説明

健康保持剤

【課題】 内臓脂肪型肥満にならないように予防する必要があるが、嗜好を変えて摂食を減らすのは精神的に苦痛を感じてなかなか続かないので、通常の食事形態をとりながら余剰エネルギーを除いてエネルギー以外の栄養素はできるかぎり摂取できる健康保持剤及び食品を提供する。
【解決手段】 リパーゼ阻害作用、α−アミラーゼ阻害作用及びα−グルコシダーゼ阻害作用により糖質及び脂質の消化吸収を抑制又は阻害するグネツムのレスベラトロール2量体を有効成分として健康保持剤及び飲食品に含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リパーゼ阻害作用及び多糖加水分解酵素阻害作用を有する新規な健康保持剤及び食品に関する。即ち、体内でエネルギー源となる脂質及び糖質の消化吸収を抑制又は阻害することにより血中の中性脂肪及び総コレステロールを低下させて万病の原因と言われている内臓脂肪型肥満を予防するための新規な健康保持剤及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレンチパラドックスの基となった赤ワインに含まれていることで周知のこととなった抗酸化作用のあるポリフェノールが求められている。日本に於いては動物性食品の摂取が増える一方で植物性食品である野菜の摂取量が減少傾向にあるので、植物の防御機構を担うポリフェノールの摂取も当然減っている。それ故に成人病・若年性成人病といった生活習慣病(内臓脂肪型肥満・メタボリックシンドローム)が増加の一途を辿っている。そこで、本発明者らは、グネツムグネモン(学名Gnetum gnemon L.)の果実に初めて着目し、その利用として日持ち向上及びラジカル消去作用を有するグネツム食品(特許文献1)、グネツムエキス(特許文献2)、発酵食品(特許文献3)及びメリンジョ茶(特許文献4)の発明を行っている。
【0003】
グネツムグネモンは、インドネシアでは若葉、花、未熟果実を野菜として、種子を潰して乾燥後油で揚げた食品(ウンピン;emping)として利用しているにすぎず、生物作用を積極的に活用する機能性食品への利用は未だ行われていないのが現状である。
【0004】
グネツム科グネツム属植物の生理作用に関する例として、バイマイトウ(学名:Gnetumu montanum)の養毛作用(特許文献5)、グネツム科植物の根から得られる抽出物に含まれるレスベラトロール重合体の抗菌作用(特許文献6)、グネツムエキスのコラーゲン産生促進作用・ヒアルロン酸産生促進作用・エラスターゼ阻害作用・ヒアルロニダーゼ阻害作用(特許文献7)が開示されている。また、グネツム種子の主たる有用成分は、ポリフェノールの一種であるスチルベノイド類のレスベラトロール2量体のグネチンC、グネモノシドA、グネモノシドC及びグネモノシドDであり、抗菌作用・抗酸化作用(ラジカル消去作用)を有することが記載されている(特許文献2)。
【0005】
レスベラトロール単量体に関しては、ブドウ、イタドリ根やラッカセイに含まれていることが特許文献8に開示されており、AMPK活性化作用による脂質代謝活性化剤・肥満抑制剤・糖尿病予防改善剤・肝臓肥大抑制剤・脂肪肝抑制剤としての飲食品(特許文献9)、ペルオキシソーム増殖応答性受容体α活性化による循環器系障害(脳組織障害−脳梗塞・頭部外傷・脳塞栓・一過性脳虚血発作、心血管障害−虚血性心疾患−狭心症・心筋梗塞、脊髄組織障害−脊髄梗塞・脊髄外傷)の進展抑制医薬組成物(特許文献10)、血糖値低下剤としての飲食品(特許文献11)、足の浮腫み・冷えを改善させる食品組成物(特許文献12)、持久力向上剤(特許文献13)、四肢関節の関節痛や腰痛・坐骨神経痛の再発予防・症状緩和に有用な経口組成物(特許文献14)、風邪およびインフルエンザ様疾患に関連した症状の予防及び治療のための組成物(特許文献15)、インフルエンザウイルス感染の治療用剤(特許文献16)、神経障害および神経変性疾患治療用組成物(特許文献17)、中枢神経系疾患の進行遅延剤(特許文献18)、抗炎症用栄養補助食品組成物(特許文献19)、心肥大および心疾患を抑制するプロテインキナーゼC−μ(PKD)阻害剤(特許文献20)への利用、並びにブドウ由来のリスベラトロールを15mg/kg以上含有させる飲食品の製造方法(特許文献21)が開示されている。また、マウスを使用した皮膚ガン抑制作用(非特許文献1)、高カロリー餌摂取マウスの健康改善による寿命延長(非特許文献2)など多くの報告がある。
【0006】
しかしながら、レスベラトロール2量体に関しては前記抗菌作用・抗酸化作用(特許文献2)及びテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用(非特許文献3)が検討されている程度に過ぎない。
【0007】
【特許文献1】特開2006−81405号公報
【特許文献2】国際特願PCT/JP2005−016824
【特許文献3】特願2006−196293
【特許文献4】特願2007−159904
【特許文献5】特開平11−60450号公報
【特許文献6】特開2005−23000号公報
【特許文献7】特開2006−169225号公報
【特許文献8】特開2005−281179号公報
【特許文献9】特開2006−273834号公報
【特許文献10】特開2003−300904号公報
【特許文献11】特開2007−126390号公報
【特許文献12】特開2003−286809号公報
【特許文献13】特開2007−145809号公報
【特許文献14】特開2001−72582号公報
【特許文献15】特表2003−505500号公報
【特許文献16】特表2006−507295号公報
【特許文献17】特表2003−513917号公報
【特許文献18】特表2005−533042号公報
【特許文献19】特表2006−528950号公報
【特許文献20】特表2007−505158号公報
【特許文献21】特開2005−143377号公報
【非特許文献1】Science,275,218−220(1997)
【非特許文献2】Nature,444,337−342(2006)
【非特許文献3】J.Wood Sci.,48、64−68(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、日本人は食品の欧米化により畜肉食品の摂取が多くなるとともに脂肪の摂取が増してエネルギー(カロリー)の取り過ぎ状態になっているために内臓脂肪型肥満になる人が増加している。この状態を放置すると高脂血症、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病を罹患し、遂には動脈硬化を引き起こして狭心症、心筋梗塞、脳梗塞や閉塞性動脈硬化症などを発症することになる。このような病気にならないためには内臓脂肪型肥満にならないように予防する必要があるが、嗜好を変えて摂食を減らすのは精神的に苦痛を感じるので、なかなか続かないのが現状である。この点に鑑み、通常の食事形態をとりながら余剰エネルギー除いてエネルギー以外の栄養素はできるかぎり摂取できる健康保持剤及び食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、グネツム果実の利用の一環として上記課題を解決するために鋭意研究を続けた結果、レスベラトロール単量体が種子に副成分として含まれているだけでなく、その2量体が新たにリパーゼ阻害作用及びα−アミラーゼ阻害作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、リパーゼ阻害作用、α−アミラーゼ阻害作用及びα−グルコシダーゼ阻害作用により糖質及び脂質の消化吸収を抑制又は阻害するグネツムのレスベラトロール2量体を有効成分とする健康保持剤及び食品に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、東南アジアで量が豊富で常食としているグネツムに含まれるレスベラトロール単量体及び2量体は安全であり、単量体による種々の生物作用以外に2量体は抗菌作用及びラジカル消去作用だけでなくリパーゼ阻害作用、α−アミラーゼ阻害作用及びα−グルコシダーゼ阻害作用を有するので、健康保持剤を服用することにより消化管における糖質及び脂質の消化吸収が抑制されて血糖及び中性脂肪(血中トリグリセリド)の上昇が抑制され、血中コレステロールも低下して内臓脂肪型肥満の予防が期待される。また、このような作用を有するレスベラトロール2量体を含有する飲食品を摂取して日常生活の中で内臓脂肪型肥満や単なる肥満を改善あるいは予防するのに貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で言うグネツムはグネツム科に属する植物のことであり、その中のグネモン(別名メリンジョ、学名Gnetum gnemon L.、英名Gnemon tree、インドネシア名Melinjo、Belinjo)は、東南アジアで広く栽培され、インドネシアでは若葉、花、果実を野菜として食され、その種子は潰してから乾燥し、油で揚げて(ウンピン;emping)食されており好適である。本発明には可食部である果実、種子、葉及び花を用いる。必要ならば根も混合することができる。使用する果実及び種子は、未熟又は完熟を問わず、そのままでもよく、果皮及び種皮を剥離した中身の仁、即ち胚及び胚乳(内乳)が好ましく、乾燥及び未乾燥(生)のいずれでも好適であり、裁断機や破砕機で破砕してもよく、粉砕機で粉砕してもよい。グネツムをそのまま或いはこのように処理したものを一般的方法により溶媒抽出して得られるエキス又は特許文献2におけるエキスが好適である。また、特許文献2で残留した破砕内乳及び油で揚げていないウンピンも同様に使用することができる。
【0012】
本発明で言うレスベラトロール2量体は、スチルベノイドに属するレスベラトロールが2分子結合した化合物のことであり、グネチンC及びその配糖体であるグネモノシドA、グネモノシドB、グネモノシドC及びグネモノシドD、グネチンD、ビニフェリン及びその配糖体であるグネモノシドE、グネモノールM、グネモノールEなどがある。
【0013】
本発明で言う健康保持剤は,レスベラトロール2量体を有効成分とし、これに任意の助剤、賦形剤などを配合して固形剤化、或いは水または有機溶媒などを適宜配合して液剤化したものである。本発明の健康保持剤を、内臓脂肪型肥満や単なる肥満を改善あるいは予防のために経口剤として用いる場合の服用(投与)量は、服用の目的や服用者の状況(性別、年齢、体重、肥満度、総合的健康度合いなど)により異なるが、通常、1日の服用量として、グネツムエキス(抽出物)を重量換算で、1〜500mg/体重kgの範囲で服用することができる。500mg/体重kgを超える服用も何ら問題はない。
【0014】
本発明におけるリパーゼとは、グリセロールエステルを加水分解して脂肪酸を遊離する狭義の意味ではなく、いわゆる脂肪酸エステルを脂肪酸とアルコールに加水分解する酵素のことを指し、動植物及び微生物に広く分布している。
【0015】
本発明における多糖加水分解酵素とは、二糖類以上の多糖を加水分解して糖鎖を短くする酵素のことであり、例えば人や動物の唾液及び膵液のα−アミラーゼは澱粉を加水分解してマルトースを産生する酵素である。α−グルコシダーゼは人や動物の小腸に存在し、植物や微生物などにも広く存在し、マルターゼやシュクラーゼを包含し、非還元末端に存在するα―グルコシド結合を加水分解する酵素で、マルトースやショ糖などの2糖類を加水分解して単糖に変換する。
【0016】
本発明で言う中性脂肪低下作用及び血糖低下作用は、単に中性脂肪及び血糖だけでなく同様に内臓脂肪型肥満の要因とされている総コレステロール及び低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の上昇を抑えて基準内(正常)にすることを意味し、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)を高めて肥満を抑制(抗肥満)することである。
【0017】
本発明で言う飲食品は、レスベラトロール2量体を有効成分として含有又は配合する飲食物であり、特定保健用食品とすることができ、そのまま、或いは従来食品に使用されている各種成分と共に配合することにより製造される。食品の形態としては、固形食品、クリームやジャム状の半流動食品、ゲル状食品、飲料等のあらゆる食品形態とすることができ、例えば、顆粒、錠剤、カプセル、ドリンク剤などの製剤、常用されている任意の基材を配合する清涼飲料、ジュース、コーヒー、紅茶、リキュール、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、飴(キャンデー)、キャラメル、チューインガム、チョコレート、グミ、アイスクリーム、プディング、卵製品、羊羹、水羊羹、おかき、餅、団子、煎餅、クレープ、お好み焼き、パン、クッキー、麺類、ハンバーグ、水練製品、てんぷら、発酵食品などの飲食物が挙げられる。
【0018】
必要ならば、明日葉、甘茶、アマチャヅル、アロエ、イチョウ葉、ウーロン茶、ウコン、ウラジロガシ、エゾウコギ、エゾウコギ、オオバコ、カキオドシ、柿、カミツレ、カモミール、カリン、ガルシニア、河原決明、菊花、クチナシ、桑、クコ、月桂樹、紅茶、紅豆杉、コンフリー、昆布、桜、サフラン、シイタケ、シソ、ショウガ、しょうが、スギナ、スワンギ、セキショウ、センダングサ、センブリ、ソバ、タマリン度、タラノキ、タンポポ、チコリ、杜仲、ナタマメ、ニワトコ、ネズミモチ、ハトムギ、ハブ、松葉、マテ、麦茶、メグスリノキ、ユーカリ、ヨモギ、羅漢果、緑茶、ルイボス、霊芝、ガランガル、ギムネマ、グァバ葉、ゲンノショウコ、玄米、ゴボウ、ドクダミ、バナバ、ビワの葉、紅花などのいわゆる生薬・健康茶及びそれらの抽出物などを添加配合してもよい。
【0019】
必要に応じてエリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、デキストリン、サイクロデキストリンなどを混合して苦味や渋みをマスクすることができる。
【0020】
本発明の飲食品を内臓脂肪型肥満や単なる肥満を改善あるいは予防のために用いるにあたり、飲食品としての風味や色調を考慮すると,グネツムそのまま及び/又はそのエキスの配合量は乾燥重量換算で0.01〜90%の範囲、好ましくは、0.05〜80%の範囲である。本発明の飲食品は、その種類に応じてブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖などの甘味料、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸などの酸味料、L−アスコルビン酸、dlーα−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウムなどの酸化防止剤、グリセリン、プロピレングリコールなどの品質改良剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどの乳化剤、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天などの糊料(増粘剤、安定剤、ゲル化剤)、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウムなどの強化剤、アミノ酸などの調味料、カルシウム塩類、着色料、膨張剤、着香料、保存料など、一般的飲食品原料として使用されているものを適宜配合して製造することができる。
【0021】
また、目的に応じて通常動物飼料に用いられている各種成分を適宜配合して粉末、顆粒、ペースト、カプセル、シロップ、固形状、ゲル状、液状、懸濁液、乳液などの形態とすることにより家畜用飼料やキャットフード、ドッグフードやウサギ用フードなどのペットフードなどの動物飼料とすることができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1(粉末の製造)
グネモンの乾燥内乳10kgを粉砕機で粉砕してグネツム粉末9.7kgを得た。
【0024】
実施礼2(エキスの製造及び成分の単離)
グネモンの乾燥果実16.2kgの粉砕物を50%エタノール80Lに2日間浸漬し、抽出液を減圧濃縮乾固してグネツムエキスを1300g(収率8%)得た。本エキスの1/20量65gをセパビーズSP825(ダイヤイオン)カラムクロマトグラフィーにより溶出順にまとめて分画1、2及び3とした。分画2をセファーデックスLH20カラムクロマトグラフィーにより分離精製して[α]546 +68.3°(c=0.7、メタノール、23)の淡褐色無定形固体としてグネモノシドAを2.7g(収率0.34%)を得た。分画3をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製してmp275−6℃(分解)の白色微細柱状晶としてトランス−レスベラトロール0.16g(収率0.02%)、[α]546 −23.2°(c=0.5,メタノール,23)の淡黄色無定形固体としてグネチンCを3.66g(収率0.45%)及びmp205−6°、[α]546 −65.6°(c=0.6,メタノール,34)の微褐色針状晶としてグネモノシドDを4.36g(収率0.54%)得た。このようにして得られたグネツムエキス並びにグネモノシドA、トランス−レスベラトロール、グネチンC及びグネモノシドDを以下の試験に試料として供した。
【0025】
実施例3(リパーゼ阻害試験)
本試験には塩化ナトリウム(0.15M)及び塩化カルシウム(1.3mM)を含有するpH8の13mMトリス緩衝液を用いた。本緩衝液に溶かした0.1mMオレイン酸4−メチルウンベリフェリル溶液0.5mLに試料の10%メタノール溶液0.25mLを加え、次いで本緩衝液に溶かしたリパーゼ溶液(豚膵液由来、シグマ製)0.25mLを加えてよく混合し、25℃で30分間反応させた後、pH4.2の0.1Mクエン酸緩衝液4mLを加えて反応を停止させた。リパーゼの働きにより生じる4−メチルウンベリフェロンに基づく本反応液の蛍光強度(励起波長355nm、発光波長460nm)を測定してリパーゼ活性を50%阻害する試料の濃度(IC50)を求めた。その結果、実施例2のグネツムエキスが7.1ppm、グネチンCが3.4μM、グネモノシドDが14μM及びグネモノシドAが17μMであったが、レスベラトロールは20μM濃度で阻害率が8%であった。
【0026】
実施例4(α−アミラーゼ阻害試験)
本試験には塩化ナトリウム(80mM)及び塩化カルシウム(10mM)を含有するpH7の10mMトリス緩衝液を用いた。本緩衝液に溶かしたα−アミラーゼ溶液(豚膵液由来、シグマ製)0.2mLと試料の10%メタノール溶液2mLの混合液に、本緩衝液に溶かした0.4%馬鈴薯澱粉溶液2mLを加えてよく混合し、37℃で20分間反応させた。本反応液1mLに0.5M塩酸0.5mLを加えて反応を停止させ、0.2mMヨウ素液3.5mLを加えて混合した後、精製水5mLを加えて600nmにおける吸光度を測定した。試料溶液の代わりに10%メタノール2mL、更にα−アミラーゼ溶液の代わりに本緩衝液0.2mLを加えてそれぞれ対照及びブランクとし、同様に操作して吸光度を測定した。それらの吸光度からα−アミラーゼ活性を50%阻害する試料の濃度(IC50)を求めたところ、実施例2のグネツムエキスが49ppm、グネチンCが25μM、グネモノシドDが93μM及びグネモノシドAが128μMであったが、レスベラトロールは200μM濃度で阻害率が6%であった。
【0027】
実施例5(α−グルコシダーゼ阻害試験)
30mMりん酸緩衝液(pH7)に溶かしたα―グルコシダーゼ(イースト由来、シグマ製)溶液0.25mLと試料の10%メタノール溶液0.25mLの混合液に、同緩衝液に溶かした0.1%マルトース溶液0.5mLを加えてよく混合し、37℃で30分間反応させた後、反応液0.5mLをグルコースCII−テストワコー発色液(和光純薬工業製)3mLに加えて混合・発色させ、505nmにおける吸光度を測定した。試料溶液の代わりに10%メタノール0.25mL、更にα−グルコシダーゼ溶液の代わりに同緩衝液0.25mLを加えてそれぞれ対照及びブランクとし、同様に操作して吸光度を測定した。それらの吸光度からα−グルコシダーゼ活性を50%阻害する試料の濃度(IC50)を求めたところ、実施例2のグネツムエキスが14ppm、グネチンCが6.2μM、グネモノシドDが22μM及びグネモノシドAが35μMであったが、レスベラトロールは50μM濃度で阻害率が7%であった。
【0028】
実施例6(錠剤の製造)
実施例2のグネツムエキス500g、デキストリン(マックス1000、松谷化学製)500g、乳糖1000g及びステアリン酸マグネシウム10gを混合し、本混合物を単発式打錠機にて打錠し、直径8mm、重量200mgの錠剤(グネツムエキス50mg含有)を製造した。
【0029】
実施例7(ショ糖負荷試験−血糖値上昇抑制試験)
本試験の趣旨に同意した中性脂肪及び総コレステロール値が過去3年間に亘り高めの被験者(35〜59歳;男性3名;女性2名)を被験者として、食後の血糖値に及ぼす本発明の健康保持剤の影響を調べるためにショ糖負荷試験を行った。被験者は、試験前日22時以降絶食し、当日9時前後にショ糖50gを水200mLと共に飲んで試験を開始した。実施例6の錠剤は試験5分前に4錠(エキス量:200mg)服用し、血糖値は、開始時、30分、1時間及び2時間後に採血してグルコースCII−テストワコー(和光純薬工業製)を用いる方法により測定した。また、同じ被験者に対してグネツムエキスを含まない錠剤をプラセボとして同様の試験を行った。なお、両試験は1週間の間隔を空けて行った。その結果、実施例6の錠剤を服用したときの血糖値の平均値は、開始時が93mg/dL、30分後が132mg/dL、1時間後が114mg/dL、2時間後が87mg/dLであり、プラセボの場合は、開始時が93mg/dL、30分後が145mg/dL、1時間後が126mg/dL、2時間後が93mg/dLであった。したがって、本発明の健康保持剤の服用により血糖値の上昇を抑制する効果が認められた。
【0030】
実施例8(血中脂質低下試験)
実施例7と同じ5名の被験者(中性脂肪値:185〜249mg/dL、総コレステロール値:211〜245mg/dL)に、実施例6の錠剤を毎食後に4錠(エキス量:200mg)ずつ、1日3回、14日間服用させた。なお、食事は特に制限を付けず通常のメニューとした。試験実施前及び服用14日間後の血液検査を行い、中性脂肪、総コレステロール及び高密度リポタンパク質コレステロール値を調べた。その結果、中性脂肪値は、男性被験者の平均値が試験実施前228mg/dL、試験実施後120mg/dL、女性被験者の平均値が試験実施前194mg/dL、試験実施後139mg/dLであった。総コレステロール値は、男性被験者の平均値が試験実施前231mg/dL、試験実施後202mg/dL、女性被験者の平均値が試験実施前217mg/dL、試験実施後188mg/dLであった。高密度リポタンパク質コレステロール値は、男性被験者の平均値が試験実施前47mg/dL、試験実施後52mg/dL、女性被験者の平均値が試験実施前57mg/dL、試験実施後86mg/dLであった。したがって、本発明の健康保持剤の服用により、服用前に比して中性脂肪は男性で47%、女性で29%減少し、総コレステロールも男性で13%、女性で13%減少したのに対し、高密度リポタンパク質コレステロールは男性で11%、女性で51%増加したことから、内臓脂肪型肥満の指標である中性脂肪及び総コレステロールが低下して善玉コレステロールと言われている高密度リポタンパク質コレステロールが上昇し、健康が改善された。なお、本発明の健康保持剤服用による体調の変化はなく、血液検査、その他の血液生化学検査及び尿検査の検査値のいずれも異常がなく、副作用も認められなかった。
【0031】
実施例9(キャンディー)
実施例2のグネツムエキス1部、グラニュー糖280部、水飴210部、ク エ ン酸5部、香料1部及び色素1部を配合してキャンディーを製造した。本キャンディーは苦みもなく、味は良好であった。
【0032】
実施例10(ジュース)
実施例2のグネツムエキス1部、冷凍濃縮温州みかん果汁25部、果糖ブドウ糖液糖55部、クエン酸1部、L−アスコルビン酸0.1部、香料1部、色素0.5部及び水400部を配合してジュースを製造した。本ジュースはみかんの風味や色に変化がなかった。
【0033】
実施例11(チューインガム)
実施例2のグネツムエキス1部、チューインガムベース300部、ショ糖800部、水飴300部、軟化剤60、香料13部及び色素1部を配合してチューインガムを製造した。本チューインガムは苦みもなく、味は良好であった。
【0034】
実施例12(チョコレート)
実施例2のグネツムエキス1部、チョコレート220部、ショ糖75、カカオバター100部及び全脂粉乳100部を配合してチョコレートを製造した。配合されたグネツムエキスがチョコレートの風味や色に影響を与えることはなく、美味しいものであった。
【0035】
実施例13(クッキー)
実施例1のグネツム粉末1部、薄力粉2.3部、全卵1.6部、マーガリン1.9部、上白糖2.5部、ベーキングパウダー0.02及び水0.73部を配合してクッキーを製造した。本クッキーは風味がよくて苦みもなく、味は良好であった。
【0036】
実施例14(おかき))
実施例1のグネツム粉末1部、餅粉1部、食塩0.02部及び水2部を配合しておかきを製造した。本おかきは風味が良く、良好な味であった。
【0037】
実施例15(クレープ)
実施例1のグネツム粉末1部、薄力粉0.4部、全卵0.2部、牛乳0.2部、食塩0.01部、バニラエッセンス適量及び水1.2部を配合してクレープを製造した。本クレープは良好な風味と味を有していた。
【0038】
実施例16(固形ドッグフード)
実施例1のグネツム粉末1部、ミートミール1.9部、チキンエキス0.25部、植物油脂0.25部、炭水化物0.9部、炭酸カルシウム0.025部、食塩0.01部、複合ビタミン剤0.05部及び水0.5部を配合してドッグフードを製造した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によると、東南アジアで量が豊富で常食としているグネツムに含まれるレスベラトロール単量体及び2量体は安全であり、単量体による種々の生物作用以外に2量体は抗菌作用及びラジカル消去作用だけでなくリパーゼ阻害作用、α−アミラーゼ阻害作用及びα−グルコシダーゼ阻害作用を有するので、健康保持剤を服用することにより消化管における糖質及び脂質の消化吸収が抑制されて血糖及び血中トリグリセリド(中性脂肪)の上昇が抑制され、血中コレステロールも低下し、高密度リポタンパク質コレステロールは上昇して内臓脂肪型肥満の予防が期待され、生活習慣病の予防に有用である。また、レスベラトロール2量体を含有した飲食品を摂取して日常生活の中で内臓脂肪型肥満や単なる肥満の改善あるいは予防に貢献できる。したがって、健康な人はもちろん、太り気味の人のためのダイエット飲食品或いは糖尿病患者用の飲食品としても有用である。更に、本発明の健康保持剤及び飲食品を飼料として使用することはペットや家畜などの動物のダイエット及び糖尿病や肥満の改善或いは予防に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グネツムのレスベラトロール2量体を有効成分とすることを特徴とする健康保持剤
【請求項2】
前記有効成分がリパーゼ阻害作用を有することを特徴とする請求項1記載の健康保持剤
【請求項3】
前記有効成分が多糖加水分解酵素阻害作用を有することを特徴とする請求項1記載の健康保持剤
【請求項4】
前記有効成分が中性脂肪低下作用及び/又は血糖低下作用を有することを特徴とする請求項1記載の健康保持剤
【請求項5】
グネツムのレスベラトロール2量体を含有し、中性脂肪低下作用及び/又は血糖低下作用を有することを特徴とする飲食品

【公開番号】特開2009−13123(P2009−13123A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177967(P2007−177967)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(391012040)株式会社ホソダSHC (14)
【Fターム(参考)】