説明

偽信号相互相関検出方法

【課題】誤って偽信号相互相関の起こり得ない衛星を衛星選択から除外してしまう、偽信号相互相関による位置とび等の障害を防止又は軽減する。
【解決手段】受信・捕捉している複数の衛星について、ドップラー周波数測定値同士の差(受信周波数差)が所定範囲内か否かの判別を行い(S201)、所定範囲内とされた衛星組合せの受信レベル差である所定値以上か否かを調べる(S205、S206)。それらの条件が成立した場合は、受信レベルの低い衛星は偽信号相互相関による偽像と見なし、以後測位計算の対象から除外する(S208)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに相対移動しながら、同一のキャリア周波数で送信を行う複数の送信源から受信機へと、スペクトラム拡散された信号を送信する無線システムに関するものであり、例えば、複数の測位衛星が互いに相対移動しつつ同一のキャリア周波数で送信を行いスペクトラム拡散された測位信号を受信機へと送信する測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の測位衛星が互いに相対移動しつつ同一のキャリア周波数で送信を行いスペクトラム拡散された測位信号を受信機へと送信する測位システムに関するシステムとしては、地球周回軌道上にあるGPS衛星を送信源とし、いずれか所定個数のGPS衛星を見通せる空間に存する受信機を測位対象としてその位置、速度等の測定を行うGPS(Global Positioning System)がある。
【0003】
本発明は、特に、その種のシステムにて、キャリア周波数同期制御及びコード位相同期制御を通じて送信源例えば測位衛星を無線捕捉する受信機により実行される偽信号相互相関検出方法、送信源選択制限方法及び衛星選択制限方法に関するものである。
【0004】
GPSでは、地球周回軌道上にあるGPS衛星から受信した衛星信号に基づく測位演算等により、GPS受信機が自分の位置、速度等を検出する。GPS受信機にて測位演算を行うには、原理上必要とされる個数以上のGPS衛星を選択し、それらのGPS衛星からの衛星信号を捕捉、追尾し、衛星信号からデータを復調する必要がある。
【0005】
GPS衛星から送信される衛星信号は、その送信時刻、詳細軌道情報、軌道暦情報等を示す50bpsのデータにより変調され、更に衛星毎に定められたスペクトラム拡散符号によりスペクトラム拡散された信号であるため、GPS受信機では、受信した衛星信号を、選択した目的衛星に対応するスペクトラム逆拡散符号によりスペクトラム逆拡散し、その結果得られた信号からデータを復調する。
【0006】
GPS受信機では、選択した各目的衛星に係る復調データや、スペクトラム逆拡散を通じ位相制御情報として得られるコード位相に基づき、測位演算を実行する。
【0007】
しかし、ある目的衛星の捕捉中及び追尾中、上記目的衛星から受信した信号の受信レベルが低く、一方で、他の衛星の受信レベルが大きく、しかも目的衛星の周波数と、上記他の衛星の周波数の差が0Hz又はNkHz(Nは整数)に接近している場合に、受信機は各信号の偽信号相互相関により、上記他の衛星を誤追尾するおそれがある。
【0008】
そこで、特許文献1には、受信機で追尾中の各衛星間の周波数差が所定範囲内か否かの判別を行い、所定範囲内とされた衛星組合せの中に、相関ピーク値が偽信号相互相関によっても得られる低水準を以下の相関を示しているもの及び偽信号相互相関によって得られない高水準の相関を示しているものが共に含まれていた場合、上記最大閾値以下の相関を示す衛星を電源再投入時まで衛星選択の捕捉対象から除外することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−98244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記の特許文献1では、相関ピーク値を上記弱信号の最大閾値、上記強信号の最小閾値で判定し、偽信号相互相関と見なしているために、誤って偽信号相互相関の起こり得ない衛星を衛星選択から除外してしまうおそれがある。
【0011】
異なるGPS信号同士では、最大で自己相関より‐21.1dB低い相互相関が生じる。例えば、GPS信号の最大の受信レベルが−120dBm程度とした場合、偽信号相互相関の最大受信レベルは-141.1dBmとなり、上記低水準と上記高水準は-141.1dBm付近に相当する相関ピーク値となるので、周波数差が上記所定範囲内であり、-141.1dBm付近の相関ピーク値を持つ衛星組合せのうち相関ピーク値の小さい方の弱信号衛星が衛星選択から除外するケースが発生する。
【0012】
しかし、上記衛星組合せの間の受信レベル差は低いため、上記衛星組合せのうち相関ピーク値の大きい強信号衛星による偽信号相互相関は、上記弱信号衛星の相関ピーク値よりも小さく、誤追尾が発生することは無い。
【0013】
また、誤追尾が発生したと見なした衛星を受信機の電源再投入時まで衛星選択の捕捉対象から除外するという処理は、上記弱信号衛星の受信レベルが高くなった際に、捕捉する機会を失うこととなる。
【0014】
この発明は、このような問題を考慮してなされたものであり、受信レベル差は小さい衛星組合せを含まない偽信号相互相関の判定を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を達成するために、本発明に係る偽信号相互相関検出方法は、
互いに相対移動しつつ送信を行う複数の送信源から受信機へとスペクトラム拡散された信号を送信する無線システムにて、キャリア周波数同期制御及びコード位相同期制御を通じて送信源を無線捕捉する受信機により、実行され、
キャリア周波数同期制御を通じて得られる情報に基づきかつ捕捉した送信源毎に受信信号のドップラー周波数を測定し、捕捉した送信源の中から、ドップラー周波数の測定値の差が所定範囲内となる組合せを検出する受信周波数差判別ステップと、
上記組合せに属する送信源の中に、コード位相同期制御で得られた相関ピーク値に基づき受信レベルを測定し、上記組合せの中から、受信レベルの測定値の差が所定範囲内となる組合せが含まれているか調べる受信レベル差判別ステップとを有し、
受信レベル差判別ステップで含まれていることが判明した場合、受信レベルの低い送信源に対するキャリア周波数同期制御、コード位相同期制御は、実は受信レベルの高い送信源のスペクトラム逆拡散符号との相互相関である偽信号相互相関に対応していると判定し、測位演算(位置・速度)の対象から除外することを特徴とすることを特徴とする。
【0016】
本発明に係わる偽信号相互相関検出方法は、
互いに相対移動しつつ同一のキャリア周波数で送信を行う複数の測位衛星から受信機へとスペクトラム拡散された測位信号を送信する測位システムにて、キャリア周波数同期制御及びコード位相同期制御を通じて測位衛星を無線捕捉する受信機により、実行され、
キャリア周波数同期制御を通じて得られる情報に基づきかつ捕捉した測位衛星毎に受信信号のキャリア周波数、ドップラー周波数を測定し、捕捉した測位衛星の中から、ドップラー周波数の測定値の差が所定範囲内となる組合せを検出する受信周波数差判別ステップと、
コード位相同期制御で得られた相関ピーク値に基づき受信レベルを測定し、上記組合せの中から、受信レベルの測定値の差が所定範囲内となる組合せが含まれているか調べる受信レベル差判別ステップとを有し、
受信レベル差判別ステップで含まれていることが判明した場合、受信レベルの低い測位衛星に対するキャリア周波数同期制御、コード位相同期制御は、実は受信レベルの高い測位衛星のスペクトラム逆拡散符号との相互相関である偽信号相互相関に対応していると判定し、測位演算(位置・速度)の対象から除外することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、各衛星の相関ピーク値を偽信号相互相関によっても得られる低水準、偽信号相互相関によっても得られない高水準の閾値と比較するのではなく、衛星間の受信レベル差を比較するステップを有しているため、誤って受信レベル差の小さい組合せを検出する問題を回避できる。
【0018】
また、偽信号相互相関に対応していると判定された衛星を電源再投入時まで衛星選択の捕捉対象から除外するのではなく、測位演算の対象から除外することで、上記受信レベル差又は、上記周波数差が所定範囲を外れた際に、上記衛星が利用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るGPS受信機の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態における弱信号分離のための測位使用禁止衛星設定手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態に関し図面に基づき説明する。
【0021】
全体機能及び動作図1に、本発明の一実施形態に係るGPS受信機の概略機能構成を示す。この図に示す受信機では、衛星信号は、アンテナ101により受信され、周波数変換部102にてダウンコンバートされ、A/D変換部103によりサンプリングされ、相関器104に入力される。
【0022】
相関器104及び信号発生器105は、測位演算に必要な衛星の個数、捕捉・追尾すべき衛星信号に係るスペクトラム拡散符号の1エポック当たりチップ数、更には許容される装置規模・コスト等に応じて、またI、Q各相に対応して、n個設け、パラレルに又はシーケンシャルに動作させる。
【0023】
受信制御部106は、位置・速度演算部112からの情報に応じかつ相関器104の出力に基づき、信号発生器105の動作、特に発生させる局部発振信号の周波数、発生させるスペクトラム逆拡散コード(擬似雑音符号)の種類、発生させる各スペクトラム逆拡散コードのコード位相等を制御する。
【0024】
相関器104、受信制御部106及び信号発生器(図中の「擬似雑音符号及び局部発振信号発生器」)105は、キャリア周波数及びコード位相双方に関し、衛星信号に対する同期ループを構成している。
【0025】
まず、受信制御部106は、位置・速度演算部112が選択した組合せに属する衛星それぞれに対応するスペクトラム逆拡散符号を、信号発生器105により発生させ、そのコード位相を、相関器104の出力たる相関値がピークとなるよう制御する(「捕捉」)。
【0026】
この制御によって衛星信号に対するスペクトラム逆拡散符号のコード位相同期が確立され、従ってその衛星信号がスペクトラム逆拡散された状態では、データ復調部110にてその衛星信号からデータを復調することができる。
【0027】
復調されたデータ例えば送信元衛星の詳細軌道情報や送信時刻に関するデータは、位置・速度演算部112に供給される。受信制御部106は、この状態即ちコード位相同期状態が維持されるよう、逐次得られる相関値に基づき信号発生器105におけるコード位相を制御する(「追尾」)。
【0028】
また、相関器104の入力段以前にある図示しない部材(又は周波数変換部102)において、信号発生器105から供給される局部発振信号により、衛星信号がより低い周波数に変換される。コード位相同期を確立する対象となる衛星信号は、この周波数変換後の衛星信号である。
【0029】
ここに、信号発生器105における局部発振周波数がずれていると、一旦コード位相同期を確立しても時間経過に伴いその同期は容易にはずれるため、上述のコード位相同期ループとしての動作だけでは、衛星信号を追尾することはできない。
【0030】
受信制御部106は、スペクトラム逆拡散符号の1エポックに亘りコード位相をずらして調べたがコード位相同期を確立できない場合等に、信号発生器105における局部発振周波数をわずかに調整する等、相関値に基づく局部発振周波数制御を行って、局部発振周波数を衛星信号のキャリア周波数に対して同期させる(キャリア周波数同期ループ)。
【0031】
受信制御部106は、相関器104から得られる相関値の衛星毎のピーク即ち相関ピーク値を、相関値記憶部107により記憶させる。
【0032】
更に、衛星信号に対するキャリア周波数同期及びコード位相同期が共に確立されている状態、即ち相関器104を介してスペクトラム逆拡散された衛星信号が得られる状態では、受信制御部106は、相関器104にてスペクトラム逆拡散された衛星信号をデータ復調部110に供給し詳細軌道情報等のデータを復調させる一方で、同期制御を通じて得られる情報のうち信号発生器105におけるコード位相を擬似距離測定部109及び擬似速度測定部108に与え、信号発生器105における局部発振信号周波数をドップラー周波数測定部111に与える。
【0033】
擬似距離測定部109は、コード位相に基づき衛星信号の送信元に対する擬似距離、即ちコード擬似距離を求める。擬似速度測定部108は、コード位相の時間変化を検出して衛星信号の送信元に対する受信機の移動速度、即ち擬似速度を求める。
【0034】
ドップラー周波数測定部111は、局部発振周波数の変化から、衛星信号キャリア周波数のドップラー変移、ひいては送信元に対する受信機の移動速度即ちドップラー速度を求める。
【0035】
位置・速度演算部112は、データ復調部110により復調されたデータに加え、擬似距離測定部109により求められたコード擬似距離等を用いて、受信機の位置を演算する。
【0036】
また、位置・速度演算部112は、擬似速度測定部108により求められた擬似速度や、ドップラー周波数測定部111における測定結果に30基づき、地球表面又は中心に対する受信機の移動速度を演算する。
【0037】
位置・速度演算部112は、図示しない表示装置、音声出力装置、通信回線等を介して、演算結果等を使用者に知らせる。位置・速度演算部112は、更に、データ復調部110によって復調された情報、過去に取得・演算し蓄積しておいた情報等に基づき、測位に使用する衛星の組合せを選択して、選択したGPS衛星からの衛星信号を受信(捕捉・追尾)するよう受信制御部106に指示する。
【0038】
また、位置・速度演算部112は、ドップラー周波数測定部111の出力についての判定、その結果に応じた相関値記憶部107からの相関値読み出し、計算した受信レベルに基づく測位使用禁止衛星設定等を、図2に示す手順に従い実行する。
【0039】
本発明が着眼した点は、偽信号相互相関により生じた相関ピーク値が比較的高い値をとるときは、その偽信号相互相関を発生させた受信信号はたいてい高レベルであり、従って、別途、その受信信号の送信元衛星に対応した正しいスペクトラム逆拡散符号によりその受信信号を正しく捕捉できている可能性が高い、という点である。
【0040】
受信信号を一方では正しく(即ちその送信元衛星に対応したスペクトラム逆拡散符号を用いて)捕捉しつつ他方では誤って(即ちその送信元衛星以外の衛星に対応したスペクトラム逆拡散符号を用いて)捕捉している、というこの状況下では、相関値記憶部107による記憶内容、擬似速度測定部108、擬似距離測定部109及びドップラー周波数測定部111における測定結果、並びにデータ復調部110における復調結果が、その衛星について2通り以上存在しているはずである。
【0041】
但し、それら2通り以上の記憶内容、測定結果及び復調結果のうち、正しいもの即ちその送信元衛星に対応付けられているものは高々1通りであり、残りは誤ってその送信元衛星以外の衛星に(即ち同期ループで使用したスペクトラム逆拡散符号に対応する衛星に)対応付けられている。
【0042】
この状況下で得られた記憶内容、測定結果及び復調結果に基づき測位演算を実行し、またそのための衛星選択を行ったとすると、強信号による正しい情報と、偽信号相互相関による誤った情報とを混用してそれらの処理を行うことになるため、正確でない測位結果や、測位結果の急変(いわゆる“位置とび”)が生じるであろう。
【0043】
実質的に周波数差が0Hz又はNkHz(Nは整数)である組合せがあるのなら、その組合せに係るドップラー周波数測定値は、実は同じ衛星からの受信信号キャリアに現れた周波数変移分である可能性がある。
【0044】
GPSにおける1.57542GHzのキャリアなら、例えば、ドップラー周波数測定値の差の絶対値が20Hz以下、又はNkHz±20Hz以内であれば、実質的に同一衛星からの受信信号キャリアの可能性が高い。無論、実質的な判定基準は、本発明をどのようなキャリア、システム、受信機に適用するかにより、適宜設定すべきものであるため、図2では、20Hz、NkHz±20Hzに相当する値はTHR1Hz、NkHz±THR2Hzと表示する。
【0045】
また、その差が判定基準以内となるようなドップラー周波数測定値の組合せがドップラー周波数測定部111の出力から得られたにしても、単に偶然にドップラー周波数の差が0Hz又はNkHzに近接しているに過ぎないのかもしれない。
【0046】
そこで、本実施形態では、ドップラー周波数測定値の差に関する判別によってかかるドップラー周波数測定値の組合せが発見された場合、その組合せに対応する受信レベルの組合せに関して判別を行うことによって、偽信号相互相関か否かを調べる。
【0047】
即ち、それら組合せの受信レベルの差が自己相関と相互相関の差にほぼ等しい値、もしくはそれ以上であるなら、当該強信号時相関値が得られたスペクトラム逆拡散符号に対応する衛星が、当該弱信号時相関値程度の相関ピーク値をもたらした偽信号相互相関の原因である、と認めることができる。
【0048】
言い換えれば、強信号により真の衛星を捕捉している一方で、その衛星からの強い受信信号による偽信号相互相関によって、あたかも他の衛星を捕捉したかのような結果となっている、と認めることができる。
【0049】
本実施形態では、ドップラー周波数測定値差判別に加え受信レベル測定値差判別によって、偽信号相互相関現象の発生を検出するだけでなく、どの衛星が真の衛星でどの衛星がその真の衛星の偽像であるのかをも、検出している。
【0050】
図2に示す手順は位置・速度演算部112により実行される処理のうち、以上述べた着眼点及び原理に基づく処理であり、所定頻度で実行される。
【0051】
この図2に示す測位使用禁止衛星設定手順においては、まず、位置・速度演算部112は、それぞれ別個の衛星についての測定値とされている複数通りのドップラー周波数と測定値同士の差の絶対値を算出する。ドップラー周波数はドップラー周波数測定部111から位置・速度演算部112に入力する。(S201)。
【0052】
位置・速度演算部112は、入力したドップラー周波数測定値の中にその差がTHR1Hz以下となるか、NkHz±THR2Hz以内であるか、もしくはその他の値であるかを判別する(S202)。
【0053】
その結果、その他の値として判別した場合、どの衛星も偽像ではなく真の衛星であって偽信号相互相関は生じていない、と見なせるため、位置・速度演算部112の動作は図示しない手順に移行する。
【0054】
逆に、いずれか最少2通りのドップラー周波数測定値の組合せに関しそれらの間の差の絶対値がTHR1Hz以下又はNkHz±THR2Hz以内であることが判明した場合、それらのドップラー周波数測定値のうちいずれかが偽信号相互相関によるものである可能性があるため、位置・速度演算部112の動作は受信レベル差の比較判定に移行する。
【0055】
図2に示す手順においては、位置・速度演算部112は、少なくとも、その差の絶対値がTHR1Hz以下又はNkHz±THR2Hz以内となったドップラー周波数測定値それぞれに対応する衛星組合せについて、その相関ピーク値を相関値記憶部107から読み出し、受信レベルを算出し、衛星間の受信レベル差の絶対値を計算する(S203、S204)。受信レベル差の絶対値をTHR3、THR4と比較する(S205、S206)。
【0056】
ステップS205、S206にて受信レベルの絶対値がTHR3、THR4以下であることが判明したときは、いずれの上記衛星組合せのうちいずれも偽信号相互相関ではないと見なし、位置・速度演算部112の動作は図2に示した手順を脱する。
【0057】
また、ステップS205、S206にて、“受信レベル差の絶対値 > THR3 or THR4”が成り立つことが判明したときは、上記衛星組合せの、強信号衛星の相関ピーク値が強信号時相関によるいわば正しい相関ピーク値であること、またその相関ピーク値をもたらした受信信号が偽信号相互相関を引き起こしたことを、認めて差し支えない。
【0058】
本実施形態では、偽信号相互相関の影響による前述の位置とび等を防ぐため、かかる条件が成立した場合は(S205、S206)、位置・速度演算部112は、上記衛星組合せのうち受信レベルの低い衛星を位置・速度演算の使用から除外する(S208)。
【0059】
偽位置自己相関値と弱信号時相関値については、1エポックに属する全てのチップ(C/Aコードでは1023個)について相関値を検出することによって、即ち、1023通りのコード位相全てについて相関値を調べその中で最大の相関値を示すコード位相であってその相関値が十分大きいものを選ぶことによって、両者を識別することができる。この処理は、受信制御部106により実行することができる。
【0060】
本発明はC/Aコードに限定されるものではなく、原理的にはPコードにも適用できる。本発明は、各種の補強又は修正が施されたGPS受信機、例えばDGPS機能を有するGPS受信機等にも、適用できる。
【0061】
更に、GPS受信機に限らず、複数種類のスペクトラム拡散コードを選択的に使用してスペクトラム拡散された信号を受信する受信機、特にその受信レベルが非常に低くなることがある受信機一般に、本発明を適用できる。
【0062】
本発明は、1エポック当たりチップ数が多いもの、偽信号相互相関値が比較的大きくなりやすいもの、送受信機間が非同期のもの等に対して適用した場合に、その効果が顕著になる。
【符号の説明】
【0063】
101…アンテナ、 102…周波数変換部、
103…A/D変換部、 104…n個の相関器、
105…n個の擬似雑音符号及び局部発振信号発生器、 106…受信制御部、
107…相関値記憶部、 108…擬似速度測定部、
109…擬似距離測定部、 110…データ復調、
111…ドップラー周波数測定部、 112…位置・速度演算部。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対移動し、送信を行う複数の送信源から受信機へとスペクトラム拡散された信号を送信する無線システムにて、キャリア周波数同期制御及びコード位相同期制御を通じて送信源を無線捕捉する受信 機により、実行され、
キャリア周波数同期制御を通じて得られる情報に基づきかつ捕捉した送信源毎に受信信号のキャリア周波数、ドップラー周波数を測定し、捕捉した送信源の中から、ドップラー周波数の測定値の差が所定範囲内となる組合せを検出する受信周波数差判別ステップと、
コード位相同期制御で得られた相関ピーク値に基づき受信レベルを測定し、上記組合せの中から、受信レベルの測定値の差が所定範囲内となる組合せが含まれているか調べる受信レベル差判別ステップとを有し、
受信レベル差判別ステップで含まれていることが判明した場合、受信レベルの低い送信源に対するキャリア周波数同期制御、コード位相同期制御は、実は受信レベルの高い送信源のスペクトラム逆拡散符号との相互相関である偽信号相互相関に対応していると判定する偽信号相互相関検出方法。
【請求項2】
互いに相対移動しつつ同一のキャリア周波数で送信を行う複数の測位衛星から受信機へとスペクトラム拡散された測位信号を送信する測位システムにて、キャリア周波数同期制御及びコード位相同期制御を通じて測位衛星を無線捕捉する受信機により、実行され、
キャリア周波数同期制御を通じて得られる情報に基づきかつ捕捉した測位衛星毎に受信信号のキャリア周波数、ドップラー周波数を測定し、捕捉した測位衛星の中から、ドップラー周波数の測定値の差が所定範囲内となる組合せを検出する受信周波数差判別ステップと、
コード位相同期制御で得られた相関ピーク値に基づき受信レベルを測定し、上記組合せの中から、受信レベルの測定値の差が所定範囲内となる組合せが含まれているか調べる受信レベル差判別ステップとを有し、
受信レベル差判別ステップで含まれていることが判明した場合、受信レベルの低い測位衛星に対するキャリア周波数同期制御、コード位相同期制御は、実は受信レベルの高い測位衛星のスペクトラム逆拡散符号との相互相関である偽信号相互相関に対応していると判定する偽信号相互相関検出方法。
【請求項3】
請求項1又は2の偽信号相互相関検出方法において、ドップラー周波数ではなくキャリア周波数を用いた受信周波数差判別ステップを有する偽信号相互相関検出方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載の偽信号相互相関検出方法において、受信レベルではなく相関ピーク値を用いた受信レベル差判別ステップを有する偽信号相互相関検出方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか記載の偽信号相互相関検出方法を実行するステップと、偽信号相互相関をもたらされたスペクトラム逆拡散符号に対応する送信源又は測位衛星を、以後の捕捉対象から除外する選択除外ステップとを、有することを特徴とする送信源選択制限方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか記載の偽信号相互相関検出方法を実行するステップと、偽信号相互相関をもたらされたスペクトラム逆拡散符号に対応する送信源又は測位衛星を、以後の測位演算の対象から除外する測位演算使用除外ステップとを、有することを特徴とする測位演算使用制限方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−196807(P2011−196807A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63481(P2010−63481)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】