説明

健康履物

【課題】 特に、踵立ち姿勢及び爪先立ち姿勢のいずれでも安定した状態で立ち続けられ且つ歩行でき、踵立ち姿勢でバランスを崩したときにも即座に爪先立の姿勢に体勢を変更できる健康履物を提供すること。
【解決手段】 健康履物1は、足底の趾球から踵前端部までの縦幅があり足幅程度の横幅がある台表面2aとその裏側の台裏部2b〜2dとを有し、足指及び踵後端部が縦方向前端及び後端から突出した状態で台表面2aに足底が載置され、固定バンド4によって足が固定される履物台2と、その履物台2の台裏部2b〜2dの縦方向中程から突出形成され、履物台2の横方向に所定幅あって横方向視略円弧状の外形面3aが床面に接触することで摩擦力による滑り止め機能を発揮して床面上で履物台2を支持する支持脚3とを備えており、この支持脚3を支点として履物台2を前傾姿勢にして爪先立ち姿勢になり、かつ、履物台2を後傾姿勢にして踵立ち姿勢になるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者に対して踵立ち姿勢及び爪先立ち姿勢をとらせることで下肢部のストレッチや筋力強化を促すことができる健康履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、運動不足による現代人の筋力低下が叫ばれており、このような筋力低下に伴う立ち姿勢や座り姿勢の悪化傾向も著しく、この結果、内蔵機能を含めた身体全般の機能に異常が招来されるとも言われている。このため、近頃は、老若男女を問わず身体的な健康維持および増進に関心が持たれており、例えば、下記する特許文献1及び2にある多種多様な健康器具も提案され、広く利用されている。
【0003】
ここで、特許文献1のストレッチ健康具や特許文献2の履物は、足先部を踵部よりも高くして踵立ち姿勢をとって、下肢部後側(脹脛や大腿部後側)をストレッチするとともに背中の筋肉を伸張させて背筋を矯正するための器具である。踵立ち姿勢で立ち続けたり、歩行したりすることは、下肢部後側にあるアキレス腱、腓腹筋、ヒラメ筋、ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋など)を伸張させるストレッチ効果があり、腰痛などの解消に有効であるとされている。
【0004】
また、踵立ち姿勢で立ち続けること又は歩行することに対して、踵を床から浮かして爪先立ち姿勢で立ち続けたり又は歩行したりすることは、身体の重心を踵側から足先側へ矯正し、下肢部の筋力の強化し、自然と下腹部に力が入ることから下腹部の筋力強化にも資するとされている。しかも、近年では、爪先立ち姿勢には外反母趾を改善する効果があるとも言われている。
【特許文献1】特開特開2000−317013号公報
【特許文献2】特許第3462837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、踵立ち姿勢及び爪先立ち姿勢は、いずれも安定した状態で長時間維持可能な姿勢ではなく、特に、身体的に能力が低下している者にとっては、極めて不安定で転倒してしまい易い姿勢である。このため、踵立ち姿勢や爪先立ち姿勢を促す健康器具や健康履物には、その使用者が踵立ち又は爪先立ちの姿勢をとるときに安定性が高くて、使用者に安心感を与えるものであることが要求される。また、ストレッチ用の健康器具を使用する者の身体能力は個々人で疎らであるので、ストレッチ強度(負荷)を簡単に調節できるものであることも要求される。
【0006】
ところが、特許文献1のストレッチ健康具では、下肢部後側のストレッチ強度を使用者自身に適したものに調節するため、使用者が踏み台を乗り降して傾斜角度を調節する必要があり、ストレッチ強度の調節に手間がかかるという問題点がある。また、両足の踏み台が一体化されているので、両足が同一の傾斜角度でストレッチされることとなり、片足毎にストレッチ強度を調節することができないという問題点がある。
【0007】
また、特許文献2の履物では、何かに掴まって踵立ちする場合に安定した状態で立ち続けることは可能であるが、踵立ち姿勢のままで歩行して運動効果を得ようとする場合には爪先部が床面に突っ掛かり易くて歩行しづらいという問題点がある。しかも、装着すると足の爪先を床面に決して接触できないので、一旦バランスを崩すと、爪先立ちに姿勢を変更するなどして姿勢を修正することもできず、足首を捻って痛めてしまう恐れもあるという問題点がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ストレッチ強度の調整が手軽にでき、しかも片足ずつストレッチ強度を調節でき、踵立ち姿勢及び爪先立ち姿勢のいずれでも安定した状態で立ち続けることができ、さらに、踵立ち姿勢及び爪先立ち姿勢のいずれでも安定的に歩行でき、踵立ち姿勢でバランスを崩したときにも即座に爪先立の姿勢に体勢を変更できる健康履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために請求項1の健康履物は、固定具によって足が固定されて使用されるものであり、足底の趾球から少なくとも踵前端部までの縦幅があり足幅程度又はそれ以上の横幅がある台表面と、その台表面の裏側に設けられる台裏部とを有して、足指及び踵後端部が縦方向前端及び後端から突出した状態で前記台表面に足底が載置される履物台と、その履物台の台裏部の縦方向中程から所定高さで突出形成され、その履物台の横方向に向かって所定幅設けられ、外形面が横方向視略円弧状に形成され、その外形面が床面に接触することで摩擦力による滑り止め機能を発揮して、その床面上で前記履物台を支持する支持脚とを備えており、その支持脚を支点とすることによって、前記履物台を前傾姿勢にして足を爪先立ち姿勢に保てるとともに、前記履物台を後傾姿勢にして足を踵立ち姿勢に保てるものである。
【0010】
この請求項1の健康履物によれば、使用者の足は、その足底が履物台の台表面に載置されて固定具によって固定される。このように使用者の足底が履物台に載置固定されても、履物台縦方向前端からは足指が突出されるとともに、履物台の縦方向後端からは少なくとも踵後端部が突出される。このため、支持脚を支点として履物台を前傾姿勢にして爪先立ちする場合には、足指を床面にあてるようにして使用者が自らの身体を支えることができ、支持脚を支点として履物台を後傾姿勢にして踵立ちする場合には、少なくとも踵部後端部分を床面にあてるようにして使用者が自らの身体を支えることができる。
【0011】
また、履物台は、その台裏部から突出される支持脚によって床面に支持されるので、爪先立ち姿勢と踵立ち姿勢との間の中間的な姿勢、即ち、通常の立ち姿勢のときに、履物台の縦方向前端及び後端が床面から浮いた状態となる。このため、使用者は、足指や踵を床面につけずに、支持脚のみでバランスをとりながら立ち続けたり又は歩行したりすることもできる。しかも、履物台を支える支持脚は、履物台の縦方向中程から突出されていることから、この支持脚を支点にしてシーソーのように揺動する不安定な履物台の上でも通常の立ち姿勢を維持し易い。
【0012】
つまり、使用者は、履物台の上にある自分の足に作用する重心位置を、支持脚のほぼ真上、つまり、土踏まず付近にくるようにバランスとることで、不安定な履物台の上でも比較的容易に安定した状態で立ち続けたり又は歩行したりすることができ、なおかつ、履物台に僅かに足底の趾球から踵部前端部までの部分が載置されるだけでも、安定感をもって自分の足底を履物台上に載せつづけることができるのである。このため、使用者は、爪先立ち姿勢、踵立ち姿勢、又は、通常の立ち姿勢、のいずれかの姿勢をとるに際しても、大した恐怖感を覚えることなく、比較的安定した状態で体勢を維持できるのである。
【0013】
また、床面と接触する支持脚の外形面は、履物台を横方向視した場合に略円弧状に形成されるので、履物台の縦方向両端が支持脚を支点として前傾又は後傾するように揺動するときでも、常に床面と接触され続ける。このため、履物台が前傾姿勢、後傾姿勢又はこれらの中間的な姿勢のいずれであっても支持脚による滑り止め機能が発揮され、履物台の支持脚を支点とした揺動動作をスムーズに行うことができ、使用者の足が常に安定的に支持される。しかも、支持脚は、履物台の横方向に所定幅設けられ、その外形面が履物台の横幅方向に線状に床面に接触されるので、履物台の横幅方向両側が上下に揺動しにくく、履物台が転倒して足首を捻って痛めることが防止される。
【0014】
さらに、履物台を両足にそれぞれ装着して踵立ち姿勢で下肢部裏側をストレッチする場合、履物台を装着した足先の向きが平行となる立ち姿勢をとれば、ストレッチ強度が強められる。一方、履物台を装着した足先の向きが逆ハの字状に開くような立ち姿勢をとったり、さらに、両足の間隔を広げることで、ストレッチ強度が弱められる。つまり、使用者自らが立ち姿勢のまま足先の向きを変更するだけでストレッチ強度を容易に微調節することができ極めて便利である。しかも、片足ずつ交互に身体の荷重をかけることで、片足ずつ交互に踵立ち姿勢によるストレッチを行うこともでき、片足ずつのストレッチ強度の調節も容易に行われる。
【0015】
請求項2の健康履物は、請求項1の健康履物において、前記履物台は、その履物台の縦方向前端部及び後端部から前記支持脚の突出形成部分へ向けて前記横方向視略逆ハの字状に斜設される足先斜部及び踵側斜部を有し、当該履物台が前記支持脚によって前傾姿勢で支持される場合に、前記足先斜部が床面に当接されて、その足先斜部と当該履物台の縦方向前端から突出される足指とによって爪先立ち姿勢を維持可能に形成され、当該履物台が前記支持脚によって後傾姿勢で支持される場合に、前記踵側斜部が床面に当接されて、その踵側斜部と当該履物台の縦方向後端から突出される踵とによって踵立ち姿勢を維持可能に形成されている。
【0016】
この請求項2の健康履物によれば、請求項1の健康履物と同様に作用する上、履物台が支持脚によって前傾姿勢で支持される場合、使用者は、自らの身体を自分の足指と、履物台の足先斜部と、支持脚の外形面とを床面に当接させながら、爪先立ち姿勢を維持でき、爪先立ちで立ち続けたり歩行したりする動作をより一層安定した状態で行うことができる。また、履物台が支持脚によって後傾姿勢で支持される場合、使用者は、自らの身体を自分の踵と、履物台の踵側斜部と、支持脚の外形面とを床面に当接させながら、踵立ち姿勢を維持でき、踵立ちで立ち続けたり歩行したりする動作をより一層安定した状態で行うことができる。
【0017】
請求項3の健康履物は、請求項1又は2の健康履物において、前記履物台は、足底面全体程度又はそれ以上の表面積を有した可撓性又は柔軟性のあるシート状体であって、前記履物台の台表面に敷設されるとともに、前記履物台の縦方向前端から突出されて足指下方に配設され、かつ、その履物台の縦方向後端から突出されて踵後端部下方に配設される下敷き部材を備えている。
【0018】
この請求項3の健康履物によれば、請求項1又は2の健康履物と同様に作用する上、使用者の足底は、履物台の台表面に敷設される下敷き部材の上に載置される。そして、この下敷き部材は、使用者の足指の下方から踵の後端部の下方にまで配設される。このため、使用者が履物台を前傾姿勢にして爪先立ち姿勢をとるときは、履物台から突出した足指が下敷き部材を介して床面に当てられて、使用者の身体が支えられる。一方、使用者が履物台を後傾姿勢にして踵立ち姿勢をとるときは、履物台から突出した踵が下敷き部材を介して床面に当てられて、使用者の身体が支えられる。
【0019】
請求項4の健康履物は、請求項1から3のいずれかの健康履物において、前記固定具は、前記履物台に係止されるとともに、その履物台の縦方向中程における横方向一方側から他方側にかけて前記台表面の上方をアーチ状に架け渡される伸縮可能な幅広帯状のゴムバンド又はゴム織物バンドであって、前記履物台に足底が載置される場合に、足弓部の足背面に伸張状態で掛け渡され、その伸張に伴う弾性復元力によって足弓部の足底側部分を前記履物台に対して押し付け、その履物台に足弓部を緊締するものである。
【0020】
この請求項4の健康履物によれば、請求項1から3のいずれかの健康履物と同様に作用する上、使用者の足は、その足底の趾球部分から少なくとも踵前端部分までが履物台に載置された状態で、固定具であるゴム製又はゴム織物製の幅広帯状バンドによって履物台に緊締される。このとき、固定具は、使用者の足弓部の足背面にアーチ状に架け渡された状態で伸張されることで弾性復元力を発揮し、その弾性復元力によって足弓部の足背面を押圧して足弓部の足底側の部分、即ち、土踏まず部分を履物台に押し付ける。しかも、使用者の足弓部のアーチは趾球及び踵部を主要な支点(荷重点)とする構造なので、固定具によって足弓部の足背面を押圧することで、趾球や踵部が履物台に強く押し付けられる。
【0021】
請求項5の健康履物は、請求項1から4のいずれかの健康履物において、前記履物台は、前記台表面又は前記下敷き部材における足底の土踏まずに対応する部位に、その足底の土踏まずの凹みに適合するように隆起されて、足底の土踏まず部分と係合する土踏まず係合部を備えている。
【0022】
請求項6の健康履物は、請求項1から5のいずれかの健康履物において、前記履物台は、前記台表面又は下敷き部材のうちの母趾球の当接部位と小趾球の当接部位と踵の当接部位に設けられて、その台表面又は下敷き部材における他の部位に比べて足底面に対する摩擦抵抗が大きな滑り止め具を備えている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の健康履物によれば、爪先立ち姿勢、踵立ち姿勢、又は、これらの中間的な姿勢のいずれであっても、支持脚の摩擦力による滑り止め機能を発揮することができ、この滑り止め機能に加えて、履物台の縦方向前端及び後端から突出される足指及び踵を床面に当てて身体を支えることができる。このため、踵立ち姿勢、爪先立ち姿勢、及び、中間姿勢のいずれの姿勢であっても、使用者は安定した状態で立ち続けたり、或いは、歩行したりできるという効果がある。しかも、使用者が踵立ち姿勢をとって下肢部後側をストレッチする場合には、両足の足先の開き具合を適宜変更することでストレッチ強度を手軽に微調整できるという効果がある。
【0024】
また、使用者が踵立ち姿勢をとった状態で、例えば、体重を片足ずつ加えれば、片足ずつ下肢部後側のストレッチをできるという効果がある。しかも、かかる場合において、片足に作用する体重の掛け具合を調節することでストレッチ強度も調節できるという効果がある。しかも、踵立ち姿勢で歩行する場合にバランスを崩したときには、例えば、履物台上での重心を爪先側に移動させることで、即座に、足指で床面を踏みしめるような格好で爪先立ちできるので、誤って足首を捻って痛めることも抑制されるという効果がある。
【0025】
請求項2の健康履物によれば、請求項1の健康履物の奏する効果に加え、履物台を前傾姿勢にして爪先立ち姿勢をとる場合、使用者は自分の足指と履物の支持脚とのみで身体を支えるのではなく、足先斜部も床面に当接させながらより一層安定した状態で爪先立ち姿勢を保持できるという効果がある。また、履物台を後傾姿勢にして踵立ち姿勢をとる場合、使用者は自分の踵と履物の支持脚とのみで身体を支えるのではなく、踵側斜部も床面に当接させながらより一層安定した状態で爪先立ち姿勢を保持できるという効果がある。
【0026】
請求項3の健康履物によれば、請求項1又は2の健康履物の奏する効果に加え、使用者は爪先立ち姿勢や踵立ち姿勢をとる場合に足指や踵で自分の身体を支えて安定した体勢をとることができることに加え、下敷き部材があることで履物台から突出した足指及び踵が直接床面や地面に直接接触することを防止して、これら足指や踵が汚れることを防止できるという効果がある。しかも、下敷き部材は可撓性又は柔軟性のあるシート状体であるので、例えば、前傾姿勢のときの履物台の縦方向前端と床面との間に段差ができる場合や、後傾姿勢のときの履物台の縦方向後端と床面との間に段差ができる場合に、かかる段差が足指や踵に直接接触することによる刺激を、下敷き部材を介在させることで緩和できるという効果がある。
【0027】
請求項4の健康履物によれば、請求項1から3のいずれかの健康履物の奏する効果に加え、幅広帯状の固定具を伸張させながら使用者の足弓部の足背面全体的に掛け渡すだけで、足を履物台に強力に緊締できる。このため、固定具として鼻緒を設けずとも足を履物台のほぼ定位置に固定できるので、爪先立ち姿勢をとる場合に鼻緒部分が足指の股部に食い込んで違和感を覚えることがなく、爪先立ち姿勢をより快適にとることができるという効果がある。
【0028】
請求項5の健康履物によれば、請求項1から4のいずれかの健康履物の奏する効果に加え、土踏まず係合部が使用者の土踏まずの凹みに係合することで、足底が履物台に対して不要にズレ動くことを抑制できるという効果がある。特に、請求項4の健康履物に適用する場合には、幅広バンド状の固定具によって足弓部の足背面が押圧されることで、足の土踏まず部分がより一層緊密に土踏まず係合部と係合されるので、履物台に対して足の固定位置がズレ動きにくくなるという効果がある。
【0029】
請求項6の健康履物によれば、請求項1から5のいずれかの健康履物の奏する効果に加え、使用者の足の主要な荷重点である母趾球、小趾球、及び、踵が滑り止め具と当接することで、かかる主要荷重点が履物台上で滑ることを防止し、履物台上にある足底の固定位置が不要にズレ動くことを抑制できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施例である健康履物1の平面図であり、図1(b)は、健康履物1を横幅方向から矢視した側面図である。なお、図1中に示す2点鎖線は、履物台2の台表面2aに載置される使用者の足を表した仮想線である。
【0031】
なお、本明細書において、足の足底(面)とは、足裏の面をいい、足弓部とは、縦足弓及び横足弓で構成される立体アーチ構造の部位をいい、土踏まず(部分)とは、概ね足弓部のうち内側縦足弓により形成される立体アーチ構造における足底側の凹みをいい、足弓部の足背面とは、足弓部の立体アーチ構造の凸面側をいい、足弓部の足背面のほぼ全体とは、概ね足の甲における5本の足指の付け根から足首までの範囲に相当する部位をいう。
【0032】
健康履物1は、その使用者に踵立ち姿勢及び爪先立ち姿勢をとらせることで下肢部後側のストレッチや筋力強化を促すことができるものである。この健康履物1は、主に、使用者の足底が載置される履物台2と、その履物台2を床面(地面を含む。)上で支持する支持脚3と、使用者の足を固定する固定ベルト4とを備えており、この固定ベルト4によって使用者の足が履物台2に装着固定されて使用されるものである。
【0033】
図1(a)に示すように、履物台2は、足先側から踵側に向けて横幅が漸減する平面視略逆台形状に形成されており、その上面に足底が載置される台表面2aが形成されている。この履物台2の台表面2aは、その縦幅が足底の趾球から少なくとも踵前端部まであって、その横幅が足幅程度又はそれ以上とされている。このため、履物台2が足底に装着されると、使用者の足指及び踵後端部が縦方向前端及び後端から突出した状態となる。
【0034】
また、履物台2の台表面2aには、足底の土踏まずに対応する部位に、土踏まず係合部5が一体的に設けられている。この土踏まず係合部5は、足底の土踏まずの凹みに適合するように台表面2aから隆起されており(図1(b)参照)、足底の土踏まず部分と係合可能に形成されている。この土踏まず係合部5が使用者の土踏まず部分と係合することで、使用者の足が台表面2a上で位置ズレすることが防止される。
【0035】
なお、履物台2の台表面2aにおける土踏まず係合部5を除く部分は、足底面の滑り止めを図るために柔軟性のある素材で凹凸面状に形成するようにしても良い。また、履物台2と土踏まず係合部5とを一体成形するようにしても良い。
【0036】
固定ベルト4は、長手方向へ弾性的に伸縮可能な幅広帯状のゴムバンドやゴム織物バンドで形成されており、履物台2の縦方向中程に係止されている。この固定ベルト4は、履物台2の横方向一方側から他方側にかけて台表面2aの上方をアーチ状に架け渡されている(図3(a)参照)。
【0037】
この固定ベルト4によれば、履物台2に足底が載置される場合に、その足弓部の足背面のほぼ全体に跨るように、足幅方向に引き伸ばされて掛け渡され、この伸張に伴う弾性復元力によって足弓部の足底側部分が履物台2に向かって押し付けられるように、足弓部のほぼ全体が履物台2に緊締される(図5及び図6参照)。
【0038】
しかも、固定ベルト4は、ゴムバンドやゴム織物バンドなどの弾性部材であるので、後述する緊締構造(図3(a)参照)を用いて、かかる固定ベルト4自体の足弓部に掛け渡されるアーチ状部分の長さを小さく(又は、大きく)することで、かかる固定ベルト4の弾性的な伸張量を大きく(又は、小さく)して、足を履物台2に固定するための緊締力を強める(又は、弱める)こともできる。
【0039】
図1(b)に示すように、履物台2の側面には、履物台2の縦方向に細長い側面視略矩形状のベルト孔6が形成されている。このベルト孔6は、固定ベルト4を遊挿させることで、かかる固定ベルト4を履物台2に係止するためのものであり、履物台2の横幅方向(図1(b)の紙面に対する垂直方向)に貫通形成されている(図3(a)参照)。
【0040】
また、履物台2の台表面2aの裏側には台裏部が設けられている。この履物台2の台裏部は、台表面2aよりも縦幅が短くて台裏部の縦方向中程に位置する台裏面2bと、その台裏面2b及び台表面2aの縦方向前端部間に斜設される斜面である前方斜部2cと、その前方斜部2cに対して台表面2a及び台裏面2bの縦方向後端部間に斜設される斜面である後方斜部2dとから成っている。そして、これらの台表面2a、台裏面2b、前方斜部2c及び後方斜部2dによって、履物台2は、横方向視略逆台形状を成している。
【0041】
支持脚3は、履物台2の台裏面2bから下方へ向けて所定高さで突出形成されており、履物台2の横幅方向全体に連続した略畝状に形成されている(図3(b)参照)。この支持脚3は、その外形面3aが側面視(横方向視)略円弧状に形成されており、かかる外形面3aが床面に接触することで摩擦力による滑り止め機能を発揮するものである。具体的に、支持脚3は、履物台2に加わる荷重によって弾性的に圧縮変形して床面に密着される弾性材料、例えば、弾性ゴムなどで形成される。
【0042】
ここで、履物台2の各部位と支持脚3との形態上の相互関係について説明する。まず、履物台2の前方斜部2cは、履物台2の縦方向前端部から支持脚3の突出部分へ向けて斜設されており、履物台2の後方斜部2dは、履物台2の縦方向後端部から支持脚3の突出部分へ向けて斜設されている。このため、履物台2を側面視した場合、前方斜部2c及び後方斜部2dは支持脚3の両側に略逆ハの字状を成して設けられている。
【0043】
そして、履物台2を側面視(横方向視)した場合に、前方斜部2cおよび後方斜部2dの各々の傾斜面に沿って延びる延長線(図中の1点鎖線L,L’)を仮想し、その延長線同士の交差点(図中のP点)を求めたとき、支持脚3の外形面3aは、この交差点の周囲から略円弧状に湾出するような形態に形成されている。なぜなら、このように支持脚3の外形面3aを形成することで、履物台2がシーソーのように揺動する姿勢にあるときのみならず、前傾姿勢および後傾姿勢の状態にあっても、支持脚3の外形面3aを床面と接触できるようになるからである(図2参照)。
【0044】
図2(a)は、履物台2が前傾姿勢のときの健康履物1の側面図であり、図2(b)は、履物台2が後傾姿勢のときの健康履物1の側面図である。この図2(a)及び図2(b)に示すように、履物台2を前傾姿勢又は後傾姿勢にして前方斜部2c又は後方斜部2dを真下に向けたとき、これらの各斜部2c,2dの面よりも、支持脚3の外形面3aは下側に湾出される。
【0045】
このため、履物台2が前傾姿勢となって前方斜部2cが床面に当接される場合や、履物台2が後傾姿勢となって後方斜部2dが床面に当接される場合には、支持脚3の外形面3aも一緒に床面に当接される状態となる。そして、このとき、支持脚3に対して使用者の体重など下向きの荷重が加わると、支持脚3が弾性的に圧縮変形されて床面と圧接されて、支持脚3の外形面3aと床面との間に発生する摩擦力によって滑り止めの機能が発揮されるのである。
【0046】
また、履物台2は、台表面2aと前方斜部2cとが成す角度αを、台表面2aと後方斜部2dとが成す角度βよりも大きくすることが好適である。つまり、履物台2の台表面2aにあっては、履物台2が前傾姿勢となって前方斜部2cが床面に当接されるときの前傾角度の方が、履物台2が後傾姿勢となって後方斜部2dが床面に当接されるときの後傾角度よりも大きくなるのが好ましい。
【0047】
さすれば、履物台2を前傾姿勢にした場合の履物台2の前傾角度を、使用者の重心が自ずと足指先側に掛かり易くなる比較的急な角度としつつ、なおかつ、履物台2を後傾姿勢にした場合の後傾角度のほうを、踵立ち姿勢であっても容易に立つことができる比較的緩やかな角度とできる。よって、履物台2を用いて爪先立ち又は踵立ちのいずれの立ち姿勢をとる場合でも、バランスを崩すことなく安定して身体を支えることができるものとでき、なおかつ、そもそも立ちづらい踵立ち姿勢をとる場合にあっては、下肢後側に過度のストレッチ強度が作用することも防止される。
【0048】
図3(a)は、固定ベルト4による緊締構造を説明するための断面図であり、図3(b)は、健康履物1の底面図である。図3(a)に示すように、ベルト孔6の底面6aは、履物台2の横方向左側面から右側面にかけて下降傾斜されており、このベルト孔6内には、ベルト孔6の底面6aと略平行に傾斜する下面を有したロック板7が挿設されている。このロック板7は、ベルト孔6内で固定ベルト4をロック(係止)するためのものであり、ベルト孔6内に遊挿可能な楔型の板状体に形成されている。
【0049】
また、ロック板7の上面はベルト孔6の天井面6bと略平行に略水平に形成されており、このロック板7の上面とベルト孔6の天井面6bとの間には、ベルト孔6内に遊挿されている固定ベルト4が挟み込まれている。そして、ロック板7の先端(図3(a)の左側端部)及び基端(図3(a)の右側端部)には断面視略円形状のストッパ部7a,7bがそれぞれ形成されている。
【0050】
これらのストッパ部7a,7bは、ロック板7がベルト孔6から抜脱するのを防止する部位であり、ロック板7の先端側のストッパ部7aはベルト孔6の左側端の開口高さよりも外径が大きく、ロック板7の基端側のストッパ部7bはベルト孔6の右側端の開口高さよりも外径が大きくされている。
【0051】
固定ベルト4は、その一端部(以下「固定端」という。)4aがベルト孔6の天井面6bに当着された状態で固定されており、この固定端4aから先がベルト孔6の右側端から外へ引き出され、履物台2の台表面2aの上方にアーチ状に架け渡されて、ベルト孔6の左側端内へ再挿入されている。このベルト孔6の左側端から再挿入された固定ベルト4は、かかる固定ベルト4の固定端4aの下側に重畳される格好で、その固定ベルト4の固定端4aとロック板7の上面との間に通されてベルト孔6の右側端まで延ばされ、その先にある他端部(以下「自由端」という。)4bがベルト孔6の外まで引き出される。
【0052】
このように構成された固定ベルト4は、履物台2に巻き付けられる格好で取り付けられ、ロック板7を介して緊締力を調節可能にロックされている。ここで、固定ベルト4を履物台2に対してロックさせるときは、固定ベルト4の自由端4bをベルト孔6から引き出すように引っ張りながら、ロック板7の基端部をベルト孔6内へ押し込み、固定ベルト4の引き出し方向とは逆方向へロック板7を移動させて、固定ベルト4の自由端4bを放す。すると、ロック板7の上面とベルト孔6の天井面6bとの間に固定ベルト4の重畳部分が挟扼されて、固定ベルト4が履物台2に対してロックされる。
【0053】
一方、固定ベルト4のロック状態を解除するときは、固定ベルト4の自由端4bをベルト孔6から引き出すように引っ張りながら、ロック板7の先端部をベルト孔6内へ押し込み、固定ベルト4の引き出し方向へロック板7を移動させれば、固定ベルト4の履物台2に対するロック状態が解除される。そして、固定ベルト4による緊締力の調節は、上記したロック板7の操作による固定ベルト4のロック又はその解除を通じて、固定ベルト4の自由端4bの引出量を増減させることで行われる。
【0054】
図4は、履物台2の分解状態を示した断面図である。図4に示すように、履物台2は、ベルト孔6を境にして上下に分割して成形された上側部品11と下側部品12とを備えている。上側部品11の下面には雌ネジ穴11aが凹設されており、下側部品12の前方斜部2c及び後方斜部2dには、各雌ネジ穴11aの凹設箇所に対応つけて、通孔と座ぐり穴とが上下に連通した段付き孔12aが貫通形成されている。
【0055】
また、履物台2は、図3(b)に示すように、上記した段付き孔12aと雌ネジ穴11aとの組が合計4箇所に設けられており、各段付き孔12aに挿入されて上側部品11の各雌ネジ穴11aに螺合される止めネジ13によって、上側部品11と下側部品12とが一体的に組み立てられている。また、このように上側部品11と下側部品12とが分離された状態において、固定ベルト4の固定端4aは上側部品11の方に固定され、固定ベルト4の巻き付けは行われ、ベルト孔6へのロック板7の装着は行われる。
【0056】
さらに、下側部品12には、支持脚3が着脱可能に止めネジ14によってネジ止めされている。このため、高さが異なる支持脚3を複数種用意して、この中から使用者の好みに応じて支持脚3を履物台2の下側部品12に取り付けることができる。
【0057】
次に、図5及び図6を参照して、上記のように構成された健康履物1の使用方法について説明する。図5は、健康履物1の使用状態を示す説明図であって、図5(a)は、爪先立ち姿勢をとった状態を示す側面図であり、図5(b)は、踵立ち姿勢をとった状態を示す側面図であり、図5(c)は、通常の立ち姿勢をとった状態を示す側面図である。
【0058】
まず、健康履物1のロック板7を操作して固定ベルト4を緩めてから、使用者の足底が履物台2の台表面2aに載置される。このとき、履物台2の縦方向前端から5本の足指を突出させつつ、履物台2の縦方向後端から少なくとも踵の後端部を突出させるようにして、足底を履物台2の台表面2aに合わせる。そして、足底の土踏まず部分を、履物台2にある土踏まず係合部5に合致させるように係合させる。
【0059】
それから、ロック板7を解除した状態で固定ベルト4の自由端4bを引っ張って、固定ベルト4で足弓部の締め上げるようにしてから、ロック板7が操作されて固定ベルト4が履物台2に対してロックされる。すると、使用者の足弓部の足背面に掛け渡された固定ベルト4によって、使用者の足が履物台2に緊締状態で固定される。
【0060】
このように使用者の両足にそれぞれ健康履物1を装着固定してから、使用者が立ち上がり、支持脚3を支点にして履物台2を前傾姿勢にすれば、前方斜部2cが床面に当接されるとともに、履物台2の縦方向前端から突出される5本の足指が床面に直接当接される。このように、使用者は、自分の5本の足指と、履物台2の前方斜部2cと、支持脚3とによって支えられることで、爪先立ちの姿勢でも安定した格好で床面に立ったり又は歩行もできる。
【0061】
一方、使用者が、支持脚3を支点にして履物台2を後傾姿勢にすれば、後方斜部2dが床面に当接されるとともに、履物台2の縦方向後端から突出される踵が床面に直接当接される。このように、使用者は、自分の踵と、履物台2の後方斜部2dと、支持脚3とによって支えられることで、踵立ちの姿勢でも安定した格好で床面に立ったり又は歩行もできる。
【0062】
また、爪先立ち姿勢と踵立ち姿勢との間の中間的な姿勢、即ち、通常の立ち姿勢を使用者がとれば、履物台2が支持脚3のみで床面上に支持される格好となって、履物台2の縦方向前端及び後端が床面から浮いた状態となる。さすれば、使用者は、足指や踵を床面につけずに、支持脚3のみでバランスをとりながら立ち続けたり又は歩行もできる。
【0063】
図6は、健康履物1の使用状態を示す説明図であって、図6(a)は、踵立ち姿勢でストレッチ強度を強めるときの足位置を示す平面図であり、図6(b)は、踵立ち姿勢でストレッチ強度を弱めるときの足位置を示す平面図である。
【0064】
図6(a)に示すように、健康履物1を装着した足先の向きが平行となる立ち姿勢をとれば、踵立ちの姿勢(図5(b)参照)で下肢部裏側をストレッチするときのストレッチ強度が強められる。一方、図6(b)に示すように、健康履物1を装着した足先の向きが逆ハの字状に開くような立ち姿勢をとったり、これに加えて更に両足の間隔を広げれば、踵立ちの姿勢(図5(b)参照)で下肢部裏側をストレッチするときのストレッチ強度が弱められる。
【0065】
このように、使用者は、立ち姿勢のまま足先の向きを変更するだけで下肢部後側をストレッチする強度を容易に微調節することができ、さらには、片足ずつ交互に体重をかけることによって、片足ずつ交互に踵立ち姿勢によるストレッチを行うこともでき、片足ごとに体重のかけ具合を調節して分散させることによって、片足ごとのストレッチ強度の調節も容易に行われる。
【0066】
次に、図7から図9を参照して、上記実施例の変形例について説明する。なお、以下において説明する各実施例では、その各実施例より先に説明した各実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0067】
第2実施例の健康履物20は、上記した第1実施例の健康履物1に対して、履物台2の主要な荷重点に滑り止めバッドを配設したものである。ここで、図7(a)は、第2実施例の健康履物20に使用される履物台2の平面図であり、図7(b)は、図7(a)に示した履物台2のB−B線における断面図である。
【0068】
図7(a)に示すように、第2実施例の履物台2は、その台表面2aのうちの母趾球の当接部位と小趾球の当接部位と踵の当接部位に、その台表面2aにおける他の部位に比べて足底面に対する摩擦抵抗が大きな滑り止めパッド22がそれぞれ設けられている。図7(b)に示すように、これらの滑り止めパッド22は、履物台2の台表面2aに埋設されており、この台表面2aに対して略面一とされている。なお、滑り止めパッド22の素材は、足底面と密着されて摩擦力が大きな材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコンゴムなどを使用することができる。
【0069】
第3実施例の健康履物30は、上記した第1実施例又は第2実施例の健康履物1,20に対して、履物台2に足底シート31を設けたものである。ここで、図8は、第3実施例の健康履物30を示した説明図であって、図8(a)は、平面図であり、図8(b)は、側面図であり、図8中に示す2点鎖線は、足底シート31に載置される使用者の足を表した仮想線である。
【0070】
図8(a)に示すように、第3実施例の健康履物30は、履物台2の台表面2aに敷設されて足底が載置される足底シート31を備えており、この足底シート31は、使用者の足底面全体程度又はそれ以上の表面積を有した可撓性又は柔軟性のあるシート状体で形成されている。
【0071】
図8(b)に示すように、足底シート31は、その縦方向長さが履物台2の縦方向長さよりも大きく形成されており、履物台2の縦方向前端及び後端からそれぞれ前方及び後方へそれぞれ延出されている。このため、履物台2に使用者の足が装着固定される場合に、足底シート31の縦方向前端部は、履物台2の縦方向前端から突出されて足指下方に配設され、足底シート31の縦方向後端部は、履物台2の縦方向後端から突出される踵部下方に配設される。
【0072】
このため、使用者が履物台2を前傾姿勢にして爪先立ち姿勢をとるときは、履物台2から突出した足指が足底シート31を介して床面に間接的に当接されて、使用者の身体が支えられる。一方、使用者が履物台2を後傾姿勢にして踵立ち姿勢をとるときは、履物台2から突出した踵が足底シート31を介して床面に間接的に当接されて、使用者の身体が支えられる。
【0073】
また、足底シート31は、履物台2の台表面2aに面ファスナーなどの係着具(図示せず)を介して着脱自在に貼着されている。このため、使用者の足サイズに応じてサイズが異なる足底シート31を複数種類用意して適宜変更したり、汚損や破損した足底シート31を別の足底シート31に交換することもできる。
【0074】
さらに、足底シート31には、上記した土踏まず係合部5と、母趾球用、小趾球用および踵部用の滑り止めパッド22とがそれぞれ設けられており、各滑り止めパッド22は足底シート31の表面に対して略面一とされている。しかも、足底シート31は、その表面のうち、足指の指腹部に対応する部位と、足指の付け根部に対応する部位との境界位置に、指先係合部32が形成されている。
【0075】
この指先係合部32は、足指の付け根部にできる凹みに適合するように足底シート31の表面から隆起されており、足指の付け根部の凹みに係合することで、使用者の足が爪先立ち姿勢となったときに位置ズレすることが防止される。
【0076】
第4実施例の健康履物40は、上記した第1実施例から第3実施例の健康履物1,20,30に対して、支持脚3の外形面3aを変更したものである。ここで、図9は、第4実施例の健康履物40の履物台2の裏面図である。図9に示すように、第4実施例の支持脚3は、その支持脚3の外形面3aに、床面と接触することで摩擦力による滑り止め機能を発揮する複数の突起部41が分布して配設されている。このため、複数の突起部41が個別に弾性的に変形して床面に密着でき、滑り止め機能が有効に発揮される。
【0077】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0078】
例えば、本実施例では、固定ベルト4の緊締力を調節可能とするため、ロック板7及びベルト孔6を介して固定ベルト4を履物台2に係止することで、足弓部に架け渡される固定ベルト4のアーチ状部分の長さを調節可能としたが、固定ベルトの係止形態は必ずしもこれに限定されるものではなく、固定ベルトを緊締力調節不能な状態で履物台に係止するようにしても良い。例えば、固定ベルト4と同様な弾性部材からなる固定ベルトを用いて、その固定ベルトの両端部を履物台の横方向両端部の定位置にそれぞれ固定し、その固定ベルトを台表面の上方をアーチ状に架け渡すようにしても良い。
【0079】
さすれば、固定ベルトは、その両端部が履物台2に対して完全に固定されはするが、履物台2に足底が載置される場合に、足弓部の足背面に伸張状態で掛け渡され、その伸張に伴う弾性復元力によって足弓部の足底側部分を履物台2に対して押し付けるので、履物台2に対して足を緊締できる。特に、弾性復元力の大きなゴムバンドやゴム織物バンドを固定ベルトとして使用すれば、足を履物台に緊締するための十分な緊締力が発揮される。
【0080】
また、本実施例では、足底シート31に滑り止めパッド22を略面一状に埋設したが、かかる滑り止めパッド22の形態は必ずしもこれに限定されるものではなく、足底シートの表面から突出するように滑り止めパッドを足底シートの表面に印刷したり貼着しても良い。かかる場合には、足底面との密着性が高く柔軟性も高い素材、例えば、シリコンゴムを使用すれば、滑り止めパッドが接触する足底の箇所に生じる異物感を軽減できる。さらに、第3実施例では、履物台2と足底シート31とを別体に形成したが、これらを一体成形するようにしても良い。
【0081】
また、本実施例では、固定バンドによって履物台に足を固定するものであったが、例えば、足底シートの縦方向前端における第1趾(親指)と第2趾(人差指)との間部分に鼻緒の一端部を固定し、この鼻緒の他端部を固定バンドに架け渡して連結固定するようにしても良い。
【0082】
さすれば、健康履物30の使用時に、足の第1趾及び第2趾間に鼻緒を挟み込む格好で足を装着することで、履物台2に対する足の固定具合および安定性をより一層高めることができる。しかも、かかる鼻緒を介して足底シート31の縦方向前端部と固定ベルト4とが履物台2に対して一体的に連結されて、足底シート31の縦方向前端部分を鼻緒によって吊り上げるような状態となるので、足底シート31の縦方向前端部が履物台2の前方斜部2cの下に巻き込まれることも防止される。
【0083】
なお、以下に本発明の変形例について説明する。
【0084】
本発明の変形例1は、請求項2の健康履物において、前記履物台が、その履物台の台裏部に、前記台表面よりも縦幅が短くて前記台裏部の縦方向中程にあって前記支持脚が形成される台裏面と、その台裏面及び台表面の縦方向前端部間に斜設される前記足先斜部と、その足先斜部に対して前記台表面及び台裏面の縦方向後端部間に斜設される前記踵側斜部とを有して、これらの踵側斜部、足先斜部、台裏面及び台表面によって横方向視略逆台形状に形成されている。この変形例1の健康履物によれば、請求項2の健康履物の作用効果に加え、履物台を横方向視略逆台形状に形成することで、履物台に必要となる各部、即ち、足底が載置される台表面、支持脚の取り付けられる台裏面、爪先立ちを安定化させる足先斜部、及び、踵立ちを安定化させる踵側斜部の全てを、履物台に具備させることができる。
【0085】
本発明の変形例2は、請求項2又は前記変形例1の健康履物において、前記支持脚の外形面が、前記履物台を横方向視して前記足先斜部および踵側斜部の延長線の交差点を仮想したとき、その交差点の周囲から横方向視略円弧状に湾出するように形成されている。この変形例2の健康履物によれば、請求項2又は変形例1の健康履物の作用効果に加え、履物台が前傾姿勢のとき、後傾姿勢のとき、又は、前傾姿勢と後傾姿勢の間で揺動するように姿勢が変化するときのいずれの状態であっても、支持脚の外形面を床面と常に接触させることができ、その結果、支持脚の外形面による滑り止め機能が常時発揮される。
【0086】
本発明の変形例3は、請求項1、請求項2、変形例1又は変形例2のいずれかの健康履物において、前記履物台は、前記支持脚によって前傾姿勢で支持される場合にその履物台の縦方向前端から突出する足指が床面に直接又は間接的に当接可能に形成され、かつ、前記支持脚によって後傾姿勢で支持される場合にその履物台の縦方向後端から突出する踵後端部が床面に直接又は間接的に当接可能に形成されるものである。この変形例3の健康履物によれば、請求項1、請求項2、変形例1又は変形例2のいずれかの健康履物の作用効果に加え、履物台が前傾姿勢のときには、5本の足指が床面に直接的又は間接的に当接されることによって爪先立ちの姿勢が安定的に支えられる。一方、履物台が後傾姿勢のときには、踵が床面に直接的又は間接的に当接されることによって踵立ちの姿勢が安定的に支えられる。
【0087】
本発明の変形例4は、請求項1、請求項2又は変形例1から3のいずれかの健康履物において、前記支持脚は、前記履物台に加わる荷重によって弾性的に圧縮変形して床面に密着される弾性材料で形成されているものである。この変形例4の健康履物によれば、請求項1、請求項2又は変形例1から3のいずれかの健康履物の作用効果に加え、履物台に加わる利用者の体重などによって弾性的に圧縮変形することで支持脚の外形面を床面に密着させて容易に摩擦力が発生されて、滑り止め機能が発揮される。
【0088】
本発明の変形例5は、請求項1、請求項2又は変形例1から3のいずれかの健康履物において、前記支持脚は、その支持脚の外形面に、床面と接触することで摩擦力による滑り止め機能を発揮する複数の突起部が分布して配設されている。この変形例5の健康履物によれば、請求項1、請求項2又は変形例1から3のいずれかの健康履物の作用効果に加え、支持脚の外形面に分散配設される複数の突起部が個別に弾性的に変形して床面に密着することで、滑り止め機能が有効に発揮される。
【0089】
本発明の変形例6は、請求項3の健康履物において、前記下敷き部材は前記履物台の台表面に係着具を介して着脱自在に敷設されるものである。この変形例6の健康履物によれば、請求項3の健康履物の作用効果に加え、足のサイズが異なる下敷き部材を複数種類用意して、使用者の足サイズに応じて下敷き部材を変更することもできる。また、下敷き部材が汚損したり破損した場合には交換もできる。
【0090】
本発明の変形例7は、請求項6の健康履物において、前記滑り止め具は、その滑り止め具の上面が前記履物台の台表面又は前記下敷き部材の表面に対して略面一となるように、その履物台の台表面に埋設されるものである。この変形例7の健康履物によれば、請求項6の健康履物の作用効果に加え、滑り止め具が履物台の台表面や下敷き部材の表面から出っ張って足底に違和感を与えることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】(a)は、本発明の一実施例である健康履物の平面図であり、(b)は、健康履物を横幅方向から矢視した側面図である。
【図2】(a)は、履物台が前傾姿勢のときの健康履物の側面図であり、(b)は、履物台が後傾姿勢のときの健康履物の側面図である。
【図3】(a)は、固定ベルトによる緊締構造を説明するための断面図であり、(b)は、健康履物の底面図である。
【図4】履物台の分解状態を示した断面図である。
【図5】健康履物の使用状態を示す説明図であって、(a)は、爪先立ち姿勢をとった状態を示す側面図であり、(b)は、踵立ち姿勢をとった状態を示す側面図であり、(c)は、通常の立ち姿勢をとった状態を示す側面図である。
【図6】健康履物の使用状態を示す説明図であって、(a)は、踵立ち姿勢でストレッチ強度を強めるときの足位置を示す平面図であり、(b)は、踵立ち姿勢でストレッチ強度を弱めるときの足位置を示す平面図である。
【図7】(a)は、第2実施例の健康履物に使用される履物台の平面図であり、(b)は、(a)に示した履物台のB−B線における断面図である。
【図8】第3実施例の健康履物を示した説明図であって、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図である。
【図9】第4実施例の健康履物の履物台の裏面図である。
【符号の説明】
【0092】
1,20,30,40 健康履物
2 履物台
2a 台表面
2b 台裏面(台表面、台裏部の一部)
2c 前方斜部(足先斜部、台裏部の一部)
2d 後方斜部(踵側斜部、台裏部の一部)
3 支持脚
3a 外形面(支持脚の外形面)
4 固定バンド(固定具)
5 土踏まず係合部
22 滑り止めパッド(滑り止め具)
31 足底シート(下敷き部材)
41 突起部
L,L’ 延長線
P 交差点(延長線の交差点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定具によって足が固定されて使用される健康履物において、
足底の趾球から少なくとも踵前端部までの縦幅があり足幅程度又はそれ以上の横幅がある台表面と、その台表面の裏側に設けられる台裏部とを有して、足指及び踵後端部が縦方向前端及び後端から突出した状態で前記台表面に足底が載置される履物台と、
その履物台の台裏部の縦方向中程から所定高さで突出形成され、その履物台の横方向に向かって所定幅設けられ、外形面が横方向視略円弧状に形成され、その外形面が床面に接触することで摩擦力による滑り止め機能を発揮して、その床面上で前記履物台を支持する支持脚とを備えており、
その支持脚を支点とすることによって、前記履物台を前傾姿勢にして足を爪先立ち姿勢に保てるとともに、前記履物台を後傾姿勢にして足を踵立ち姿勢に保てるものであることを特徴とする健康履物。
【請求項2】
前記履物台は、その履物台の縦方向前端部及び後端部から前記支持脚の突出形成部分へ向けて前記横方向視略逆ハの字状に斜設される足先斜部及び踵側斜部を有し、
当該履物台が前記支持脚によって前傾姿勢で支持される場合に、前記足先斜部が床面に当接されて、その足先斜部と当該履物台の縦方向前端から突出される足指とによって爪先立ち姿勢を維持可能に形成され、
当該履物台が前記支持脚によって後傾姿勢で支持される場合に、前記踵側斜部が床面に当接されて、その踵側斜部と当該履物台の縦方向後端から突出される踵とによって踵立ち姿勢を維持可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載の健康履物。
【請求項3】
前記履物台は、足底面全体程度又はそれ以上の表面積を有した可撓性又は柔軟性のあるシート状体であって、前記履物台の台表面に敷設されるとともに、前記履物台の縦方向前端から突出されて足指下方に配設され、かつ、その履物台の縦方向後端から突出されて踵後端部下方に配設される下敷き部材を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の健康履物。
【請求項4】
前記固定具は、前記履物台に係止されるとともに、その履物台の縦方向中程における横方向一方側から他方側にかけて前記台表面の上方をアーチ状に掛け渡される伸縮可能な幅広帯状のゴムバンド又はゴム織物バンドであって、前記履物台に足底が載置される場合に、足弓部の足背面に伸張状態で掛け渡され、その伸張に伴う弾性復元力によって足弓部の足底側部分を前記履物台に対して押し付け、その履物台に足弓部を緊締するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の健康履物。
【請求項5】
前記履物台は、前記台表面又は前記下敷き部材における足底の土踏まずに対応する部位に、その足底の土踏まずの凹みに適合するように隆起されて、足底の土踏まず部分と係合する土踏まず係合部を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の健康履物。
【請求項6】
前記履物台は、前記台表面又は下敷き部材のうちの母趾球の当接部位と小趾球の当接部位と踵の当接部位に設けられて、その台表面又は下敷き部材における他の部位に比べて足底面に対する摩擦抵抗が大きな滑り止め具を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の健康履物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−220738(P2008−220738A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64965(P2007−64965)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(500537305)
【Fターム(参考)】