説明

傾斜縁部を有する吸着剤缶

中空胴部、および中空胴部の両端部に融着された多孔質の端栓を有し、缶を製品包装体内に分配することを助けるために、融着個所に傾斜面を有する吸着剤缶。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥剤または酸素吸収剤などの吸着剤または吸収剤を含む、気体または蒸気の処理剤を収納するための、気体または蒸気が透過可能な缶、およびそれらの気体または蒸気が透過可能な缶の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着剤缶は吸着剤カートリッジとも呼ばれ、製品の包装体などの封入環境の気体または蒸気の含有物を管理するために、種々の吸収機能または吸着機能を果たす。例えば米国特許第4,093,105号、第4,772,300号、および第5,503,662号に開示されているような吸着剤缶は、錠剤用瓶などの薬剤包装体内に挿入されて、湿分や酸素にさらされることによる薬剤の汚染または劣化を低減する。
【0003】
一般に、缶は中空防湿プラスチック製円筒状胴部、および分離した多孔質の端栓を有し、薬剤の収納容器または他の形態の包装体から湿分を吸着し、または気体を吸収するために、缶には様々な種類の粒状の吸着剤が満たされる。例えば、米国特許第4,772,300号に開示された缶は、超音波溶接によってポリエチレン製胴部の端部に固定され、ウェブ接着されたポリエチレン製端栓を特徴とする。別のそのような吸着剤缶は、米国特許第4,093,105号、および第5,503,662号に開示された缶を含み、薬剤含有物の湿分による劣化を防止することを目的として、それらの缶はやはり薬剤収納容器内に挿入されるように構成されている。薬剤の保護に加えて、収納容器内に詰められた錠剤、診断テスト用条片、および特定の粒状物質などの他の特定の物質は、それらの物質の健全性を保持するために、湿分を吸着、または酸素あるいは臭気を吸収する、材料処理物質が存在することによって同じように利益を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,093,105号明細書
【特許文献2】米国特許第4,772,300号明細書
【特許文献3】米国特許第5,503,662号明細書
【特許文献4】米国特許第5,942,060号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸着剤缶は通常、他の収納物が何らかの形で環境規制を必要としている薬剤瓶またはその他の収納容器内に、高速充填作業に関連する分配機構によって挿入される。通常の吸着剤缶は、缶分配機構で使用するために設定された寸法公差に適合するように製造されるが、多孔質の端栓と中空防湿プラスチック製円筒状胴部との間に形成された縁部が、分配作業を妨害することがある。
【0006】
米国特許第5,942,060号に開示されているような既知の缶製造作業において、多孔質の端栓は、振動溶接エネルギーまたは熱シールによって中空円筒状胴部に融着され、続いて融着個所を越える過剰な材料を除去するように切除される。しかし、指定された公差内にある通常の寸法および処理の変動によって、不規則な縁部または突出部が残ることがあり、それらは分配作業を妨害し得る。例えば、不規則な縁部または突出部によって、吸着剤缶が分配機構内の搬送構造部に引っ掛ったり、またはかみ付いたりすることがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はその1つまたは複数の好ましい実施形態においては、吸着剤缶の縁部を処理して、従来の吸着剤缶の分配問題を克服する。典型的な吸着剤缶は、中空防湿プラスチック製(可撓性)円筒状胴部に融着された多孔質の端栓を有する。融着された端栓は概ね中空円筒状胴部の外周形状に適合するように切断され、得られる缶の外縁部は、意図した中空円筒状胴部の外周を越えて延伸する可能性のあるどのような材料も除去するように、本発明に基づいてさらに処理される。缶の縁部は、過剰な材料を除去または削除するために、面取りされ、さもなければ傾けられ、あるいは丸みを付けられることが好ましい。
【0008】
吸着剤缶を製造する方法としての本発明の1つの形態は、第1の多孔質プラスチック(可撓性)シートを中空防湿プラスチック胴部の第1の開口端を覆って置くステップと、第1のシートを中空胴部の第1の開口端に融着するステップと、を含む。第1のシートと中空胴部の第1の開口端との間の第1の融着接合部で取り囲まれる第1のシートの部分は、缶の第1の端部を形成する。第1の融着接合部を越えて延伸する第1のシートの残存する部分は、缶を第1のシートから分離するために切除される。次に、缶の第1の端部を傾けるために、第1の融着接合部は面取りされる。完成した缶の自動分配を妨害し得る不規則な縁部を残すことがある切除作業における許容誤差の変動が、端部を傾けることによって克服される。
【0009】
中空胴部は軸線と同軸の形状を有し、面取りのステップは、缶の第1の端部に軸線に対して傾いた傾斜面を形成するステップを含むことが好ましい。さらに、面取りのステップは工具を軸線周りに回転するステップを含むことが好ましい。工具は軸線周りの角度方向に離隔された刃を含むことが好ましい。回転する工具などによって形成され得る傾斜面は、軸線と同軸方向であって、軸線に対して30度未満の面取り角度に傾けられることが好ましい。傾斜面は、わずか約15度の面取り角度に傾けられることがより好ましい。面取り角度が浅いことによって、缶の高さが変動しても、面取り作業が確実に中空胴部の壁厚を損なわないようにする。例えば、面取り角度が15度であると、より保守的な面取り角度45度における中空胴部の高さの変動の4倍近くまで適合できる。
【0010】
缶の第1の端部がいったん形成されると、缶は反転され、反応剤(すなわち、吸着または吸収物質)が充填され、そして第2の多孔質プラスチックシートが中空防湿プラスチック胴部の第2の開口端を覆って置かれる。第2のシートは中空胴部の第2の開口端に融着され、第2の融着接合部を越えて延伸する第2のシートの周囲部分は、缶を第2のシートから分離するために切除される。次いで第2の融着接合部は、缶の第2の端部を傾けるために面取りされる。2つの傾斜した端部と一緒に、缶の対向する2つの軸線方向のどちらかにおいて、完成した缶の自動分配を妨害し得る、不規則な縁部が除去される。
【0011】
中空防湿プラスチック胴部は複数の中空防湿プラスチック胴部の第1のものであることが好ましい。複数の中空プラスチック胴部を共通パレット内に取り付けることが可能であり、中空胴部の第2の開口端をパレット内で共通の基準に位置合わせすることが可能であり、そして缶の第1の端部に第1の融着接合部を形成するために、第1のシートを中空胴部の第1の開口端に融着することが可能である。缶を第1のシートの残存部分から分離するために、第1の融着接合部を越えて延伸する第1のシートの残存部分は一括して切除される。さらに、缶の第1の端部を傾けるために、第1の融着接合部は一括して面取りされる。
【0012】
いったん缶の第1の端部が形成されるとパレットを反転することが可能であり、缶の第1の端部を共通の基準に位置合わせすることが可能であり、缶に充填することが可能である。缶の第2の端部に第2の融着接合部を形成するために、第2のシートを中空胴部の第2の開口端に融着することが可能である。缶を第2のシートの残存部分から分離するために、第2の融着接合部を越えて延伸する第2のシートの残存部分を一括して切除することが可能である。次いで、缶の第2の端部を傾けるために、第2の融着接合部を一括して面取りすることが可能である。
【0013】
吸着剤缶としての本発明の別の形態は、開口端を有する中空防湿プラスチック胴部と、中空胴部の開口端に融着された多孔質プラスチックシートを含む。多孔質シートと中空胴部の開口端との間に融着接合部が形成される。融着接合部に形成された傾斜面によって、吸着剤缶の自動分配を妨害し得る融着接合部内の不規則部が除去される。
【0014】
中空胴部は軸線と同軸の形状を有し、傾斜面は軸線に対して傾けられることが好ましい。傾斜面は軸線に対して30度未満の面取り角度に傾けられることが好ましく、そして傾斜面は軸線に対して約15度の面取り角度に傾けられることがより好ましい。
【0015】
多孔質のプラスチックシートは、中空胴部の開口端に向けて熱と圧力をシートに加えることによって、中空胴部の開口端に融着され得る。開口端は、第1の開口端と第2の開口端のうちの第1のものであることが好ましく、多孔質のプラスチックシートは、第1の多孔質のプラスチックシートと第2の多孔質のプラスチックシートのうちの第1のものであることが好ましく、融着接合部は、第1および第2の開口端と第1および第2の多孔質のプラスチックシートの間に形成された第1の融着接合部と第2の融着接合部のうちの第1のものであることが好ましい。さらに傾斜面は、吸着剤缶の自動分配を妨害し得る不規則部を除去するために、第1および第2の融着接合部に形成された第1の傾斜面と第2の傾斜面のうちの第1のものであることが好ましい。
【0016】
したがって本発明はその目的として、接合部で中空胴部に融着された少なくとも1つの多孔質の端部と、自動分配装置の妨害問題を回避するために融着接合部に形成された傾斜面と、を有する改良された吸着剤缶を含む。この缶は、湿分を吸着しまたは酸素などの他の気体を吸収する、気体または蒸気を処理する物質を収納することができる。本発明の別の目的は、傾斜面を有する多孔質の端部を備えたそのような缶を製作するための、改良された方法を提供することである。
【0017】
本発明の様々な態様は、添付する図面を参照し本明細書の以下の部分を読むことによって、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による改良型缶の拡大した側立面図である。
【図2】缶の多孔質の端部を示す、同様に拡大した缶の上面図である。
【図3】傾斜した端部を有する缶の拡大した断面図である。
【図4】傾斜した端部を形成するための面取り作業をする前の充填された缶の拡大した部分側断面図である。
【図5】缶の胴部を形成するための長さに切断される管を示す概略部分平面図である。
【図6】缶が固定治具に設置された後、融接によって缶の第1の端部に多孔質の端部を接着することによる、缶製造における次のステップを示す、缶の断面の概略部分側立面図である。
【図7】図6と同様の図であるが、工程の次のステップ、すなわち過剰な多孔質の材料を缶の端部から切除するステップを示す図である。
【図8】次のステップ、すなわち缶の開口端に気体または蒸気を処理する材料を充填するステップを示す概略断面図である。
【図9】図6と同様の図であり、次のステップ、すなわち缶胴部が気体または蒸気処理材料で充填された後、多孔質の部材を缶胴部の反対側端部に接着するステップを示す図である。
【図10】図7と同様の図であり、缶の端部から切除される過剰な多孔質材料を示す図である。
【図11】充填された缶、および共通の軸線に沿って位置合わせされた面取り工具の拡大した部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1および図2に示す本発明の改良型気体または蒸気処理缶10は、高密度ポリエチレン製の中空の胴部12を備え、多孔質の高密度ポリエチレン製で略円柱形状の多孔質の閉止部材14および16(すなわち、端栓)を有する。多孔質の閉止部材14および16は、接着前は開口している中空胴部12の端部18および20に接着される。図3により明確に示されるように、多孔質の閉止部材14および16は結合部22および24において、中空胴部の開口端18および20に振動溶接または高温治具溶接などの融着作業によって接着される。缶10は、粒状物質30で充填され、この粒状物質は、過剰な湿分、酸素、臭気、またはその他の気体搬送可能な物質を、吸着または吸収することができ、それらのために、吸着剤物質が、その直接の環境から取り除くことを意図している。
【0020】
熱で融着されると多孔質の閉止部材14および16は、中空胴部12の開口端18および20内にくぼむ。融着接合部22および24において、小さいメニスカス部(曲面部)26および28が中空胴部12の周囲の壁32に対して形成され、融着個所で多孔質の閉止部材14および16が一時的にプラスチック状態になったことを証明する。気体または蒸気処理缶10の両端の多孔質の閉止部材14および16の露出表面上に印刷されたテキストメッセージ33は、使用中に収納容器と混ぜられる可能性のある製品から、缶10をさらに区別する警告を表す。
【0021】
本発明により、傾斜面34および36が融着接合部22および24内に形成されて、接合部22または24内のどのような過剰材料も確実に取り除かれることが好ましい。例えば、傾斜面34および36を形成する面取り作業の前には、図4に示すように、融着個所の切除されていない縁部38が、中空胴部12の意図する周辺部を越えて延伸している。切除されていない縁部38があることにより、缶を錠剤瓶などの製品包装体内へ意図して分配することが妨害される。
【0022】
切除されていない縁部38を除去することにより形成される傾斜面34および36は、中空胴部12の中心軸線40に対して角度α傾けられる。数学的にいえば、中空胴部12の周は中心軸線40回りに回転する1つの線によって形成される。傾斜角αはその軸線40に対して、30度以下に傾けられることが好ましく、およそ15度であることが最も好ましく、その結果、傾斜面34および36の形成により、中空胴部12の幅寸法に相当する中心軸線40に対する半径方向内よりも、中空胴部12の高さ寸法に相当する中心軸線40に沿った縦軸方向内で、より多くの材料が除去されるようにする。中空胴部12は実際に収納容器として機能するように中空であるため、中空胴部12の周囲の壁32は限られた厚さ寸法を有し、比較的急峻な傾斜角度αとすることによって、破断しないように防護されている。
【0023】
傾斜面34および36は、円錐部分として長手方向にあることが好ましく、それによって急峻な傾斜角度αを活用して、中空胴部12の残存する壁厚への影響を相対的に減少させる。傾斜面は、曲線またはその他の丸みを付けた側面形状を含む、別の形状によっても形成され得る。
【0024】
直ぐ上に述べた傾斜面34および36を形成するための面取り作業以前の缶10の製造について、残りの図面を通してさらに詳細に説明する。工程の第1のステップは中空胴部12を供給することである。
【0025】
図5に示すように、中空胴部12は、管を回転し前進させる装置56に付けられた適切な切断刃54を用いて、押し出し成形された高密度ポリエチレン管52を切断し、胴部12にすることによって得られる。あるいは、中空胴部12は任意の別の適切な方法で得ることも可能である。図6に示すように次のステップは、固定治具60の表面66および68から突き出ている、中空胴部12の端部18および20の非常に小さい端部62および64のみによって、中空胴部12を固定治具60内(中空胴部20の群内など)に押し込み固定することである。これによって、胴部12は引き続く溶接作業の間しっかりと保持されることになる。その後、多孔質の高密度ポリエチレンシート70が中空胴部12の開口端18および20を覆って置かれる。シート70はつや消し面と光沢面とを有し得る。シート70のつや消し面は中空胴部12の開口端20に接触して配置され、光沢面は胴部12の端部20と反対側に配置されることが好ましい。次いで加熱された溶接ダイ76が、十分な熱および圧力を持ってシート70に加えられ、融着接合部24でシート70と中空胴部12とが重なる部分を一緒に融着する。溶接ダイ76は、カートリッジ外形を挿入するために縦軸に沿って形成された穴を有する、特殊鋼(P20)製の長方形のバーで形成されることが好ましい。溶接ダイ76が所望の温度を保持するように、制御器にフィードバックするために熱電対を挿入する別の穴が形成され得る。
【0026】
図6では明らかでないが、溶接ダイ76からの熱は、融着接合部24の近傍で一時的にシート70を軟化し、そのためシート70の圧縮されていない中央部78は中空胴部12の内部に引き込まれ、融着接合部24で中空胴部12の側壁32へのメニスカス部28(図3参照)と連結する。突出している端部分62は、最初に溶接ダイ76が加えられる端部20とは反対側にあって、固定治具60に付いている基部分78によって支持される。
【0027】
溶接ダイ76は、中空胴部12の端部20に向けて矢印82の方向に4.2から7MPa(600から1000ポンド/平方インチ)の間の圧力を、約260℃(華氏500度)の温度で、約1から2秒の間、シート70に加えることが好ましい。多孔質のプラスチックシート70は十分に剛であって、この圧力が加わっても座屈しない。この温度と圧力の組合せが、多孔質のプラスチックシート70の部分を中空胴部12の開口端20に確実に接着させ、融着接合部24を作り出す。
【0028】
多孔質のプラスチックシート70が複数の中空胴部12に接着された後、図7に示すように切除用ダイ80がシート70に加えられ、中空胴部12の周囲を越えるシート70の過剰材料は切除される。図7にも示されるように、切除用ダイ80は複数の円形ナイフ84を備えており、円形ナイフは端部20の外側にあるシート70の過剰な材料を切除する。
【0029】
工程の次のステップは図8に示すように、(a)胴部を保持している固定治具60を反転することにより、処理した胴部12を反転するステップと、(b)ホッパ86などの供給源から粒状物質30を胴部12に充填するステップと、を含む。その後、図9に示すように、多孔質の高密度プラスチック材料製の別のシート90が胴部12の開口端18を覆って配置され、加熱溶接ダイ76が、熱および圧力を矢印82で示されるようにプラスチックシート90の上面に加え、それによって、図6および7を参照して上述した融着接合部24が形成されたと同様の手法で、中空胴部12の端部18との融着接合部22を形成する。この手順の間、多孔質の端部16によって以前に閉止された胴部12の対向する端部20は、固定治具60の基部78の上に支持されている。その後、図10に示すように切除用ダイ80が矢印82の方向に下降させられ、胴部12の融着接合部22から過剰な多孔質材料のシート70を切除する。
【0030】
中空胴部12は高密度ポリエチレン製であることが好ましい。胴部12は、外径約1.397cm(0.55インチ)、長さ約1.600cm(0.630インチ)、壁厚約0.089cm(0.035インチ)であってよい。さらに、中空胴部12は、Chevron Phillips Chemical Company of The Woodlands、TexasのMarlex(商標)HHM5202BNのFDAグレード高密度ポリエチレンとして知られる製品を用いて製作されることが好ましい。中空胴部12が固定治具60の穴内に適切に位置付けられると、中空胴部12は各端部から約0.0762cm(0.030インチ)突出する。
【0031】
シート70および90は、食物または薬剤の包装体への使用に適した多孔質の高密度ポリエチレンで製作することが好ましい。シート70および90は、厚さ0.0711cm(0.028インチ)、プラスマイナス0.0127cm(0.005インチ)であることが好ましい。多孔質のシート70および90は、1平方メートルの面積あたり毎分12.19から36.58立方メートル(1平方フィートの面積あたり毎分40から120立方フィート)の空気流、または3.048cm(1.2インチ)の水圧で、直径2.54cm(1インチ)の円板を通過する毎分1400〜4200ミリリットルの水流を支持することが可能である。シート70および90は、少なくとも1.51MPa(215ポンド/平方インチ)の好ましい引っ張り強さを有し、十分に剛であるべきであり、それによってシート70および90は、予定される溶接作業の間に遭遇する力を受けたときに座屈しないことになる。所望する適用分野に依存して、別の引っ張り強さの値を利用できる。それらの材料の例は、英国Porvair Technology of WrexhamのPorvair PRLF094230として、Porex Technologies of Fairburn、GeorgiaのPorex Porous Products Group X−8054またはX−9474として、あるいはMicropore Plastics,Inc.of Tucker、GAのMicropore 3021として、ロールストックを利用することができる。その他の空孔率は、任意の特定の適用に対する具体的な要求に従って使用できる。
【0032】
多孔質の閉止部材14および16はそれぞれ、中央部分78でシート厚寸法0.071cm(0.028インチ)を保持して、中空胴部12内に引き込まれている。しかし、融着した外側部分は上述の加圧加熱溶接の結果として、融着接合部22および24内に圧縮され得る。別の種類の多孔質のポリエチレンまたは他の樹脂も同様の目的のために使用できる。
【0033】
上述した加熱溶接工程は、約4.2から7MPa(600から1000ポンド/平方インチ)の間の締付け力または圧力を使用し、約4から5秒のサイクル時間を含み、その間に約1から2秒の加熱時間を含む。前述の加熱溶接処理によって、融着接合部22および24で、多孔質の閉止部材14および16と、中空胴部12の端部18および20との間を融着させる。閉止部材14および16と中空胴部12の両方の界面は、それらの空孔率が異なるにも関わらず前述の状況の下で実質的に同時に融解するので、このような融着が得られる。閉止部材14および16を中空胴部に接着するために、別の接着処理も使用可能であり、それは本発明の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,942,060号に開示されているような振動溶接処理を含む。
【0034】
中空胴部12は、ポリエチレンとは別の樹脂によって、別の直径、別の長さ、および別の壁厚を含む別の寸法で製造され得る。上述したように、閉止部材14および16に使用される多孔質の高密度ポリエチレンは、別の剛性、別の厚さ、および別の空孔率で製造され得る。中空胴部12ならびに閉止部材14および16のパラメータが変わると、加熱溶接のパラメータを変える必要がある。
【0035】
1つの好ましい粒状物質30は、粒径約0.5〜1mmのホワイトシリカゲルであり、英国WarringtonのIneos Silicas Ltd.から入手可能であり、それらのシリカゲルを収納する缶10は、薬剤収納容器、食物収納容器、および湿分の吸着が望まれるその他の任意の環境などの様々な環境内において、湿分の吸着のために使用するように意図される。例として、かつ限定するものではなく、活性炭、モレキュラーシーブ、活性ベントナイト、モンモリロナイト、硫酸カルシウム、およびクリントライト(Clintolite)、ならびに結晶金属アルミノケイ酸塩などの物質を含む、別の種類の粒状または非粒状の、気体または蒸気を処理する物質が使用可能である。缶は、従来の酸素吸収組成物および従来の二酸化炭素吸収組成物を含み、かつそれらに限定されることなく、任意の別の適切な製品を収納することも可能である。前述の製品は、缶10が設置された環境から、気体を吸収または吸着する。しかし缶10は、蒸気を発生する製品を収納することも可能であり、それらの蒸気は、例としてかつ限定するものではなく、臭気および二酸化炭素を含み、缶が配置された環境内に流入する。したがって、缶胴部12内の物質は「気体または蒸気処理剤」として特徴付けられる。
【0036】
缶10の具体的な物質が高密度ポリエチレンであるとして上で説明されているが、上記に加えて、ポリプロピレンも胴部11および多孔質部材14の両方に使用でき、したがって加熱溶接に影響を与えるパラメータも調整できることも理解されるべきである。図1〜図4に示された種類の缶を形成するために、別の樹脂も使用可能であると考えられ、そこにおいて多孔質の閉止部材14および16は上述したように、複数の円環状の位置で接着される。これらの他の樹脂としては、例としてかつ限定するものではなく、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリルスチレン(SAN)、ポリスルホン(PS)、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、ポリカーボネート(PC)、ポリフタレートカーボネート(PPC)、およびポリエーテルスルホン(PES)を含み得る。
【0037】
缶10は2つの多孔質の端部部材14および16を有するものとして上で説明されてきたが、缶10は、例えば16で作られた14のようにただ1つの多孔質端部部材で製作されたり、他の端部を多孔質ではなくしたり、他の端部部材を胴部と一緒にまたは胴部に取り付けて一体化しても製作できると理解されたい。同様に、缶10は気体または蒸気を処理する組成物を収納するものとして説明されてきたが、それはその内容物にかかわらず汎用性を有すると考えられる。この観点から缶10は、例えば、呼吸することはできるが、それ以外には缶10の外側の気体または蒸気と、吸収、吸着、またはその他のどのような相互作用もしない製品を収納してもよい。
【0038】
切除作業の後に、または切除作業と一緒にあるいはその代わりに、缶10の両端部の融着接合部22および24に、傾斜面34および36を形成するために、図11に示すような面取り工具100を使用することが可能である。傾斜面34および36を形成することにより、中空胴部12の意図された周囲から外に延伸し、完成した缶10による分配作業を妨害する可能性がある、缶10の両端部の切除されていないどのような端部38も確実に除去される。
【0039】
面取り工具100は、中空胴部12の中心軸線40に位置合わせされた軸線102回りに回転可能であって、円筒状胴部104と、回転軸線102周りに角度方向に離隔された切断刃106と、を含むことが好ましい。さらに面取り工具100は、面取り工具100を缶10の融着接合部22および24と係合させるように送り込むために、回転軸線102および中心軸線40に沿って、缶10に対して相対的に並進移動(平行移動)できることが好ましい。切断刃の切断端108は、傾斜面34および36を該当する面取り角度αに形成するために、回転軸線102に対して角度βだけ傾けられていることが好ましい。
【0040】
面取り角度αは30度未満であることが好ましい。傾斜面34および36は、わずか約15度だけの面取り角度に傾けられていることがより好ましい。面取り角度αが浅いことによって、缶10の高さの変動にかかわらず、中空胴部12の壁厚「t」は面取り作業によって損なわれないことが確保される。例えば、面取り角度αが15度であると、より保守的な面取り角度45度における中空胴部の高さの変動「Δh」の4倍近くまで適合できる。面取り工具100の切断深さを設定するために、固定治具60に関して治具の止め具を基準にすることができる。工具当り2つの切断刃106とすることが好ましい。700から1500回転毎分(RPM)の間の回転速度もまた好ましい。切断する際に、素早く接近するがゆっくりした送りを実現するために、回転軸線102に沿った面取り工具100の垂直方向の送りは、速度可変であることが好ましい。
【0041】
固定治具60内で複数の缶10の端部を面取りするために、1つの面取り工具100が缶10の間で並進移動され得るか、または複数の面取り工具100が使用され得る。複数の面取り工具100は、複数の面取り工具100の個別のまたは集団としての並進移動と共に、缶10の間で面取り工具の割出しをするために使用することも可能である。例えば、一度に5つの缶端部を面取りするために5つの頭部を持つスピンドルを使用することが可能であり、同じ固定治具60内で、別の5つの缶端部のセットを面取りするために、この5つの頭部を持つスピンドル全体の割出しをすることができる。面取り工具100は、切除用ダイ80に追加して、またはその交換用として使用可能である。すなわち面取り工具100は、(a)多孔質のシート70および90を切り通して、缶10をシート70および90から分離すること、ならびに(b)切断を続けて(すなわち、回転軸線102に沿って相対的に並進移動して)、融着接合部22および24に傾斜面34および36を形成すること、のために使用することが可能である。
【0042】
ひとたび缶10が分離され面取りされると、その端部に警告メッセージ33が印刷され、目視検査され、完成した缶10として固定治具60から放出されることが好ましい。傾斜面34および36を有する新しい缶10は、製造の結果生じた周辺端部によって分配が妨害されないことに強い確信を持って、製品包装体内に分配され得る。
【0043】
本発明の好ましい実施形態を開示してきたが、実施形態はそれらに限定されるものではなく、添付する特許請求の範囲内に具体化され得る、ということを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤缶を製造する方法において、
多孔質で可撓性の第1のシートを、可撓性の中空胴部の第1の開口端を覆って、置くステップと、
前記第1のシートを、前記中空胴部の前記第1の開口端に融着するステップであって、前記融着は、前記第1のシートの部分で前記缶の第1の端部を形成するためになされ、前記第1のシートの前記部分は、前記第1のシートと前記中空胴部の前記第1の開口端との間の第1の融着接合部で取り囲まれる、融着するステップと、
前記第1のシートの残存する部分を切除するステップであって、前記残存する部分は、前記第1の融着接合部を越えて延伸し、前記切除は、前記缶を前記胴部の前記残存する部分から分離するためになされる、切除するステップと、
前記缶の前記第1の端部を傾けるために、前記第1の融着接合部を面取りするステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記中空胴部は軸線と同軸の形態を有し、前記面取りするステップは、前記缶の前記第1の端部において、前記軸線に対して傾けられた傾斜面を形成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記面取りするステップは、前記軸線周りに工具を回転するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工具は、前記軸線周りの角度方向に離隔された刃を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記面取りするステップは、前記傾斜面を前記軸線に対して30度未満の面取り角度に傾けるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記面取りするステップは、前記傾斜面を約15度の面取り角度に傾けるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記缶を反転するステップと、前記缶に充填するステップと、前記中空プラスチック胴部の第2の開口端を覆って、多孔質で可撓性の第2のシートを置くステップと、前記缶の第2の端部を形成するために、前記第2のシートを前記中空胴部の前記第2の開口端に融着するステップと、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のシートの周囲部分を切除するステップであって、前記第2のシートは第2の融着接合部を越えて延伸し、前記切除するステップは、前記缶を前記第2のシートから分離するためになされる、切除するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記缶の前記第2の端部を傾けるために、前記第2の融着接合部を面取りするステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2のシートを融着する前記ステップは、前記中空胴部の前記第1および第2の開口端に向けて、前記第1および第2のシートに熱および圧力を加えるステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記可撓性の中空胴部は複数の可撓性の中空胴部の第1のものであって、前記複数の中空胴部を共通パレット内に取り付けるステップと、前記パレット内の前記中空胴部の第2の開口端を共通の基準に位置合わせするステップと、前記缶の第1の端部に第1の融着接合部を形成するために前記第1のシートを前記中空胴部の前記第1の開口端に融着するステップと、を含む請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記切除するステップは、前記缶を前記第1のシートの前記残存部分から分離するために、前記第1の融着接合部を越えて延伸する前記第1のシートの前記残存部分を一括して切除するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記面取りするステップは、前記缶の前記第1の端部を傾けるために、前記第1の融着接合部を一括して面取りするステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記パレットを反転するステップと、前記缶の前記第1の端部を共通の基準に位置合わせするステップと、前記缶に充填するステップと、前記缶の第2の端部に第2の融着接合部を形成するために、前記第2のシートを前記中空胴部の第2の開口端に融着するステップと、前記缶を前記第2のシートの残存部分から分離するために、前記第2の融着接合部を越えて延伸する前記第2のシートの前記残存部分を一括して切除するステップと、前記缶の前記第2の端部を傾けるために、前記第2の融着接合部を一括して面取りするステップと、を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記切除するステップと面取りするステップとが単一の操作で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
回転式切断工具が、前記第1のシートの前記残存部分を切除するステップと、
前記缶の前記第1の端部を傾けるための前記第1の融着接合部を面取りするステップと、の両方を可能にする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記切除するステップと面取りするステップが別々の操作で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記切除するステップと面取りするステップとが異なる工具を用いて実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
吸着剤缶において、
開口端を有する可撓性の中空胴部と、
前記中空胴部の前記開口端に融着された、可撓性の多孔質シートと、
前記多孔質シートと前記中空胴部の前記開口端との間の融着接合部と、
前記融着接合部に形成された傾斜面と、を含む吸着剤缶。
【請求項20】
前記中空胴部は軸線と同軸の形状を有し、前記傾斜面は前記軸線に対して傾けられる、請求項19に記載の缶。
【請求項21】
前記傾斜面は前記軸線に対して30度未満の面取り角度に傾けられる、請求項20に記載の缶。
【請求項22】
前記傾斜面は前記軸線に対して約15度の面取り角度に傾けられる、請求項20に記載の缶。
【請求項23】
前記中空胴部の前記開口端に向けて熱と圧力を前記シートに加えることによって、前記可撓性の多孔質シートが前記中空胴部の前記開口端に融着される、請求項19に記載の缶。
【請求項24】
前記開口端は、第1の開口端と第2の開口端のうちの第1のものであり、前記可撓性の多孔質シートは、可撓性の第1の多孔質シートと可撓性の第2の多孔質シートのうちの第1のものであり、前記融着接合部は、前記第1および第2の開口端と前記可撓性の第1および第2の多孔質シートの間に形成された第1の融着接合部と第2の融着接合部とのうちの第1のものであり、前記傾斜面は、前記第1および第2の融着接合部に形成された第1の傾斜面と第2の傾斜面とのうちの第1のものである、請求項19に記載の缶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−524786(P2010−524786A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504134(P2010−504134)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/057486
【国際公開番号】WO2008/127834
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(503264031)マルチソーブ テクノロジーズ インコーポレイティド (12)
【Fターム(参考)】