられる。
【0037】
これらの置換基R及びRの数mおよびnは、それぞれ、0又は1〜4の整数から選択できるが、通常、0又は1〜3の整数、好ましくは0又は1〜2の整数、さらに好ましくは0又は1であってもよい。また、置換基R及びRの置換位置は、通常、アミド基に対して2位、3位、5位、6位から選択でき、好ましくは2位、6位であってもよい。
【0038】
前記式(1)において、pは、例えば、4以上(例えば、4〜30程度)、好ましくは6以上(例えば、6〜20程度)、さらに好ましくは8以上(例えば、8〜15程度)であってもよい。また、前記式(1)において、q(重合度)は、例えば、5以上(例えば、10〜1000程度)、好ましくは10以上(例えば、30〜800程度)、さらに好ましくは50以上(例えば、100〜500程度)であってもよい。
【0039】
なお、脂環族ポリアミドは、透明性が高く、いわゆる透明ポリアミドとして知られている。前記のような脂環族ポリアミド樹脂は、例えば、ダイセル・デグサ(株)から、例えば、「トロガミド(Trogamid)」、エムス社から「グリルアミド(Grilamid)」などとして入手することもできる。脂環族ポリアミド樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0040】
前記芳香族ポリアミドには、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカンジアミンなどのC4−14アルキレンジアミンなど)及び脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4−14アルカンジカルボン酸など)のうち少なくとも一方の成分が芳香族成分であるポリアミド、例えばジアミン成分が芳香族成分であるポリアミド[MXD−6などの芳香族ジアミン(メタキシリレンジアミンなど)と脂肪族ジカルボン酸との縮合物など]、ジカルボン酸成分が芳香族成分であるポリアミド[脂肪族ジアミン(トリメチルヘキサメチレンジアミンなど)と芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)との縮合物]などが含まれる。
【0041】
前記ポリアミド樹脂として、ダイマー酸をジカルボン酸成分とするホモ又はコポリアミド、少量の多官能性ポリアミン及び/又はポリカルボン酸成分を用い、分岐鎖構造を導入したポリアミド、変性ポリアミド(N−アルコキシメチルポリアミドなど)などを用いてもよい。さらに、用途によっては、ポリアミド樹脂は、熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0042】
これらのポリアミド樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。好ましいポリアミド樹脂には、脂肪族ポリアミド、透明ポリアミド樹脂(脂環族ポリアミド樹脂)などが含まれ、特に、機械的強度、耐溶剤性(耐薬品性)などの観点から、脂環族ポリアミドが好ましい。
【0043】
ポリアミド樹脂の数平均分子量は、例えば、6,000〜300,000、好ましくは10,000〜200,000、さらに好ましくは15,000〜100,000程度であってもよい。
【0044】
ポリアミド樹脂は、カルボキシル基及び/又はアミノ基を有していてもよく、少なくともアミノ基を有するのが好ましい。ポリアミド系樹脂のカルボキシル基濃度は、例えば、1〜200mmol/kg、好ましくは5〜150mmol/kg、さらに好ましくは10〜100mmol/kg(例えば、20〜80mmol/kg程度)程度であってもよく、通常、30〜75mmol/kg程度である場合が多い。ポリアミド樹脂のアミノ基濃度は、例えば、1〜150mmol/kg、好ましくは5〜100mmol/kg、さらに好ましくは10〜75mmol/kg(例えば、15〜75mmol/kg程度)程度であってもよく、通常、20〜70mmol/kg程度である場合が多い。
【0045】
さらに、カルボキシル基濃度とアミノ基濃度との割合は、例えば、前者/後者=0.2/1〜4/1(例えば、0.3/1〜3.5/1)、好ましくは1/1〜3/1、さらに好ましくは1/1〜3/1(例えば、2/1〜2.8/1)程度であってもよい。
【0046】
ポリアミド樹脂は結晶性を有していてもよい。特に、ポリアミド樹脂は、微結晶性(例えば、結晶化度1〜20%、好ましくは1〜10%、さらに好ましくは1〜8%程度)を有するポリアミド樹脂(例えば、前記式(1)で表される脂環族ポリアミドなどの前記脂環族ポリアミド樹脂)であってもよい。結晶化度は、慣用の熱分析(示差走査型熱量計)によって求めることができ、前記ポリアミド樹脂の吸熱ピーク面積(S)から融解熱量を求め、結晶化度を求めることができる。融解熱量は、例えば、30J/g以下(例えば、1〜30J/g程度)、好ましくは20J/g以下(例えば、2〜20J/g程度)、さらに好ましくは17J/g以下(3〜17J/g程度)であってもよい。
【0047】
ポリアミド樹脂は、熱溶融温度(又は融点)を有していてもよく、熱溶融温度(Tm)は、例えば、100〜300℃、好ましくは110〜280℃、さらに好ましくは130〜260℃程度であってもよい。特に、結晶性(特に微結晶性)を有するポリアミド樹脂の熱溶融温度(Tm)は、例えば、150〜300℃、好ましくは180〜280℃、さらに好ましくは210〜260℃程度であってもよい。
【0048】
前記ポリアミド樹脂は、ポリカーボネート樹脂などに比べて、高いアッベ数を有している場合が多い。特に、高アッベ数のポリアミド樹脂で構成された保護層は、ポリカーボネート樹脂に見られるような虹色の色むらの生成を効率よく防止できる。そのため、ポリアミド樹脂のアッベ数は、30以上(例えば、32〜65程度)、通常、35以上(例えば、35〜65程度)の範囲から選択でき、例えば、40以上(例えば、40〜60程度)、好ましくは42以上(例えば、42〜58程度)、さらに好ましくは44以上(例えば、44〜55程度)であってもよい。
【0049】
また、前記偏光性積層体(偏光性積層体B)において、保護層を構成する樹脂としては、ポリアミド樹脂に限定されず、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース誘導体(例えば、アセチルセルロースなどのセルロースエステル類など)、オレフィン系樹脂[例えば、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマーなど)、ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体など)、環状オレフィン系樹脂など]などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて保護層を構成してもよい。これらのうち、特に、偏光性積層体Bにおいて、好ましい保護層を構成する樹脂は、ポリアミド樹脂(前記例示のポリアミド樹脂など)である。
【0050】
なお、特許第2838514号公報などに記載されているように、通常、ポリカーボネート樹脂などの樹脂で保護フィルムを構成すると、保護フィルムに虹色の色むらが発生する。前記特許文献では、保護フィルムのリタデーション値(Δn・d)を3000〜6000nmにすることにより、虹色の色むらの生成を防止している。
【0051】
一方、本発明では、保護層は、前記のように、通常、ポリカーボネート樹脂などに比べて高いアッベ数を有するポリアミド樹脂で構成されているためか、リタデーション値を大きくしなくても、通常、虹色の色むらが生成することはない(又は虹色の色むらの生成を高いレベルで抑制又は防止できる)。しかし、ポリアミド樹脂で構成された保護層(又は偏光性積層体)は、曲げ加工(曲面形状加工)に供すると、白抜け[又は十字白抜け、十字状の白濁印又は保護フィルムの1又は数箇所(例えば、四隅)に生じる白濁印]が発生する。特に、このような白抜けの発生は、熱成形により曲面形状加工するとき、より一層顕著になる場合が多い。
【0052】
そのため、本発明では、保護層(又は保護フィルム)のリタデーション値を300nm以上という高い値にすることによって、保護層(又は偏光性シート層又は偏光性積層体)の白抜けの生成を防止(又は抑制)してもよい。前記保護層のリタデーション値は、300nm以上(例えば、320〜20000nm程度)の範囲から選択でき、通常、350nm以上(例えば、370〜15000nm程度)であればよく、例えば、400nm以上(例えば、420〜10000nm程度)、好ましくは450nm以上(例えば、470〜7000nm程度)、さらに好ましくは500nm以上(例えば、520〜6000nm程度)、特に550nm以上(例えば、570〜5000nm程度)、通常、400〜6000nm(例えば、400〜5000nm)程度であってもよい。
【0053】
特に、成形加工性(例えば、曲げ加工性)などの観点からは、前記保護層(又は偏光性シート層又は偏光性積層体)のリタデーション値は、例えば、5000nm以下(例えば、300〜4800nm程度)、好ましくは4500nm以下(例えば、350〜4200nm程度)、さらに好ましくは4000nm以下(例えば、400〜3500nm程度)、特に3000nm以下(例えば、500〜2500nm程度)、通常2000nm以下(例えば、600〜1500nm、好ましくは800〜1300nm程度)であってもよい。
【0054】
なお、前記保護層のリタデーション値は、例えば、1300nm以上(例えば、1300〜20000nm程度)の範囲から選択でき、通常、1500nm以上(例えば、1600〜15000nm程度)であればよく、例えば、1800nm以上(例えば、1900〜10000nm程度)、好ましくは2000nm以上(例えば、2100〜7000nm程度)、さらに好ましくは2200nm以上(例えば、2300〜6000nm程度)、特に2500nm以上(例えば、3000〜5000nm程度)であってもよい。なお、リタデーション値は、例えば、延伸方向の屈折率とそれに垂直な方向の屈折率との屈折率差(Δn)と、厚み(d)との積(Δn・d)で定義できる。
【0055】
上記のような高いリタデーション値を有する保護層(保護フィルム)の製造方法は、前記所定のリタデーション値を付与できる限り、特に制限されない。通常、前記保護フィルムは、各種成形方法により成形されたフィルムを配向させることにより製造できる。
【0056】
前記高いリタデーション値を有する保護層の成形方法としては、特に限定されないが、通常、溶融押出成形法、溶液流延法などが挙げられる。溶融押出成形法では、例えば、前記ポリアミド樹脂又は保護層を構成する樹脂を押出機などで溶融混合し、ダイ(例えば、Tダイなど)から押出成形し、冷却することによりフィルム(保護層)を製造してもよい。フィルムの生産性の観点からは、溶融押出成形法が好ましい。前記ポリアミド樹脂又は保護層を構成する樹脂を溶融して成形する(溶融成形する)際の樹脂温度は、通常、120℃〜350℃程度の温度範囲から選択でき、例えば、130〜300℃、好ましくは150〜280℃、さらに好ましくは160〜250℃程度であってもよい。
【0057】
配向させるフィルムの厚みは、特に限定されないが、0.01〜5mm程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜3mm、好ましくは0.2〜2mm、さらに好ましくは0.3〜1.5mm(例えば、0.35〜1mm)程度であってもよい。
【0058】
フィルムの配向は、慣用の方法、例えば、ドロー(引き取り)、延伸などにより行うことができる。例えば、溶液製膜方法では、溶媒を含む予備乾燥フィルムを延伸することにより配向させてもよい。また、溶融製膜方法では、押出機のダイから押し出されるフィルム状溶融物を引き取りつつ冷却ロールなどの冷却手段により冷却する方法、ダイから押し出されたフィルム状溶融物を冷却し、所定の延伸温度(ガラス転移温度以上の温度であって、融点未満の温度)で延伸する方法などが例示できる。フィルムの生産性の観点からは、溶融成膜方法、特に溶融押出成形法が好ましい。また、フィルムは、少なくとも一方の方向(縦又は引き取り方向MD、又は幅方向TD)に配向していればよく、交差又は直交する方向に配向していてもよい。フィルムの配向は、通常、延伸による配向である場合が多い。例えば、フィルムは一軸延伸又は二軸延伸フィルム(特に一軸延伸フィルム)であってもよい。
【0059】
フィルムの配向度(延伸倍率)は、リタデーション値に応じて選択でき、少なくとも一方の方向に1.05〜5倍(例えば、1.1〜4倍)、好ましくは1.2〜3.5倍、さらに好ましくは1.3〜2.8倍)、特に1.4〜2.8倍程度であってもよい。なお、配向度は、前記のように、フィルムの厚みにも依存し、例えば、フィルムの厚みが0.4〜1mm程度のとき、延伸倍率1.1〜3倍程度であってもよい。また、二軸延伸フィルムでは、一方の方向(例えば、MD方向)に1.1〜3倍(好ましくは1.2〜3倍、さらに好ましくは1.3〜3倍、特に1.4〜2.5倍)程度、他方の方向(例えば、TD方向)に1.1〜3倍(好ましくは1.2〜3倍、さらに好ましくは1.3〜3倍、特に1.4〜2.5倍)程度であってもよい。
【0060】
延伸温度は、ポリアミド樹脂又は保護層を構成する樹脂のガラス転移温度に応じて調整でき、例えば、例えば、80℃以上(例えば、80〜210℃程度)、好ましくは110℃以上(例えば、110〜200℃程度)、さらに好ましくは115℃以上(例えば、115〜130℃程度)であってもよい。
【0061】
なお、フィルムの配向は、フィルム状溶融物を巻き取ったのち所定の延伸温度で延伸する段階的方法(オフライン成形)、フィルム状溶融物を巻き取ることなく所定の延伸温度で延伸する連続的方法(オンライン成形)のいずれで行ってもよい。
【0062】
保護層は、種々の添加剤、例えば、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など)、可塑剤、滑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。
【0063】
保護層の厚みは用途に応じて選択でき、特に限定されないが、例えば、20〜1000μm、好ましくは30〜800μm、さらに好ましくは50〜300μm程度であってもよい。保護層の表面には、密着性を向上させるため、種々の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、アンカーコート処理など)を施してもよい。
【0064】
(接着剤)
偏光層と保護層とは、通常、接着剤(又は接着剤層)を介して接着していてもよい。接着剤層を構成する接着剤(又は接着性成分)としては、例えば、イソシアネート基又はウレタン基を有する接着剤、エポキシ系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、アクリル系接着剤、ポリアミド系接着剤、イミノ基含有ポリマー(ポリエチレンイミンなど)、ポリエステル系樹脂、カップリング剤(シランカップリング剤など)などが挙げられる。これらの接着剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0065】
特に、前記偏光性積層体(偏光性積層体A)において、偏光層と保護層とを接着させるための接着剤(又は接着剤層)は、イソシアネート基又はウレタン基を有する接着剤で構成されている。このような接着剤は、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とポリオールとで構成でき、前記ポリイソシアネート化合物は低分子量のポリイソシアネートであってもよく、オリゴマー(ポリイソシアネート化合物とポリオールとの反応により生成し、かつ遊離のイソシアネート基を有するオリゴマー)であってもよい。
【0066】
ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などの脂肪族ポリイソシアネート類;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロアルキルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂環族ポリイソシアネート類;フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)などの芳香族ポリイソシアネート類、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネート類などが例示できる。ポリイソシアネート類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネートを用いる場合が多い。
【0067】
ポリイソシアネート化合物は、ビュレット、アロファネートなどの変性体、二量体、三量体などの多量体、ブロックポリイソシアネートであってもよい。
【0068】
オリゴマーとしては、ポリオールに対して過剰量の前記ポリイソシアネートを反応させた遊離のイソシアネート基を有する化合物、例えば、ジオール1モルに対して1.2〜2モル(特に1.5〜2モル)程度のジイソシアネートを反応させた化合物などが例示できる。
【0069】
前記接着剤又は前記オリゴマーを構成するポリオールとしては、ポリエステルポリオール[C4−12アルカンジカルボン酸成分(アジピン酸など)、C2−12アルカンジオール成分(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなど)、C4−12ラクトン成分(ε−カプロラクトンなど)などから得られるポリエステルジオール(脂肪族ポリエステルジオール)、例えば、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(1,6−ヘキサンアジペート)、ポリ−ε−カプロラクトンなど;前記アルカンジカルボン酸の一部に代えて芳香族ジカルボン酸を用いたポリエステルジオールなと];ポリエーテルポリオール[ポリエチレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリ(オキシC2−4アルキレン)グリコール類、これらのポリ(オキシアルキレン)グリコール類のブロック共重合体(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体など);芳香族ポリエーテルジオール、例えば、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体などの芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加体(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのC2−4アルキレンオキサイド付加体など)など];ポリエステルエーテルジオール(ジオール成分の一部として前記ポリエーテルジオールを用いたポリエステルエーテルジオール);ポリカーボネートポリオールなどが例示できる。
【0070】
これらのポリオールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリオールのうち、少なくともオリゴマー又はポリマー型ポリオール、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール(特に、ポリテトラメチレンエーテルグリコール)、ポリカーボネートポリオールを用いる場合が多い。
【0071】
前記オリゴマーの調製には、鎖伸長剤、例えば、グリコール類[例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのC2−10アルカンジオールなど]の他、ジアミン類[エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC2−10アルキレンジアミンなどの脂肪族ジアミン類;イソホロンジアミンなどの脂環族ジアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン類など]も使用できる。鎖伸長剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0072】
接着剤は、ポリイソシアネート化合物とポリオールとを当量の割合で反応させた熱可塑性ポリウレタンであってもよいが、遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とポリオールとで構成された二液硬化型ウレタン系接着剤である場合が多い。この二液硬化型ウレタン系接着剤は、非オリゴマー型の低分子量のポリイソシアネート化合物(例えば、イソシアヌレート環を有する三量体などのポリイソシアネート)と、ポリオールとで構成してもよいが、通常、遊離のイソシアネート基を有するオリゴマー型ポリイソシアネート(遊離のイソシアネート基とウレタン結合とを有するポリイソシアネート)と、ポリオールとで構成する場合が多い。ポリイソシアネート化合物とポリオールとの割合は、イソシアネート基とヒドロキシル基とのモル比として、例えば、前者/後者=0.5/1〜1.5/1、0.8/1〜1.3/1、特に0.9/1〜1.2/1程度である場合が多い。
【0073】
接着剤層は、種々の添加剤、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など)、可塑剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、粘度調整剤などを含んでいてもよい。
【0074】
接着剤層の厚みは、固形分換算で、例えば、0.1〜80μm程度の範囲から選択でき、通常、1〜60μm、好ましくは2〜50μm、さらに好ましくは5〜40μm程度であってもよい。
【0075】
(偏光性シート層および偏光性積層体)
前記偏光性シート層(又は偏光性シート又は偏光性積層体)は、少なくとも偏光層の両面に保護層を積層することにより製造できる。すなわち、前記偏光性シート層(又は偏光性シート又は偏光性積層体、偏光性積層体A)は、前記イソシアネート基又はウレタン基を有する接着剤を用い、偏光層の両面にポリアミド樹脂で構成された保護層を積層することにより製造できる。この方法において、通常、偏光層(偏光膜、偏光フィルム又はシート)の両面に、保護層として、ポリアミド樹脂又は保護層を構成する樹脂で構成された樹脂フィルム又はシートを貼り合わせる場合が多い。例えば、繰り出しロールから偏光膜を繰り出すとともに、繰り出しロールから樹脂フィルム又はシートを繰り出しつつ接着剤を塗布し、前記偏光膜の両面に樹脂フィルム又はシートを前記接着剤で接着させ、積層シートを巻き取りロールで巻き取ってもよい。なお、偏光膜の両面に剥離フィルムが形成された偏光性シートを用いる場合、繰り出しロールから偏光性シートを繰り出しながら両面の剥離フィルムを剥離させ、偏光膜と樹脂フィルム又はシートとを接着させればよい。偏光性シート層(積層体)は、接着剤で偏光膜と樹脂フィルム又はシートとを貼り合わせた後、適当な温度(例えば、30〜70℃程度)でエージング処理してもよい。
【0076】
なお、接着剤は、塗工性を調整するため、有機溶媒、例えば、炭化水素類(ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類、エステル類(酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)などを含んでいてもよい。エーテル類は、エチレングリコールジエチルエーテルなどのアルキレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートなどであってもよい。
【0077】
前記偏光層とポリアミド樹脂で構成された保護層と接着剤とを組み合わせると、偏光層と保護層とが接着剤と反応するためか、高い密着性が得られる。そのため、偏光性シート層を種々の加工、例えば、打ち抜き加工、曲げ加工、孔あけ加工などに供しても、クラックや割れなどが生じることがなく、加工性(成形加工性)を大きく向上できる。そのため、偏光性シート層は、打ち抜き加工及び/又は曲げ加工されたシート状偏光積層部材であってもよい。この積層部材は、平面状部材であってもよく、熱プレス成形などにより球面形状(一方の面が凸面状、他方の面が凹面状)に熱成形してもよい。
【0078】
特に、サングラスなどの光学部材の用途では、曲げ加工[曲面形状(例えば、凸面状又は球面形状(一方の面が凸面状、他方の面が凹面状)加工など]により成形加工して偏光性シート層を製造する場合が多い。前記のように、ポリアミド樹脂で構成された保護フィルム(又は偏光性シート層)を、このような曲げ加工に供すると、複屈折率が増加するためか、保護層に白抜けが生成することがある。このような白抜けは、前記のような高いリタデーション値(例えば、300nm以上)を有する保護層を用いることにより、効率よく防止又は抑制できる。そのため、前記偏光性シート層は、曲面形状を有する偏光性シート層[又は曲げ加工(凸形状加工)された偏光性シート層]であってもよい。すなわち、本発明では、前記のような高いリタデーション値(例えば、300nm以上のリタデーション値)を有する保護層を用い、この保護層を偏光層に積層した後、曲げ加工(特に、熱成形により曲げ加工)して、前記偏光性シート層(又は偏光性積層体)を製造してもよい。
【0079】
曲面形状を有する偏光性シート層において、曲率半径は、特に限定されないが、通常、20〜140mm、好ましくは40〜120mm、さらに好ましくは60〜100mm程度であってもよい。前記のような高いリタデーション値(例えば、1300nm以上)を有する保護層を用いると、このような曲率で曲げ加工しても、白抜けの生成を効率よく防止しつつ、偏光性シート層を成形できる。
【0080】
なお、前記のように、曲げ加工により、保護層のレタデーション値は、幾分か増加する。このような曲げ加工により増加するリタデーション値[又は曲げ加工された偏光膜用保護フィルムのリタデーション値(R2)と、保護層のリタデーション値(R1)との差(R2−R1)]は、曲げの程度にもよるが、50〜400nm(例えば、50〜350nm)の範囲から選択でき、例えば、60〜300nm(例えば、70〜270nm)、好ましくは80〜250nm(例えば、90〜230nm)、さらに好ましくは100〜200nm程度であってもよい。
【0081】
すなわち、曲面形状を有する偏光性シート層において、対応する曲面形状を有する保護層(曲げ加工された保護層、曲げ加工後の保護層、曲げ加工後の偏光性積層体における保護層)のリタデーション値は、前記保護層のリタデーション値と、前記曲げ加工により増加するリタデーション値(例えば、50〜400nm程度)との和で表される。具体的には、曲面形状を有する保護層のリタデーション値は、例えば、400nm以上(例えば、420〜20400nm程度)の範囲から選択でき、通常、450nm以上(例えば、470〜15300nm程度)であればよく、例えば、480nm以上(例えば、490〜10200nm程度)、好ましくは500nm以上(例えば、520〜7100nm程度)、さらに好ましくは550nm以上(例えば、580〜6100nm程度)、特に600nm以上(例えば、650〜5100nm程度)であってもよい。
【0082】
特に、前記曲面形状を有する保護層のリタデーション値は、例えば、5100nm以下(例えば、400〜4900nm程度)、好ましくは4600nm以下(例えば、450〜4300nm程度)、さらに好ましくは4100nm以下(例えば、500〜3600nm程度)、特に3100nm以下(例えば、600〜2600nm程度)、通常2100nm以下(例えば、700〜1600nm、好ましくは900〜1400nm程度)であってもよい。
【0083】
曲面形状を有する偏光性シート層は、前記偏光性シート層(平面状の偏光性シート層)を、曲げ加工(特に、熱成形により曲げ加工)することにより得ることができる。曲げ加工(曲面形状加工)は、通常、熱成形により行うことができる。なお、曲げ加工する場合、前記のように、特定のリタデーション値(例えば、300nm以上のリタデーション値)を有する保護膜を好適に使用できる。熱成形方法は、特に限定されないが、単曲面成形法、複曲面成形法(真空成形、自由吹込成形、圧空成形、熱プレス成形など)などの方法が挙げられるが、特に好ましい熱成形方法は真空成形である。熱成形温度は、通常、保護層(偏光膜用保護フィルム)を構成する樹脂(例えば、ポリアミド樹脂)のガラス転移温度Tgよりも40〜50℃低い温度(通常、90℃)〜Tg+20℃程度の温度である場合が多く、例えば、90℃以上(例えば、90〜200℃)、好ましくは100〜190℃、さらに好ましくは110〜160℃程度であってもよい。
【0084】
また、本発明では、ポリアミド樹脂で構成された保護層と特定の接着剤とを組みあわせるので、他の成形加工、例えば、打ち抜き加工、孔あけ加工などに供しても、クラックや割れなどが生じることがなく、成形加工性が高い。そのため、前記偏光性シートは、曲げ加工に加えて、さらに、打ち抜き加工や孔あけ加工された偏光性シートであってもよい。
【0085】
本発明の偏光性積層体は、少なくとも偏光性シート層で構成する限り、偏光性シート層単独で構成してもよく、偏光性シート層の少なくとも一方の保護層に熱接着した熱成形性樹脂層を備えている偏光性積層体(複合積層体)で構成してもよい。特に、前記偏光性積層体(偏光性積層体B)は、前記偏光性シート層と、少なくとも一方の前記保護層に熱接着した熱成形性樹脂層とで構成されている。
【0086】
熱成形性樹脂層は、偏光シート層の両面の保護層に形成してもよいが、偏光シート層の一方の保護層に形成する場合が多い。一方の保護層に形成する場合、通常、出射光側(眼に接する側)の保護層に熱成形性樹脂層を形成してもよい。
【0087】
この樹脂層を構成する樹脂としては、熱成形可能な種々の熱可塑性樹脂、例えば、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)など)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体など)、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体など)、ポリエステル系樹脂(アルキレンアリレート単位を有するホモ又はコポリエステル又は芳香族ポリエステル系樹脂)、ポリアミド系樹脂(例えば、脂環族ポリアミド樹脂などの前記例示のポリアミド樹脂)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールAなどのビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂など)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、架橋式炭化水素環(アダマンタン環、ノルボルナン環、シクロペンタン環など)を有する樹脂(JSR(株)製「アートン」、日本ゼオン(株)製「ゼオネックス」、三井化学(株)製「アペル」など)などが例示できる。また、熱可塑性樹脂としては、アシルセルロース(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど)を用いてもよく、アシルセルロースは可塑剤で可塑化されていてもよく、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのように内部可塑化されたアシルセルロースであってもよい。
【0088】
これらの樹脂は、前記積層体を光学用途に用いる場合、光学的に等方性であるとともに透明な樹脂であるのが好ましい。また、複屈折の小さな樹脂であるのが好ましい。このような樹脂は、通常、非結晶性(又は非晶性)である場合が多い。また、樹脂としては、耐衝撃性の高い樹脂も好ましい。これらの特性を備えた樹脂としては、例えば、前記例示のポリアミド樹脂(特に透明ポリアミド樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、アシルセルロースなどが例示できる。
【0089】
なお、前記偏光性積層体(偏光性積層体B)では、前記熱成形性樹脂層がポリアミド樹脂で構成されている。ポリアミド樹脂としては、前記保護層の項で例示したポリアミド樹脂(例えば、脂環族ポリアミド)などが挙げられる。前記偏光性積層体Bにおいて、熱成形性樹脂層は、単独の又は2種以上のポリアミド樹脂で構成されていてもよい。
【0090】
さらに、前記樹脂層を構成する樹脂は、前記保護層を構成する樹脂と同系統又は同じ樹脂(例えば、前記脂環族ポリアミド樹脂などのポリアミド樹脂)であってもよい。すなわち、前記熱成形性樹脂層は、ポリアミド樹脂(特に、保護層と同じポリアミド樹脂)で構成してもよい。樹脂層および保護層がポリアミド樹脂で構成された偏光性積層体は、成形加工性、機械的特性(耐衝撃性など)や耐薬品性に優れるだけでなく、簡便に成形できるため、製造プロセスを簡略化でき、工業的にも有利である。すなわち、射出成形(インサート射出成形など)により成形しても、保護層と樹脂層との剥離などを生じることなく、簡便にかつ効率よく成形でき、成形性又は成形加工性をより一層向上できる。
【0091】
樹脂層は、種々の添加剤、例えば、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など)、可塑剤、滑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。
【0092】
前記樹脂層の厚みは、特に制限されず、例えば、0.1〜8mm程度の範囲から選択でき、通常、0.5〜5mm(例えば、0.5〜3mm)程度であってもよい。前記樹脂層は、全体に亘り均一な厚みを有していてもよく、中心部から周辺部に向かって厚みが連続的に大きくてもよく連続的に小さくてもよい。このような厚みが分布した偏光性積層体においても、前記樹脂層の平均厚みは、前記と同様の範囲から選択でき、通常、0.5〜3mm程度であってもよい。
【0093】
樹脂層は、種々の熱成形、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、押出成形法、射出成形法、射出圧縮成形法などで形成でき、射出成形法(すなわち、インサート射出成形法)、射出圧縮成形法により樹脂層を形成する場合が多い。これらの成形法のうち、特に、射出成形法が好ましい。インサート射出成形は、金型の所定位置に前記偏光性シート層(特に、曲面形状を有する偏光性シート層)を配し、溶融した前記樹脂層の樹脂又はその組成物を金型内に射出成形することにより行うことができる。なお、前記偏光性シート層(シート状偏光積層部材)の一方の面に樹脂を射出成形してもよく、シート状偏光積層部材の両面に樹脂層の樹脂(又はその組成物)を射出成形してもよい。例えば、球面形状のシート状偏光積層部材は、凸面及び/又は凹面に樹脂を射出成形してもよく、通常、凹面側に樹脂を射出成形する場合が多い。なお、射出成形は、慣用の方法で行うことができ、例えば、樹脂の種類に応じて150〜400℃(好ましくは200〜350℃、さらに好ましくは250〜330℃)程度の温度で溶融混練された熱可塑性樹脂を100〜300MPa(好ましくは120〜280MPa、さらに好ましくは150〜250MPa)程度の圧力で射出することにより行うことができる。また、射出成形により生成する光学的歪みを除去するため、成形体はアニール処理してもよい。射出圧縮成形法を利用すると、溶融樹脂を金型内に射出した後、金型内で樹脂に圧縮力を作用できるため、成形歪みや光学的異方性が生じるのを抑制でき、寸法精度の高い偏光性積層体(偏光性成形体)を得ることができる。
【0094】
なお、前記偏光性積層体において、熱成形性樹脂層は、上記のように、通常、前記保護層の少なくとも一方の面に接着剤層などを介することなく直接的に熱接着により形成される。このような熱接着により、構造を複雑化させることなく、簡便な構造で保護層に対する密着性、さらには耐衝撃性に優れた偏光性積層体を得ることができる。そして、特に、熱成形性樹脂層をポリアミド樹脂で構成することにより、保護層(特に、ポリアミド樹脂で構成された保護層)に対する密着性に優れるのみならず、軽量性や耐溶剤性に優れ、さらには前記虹色の色むらの発生が抑制又は防止された偏光性積層体が得られる。
【0095】
なお、偏光性積層体の一方の面(前記のように、偏光性シート層の一方の保護層に樹脂層を形成する場合には、他方の保護層)には、種々の加工処理、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、防曇処理、防汚処理、ミラー加工処理などを施してもよく、これらの複数の加工処理を組み合わせて処理してもよい。
【0096】
ハードコート処理は、熱硬化性樹脂[シリコーン化合物(アルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物など)、エポキシ系熱硬化型樹脂など]、光硬化型樹脂又は紫外線硬化型樹脂(アクリル系光硬化性樹脂、エポキシ系光硬化性樹脂)などを偏光性積層体の表面に塗布し、硬化(熱硬化、光硬化)させることにより行うことができる。ハードコート処理されたハードコート層の厚みは、例えば、1〜10μm、好ましくは2〜8μm、さらに好ましくは3〜6μm程度であってもよい。
【0097】
反射防止処理は、蒸着法、塗布法などを利用して、互いに屈折率の異なる複数の無機質層[例えば、ジルコニウム酸化物(ZrOなど)、ケイ素酸化物(SiOなど)、アルミニウム酸化物(Alなど)、チタン酸化物(TiOなど)などの無機酸化物層]や有機層を偏光性積層体の表面に形成することにより行うことができる。
【0098】
また、防曇処理は親水性樹脂で偏光性積層体の表面を被覆することにより行うことができ、防汚処理は低表面張力の物質(シリコーン系又はフッ素系物質)で偏光性積層体の表面を被覆することにより行うことができる。さらに、ミラー加工処理は、蒸着法によりアルミニウムなどの反射金属膜を偏光性積層体の表面に形成することにより行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、メガネのレンズ基材、例えば、サングラス(度付きサングラスを含む)、ゴーグルなどの光学用基材として有用である。特に、孔あけ加工などの加工処理に供しても光学的歪みが生じないため、フレームのないメガネのレンズ基材として有用である。また、本発明の偏光性積層体は、ポリアミド樹脂と特定の接着剤とを組み合わせるため、意匠性に優れるとともに、成形加工性や機械的特性(機械的強度など)において優れている。しかも、本発明の偏光性積層体は、耐薬品性に優れ、例えば、可塑剤を含むフレームなどと接触させても、割れなどを生じることがなく、耐久性が高い。さらに、本発明では、色ムラの発生を効率よく防止でき、特に、保護層のリタデーション値を著しく高めることにより、ポリアミド樹脂で構成しても、曲げ加工処理に伴う白抜けの発生を防止できる。
【0100】
また、本発明の機能性光学部品は、前記偏光性積層体(複合積層体)で構成されていればよく、例えば、レンズ(光学レンズ)及びレンズを備えた機能性光学部品(例えば、メガネ、ゴーグルなど)、レンズ(及びレンズを備えた機能性光学部品)以外の機能性光学部品[例えば、遮光(又は防眩)用部品(例えば、帽子の鍔、車の日よけなどのサンバイザー)、フィルター(例えば、光学フィルターなど)、保護シート(例えば、ディスプレイの保護シートなど)など]などが挙げられる。前記レンズは、レンズ本体と、このレンズ本体に接合した前記偏光性積層体(レンズ基材)とで構成してもよい。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0102】
なお、実施例及び比較例で用いた樹脂および接着剤を下記に示すとともに、成形された保護層および偏光性積層体の特性は下記方法により測定した。
【0103】
[樹脂]
トロガミドCX7323:ダイセル・デグサ(株)製、脂環族ポリアミド樹脂、平均アッベ数52、ガラス転移温度140℃(90℃で、3時間、棚段式乾燥機で乾燥したもの)
グリルアミドTR55:スイスEMS社製、脂環族ポリアミド樹脂、アッベ数45、ガラス転移温度160℃(90℃で、3時間、棚段式乾燥機で乾燥したもの)
グリルアミドTR90:スイスEMS社製、脂環族ポリアミド樹脂、アッベ数50(90℃で、3時間、棚段式乾燥機で乾燥したもの)
ポリカーボネート樹脂:出光石油化学(株)製、平均重合度80、アッベ数29、ガラス転移温度145℃(120〜125℃で、3時間乾燥したもの)。
【0104】
[接着剤]
TM−595/CAT−RT85:東洋モートン(株)製、ポリウレタン系接着剤
BLS−3082/CAT−RT85:東洋モートン(株)製、ポリウレタン系接着剤
EL−420:東洋モートン(株)製、ポリエチレンイミン系接着剤。
【0105】
[リタデーション値]
実施例及び比較例で得られた保護層のリタデーション値は、自動複屈折計(王子計測機器(株)製、商品名「KOBRA−21DH」)により測定した。
【0106】
[白抜け試験]
実施例及び比較例で得られた曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)の凸面方向から、別の偏光板(平面状の偏光板、レンヌジャパン(株)製、商品名「k−hs200」)を介して、光(通線偏光)を照射し、偏光板の凹面方向から目視観察により以下の基準で白抜けを評価した。
【0107】
◎:白抜けが観測されなかった
○:極僅か白抜けが観測された
×:白抜けが観測された。
【0108】
[接着強度]
実施例及び比較例で得られた曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を、70℃の熱水に20分間浸漬した後、測定器((株)オリエンテック製、「RTC−1210」)を用いて、300mm/分の引張速度における接着強度(ラミネート強度)を測定し、ポリビニルアルコール系偏光フィルムに対する保護層の剥離強度(密着強度)とした。
【0109】
[耐水性]
実施例及び比較例で得られた曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を、30〜35℃の温水に二週間浸漬した後の膜はがれの状況を以下の基準で目視観察した。
【0110】
○:界面(保護層)の浮き上がりがない
×:界面(保護層)の浮き上がり(膜剥がれ)が認められる。
【0111】
[レンズ成形性]
実施例および比較例で得られた偏光性積層シートの成形性を、以下の基準で評価した。
【0112】
○:保護層とレンズ用成形樹脂層とが剥離することなく強固に接着した
×:保護層とレンズ用成形樹脂層との剥離が生じた。
【0113】
[虹色の色むら試験]
実施例および比較例で得られた偏光性積層体(偏光レンズ)の凸面を斜めから目視観察し、以下の基準で色むらを評価した。
【0114】
○:虹色の色むらが観測されなかった
×:虹色の色むらが観測された。
【0115】
[孔あけ時の割れ試験]
実施例および比較例で得られた偏光性積層体(偏光レンズ)に、レンズ穴開機((株)クボタ精機製作所製、DM−3)を用いて直径2mmの貫通孔を開けた。
【0116】
○:ひび割れが発生しなかった
×:ひび割れが発生した。
【0117】
(実施例1)
脂環族ポリアミド樹脂(トロガミドCX7323)を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.63mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(140〜160℃程度)に加熱しながら、延伸倍率2.50で一軸延伸し、厚み0.25mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(TM−595/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約160℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約160℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0118】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(トロガミドCX7323)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0119】
(実施例2)
脂環族ポリアミド樹脂(グリルアミドTR55)を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.56mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(160〜180℃程度)に加熱しながら、延伸倍率2.00で一軸延伸し、厚み0.28mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(TM−595/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約180℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約180℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0120】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(グリルアミドTR55)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0121】
(実施例3)
脂環族ポリアミド樹脂(グリルアミドTR55)を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.56mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(160〜180℃程度)に加熱しながら、延伸倍率2.00で一軸延伸し、厚み0.28mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(TM−595/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約180℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約180℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0122】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(トロガミドCX7323)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0123】
(実施例4)
脂環族ポリアミド樹脂(トロガミドCX7323)を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.50mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(140〜160℃程度)に加熱しながら、延伸倍率1.50で一軸延伸し、厚み0.33mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(BLS−3082/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約160℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約160℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0124】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(トロガミドCX7323)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0125】
(実施例5)
脂環族ポリアミド樹脂(トロガミドCX7323)をφ40mm単軸押出機で加熱溶融し、Tダイからチルロール上に厚み0.56mmで押出して冷却固化させ、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(140〜160℃程度)に加熱しながら、延伸倍率2.00で一軸延伸し、厚み0.28mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(BLS−3082/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約160℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約160℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0126】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(トロガミドCX7323)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0127】
(実施例6)
脂環族ポリアミド樹脂(トロガミドCX7323)を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.43mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(140〜160℃程度)に加熱しながら、延伸倍率1.15で一軸延伸し、厚み0.37mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(BLS−3082/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約160℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約160℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0128】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(トロガミドCX7323)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0129】
(実施例7)
脂環族ポリアミド樹脂(グリルアミドTR55)をφ40mm単軸押出機で加熱溶融し、Tダイからチルロール上に厚み0.44mmで押出して冷却固化させ、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(160〜180℃程度)に加熱しながら、延伸倍率1.20で一軸延伸し、厚み0.37mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(TM−595/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約180℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約180℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0130】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(グリルアミドTR55)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0131】
(実施例8)
脂環族ポリアミド樹脂(トロガミドCX7323)を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.24mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(140〜160℃程度)に加熱しながら、延伸倍率1.20で一軸延伸し、厚み0.20mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(TM−595/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約160℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約160℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0132】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(トロガミドCX7323)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0133】
(実施例9)
脂環族ポリアミド樹脂(グリルアミドTR90)を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.5mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(160〜180℃程度)に加熱しながら、延伸倍率2.00で一軸延伸し、厚み0.25mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(TM−595/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約180℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約180℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0134】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(グリルアミドTR90)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0135】
(実施例10)
脂環族ポリアミド樹脂(トロガミドCX7323)を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.65mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(140〜160℃程度)に加熱しながら、延伸倍率2.20で一軸延伸し、厚み0.30mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(TM−595/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約160℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約160℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0136】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(トロガミドCX7323)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0137】
(実施例11)
実施例1において、ポリウレタン系接着剤(TM−595/CAT−RT85)に代えて、ポリエチレンイミン系接着剤(EL−420)を使用し、レンズ用成形樹脂として、トロガミドCX7323に代えてグリルアミドTR55を使用し、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(グリルアミドTR90)を圧力200MPaで射出したこと以外、実施例1と同様にして偏光性シートおよび偏光性積層体を成形した。
【0138】
(実施例12)
ポリカーボネート樹脂(PC)を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.4mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(145〜165℃程度)に加熱しながら、延伸倍率1.03で一軸延伸し、厚み0.39mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(TM−595/CAT−RT85)を厚み3μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約165℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約165℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0139】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(トロガミドCX7323)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0140】
(実施例13)
ポリカーボネート樹脂を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.56mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(145〜165℃程度)に加熱しながら、延伸倍率2.00で一軸延伸し、厚み0.28mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(TM−595/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約165℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約165℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0141】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(トロガミドCX7323)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0142】
(比較例1)
ポリカーボネート樹脂を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.26mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(145〜165℃程度)に加熱しながら、延伸倍率1.05で一軸延伸し、厚み0.25mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリウレタン系接着剤(TM−595/CAT−RT85)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約165℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約165℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0143】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(ポリカーボネート樹脂)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0144】
(比較例2)
脂環族ポリアミド樹脂(トロガミドCX7323)を加熱溶融し、φ40mm単軸押出機でTダイから溶融樹脂を厚み0.45mmで押出し、チルロールで冷却後、巻き取り機で巻き取った。巻き取られたシートを、回転数及び温度がそれぞれ独立可能な4本のロールからなる縦一軸延伸装置に導き、樹脂のガラス転移点より若干高い温度(140〜160℃程度)に加熱しながら、延伸倍率1.50で一軸延伸し、厚み0.30mmの保護層を得た。得られた保護層の片面にポリエチレンイミン系接着剤(EL−420)を厚み4μmで塗布し、厚み約40μmのポリビニルアルコール系偏光フィルム((株)ポラテクノ製)の両面に、前記接着剤を塗布した前記保護層を接着し、偏光性シート(偏光板)を成形した。得られた偏光板を、トムソン刃で所定の形状(略四角形の一組の対向する縁部が略円弧状に外側にそった形状)に切り出した。切り出した偏光板を約160℃で、遠赤外線加熱炉中に入れ、1〜2分予熱後、約160℃に温度調節された曲率半径87mmの凹面金型上に置き、金型下部に設けられた吸引孔から真空吸引し、曲面形状を有する偏光性シート(偏光板)を得た。
【0145】
そして、射出成形機に設置されたレンズ金型の凹面に、前記曲面形状を有する偏光板又は偏光性シート(曲げ加工された偏光板)を配置し、前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたレンズ用成形樹脂(ポリカーボネート樹脂ト)を圧力200MPaで射出し、偏光性積層体(偏光レンズ)を成形した。
【0146】
実施例および比較例で得られた偏光性シートおよび偏光性積層体の特性を表1に示す。
【0147】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を介して偏光層の両面に保護層が積層された偏光性シート層で構成された偏光性積層体であって、前記接着剤が、イソシアネート基又はウレタン基を有する接着剤で構成され、前記保護層がポリアミド樹脂で構成されている偏光性積層体。
【請求項2】
偏光層の両面に保護層が積層された偏光性シート層と、少なくとも一方の前記保護層に熱接着した熱成形性樹脂層とで構成されている偏光性積層体であって、前記熱成形性樹脂層がポリアミド樹脂で構成されている偏光性積層体。
【請求項3】
保護層が少なくともアミノ基を有する透明ポリアミド樹脂で構成されている請求項1又は2記載の偏光性積層体。
【請求項4】
保護層が、アッベ数40〜60のポリアミド樹脂で構成されている請求項1又は2記載の偏光性積層体。
【請求項5】
保護層が、300nm以上のリタデーション値を有する請求項1又は2記載の偏光性積層体。
【請求項6】
保護層が、ビス(アミノC5−10シクロアルキル)C1−6アルカン類とC4−18アルカンジカルボン酸類とを構成成分とするアッベ数40〜60の脂環族ポリアミド樹脂で構成され、かつ300nm以上のリタデーション値を有する請求項1又は2記載の偏光性積層体。
【請求項7】
接着剤が二液硬化型ウレタン系接着剤である請求項1記載の偏光性積層体。
【請求項8】
少なくとも一方の保護層に熱接着した熱成形性樹脂層を備えている請求項1記載の偏光性積層体。
【請求項9】
熱成形性樹脂層が、ポリアミド樹脂で構成されている請求項1記載の偏光性積層体。
【請求項10】
イソシアネート基又はウレタン基を有する接着剤を用い、偏光層の両面にポリアミド樹脂で構成された保護層を積層し、請求項1記載の偏光性積層体を製造する方法。
【請求項11】
300nm以上のリタデーション値を有する保護層を用い、この保護層を積層した後、熱成形により曲げ加工する請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
偏光性シート層をインサート成形に供し、少なくとも一方の保護層に射出成形により熱成形性樹脂層を形成する請求項10記載の製造方法。
【請求項13】
偏光層の両面に保護層が積層された偏光性シート層をインサート成形に供し、少なくとも一方の保護層に射出成形によりポリアミド樹脂で構成された熱成形性樹脂層を形成し、請求項2記載の偏光性積層体を製造する方法。
【請求項14】
請求項1記載の偏光性積層体で構成された機能性光学部品であって、レンズを除く機能性光学部品。
【請求項15】
請求項2記載の偏光性積層体で構成されたレンズ。

【公開番号】特開2006−227591(P2006−227591A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379384(P2005−379384)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】