傾斜センサの出力補正装置
【課題】車両に搭載されて内燃機関の回転を変速する自動変速機の制御に使用される傾斜センサの出力が降坂方向にずれたときにセンサ出力を精度良く補正するようにした傾斜センサの出力補正装置を提供する。
【解決手段】内燃機関が始動されたときと停止されたときの傾斜センサの出力の差分(IGON補正値)が降坂方向にずれているか否か判断し、降坂側にずれていると判断されるとき、傾斜センサの補正が必要と判断すると共に、差分に基づき、車両が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される車両が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値を補正し(S100からS112)、補正された加速度学習値によって傾斜センサ78の出力を補正する(S114)。
【解決手段】内燃機関が始動されたときと停止されたときの傾斜センサの出力の差分(IGON補正値)が降坂方向にずれているか否か判断し、降坂側にずれていると判断されるとき、傾斜センサの補正が必要と判断すると共に、差分に基づき、車両が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される車両が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値を補正し(S100からS112)、補正された加速度学習値によって傾斜センサ78の出力を補正する(S114)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は傾斜センサの出力補正装置に関し、より詳しくは車両に搭載されて内燃機関の回転を変速する自動変速機の制御に使用される傾斜センサの出力を補正する傾斜センサの出力補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の傾斜センサの出力補正装置の従来技術としては、特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術にあっては、傾斜センサの出力に基づき複数の変速パターンのいずれか1つを選択して変速する自動変速機の制御系において、傾斜センサの検出角に対し、車両走行時の慣性力に基づくずれを除いて実傾斜角を求め、その実傾斜角で変速パターンを選択自在に構成している。
【特許文献1】特開昭63−289360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来技術にあっては、傾斜センサが振子(重錘)を利用しているために慣性力の影響を受けることから、車速から加速度を算出してセンサ出力を補正するように構成している。
【0004】
慣性力以外にも傾斜センサの出力に影響する要因は種々あり、傾斜センサのゼロ点は、周囲の温度の変化による検出素子の抵抗値の変化や乗員の数が変化したことによる車重の変化によっても影響を受け、その結果、ゼロ点が例えば降坂方向にずれ、平坦路や降坂路でニュートラル状態を形成するニュートラル制御(ノンクリープ制御)などを実行するときに支障を来たす場合がある。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消し、車両に搭載されて内燃機関の回転を変速する自動変速機の制御に使用される傾斜センサの出力が降坂方向にずれたときにセンサ出力を精度良く補正するようにした傾斜センサの出力補正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、車両に搭載されて内燃機関の回転を変速する自動変速機の制御に使用される傾斜センサの出力を補正する装置において、前記内燃機関が始動されたときと停止されたときの前記傾斜センサの出力の差分が降坂方向にずれているか否か判断する差分方向判断手段と、前記差分が降坂側にずれていると判断されるとき、前記傾斜センサの補正が必要と判断する補正要否判断手段と、前記補正が必要と判断されるとき、前記差分に基づき、前記車両が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される前記車両が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値を補正する加速度学習値補正手段と、前記補正された加速度学習値によって前記傾斜センサの出力を補正するセンサ出力補正手段とを備える如く構成した。
【0007】
請求項2に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が始動時補正値よりも大きいとき、前記始動時補正値による前記加速度学習値の補正を中止する如く構成した。
【0008】
請求項3に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下であると共に、センサ劣化見込み値以下であるとき、前記始動時補正値によって前記加速度学習値を補正する如く構成した。
【0009】
請求項4に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下である一方、センサ劣化見込み値よりも大きいとき、前記始動時補正値と前記センサ劣化見込み値によって前記加速度学習値を補正する如く構成した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、内燃機関が始動されたときと停止されたときの前記傾斜センサの出力の差分が降坂方向にずれているか否か判断し、ずれていると判断されるとき、傾斜センサの補正が必要と判断すると共に、上記した差分に基づき、車両が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される車両が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値を補正し、補正された加速度学習値によって傾斜センサの出力を補正する如く構成したので、傾斜センサの出力が降坂方向にずれたときにセンサ出力を精度良く補正することができ、平坦路や降坂路でニュートラル状態を形成するニュートラル制御(ノンクリープ制御)などを実行するときに支障を来たすことがない。
【0011】
請求項2に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、加速度学習値が収束していないときに加速度学習値が始動時補正値よりも大きいとき、始動時補正値による加速度学習値の補正を中止する如く構成したので、上記した効果に加え、収束していない加速度学習値による補正が過度になるのを防止することができる。
【0012】
請求項3に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、加速度学習値が収束していないときに加速度学習値が始動時補正値以下であると共に、センサ劣化見込み値以下であるとき、始動時補正値によって加速度学習値を補正する如く構成したので、上記した効果に加え、センサ出力を的確に補正することができる。
【0013】
請求項4に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、加速度学習値が収束していないときに加速度学習値が始動時補正値以下である一方、センサ劣化見込み値よりも大きいとき、始動時補正値とセンサ劣化見込み値によって加速度学習値を補正する如く構成したので、上記した効果に加え、加速度学習値にセンサ劣化見込み値によるずれが含まれているときも、センサ出力を的確に補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に即してこの発明に係る傾斜センサの出力補正装置を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、この発明の第1実施例に係る傾斜センサの出力補正装置が前提とする自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【0016】
図1において、符号10は内燃機関(以下「エンジン」という)を示す。エンジン10は、車両(駆動輪Wなどで部分的に示す)14に搭載される。
【0017】
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席に配置されるアクセルペダル(図示せず)との機械的な接続が絶たれ、電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構16が接続されて駆動される。
【0018】
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ(燃料噴射弁)20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブ(図示せず)が開弁されたとき、当該気筒の燃焼室(図示せず)に流入する。燃焼室において混合気は点火されて燃焼し、ピストン(図示せず)を駆動してクランクシャフト22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
【0019】
エンジン10のクランクシャフト22の回転は、トルクコンバータ24を介して自動変速機26に入力される。即ち、クランクシャフト22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(ミッション入力軸)MSに接続される。
【0020】
自動変速機26は無段変速機(Continuous Variable Transmission。以下「CVT」という)からなり、メインシャフトMSに配置されたドライブプーリ26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフトCSに配置されたドリブンプーリ26bと、その間に掛け回される金属製のベルト26cからなる。
【0021】
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSに配置された固定プーリ半体26a1と、固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2からなる。ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSに固定された固定プーリ半体26b1と、固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2からなる。
【0022】
CVT26は、前後進切換装置30に接続される。前後進切換装置30は、前進クラッチ30aと、後進ブレーキ30bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構30cからなる。
【0023】
プラネタリギヤ機構30cにおいて、サンギヤ30c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ30c2は前進クラッチ30aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
【0024】
サンギヤ30c1とリングギヤ30c2の間には、ピニオン30c3が配置される。ピニオン30c3は、キャリア30c4でサンギヤ30c1に連結される。キャリア30c4は、後進ブレーキ30bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
【0025】
カウンタシャフトCSの回転は減速ギヤ34,36を介してセカンダリシャフトSSに伝えられると共に、セカンダリシャフトSSの回転はギヤ40とディファレンシャルDを介して左右の駆動輪(タイヤ。右側のみ示す)Wに伝えられる。駆動輪Wの付近にはディスクブレーキ42が配置される。
【0026】
前進クラッチ30aと後進ブレーキ30bの切換は、車両運転席に設けられた、例えばP,R,N,D,S,Lのポジションを備えるシフトレバー44を運転者が操作することによって行われる。即ち、運転者によってシフトレバー44のいずれかのポジションが選択されたとき、その選択動作は油圧機構(図示せず)のマニュアルバルブ(図示せず)に伝えられる。
【0027】
例えばD,S,Lポジションが選択されると、それに応じてマニュアルバルブのスプールが移動し、後進ブレーキ30bのピストン室から作動油(油圧)が排出される一方、前進クラッチ30aのピストン室に油圧が供給されて前進クラッチ30aが締結(係合)される。前進クラッチ30aが締結されると、全ギヤがメインシャフトMSと一体に回転し、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSと同方向(前進方向)に駆動される。
【0028】
他方、Rポジションが選択されると、前進クラッチ30aのピストン室から作動油が排出される一方、後進ブレーキ30bのピストン室に油圧が供給されて後進ブレーキ30bが作動する。それによってキャリア30c4が固定されてリングギヤ30c2はサンギヤ30c1とは逆方向に駆動され、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSとは逆方向(後進方向)に駆動される。
【0029】
また、PあるいはNポジションが選択されると、両方のピストン室から作動油が排出されて前進クラッチ30aと後進ブレーキ30bが共に開放され、前後進切換装置30を介しての動力伝達が断たれ、エンジン10とCVT26のドライブプーリ26aとの間の動力伝達が遮断される。
【0030】
CVT26においては油圧機構から可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室に作動油が供給され、可動プーリ半体26a2,26b2を軸方向に移動させるプーリ側圧が発生させられると、ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bのプーリ幅が変化し、ベルト26cの巻掛け半径が変化する。このように、プーリの側圧を調整することで、エンジン10の出力を駆動輪Wに伝達する変速比を無段階に変化させることができる。
【0031】
エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ48が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ50が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
【0032】
DBW機構16のアクチュエータにはスロットル開度センサ52が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットル開度THに比例した信号を出力すると共に、アクセルペダル付近にはアクセル開度センサ54が設けられ、運転者のアクセルペダル操作量に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力する。
【0033】
さらに、エンジン10の冷却水通路(図示せず)の付近には水温センサ56が設けられ、エンジン冷却水温TW、換言すればエンジン10の温度に応じた出力を生じると共に、吸気系には吸気温センサ58が設けられ、エンジン10に吸入される吸気温(外気温)に応じた出力を生じる。
【0034】
上記したクランク角センサ48などの出力は、エンジンコントローラ60に送られる。エンジンコントローラ60はマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいて目標スロットル開度を決定してDBW機構16の動作を制御すると共に、燃料噴射量を決定してインジェクタ20を駆動する。
【0035】
エンジンコントローラ60はケース(図示せず)に収容され、車両14のエンジンルーム付近の適宜位置に配置される。
【0036】
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)62が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数、より具体的には前進クラッチ30aの入力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
【0037】
CVT26のドライブプーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)64が設けられてドライブプーリ26aの回転数、換言すれば前進クラッチ30aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力すると共に、ドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)66が設けられ、ドリブンプーリ26bの回転数を示すパルス信号を出力する。
【0038】
セカンダリシャフトSSのギヤ36の付近にはVELセンサ(回転数センサ)70が設けられ、ギヤ36の回転数を通じてCVT26の出力軸の回転数あるいは車速VELを示すパルス信号を出力する。前記したシフトレバー44の付近にはシフトレバーポジションセンサ72が設けられ、運転者によって操作(選択)されたR,N,Dなどのポジションに応じたPOS信号を出力する。
【0039】
上記したNTセンサ62などの出力は、図示しないその他のセンサの出力も含め、シフトコントローラ74に送られる。シフトコントローラ74もマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ60と通信自在に構成される。
【0040】
より具体的には、上記したNTセンサ62とNDRセンサ64の出力は、シフトコントローラ74において波形整形回路に入力された後、方向検出回路に入力される。シフトコントローラ74は波形整形回路の出力をカウントして回転数を検出すると共に、方向検出回路の出力から回転方向を検出する。NDNセンサ66とVELセンサ70の出力は波形整形回路に入力され、シフトコントローラ74はその出力から回転数と車速を検出する。
【0041】
シフトコントローラ74はエンジンコントローラ60と同様、ケース76に収容され、車両14のダッシュボード付近に水平状態で配置される。ケース76の内部には傾斜センサ78が配置され、その出力もシフトコントローラ74に送られる。傾斜センサ78の出力は不揮発性メモリ(図示せず)に格納され、内燃機関10が停止(車両14が停車)された後も、保持される。傾斜センサ78は振子を備え、その鉛直軸からのずれを検出して車両14の傾斜に応じた出力を生じる。
【0042】
シフトコントローラ74はNTセンサ62などの出力に基づき、油圧機構の電磁ソレノイド(図示せず)を励磁・非励磁してトルクコンバータ24とCVT26の動作を制御すると共に、シフトレバーポジション検出の正否を判断してベルト伝達トルク指令値などの操作量を決定する。
【0043】
また、シフトコントローラ74は傾斜センサ78の出力に基づき、平坦路や降坂路でニュートラル状態を形成するニュートラル制御(ノンクリープ制御)などを実行すると共に、傾斜センサ78の出力を補正、即ち、傾斜センサの出力補正装置として機能する。
【0044】
図2は、シフトコントローラ74の傾斜センサ78の出力補正動作、より具体的には傾斜センサ78の出力補正要否判断を示すフロー・チャートである。図示のプログラムはシフトコントローラ74によって所定時間、例えば10msecごとに実行される。
【0045】
同図の説明に入る前に、図3タイム・チャートを参照して傾斜センサ78の出力補正を説明する。
【0046】
図示の例においてエンジン10は始動(IGON)されて車両は走行した後、エンジン10が停止(IGOFF)され、長時間停車された後、再び始動されて車両が走行中にある。図3で「ゼロ点」とは真のゼロ点を意味する。
【0047】
また「加速度学習」とは、車両14が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される、車両14が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値による傾斜センサ78の出力の補正を意味する。
【0048】
尚、予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される車両14が走行する走行路の傾斜を求める技術は本出願人が前に提案した特許第2981477号などに記載されているので、詳細な説明は省略する。
【0049】
図3に示す例では、センサ出力と真のゼロ点との間には最初ずれがあるが、上記した加速度学習値によって補正することで、停止時にはセンサ出力は真のゼロ点と一旦は一致する。
【0050】
しかしながら、長時間停止されている間にエンジン10が冷却されて傾斜センサ78の周囲の温度が変化するなどし、始動後のセンサ出力は再びずれてしまう。その結果、ゼロ点が例えば降坂方向にずれ、ニュートラル制御に支障を来たす場合がある。この発明はそのような不都合を解消することを課題とする。
【0051】
以上を前提として図2の説明に入ると、先ずS10において加速度学習履歴があるか、即ち、上記した加速度学習値が算出されているか否か判断し、否定されるときはS12に進み、補正不要と判断し、S14に進み、停止前センサ値保存フラグをクリア(0にリセット)し、S16に進み、補正要否判断が終了したとする。
【0052】
他方、S10で肯定されるときはS18に進み、補正要否判断が終了したか否か判断する。S16を経由したことからS18の判断は肯定されてS20に進み、車両14が停車中か否か判断する。停車中でないとセンサ出力補正を実行しないことから、否定されるときはS12に進む。
【0053】
一方、S20で肯定されるときはS22に進み、センサ値に変動ないか、即ち、傾斜センサ78の出力の最小値と最小値が所定値未満か否か判断し、否定されるときはセンサ出力そのものが信用し難いことから以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS24に進み、CVT26のレシオがLOW側か否か判断する。
【0054】
S24で否定されるときは車両14が走行している可能性も否定できないために以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS26に進み、エンジン10が始動状態にあるか否か判断する。センサ出力補正は始動時に行うことから、否定されるときは以降の処理をスキップする。
【0055】
一方、S26で肯定されるときはS28に進み、センサ値を読み出し、S30に進み、更新されたセンサ値が適宜設定される所定回数積算されたか否か判断する。S30で否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS32に進み、積算値を所定回数で除算してセンサ値を平均化し、S34に進み、比較前提条件が成立したことから停止前センサ値保存フラグを1にセットする。
【0056】
他方、S18で否定されるときはS36に進み、停止前センサ値保存フラグが1にセットされているか否か判断し、否定されるときは補正すべきセンサ出力自体が保存されていないことから、S38に進み、補正不要と判断し、S40に進み、補正要否判断終了とする。
【0057】
S36で肯定されるときはS42に進み、車両14が停車中か否か判断し、否定されるときは補正を実行しないことから以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS44に進み、センサ値に変動がないか否か判断し、否定されるときはセンサ出力そのものが信用し難いことから以降の処理をスキップする。
【0058】
S44で肯定されるときはS46に進み、IGON補正値(始動時補正値)、即ち、エンジン10が始動されたときと停止されたときの傾斜センサ78の出力の差分を算出し、S48に進み、差分が同様に適宜設定される所定回数積算されるのを待機し、次いでS50に進み、積算された差分を所定回数で除算して平均化する。
【0059】
次いでS52に進み、平均化された差分が降坂方向(側)にずれているか否か判断し、否定されるときはS54に進み、補正不要と判断すると共に、肯定されるときはS56に進み、補正必要と判断し、S58に進み、停止前センサ値保存フラグをクリア、即ち、0にリセットし、S60に進み、補正要否判断終了とする。
【0060】
図4は図2で判定された補正要否判断に応じて実行される傾斜センサ78の出力補正動作を示すフロー・チャートであり、同様にシフトコントローラ74によって所定時間、例えば10msecごとに実行される。
【0061】
以下説明すると、S100において図2の処理で補正必要と判断されたか否か判別し、否定されるときはS102に進み、補正なしとすると共に、肯定されるときはS104に進み、算出された加速度学習値がある範囲内に収束したか否か判断する。
【0062】
S104で肯定されるときはS106に進み、加速度学習値の前回値にIGON補正値(始動時補正値)を加算して加速度学習値を補正する。IGON補正値は図2フロー・チャートのS46で算出された差分、より具体的にはS50で平均化された差分である。
【0063】
即ち、図5に示す如く、エンジン10の始動時の傾斜センサ78の出力が停止時の出力に比して差分だけ降坂側にずれていることから、その差分で加速度補正値を補正する。図5において「センサ劣化見込み値」は、傾斜センサ78が劣化したと想定したときの真のゼロ点からのずれを意味し、予め実験により求めてメモリ内に格納しておく値である。
【0064】
他方、S104で否定されるときはS108に進み、IGON補正値とセンサ劣化見込み値を合計した和を求め、加速度学習値がその和より大きいか、より正確には登坂方向に超えるか否か判断し、肯定されるときS102に進む。
【0065】
図6はその場合の処理を示すタイム・チャートである。尚、同図(およびその他の図)でゼロ点より上を正(登坂側)、下を負(降坂側)とする。図示の如く、加速度学習値がIGON補正値よりも大きい(登坂側に大きい)。
【0066】
このような場合、加速度学習値が未収束のため、加速度学習ずれや前回のIGON補正による登坂ずれをキャンセルできていないことが考えられ、過剰補正となる恐れがあるため、補正しない(補正を中止する)ことで、補正が過大となるのを防止する。
【0067】
他方、S108で否定されるときはS110に進み、加速度学習値がセンサ劣化見込み値より大きいか否か判断し、否定される、即ち、加速度学習値がセンサ劣化見込み値以下と判断される、より具体的にはS108の判断を経ていることからIGON補正値とセンサ劣化見込み値の和以下であると共に、センサ劣化見込み値以下と判断されるときは、S106に進み、IGON補正値によって加速度学習値を補正する。
【0068】
図7はそれを示すタイム・チャートである。加速度学習値が収束していないために加速度学習値が降坂方向にずれていることも考えられることと、S106のように補正しても過剰な補正とならないからである。
【0069】
また、S110で肯定されるとき、即ち、加速度学習値が始動時補正値とセンサ劣化見込み値の和以下である一方、センサ劣化見込み値よりも大きいと判断されるときはS112に進み、加速度学習値をIGON補正値とセンサ劣化見込み値の和とする。即ち、加速度学習値をIGON補正値とセンサ劣化見込み値によって補正する。
【0070】
図8はそれを示すタイム・チャートである。この場合、加速度学習値はIGON補正よりも十分登坂方向に補正されているが、加速度学習値にはセンサ劣化による出力値ずれが含まれている可能性があるため、かく補正する。
【0071】
図4フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS114に進み、傾斜センサ78の出力を加速度補正値で補正する。
【0072】
上記の如く、第1実施例にあっては、車両14に搭載されてエンジン(内燃機関)10の回転を変速するCVT(無段変速機、自動変速機)26の制御に使用される傾斜センサ78の出力を補正する装置(シフトコントローラ74)において、前記エンジン10が始動されたときと停止されたときの前記傾斜センサ78の出力の差分(IGON補正値)が降坂方向にずれているか否か判断する差分方向判断手段(S52)と、前記差分が降坂側にずれていると判断されるとき、前記傾斜センサ78の補正が必要と判断する補正要否判断手段(S56)と、前記補正が必要と判断されるとき、前記差分に基づき、前記車両14が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される前記車両が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値を補正する加速度学習値補正手段(S100からS112)と、前記補正された加速度学習値によって前記傾斜センサ78の出力を補正するセンサ出力補正手段(S114)とを備える如く構成したので、傾斜センサ78の出力が降坂方向にずれたときにセンサ出力を精度良く補正することができ、平坦路や降坂路でニュートラル状態を形成するニュートラル制御などを実行するときに支障を来たすことがない。
【0073】
また、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が始動時補正値よりも大きいとき、前記始動時補正値による前記加速度学習値の補正を中止する(S104,S108,S102)如く構成したので、上記した効果に加え、収束していない加速度学習値による補正が過度になるのを防止することができる。
【0074】
また、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下であると共に、センサ劣化見込み値以下であるとき、前記始動時補正値によって前記加速度学習値を補正する(S104,S108,S110,S106)如く構成したので、上記した効果に加え、センサ出力を的確に補正することができる。
【0075】
また、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下である一方、センサ劣化見込み値よりも大きいとき、前記始動時補正値と前記センサ劣化見込み値によって前記加速度学習値を補正する(S104,S108,S110,S112)如く構成したので、上記した効果に加え、加速度学習値にセンサ劣化見込み値によるずれが含まれているときも、センサ出力を的確に補正することができる。
【実施例2】
【0076】
図9は、この発明の第2実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【0077】
第2実施例においては工場で傾斜センサ78の出力を学習(補正)するようにした。即ち、安定稼動中の車両14の製造工場の水平なライン上で所定の操作をトリガにしてセンサ出力を学習(補正)するようにした。
【0078】
具体的には、期間Aの間の傾斜センサ78の出力の平均値をゼロ点補正値として学習するようにした。より具体的には、所定周期内のセンサ出力の最大値と最小値を期間A分サンプルし、サンプル値の平均値を学習値(ゼロ点補正値)とする。
【0079】
その場合、図10に示す如く、センサ出力がラインの停止あるいは稼動による大きな揺れを検知して所定範囲外の値となったときは、異常信号として削除すると共に、検知したサンプル周期を含めた期間Bの間のサンプルは除外する。
【0080】
第2実施例は上記の如く構成したので、水平な工場のライン上で学習(補正)することで、傾斜センサ78の取り付け誤差や固体バラツキを吸収することができる。また、平均化処理を行うことで、ベルトコンベアでも補正できると共に、異常な値を除外することで誤って学習(補正)することがない。
【実施例3】
【0081】
図11と図12は、この発明の第3実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【0082】
第3実施例においては、傾斜センサ78の出力から、車両14が実際に走行しているのか、あるいはシャーシダイナモ上を走行しているのかを判定し、シャーシダイナモ上を走行していると判別されるときは、第1実施例で述べた学習(補正)を中止して誤学習(補正)となるのを防止するようにした。
【0083】
具体的には、図11と図12に示す如く、センサ出力のA/D値の振れ幅が所定値より小さいとき、シャーシダイナモ上を走行していると判定する。
【0084】
第3実施例は上記の如く構成したので、シャーシダイナモ上を走行するときに傾斜センサ78の出力を誤って学習(補正)するのを防止することができる。
【0085】
尚、上記において自動変速機の例としてCVT26を挙げたが、それは例示であり、この発明はそれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】この発明の第1実施例に係る傾斜センサの出力補正装置が前提とする自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示す装置の傾斜センサの出力補正動作、より具体的には傾斜センサの出力補正要否判断を示すフロー・チャートである。
【図3】図2の処理を説明するタイム・チャートである。
【図4】図1に示す装置の傾斜センサの出力補正動作、より具体的には図2で判定された補正要否判断に応じて実行される傾斜センサの出力補正動作を示すフロー・チャートである。
【図5】図4の処理を説明するタイム・チャートである。
【図6】同様に図4の処理を説明するタイム・チャートである。
【図7】同様に図4の処理を説明するタイム・チャートである。
【図8】同様に図4の処理を説明するタイム・チャートである。
【図9】この発明の第2実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【図10】同様に第2実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【図11】この発明の第3実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【図12】同様に第3実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【符号の説明】
【0087】
10 内燃機関(エンジン)、14 車両、16 DBW機構、24 トルクコンバータ、26 自動変速機(無段変速機。CVT)、30 前後進切換装置、30a 前進クラッチ(クラッチ)、44 シフトレバー、60 エンジンコントローラ、62 NTセンサ(クラッチ入力軸回転数検出手段)、64 NDRセンサ(クラッチ出力軸回転数検出手段)、74 シフトコントローラ、76 ケース、78 傾斜センサ
【技術分野】
【0001】
この発明は傾斜センサの出力補正装置に関し、より詳しくは車両に搭載されて内燃機関の回転を変速する自動変速機の制御に使用される傾斜センサの出力を補正する傾斜センサの出力補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の傾斜センサの出力補正装置の従来技術としては、特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術にあっては、傾斜センサの出力に基づき複数の変速パターンのいずれか1つを選択して変速する自動変速機の制御系において、傾斜センサの検出角に対し、車両走行時の慣性力に基づくずれを除いて実傾斜角を求め、その実傾斜角で変速パターンを選択自在に構成している。
【特許文献1】特開昭63−289360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来技術にあっては、傾斜センサが振子(重錘)を利用しているために慣性力の影響を受けることから、車速から加速度を算出してセンサ出力を補正するように構成している。
【0004】
慣性力以外にも傾斜センサの出力に影響する要因は種々あり、傾斜センサのゼロ点は、周囲の温度の変化による検出素子の抵抗値の変化や乗員の数が変化したことによる車重の変化によっても影響を受け、その結果、ゼロ点が例えば降坂方向にずれ、平坦路や降坂路でニュートラル状態を形成するニュートラル制御(ノンクリープ制御)などを実行するときに支障を来たす場合がある。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消し、車両に搭載されて内燃機関の回転を変速する自動変速機の制御に使用される傾斜センサの出力が降坂方向にずれたときにセンサ出力を精度良く補正するようにした傾斜センサの出力補正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、車両に搭載されて内燃機関の回転を変速する自動変速機の制御に使用される傾斜センサの出力を補正する装置において、前記内燃機関が始動されたときと停止されたときの前記傾斜センサの出力の差分が降坂方向にずれているか否か判断する差分方向判断手段と、前記差分が降坂側にずれていると判断されるとき、前記傾斜センサの補正が必要と判断する補正要否判断手段と、前記補正が必要と判断されるとき、前記差分に基づき、前記車両が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される前記車両が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値を補正する加速度学習値補正手段と、前記補正された加速度学習値によって前記傾斜センサの出力を補正するセンサ出力補正手段とを備える如く構成した。
【0007】
請求項2に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が始動時補正値よりも大きいとき、前記始動時補正値による前記加速度学習値の補正を中止する如く構成した。
【0008】
請求項3に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下であると共に、センサ劣化見込み値以下であるとき、前記始動時補正値によって前記加速度学習値を補正する如く構成した。
【0009】
請求項4に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下である一方、センサ劣化見込み値よりも大きいとき、前記始動時補正値と前記センサ劣化見込み値によって前記加速度学習値を補正する如く構成した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、内燃機関が始動されたときと停止されたときの前記傾斜センサの出力の差分が降坂方向にずれているか否か判断し、ずれていると判断されるとき、傾斜センサの補正が必要と判断すると共に、上記した差分に基づき、車両が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される車両が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値を補正し、補正された加速度学習値によって傾斜センサの出力を補正する如く構成したので、傾斜センサの出力が降坂方向にずれたときにセンサ出力を精度良く補正することができ、平坦路や降坂路でニュートラル状態を形成するニュートラル制御(ノンクリープ制御)などを実行するときに支障を来たすことがない。
【0011】
請求項2に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、加速度学習値が収束していないときに加速度学習値が始動時補正値よりも大きいとき、始動時補正値による加速度学習値の補正を中止する如く構成したので、上記した効果に加え、収束していない加速度学習値による補正が過度になるのを防止することができる。
【0012】
請求項3に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、加速度学習値が収束していないときに加速度学習値が始動時補正値以下であると共に、センサ劣化見込み値以下であるとき、始動時補正値によって加速度学習値を補正する如く構成したので、上記した効果に加え、センサ出力を的確に補正することができる。
【0013】
請求項4に係る傾斜センサの出力補正装置にあっては、加速度学習値が収束していないときに加速度学習値が始動時補正値以下である一方、センサ劣化見込み値よりも大きいとき、始動時補正値とセンサ劣化見込み値によって加速度学習値を補正する如く構成したので、上記した効果に加え、加速度学習値にセンサ劣化見込み値によるずれが含まれているときも、センサ出力を的確に補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に即してこの発明に係る傾斜センサの出力補正装置を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、この発明の第1実施例に係る傾斜センサの出力補正装置が前提とする自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【0016】
図1において、符号10は内燃機関(以下「エンジン」という)を示す。エンジン10は、車両(駆動輪Wなどで部分的に示す)14に搭載される。
【0017】
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席に配置されるアクセルペダル(図示せず)との機械的な接続が絶たれ、電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構16が接続されて駆動される。
【0018】
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ(燃料噴射弁)20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブ(図示せず)が開弁されたとき、当該気筒の燃焼室(図示せず)に流入する。燃焼室において混合気は点火されて燃焼し、ピストン(図示せず)を駆動してクランクシャフト22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
【0019】
エンジン10のクランクシャフト22の回転は、トルクコンバータ24を介して自動変速機26に入力される。即ち、クランクシャフト22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(ミッション入力軸)MSに接続される。
【0020】
自動変速機26は無段変速機(Continuous Variable Transmission。以下「CVT」という)からなり、メインシャフトMSに配置されたドライブプーリ26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフトCSに配置されたドリブンプーリ26bと、その間に掛け回される金属製のベルト26cからなる。
【0021】
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSに配置された固定プーリ半体26a1と、固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2からなる。ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSに固定された固定プーリ半体26b1と、固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2からなる。
【0022】
CVT26は、前後進切換装置30に接続される。前後進切換装置30は、前進クラッチ30aと、後進ブレーキ30bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構30cからなる。
【0023】
プラネタリギヤ機構30cにおいて、サンギヤ30c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ30c2は前進クラッチ30aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
【0024】
サンギヤ30c1とリングギヤ30c2の間には、ピニオン30c3が配置される。ピニオン30c3は、キャリア30c4でサンギヤ30c1に連結される。キャリア30c4は、後進ブレーキ30bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
【0025】
カウンタシャフトCSの回転は減速ギヤ34,36を介してセカンダリシャフトSSに伝えられると共に、セカンダリシャフトSSの回転はギヤ40とディファレンシャルDを介して左右の駆動輪(タイヤ。右側のみ示す)Wに伝えられる。駆動輪Wの付近にはディスクブレーキ42が配置される。
【0026】
前進クラッチ30aと後進ブレーキ30bの切換は、車両運転席に設けられた、例えばP,R,N,D,S,Lのポジションを備えるシフトレバー44を運転者が操作することによって行われる。即ち、運転者によってシフトレバー44のいずれかのポジションが選択されたとき、その選択動作は油圧機構(図示せず)のマニュアルバルブ(図示せず)に伝えられる。
【0027】
例えばD,S,Lポジションが選択されると、それに応じてマニュアルバルブのスプールが移動し、後進ブレーキ30bのピストン室から作動油(油圧)が排出される一方、前進クラッチ30aのピストン室に油圧が供給されて前進クラッチ30aが締結(係合)される。前進クラッチ30aが締結されると、全ギヤがメインシャフトMSと一体に回転し、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSと同方向(前進方向)に駆動される。
【0028】
他方、Rポジションが選択されると、前進クラッチ30aのピストン室から作動油が排出される一方、後進ブレーキ30bのピストン室に油圧が供給されて後進ブレーキ30bが作動する。それによってキャリア30c4が固定されてリングギヤ30c2はサンギヤ30c1とは逆方向に駆動され、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSとは逆方向(後進方向)に駆動される。
【0029】
また、PあるいはNポジションが選択されると、両方のピストン室から作動油が排出されて前進クラッチ30aと後進ブレーキ30bが共に開放され、前後進切換装置30を介しての動力伝達が断たれ、エンジン10とCVT26のドライブプーリ26aとの間の動力伝達が遮断される。
【0030】
CVT26においては油圧機構から可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室に作動油が供給され、可動プーリ半体26a2,26b2を軸方向に移動させるプーリ側圧が発生させられると、ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bのプーリ幅が変化し、ベルト26cの巻掛け半径が変化する。このように、プーリの側圧を調整することで、エンジン10の出力を駆動輪Wに伝達する変速比を無段階に変化させることができる。
【0031】
エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ48が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ50が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
【0032】
DBW機構16のアクチュエータにはスロットル開度センサ52が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットル開度THに比例した信号を出力すると共に、アクセルペダル付近にはアクセル開度センサ54が設けられ、運転者のアクセルペダル操作量に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力する。
【0033】
さらに、エンジン10の冷却水通路(図示せず)の付近には水温センサ56が設けられ、エンジン冷却水温TW、換言すればエンジン10の温度に応じた出力を生じると共に、吸気系には吸気温センサ58が設けられ、エンジン10に吸入される吸気温(外気温)に応じた出力を生じる。
【0034】
上記したクランク角センサ48などの出力は、エンジンコントローラ60に送られる。エンジンコントローラ60はマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいて目標スロットル開度を決定してDBW機構16の動作を制御すると共に、燃料噴射量を決定してインジェクタ20を駆動する。
【0035】
エンジンコントローラ60はケース(図示せず)に収容され、車両14のエンジンルーム付近の適宜位置に配置される。
【0036】
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)62が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数、より具体的には前進クラッチ30aの入力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
【0037】
CVT26のドライブプーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)64が設けられてドライブプーリ26aの回転数、換言すれば前進クラッチ30aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力すると共に、ドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)66が設けられ、ドリブンプーリ26bの回転数を示すパルス信号を出力する。
【0038】
セカンダリシャフトSSのギヤ36の付近にはVELセンサ(回転数センサ)70が設けられ、ギヤ36の回転数を通じてCVT26の出力軸の回転数あるいは車速VELを示すパルス信号を出力する。前記したシフトレバー44の付近にはシフトレバーポジションセンサ72が設けられ、運転者によって操作(選択)されたR,N,Dなどのポジションに応じたPOS信号を出力する。
【0039】
上記したNTセンサ62などの出力は、図示しないその他のセンサの出力も含め、シフトコントローラ74に送られる。シフトコントローラ74もマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ60と通信自在に構成される。
【0040】
より具体的には、上記したNTセンサ62とNDRセンサ64の出力は、シフトコントローラ74において波形整形回路に入力された後、方向検出回路に入力される。シフトコントローラ74は波形整形回路の出力をカウントして回転数を検出すると共に、方向検出回路の出力から回転方向を検出する。NDNセンサ66とVELセンサ70の出力は波形整形回路に入力され、シフトコントローラ74はその出力から回転数と車速を検出する。
【0041】
シフトコントローラ74はエンジンコントローラ60と同様、ケース76に収容され、車両14のダッシュボード付近に水平状態で配置される。ケース76の内部には傾斜センサ78が配置され、その出力もシフトコントローラ74に送られる。傾斜センサ78の出力は不揮発性メモリ(図示せず)に格納され、内燃機関10が停止(車両14が停車)された後も、保持される。傾斜センサ78は振子を備え、その鉛直軸からのずれを検出して車両14の傾斜に応じた出力を生じる。
【0042】
シフトコントローラ74はNTセンサ62などの出力に基づき、油圧機構の電磁ソレノイド(図示せず)を励磁・非励磁してトルクコンバータ24とCVT26の動作を制御すると共に、シフトレバーポジション検出の正否を判断してベルト伝達トルク指令値などの操作量を決定する。
【0043】
また、シフトコントローラ74は傾斜センサ78の出力に基づき、平坦路や降坂路でニュートラル状態を形成するニュートラル制御(ノンクリープ制御)などを実行すると共に、傾斜センサ78の出力を補正、即ち、傾斜センサの出力補正装置として機能する。
【0044】
図2は、シフトコントローラ74の傾斜センサ78の出力補正動作、より具体的には傾斜センサ78の出力補正要否判断を示すフロー・チャートである。図示のプログラムはシフトコントローラ74によって所定時間、例えば10msecごとに実行される。
【0045】
同図の説明に入る前に、図3タイム・チャートを参照して傾斜センサ78の出力補正を説明する。
【0046】
図示の例においてエンジン10は始動(IGON)されて車両は走行した後、エンジン10が停止(IGOFF)され、長時間停車された後、再び始動されて車両が走行中にある。図3で「ゼロ点」とは真のゼロ点を意味する。
【0047】
また「加速度学習」とは、車両14が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される、車両14が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値による傾斜センサ78の出力の補正を意味する。
【0048】
尚、予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される車両14が走行する走行路の傾斜を求める技術は本出願人が前に提案した特許第2981477号などに記載されているので、詳細な説明は省略する。
【0049】
図3に示す例では、センサ出力と真のゼロ点との間には最初ずれがあるが、上記した加速度学習値によって補正することで、停止時にはセンサ出力は真のゼロ点と一旦は一致する。
【0050】
しかしながら、長時間停止されている間にエンジン10が冷却されて傾斜センサ78の周囲の温度が変化するなどし、始動後のセンサ出力は再びずれてしまう。その結果、ゼロ点が例えば降坂方向にずれ、ニュートラル制御に支障を来たす場合がある。この発明はそのような不都合を解消することを課題とする。
【0051】
以上を前提として図2の説明に入ると、先ずS10において加速度学習履歴があるか、即ち、上記した加速度学習値が算出されているか否か判断し、否定されるときはS12に進み、補正不要と判断し、S14に進み、停止前センサ値保存フラグをクリア(0にリセット)し、S16に進み、補正要否判断が終了したとする。
【0052】
他方、S10で肯定されるときはS18に進み、補正要否判断が終了したか否か判断する。S16を経由したことからS18の判断は肯定されてS20に進み、車両14が停車中か否か判断する。停車中でないとセンサ出力補正を実行しないことから、否定されるときはS12に進む。
【0053】
一方、S20で肯定されるときはS22に進み、センサ値に変動ないか、即ち、傾斜センサ78の出力の最小値と最小値が所定値未満か否か判断し、否定されるときはセンサ出力そのものが信用し難いことから以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS24に進み、CVT26のレシオがLOW側か否か判断する。
【0054】
S24で否定されるときは車両14が走行している可能性も否定できないために以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS26に進み、エンジン10が始動状態にあるか否か判断する。センサ出力補正は始動時に行うことから、否定されるときは以降の処理をスキップする。
【0055】
一方、S26で肯定されるときはS28に進み、センサ値を読み出し、S30に進み、更新されたセンサ値が適宜設定される所定回数積算されたか否か判断する。S30で否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS32に進み、積算値を所定回数で除算してセンサ値を平均化し、S34に進み、比較前提条件が成立したことから停止前センサ値保存フラグを1にセットする。
【0056】
他方、S18で否定されるときはS36に進み、停止前センサ値保存フラグが1にセットされているか否か判断し、否定されるときは補正すべきセンサ出力自体が保存されていないことから、S38に進み、補正不要と判断し、S40に進み、補正要否判断終了とする。
【0057】
S36で肯定されるときはS42に進み、車両14が停車中か否か判断し、否定されるときは補正を実行しないことから以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS44に進み、センサ値に変動がないか否か判断し、否定されるときはセンサ出力そのものが信用し難いことから以降の処理をスキップする。
【0058】
S44で肯定されるときはS46に進み、IGON補正値(始動時補正値)、即ち、エンジン10が始動されたときと停止されたときの傾斜センサ78の出力の差分を算出し、S48に進み、差分が同様に適宜設定される所定回数積算されるのを待機し、次いでS50に進み、積算された差分を所定回数で除算して平均化する。
【0059】
次いでS52に進み、平均化された差分が降坂方向(側)にずれているか否か判断し、否定されるときはS54に進み、補正不要と判断すると共に、肯定されるときはS56に進み、補正必要と判断し、S58に進み、停止前センサ値保存フラグをクリア、即ち、0にリセットし、S60に進み、補正要否判断終了とする。
【0060】
図4は図2で判定された補正要否判断に応じて実行される傾斜センサ78の出力補正動作を示すフロー・チャートであり、同様にシフトコントローラ74によって所定時間、例えば10msecごとに実行される。
【0061】
以下説明すると、S100において図2の処理で補正必要と判断されたか否か判別し、否定されるときはS102に進み、補正なしとすると共に、肯定されるときはS104に進み、算出された加速度学習値がある範囲内に収束したか否か判断する。
【0062】
S104で肯定されるときはS106に進み、加速度学習値の前回値にIGON補正値(始動時補正値)を加算して加速度学習値を補正する。IGON補正値は図2フロー・チャートのS46で算出された差分、より具体的にはS50で平均化された差分である。
【0063】
即ち、図5に示す如く、エンジン10の始動時の傾斜センサ78の出力が停止時の出力に比して差分だけ降坂側にずれていることから、その差分で加速度補正値を補正する。図5において「センサ劣化見込み値」は、傾斜センサ78が劣化したと想定したときの真のゼロ点からのずれを意味し、予め実験により求めてメモリ内に格納しておく値である。
【0064】
他方、S104で否定されるときはS108に進み、IGON補正値とセンサ劣化見込み値を合計した和を求め、加速度学習値がその和より大きいか、より正確には登坂方向に超えるか否か判断し、肯定されるときS102に進む。
【0065】
図6はその場合の処理を示すタイム・チャートである。尚、同図(およびその他の図)でゼロ点より上を正(登坂側)、下を負(降坂側)とする。図示の如く、加速度学習値がIGON補正値よりも大きい(登坂側に大きい)。
【0066】
このような場合、加速度学習値が未収束のため、加速度学習ずれや前回のIGON補正による登坂ずれをキャンセルできていないことが考えられ、過剰補正となる恐れがあるため、補正しない(補正を中止する)ことで、補正が過大となるのを防止する。
【0067】
他方、S108で否定されるときはS110に進み、加速度学習値がセンサ劣化見込み値より大きいか否か判断し、否定される、即ち、加速度学習値がセンサ劣化見込み値以下と判断される、より具体的にはS108の判断を経ていることからIGON補正値とセンサ劣化見込み値の和以下であると共に、センサ劣化見込み値以下と判断されるときは、S106に進み、IGON補正値によって加速度学習値を補正する。
【0068】
図7はそれを示すタイム・チャートである。加速度学習値が収束していないために加速度学習値が降坂方向にずれていることも考えられることと、S106のように補正しても過剰な補正とならないからである。
【0069】
また、S110で肯定されるとき、即ち、加速度学習値が始動時補正値とセンサ劣化見込み値の和以下である一方、センサ劣化見込み値よりも大きいと判断されるときはS112に進み、加速度学習値をIGON補正値とセンサ劣化見込み値の和とする。即ち、加速度学習値をIGON補正値とセンサ劣化見込み値によって補正する。
【0070】
図8はそれを示すタイム・チャートである。この場合、加速度学習値はIGON補正よりも十分登坂方向に補正されているが、加速度学習値にはセンサ劣化による出力値ずれが含まれている可能性があるため、かく補正する。
【0071】
図4フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS114に進み、傾斜センサ78の出力を加速度補正値で補正する。
【0072】
上記の如く、第1実施例にあっては、車両14に搭載されてエンジン(内燃機関)10の回転を変速するCVT(無段変速機、自動変速機)26の制御に使用される傾斜センサ78の出力を補正する装置(シフトコントローラ74)において、前記エンジン10が始動されたときと停止されたときの前記傾斜センサ78の出力の差分(IGON補正値)が降坂方向にずれているか否か判断する差分方向判断手段(S52)と、前記差分が降坂側にずれていると判断されるとき、前記傾斜センサ78の補正が必要と判断する補正要否判断手段(S56)と、前記補正が必要と判断されるとき、前記差分に基づき、前記車両14が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される前記車両が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値を補正する加速度学習値補正手段(S100からS112)と、前記補正された加速度学習値によって前記傾斜センサ78の出力を補正するセンサ出力補正手段(S114)とを備える如く構成したので、傾斜センサ78の出力が降坂方向にずれたときにセンサ出力を精度良く補正することができ、平坦路や降坂路でニュートラル状態を形成するニュートラル制御などを実行するときに支障を来たすことがない。
【0073】
また、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が始動時補正値よりも大きいとき、前記始動時補正値による前記加速度学習値の補正を中止する(S104,S108,S102)如く構成したので、上記した効果に加え、収束していない加速度学習値による補正が過度になるのを防止することができる。
【0074】
また、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下であると共に、センサ劣化見込み値以下であるとき、前記始動時補正値によって前記加速度学習値を補正する(S104,S108,S110,S106)如く構成したので、上記した効果に加え、センサ出力を的確に補正することができる。
【0075】
また、前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下である一方、センサ劣化見込み値よりも大きいとき、前記始動時補正値と前記センサ劣化見込み値によって前記加速度学習値を補正する(S104,S108,S110,S112)如く構成したので、上記した効果に加え、加速度学習値にセンサ劣化見込み値によるずれが含まれているときも、センサ出力を的確に補正することができる。
【実施例2】
【0076】
図9は、この発明の第2実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【0077】
第2実施例においては工場で傾斜センサ78の出力を学習(補正)するようにした。即ち、安定稼動中の車両14の製造工場の水平なライン上で所定の操作をトリガにしてセンサ出力を学習(補正)するようにした。
【0078】
具体的には、期間Aの間の傾斜センサ78の出力の平均値をゼロ点補正値として学習するようにした。より具体的には、所定周期内のセンサ出力の最大値と最小値を期間A分サンプルし、サンプル値の平均値を学習値(ゼロ点補正値)とする。
【0079】
その場合、図10に示す如く、センサ出力がラインの停止あるいは稼動による大きな揺れを検知して所定範囲外の値となったときは、異常信号として削除すると共に、検知したサンプル周期を含めた期間Bの間のサンプルは除外する。
【0080】
第2実施例は上記の如く構成したので、水平な工場のライン上で学習(補正)することで、傾斜センサ78の取り付け誤差や固体バラツキを吸収することができる。また、平均化処理を行うことで、ベルトコンベアでも補正できると共に、異常な値を除外することで誤って学習(補正)することがない。
【実施例3】
【0081】
図11と図12は、この発明の第3実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【0082】
第3実施例においては、傾斜センサ78の出力から、車両14が実際に走行しているのか、あるいはシャーシダイナモ上を走行しているのかを判定し、シャーシダイナモ上を走行していると判別されるときは、第1実施例で述べた学習(補正)を中止して誤学習(補正)となるのを防止するようにした。
【0083】
具体的には、図11と図12に示す如く、センサ出力のA/D値の振れ幅が所定値より小さいとき、シャーシダイナモ上を走行していると判定する。
【0084】
第3実施例は上記の如く構成したので、シャーシダイナモ上を走行するときに傾斜センサ78の出力を誤って学習(補正)するのを防止することができる。
【0085】
尚、上記において自動変速機の例としてCVT26を挙げたが、それは例示であり、この発明はそれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】この発明の第1実施例に係る傾斜センサの出力補正装置が前提とする自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示す装置の傾斜センサの出力補正動作、より具体的には傾斜センサの出力補正要否判断を示すフロー・チャートである。
【図3】図2の処理を説明するタイム・チャートである。
【図4】図1に示す装置の傾斜センサの出力補正動作、より具体的には図2で判定された補正要否判断に応じて実行される傾斜センサの出力補正動作を示すフロー・チャートである。
【図5】図4の処理を説明するタイム・チャートである。
【図6】同様に図4の処理を説明するタイム・チャートである。
【図7】同様に図4の処理を説明するタイム・チャートである。
【図8】同様に図4の処理を説明するタイム・チャートである。
【図9】この発明の第2実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【図10】同様に第2実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【図11】この発明の第3実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【図12】同様に第3実施例に係る傾斜センサの出力補正装置の動作を示すタイム・チャートである。
【符号の説明】
【0087】
10 内燃機関(エンジン)、14 車両、16 DBW機構、24 トルクコンバータ、26 自動変速機(無段変速機。CVT)、30 前後進切換装置、30a 前進クラッチ(クラッチ)、44 シフトレバー、60 エンジンコントローラ、62 NTセンサ(クラッチ入力軸回転数検出手段)、64 NDRセンサ(クラッチ出力軸回転数検出手段)、74 シフトコントローラ、76 ケース、78 傾斜センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて内燃機関の回転を変速する自動変速機の制御に使用される傾斜センサの出力を補正する装置において、
a.前記内燃機関が始動されたときと停止されたときの前記傾斜センサの出力の差分が降坂方向にずれているか否か判断する差分方向判断手段と、
b.前記差分が降坂側にずれていると判断されるとき、前記傾斜センサの補正が必要と判断する補正要否判断手段と、
c.前記補正が必要と判断されるとき、前記差分に基づき、前記車両が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される前記車両が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値を補正する加速度学習値補正手段と、
d.前記補正された加速度学習値によって前記傾斜センサの出力を補正するセンサ出力補正手段と、
を備えることを特徴とする傾斜センサの出力補正装置。
【請求項2】
前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が始動時補正値よりも大きいとき、前記始動時補正値による前記加速度学習値の補正を中止することを特徴とする請求項1記載の傾斜センサの出力補正装置。
【請求項3】
前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下であると共に、センサ劣化見込み値以下であるとき、前記始動時補正値によって前記加速度学習値を補正することを特徴とする請求項1記載の傾斜センサの出力補正装置。
【請求項4】
前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下である一方、センサ劣化見込み値よりも大きいとき、前記始動時補正値と前記センサ劣化見込み値によって前記加速度学習値を補正することを特徴とする請求項1記載の傾斜センサの出力補正装置。
【請求項1】
車両に搭載されて内燃機関の回転を変速する自動変速機の制御に使用される傾斜センサの出力を補正する装置において、
a.前記内燃機関が始動されたときと停止されたときの前記傾斜センサの出力の差分が降坂方向にずれているか否か判断する差分方向判断手段と、
b.前記差分が降坂側にずれていると判断されるとき、前記傾斜センサの補正が必要と判断する補正要否判断手段と、
c.前記補正が必要と判断されるとき、前記差分に基づき、前記車両が走行するときの予想加速度と検出加速度の差分の平均値から算出される前記車両が走行する走行路の傾斜を示す加速度学習値を補正する加速度学習値補正手段と、
d.前記補正された加速度学習値によって前記傾斜センサの出力を補正するセンサ出力補正手段と、
を備えることを特徴とする傾斜センサの出力補正装置。
【請求項2】
前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が始動時補正値よりも大きいとき、前記始動時補正値による前記加速度学習値の補正を中止することを特徴とする請求項1記載の傾斜センサの出力補正装置。
【請求項3】
前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下であると共に、センサ劣化見込み値以下であるとき、前記始動時補正値によって前記加速度学習値を補正することを特徴とする請求項1記載の傾斜センサの出力補正装置。
【請求項4】
前記加速度学習値補正手段は、前記加速度学習値が収束していないときに前記加速度学習値が前記始動時補正値以下である一方、センサ劣化見込み値よりも大きいとき、前記始動時補正値と前記センサ劣化見込み値によって前記加速度学習値を補正することを特徴とする請求項1記載の傾斜センサの出力補正装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−92209(P2009−92209A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265877(P2007−265877)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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