説明

像加熱装置

【課題】自己温度制御型の正の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体を加熱体に用いて、ニップ部が形成される側の温度を目標温度まで昇温でき、非通紙部昇温の発生を低減できるようにした像加熱装置を提供すること。
【解決手段】加熱体(3)は、通電により発熱する第1の抵抗発熱体であって自己温度制御型の正の抵抗温度特性を有する第1の抵抗発熱体(7)と、通電により発熱する第2の抵抗発熱体であって記録材搬送方向に対して垂直な方向で前記第1の抵抗発熱体に積層された第2の抵抗発熱体(6)と、を有し、前記第1の抵抗発熱体の抵抗値R1と、前記第2の抵抗発熱体の抵抗値R2の関係が、トナー像を加熱するための目標温度よりも高い温度であって前記第1の抵抗発熱体の自己温度制御を行う温度T1以下ではR1<R2であり、前記温度T1を超えてR1>R2となることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像形成装置に搭載される定着装置(定着器)として用いれば好適な像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の複写機やプリンタに搭載される定着装置(定着器)として、フィルム加熱方式の定着装置が知られている。このフィルム加熱方式の定着装置は、セラミックス製の基板上に通電により発熱する抵抗発熱体を有するヒータと、ヒータと接触しつつ移動する筒状の定着フィルムと、定着フィルムを介してヒータとニップ部を形成する加圧ローラと、を有している。未定着トナー画像を担持する記録材はニップ部で挟持搬送されつつ加熱され、これにより記録材上の画像は記録材に加熱定着される。
【0003】
この定着装置は、ヒータへの通電を開始し定着可能温度まで昇温するのに要する時間が短いというメリットがある。従ってこの定着装置を搭載するプリンタは、プリント指令の入力後、1枚目の画像を出力するまでの時間(FPOT:First Print Out Time)が短くできる。またこのタイプの定着装置は、プリント指令を待つ待機中の消費電力が少ないというメリットもある。
【0004】
ところで、定着フィルムを用いた定着装置を搭載するプリンタで小サイズの記録材を大サイズの記録材と同じプリント間隔で連続プリントすると、ヒータの記録材が通過しない領域(非通紙領域)が過度に昇温(非通紙部昇温)することが知られている。
【0005】
銀パラジウム等、一般に使用されるヒータの抵抗発熱体は正の抵抗温度特性を有する。そのため、ヒータの記録材搬送方向と直交する長手方向に配設された抵抗発熱体に給電する場合は、一度非通紙部昇温が生じると通紙部よりも非通紙部の抵抗発熱体の電気抵抗値が大きくなる。それにともなって電力(発熱量)も通紙部よりも非通紙部の方が大きくなるため、非通紙部昇温はますます増大していくのである。
【0006】
この非通紙部昇温の発生を防止するという課題に対して、特許文献1では、自己温度制御型の正の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体を具備した加熱体を用い、抵抗発熱体への給電方向を加熱体の厚み方向とする加熱装置を提案している。
【0007】
この特許文献1の加熱体は、キュリー温度と呼ばれる転移温度に到達すると、電気抵抗値がキュリー温度以下のときよりも桁違いに高くなり給電をカットさせ、電力を急激に低下させるという特性を有している。したがって検温素子による温度制御をすることなく、キュリー温度で加熱体を自己温度制御することができるのである。つまりこの特性を用いることによって、非通紙部昇温をキュリー温度で止めることが可能となる。また、抵抗発熱体への給電方向が加熱体の厚み方向であるので、非通紙部の給電がカットされた場合でも通紙部の給電はカットされることはなく、通紙部の電力不足を引き起こすことはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−199693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特に大きな正の抵抗温度特性を有することで自己温度制御型の抵抗発熱体の材料として好適に用いられるのがチタン酸バリウムである。チタン酸バリウムをヒータの構成材料として用いる場合には、熱伝導率がアルミナや窒化アルミニウム等のセラミックスと比較してかなり低いことと、耐電圧に注意する必要がある。
【0010】
従来のフィルム加熱方式の定着装置で用いられているヒータは定着フィルムの内側でステーに支持されている。このヒータのセラミックス基板(以下では基板と記す)にはアルミナや窒化アルミニウム等の材料が用いられる。アルミナ及び窒化アルミニウムの熱伝導率はそれぞれ約20W/mK、200W/mKであるから、基板の厚みが約1mmのものを使用した場合でも基板全体に熱を良く伝えることができる。
【0011】
そのためヒータと定着フィルムが摺動するニップ部側(以下ではニップ側と記す)の温度を、ヒータの基板厚み方向のニップ側とは反対側(以下ではステー側と記す)に設けられた検温素子によって検知することができる。これによってニップ側の温度制御をすることができるのである。
【0012】
一方、チタン酸バリウムの熱伝導率は約1W/mKであり、アルミナや窒化アルミニウムと比較するとかなり低い。そのため、特許文献1のようにバルク状の加熱体(以下ではバルク状加熱体と記す)を用いた場合にはニップ側とステー側で大きな温度差を生じることがあり、ステー側に設けられた検温素子によってニップ側の温度を検知することができないことがある。そのため、バルク状加熱体を用いた場合には、検温素子をニップ側に設けることが望ましい。
【0013】
しかし、検温素子はニップ側の温度を検知することができるようになる。ところが、ニップ側の温度を所定の設定温度(以下では目標温度と記す)まで昇温させるより先に、熱を奪われることがないステー側の温度がキュリー温度まで昇温し、バルク状加熱体全体の給電をカットしてしまうという問題がある。このときキュリー温度を目標温度よりも高く設定しておくことによって、ニップ側の温度を目標温度まで昇温させるようにすることはできるようになる。しかし、ニップ側の温度が目標温度に達するときステー側の温度はステーの耐熱温度を超えるほど高温になるため、このような構成は用いることはできない。
【0014】
また、バルク状加熱体の長手方向で非通紙部昇温が発生した際には、ニップ側の非通紙部温度が、加圧ローラの耐熱温度を超えるほど高温になるため、チタン酸バリウムの本来の目的である非通紙部昇温の抑制効果が得られなくなってしまう。
【0015】
これらの課題を解決するため、チタン酸バリウムの高熱伝導化が求められるが、チタン酸バリウムは上記特性を出すため内部に多くの空孔を含んでおり、高熱伝導化は難しい。
【0016】
バルク状加熱体の厚みを薄くしていくことによってニップ側とステー側の温度差を少なくすることも考えられるが、チタン酸バリウムには耐電圧という問題があり、これも容易にはできない。
【0017】
耐電圧とはチタン酸バリウムに温度制御なしに一定時間印加しても耐えられる電圧のことであり、これを超える電圧を印加した場合チタン酸バリウムは破壊に至る。耐電圧は電極間のチタン酸バリウムの厚みとその体積抵抗率で決まり、耐電圧を満足させるとき、厚みを厚くするほど体積抵抗率を低くすることができ、逆に厚みを薄くすると体積抵抗率は高くなるという傾向がある。つまり耐電圧を満足させながら厚みを薄くしていくと、チタン酸バリウムの抵抗値が加熱体として望ましい抵抗値よりも高くなってしまうため、極端に薄くすることはできない。
【0018】
本発明の目的は、自己温度制御型の正の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体を加熱体に用いて、ニップ部が形成される側の温度を目標温度まで昇温でき、非通紙部昇温の発生を低減できるようにした像加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するための本発明に係る像加熱装置の構成は、加熱体と、前記加熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、前記加熱体と共に前記可撓性部材を挟んでニップ部を形成する加圧部材と、を有し、前記ニップ部で記録材が担持するトナー像を挟持搬送しつつトナー像を加熱する像加熱装置において、前記加熱体は、通電により発熱する第1の抵抗発熱体であって自己温度制御型の正の抵抗温度特性を有する第1の抵抗発熱体と、通電により発熱する第2の抵抗発熱体であって記録材搬送方向に対して垂直な方向で前記第1の抵抗発熱体に積層された第2の抵抗発熱体と、を有し、前記第1の抵抗発熱体は前記ニップ部が形成される側とは反対側に配設され、前記第2の抵抗発熱体は前記ニップ部が形成される側に配設され、前記第1の抵抗発熱体と前記第2の抵抗発熱体が記録材搬送方向に対して垂直な方向で電気的に直列に接続されていて、前記第1の抵抗発熱体の抵抗値R1と、前記第2の抵抗発熱体の抵抗値R2の関係が、トナー像を加熱するための目標温度よりも高い温度であって前記第1の抵抗発熱体の自己温度制御を行う温度T1以下ではR1<R2であり、前記温度T1を超えてR1>R2となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、自己温度制御型の正の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体を加熱体に用いたときに、ニップ部が形成される側の温度を目標温度まで昇温でき、非通紙部昇温の発生を低減できるようにした像加熱装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の定着装置の横断面概略構成模式図である。
【図2】実施例1の定着装置の通紙部と非通紙部の説明図である。
【図3】画像形成装置の一例の概略構成模式図である。
【図4】実施例1のヒータの断面図である。
【図5】実施例1のヒータの第1の抵抗発熱体、第2の抵抗発熱体、及び第1の抵抗発熱体+第2の抵抗発熱体の抵抗温度特性を表すグラフである。
【図6】実施例1の定着装置のヒータの温度を表すグラフである(その1)。
【図7】実施例1の定着装置のヒータの温度を表すグラフである(その2)。
【図8】比較例のヒータの断面図である。
【図9】比較例の定着装置のヒータの温度を表すグラフである。
【図10】実施例2のヒータの断面図である。
【図11】実施例3のヒータの断面図である。
【図12】実施例3のヒータに検温素子を取り付けた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図3は本発明に係る像加熱装置を定着装置(定着器)として搭載する画像形成装置の一例の概略構成模式図である。この画像形成装置は電子写真式のレーザービームプリンタである。
【0023】
本実施例に示す画像形成装置は、像担持体としてのドラム形状の電子写真感光体(以下では感光ドラムと記す)101と、帯電部材としての帯電ローラ102と、露光装置としてのレーザー走査装置103などを有している。また同画像形成装置は、現像スリーブ、現像ブレード及び1成分磁性トナー(以下ではトナーと記す)などを具備する現像装置104と、クリーニングブレード107と、転写ローラ106と、定着装置107などを有している。
【0024】
本実施例の画像形成装置は、プリント指令に応じて駆動モータ(不図示)を回転駆動させることにより感光ドラム101を矢印方向へ所定の周速度(プロセススピード)で回転する。この感光ドラム101の外周面(表面)は帯電ローラ102によって一様に負の電荷に帯電される(帯電工程)。
【0025】
そして感光ドラム101表面の帯電面に対しレーザー走査装置103から目的の画像情報に応じたレーザービームを照射して感光ドラム101表面の帯電面に静電潜像を形成する(露光工程)。
【0026】
現像装置104はトナーを現像スリーブの外周面(表面)に付着させると共にその現像スリーブ表面のトナーを現像ブレードで摩擦帯電させて感光ドラム101表面の静電潜像に付着させる(現像工程)。これにより感光ドラム101表面の静電潜像がトナーにより現像されてトナー画像となる。
【0027】
一方、給紙カセット108に積載された記録紙などの記録材Pは送りローラ109で搬送ローラ110に送り出される。そしてこの搬送ローラ110はその記録材Pを所定のタイミングで感光ドラム101表面と転写ローラ106の外周面(表面)とで形成された転写ニップ部Tnに搬送する。この記録材Pは転写ニップ部Tnで感光ドラム101表面と転写ローラ106表面とで挟持搬送される。そしてこの記録材Pの搬送過程において感光ドラム101表面のトナー画像が転写ローラ106によって記録材上に転写される(転写工程)。トナー画像転写後に感光ドラム101は感光ドラム101表面の残留トナーがクリーニングブレード107で除去されて次の画像形成に供される。
【0028】
トナー画像を担持した記録材Pは定着装置107の後述する定着ニップ部Nに導入され、定着ニップ部Nでトナー画像に熱と圧力を印加することによりトナー画像は記録材上に加熱定着される。定着ニップ部Nから排出された記録材Pは排出ローラ111により排出トレー112に排出される。
【0029】
(2)定着装置(像加熱装置)107
以下の説明において、定着装置及び定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材搬送方向と直交する方向をいう。短手方向とは記録材搬送方向と平行な方向である。長さとは長手方向の寸法である。幅とは短手方向の寸法である。記録材に関し、長手方向とは記録材搬送方向と平行な方向をいう。幅方向とは記録材搬送方向と直交する方向をいう。長さとは長手方向の寸法である。幅とは幅方向の寸法である。
【0030】
図1は実施例1に係る定着装置の横断面概略構成模式図である。図2は同定着装置の通紙部と非通紙部の説明図である。この定着装置はフィルム加熱方式の定着装置である。
【0031】
本実施例に示す定着装置107は、可撓性及び耐熱性を有する筒状の可撓性部材としての定着フィルム2と、加熱体としてのヒータ3と、ガイド部材としてのガイドステー1と、加圧部材としての加圧ローラ4などを有している。定着フィルム2と、ヒータ3と、ガイドステー1と、加圧ローラ4は、何れも長手方向に長い部材である。
【0032】
定着フィルム2は、ヒータ3を支持しているガイドステー1の外周にルーズに外嵌させてある。この定着フィルム2の内周長とガイドステー1の外周長は定着フィルム2の方を例えば3mm程度大きくしてあり、従って定着フィルム2は周長に余裕を持ってガイドステー1の外周に外嵌されている。本実施例では、定着フィルム2の内周長は57mmとした。
【0033】
ガイドステー1は、定着フィルム2の回転をガイドするために横断面略凹字形状に形成されている。このガイドステー1は、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PPS、液晶ポリマー等の高耐熱性樹脂や、これらの樹脂とセラミックス、金属、ガラス等との複合材料等の材料を用いて作製されている。本実施例ではガイドステー1の材料として液晶ポリマーを用いた。そしてこのガイドステー1の定着フィルム2の長手方向両端から長手方向に突出させた被支持部1a(図2参照)を定着装置107の長手方向両側の支持フレーム(不図示)に支持させ固定している。
【0034】
定着フィルム2としては、定着フィルム2の熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、膜厚は100μm以下、好ましくは50μm以下20μm以上の耐熱性のあるPTFE、PFA、FEP等の単層フィルムを使用できる。或は、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES、PPS等のフィルム基層の外周表面にPTFE、PFA、FEP等をコーティングした複合層フィルムを使用できる。この他に、膜厚30μm以下のステンレス製のフィルム基層の外周表面にPTFE、PFA、FEP等をコーティングした複合層フィルムも使用できる。本実施例では、定着フィルム2として、膜厚約50μmのポリイミドのフィルム基層の外周表面にPTFEをコーティングしたものを用いた。
【0035】
加圧ローラ4は、丸軸形状の芯金4aと、芯金4aの長手方向両側の軸部4a1(図2参照)間の外周面上に設けられた弾性体層4bと、弾性体層4bの外周面上に設けられた最外層の離形層4cなどを有している。本実施例では、芯金4aは鉄芯金を用い、弾性体層4bはシリコーンゴムを用い、離形層4cはPFAを弾性体層4bの外周面上にコーティングしたものを用いた。加圧ローラ4の外径は20mm、弾性体層4bの厚さは3mmとした。
【0036】
この加圧ローラ4は、定着フィルム2内側のヒータ2と定着フィルム2を介して対向するように配設され、芯金4aの長手方向両側の軸部4a1を上記支持フレームに軸受(不図示)を介して回転可能に支持させている。そしてその芯金4aの長手方向両側にある軸受を加圧バネ(不図示)により定着フィルム2側に加圧して加圧ローラ4の外周面(表面)を定着フィルム2の外周面(表面)に加圧状態に接触させている。これにより加圧ローラ4の弾性体層4bを弾性変形させて加圧ローラ4表面と定着フィルム2表面とで所定の幅の定着ニップ部(ニップ部)Nを形成している。つまり、加圧ローラ4はヒータ2と共に定着フィルム2を挟んで定着ニップ部Nを形成している。
【0037】
図4において、(a)は本実施例のヒータ3の短手方向の断面図、(b)は同ヒータ3の長手方向の断面図である。ヒータ3は、ガイドステー1の短手方向中央の下面で長手方向に沿って設けられた溝1b(図1参照)に嵌合させて支持されている。このヒータ3は、通電により発熱する抵抗発熱体であり定着ニップ部Nが形成される側とは反対側に配設された第1の抵抗発熱体7と、通電により発熱する抵抗発熱体であり定着ニップ部Nが形成される側に配設された第2の抵抗発熱体6などを有している。以下、ヒータ3及びヒータ3を構成する部材に関し、定着ニップ部Nが形成される側とは反対側をステー側と記し、定着ニップ部Nが形成される側をニップ側と記す。
【0038】
ヒータ3は、加熱体基板としてのヒータ基板(以下では基板と記す)8を有している。そしてこの基板8のステー側に、給電用電極3aと、第2の抵抗発熱体6と、第1の抵抗発熱体7と、給電用電極3bをその順に有している。基板8には、厚さ0.5mm、幅8mm、長さ220mmとした長手方向に細長いアルミナ基板を用いている。本実施例では、後述のように基板8のニップ側の面を定着フィルム1の外周面(内面)に接触させることによりヒータ3と定着フィルム1との摺動性及び絶縁性を確保している。
【0039】
この基板8のステー側の面に厚さ50μm、幅6mm、長さ220mmの給電用電極3aをスクリーン印刷により塗工して形成した。給電用電極3aの材料は銀である。この給電用電極3aのステー側の面に厚さ100μm、幅6mm、長さ220mmの第2の抵抗発熱体6をスクリーン印刷により塗工して形成した。第2の抵抗発熱体6の材料は抵抗温度係数が400ppm/℃の銀パラジウムである。
【0040】
第2の抵抗発熱体6のステー側の面に厚さ1mm、幅6mm、長さ220mmの第1の抵抗発熱体7をスクリーン印刷により塗工して形成した。第1の抵抗発熱体7の材料は熱伝導率が1W/mKのバルク状のチタン酸バリウムである。つまり、第1の抵抗発熱体7は、自己温度制御型の正の抵抗温度係数を有する材料を用いて長手方向に細長い板状に形成してある。第2の抵抗発熱体6は、自己の温度にかかわらず抵抗値がほぼ一定の材料を用いて長手方向に細長い板状に形成されていて、記録材搬送方向a(図1参照)に対して垂直な方向で第1の抵抗発熱体7に積層されている。
【0041】
第1の抵抗発熱体7のステー側の面に厚さ50μm、幅6mm、長さ220mmの給電用電極3bをスクリーン印刷により塗工して形成した。給電用電極3bの材料は給電用電極3aと同じ銀である。
【0042】
図1に示すように、ヒータ3は基板8を定着フィルム2の内周面(内面)に接触させるように下向きにしてガイドステー1の溝1bに支持されている。そしてヒータ3の短手方向において基板8の定着ニップ部N上流側の突出部8a上に温度検知部材としての検温素子5を配設している。
【0043】
図5はヒータ3の第1の抵抗発熱体7、第2の抵抗発熱体6、及び第1の抵抗発熱体7+第2の抵抗発熱体6の抵抗温度特性を表すグラフである。図5に示すように、第1の抵抗発熱体7と第2の抵抗発熱体6の室温(25℃)における電気抵抗値を、それぞれ、R1=1Ω、R2=15Ωとした。
【0044】
本実施例では、後述のように記録材Pが担持するトナー画像Tを記録材上に加熱定着するためのヒータ3の温調温度(定着温度(目標温度))を200℃としている。このため、第1の抵抗発熱体7のキュリー温度T1(自己温度制御を行う温度T1)は温調を妨げることのないよう温調温度(トナー像を加熱するための目標温度)200℃よりもわずかに高い220℃とした。つまり、第1の抵抗発熱体7の抵抗値R1と、第2の抵抗発熱体6の抵抗値R2の関係が、温調温度よりも高い温度であって第1の抵抗発熱体7のキュリー温度T1以下ではR1<R2であり、キュリー温度T1を超えてR1>R2となる。
【0045】
本実施例の定着装置107は、CPUとROMやRAMなどのメモリからなる制御手段としての制御部24がプリント指令に応じて給電制御手段としてのトライアック25をオンし、これにより商用電源26からヒータ3の給電用電極3a,3bに給電される。
【0046】
ヒータ3は、給電用電極3a,3bに対する給電により第2の抵抗発熱体6が長手全長に亘って発熱することで昇温する。このとき、第1の抵抗発熱体7と第2の抵抗発熱体6は電気的に直列に接続されているため共に発熱するが、電気抵抗値の関係(R1<R2)から第1の抵抗発熱体7の電力(発熱量)は第2の抵抗発熱体6の1/15となる。このため、第1の抵抗発熱体7は自己温度制御を行うキュリー温度T1以下ではほとんど発熱しない(図5参照)。
【0047】
検温素子5はヒータ3の温度を検知し、制御部24は検温素子5からの出力信号をA/D変換器(不図示)を介して取り込む。そして制御部24は検温素子5からの出力信号に基づいてトライアック25により第2の抵抗発熱体6と第1の抵抗発熱体7に通電する電力を位相、波数制御等により制御して、ヒータ3の温度制御がなされる。即ち、検温素子5の検知温度が温調温度より低い場合にヒータ3が昇温するように給電用電極3a,3bへの通電を制御し、温調温度より高い場合にはヒータ3が降温するように給電用電極3a,3bへの通電を制御する。これによりヒータ3は一定の温調温度(200℃)に保たれる。
【0048】
また制御部24はプリント指令に応じて定着用の駆動モータ(不図示)を回転駆動することにより加圧ローラ4の芯金4aを回転させる。これにより加圧ローラ4は図1に示す矢印方向へ回転する。この加圧ローラ4の回転は定着ニップ部Nで加圧ローラ4表面と定着フィルム2表面との摩擦力により定着フィルム2に伝わる。これにより定着フィルム2は定着フィルム2内面がヒータ3の基板8のニップ部側の面と接触しながら加圧ローラ4の回転に追従して図1に示す矢印方向へ回転(移動)する。
【0049】
ヒータ3に通電され、かつ加圧ローラ4を回転させた状態において、トナー画像Tを担持した記録材Pがトナー画像担持面を上向きにして定着ニップ部Nに導入(通紙)される。そして定着ニップ部Nにおいて記録材Pは定着フィルム2表面と加圧ローラ4表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この搬送過程においてトナー画像Tに熱と圧力が印加され、これによりトナー画像Tは記録材上に加熱定着される。定着ニップ部Nを通った記録材Pは定着フィルム2表面から分離されて定着ニップ部Nから排出される。
【0050】
図6は本実施例における定着装置107の定着ニップ部Nで記録材Pを挟持搬送したときのヒータ3のニップ側及びステー側温度を示したグラフである。ヒータ3のニップ側の温度は給電用電極3aの通紙部にサーミスタ(不図示)を貼り付けて測定した。ヒータ3のステー側の温度は給電用電極3bの通紙部にサーミスタ(不図示)を貼り付けて測定した。
【0051】
ヒータ3のニップ側の温度(給電用電極3aの温度)は、第2の抵抗発熱体6の発熱により温調温度の200℃に維持されている。一方、ヒータ3のステー側の温度(給電用電極3bの温度)は、ニップ側の第2の抵抗発熱体6よりも第1の抵抗発熱体7の発熱量が少ないため立ち上げ時(給電開始時)は約70℃までしか昇温していない。その後、第1の抵抗発熱体7にニップ側から第2の抵抗発熱体6の熱が伝達されることによってヒータ3のステー側の温度はニップ側と同じく200℃まで昇温し、そこで飽和した。したがって、ヒータ3のステー側の温度がキュリー温度の220℃に到達することがなくなり、ヒータ3全体の給電が止まることはなかった。
【0052】
また、ヒータ3のニップ側の第2の抵抗発熱体6は立ち上げ時から温調温度200℃まで昇温させることができるため、定着不良が発生することはなく、良好な定着画像が得られた。
【0053】
図7は本実施例のヒータ3における第1の抵抗発熱体7の非通紙部昇温抑制効果を示したグラフである。本実施例では、第1の抵抗発熱体7の発熱長さ220mmに対し、これよりも狭い104.6mm幅で長さ241.3mmの記録材を35ppmの通紙速度(搬送速度)でヒータ3の長手中央位置と記録材の幅中央位置を一致させて定着ニップ部Nに通紙した。そしてこのときのヒータ3の通紙部(図2参照)におけるニップ側温度と、非通紙部(図2参照)におけるニップ側温度(非通紙部昇温)を測定した。ヒータ3の通紙部におけるニップ側温度と非通紙部におけるニップ側温度は、給電用電極3aの通紙部と非通紙部に対応する位置に、それぞれ、サーミスタ(不図示)を貼り付けて測定した。
【0054】
ヒータ3の通紙部におけるニップ側温度(図7で実線にて示すニップ側通紙部の温度)は、第2の抵抗発熱体6の発熱により温調温度の200℃に維持されている。一方、ヒータ3の非通紙部におけるニップ側温度(図7で破線にて示すニップ側非通紙部の温度)は、記録材の通紙が開始されてから数枚の区間において第2の抵抗発熱体6の発熱によって温調温度200℃よりも高い230℃まで昇温する。
【0055】
すると、第1の抵抗発熱体7は、第2の抵抗発熱体6が230℃まで昇温した直後に、キュリー温度220℃まで昇温する(図5参照)。このとき、第1の抵抗発熱体7は第2の抵抗発熱体6との電気抵抗値の関係(R1>R2)から自己温度制御を行う。これにより第1の抵抗発熱体7に電流が流れ難くなって第1の抵抗発熱体7の発熱量が減少する。つまり、第1の抵抗発熱体7への給電がカットされ、ヒータ3の非通紙部におけるニップ側温度はキュリー温度220℃で飽和する。
【0056】
この第1の抵抗発熱体7の非通紙部昇温抑制効果により、ヒータ3の非通紙部におけるニップ側温度が、ヒータ3と接触するガイドステー1、定着フィルム2、及び定着フィルム2と接触する加圧ローラ4の耐熱温度(何れも約240℃)を上回ることがなくなる。これによりヒータ3の熱でガイドステー1、定着フィルム2、及び加圧ローラ4などの部材を損傷するようなことを防止できる。
【0057】
上述の構成のヒータ3を用いることにより、ヒータ3のニップ側の温度を温調温度まで昇温できて良好な定着画像を得ることができ、且つ非通紙部昇温をガイドステー1、定着フィルム2、及び加圧ローラ4などの部材の耐熱温度以下に抑えることができる。
【0058】
(比較例)
比較例のヒータを説明する。比較例のヒータを具備する定着装置、及びその定着装置を搭載する画像形成装置の構成は実施例1と同じである。
【0059】
比較例のヒータ3Aでは、図8に示すように実施例1と同じく厚さ1mm、幅6mm、長さ220mm、キュリー温度を220℃としたバルク状のチタン酸バリウム(以下では第1の抵抗発熱体7と記す)を用いている。そしてこの第1の抵抗発熱体7のニップ側及びステー側に厚さ50μm、幅6mm、長さ220mmの銀からなる給電用電極3a,3bをスクリーン印刷により塗工して形成した。実施例1と異なり、第2の抵抗発熱体6を有していないため、第1の抵抗発熱体7の電気抵抗値を16Ωとし、第1の抵抗発熱体7全体を発熱させた。
【0060】
実施例1ではヒータ3のニップ側に発熱を集中させ、ステー側をなるべく発熱させない構成になっていた。比較例では第1の抵抗発熱体7(ヒータ3A)の全体を均等に発熱させるため、ニップ側の発熱量は実施例1よりも小さくなり、ステー側の発熱量は実施例1よりも大きくなっている。
【0061】
図9は比較例のヒータ3Aの通紙部におけるニップ側温度及びステー側温度を示したものである。図9では、ヒータ3Aのニップ側温度を実線(ニップ側通紙部)にて示し、ステー側温度を破線(ステー側通紙部)にて示している。
【0062】
検温素子5によってヒータ3Aのニップ側の温度を検知しているものの、ニップ側温度を温調温度200℃まで昇温させるより先に、加圧ローラや記録材によって大きく熱を奪われることがないステー側温度が、実施例1と異なり発熱量が大きくなった。そのためにステー側温度がキュリー温度220℃まで昇温し、第1の抵抗発熱体7が自己温度制御を行い、第1の抵抗発熱体7への給電がカットされてしまった。この結果、ステー側温度はキュリー温度の220℃で飽和した。一方、実施例1よりも発熱量が小さくなったニップ側温度は120℃までしか昇温することができず、その結果、定着不良を生じた。
【0063】
比較例のヒータ3Aにおいて、ステー側温度がキュリー温度220℃で飽和するということはステー側をキュリー温度220℃で自己温度制御したことと同じであると考えられる。そこで、検温素子5を用いてステー側を200℃で温度制御してみたが、図9と同様にニップ側とステー側の大きな温度差を引き起こし、定着不良を生じてしまった。
【0064】
本実施例のヒータ3を具備する定着装置107は、ヒータ3のニップ側の発熱量を大きく、ステー側の発熱量を小さくすることができるため、ヒータ3のニップ側に検温素子5を設けることによってニップ側の温度を温調温度まで昇温させることができる。さらに、ヒータ3のステー側の発熱量はニップ側よりも小さいため、非通紙部昇温の発生を低減できる。よって、定着不良を発生させることなく、良好な定着画像を得ることができる。
【0065】
[実施例2]
ヒータ3の他の実施例を説明する。本実施例のヒータ3以外の定着装置107及び画像形成装置の構成は実施例1と同じである。図10において、(a)は本実施例のヒータ3の短手方向の断面図、(b)は同ヒータ3の長手方向の断面図である。
【0066】
ヒータ3の第1の抵抗発熱体7を構成する長いバルク状のチタン酸バリウムは、製造過程においてたわむことがあり、生産性が低くなることから、短いバルクにすることで生産性を高めることができる。実施例1のヒータ3では、長さ220mmのバルク状のチタン酸バリウムを1つ用いてこれを第1の抵抗発熱体7とした。
【0067】
本実施例に示すヒータ3は、図10に示すように、実施例1の長さ220mmの1/5のサイズである長さ44mmのバルク状のチタン酸バリウムを長手方向に5つ一列に並べて合計長さを実施例1と同じく220mmにしたものを第1の発熱抵抗体7とした。第1の発熱抵抗体7、第2の抵抗発熱体6、給電用電極3a,3bは実施例1と同じ材料のものを用い、層構成や厚み方向サイズ、幅方向サイズも実施例1と同じとした。長さに関しては、第1の発熱抵抗体7、第2の抵抗発熱体6、給電用電極3a,3bの全てにおいて実施例1の220mmの1/5のサイズである44mmとした。
【0068】
即ち、ヒータ3は、第1の発熱抵抗体7と第2の抵抗発熱体6と給電用電極3a,3bとを有する1つのヒータピース(加熱体ピース)を長手方向に複数個一列に並べて形成される。
【0069】
また本実施例のヒータ3は、長手方向に5つ並べた全てのヒータピースに給電するために、その5つのヒータピース全ての給電用電極3aのニップ側の面とステー側の面に、それぞれ、銅板電極9a,9bを導電性の接着剤を用いて密着させて積層させてある。銅板電極9a,9bのサイズは厚み0.5mm、幅6mm、長さ220mmである。そしてこのヒータ3を具備する定着装置107を搭載した画像形成装置を用いて画像形成を行った。
【0070】
定着装置107ではヒータ3の2枚の銅板電極9a,9bを通じて給電用電極3a,3bに給電を行った。銅板電極9a,9bの熱伝導率は約400W/mKと非常に高いため、銅板電極9a,9bの厚みが0.5mmであってもヒータ3の熱を定着フィルム2内面に良く伝えることができる。したがって、銅板電極9a,9bがあることによってトナー画像Tの加熱定着に影響を及ぼすことはなかった。
【0071】
本実施例のヒータ3を用いても、ヒータ3のニップ側の温度を温調温度まで昇温できて良好な定着画像を得ることができ、且つ非通紙部昇温をガイドステー1、定着フィルム2、及び加圧ローラ4などの部材の耐熱温度以下に抑えることができる。したがって、本実施例のヒータ3を具備する定着装置107は、定着不良を発生させることなく、良好な定着画像を得ることができる。
【0072】
本実施例では、ヒータ3のヒータピースの長さを実施例1のヒータ3の1/5のサイズとしたが、ヒータピースの長さはこれに限られない。ヒータピースの長さが実施例1のヒータ3の1/nサイズ(但し、nは正の整数)であれば合計n個のヒータピースを長手方向に並べれば良いということである。即ち、ヒータピースを所定の数(=n個)用いて構成したヒータ3であっても実施例1のヒータ3と同じ作用効果を得ることができる。
【0073】
[実施例3]
ヒータ3の他の実施例を説明する。本実施例のヒータ3以外の定着装置107及び画像形成装置の構成は実施例1と同じである。図11において、(a)は本実施例のヒータ3の短手方向の断面図、(b)は同ヒータ3の長手方向の断面図である。
【0074】
本実施例に示すヒータ3は、図11に示すとおり、基板8として、短手方向から見たときに凸字形状のアルミナ基板を用いている。そしてこの基板8において、短手方向中央の突部8bの短手方向両側の平坦部8c上に、同じサイズの給電用電極3c,3dと2つの第1の抵抗発熱体7をその順に積層している。さらにその短手方向両側の2つの第1の抵抗発熱体7を電気的に直列につなぐように第2の抵抗発熱体6を積層している。本実施例のヒータ3は、実施例1と同じく、ヒータ3の第1の抵抗発熱体6がある面をニップ側になるようにしてガイドステー1に支持される。
【0075】
本実施例のヒータ3は、基板8の熱伝導率は20W/mKであり、厚みはステー側の底面から給電用電極3c,3dを積層させる面までを0.5mm、さらにこの面から突部8bの表面までを0.5mmとした。基板8の幅は6mmであり、給電用電極3c,3dを積層させる平坦部8cの幅を2mm(基板8の短手方向両端で合計4mm)、突部8b表面の幅を2mmとし、基板8の長さは220mmとした。
【0076】
給電用電極3c,3dの材料には銀を用い、厚さ50μm、幅2mm、長さ220mmのものを基板8の平坦部8c上にスクリーン印刷により塗工して形成した。
【0077】
第1の抵抗発熱体7は、熱伝導率が1W/mKのものを、厚さ0.5mm、幅2mm、長さ220mmのバルク状チタン酸バリウムを用い、これを導電性の接着剤を用いて給電用電極3c,3d上に積層させた。
【0078】
積層方向(ヒータ3の厚み方向)において、第1の抵抗発熱体7の表面と基板8の突部8bの表面はほぼフラットにつながるようにしてある。そしてこのフラットにつながった第1の抵抗発熱体7の表面と基板8の突部8bの表面全体に抵抗温度係数が400ppm/℃の銀パラジウムを厚さ100μm、幅6mm、長さ220mmでスクリーン印刷により塗工して第2の抵抗発熱体6としている。
【0079】
2つの第1の抵抗発熱体7の室温(25℃)における電気抵抗値はそれぞれ0.5Ωである。そしてこの2つの第1の抵抗発熱体7が第2の抵抗発熱体6を挟んで電気的に直列に接続されるため、2つの第1の抵抗発熱体7の室温における合計の電気抵抗値は1Ωとなる。一方、第2の抵抗発熱体6の室温(25℃)における電気抵抗値は15Ωとした。そのため、第1の抵抗発熱体7と第2の抵抗発熱体6の電気抵抗値の関係は図5に示した実施例1と同じ関係となった。
【0080】
本実施例のヒータ3を用いても、ヒータ3のニップ側の温度を温調温度まで昇温できて良好な定着画像を得ることができ、且つ非通紙部昇温をガイドステー1、定着フィルム2、及び加圧ローラ4などの部材の耐熱温度以下に抑えることができる。したがって、本実施例のヒータ3を具備する定着装置107は、定着不良を発生させることなく、良好な定着画像を得ることができる。
【0081】
また、本実施例のヒータ3は、実施例1のヒータ3と異なり、凸字形状に形成した基板8の突部8bに第2の抵抗発熱体6を接触させている。基板8の材料は熱伝導率の低いチタン酸バリウムではなく熱伝導率の高いアルミナ基板であるため、この基板8を伝って第2の抵抗発熱体6の熱をヒータ3のステー側に速やかに伝えることができる。
【0082】
したがって、図12に示すように検温素子5をヒータ3のステー側、即ちヒータ3の短手方向中央付近で基板8に接触させることによって、第2の抵抗発熱体6の温度を検知することができる。検温素子5をヒータ3のステー側で基板8に接触させても定着不良を発生させることなく、良好な定着画像を得ることができた。また非通紙部昇温に対する効果も実施例1のヒータ3と同じ効果が得られた。
【0083】
[他の実施例]
実施例1乃至実施例3に示す定着装置は未定着トナー画像を記録材に加熱定着する定着装置としての使用に限られない。例えば未定着トナー画像を加熱して記録材に仮定着する像加熱装置、或いは記録材に加熱定着されたトナー画像を加熱してトナー画像表面の光沢を増大させる像加熱装置としても使用することができる。
【符号の説明】
【0084】
2:定着フィルム、3:ヒータ、4:加圧ローラ、6:第2の抵抗発熱体、7:第1の抵抗発熱体、107:定着装置、N:定着ニップ部、P:記録材、T:トナー画像、a:記録材搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱体と、前記加熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、前記加熱体と共に前記可撓性部材を挟んでニップ部を形成する加圧部材と、を有し、前記ニップ部で記録材が担持するトナー像を挟持搬送しつつトナー像を加熱する像加熱装置において、
前記加熱体は、通電により発熱する第1の抵抗発熱体であって自己温度制御型の正の抵抗温度特性を有する第1の抵抗発熱体と、通電により発熱する第2の抵抗発熱体であって記録材搬送方向に対して垂直な方向で前記第1の抵抗発熱体に積層された第2の抵抗発熱体と、を有し、前記第1の抵抗発熱体は前記ニップ部が形成される側とは反対側に配設され、前記第2の抵抗発熱体は前記ニップ部が形成される側に配設され、前記第1の抵抗発熱体と前記第2の抵抗発熱体が記録材搬送方向に対して垂直な方向で電気的に直列に接続されていて、前記第1の抵抗発熱体の抵抗値R1と、前記第2の抵抗発熱体の抵抗値R2の関係が、トナー像を加熱するための目標温度よりも高い温度であって前記第1の抵抗発熱体の自己温度制御を行う温度T1以下ではR1<R2であり、前記温度T1を超えてR1>R2となることを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記自己温度制御型の正の抵抗温度特性を有する第1の抵抗発熱体の材料が、チタン酸バリウムであることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記加熱体は、前記第1の抵抗発熱体と前記第2の抵抗発熱体とを有する1つの加熱体ピースを前記可撓性部材の記録材搬送方向と直交する長手方向に複数個一列に並べて形成されることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−11649(P2013−11649A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142732(P2011−142732)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】