説明

傾斜ステージ

【課題】精度向上を図ることができる傾斜ステージを提供するものである。
【解決手段】傾斜ステージAは、ベース1と、このベース1に対向して設けられたプレート2と、このプレート2とベース1が近づくように付勢する付勢手段3、ベース1のプレート2に面する側に設けられた円弧状に形成された溝4と、プレート2の溝4に対向する部位に設けられ、溝4に当接して移動する、離間して設けられた少なくとも2個の球面状の球面体5と、プレート2を円弧状に形成された溝4に沿って移動させる移動手段6とを備えているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜ステージに係り、特に、ステージの精度向上を図ることができる傾斜ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜ステージとしては、たとえば、ベースと、このベースに対向して設けられ、回動するプレートとを有し、回動する機構として円弧状に形成された溝にアリ溝機構を用いている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した傾斜ステージにあっては、アリ溝機構のため、溝と該溝内を摺動する摺動部材との間には隙間が必要で、該隙間によりガタが生じ、精度が良好でないという問題点が生じた。
【0004】
本発明は、上記の問題点を除去するようにした傾斜ステージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の傾斜ステージは、ベースと、このベースに対向して設けられたプレートと、このプレートと前記ベースが近づくように付勢する付勢手段と、前記ベースの前記プレートに面する側に設けられた円弧状に形成された溝と、前記プレートの前記溝に対向する部位に設けられ、前記溝に当接して移動する、離間して設けられた少なくとも2個の球面状の球面体と、前記プレートを前記円弧状に形成された溝に沿って移動させる移動手段とを備えているものである。
【0006】
また、請求項2記載の傾斜ステージは、請求項1記載の傾斜ステージにおいて、球移動手段は、プレートの回転中心の延長線上であって、前記プレートの端面より突出する突出部材と、この突出部材に当接して移動させ、ベースに取り付けられた移動部材とを備え、前記ベースは平面視略四角形で、該平面視四角形の対向する辺の内の一方の辺に片寄って円弧状に形成された溝が位置し、前記溝の円弧状の凹部が前記ベースの一方の辺に、前記溝の円弧状の凸部が前記ベースの一方の辺に対向する辺に、それぞれ対向するように配置されているものである。
【0007】
また、請求項3記載の傾斜ステージは、請求項2記載の傾斜ステージにおいて、プレートは平面視略四角形で、突出部材が突出する辺は、第1の辺であり、前記プレートのベースに面する側に設けられ、球面体が取り付けられた部位と前記第1の辺との間であって、前記ベースに当接する球面状の補助球面体とを備えているものである。
【0008】
また、請求項4記載の傾斜ステージは、請求項1記載の傾斜ステージにおいて、溝の円弧状に沿う方向を横断する断面形状がV形状である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の傾斜ステージによれば、プレートの溝に対向する部位に離間して設けられた少なくとも2個の球面体が溝に当接して移動するため、従来のようなアリ溝のガイド機構に比較し、ガタが少なく、精度良好な傾斜ステージを得ることができる。
【0010】
また、請求項2記載の傾斜ステージによれば、上述した請求項1記載の発明の効果に加え、ベースは平面視四角形で、該平面視四角形の対向する辺の内の一方の辺に片寄って円弧状に形成された溝が位置しているため、円弧状に形成された溝の回転中心をプレートから離れた位置に取ることができ、プレートの回転角度をより大きく取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の傾斜ステージの一実施例を図面を参照して説明する。
図1乃至図7において、傾斜ステージAは、ベース1と、このベース1に対向して設けられたプレート2とから概略的に構成されている。
また、プレート2とベース1が近づくように付勢する付勢手段、例えば、弾性部材3によって付勢されている。
弾性部材3は、例えば、弾性部材3(より具体的には、バネ)の一端をプレート2の孔2aに設けた雄ねじ2bに、弾性部材3(より具体的には、バネ)の他端をベース1に設けた支持部材1aに、それぞれ取り付けるようにしている。
なお、プレート2の上面には、電子顕微鏡、半導体製造装置、半導体検査装置等の試料(図示せず)、精密機械の他の部材(図示せず)が載置されるようになっている。
【0012】
図6は、図1の傾斜ステージAのプレート2をベース1から離脱させて分解して示す概略的平面図で、4は、ベース1のプレート2に面する側に設けられた円弧状に形成された溝で、このプレート2の溝4に対向する部位には、少なくとも2個の球面状の球面体5、5が設けられ、球面体5、5は、溝4に当接して移動すると共に、離間して設けられている。
なお、溝4は、図4に示すように、溝4の円弧状に沿う方向を横断する断面形状はV形状となっている。
【0013】
また、図1に示す6は、プレート2を円弧状に形成された溝4に沿って移動させる移動手段である。
この移動手段6は、プレート2の回転中心O[図7(a)(b)参照]の延長線上であって、プレート2の端面より突出する突出部材61と、この突出部材61に当接して移動させ、ベース1に取り付けられた移動部材62とを備えている。
【0014】
ベース1は、図6に示すように、平面視略四角形で、円弧状に形成された溝4が該平面視略四角形の対向する辺1Aの内の一方の辺1Bに片寄って位置し、該溝4の円弧状の凹部(内側)4Aが一方の辺1Aに、溝4の円弧状の凸部(外側)4Bが一方の辺1Aに対向する辺1Bに、それぞれ対向するように配置されている。
また、プレート2は平面視略四角形で、突出部材61が突出する辺は、第1の辺2Bとなっている。
また、図5に示す7は球面状の補助球面体で、補助球面体7は、プレート2のベース1に面する側に設けられ、平面視的に見て球面体5が取り付けられた部位と第1の辺2Bとの間であって、ベース1に当接するようになっている。
その結果、プレート2は、2個の球面体5、5、補助球面体7の3点でベース1に支持されることとなる。
【0015】
なお、上述した移動部材62は、例えば、突出部材61を介して、一方側にマイクロメータM、他方側にマイクロメータMで移動した位置を保持する保持部材Hを設けている。
マイクロメータMのシンブルM1を正逆に回転させてスピンドルM2を進退させ、スピンドルM2で進退した突出部材61を保持部材Hで保持するようにしている。なお、シンブルM1の正逆の回転は、図示しないモータでも、場合により、手動でも良い。
保持部材Hは、図2(b)に示すように、内在させたバネH1で保持部材Hの先端を突出部材61側へ付勢させて、突出部材61によるプレート2の回動状態を安定させるようにしている。 なお、保持部材Hは、図示のものに限らず、例えば、突出部材61とベース1とを図示しない弾性部材(例えば、バネ)により接続して、突出部材61をスピンドルM2の先端へ押し付けるように作用するものであれば良い。
【0016】
従って、図7(a)に示すように、シンブルM1を時計回りに回転すれば、スピンドルM2の先端は、突出部材61に向かって進み、突出部材61を時計回りに回動させると、それに伴い2個の球面体5、5も円弧状に形成された溝4に沿って移動し、プレート2は、回転中心Oを中心としてθ1回転させる。
逆に、図7(b)に示すように、シンブルM1を反時計回りに回転すれば、スピンドルM2の先端は、突出部材61から遠ざかるように後退し、突出部材61を反時計回りに回動させると、それに伴い2個の球面体5、5も円弧状に形成された溝4に沿って移動し、プレート2は、回転中心Oを中心としてθ2回転させる。
【0017】
この実施例の傾斜ステージAによれば、プレート1の溝4に対向する部位に離間して設けられた少なくとも2個の球面体5、5が溝4に当接して移動するため、従来のようなアリ溝のガイド機構に比較し、ガタが少なく、精度良好な傾斜ステージを得ることができ、また、ベース1は平面視四角形で、該平面視四角形の対向する辺の内の一方の辺1Aに片寄って円弧状に形成された溝4が位置しているため、円弧状に形成された溝4の回転中心Oをプレート2から離れた位置に取ることができ、プレート2の回転角度をより大きく取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施例の傾斜ステージの概略的平面図である。
【図2】図2(a)は、図1の概略的側面図であり、図2(b)は、図2(a)の一部を断面して示す概略的一部側断面図である。
【図3】図3は、図1の1−1線による概略的断面図である。
【図4】図4は、図1の2−2線による概略的断面図である。
【図5】図5は、図1の3−3線による概略的断面図である。
【図6】図6は、図1の傾斜ステージを分解して示す概略的平面図である。
【図7】図7(a)(b)は、図1の傾斜ステージの動作を説明するための概略的平面図である。
【符号の説明】
【0019】
A 傾斜ステージ
1 ベース
2 プレート
3 付勢手段
4 溝
5 球面体
6 移動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
このベースに対向して設けられたプレートと、
このプレートと前記ベースが近づくように付勢する付勢手段と、
前記ベースの前記プレートに面する側に設けられた円弧状に形成された溝と、
前記プレートの前記溝に対向する部位に設けられ、前記溝に当接して移動する、離間して設けられた少なくとも2個の球面状の球面体と、
前記プレートを前記円弧状に形成された溝に沿って移動させる移動手段と
を備えていることを特徴とする傾斜ステージ。
【請求項2】
移動手段は、
プレートの回転中心の延長線上であって、前記プレートの端面より突出する突出部材と、
この突出部材に当接して移動させ、ベースに取り付けられた移動部材とを備え、
前記ベースは平面視略四角形で、該平面視四角形の対向する辺の内の一方の辺に片寄って円弧状に形成された溝が位置し、
前記溝の円弧状の凹部が前記ベースの一方の辺に、前記溝の円弧状の凸部が前記ベースの一方の辺に対向する辺に、それぞれ対向するように配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の傾斜ステージ。
【請求項3】
プレートは平面視略四角形で、突出部材が突出する辺は、第1の辺であり、
前記プレートのベースに面する側に設けられ、球面体が取り付けられた部位と前記第1の辺との間であって、前記ベースに当接する球面状の補助球面体とを備えていることを特徴とする請求項2記載の傾斜ステージ。
【請求項4】
溝の円弧状に沿う方向を横断する断面形状がV形状であることを特徴とする請求項1記載の傾斜ステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−46941(P2007−46941A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229344(P2005−229344)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000183819)駿河精機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】