説明

優れた抗ウィルス作用と抗菌作用を示す組成物

表面上、特に、哺乳動物の皮膚上に存在する細菌に対する迅速かつ広範な抑制作用、そして、迅速かつ持続的な抗ウィルス作用を実現する方法が開示されている。 この方法によれば、皮膚pHを約4未満にまで低減することができる化合物または組成物が皮膚に適用され、次いで、好ましくは、その皮膚上に残存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願にあっては、2004年12月9日に出願された米国仮特許出願第60/634,483号に基づく利益享有を主張する。
【0002】
本願発明は、表面上、特に、哺乳動物の皮膚上に存在するウィルスに対して迅速かつ持続的な抑制作用、そして、細菌に対して迅速かつ広範な抑制作用を実現する方法に関する。 具体的には、本願発明は、皮膚pHを約4未満にまで低減することができる化合物または組成物を、皮膚に刺激を与えずに、約4時間またはそれ以上の時間をかけて皮膚に適用することによって、哺乳動物の皮膚表面に存在する細菌やウィルスを抑制する方法に関する。 このような化合物として、通常は、細菌およびウィルスを抑制する上で十分なレベルにまで哺乳動物の皮膚pHを低減することができる(a)有機酸、(b)無機酸、(c)無機塩、(d)アルミニウム、ジルコニウム、またはアルミニウム-ジルコニウム複合体、または、(e)これらの混合物などがある。 細菌およびウィルスに対する抑制作用を補助するために、消毒用アルコールおよび抗微生物剤の一方または双方と表面とを、任意に接触させることができる。 この方法は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の集団、それに、ウィルス集団を、1分以内に抑制するのみならず、4時間またはそれ以上の期間にわたって持続的に抗ウィルス作用を呈する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの健康は、日常的に遭遇する多様な微生物の影響を受けている。 特に、哺乳動物にあっては、生活環境中に棲息する多様な微生物と接触することで、時として重篤な疾病に罹患することがある。 例えば、微生物汚染によって、多様な疾病に罹患することがあり、これら疾病として、食中毒、連鎖球菌感染、炭疽(皮膚)、足白癬、口辺ヘルペス、結膜炎(「はやり目」)、コクサッキーウイルス(手足口病)、偽膜性喉頭炎、ジフテリア(皮膚)、エボラ出血熱および膿痂疹などがあるが、これらに限定されない。
【0004】
身体表面の洗浄(例えば、手洗い)および硬質表面(例えば、調理台および流し台)の洗浄によって、病原体を含む微生物の集団を顕著に抑制することができることは、周知の事項である。 したがって、微生物の集団を減少させるために、皮膚や、その他の生物および無生物の表面を洗浄することは、これら表面から病原体を排除する上での最初の防御措置であって、これにより、感染の危険性も最小化される。
【0005】
ウィルスは、最も関心が寄せられている病原体のカテゴリーの一つである。 ウィルス感染は、ヒトの罹患率に最も関与している要素であり、発展途上国でのヒトの疾病の全体の60%またはそれ以上が、ウィルス感染によるものであると考えられている。 加えて、ウィルスは、実質的に自然界の生物を感染するものであって、特に、ヒト、ペット動物、家畜、および、動物園での飼育動物などのすべての哺乳動物にあっては、ウィルス感染は高率で発症している。
【0006】
ウィルスの構造および生活環は、実に多様性に富んでいる。 ウィルス科、それらの構造、生活環、および、ウィルス感染態様の詳細は、Fundamental Virology, 4th Ed., Eds. Knipe & Howley, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, 2001において詳述されている。
【0007】
簡略して言えば、ウィルス粒子は、内在性の偏性寄生生物であって、遺伝物質の細胞間の移動を促し、そして、自身の増殖を確実にする十分量の情報をコードする。 最も基本的な態様によれば、ウィルスは、単一のタンパク質殻内に収容された核酸の小さなセグメントから構成されている。 ウィルスの間での最大の相違点は、エンベロープウィルスと非エンベロープウィルスとの区別、すなわち、脂質二重膜を含んでいるか否かという点にある。
【0008】
ウィルスは、生体細胞内でのみ増殖する。 ウィルスの大きさに匹敵する厚みを有する細胞膜によって保護された細胞内へ侵入することが、ウィルスが遭遇する最初の厄介な作業となる。 まず、細胞内に入り込むために、ウィルスは、細胞表面に取り付かなくてはならない。 ある特定のタイプの細胞に対するウィルスの特異性は、特定の細胞表面に対するウィルスの結合力に大きく依存している。 ウィルスの持続的接触は、宿主細胞を感染させる上で重要であり、また、ウィルスと細胞表面との相互作用性は、ウィルスと宿主細胞の双方が有する性質でもある。 ウィルスと宿主細胞膜との融合は、無傷のウィルス粒子、あるいは、場合によっては、その感染核酸だけの細胞内への移行を許容する。 したがって、ウィルス感染を制御する上で、皮膚に接触しているウィルスを迅速に死滅させたり、あるいは、ウィルス感染を制御する上で、理想的には、皮膚や硬質表面上に持続的な抗ウィルス活性を付与することが重要となる。
【0009】
例えば、ライノウィルス、インフルエンザウィルス、およびアデノウィルスは、呼吸器感染を引き起こすことが知られている。 ライノウィルスは、外側エンベロープを欠いた「裸出したウィルス」のウィルス科であるピコルナウィルス科のメンバーである。 ヒトのライノウィルスは、鼻咽頭部に特異的に好んで存在するため、大人や子供での風邪症状における最も重要な病因にもなっている。 公式には、102種類ものライノウィルス血清型があるとされている。 ヒトの呼吸器系から単離されたピコルナウィルスのほとんどが酸不耐性であり、この不耐性が、ライノウィルスの同定要素にもなっている。
【0010】
ライノウィルス感染は、ウィルスで汚染された呼吸器分泌物に直接接触することで、ヒトからヒトに伝染する。 この接触は、通常、空中に漂うウィルス粒子の吸入による場合よりも、汚染された表面に物理的に接触する形態の場合が多い。
【0011】
ライノウィルスは、最初の汚染から何時間も経過した後でもなお環境表面上に生存することができ、また、汚れた手指で眼を擦ったり、鼻粘膜を触ったりするなど、手指同士の接触や、汚染した環境表面と手指との接触を介しても容易に感染が広まってしまう。 したがって、一般住民への感染拡大のリスクを抑えるためにも、皮膚や環境表面でのウィルス汚染は最小限にしなくてはならない。
【0012】
幾つかの胃腸感染も、ウィルスによって引き起こされる。 例えば、ノーウォークウィルスは、悪心、嘔吐(下痢を伴う場合もある)、および胃痙攣を引き起こす。 この感染は、通常、直接的接触を介してヒトからヒトへと伝染していく。 同様に、急性A型肝炎ウィルス感染は、感染者と非免疫保持者との間の手から手、手から口、またはエアロゾル粒子の移動による直接的接触、あるいは、A型肝炎ウィルスで汚染された物体への非感染者の接触による間接的接触によって伝染する。 その他の無数のウィルス感染も、同様にして伝染する。 手指や周囲の表面上に存在するウィルスの不活性化や除去を行うことで、このようなウィルス感染の伝染は概ね抑制することができる。
【0013】
市販の家庭用フェノール/アルコール系殺菌剤は、周囲の汚染表面を殺菌する上で効果を示すが、持続的な殺ウィルス活性を欠いている。 手洗いは、汚染された指を殺菌する上で非常に効果的ではあるが、やはり持続的な活性は期待できない。 これら問題点は、ライノウィルスなどのウィルスに対して持続的な活性を示す改善された殺ウィルス性組成物の必要性を指し示すものに他ならない。
【0014】
抗微生物性パーソナルケア用組成物は、当該技術分野において周知である。 その中でも、皮膚を清浄し、かつ、皮膚上、とりわけ、使用者の手、腕および顔に付着した細菌、ウィルスおよびその他の微生物を除去するために日常的に用いられている抗菌性清浄組成物が特に有用である。
【0015】
例えば、ヘスルケア産業、フードサービス産業、食肉加工産業、それに、各消費者の生活空間などでも、抗菌性組成物は利用されている。 抗菌性組成物の普及は、皮膚に付着した細菌やその他の微生物の集団を制御することの重要性を、消費者が認識していることを裏付けるものである。 抗菌性組成物の目的は、毒性や皮膚刺激性に関連する現象を招かずに、細菌の集団を実質的かつ多様に減少せしめることにある。 このような抗菌性組成物が、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する米国特許第6,107,261号および第6,136,771号に開示されている。
【0016】
抗菌性パーソナルケア組成物の分類の一つに、手指除菌用ゲルがある。 この分類に属する組成物は、基本的に、医療従事者が手指を消毒するために用いられている。 手指除菌用ゲルは、手指に塗布あるいは擦り込んだ後に、皮膚から自然に蒸発する。
【0017】
手指除菌用ゲルは、エタノールなどのアルコールの含有率が高い。 ゲル内のアルコール含有率が大きいと、アルコールそれ自体が、消毒剤として機能する。 加えて、アルコールは迅速に蒸発してしまうので、除菌用ゲルで処理した皮膚を拭いたり、洗浄する手間も省けてしまう。 組成物の約40重量%またはそれ以上のアルコールを含んでいるアルコール含有率が高い手指除菌用ゲルが、細菌を持続的に死滅させることはない。
【0018】
抗菌洗浄組成物は、通常、水性および/またはアルコール性担体に、活性抗菌剤、界面活性剤、および、その他の様々な成分、例えば、着色料、香料、pH調整剤、皮膚コンディショナーなどを含んでいる。 抗菌洗浄組成物には、異なるクラスに分類される幾つかの抗菌剤が用いられている。 抗菌剤の例として、ビスグアニジン(例えば、グルコン酸クロルヘキシジン)、ジフェニル化合物、ベンジルアルコール、トリハロカルバニリド、第四アンモニウム化合物、エトキシ化フェノール、および、PCMX(すなわち、p-クロロ-m-キシレノール)やトリクロサン(すなわち、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル)などのハロ置換フェノール化合物のようなフェノール化合物がある。 このような抗菌剤を利用した抗菌性組成物は、制御対象とする微生物や特定の抗菌組成物に応じて、非常に広範で多様な抗菌活性を示す。
【0019】
一般的に、最も流通している抗菌組成物は、低度〜軽度の抗菌活性を示しており、抗ウィルス活性についての報告はなされていない。 グラム陽性微生物とグラム陰性微生物の双方を含めた広範な微生物に対して、抗菌活性の評価が行われる。 抗菌組成物によって示される細菌集団の対数的減少あるいは減少率は、抗菌活性と相関している。 特定の接触時間、通常は、15秒間〜5分間の接触時間において、1〜3の対数的減少が好ましく、3〜5の対数的減少は最も好ましいとされているが、対数的減少が1にも満たない事例は好ましいとはいえない。 つまり、非常に好適な抗菌組成物は、短時間の接触時間でもってして、広範な微生物に対して3〜5の対数的減少を示すものといえる。
【0020】
しかしながら、ウィルスの制御を行うにあたっては、さらに困難な問題に直面する。 細菌の集団を十分に減少させることで、細菌感染のレベルは、許容レベルにまで引き下げられる。 したがって、迅速な抗菌的作用が所望されているのである。 しかしながら、ウィルスに関しては、迅速な殺ウィルス作用のみならず、持続的な抗ウィルス活性も必要とされている。 ウィルス集団を単に減少させても、感染の抑制には至らないために、このような差異が生じるのである。 理論的には、単一のウィルスでも、感染を引き起こすことは可能である。 したがって、効果的な抗ウィルス性洗浄組成物を実現するためには、実質的に全体的かつ持続的な抗ウィルス活性が必要とされており、また、そのような活性が少なくとも所望されている。
【0021】
国際公開公報第WO 98/01110号は、トリクロサン、界面活性剤、溶媒、キレート化剤、増粘剤、緩衝剤、および水を含む組成物を開示している。 国際公開公報第WO 98/01110号では、界面活性剤の使用量を減らすことによって、皮膚刺激性の軽減を図っている。
【0022】
米国特許第5,635,462号は、PCMXと選択された界面活性剤とを含む組成物を開示している。 そこで開示されている組成物は、 陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤とを欠いている。
【0023】
欧州公開特許第0 505 935号は、非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤との組み合わせ、特に、非イオンブロックコポリマー界面活性剤と共にPCMXを含んでいる組成物を開示している。
【0024】
国際公開公報第WO 95/32705号は、トリクロサンなどの抗菌性化合物と共に使用することができる低刺激性界面活性剤の組み合わせを開示している。
【0025】
国際公開公報第WO 95/09605号は、陰イオン界面活性剤とアルキルポリグリコシド界面活性剤とを含む抗菌性組成物を開示している。
【0026】
国際公開公報第WO 98/55096号は、活性抗微生物剤、陰イオン界面活性剤、酸、および水を含有し、そのpHが約3.0〜約6.0である抗菌性組成物を含浸させた多孔質シートを具備した抗微生物性清拭材を開示している。
【0027】
米国特許第6,110,908号は、C2-3アルコール、遊離脂肪酸、および亜鉛ピリチオンを含んでいる局所消毒剤を開示している。
【0028】
N.A. Allawala et al., J. Amer. Pharm. Assoc. -- Sci. Ed., Vol. XLII, no. 5, pp. 267-275 (1953)では、活性抗菌剤と界面活性剤との組み合わせによって得られる抗菌活性に関する報告がされている。
【0029】
A.G. Mitchell, J. Pharm. Pharmacol., Vol. 16, pp. 533-537 (1964)は、PCMXと非イオン界面活性剤を含む組成物、すなわち、抗菌活性を示す組成物を開示している。
【0030】
手指除菌用ゲルに関して、米国特許第5,776,430号は、クロルヘキシジンとアルコールとを含んでいる局所抗菌クリーナーを開示している。 この組成物は、約50重量%〜約60重量%の変性アルコールと、約0.65重量%〜約0.85重量%のクロルヘキシジンとを含んでいる。 この組成物は、皮膚に塗布されて、皮膚内に擦り込まれ、そして、皮膚から洗い流される。
【0031】
欧州特許出願第0 604 848号は、抗微生物剤、40重量%〜90重量%のアルコール、それに、合計で3重量%を超えない量のポリマーと濃化剤を含有しているゲルタイプの手指用消毒剤を開示している。 このゲルを、手指に擦り込んで、そして、蒸発させることによって、手指の消毒が行われる。 ここで開示されている組成物は、迅速な消毒には不向きであり、また、持続的な効果を奏することもない。
【0032】
一般的に、手指除菌用ゲルは、通常は、(a)少なくとも60重量%のエタノール、または、エタノールやイソプロパノールなどの低級アルコールの組み合わせ、(b)水、(c)架橋ポリアクリル酸などのゲル化ポリマー、および(d)皮膚コンディショナーや香料などのその他の成分を含んでいる。 石鹸と水を用いた洗浄を行わずに、あるいは、石鹸と水を用いた洗浄を行った後に、手指を効率的に消毒するために、手指の表面に手指除菌用ゲルを擦り込む方式でもってして、消費者は、手指除菌用ゲルを利用している。 現在市販されている手指除菌用ゲルは、高レベルのアルコールを利用して消毒と蒸発を意図しているので、それに起因する不都合もある。 具体的には、エタノールの揮発性が故に、使用後に主要な消毒成分が皮膚上に残存せず、ひいては、持続的な抗微生物活性の獲得に至らないこととなる。
【0033】
アルコール濃度が60%を下回ると、エタノールは、消毒剤とはみなされない。 したがって、アルコール濃度が60%に満たない組成物では、通常、抗微生物活性を付与するために、その他の抗微生物性化合物を用いている。 しかしながら、従来技術では、抗微生物性組成物でのいずれの成分が、微生物の制御に関与しているのかは、明らかにされていない。 それが故に、低濃度のアルコールを用いた製品にあっては、迅速な抗微生物活性と持続的な抗微生物活性の双方を呈する抗微生物製剤の選択は困難となっている。
【0034】
米国特許第6,107,261号および第6,136,771号は、非常に効果的な抗菌組成物を開示している。 これら特許は、皮膚および硬質表面での細菌の制御に関する問題点を解消するものではあるが、ウィルスの制御については何も言及されていない。
【0035】
米国特許第5,968,539号、第6,106,851号および第6,113,933号は、約3〜約6のpHを有する抗菌組成物を開示している。 この組成物は、抗菌剤、陰イオン界面活性剤、および、プロトン供与体を含んでいる。
【0036】
第四アンモニウム化合物と選択された陰イオン界面活性剤とを含んだ組成物が、ある特定の用途において有用であることが開示されているが(例えば、米国特許第5,798,329号)、パーソナルケア組成物の用途において、かような組み合わせを開示している先行技術は見当たらない。
【0037】
第四アンモニウム抗菌剤を含んだ殺菌性組成物を開示している特許や文献として、抗菌性洗濯用洗剤や抗菌性硬質表面クリーナーに関する米国特許第5,798,329号および第5,929,016号;国際公開公報第WO 97/15647号;および、欧州公開特許公報第EP 0 651 048号などがある。
【0038】
ライノウィルス、ロタウィルス、インフルエンザウィルス、パラインフルエンザウィルス、呼吸器合胞体ウィルス、およびノーウォークウイルスなどの病原性ウィルスを不活性化または死滅させる抗ウィルス性組成物も知られている。 例えば、米国特許第4,767,788号では、ライノウィルスなどのウィルスを不活性化または死滅させるためのグルタル酸の使用を開示している。 米国特許第4,975,217号では、有機酸および陰イオン界面活性剤を含んでいる組成物、すなわち、ウィルスを制御するための、石鹸やローションの形態の組成物が開示されている。 米国特許公開公報第2002/0098159号は、抗ウィルス活性および抗菌活性を付与するために、プロトン供与剤と抗菌界面活性剤などの界面活性剤とを利用することを開示している。
【0039】
米国特許第6,034,133号は、リンゴ酸、クエン酸、およびC1-6アルコールを含有している殺ウイルス性手指用ローションを開示している。 米国特許第6,294,186号は、サリチル酸などの 安息香酸類似体と、ライノウィルスなどのウィルスに対して作用を示す選択された金属塩との組み合わせを開示している。 米国特許第6,436,885号は、抗菌活性および抗ウィルス活性を付与するために、pH2〜5.5において、公知の抗菌剤と2-ピロリドン-5-カルボン酸とを組み合わせることを開示している。
【0040】
パーソナル洗浄用組成物向けの有機酸も開示されている。 例えば、国際公開公報第WO 97/46218号および国際公開公報第WO 96/06152号は、抗微生物性洗浄組成物の界面活性剤べースに、有機酸または塩類、ヒドロトロープ、トリクロサン、および水性溶媒を用いることを開示している。 これら文献は、抗ウィルス活性については言及していない。
【0041】
Hayden et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 25:928-929 (1984)は、ライノウィルス性感冒の手指間の伝染を、持続性殺ウィルス活性を有する手指用ローションの使用を介して遮断することを開示している。 2%のグルタル酸を含む手指用ローションは、ある種のライノウィルスを不活性化させる上で、プラシーボよりも効果的ではあった。 しかしながら、この文献は、グルタル酸含有ローションが、多様なライノウィルス血清型に対して効果的ではない、とも言及している。
【0042】
感冒に罹患したヒトに対して用いる殺ウィルス性細片に、クエン酸、リンゴ酸、およびラウリル硫酸ナトリウムを用いることは公知である。 しかしながら、Hayden et al., Journal of Infectious Diseases, 252:493-497 (1985)は、ウィルス殺傷性物質で処置した紙片または未処置の紙片のいずれもが、手指間でのウィルスの伝染を遮断することを報告している。 つまり、殺ウィルス性細片を取り込んだ組成物をもってしても、ライノウィルス性感冒の拡散を予防する上での明確な利点は見出されていないのである。
【0043】
米国特許第4,503,070号には、口腔内粘膜にグルコン酸亜鉛を局所的に投与して、風邪症状を処置する方法が開示されている。 この方法は、風邪症状を緩和することで、風邪の罹患期間を短縮する。 米国特許第5,409,905号も、ヒトの口腔粘膜および口腔咽頭粘膜に亜鉛イオンを含有する固形製剤を塗布することで、風邪症状を処置する方法を開示している。 米国特許第5,622,724号は、実質的にキレート化していないイオン性亜鉛化合物の溶液を、処置を必要とする患者の鼻孔および気道に噴霧することを含む、風邪症状の処置方法を開示している。 米国特許第6,673,835号には、低用量で、効果的用量の亜鉛含有活性成分を、鼻腔から血中に送り込む方法とそのための組成物が開示されている。
【0044】
細菌とウィルスの根本的な差異が故に、細菌集団およびウィルス集団の双方を効果的に制御する方法の実現は困難であった。 そして、持続的な抗ウィルス活性を実現することは、さらに困難な事項であった。 目下のところ、幾つかの抗微生物性洗浄製品が様々な形態(例えば、脱臭剤配合石鹸、硬質表面クリーナーおよび手術用消毒剤)で流通しているが、それら抗微生物性製品は、通常、高濃度のアルコールおよび/または不快な界面活性剤を含んでいるため、皮膚組織を乾燥させて、皮膚を刺激してしまう。 理想的なパーソナル洗浄製品とは、皮膚を温和に洗浄し、刺激性が殆ど無くまたは皆無であり、そして、頻繁に使用した後でも皮膚全体を乾燥させない性状を示す製品である。
【発明の開示】
【0045】
従って、短時間の内に、ウィルス、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌などの多様な微生物に対して顕著な効果を示す抗微生物性組成物、すなわち、持続的な抗ウィルス活性を示し、かつ皮膚に対して温和な抗微生物性組成物が待望されているのである。 本願発明によって、ウィルス集団および細菌集団の数を減少する方法のみならず、ウィルス集団の持続的減少を実現する方法も提供される。
【0046】
本願発明は、表面、特に、哺乳動物の皮膚表面での迅速な抗ウィルス制御および抗菌制御、および持続的な抗ウィルス制御をもたらす方法に関する。 本願発明の方法は、約1分にも満たない内に、ウィルスを実質的に制御し、また、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌を実質的に減少せしめる。
【0047】
具体的には、本願発明は、S. aureus、Salmonella choleraesuis、E. coli、およびK. pneumoniaeなどのグラム陽性細菌やグラム陰性細菌を含む多様な細菌を死滅させると同時に、ヒトの健康に有害なウィルス、特に、酸不耐性ウィルス、とりわけ、ライノウィルスおよびその他の酸不耐性ピコルナウィルスを不活性化または死滅させる方法を提供する。
【0048】
従って、本願発明の一実施態様によれば、哺乳動物の皮膚表面に存在する細菌およびウィルスを抑制する方法であって、皮膚に刺激を与えずに、皮膚pHを約4未満にまで低減することができる化合物または組成物と皮膚とを接触させることを含む方法が提供される。 ある実施態様によれば、この方法は、約8時間までは、多様な細菌を制御し、また、ウィルスを持続的に制御する。
【0049】
本願発明の他の実施態様によれば、哺乳動物の皮膚表面の細菌およびウィルスを制御する方法であって、皮膚pHを十分に低減するために、有機酸、無機酸、無機塩、アルミニウム、ジルコニウム、またはアルミニウム-ジルコニウム複合体、またはこれらの混合物を含む組成物を皮膚に適用し、それにより、皮膚に刺激を与えずに、細菌およびウィルスを制御する方法が提供される。
【0050】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、哺乳動物の皮膚表面の細菌およびウィルスを長時間にわたって制御する方法であって、(a)モノカルボン酸、ポリカルボン酸、そして、カルボキシル基、リン酸塩、スルホン酸塩、および/または、硫酸塩の部分の複数個を保有しているポリマー酸、および、これらの混合物からなるグループから選択される有機酸、(b)皮膚に対して刺激を与えない無機酸、(c)2価、3価または4価のカチオンおよび対イオンを含む無機塩、(d)アルミニウム、ジルコニウム、またはアルミニウム-ジルコニウム複合体、および(e)これらの混合物からなるグループから選択される化合物を含み、かつ皮膚pHを約4未満にまで低減することができる水性抗微生物性組成物と皮膚とを接触させる工程を含む方法が提供される。
【0051】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、哺乳動物の皮膚表面での多様な細菌を制御し、また、ウィルスを持続的に制御する方法が提供される。
【0052】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、グラム陽性細菌(すなわち、S. aureus)に関して、30秒間の接触を行った後に、少なくとも2の対数的減少が示される方法が提供される。
【0053】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、グラム陽性陰性(すなわち、E. coli)に関して、30秒間の接触を行った後に、少なくとも2.5の対数的減少が示される方法が提供される。
【0054】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、ライノウィルス1a、ライノウィルス14、ライノウィルス2およびライノウィルス4などのライノウィルス血清型を含む酸不耐性ウィルスに関して、哺乳動物の皮膚に30秒間の接触を行った後に、少なくとも4の対数的減少が示される方法が提供される。 この抗微生物性組成物は、非エンベロープウィルスに関して、30秒間の接触を行った後であっても、少なくとも約5時間は、少なくとも3の対数的減少を、そして、少なくとも約6時間は、少なくとも2の対数的減少を示す。 ある実施態様によれば、この抗微生物性組成物は、非エンベロープウィルスに関して、少なくとも約8時間は、少なくとも2の対数的減少を示す。
【0055】
本願発明の他の実施態様によれば、皮膚に化合物または組成物を塗布した後に、例えば、約4時間またはそれ以上にわたって持続的な抗ウィルス活性を示す。
【0056】
本願発明の他の実施態様によれば、哺乳動物の皮膚などの表面のpHを、約4未満にまで低減して、皮膚を刺激せずに、迅速に広範な細菌を制御し、かつ、持続的にウィルスを制御することを可能ならしめる日用消耗品、例えば、皮膚洗浄剤、身体用スプラッシュ、外科用スクラブ、創傷保護剤、手指除菌用ゲル、消毒剤、ペット用シャンプー、硬質面消毒剤、ローション、軟膏、クリームなどが提供される。 この日用消耗品は、洗浄除去型または滞留型のいずれの形態にもすることができる。 好ましくは、持続的な抗ウィルス活性を増強させる目的で、この日用消耗品は、そのpH低減成分が、皮膚上に残存、場合によっては、皮膚上に沈着するように皮膚上に残存せしめる。
【0057】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、ヒトの組織を含む動物の組織での多様なウィルス、グラム陽性細菌および/またはグラム陰性細菌の集団を迅速に制御する方法であって、組織pHを約4未満にまで低減させるために、十分な時間、例えば、約15秒間〜5分間またはそれ以上の時間をかけて、皮膚などの組織と化合物または組成物とを接触させ、それにより、細菌およびウィルスの集団を所望のレベルにまで低減させる方法が提供される。 本願発明のさらに他の実施態様によれば、動物の組織でのウィルスの持続的な制御を実現する方法が提供される。
【0058】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、ライノウィルス、ピコルナウィルス、アデノウィルス、ロタウィルス、および同様の病原性ウィルスによって引き起こされるウィルス媒介疾患および病態を予防する方法が提供される。
【0059】
本願発明の他の実施態様によれば、生物表面および無生物表面から生物表面、特に、哺乳動物の皮膚へのウィルスの移動を遮断する方法が提供される。 特に、ヒトの皮膚表面のライノウィルスを効果的に制御し、そして、好適な化合物または組成物を皮膚に適用してから約4時間またはそれ以上、および、約8時間までの時間をかけて、ライノウィルスの制御を継続することによって、ライノウィルスの移動を遮断する方法が提供される。
【0060】
本願発明に関する上述した態様とその他の新規の態様および利点を、好適な実施態様に沿って以下に詳細に説明するが、それら開示に基づいて、本願発明は限定的に解釈されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
活性抗微生物剤を利用したパーソナルケア製品は、古くから知られている。 抗微生物性のパーソナルケア製品が登場して以来、これら製品が抗微生物性を呈するとの多数の訴求がなされてきた。 しかしながら、可能な限り短い接触時間でもってして、多様な生物に対して顕著な対数的減少を実現する組成物が、最も効果的な抗微生物性組成物であるといえる。 理想的には、この組成物は、ウィルスも不活性化する。
【0062】
目下のところ、最も流通している抗菌性液体石鹸では、時限死滅効果、すなわち、細菌の死滅率は小さい。 これら組成物では、ウィルスを効果的に制御することはできない。
【0063】
抗微生物性手指除菌用ローションは、通常、界面活性剤を含んでおらず、細菌の制御は、高濃度のアルコールに依存している。 それ故に、アルコールが揮発してしまうと、持続的な微生物の制御ができなくなってしまう。 アルコールは、皮膚を乾燥して、皮膚に刺激を与えてしまうこととなる。
【0064】
とりわけ、今日の製品の多くが、人体の健康に対しても特に影響のあるE. coliなどのグラム陰性細菌に対しては効果を示していない。 しかしながら、持続的死滅とは一線を画する細菌の急速死滅(すなわち、時限死滅)によって決定された予期せぬ顕著な多様な抗菌作用を有する組成物は存在している。 これら製品では、十分な抗ウィルス活性も欠如している。
【0065】
本願発明の方法は、高濃度のアルコール、すなわち、40重量%またはそれ以上のアルコールを利用した従来の方法および組成物と比較して、良好かつ広範な抗菌活性と顕著に改善された抗ウィルス活性を提供するものである。 この改善された効果は、ヒトの皮膚を含めた哺乳動物の皮膚などの表面のpHを下げることで、広範な種類の細菌を迅速に制御し、また、ウィルスを迅速かつ持続的に制御できるとの知見に基づくものである。
【0066】
トリクロサンなどの抗微生物剤を含む組成物が、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌に対して迅速かつ効果的な抗菌活性を示すことは実証されているものの、ウィルスの制御には不向きであった。 皮膚および無生物表面でのウィルスの制御は、無数の疾患の伝染を制御する上で非常に重要である。
【0067】
例えば、ライノウィルスは、「風邪」と称される急性呼吸器疾患に関与する最も重要な微生物である。 パラインフルエンザウィルス、呼吸器合胞体ウィルス(RSV)、エンテロウィルス、および、コロナウィルスなどのその他のウィルスも、「風邪」の症状を引き起こすことが知られているが、ライノウイルスについては、風邪症状の大半を引き起こすことが解明されている。 ライノウィルスは、風邪を引き起こすウィルスの中でも、最も制御が難しいウィルスであり、また、乾燥した硬質表面上でも、4日以上にわたって生存することができる。 加えて、大抵のウィルスは、70%エタノールに曝されると不活性化されてしまう。 しかしながら、ライノウィルスは、エタノールに曝されても死滅しない。
【0068】
ライノウィルスは、風邪症状の公知の主要な発症因子であるため、抗ウィルス活性を有する組成物でライノウィルス血清型で制御することは重要である。 今やライノウィルスの分子生物学は確立されてはいるものの、ライノウィルスによって引き起こされる風邪を効果的に予防し、そして、非感染患者へのウィルスの伝染を予防するための方法を見つけ出すには至っていない。
【0069】
ヨー素が、効果的な抗ウィルス剤であり、皮膚に対して持続的な抗ライノウィルス活性を呈することが知られている。 実験的に誘発した風邪と自然発生の風邪での伝染の研究において、ヨー素製剤を用いた被験者での風邪の発症者数は、プラシーボ被験者での発症者数よりも格段に少なかった。 このことは、ヨー素が、ライノウィルス感染の伝染を長期間にわたってブロックする上で有効であることを指し示すものである。 よって、迅速かつ持続的な抗ウィルス活性をもたらす製剤の開発は、風邪の発生を抑える上で有効である。 同様に、抗ウィルス活性を奏する局所用組成物は、その他の酸不耐性ウィルスによって引き起こされた疾患を予防および/または処置する上で有用である。
【0070】
殺ウィルスとは、ウィルスを不活性化または死滅させることができることを指し示すものである。 本願明細書で用いる「持続的な抗ウィルス作用」または「持続的な抗ウィルス活性」の表現は、生物表面(例えば、皮膚)または無生物表面に、塗布後も長期間にわたって顕著な抗ウィルス活性をもたらす残留物を形成したり、そのための条件を付与することを指し示すものである。 本願発明の方法は、30秒以内に、ライノウィルス血清型のような病原性酸不耐性ウィルスに対して、持続的な抗ウィルス作用、すなわち、好ましくは、少なくとも3の対数的減少、そして、より好ましくは、少なくとも4の対数的減少をもたらす。 抗ウィルス活性は、好適な化合物または組成物と接触してから、少なくとも約0.5時間、好ましくは、約1時間、そして、より好ましくは、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、または、少なくとも約4時間は維持される。 ある好適な実施態様によれば、抗ウィルス活性は、化合物または組成物と接触してから、約6時間〜約8時間は維持される。 持続的な抗ウィルス活性を決定するために用いた方法論は、後述する。
【0071】
したがって、本願発明の方法は、迅速に多様な細菌を制御し、また、ウィルスを持続的に制御する上で非常に効果的である。 安全かつ効果的な手段、通常は、好適な化合物または組成物を皮膚と接触させることで、哺乳動物の皮膚の皮膚pHを、4未満、好ましくは、約3.75未満、そして、より好ましくは、約3.5未満、そして、最も好ましくは、約3.25未満に調整することで、持続的な抗ウィルス作用を皮膚に付与できることが知見されるに至ったのである。
【0072】
細菌およびウィルスを不活性化または死滅させる上で効果的な化合物や組成物は公知であるが、これら組成物や方法は、効果的にウィルスおよび細菌を制御するに際して、組成物および/または組成物の活性成分のpHに依存している。 驚くべきことに、迅速かつ多様な細菌の制御や、ウィルスの持続的制御は、皮膚表面のpHを約4未満にすることで実現できることが明らかになったのである。 よって、本願発明の方法は、従来の方法や組成物よりも、ウィルスおよび細菌を制御するための方法、すなわち、安全で、温和で、そして、さらに効率的な方法を提供する。
【0073】
この方法は、皮膚に対して温和であるのみならず、無生物表面に対しても非腐食性である。 よって、細菌およびウィルスを制御するとの問題点を解決する効果的な方法は、無生物表面についても適用できる。
【0074】
本願発明の方法は、表面、特に、哺乳動物の皮膚と、表面のpHを約4未満、ひいては約2.5未満にまで低下させる化合物または組成物とを接触させる工程を含む。 従って、本願発明の方法は、パーソナルケアの用途(例えば、ローション、ボディー・ソープ、石鹸、シャンプー、および、ワイプスを用いる用途)、産業的および病院での用途(例えば、器具、医療機器および手袋の消毒)、それに、家庭でのクリーニングの用途(例えば、床面、調理台、バスタブ、食器などの硬質表面、それに、衣類のような柔軟な布材)において非常に有用である。 本願発明の方法は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、および酸不耐性ウィルス(例えば、ライノウィルス)に感染または汚染された表面を効率的かつ迅速に消毒する。 本願発明の方法は、持続的な抗ウィルス作用も奏する。
【0075】
本願発明の方法は、in vitroとin vivoにおいて利用することができる。 In vitroとは、非生命体の内面または表面を指すものであって、特に、ウィルスの伝染の防止が所望されている箇所であり、またはそのために利用される硬質または軟質の表面を具備した無生物、とりわけ、ヒトの手指が接触する箇所を指す。 In vivoとは、生物の体内または表面を指すものであって、特に、ヒトの皮膚、とりわけ、手指の表面を指す。
【0076】
本願発明の方法は、皮膚pHを、約4未満、好ましくは、約3.75未満、約3.5未満、約3.25未満、約3.0未満、そして、約2.5未満にまで低減する化合物または組成物と表面とを接触する工程を含み、そして、その低い皮膚pHを、約4時間まで、また、ある実施態様では約8時間まで維持する。 この化合物は、少なくとも10mgの化合物/皮膚表面のcm2の量で皮膚に適用される。 この方法は、S. aureus、Salmonella choleraesuis、E. coliおよびK. pneumoniaeなどのグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌を含めた多様な細菌を制御する上で非常に効果的であり、同時に、ヒトの健康に害を及ぼすウィルス、特に、ライノウィルスを、約4時間またはそれ以上の長期間にわたって不活性化あるいは死滅させる上でも効果的である。
【0077】
特に、本願発明の方法は、表面のpHを、約4未満、より好ましくは、約3.75未満にまで低減することができる化合物または組成物で、洗浄や濯ぎといった一時的動作で表面と接触させる工程、あるいは、濯ぎを行わずに、ローション、クリーム、ゲル、または、その他の半固形物を塗布することで、約5時間までの時間、好ましい実施態様によれば、約8時間までの時間であって、少なくとも約1.5時間の時間をかけて、表面と接触させる工程を含む。
【0078】
以下に詳述するように、表面pHを低減することができる化合物として、(a) 有機酸、好ましくは、表面に対して独立しており、また、室温(25℃)の水での酸の酸平衡定数に関与する塩基についての負の常用対数であるpKaが、約1〜約6、より好ましくは、約2〜約5.5、最も好ましくは、約2.5〜約5である酸であって、有機ポリマー酸、好ましくは、皮膚表面に皮膜を形成することができ、また、約25℃未満、好ましくは、約2O℃未満、そして、より好ましくは、約15℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する有機ポリマー酸を含む有機酸、(b)皮膚やその他の表面に対して腐食作用を示さない無機酸、(c)塩類MXの溶液、式中、Mは、多価カチオンであり、Xは、アニオンであり、そして、MXは、25℃にて、水に対して少なくとも0.1g/100mlの溶解性を示し、その溶液のpHが、約6未満、好ましくは、約5未満、より好ましくは、約4.5未満である塩類MXの溶液などの無機塩溶液、(d)アルミニウム、ジルコニウム、または、アルミニウム-ジルコニウム複合体;および(e)これらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0079】
皮膚pHを低減することができる上述した化合物およびその他の化合物は、皮膚に対して効果的かつ審美的に適用するための、消費者が許容可能な組成物に取り込むことができる。 このような組成物は、トリクロサン、トリクロロカルバニリド、第四アンモニウム抗微生物剤、ピリチオン塩、および、化粧品用防腐剤、および、同様の化合物などのその他の抗微生物剤といったその他の成分を、組成物の0重量%〜約5重量%の量で配合することができる。
【0080】
本願発明の方法は、30秒間の接触を行った後に、グラム陽性細菌に対して約2の対数的減少を示す。 この方法は、30秒間の接触を行った後に、グラム陰性細菌に対して約2.5の対数的減少も示す。 グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の迅速な制御に加えて、本願発明の方法は、ウィルスの持続的な制御も行う。
【0081】
さらに、本願発明の方法は、30秒間の接触を行った後に、ライノウィルス血清型を含む酸不耐性ウィルスに対して約4の対数的減少を示し、また、接触を行って約5時間後に、これら酸不耐性ウィルスに対して約3の対数的減少を示し、そして、好適な化合物または組成物と皮膚とを接触して約6〜約8時間後には少なくとも約2の対数的減少を示す。 この方法も温和な方法であり、これら化合物または組成物を、皮膚から濯ぎ落としたり、拭き取る必要はない。
【0082】
以下の化合物は、本願発明の方法に従って、皮膚pHを十分に低減することができる。
【0083】
A.有機酸
本願発明の方法は、表面pHを、約4未満にまで低減するに十分な量の有機酸を利用することができ、これにより、有機酸が接触する表面上の細菌およびウィルスが、制御および不活性化される。 この有機酸は、酸不耐性ウィルスの迅速な制御と持続的なウィルスの制御の実現を補助する。
【0084】
ヒトの皮膚などの表面上に一旦塗布されると、表面のpHは、持続的なウィルスの制御が実現されるに十分な程度にまで低減される。 好ましい実施態様によれば、持続的なウィルスの制御を実現すべく、濯ぎ工程を経てもなお、皮膚上に有機酸が残存する。 しかしながら、表面から有機酸が実質的に完全に濯がれても、少なくとも0.5時間は、ウィルスの制御に必要なレベルにまで表面pHは低減されている。
【0085】
特に、有機酸が接触する生物または無生物の表面pHが、持続的なウィルスの制御を実現するに十分なレベル、すなわち、約4未満のpHになる量でもってして、有機酸は表面に塗布される。 有機酸が接触面から濯ぎ落とされるにしても、あるいは、そのまま残存するにしても、持続的なウィルスの制御は実現される。 有機酸は、塗布した後でもその一部が未解離のままで残存し、そして、希釈時、または、塗布および濯ぎ落としをしている間も残存する。
【0086】
有機酸は、約1〜約6、好ましくは、約2〜約5.5のpKaを有している。 本願発明の効果を最大限引き出す観点から、有機酸は、約2.5〜約5のpKaを有している。 これら有機酸は、表面pHを、約4未満にまで低減するに十分な酸度を有している。 好ましくは、有機酸は、持続的な抗微生物性を向上させるために、処理した表面とは独立している。
【0087】
有機酸は、通常、組成物の約0.05重量%〜約6重量%、好ましくは、約0.1重量%〜約5重量%の量で組成物に含まれている。 本願発明の効果を最大限引き出す観点から、有機酸は、組成物の約0.15重量%〜約4重量%の量で組成物に含まれている。 この有機酸の量は、使用する有機酸の部類、および、そこで用いる特定の一つまたは一つ以上の酸の種類とも関連している。
【0088】
本願発明の方法において有用な有機酸は、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、そして、カルボキシル基、リン酸塩、スルホン酸塩、および/または、硫酸塩の部分の複数を保有するポリマー酸、または、これらの混合物を含む。 酸の部分に加えて、有機酸は、その他の部分、例えば、ヒドロキシ基および/またはアミノ基を含むことができる。 加えて、本願発明の方法は、有機酸として、有機酸の無水物を使用することができる。
【0089】
ある実施態様によれば、有機酸は、構造式RCO2H、式中、Rは、C1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、ハロC1-3アルキル、フェニル、または置換フェニルである式で表されるモノカルボン酸を含む。 このモノカルボン酸は、好ましくは、25℃で、少なくとも約0.05重量%の水溶性を有している。 これらアルキル基は、フェニル基および/またはフェノキシ基で置換することができ、そして、これらフェニル基およびフェノキシ基は、置換することも、未置換のままとすることができる。
【0090】
本願発明において有用なモノカルボン酸の例として、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、安息香酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ジマン酸、2-、3-、または4-ヒドロキシ安息香酸、アニリド酸、o-、m-、またはp-クロロフェニル酢酸、o-、m-、またはp-クロロフェノキシ酢酸、および、これらの混合物があるが、これらに限定されない。 その他の置換安息香酸は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する米国特許第6,294,186号に開示されている。 置換安息香酸の例として、サリチル酸、2-ニトロ安息香酸、チオサリチル酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、5-ニトロサリチル酸、5-ブロモサリチル酸、5-ヨードサリチル酸、5-フルオロサリチル酸、3-クロロサリチル酸、4-クロロサリチル酸、および、5-クロロサリチル酸があるが、これらに限定されない。
【0091】
本願発明のその他の実施態様によれば、有機酸は、ポリカルボン酸を含む。 このポリカルボン酸は、少なくとも二つ、そして、四つまでのカルボン酸基を含んでいる。 このポリカルボン酸は、置換フェニル基および未置換のフェニル基に加えて、ヒドロキシ基またはアミノ基も含むことができる。 好ましくは、このポリカルボン酸は、25℃にて、少なくとも約0.05重量%の水溶性を有している。
【0092】
本願発明において有用なポリカルボン酸として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、アコニット酸、および、これらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0093】
ポリカルボン酸およびモノカルボン酸の無水物も、本願発明の組成物において有用な有機酸である。 好ましい無水物として、ポリカルボン酸の無水物がある。 組成物のpHが故に、無水物の少なくとも一部は、カルボン酸に対して加水分解されている。 この組成物が接触している表面において、無水物が徐々に加水分解され、そのことが、持続的な抗ウィルス活性に寄与しているものと考えられる。
【0094】
第三の実施態様によれば、有機酸は、カルボン酸ポリマー、スルホン酸ポリマー、硫酸ポリマー、リン酸ポリマー、または、これらの混合物を含む。 このポリマー酸は、約500g/mol〜10,000,000g/molの分子量を有しており、また、ホモポリマー、コポリマー、および、これらの混合物を含む。 これらポリマー酸は、好ましくは、皮膚表面に皮膜を形成し、また、約6未満、好ましくは、約5.5未満のpKaを有し、そして、約25℃未満、好ましくは、約20℃未満、そして、より好ましくは、約15℃未満のガラス転移温度、Tgを有している。 ガラス転移温度とは、ポリマーなどのアモルファス物質が、脆弱なガラス質からプラスチックへと変化する温度である。 ポリマーのガラス転移温度は、当業者であれば、当該技術分野で周知の技術を用いて容易に決定することができる。
【0095】
これらポリマー酸は、架橋していないか、あるいは、ほんの僅かしか架橋していない。
【0096】
したがって、これらポリマー酸は、水溶性であるか、あるいは、少なくとも水分散性である。 これらポリマー酸は、通常、カルボキシル、カルボン酸無水物、スルホン酸、および、硫酸塩のような親水性部分を少なくとも一つは有するエチレン部分が不飽和のモノマーから調製される。
【0097】
有機酸ポリマーを調製するために用いるモノマーを、以下に例示するが、これらに限定されない。
【0098】
(a)カルボキシル基を含有しているモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ソルビン酸、イタコン酸、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、α-シアノアクリル酸、β-メチルアクリル酸(クロトン酸)、α-フェニルアクリル酸、β-アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α-クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸、p-クロロ桂皮酸、β-ステアリールアクリル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、トリカルボキシエチレン、および、桂皮酸などのモノエチレンが不飽和のモノカルボン酸またはポリカルボン酸;
(b)カルボン酸無水物基を含有しているモノマー、例えば、無水マレイン酸のようなモノエチレン部分が不飽和のポリカルボン酸無水物;および
(c)スルホン酸基を含有しているモノマー、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリルオキシプロピルスルホン酸のような、脂肪族または芳香族ビニルスルホン酸。
【0099】
このポリマー酸は、ポリマーが実質的に、すなわち、少なくとも10%、好ましくは、少なくとも25%が酸性基を含むモノマー単位である限りは、その他の共重合可能な単位、すなわち、当該技術分野で周知のモノエチレン部分が不飽和のその他のコモノマーを含むことができる。 本願発明の効果を最大限引き出す観点から、このポリマー酸は、少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも75%、そして、100%までの酸性基を含有するモノマー単位を含んでいる。 その他の共重合可能な単位として、例えば、スチレン、アクリル酸アルキル、または、メタクリル酸アルキルがある。 このポリマー酸として、組成物へのポリマー酸の分散を補助するために、部分的に中和したものを用いることもできる。
【0100】
しかしながら、皮膚pHを低減し、かつ、持続的な抗ウィルス活性を付与するために、相当数の酸性基は中和されずにいる。
【0101】
好ましいポリマー酸として、ホモポリマーまたはコポリマーのいずれかのポリアクリル酸、例えば、アクリル酸のコポリマー、および、アクリル酸アルキルおよび/またはメタクリル酸アルキルがある。 その他の好ましいポリマー酸として、メタクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーがある。
【0102】
本願発明において有用なポリマー酸を例示するが、これらに限定されない。
【0103】
【表1】

本願発明の好ましい実施態様によれば、有機酸は、一つまたは一つ以上のポリカルボン酸、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、または、これらの酸のいずれか二つまたは三つすべての組み合わせ、および、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーのようなカルボキシル基を複数含んでいるポリマー酸を含む。
【0104】
B.無機酸
本願発明の方法は、皮膚に対して腐食性を示さない無機酸を、有機酸の代わりに、あるいは、有機酸と共に使用することができる。 好ましくは、無機酸は、それが塗布される表面とは独立したものとする。 有機酸と同様に、通常、無機酸は、皮膚に塗布する組成物において、組成物の約0.05重量%〜約6重量%、好ましくは、約0.1重量%〜約5重量%の量で使用されている。 本願発明の効果を最大限引き出す観点から、無機酸は、組成物の約0.15重量%〜約4重量%の量で使用されている。
【0105】
無機酸は、25℃にて、6未満、好ましくは、5.5未満のpKaを有している。 本願発明の効果を最大限引き出す観点から、無機酸は、25℃において、5未満のpKaを有している。 無機酸の種類は、特に限定されないが、無機酸は、表面に対して悪影響を及ぼさずに、例えば、無生物表面を腐食したり、生物表面を刺激せずに、表面pHを約4未満にまで低減するに十分な酸度を有していなければならない。 無機酸の例として、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、および、これらの混合物、および、同様の非腐食性の無機酸があるが、これらに限定されない。
【0106】
C.無機塩
2、3または4価のカチオンと、皮膚pHのような表面pHを約4未満にまで低減することができる対イオンとを含む無機塩を、有機酸および/または無機酸の代わりに、あるいは、それらと共に使用することができる。 無機塩は、それ単独で、あるいは有機酸および/または無機酸と共に、本願発明に従って接触される表面上のウィルスを制御または不活性化するに十分な量で組成物に用いられる。 有機酸および無機酸と同様に、無機塩は、酸不耐性ウィルスを迅速に制御し、また、皮膚pHを約4未満にまで低減することで、持続的にウィルスを制御する。
【0107】
無機塩のカチオンは、2、3または4価のカチオンがあり、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、および、錫などがある。 好ましいカチオンとして、例えば、亜鉛、アルミニウム、および銅がある。
【0108】
無機塩のアニオンとして、重硫酸塩、硫酸塩、二水素リン酸塩、一水素リン酸塩、そして、塩化物、ヨウ化物、および、臭化物などのハロゲン化物、および、硝酸塩などがあるが、これらに限定されない。 好ましい無機塩として、塩化物と二水素リン酸塩がある。
【0109】
本願発明の方法に従って用いられる無機塩は、組成物の約0.1重量%〜約5重量%、好ましくは、約0.2重量%〜約2重量%の量で使用されている。 本願発明の効果を最大限引き出す観点から、無機塩は、組成物の約0.3重量%〜約1重量%の無機塩を含む水性溶液として、表面に塗布される。
【0110】
本願発明のある実施態様によれば、無機塩は、二価の亜鉛塩を含むが、これに限定されない。 二価の亜鉛塩については、本明細書において詳述しているが、同様の多価金属塩も、本願発明の方法に従って、同様に利用できることを留意されたい。 特に、本願発明において有用な二価の亜鉛塩は、有機性または無機性の対イオンを伴うこともできる。 この対イオンは、皮膚pHを、約4未満にまで低減する。 好ましい実施態様によれば、二価の亜鉛イオン、または、その他の有用なカチオンを、キレートや複合体を形成していない形態で用いることで、より効果的に皮膚に接触して、また、皮膚上に沈着して、微生物の効果的かつ持続的な制御を補助することも可能となる。
【0111】
しかしながら、本願発明のある実施態様によれば、有機性の対イオンは、二価の亜鉛イオン、すなわち、Zn+2と複合する。 それら対イオンが、皮膚pHを約4未満にまで低減し、好ましくは、複合したZn+2イオンが、皮膚上の微生物の効果的な制御を補助するに十分な量の未複合のZn+2を有している限りは、このような実施態様も有用である。
【0112】
好ましい二価の亜鉛塩、または、その他の有用な無機塩は、25℃で、水に対して少なくとも約0.1g(グラム)/100ml(ミリリットル)、好ましくは、25℃で、約0.25g/100mlの水溶性を示す。 水不溶性の亜鉛塩、例えば、酸化亜鉛では、対イオンが皮膚pHを低減することができず、また、皮膚上の微生物を制御するに際して、亜鉛イオンは実質的に利用できないので、有用であるとはいえない。
【0113】
本願発明の最も好ましい実施態様によれば、二価の亜鉛塩、または、その他の有用な無機塩は水溶性であるが、持続的な殺ウィルス活性を呈するために、皮膚から濯ぎ落とされにくい。 したがって、本願発明の最も好ましい実施態様によれば、無機塩を含む水性溶液を皮膚に塗布した後に濯ぎ落とされるか、あるいは、塗布した後になおも皮膚上に残存しているかどうかにかかわらず、対イオンは、約4時間またはそれ以上にわたって、効果的に皮膚pHを低減し、また、二価の亜鉛またはその他のカチオンは、皮膚に対して独立したものとなっている。
【0114】
亜鉛塩を含む従来の組成物は、鼻腔、口腔および咽頭の粘膜の上皮細胞にウィルスが侵入した際に、ウィルスの複製を攪乱する亜鉛イオンの作用を促して、風邪症状の期間の短縮を図るものであったが、本願発明は、亜鉛塩を含む好適な無機塩を、皮膚、特に、手指に塗布した場合に、個体をライノウィルス感染から保護できるという予期せぬ効果の発見に基づくものである。 したがって、ウィルス感染の予防によってもたらされる利点は、単に感染期間を短縮するというレベルからは格段に大きなものであるといえる。
【0115】
本願発明の抗微生物性組成物において有用な亜鉛塩として、グルコン酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物、クエン酸塩、ギ酸塩、グリセロリン酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、サリチル酸塩、酒石酸塩、および、これらの混合物からなるグループから選択される対イオンを有する二価の亜鉛塩があるが、これらに限定されない。
【0116】
D.アルミニウム、ジルコニウム、および、アルミニウム-ジルコニウム複合体
アルミニウム、ジルコニウム、または、アルミニウム-ジルコニウム複合体を、有機酸、無機酸、および/または無機塩の代わりに、あるいは、それらと共に使用することができる。 このような複合体は、それ単独で、あるいは、有機酸、無機酸、および/または無機塩と共に、皮膚pHを約4未満にまで低減するに十分な量で塗布され、そうすることで、表面上のウィルスを制御および不活性化する。 有機酸、無機酸、および無機塩などのように、これら複合体は、酸不耐性ウィルスを迅速に制御し、また、皮膚に塗布してから約4時間またはそれ以上にわたって、持続的にウィルスを制御することができる。
【0117】
アルミニウム、ジルコニウム、および、アルミニウム-ジルコニウム複合体は、通常、 自然界では重合体であり、ヒドロキシル部分を含んでおり、そして、硫酸塩、塩化物、クロロ水酸化物、ギ酸ミョウバン、乳酸塩、ベンジルスルホン酸塩、または、フェニルスルホン酸塩などをはじめとするアニオンを有している。 有用な複合体の部類として、アルミニウムヒドロキシハロゲン化物、ジルコニルオキシハロゲン化物、ジルコニルヒドロキシハロゲン化物、および、これらの混合物があるが、これらに限定されない。 これら複合体は、通常、自然界では酸性を示すので、約5未満のpH、通常は、約2〜約4.5のpH、好ましくは、約3〜約4.5のpHを示す組成物が提供される。 したがって、これら複合体は、皮膚pHを、約4未満にまで低減することができる。
【0118】
アルミニウム化合物の例として、塩化アルミニウム、Al2(OH)xy・XH2Oの一般化学式、式中、Qは、塩素、臭素、または、ヨー素であり;xは、約2〜約5であり;x+yは、約6である、xとyは、整数である必要はなく、そして、Xが、約1〜約6である式で表されるアルミニウムヒドロキシハロゲン化物がある。 ジルコニウム化合物の例として、ジルコニル塩およびジルコニルヒドロキシ塩とも称され、かつ、ZrO(OH)2-nz-Lzの一般化学式、式中、zは、整数である必要のない約0.9〜約2の間の数字であり、nは、Lの価数であり、2-nzは、0よりも大きいか、あるいは、それと等しく、そして、Lは、ハロゲン化物、硝酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、および、これらの混合物からなるグループから選択される式で表されるジルコニウムオキシ塩、および、ジルコニウムヒドロキシ塩がある。
【0119】
したがって、複合体の例としては、アルミニウムクロロ水和物、アルミニウム-ジルコニウムテトラクロロ水和物、グリシンと複合したアルミニウム-ジルコニウムポリクロロ水和物、アルミニウム-ジルコニウムトリクロロ水和物、アルミニウム-ジルコニウムオクタクロロ水和物、アルミニウムセスキクロロ水和物、アルミニウムセスキクロロハイドレックスPG、アルミニウムクロロハイドレックスPEG、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレックスグリシン複合体、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレックスグリシン複合体、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレックスグリシン複合体、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレックスグリシン複合体、アルミニウムクロロハイドレックスPG、ジルコニウムクロロ水和物、アルミニウムジクロロ水和物、アルミニウムジクロロハイドレックスPEG、アルミニウムジクロロハイドレックスPG、アルミニウムセスキクロロハイドレックスPG、塩化アルミニウム、アルミニウムジルコニウムペンタクロロ水和物、および、これらの混合物があるが、これらに限定されない。 その他の無数の有用な化合物は、本明細書の一部を構成するものとして、その内容を援用する国際公開公報第WO 91/19222号、および、the CTFA Cosmetic Ingredient Handbook, The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association社、ワシントン D.C., p. 56, 1988 (以下、「CTFAハンドブック」と称する)に掲載されている。
【0120】
グリシンのようなアミノ酸が複合した塩化アルミニウム-ジルコニウムやアルミニウムクロロ水和物が、好ましい化合物である。 塩化アルミニウム-ジルコニウムとグリシンとの好ましい複合体での、ジルコニウム(Zr)に対するアルミニウム(Al)の比率は、約1.67〜約12.5であり、そして、塩素に対する全金属(Al+Zr)の比率(塩素に対する金属の比率)は、約0.73〜約1.93である。
【0121】
通常、本願発明の方法では、有機酸、無機酸、無機塩、亜鉛および/またはアルミニウム複合体、または、これらの混合物を、組成物に取り込ませてから、そして、その組成物を表面に塗布する。 それら組成物での有機酸、無機酸、無機塩、亜鉛および/またはアルミニウム複合体のための担体は、水を含む。 これら組成物は、接触している表面が、約4未満のpHを有している限りは、濯ぎ落としてもよく、あるいは、表面上に残存せしめることもできる。
【0122】
本願発明によれば、皮膚pHを低減する本願発明の方法において有用な組成物は、抗微生物剤、消毒用アルコール、ヒドロトロープ、多価溶媒、ゲル化剤、pH調整剤、ビタミン、着色料、皮膚コンディショナー、および、香料など、後述する様々な任意の成分を取り込むことができる。
【0123】
皮膚pHを低減する組成物のpHは、好ましくは、約5未満、そして、好ましくは、約4.5未満である。 本願発明の効果を最大限引き出す観点から、pHは、約4未満とする。 通常は、皮膚pHを低減する組成物のpHは、約2〜約5未満、好ましくは、約2.5〜約4.5である。
【0124】
任意成分
抗微生物剤
皮膚pHを低減する組成物に抗微生物剤を取り込むことができ、その場合の含有量は、組成物の0.1重量%〜約5重量%、好ましくは、約0.1重量%〜約2重量%、そして、より好ましくは、約0.3重量%〜約1重量%とする。
【0125】
本願発明において有用な任意の抗微生物剤の例として、以下の各化合物、あるいは、それらの組み合わせがある。
【0126】
(1)フェノール系抗微生物剤
(a)2-ヒドロキシジフェニル化合物
【0127】
【化1】

式中、Yが、塩素または臭素であり、Zが、SO3H、NO2、または、C1-C4アルキルであり、rが、0〜3であり、oが、0〜3であり、pは、0または1であり、mは、0または1であり、および、nは、0または1である構造式で表される2-ヒドロキシジフェニル化合物。
【0128】
好ましい実施態様によれば、Yが、塩素または臭素であり、mは、0であり、nは、0または1であり、oが、1または2であり、rが、1または2であり、そして、pが、0である。
【0129】
特に好ましい実施態様によれば、Yが、塩素であり、mは、0であり、nは、0であり、oが、1であり、rが、2であり、そして、pが、0である。
【0130】
好適かつ有用な2-ヒドロキシジフェニル化合物は、以下の構造式、すなわち;
【0131】
【化2】

で表され、その一般名称は、トリクロサンであり、また、ノースカロライナ州グリーンズボロに所在のCiba Specialty Chemicals社から、IRGASAN DP300という商品名で市販されている。 その他の有用な2-ヒドロキシジフェニル化合物として、2,2'-ジヒドロキシ-2,5'-ジ-ブロモ-ジフェニルエーテルがある。
【0132】
(b) フェノール誘導体
【0133】
【化3】

式中、R1が、ヒドロ、ヒドロキシ、C1-C4アルキル、クロロ、ニトロ、フェニル、またはベンジルであり、R2が、ヒドロ、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、または、ハロであり、R3が、ヒドロ、C1-C6アルキル、ヒドロキシ、クロロ、ニトロ、または、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形態の硫黄であり、R4が、ヒドロまたはメチルであり、および、R5が、ヒドロまたはニトロである構造式で表されるフェノール誘導体。 ハロとは、ブロモ、または、好ましくは、クロロである。
【0134】
フェノール誘導体の例として、クロロフェノール(o-、m-、p-)、2,4-ジクロロフェノール、p-ニトロフェノール、ピクリン酸、キシレノール、p-クロロ-m-キシレノール、クレゾール(o-、m-、p-)、p-クロロ-m-クレゾール、ピロカテコール、レゾルシノール、4-n-ヘキシル-レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシン、カルバクロール、チモール、p-クロロチモール、o-フェニルフェノール、o-ベンジルフェノール、p-クロロ-o-ベンジルフェノール、フェノール、4-エチルフェノール、および、4-フェノールスルホン酸などがあるが、これらに限定されない。 本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する米国特許第6,436,885号に、その他のフェノール誘導体が掲載されている。
【0135】
(c)ジフェニル化合物
【0136】
【化4】

式中、Xが、硫黄またはメチレン基であり、R6およびR'6が、ヒドロキシであり、およびR7、R'7、R8、R'8、R9、R'9、R10およびR'10が、互いに独立している、ヒドロまたはハロである構造式で表されるジフェニル化合物。 ジフェニル化合物の例として、ヘキサクロロフェン、テトラクロロフェン、ジクロロフェン、硫化2,3-ジヒドロキシ-5,5'-ジクロロジフェニル、硫化2,2'-ジヒドロキシ-3,3',5,5'-テトラクロロジフェニル、硫化2,2'-ジヒドロキシ-3,5',5,5',6,6'-ヘキサクロロジフェニル、および、3,3'-ジ-ブロモ-5,5'-ジクロロ-2,2'-ジヒドロキシジフェニルアミンなどがあるが、これらに限定されない。 本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する米国特許第6,436,885号に、その他のジフェニル化合物が開示されている。
【0137】
(2)第四アンモニウム抗微生物剤
有用な第四アンモニウム抗菌剤は、以下の構造式、すなわち;
【0138】
【化5】

式中、R11、R12、R13およびR14の少なくとも一つが、6個〜26個の炭素原子を有するアルキル、アリールまたはアルキルアリール置換基である構造式で表される。 あるいは、五員環または六員環の脂肪族環または芳香族環を形成するために、窒素原子と共に、いずれか二つのR置換基を取り込むことができる。 好ましくは、抗菌剤のアンモニウムカチオン部分全体の分子量は、少なくとも165である。
【0139】
置換基R11、R12、R13およびR14は、直鎖状または分枝状のいずれの形態とすることもできるが、直鎖状が、好ましく、また、一つまたは一つ以上のアミド、エーテル、またはエステル結合を取り込むことができる。 特に、少なくとも一つの置換基として、C6-C26アルキル、C6-C26アルコキシアリール、C6-C26アルキルアリール、ハロゲン置換C6-C26アルキルアリール、C6-C26アルキルフェノキシアルキルなどがある。 前述した置換基以外の第四窒素原子に関する置換基は、通常、わずか12個の炭素原子しか有していない。 加えて、第四アンモニウム抗菌剤の窒素原子を、例えば、ピペリジンなどの脂肪族環、または、例えば、ピリジンなどの芳香族環のいずれかの環状構造内に存在せしめることができる。 アニオンXとして、第四アンモニウム化合物を水溶性にする塩形成性アニオンとすることができる。 アニオンとして、例えば、塩化物、臭化物、または、ヨウ化物、メトサルフェート、および、エトサルフェートなどのハロゲン化物があるが、これらに限定されない。
【0140】
好ましい第四アンモニウム抗微生物剤は、以下の構造式、すなわち;
【0141】
【化6】

式中、R12およびR13が、互いに独立している、C8〜C12アルキルであるか、または、R12が、C12〜C16アルキル、C8〜C18アルキルエトキシ、または、C8〜C18アルキルフェニルエトキシであり、また、R13が、ベンジルであり、そして、Xが、ハロ、メトサルフェート、エトサルフェートまたはp-トルエンスルホネートである構造式で表される。 アルキル基R12およびR13は、直鎖状または分枝状のいずれの形態とすることもできるが、直鎖状が、好ましい。
【0142】
本願発明の組成物に用いる第四アンモニウム抗微生物剤は、単一の第四アンモニウム化合物、または、二つまたはそれ以上の第四アンモニウム化合物の混合物のいずれであってもよい。 特に有用な第四アンモニウム抗微生物剤として、塩化ジアルキル(C8-C10)ジメチルアンモニウム(例えば、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(例えば、塩化アルコニウム、および、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム)、塩化アルキルメチルドデシルベンジルアンモニウム、塩化メチルドデシルキシレン-ビス-トリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルメチルベンジルアンモニウム、臭化アルキルジメチルエチルアンモニウム、および、アルキル第三アミンなどがある。 これら単量体構造に基づいた第四アンモニウム化合物重合体も、本願発明において利用することができる。 第四アンモニウム化合物重合体の一例として、POLYQUAT(登録商標)、例えば、塩化2-ブテニルジメチルアンモニウムポリマーがある。 上掲の第四アンモニウム化合物は、ニュージャージー州フェアロウンに所在のLonza社や、イリノイ州ノースフィールドに所在のStepan社から、BARDAC(登録商標)、BTC(登録商標)、HYAMINE(登録商標)、BARQUAT(登録商標)、および、LONZABAC(登録商標)の商品名で市販されている。
【0143】
その他の第四アンモニウム抗微生物剤の例として、臭化セチルトリメチルアンモニウムなどのハロゲン化アルキルアンモニウム;臭化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムなどのハロゲン化アルキルアリールアンモニウム;臭化N-セチルピリジニウムなどのハロゲン化N-アルキルピリジニウムなどがあるが、これらに限定されない。 その他の好適な第四アンモニウム抗微生物剤は、塩化オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムや塩化N-(ラウリルココアミノフォルミルメチル)ピリジニウムなどのように、アミド、エーテル、または、エステルの部分を有している。 その他の部類に属する第四アンモニウム抗微生物剤として、例えば、塩化ラウリルオキシフェニルトリメチルアンモニウム、セチルアミノフェニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ドデシルフェニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、塩化ドデシルベンジルトリメチルアンモニウム、塩素化塩化ドデシルベンジルトリメチルアンモニウムなどの、置換した芳香族核を有しているものがある。
【0144】
具体的な第四アンモニウム抗微生物剤として、塩化ベヘナルコニウム、塩化セタルコニウム、臭化セタリールアルコニウム、セトリモニウムトシレート、塩化セチルピリジニウム、臭化ラウラルコニウム、塩化ラウラルコニウム、塩化ラピリウム、塩化ラウリルピリジニウム、塩化ミリスタルコニウム、塩化オレアルコニウム、および、塩化イソステアリールエチルジモニウムなどがあるが、これらに限定されない。 好ましい第四アンモニウム抗微生物剤として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セチルピリジニウム、および、塩化メチルベンゼトニウムがある。
【0145】
(3)アニリドおよびビスグアニジン抗微生物剤
有用なアニリドおよびビスグアニジン抗微生物剤として、トリクロカルバン、カルバニリド、サリシラニリド、トリブロモサラン、テトラクロロサリシラニリド、フルオロサラン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および、これらの混合物などがあるが、これらに限定されない。
【0146】
消毒用アルコール
皮膚pHを低減して、細菌およびウィルスの持続的な制御を実現する本願発明の方法において有用な組成物は、10%〜約90重量%の任意の消毒用アルコールを取り込むことができる。 好ましい組成物は、任意の消毒用アルコールを、約10重量%〜約70重量%、より好ましくは、約20重量%〜約65重量%の量で含有している。 本明細書で使用する「消毒用アルコール」の用語は、1個〜6個の炭素原子を有する水溶性アルコールを指すものである。 消毒用アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、および、イソプロピルアルコールなどがあるが、これらに限定されない。
【0147】
その他の任意成分
本願発明の方法において有用な皮膚pHを低減する組成物に、当業者に周知のその他の任意成分を含有させることができる。 これら任意成分は、組成物が奏する効果に悪影響を及ぼさずに、それらが意図している機能を奏するに十分な量でもってして取り込むことができる。 通常、任意成分は、それ全体で、組成物の0重量%〜約50重量%の範囲で含まれている。
【0148】
任意成分の種類として、界面活性剤、ヒドロトロープ、多価溶媒、ゲル化剤、着色料、香料、pH調整剤、増粘剤、粘度調整剤、キレート化剤、皮膚コンディショナー、皮膚軟化剤、防腐剤、緩衝剤、気泡安定剤、抗酸化剤、気泡増強剤、キレート化剤、乳白剤、および、当業者が周知の同様の種類の任意成分などがあるが、これらに限定されない。
【0149】
皮膚pHを低減する組成物に界面活性剤を取り込むことができ、その場合の含有量は、組成物の0.1重量%〜約15重量%、通常は、0.1重量%〜約10重量%とする。 より具体的には、界面活性剤を取り込む場合には、組成物は、0重量%〜約7重量%の界面活性剤を含む。 任意の界面活性剤は、組成物のpHにおいて安定であり、また、組成物内のその他の成分に対して作用しない。
【0150】
界面活性剤として、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、または、これら界面活性剤の相溶的混合物を利用することができる。 また、これら界面活性剤として、組成物のpHに応じて、陰イオン性または陽イオン性を示す両イオン性または両性の界面活性剤を用いることができる。
【0151】
このように、本願発明の組成物は、約8〜約30個の炭素原子、特に、約12〜約20個の炭素原子を含む炭素鎖のような疎水性部位を有し、さらに硫酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩、リン酸塩、または、カルボン酸塩のような親水性部位を有する陰イオン界面活性剤を含有することができる。 疎水性炭素鎖は、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドでエーテル化して増大した水溶解度や、陰イオン界面活性剤に対する低度の表面張力といった特殊な物理的特性をしばしば付与する。
【0152】
好適な陰イオン界面活性剤として、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンエタノールの硫酸塩エステル、アルファ-オレフィンスルホン酸塩、ベータ-アルコキシアルカンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルモノグリセリド硫酸塩、アルキルモノグリセリドスルホン酸塩、アルキル炭酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸、スルホスクシネート、サルコシネート、オクトキシノールまたはノノキシノールリン酸塩、タウレート、脂肪タウライド、脂肪酸アミドポリオキシエチレン硫酸塩、イセチオネート、アシルグルタミン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アシル化ペプチド、アシルラクチレート、陰イオン性フルオロ界面活性剤、および、これらの混合物として知られた部類にに属する化合物があるが、これらに限定されない。 その他の陰イオン界面活性剤が、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するMcCutcheon's Emulsifiers and Detergents, 1993 Annuals(以下、「McCutcheon's」と称する)、McCutcheon Division, MC Publishing Co., Glen Rock, NJ, PP.263-266に記載されている。 その他の多数の陰イオン界面活性剤、および、陰イオン界面活性剤のクラスが、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するLaughlin et al.,の米国特許第3,929,678号および米国特許公開公報第2002/0098159号に開示されている。
【0153】
陰イオン界面活性剤の例として、C8-C18アルキルスルホン酸塩、C8-C18アルキル硫酸塩、C8-C18脂肪酸塩、1または2モルのエトキシル化を有するC8-C18アルキルエーテル硫酸塩、C8-C18アルカミンオキサイド、C8-C18アルキルサルコシネート、C8-C18スルホ酢酸塩、C8-C18スルホスクシネート、C8-C18アルキルジフェニルオキサイドジスルホン酸塩、C8-C18アルキルカルボン酸塩、C8-C18アルファ-オレフィンスルホン酸塩、メチルエステルスルホン酸塩、および、その混合物などがあるが、これらに限定されない。 C8-C18アルキル基は、8〜18個の炭素原子を含み、直鎖(例えば、ラウリル)、または、分岐鎖(例えば、2-エチルヘキシル)とすることができる。 陰イオン界面活性剤のカチオンは、アルカリ金属(好ましくは、ナトリウムまたはカリウム)、アンモニウム、C1-C4アルキルアンモニウム(モノ-、ジ-、トリ-)、または、C1-C3アルカノールアンモニウム(モノ-、ジ-、トリ-)とすることができる。 リチウムおよびアルカリ土類カチオン(例えば、マグネシウム)を用いることができるが、好ましくはない。
【0154】
具体的な界面活性剤として、ラウリル硫酸塩、オクチル硫酸塩、2-エチルヘキシル硫酸塩、デシル硫酸塩、トリデシル硫酸塩、ココエート、ラウロイルサルコシネート、ラウリルスルホスクシネート、線状C10ジフェニルオキサイドジスルホネート、ラウリルスルホスクシネート、ラウリルエーテル硫酸塩(1モルおよび2モルのエチレンオキサイド)、ミリスチル硫酸塩、オレエート、ステアレート、タレート、リシノレエート、セチル硫酸塩、および、同様の陰イオン界面活性剤などが使用できるが、これらに限定されない。
【0155】
その他の界面活性剤の例は、本明細書の一部を構成するものとして、その内容を援用する"CTFA Cosmetic Ingredient Handbook", The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association社、ワシントン D.C. (1988) pp. 10-13, 42-46および87-94 (以下、「CTFAハンドブック」と称する)に掲載されている。
【0156】
本願発明の組成物は、非イオン共界面活性剤も含有することができる。 非イオン界面活性剤は、通常、長鎖アルキル基またはアルキル化アリール基のような疎水性塩基、および十分な数(すなわち、1〜約30)のエトキシおよび/またはプロポキシ基を含む親水性鎖を有する。 非イオン界面活性剤としては、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化およびプロポキシル化脂肪アルコール、メチルグルコースのポリエチレングリコールエーテル、ソルビトールのポリエチレングリコールエーテル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックコポリマー、脂肪(C8-C18)酸のエトキシル化エステル、エチレンオキサイドと長鎖アミンまたはアミドの縮合生成物、およびこれらの混合物などがある。
【0157】
非イオン界面活性剤の例として、メチルグルセス-10、PEG-20メチルグルコースジステアレート、PEG-20メチルグルコースセスキステアレート、C11-15パレス-20、セテス-8、セテス-12、ドドキシノール-12、ラウレス-15、PEG-20ヒマシ油、ポリソルベート20、ステアレス-20、ポリオキシエチレン-10、セチルエーテル、ポリオキシエチレン-10ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン-20 セチルエーテル、ポリオキシエチレン-10オレイルエーテル、ポリオキシエチレン-20オレイルエーテル、エトキシル化ノニルフェノール、エトキシル化オクチルフェノール、エトキシル化ドデシルフェノール、または、3個〜20個のエチレンオキサイド部位を含むエトキシル化脂肪(C6-C22)アルコール、ポリオキシエチレン-20イソヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン-23グリセロールラウレート、ポリオキシエチレン-20グリセリルステアレート、PPG-10メチルグルコースエーテル、PPG-20メチルグルコースエーテル、ポリオキシエチレン-20ソルビタンモノエステル、ポリオキシエチレン-80ヒマシ油、ポリオキシエチレン-15トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン-6トリデシルエーテル、ラウレス-2、ラウレス-3、ラウレス-4、PEG-3ヒマシ油、PEG600ジオレエート、PEG400ジオレエート、およびこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0158】
その他の無数の非イオン界面活性剤の例は、本明細書の一部を構成するものとして、その内容を援用するMcCutcheonのpp.1-246およびpp.266-272、CTFA International Cosmetics Ingredient Dictionary、第4版、Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association, Washignton, D.C.(1991)(以下、「CTFA Dictionary」と称する)のpp.1-651、および、CTFA Handbookのpp.86-94に開示されている。
【0159】
陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤に加えて、陽イオン、両性、および、両イオン性の界面活性剤も、本願発明の組成物に用いることができる。 有用な陽イオン界面活性剤として、以下の構造式、すなわち;
【0160】
【化7】

式中、R15が、約12個〜約30個の炭素原子を有するアルキル基、または、約12個〜約30個の炭素原子を有する芳香族、アリール、または、アルカリル基であり、R16、R17、および、R18が、互いに独立しており、水素、1個〜約22個の炭素原子を有するアルキル基、または、約12個〜約22個の炭素原子を有する芳香族、アリール、または、アルカリル基からなるグループから選択され、および、Xが、相溶性陰イオンであって、好ましくは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、メチル硫酸塩、エチル硫酸塩/トシレート、乳酸塩、クエン酸塩、グリコール酸塩、および、これらの混合物からなるグループから選択される構造式で表される陽イオン界面活性剤がある。 さらに、R15、R16、R17、および、R18のアルキル基は、エステル、および/または、エーテル結合、あるいは、水酸基またはアミノ基置換も含むことができる(例えば、アルキル基は、ポリエチレングリコール部分およびポリプロピレングリコール部分を含むことができる)。
【0161】
好ましくは、 R15は、約12個〜約22個の炭素原子を有するアルキル基であり、R16は、水素または1個〜約22個の炭素原子を有するアルキル基であり、そして、R17およびR18は、互いに独立しており、水素または1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基である。 より好ましくは、R15は、約12個〜約22個の炭素原子を有するアルキル基であり、そして、R16、R17、および、R18は、水素または1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0162】
その他の有用な陽イオン界面活性剤として、アミノ-アミド、すなわち、上記構造式でのR10が、R19CONH-(CH2)nの式、式中、R19が、約12個〜約22個の炭素原子を有するアルキル基であり、そして、nが、2〜6、より好ましくは、2〜4、そして、最も好ましくは、2〜3の整数である式で代替されているアミノ-アミドがある。 これら陽イオン界面活性剤の例として、塩化ステアラミドプロピルPG-ジモニウムリン酸塩、塩化ベヘンアミドプロピルPGジモニウム、ステアラミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート、塩化ステアラミドプロピルジメチル(ミリスチル酢酸塩)アンモニウム、ステアラミドプロピルジメチルセテアリールアンモニウムトシレート、塩化ステアラミドプロピルジメチルアンモニウム、ステアラミドプロピルジメチルアンモニウム乳酸塩、および、これらの混合物などがあるが、これらに限定されない。
【0163】
第四アンモニウム塩陽イオン界面活性剤の例として、塩化セチルアンモニウム、臭化セチルアンモニウム、塩化ラウリルアンモニウム、臭化ラウリルアンモニウム、塩化ステアリールアンモニウム、臭化ステアリールアンモニウム、塩化セチルジメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルアンモニウム、臭化ラウリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリールジメチルアンモニウム、臭化ステアリールジメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリールトリメチルアンモニウム、臭化ステアリールトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリールジメチルセチルジタロウジメチルアンモニウム、塩化ジセチルアンモニウム、臭化ジセチルアンモニウム、塩化ジラウリルアンモニウム、臭化ジラウリルアンモニウム、塩化ジステアリールアンモニウム、臭化ジステアリールアンモニウム、塩化ジセチルメチルアンモニウム、臭化ジセチルメチルアンモニウム、塩化ジラウリルメチルアンモニウム、臭化ジラウリルメチルアンモニウム、塩化ジステアリールメチルアンモニウム、臭化ジステアリールメチルアンモニウム、および、これらの混合物からなるグループから選択されるものがあるが、これらに限定されない。
【0164】
その他の第四アンモニウム塩として、C12-C30アルキル炭素鎖が、タロウ脂肪酸またはココナツ脂肪酸に由来している第四アンモニウム塩がある。 「タロウ」の用語は、一般的に、C16〜C18の範囲のアルキル鎖の混合物を有しているタロウ脂肪酸(通常は、水素化されたタロウ脂肪酸)から得たアルキル基を指す。 「ココナツ」の用語は、一般的に、C12〜C14の範囲のアルキル鎖の混合物を有しているココナツ脂肪酸から得たアルキル基を指す。 これらタロウおよびココナツの供給源から得られる第四アンモニウム塩の例として、塩化ジタロウジメチルアンモニウム、ジタロウジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、塩化(水素化タロウ)ジメチルアンモニウム、ジ(水素化タロウ)ジメチルアンモニウム酢酸塩、ジタロウジプロピルアンモニウムリン酸塩、ジタロウジメチルアンモニウム硝酸塩、塩化ジ(ココナツアルキル)ジメチルアンモニウム、臭化ジ(ココナツアルキル)ジメチルアンモニウム、塩化タロウアンモニウム、塩化ココナツアンモニウム、および、これらの混合物などがある。 エステル結合を有するアルキル基を含む第四アンモニウム化合物の例として、塩化ジタロイルオキシエチルジメチルアンモニウムがある。
【0165】
両性界面活性剤、すなわち、両イオン性および双性の界面活性剤は、直鎖または分岐鎖の脂肪族基を有する第二および第三アミンの誘導体として広く知られており、脂肪族置換基の一つが、約8個〜約18個の炭素原子を含有し、また、その脂肪族置換基の少なくとも一つが、水溶性の陰イオン基、例えば、カルボキシ、スルホン酸塩、または、硫酸塩を含有する。
【0166】
具体的には、両性界面活性剤の一つのクラスは、一般構造式:
【0167】
【化8】

式中、R20は、C11-C21アルキルであり、R21は、水素またはC1-C2アルキルであり、Yは、CO2MまたはSO3Mであり、Mは、アルカリ金属であって、nは、1〜3の数字である構造式で示されるサルコシネートおよびタウレートを含む。
【0168】
両性界面活性剤のその他のクラスの一つに、構造式:
【0169】
【化9】

で表現されるアミドスルホスクシネートがある。
【0170】
以下のクラスの両性界面活性剤も用いることができる。
【0171】
【化10】

アルコアンフォグリシネート
【0172】
【化11】

アルコアンフォカルボキシグリシネート
【0173】
【化12】

アルコアンフォプロピオネート
【0174】
【化13】

アルコアンフォカルボキシプロピオネート
【0175】
【化14】

アルコアンフォプロピルスルホネート
【0176】
【化15】

アルカミドプロピル ベタイン
【0177】
【化16】

アルカミドプロピル ヒドロキシスルタイン
【0178】
【化17】

アルキルアミノプロピオネート
【0179】
【化18】

アルキルイミノプロピオネート
両性界面活性剤のさらに他のクラスは、ホスホベタインおよびホスフィタインを含む。
【0180】
本願発明で有用な両性界面活性剤として、ナトリウムココナッツN-メチルタウレート、ナトリウムオレイルN-メチルタウレート、ナトリウムトール油酸N-メチルタウレート、ナトリウムパルミトイルN-メチルタウレート、ココジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシエチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリル-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルガンマカルボキシプロピルベタイン、ラウリル-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)-カルボキシエチルベタイン、ココアミドジメチルプロピルスルタイン、ステアリルアミドジメチルプロピルスルタイン、ラウリルアミド-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-プロピルスルタイン、オレアミドPEG-2スルホコハク酸二ナトリウム、TEAオレアミドPEG-2スルホスクシネート、オレアミドMEAスルホコハク酸二ナトリウム、オレアミドMIPAスルホコハク酸二ナトリウム、リシノールアミドMEAスルホコハク酸二ナトリウム、ウンデシレンアミドMEAスルホコハク酸二ナトリウム、小麦ゲルマミドMEAスルホコハク酸二ナトリウム、小麦ゲルマミドPEG-2スルホコハク酸二ナトリウム、イソステアラミドMEAスルホコハク酸二ナトリウム、ココアンフォグリシネート、ココアンフォカルボキシグリシネート、ラウロアンフォグリシネート、ラウロアンフォカルボキシグリシネート、カプリロアンフォカルボキシグリシネート、ココアンフォプロピオネート、ココアンフォカルボキシプロピオネート、ラウロアンフォカルボキシプロピオネート、カプリロアンフォカルボキシプロピオネート、ジヒドロキシエチルタローグリシネート、コカミド3-ヒドロキシプロピルホスホベタイン二ナトリウム、ラウリックミリスティックアミド3-ヒドロキシプロピルホスホベタイン二ナトリウム、グリセリルホスホベタインラウリックミリスティックアミド、ラウリックミリスティックアミドカルボキシ3-ヒドロキシプロピルホスホベタイン二ナトリウム、ココアミドプロピルホスフィタイン一ナトリウム、ラウリックミリスティックアミドプロピルホスフィタイン一ナトリウム、および、これらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0181】
有用な両性界面活性剤として、アミンオキシドがある。 アミンオキシドは、親水性部分が、半極性結合を有する酸素原子に結合した窒素原子を含んでいる一般構造式で表現される。
【0182】
【化19】

22、R23およびR24は、1個〜約24個の炭素原子を有する飽和または不飽和、分枝または非分枝のアルキル基またはアルケニル基とすることができる。 好ましいアミンオキシドは、8個〜22個の炭素原子を有するアルキル鎖であるR基を少なくとも一つは有している。 アミンオキシドの例として、デシルアミンオキシド、コカミンオキシド、ミリスタミンオキシド、および、パルミタミンオキシドなどのアルキルジメチルアミンオキシドがあるが、これらに限定されない。 例えば、コアミドプロピルアミンオキシドやステアラミドプロピルアミンオキシドなどのアルキルアミノプロピルアミンオキシドなども有用である。
【0183】
本願発明の組成物において利用される好適な界面活性剤として、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、第一または第二アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アシルタウレート、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホサンク酸塩、スルホン酸化脂肪酸、塩化および臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化および臭化ジアルキルジメチルアンモニウム、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルアミノプロピルアミンオキシド、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、および、これらの混合物などがあるが、これらに限定されない。 さらに好ましい界面活性剤として、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、第一または第二アルキルスルホン酸塩、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルベタイン、および、これらの混合物からなるグループから選択される界面活性剤がある。
【0184】
ヒドロトロープを組成物に取り込むことができ、その場合の含有量は、組成物の0重量%〜約30重量%、好ましくは、0重量%〜約20重量%とする。 より好ましくは、組成物は、0重量%〜約15重量%のヒドロトロープを含む。
【0185】
ヒドロトロープは、他の化合物の水溶解度を改善する性質を備えた化合物である。 本願発明で利用されるヒドロトロープは、界面活性剤の性質を欠き、通常は、短鎖アルキルアリールスルホン酸塩である。 ヒドロトロープの例として、クメンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸アンモニウム、キシレンスルホン酸アンモニウム、トルエンスルホン酸カリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸、および、キシレンスルホン酸などがあるが、これらに限定されない。 その他の有用なヒドロトロープとして、ポリナフタレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、および、コハク酸二ナトリウムがある。
【0186】
多価溶媒を組成物に取り込むことができ、その場合の含有量は、組成物の0重量%〜約30重量%、好ましくは、0重量%〜約20重量%とする。 消毒用アルコールとは対照的に、多価溶媒は、主に、組成物の作用に関与する。 本明細書で用いる「多価溶媒」の用語は、2個〜6個、そして、通常は、2個または3個の水酸基を含んでいる水溶性有機化合物を指す。
【0187】
「水溶性」の用語は、多価溶媒が、25℃の100gの水に対して、少なくとも0.1gが溶解することを意味するものである。 多価溶媒の水溶性に上限はなく、例えば、多価溶媒と水の全成分を水溶性とすることも可能である。
【0188】
したがって、「多価溶媒」の用語は、水溶性のジオール類、トリオール類、および、ポリオール類を包含している。 水性溶媒の例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、ソルビトール、PEG-4、および、同様の多水酸基化合物などがあるが、これらに限定されない。
【0189】
任意成分のその他の具体例として、泡ブースターおよび安定化剤としてのアルカノールアミド、緩衝剤としての無機リン酸塩、硫酸塩、および、炭酸塩、キレート化剤としてのEDTAおよびリン酸塩、および、pH調整剤としての酸および塩基などがある。
【0190】
好ましい塩基性pH調整剤の例として、アンモニア;モノ-、ジ-、トリ-アルキルアミン;モノ-、ジ-、およびトリ-アルカノールアミン;アルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物;および、これらの混合物などがある。 しかしながら、塩基性pH調整剤の種類は限定されるものではなく、当該技術分野で周知の塩基性pH調整剤を用いることができる。 塩基性pH調整剤の具体例として、アンモニア;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および、水酸化リチウム;モノエタノールアミン;トリエチルアミン;イソプロパノールアミン;ジエタノールアミン;および、トリエタノールアミンなどがあるが、これらに限定されない。
【0191】
好ましい酸性pH調整剤の例として、鉱酸がである。 鉱酸の例として、塩酸、硝酸、リン酸および硫酸などがあるが、これらに限定されない。 酸性pH調整剤の種類は限定されるものではなく、当該技術分野で周知の酸性pH調整剤を、単独でまたは組合わせて用いることができる。
【0192】
組成物に対して、増粘性を付与するアルカノールアミドとして、コカミドMEA、コカミドDEA、ソイアミドDEA、ラウラミドDEA、オレアミドMIPA、ステアールアミドMEA、ミリスタミドMEA、ラウラミドMEA、カプラミドDEA、リシノールアミドDEA、ミリスタミドDEA、ステアラミドDEA、オレイラミドDEA、タロウアミドDEA、ラウラミドMIPA、タロウアミドMEA、イソステアラミドDEA、イソステアラミドMEA、および、これらの混合物などがあるが、これらに限定されない。 アルカノールアミドは、非洗浄性の界面活性剤であり、組成物に増粘性を付与する場合には、比較的少量が加えられる。
【0193】
ゲル化剤を組成物に取り込むことができ、その場合の含有量は、組成物の約0.1重量%〜約5重量%、好ましくは、0.1重量%〜約3重量%とする。 より好ましくは、組成物は、約0.1重量%〜約2.5重量%のゲル化剤を含む。 皮膚やその他の表面に対して組成物が容易に塗布できるように、組成物を粘稠な液体、ゲル、または、半固形状とするに十分な量のゲル化剤が、組成物には含まれている。 当業者であれば、組成物に所望の粘度または稠度を付与するために用いるゲル化剤の種類や量は、容易に想到することができる。
【0194】
本明細書で用いる「ゲル化剤」の用語は、水性組成物の粘度を増大することができる化合物、あるいは、水性組成物をゲル状または半固形に変化せしめる化合物を指す。 したがって、このゲル化剤として、例えば、天然ゴムまたは合成ポリマーなどの天然有機物、または、天然無機物などを使用することができる。
【0195】
本願発明において使用可能なゲル化剤を、以下に記載しているが、これらに限定されない。 特に、以下に示した化合物は、有機物および無機物にかかわらず、基本的に、組成物の水性部分を増粘化またはゲル化する作用を呈する。
【0196】
アカシア、寒天、アルギン、アルギン酸、アルギン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、アミロペクチン、アタパルジャイト、ベントナイト、C9-15アルコール、酢酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、カルシウム カラギーナン、塩化カルシウム、カプリルアルコール、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアー、カラギーナン、セルロース、セルロースゴム、セテアリールアルコール、セチルアルコール、コーンスターチ、ダマル、デキストリン、ジベンジリデンソルビトール、エチレンジ水素化タロウアミド、エチレンジオールアミド、エチレンジステアラミド、ゼラチン、グアーゴム、塩化グアーヒドロキシ-プロピルトリモニウム、ヘクトライト、ヒアルロン酸、シリカ水和物、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルステアラミド-MIPA、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、イソセチルアルコール、イソステアリールアルコール、カラヤゴム、ケルプ、ラウリルアルコール、ローカストビーンゴム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸マグネシウム、トリケイ酸マグネシウム、メトキシPEG-22/ドデシルグリコールコポリマー、メチルセルロース、微晶質セルロース、モンモリロナイト、ミリスチルアルコール、エンバク粉、オレイルアルコール、パーム核アルコール、ペクチン、PEG-2M、PEG-5M、ポリビニルアルコール、アルギン酸カリウム、カラギーナンカリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、馬鈴薯澱粉、アルギン酸プロピレングリコール、カルボキシメチルデキストランナトリウム、カラギーナンナトリウム、硫酸ナトリウムセルロース、塩化ナトリウム、ケイアルミン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトライト、ステアリールアルコール、タロウアルコール、TEA-塩酸塩、トラガカントゴム、トリデシルアルコール、ケイ酸トロメタミンマグネシウムアルミニウム、小麦粉、小麦澱粉、キサンタンゴム、および、これらの混合物。
【0197】
基本的に、組成物の非水性部分を増粘化する作用を呈するゲル化剤を、以下に例示するが、これらに限定されない。
【0198】
アビエチルアルコール、アクリノレイン酸、ベヘン酸アルミニウム、カプリル酸アルミニウム、ジリノレン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸/ラウリン酸/パルミチン酸またはステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸/ミリステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸/パルミチン酸アルミニウム、イソステアリン酸/ステアリン酸アルミニウム、ラノリン酸アルミニウム、ミリスチン酸/パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム、蜜蝋、ベヘンアミド、ベヘニルアルコール、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、C29-70酸、ベヘン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カンデリラワックス、カルナウバ、セレシン、コレステロール、コレステリルヒドロキシステアリン酸、ココナツアルコール、コーパル、ジグリセリルステアリン酸リンゴ酸、ジヒドロアビエチルアルコール、オレイン酸ジメチルラウラミン、ドデカン二酸/セテアリールアルコール/グリコールコポリマー、エルカミド、エチルセルロース、グリセリルトリアセチルヒドロキシステアリン酸塩、グリセリルトリアセチルリシノール酸塩、ジベヘン酸グリコール、ジオクタン酸グリコール、ジステアリン酸グリコール、ジステアリン酸ヘキサンジオール、水素化C6-14オレフィンポリマー、水素化ヒマシ油、水素化綿実油、水素化ラード、水素化ニシン油、水素化パーム核グリセリド、水素化パーム核油、水素化パーム油、水素化ポリイソブテン、水素化大豆油、水素化タロウアミド、水素化タロウグリセリド、水素化植物グリセリド、水素化植物グリセリド、水素化植物油、ヒドロキシプロピルセルロース、イソブチレン/イソプレンコポリマー、イソセチルステアロイルステアリン酸塩、モク蝋、ホホバワックス、ラノリンアルコール、ラウラミド、メチルデヒドロアビエチン酸塩、メチル水素化樹脂酸塩、メチル樹脂酸塩、メチルスチレン/ビニルトルエンコポリマー、微晶質ワックス、モンタン酸ワックス、モンタンワックス、ミリスチルエイコサノール、ミリスチルオクタデカノール、オクタデセン/マレイン酸無水物コポリマー、オクチルドデシルステアロイルステアリン酸塩、オレアミド、オレオステアリン、オーリキュリーワックス、酸化ポリエチレン、オゾケライト、パーム核アルコール、パラフィン、ペンタエリスリチル水素化ロジン酸塩、ペンタエリスリチルロジン酸塩、ペンタエリスリチルテトラアビエチン酸塩、ペンタエリスリチルテトラベヘン酸塩、ペンタエリスリチルテトラオクタン酸塩、ペンタエリスリチルテトラオクタン酸塩、ペンタエリスリチルテトラステアリン酸、フタル無水物/グリセリン/グリシジルデカン酸コポリマー、フタル/トリメリット/グリコールコポリマー、ポリブテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリジペンテン、ポリエチレン、ポリイソブテン、ポリイソプレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルラウリン酸塩、ジカプロン酸プロピレングリコール、ジココエートプロピレングリコール、ジイソノナン酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジペラルゴン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸プロピレングリコール、ジウンデカン酸プロピレングリコール、PVP/エイコセンコポリマー、PVP/ヘキサデセンコポリマー、米糠ワックス、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトライト、ステアラミド、DEA-ジステアリン酸ステアラミド、DIBA-ステアリン酸ステアラミド、MEA-ステアリン酸ステアラミド、ステアロン、ステアリールアルコール、ステアリールエルカミド、ステアリン酸ステアリール、ステアリン酸ステアリールステアロイル、合成蜜蝋、合成ワックス、トリヒドロキシステアリン、トリイソノナノイン、トリイソステアリン、トリイソアリールトリリノール酸塩、トリラウリン、トリリノール酸、トリリノレイン、トリミリスチン、トリオレイン、トリパルミチン、トリステアリン、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ロジン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、および、これらの混合物。
【0199】
本願発明において有用なゲル化剤を以下に例示するが、これらに限定されない。
【0200】
【表2】

本願発明の方法が奏する新規かつ予想外の結果を実証するために、以下の組成物を調製し、そして、対照のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌、それに、対象のライノウィルスに対する本願発明の方法の効果を検証した。 以下の各組成物で示した重量%は、皮膚pHを低減する本願発明の方法において用いる組成物に含まれる各成分の実際の重量、または活性が認められる重量を指すものである。 この組成物は、後述するように、当業者が理解可能な手順で成分を混合することによって調製された。
【0201】
本願発明の組成物の調製および検定において、以下の方法を用いた。
【0202】
a) 抗菌製品の急速殺菌(時限死滅)活性の検定。 抗菌試験組成物に曝された被験微生物の生存性を時間との関数で決定する時限死滅法によって、抗菌性組成物の活性を測定した。 この試験では、組成物の希釈画分は、特定の温度下で、特定の時間をかけて、既知の供試細菌集団と接触する。 試験終期になれば、この試験組成物を中和して、組成物の抗菌活性を阻害する。 当初の細菌数からの減少率あるいは対数的減少を計算する。
【0203】
一般に、時限死滅法は、当業者に周知の方法である。
【0204】
本願発明の組成物は、100%までのいずれの濃度でも試験することができる。 濃度の選択は、研究者の裁量に依存しており、研究者たちは、50%の希釈度で試験を行って、好適な濃度を容易に決定することができるが、非粘性試料の場合には希釈されない。 磁気攪拌子を具備した250ml容の滅菌済ビーカーに試験試料を置き、そして、必要に応じて、試料の体積を、滅菌脱イオン水で100mlに調整する。 各試験を三度実施して、得られた結果を集計し、そして、対数的減少の平均値を報告する。
【0205】
接触時間も、研究者の裁量で決定される。 接触時間に関して、特に制限はない。 一般的な接触時間は、15秒間〜5分間の範囲であるが、30秒間〜1分間に設定されることが多い。 接触温度についても特に制限はないが、一般的には、室温または約25℃に設定されている。
【0206】
細菌懸濁物または試験用接種物は、好適な固形培地(例えば、寒天)にて細菌培養物を生長させて調製する。 次いで、この細菌集団を、滅菌済生理食塩水を用いて寒天から洗い流して、細菌懸濁物での個体数を、約108のコロニー形成単位/ml(cfu/ml)になるまで調整する。
【0207】
以下の表には、後出の試験で用いた細菌培養物を列挙しており、また、利用した微生物の名称に関係する細菌名、ATCC(アメリカン タイプ カルチュア コレクション)受託番号、そして、その略称も併記している。 S. aureusは、グラム陽性細菌であるのに対して、E. coli、K. pneum、および、S. cholerは、グラム陰性細菌である。
【0208】
【表3】

試験組成物が入ったビーカーを、(一定温度が所望される場合には)水浴上に置くか、あるいは、ビーカーに(実験室温度が所望される場合には)磁気攪拌子を装備する。 次いで、1.0mlの試験用細菌懸濁液を、この試料に接種する。 所定の接触時間をかけて、試験組成物と共に接種物を攪拌する。 接触時間が終了すれば、1.0mlの試験組成物/細菌混合物を、9.0mlの中和液に加える。 計測可能な範囲にまで、十倍希釈を行う。 この希釈度は、由来生物に応じて変えることができる。 プレート、すなわち、TSA+プレート(TSA+とは、レシチンとポリソルベート80とを含むトリプチケースソイ寒天である)を用いて、希釈度の選択を三度行った。 次いで、これらプレートを、24±2時間かけてインキュベーションし、そして、生存しているコロニーの固体数を計数して、減少率または対数的減少値を算出する。 対照値(対照数)は、試験組成物に代えて脱イオン水を用いた以外は前述した手順を踏む手法を実施することで、決定される。 対照試料および試験試料の各々で得られたプレート計数値は、標準的な微生物学的方法によって、cfu/ml単位に換算される。
【0209】
対数的減少は、以下の公式を用いて算出される。
【0210】
対数的減少値=log10(対照での生存数)−log10(試験試料での生存数)
以下の表は、細菌集団での減少率と対数的減少との相関関係を示しているいる。
【0211】
【表4】

b) 抗ウィルス残効性試験
参照文献: 本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する「Sattar I」とも呼称されている、S.A. Sattar, Standard Test Method for Determining the Virus-Eliminating Effectiveness of Liquid Hygienic Handwash Agents Using the Fingerpads of Adult Volunteers, Annual Book of ASTM Standards. Designation E1838-96、および、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する「Sattar II」とも呼称されている、S.A. Sattar et al., Chemical Disinfection to Interrupt Transfer of Rhinovirus Type 14 from Environmental Surfaces to Hands, Applied and Environmental Microbiology, Vol. 59, No. 5, 1993年5月, pp.1579-1585。
【0212】
本願発明において抗ウィルス指数を決定するために用いた方法は、Sattar Iに変更を加えた方法であり、液体手指洗浄液(濯ぎ落とすタイプ)の殺ウィルス活性に関する試験である。 本願発明で用いた方法は、残存させるタイプの洗浄液について、信頼できるデータを得るために変更を加えている。
【0213】
Sattar Iの変更態様は、後述するようにして皮膚へ直接に試料を移し、後述するようにして指腹部にウィルスを接種し、そして、10回の洗浄を経てウィルスの回収を行う。 接種を行った皮膚の部位を、水で70%に希釈したエタノールで、完全に除染する。
【0214】
実施手順:
10分間試験:
まず、被験者(5名/試料)の手指を、非薬用石鹸で洗浄し、手指を濯ぎ、そして、手指を乾燥せしめる。
【0215】
次いで、手指を、70%エタノールで処理し、そして、風乾する。
【0216】
試料(1.0ml)を、親指以外の手指に塗布し、そして、乾燥せしめる。
【0217】
試料を塗布してから約10分(±30秒)後に、10μlのライノウィルス14懸濁液(ATCC VR-284、約1×1O6PFU(プラーク形成単位)/ml)を、指腹部とも称されている手指の皮膚表面の様々な部位に、マイクロピペットを用いて、局所的に塗布する。 この時に、ライノウィルスの溶液も、処理を施していない親指に対して、同様にして塗布する。
【0218】
7〜10分の乾燥期間後に、1mlの溶離剤(25%ウシ胎児血清(FBS)+1%PenStrepグルタミン酸塩を含むアール平衡塩溶液(EBSS))を用いて、皮膚上の様々な部位からウィルスを溶離し、部位ごとに10回の洗浄を行う。
【0219】
次いで、接種を行った皮膚の部位を、70%エタノールで、完全に除染する。 ウィルス力価を、標準的な方法、すなわち、プラークアッセイまたはTCID50(組織培養感染量)を用いて決定する。
【0220】
1時間試験:
1時間後と3時間後の間は、被験者の行動は、(手指の洗浄を行うこと以外は)制限を受けない。 1時間後に、前述した10分間試験について言及したようにして正確に、指腹部の所定の部位にライノウィルス懸濁液を塗布し、そして、溶離を行う。
【実施例】
【0221】
実施例1
皮膚pHを低減することができる本願発明の組成物を、以下に示した材料を、それぞれ所定の重量%で、均質になるまで攪拌して調製した。
【0222】
【表5】

各個体の皮膚に、少なくとも約10mg/皮膚表面(cm2)のクエン酸の表面濃度に至らしめるに十分な量の組成物を塗布する。 皮膚pHは、通常値の約5〜5.5から、組成物を塗布した後の当初値の約2〜2.5にまで減少する。 塗布して約5時間後までは、皮膚pHは、3.5未満で維持されている。 皮膚は、ウィルスおよび細菌に対して良好な制御作用を奏する。
【0223】
実施例2
本実施例では、皮膚pHと抗ウィルス作用との間の意外かつ予期せぬ関連性を実証している。 従来の酸性組成物は、使用者の皮膚に抗ウィルス作用、特に、抗ライノウィルス活性を付与するために用いられているが、皮膚pHを単に低減しただけでは、抗ウィルス作用を十分に獲得することができないことが明らかになっている。 具体的には、例えば、4時間ほどの長時間にわたって高い抗ウィルス作用を効率的に維持するためには、その皮膚pHを、4時間の全期間にわたって維持しなくてはならない。
【0224】
本実施例では、組成物の有効pHの限界値を決定するために、pH領域値から逸脱したpHに調整された有機酸溶液を塗布してから5分後に、抗ライノウィルス活性の評価を行った。 1重量%のクエン酸および1重量%のリンゴ酸を含む試験溶液の水性10%エタノール溶媒を調製した。 以下のpH値を有する組成物を得るために、トリエタノールアミンを添加して、溶液のpH値を調整した。
【0225】
【表6】

各溶液の抗ライノウィルス活性を、in vivoの抗ライノウィルス指腹部試験法を用いて検定した。 以下の表には、試験した組成物、試験溶液を塗布した後の皮膚pH、平均対数値(log10:被験者の手指に接種したウィルスの力価)、および、平均対数値(log10:被験者の手指から回収したウィルスの力価)を記している。 親指以外の被験者のすべての指に対して、試験溶液を塗布した。 5分間かけて指を乾燥させた後に、すべての指に対してライノウィルスを接種した。 親指をネガティブコントロールとし、そして、親指で認められたライノウィルス力価に基づいて接種物についての決定を行った。 この試験では、試験した各pHにおいて、2名の被験者に参加してもらった。 報告された皮膚pHは、2名の被験者から得た数値の平均値である。
【0226】
【表7】

本実施例は、皮膚pH値が、5.6または4.7であると、ライノウィルスの解消が不十分であるのに対して、皮膚pH値が、3.0であると、ヒトの皮膚からライノウィルスを実質的に解消する上で非常に効果的であることを明確に示している。 対数的回収値の平均値が1にも満たないということは、試験後には、せいぜい1個程度のウィルス粒子しか残っていないことを指し示すものであり、換言すれば、ウィルスレベルが、この試験での検出限界にも至っていないともいえる。
【0227】
実施例3
皮膚pHを低減することができる以下の抗ライノウィルス組成物を調製し、そして、ヒトの被験者の指腹部に塗布した。
【0228】
【表8】

試料2のpHは、3.1であった。
【0229】
この試験では、組成物2Dを、8名の被験者の親指以外のすべての指の指腹部に塗布した。 親指を、コントロール部位とした。 被験者を、各2名単位の4つのグループに分けた。 そして、グループI〜IVの各々について、試験組成物の時間依存的効果を決定するために、各手指のすべての指腹部に関して、ライノウィルス力価でもってして、所定時間にわたって試験を行った。 各グループについて、適当な時点にて、試験組成物に対する皮膚pHの経時的変化を決定するために、指腹部の皮膚pHも測定した。 グループI〜IVの各々について、ライノウィルス試験および皮膚pHの測定のために設定した試験期間は、5分、1時間、2時間、および、4時間のそれぞれであった。 以下の表は、この研究のためにグループ分けした被験者の指腹部での平均対数値(接種したライノウィルスの力価)、平均皮膚pH、および、平均対数値(回収したライノウィルスの力価)を示している。
【0230】
【表9】

各グループについての(すなわち、異なる時点での)データは、回収したライノウィルスの平均値が1個のウィルス粒子しか残っていないこと、あるいは、この試験での検出限界にも至っていないことを示している。 このデータは、本願発明の方法によった場合の4時間後の効果を例示するものであって、また、約4にも満たないpHが、ウィルスを完全に解消する上で効果的であることを実証するものでもある。
【0231】
実施例4
被験者の清潔な指腹部を、以下の組成物で処理した。 ベースラインの皮膚pHは、これら組成物で処理する以前の指腹部について得た測定値である。 皮膚pHの測定は、指腹部にて組成物を乾燥させた直後にも行い、その4時間後にも再度の測定を行った。
【0232】
【表10】

試料A〜Gで指腹部を処理して4時間後に、1.3×103 pfu(プラーク形成単位)の力価のライノウィルス 39を指腹部に塗布した。 指腹部のウィルスを、10分間かけて乾燥させてから、75% EBSSおよび25% FBSならびに1×抗生物質を含むウィルス回収用培地で洗浄した。 試料を、ウィルス回収用培地で連続的に希釈してから、H1-HeLa細胞に作用させた。 プラークアッセイごとに、力価をアッセイした。 クエン酸、リンゴ酸および酒石酸の内の二つを含む酸含有組成物を用いることで、ライノウィルス 39の完全な不活性化、すなわち、3を超える対数的減少が達成された。
【0233】
実施例5:抗菌活性
【0234】
【表11】

本実施例は、本願発明の組成物が、迅速かつ多様な抗菌活性も奏することを例示している。
【0235】
実施例6
被験者の清潔な指腹部を、以下の組成物で処理した。 ベースラインの皮膚pHは、これら組成物で処理する以前の指腹部について得た測定値である。 皮膚pHの測定は、指腹部にて組成物を乾燥させた直後にも行った。
【0236】
組成物で指腹部を処理した直後に、1.4×104 pfu(プラーク形成単位)の力価のライノウィルス 14を指腹部に塗布した。 指腹部のウィルスを、10分間かけて乾燥させてから、75% EBSSおよび25% FBSならびに1×抗生物質を含むウィルス回収用培地で洗浄した。 試料を、ウィルス回収用培地で連続的に希釈してから、H1-HeLa細胞に作用させた。
【0237】
プラークアッセイごとに、力価をアッセイした。 4の対数的減少をもたらす酸含有組成物を用いることで、ライノウィルス 14の完全な不活性化が実現した。
【0238】
【表12】

実施例7
皮膚pHおよび抗ウィルス作用に関する有機酸および有機酸配合物の効果を試験するために、以下の組成物を調製した。
【0239】
【表13】

被験者の清潔な指腹部を、試料A-Dで処理した。 ベースラインの皮膚pHは、これら組成物で処理する以前の指腹部について得た測定値である。 皮膚pHの測定は、指腹部にて組成物を乾燥させた直後と、その2時間後にも行った。
【0240】
すべての試料A-Dは、2時間後には、皮膚pHを4以下に低減した。 クエン酸とリンゴ酸との組み合わせ(試料C)は、2時間後には、それらを個別単独で用いた場合(試料AおよびB)よりも低いpHを維持していた。 皮膚pHの抑制は、4%酒石酸の組成物(試料D)が最大であった。
【0241】
これら溶液で指腹部の処理を行って2時間後に、4×104 pfuの力価のライノウィルス 39を指腹部に塗布した。 指腹部のウィルスを、10分間かけて乾燥させてから、75% EBSSおよび25% FBSならびに1×抗生物質を含むウィルス回収用培地で洗浄した。 試料を、ウィルス回収用培地で連続的に希釈してから、H1-HeLa細胞に作用させた。 プラークアッセイごとに、力価をアッセイした。 3を超える対数的減少が認められ、ライノウィルス 39の完全な不活性化が実現した。
【0242】
以下の実施例は、ポリマー酸、特に、アクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーが、アルコールの存在下で、抗ウィルス作用を付与することを例示している。 これらポリマー酸のpHは低く、また、皮膚に対する相性も良く、また、低い皮膚pHを効果的に始終維持するのみならず、持続的な抗ウィルス作用の付与をも補助する。
【0243】
皮膚pHの低減に関する相乗効果は、アルコールの存在下で、アクリル酸を利用したポリマーを用いて実証された。 しかしながら、アルコールの不在下では、アクリル酸を利用したポリマーは、同様に低い皮膚pHを終始維持することはなかった。 ポリマー酸とアルコールとを協同して用いる場合に、皮膚pHの低減が、組成物pHにあまり依存していないことは重要である。 ポリマー酸とアルコールとの間に認められた相乗効果は、予想外の事項であり、また、所望の抗ウィルス作用をもたらす低減した皮膚pHをもたらす新規の手段でもある。
【0244】
迅速かつ持続的な抗ウィルス活性に関する相乗効果も、ポリカルボン酸と共に、アクリル酸を利用したポリマーを用いた場合において実証された。 少量のポリマー酸(例えば、約0.1重量%〜約2重量%)とクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、および、これらの混合物などのポリカルボン酸とを併用することで、ポリカルボン酸の抗ウィルス活性が増強されることが明らかになった。 この相乗効果は、抗ウィルス性組成物が奏する抗ウィルス活性の低減を招かずに、抗ウィルス性組成物でのポリカルボン酸濃度の低下を可能にする。 このようなポリカルボン酸濃度の低下は、組成物が呈する刺激性を抑えて、組成物が奏する刺激を緩和する。
【0245】
実施例8
ポリカルボン酸の混合物と単一のポリカルボン酸の組成物を、ポリアクリル酸とエタノールと組み合わせて用いた場合における、抗ウィルス作用に関するそれらの効果を検証するために、以下の組成物を調製した。 好適な抗ウィルス性組成物は、持続的な抗ウィルス作用を実証する上で必要とされる最少量の有機酸を含んでいる。
【0246】
清潔な手指の指腹部に、これら組成物を塗布した。 所定時間の後に、約103〜104 pfuのライノウィルス 39を手指に塗布し、10分間かけて乾燥させた。 手指をウィルス回収用培地で洗浄して、ウィルスを回収した。 試料を、ウィルス回収用培地で連続的に希釈してから、H1-HeLa細胞に作用させた。 プラークアッセイごとに、ウィルス力価をアッセイした。 試験した手指でのライノウィルス陽性率を、以下にまとめた。
【0247】
【表14】

70%エタノールだけを含んでいる組成物、そして、クエン酸(1%)およびリンゴ酸(1%)を含んでいる組成物では、1時間の接触を行った後でも、100%の手指においてライノウィルス陽性であったため、ライノウィルスに対する作用は認められなかった。 これとは対照的に、1%クエン酸と1%リンゴ酸を含む組成物を、ポリアクリル酸と70%エタノールと一緒に手指に塗布したところ、4時間後には、手指からウィルスは検出されなかった。 単一の酸(4%クエン酸)を、ポリアクリル酸とエタノールと共に用いた事例では、4時間の接触を行った後でも、91%の手指においてライノウィルス陽性であったため、ライノウィルスに対する効果は限定的であった。
【0248】
このデータは、ポリアクリル酸とエタノールを用いることで、所望の抗ウィルス作用を獲得するために、低濃度のポリカルボン酸の使用が可能になることを実証している。
【0249】
実施例9
実施例7で実証したように、組成物においてポリアクリル酸およびエタノールを用いることで、皮膚pHは、溶液pHの数値よりも小さくなる。 クエン酸、リンゴ酸、ポリアクリル酸、および、エタノールを含む抗ウィルス性組成物が、高い溶液pHに対して緩衝作用を示し、そして、持続的な抗ウィルス活性を実現ならしめるために、依然として、皮膚pHを、4またはそれ以下にすることが可能などうかを試験するために、以下の組成物を調製した。
【0250】
【表15】

清潔な手指の親指、人差し指、および、中指に、これら組成物(1.8ml)を塗布した。 手指の処理前(ベースライン)、手指を乾燥させた直後、そして、その4時間後にも、皮膚pHの測定を行った。 皮膚pHの平均値は、上記した通りである。
【0251】
試料A〜Cで処理した皮膚の当初の皮膚pHは、pH 2.9〜3.6に間に低減しており、すなわち、溶液pHが小さいほど、当初の皮膚pHも小さくなっていた。 しかしながら、4時間後には、三つの全組成物による皮膚pHは、pH 約3.7であった。 前出の実施例での結果とも符合しておる通ち、溶液pHからは、その後の皮膚pHを予測することはできなかった。
【0252】
ライノウィルス39に対して試料A-Cが奏するウィルス作用も試験した。 処理した手指の親指、人差し指、および、中指に、約103pfuのウィルス量のウィルスを噴霧し、そして、10分間かけて乾燥させた。 次いで、これら手指を、ウィルス回収用培地で洗浄し、そして、試料を、ウィルス回収用培地で連続的に希釈してから、H1-HeLa細胞に作用させた。 プラークアッセイによって、ウィルス力価を測定した。 いずれの手指からもウィルスが回収されることはなく、このことは、三つの試料A-Cすべてが、抗ウィルス作用を有していることを指し示すものに他ならない。
【0253】
このデータは、クエン酸とリンゴ酸を、ポリアクリル酸とエタノールとの組み合わせと共に組成物に利用することで、溶液のpHが、例えば、皮膚に適用しても刺激が小さく、かつ安全であるpHにまで高める緩衝作用を示す一方で、皮膚pHを低減して、抗ウィルス活性を奏する性質は依然として残存していることを実証している。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本願発明の方法は、手指用洗浄剤、外科用スクラブ、身体用スプラッシュ、消毒薬、消毒剤、手指除菌用ゲル、脱臭剤、それに、同様のパーソナルケア製品を含めた様々な実用的で利用できる。 その他の形態の組成物として、クリームやムースなどの泡状組成物、それに、エマルジョン、ローション、クリーム、ペーストなどの有機性および無機性増量剤を含んだ組成物などがある。 さらに、本願発明の方法は、硬質表面、例えば、病院、フードサービス加工場および食肉加工場で利用されている流し台や調理台に対しても使用することができる。
【0255】
本願発明の方法は、好適な化合物または組成物を、織布材に保持せしめて、拭取材を提供することも可能である。 この拭取材は、生物表面や無生物表面に存在する微生物を制御するために使用することができる。
【0256】
本願発明のある実施態様によれば、ライノウィルス感冒に罹患した個体、または、ライノウィルス感冒に罹患したその他の個体に曝された個体に対して、手指の皮膚pHを4未満にまで低減することができる化合物または組成物を利用することができる。 こうすることで、細菌が殺傷され、また、手指上のライノウィルス粒子が不活性化される。 利用した化合物または組成物は、濯ぎ落とすタイプであれ、皮膚上に残存するタイプであれ、持続的な抗ウィルス活性を奏する。 したがって、ライノウィルス粒子は、手指間の伝染を介して、非感染者に伝染しなくなる。 化合物または組成物の使用量、使用頻度、および、使用期間は、例えば、微生物による汚染度などの所望の殺菌レベルに応じて変化する。
【0257】
本願発明の方法によれば、短時間の接触でもってして、多種多様のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌、それに、ウィルスの制御にまで及ぶ。 皮膚や無生物表面を清浄および消毒するための時間が、本願発明の場合、通常は、15秒〜60秒である点に鑑みれば、細菌についての実質的な対数的減少をもたらす短時間の接触は、重要であるといえる。 また、本願発明の方法は、接触した表面に対して、持続的な抗ウィルス活性を付与する。
【0258】
これまで説明してきた本願発明に、本願発明の趣旨を逸脱せずに、多くの修正や変更を加えることが可能であることは自明であり、従って、特許請求の範囲の欄に記載の限定事項のみが本願発明に付加されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の皮膚表面に存在する細菌およびウィルスを抑制する方法であって、皮膚pHを約4未満にまで低減することができる化合物または組成物と当該皮膚とを、少なくとも約0.5時間かけて接触させることを含む方法。
【請求項2】
前記化合物または組成物が、少なくとも2時間かけて、皮膚pHを約4未満にまで低減する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物または組成物が、約8時間までの時間をかけて、皮膚pHを約4未満にまで低減する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物または組成物が、皮膚pHを約3.5未満にまで低減することができる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物または組成物が、皮膚pHを約3.0未満にまで低減することができる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物または組成物が、皮膚表面に残存することが許容されている請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物または組成物が、皮膚表面から濯ぎ落とされる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
皮膚pHを低減することができる前記化合物または組成物が、(a)有機酸、(b)無機酸、(c)2価、3価または4価のカチオンおよび皮膚pHを約4未満にまで低減することができる対イオンを含む無機塩、(d)アルミニウム、ジルコニウム、またはアルミニウム-ジルコニウム複合体、および(e)これらの混合物からなるグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
皮膚pHを低減することができる前記化合物が、組成物の約0.05重量%〜約6重量%の量で当該組成物に含まれている請求項1に記載の方法。
【請求項10】
皮膚pHを低減することができる前記化合物が、皮膚表面積(cm2)当たり、少なくとも10μgの量で皮膚に適用される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が、25℃で、少なくとも約0.05重量%の水溶性を示す有機酸を含む請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記有機酸が、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、そして、カルボキシル基、リン酸塩、スルホン酸塩、および/または、硫酸塩の部分、これらの無水物の複数を保有するポリマー酸、または、これらの混合物を含む請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記モノカルボン酸が、RCO2Hの構造式、式中、Rが、C1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、ハロC1-3アルキル、フェニル、または、置換されたフェニルである構造式で表されるモノカルボン酸を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記モノカルボン酸が、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、安息香酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ジマン酸、2-、3-または4-ヒドロキシ安息香酸、アニリド酸、o-、m-またはp-クロロフェニル酢酸、o-、m-またはp-クロロフェノキシ酢酸、および、これらの混合物からなるグループから選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリカルボン酸が、2個〜4個のカルボン酸基を含み、そして、1個またはそれ以上のヒドロキシル基、アミノ基、またはその双方を任意に有するポリカルボン酸を含む請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリカルボン酸が、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、アコニット酸、および、これらの混合物からなるグループから選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリカルボン酸が、ポリカルボン酸の無水物を含む請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー酸が、約500〜約10,000,000g/molの分子量を有する請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマー酸が、約25℃未満のTgを有する請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマー酸が、皮膚上に膜を形成することができる請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー酸が、水溶性または水分散性である請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマー酸が、高分子カルボン酸、高分子スルホン酸、硫酸化ポリマー、高分子リン酸、および、これらの混合物からなるグループから選択される請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマー酸が、アクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーを含む請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記有機酸が、ポリカルボン酸および高分子カルボン酸を含む請求項8に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリカルボン酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、または、これらの混合物を含み、そして、前記高分子カルボン酸が、アクリル酸またはメタクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーを含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記高分子カルボン酸が、アクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記無機酸が、亜リン酸、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、およびこれらの混合物からなるグループから選択される請求項8に記載の方法。
【請求項28】
前記無機塩が、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、および錫からなるグループから選択されるカチオンを含む請求項8に記載の方法。
【請求項29】
前記対イオンが、重硫酸塩、硫酸塩、リン酸二水素塩、リン酸一水素塩、塩化物、ヨー化物、臭化物および硝酸塩からなるグループから選択される請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記無機塩の対イオンが、塩化物を含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記無機塩が、二価の亜鉛塩を含む請求項8に記載の方法。
【請求項32】
前記アルミニウム、ジルコニウム、またはアルミニウム-ジルコニウム複合体が、アルミニウム複合体を含む請求項8に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、フェノール系抗菌剤、第四アンモニウム抗微生物剤、アニリド、ビスグアニジン、およびこれらの混合物からなるグループから選択される0.1%〜5%の抗微生物剤をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記抗微生物剤が、
(a) 以下の構造式、すなわち;
【化1】

式中、Yが、塩素または臭素であり、Zが、SO3H、NO2、または、C1-C4アルキルであり、rが、0〜3であり、oが、0〜3であり、pは、0または1であり、mは、0または1であり、および、nは、0または1である構造式で表される2-ヒドロキシジフェニル化合物;
(b) 以下の構造式、すなわち;
【化2】

式中、R1が、ヒドロ、ヒドロキシ、C1-C4アルキル、クロロ、ニトロ、フェニル、またはベンジルであり、R2が、ヒドロ、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、または、ハロであり、R3が、ヒドロ、C1-C5アルキル、ヒドロキシ、クロロ、ニトロ、または、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形態の硫黄であり、R4が、ヒドロまたはメチルであり、および、R5が、ヒドロまたはニトロである構造式で表されるフェノール誘導体;
(c) 以下の構造式、すなわち;
【化3】

式中、Xが、硫黄またはメチレン基であり、R6およびR'6が、ヒドロキシであり、およびR7、R'7、R8、R'8、R9、R'9、R10およびR'10が、互いに独立している、ヒドロまたはハロである構造式で表されるジフェニル化合物;および
(d) これらの混合物、
からなるグループから選択されるフェノール系抗微生物剤を含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗微生物剤が、以下の構造式、すなわち;
【化4】

式中、R11が、6個〜26個の炭素原子を有するアルキル、アリールまたはアルキルアリール置換基であり、R12、R13およびR14が、互いに独立している、多くて12個の炭素原子を有する置換基であり、そして、Xが、ハロ、メトサルフェート、エトサルフェートまたはp-トルエンスルホニルであり、または、
以下の構造式、すなわち;
【化5】

式中、R12およびR13が、互いに独立している、C8〜C12アルキルであるか、または、R12が、C12〜C16アルキル、C8〜C18アルキルエトキシ、または、C8〜C18アルキルフェニルエトキシであり、また、R13が、ベンジルであり、そして、Xが、ハロ、メトサルフェート、エトサルフェートまたはp-トルエンスルホネートである構造式で表される第四アンモニウム抗微生物剤を含む請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記抗微生物剤が、トリクロカルバン、カルバニリド、サリシラニリド、トリブロモサラン、テトラクロロサリシラニリド、フルオロサラン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および、これらの混合物からなるグループから選択されるアニリドまたはビスグアニジンを含む請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、その10重量%〜約90重量%の量の消毒用アルコールをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記消毒用アルコールが、一つまたは一つ以上のC1-6アルコールを含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記消毒用アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、n-プロピルアルコール、および、これらの混合物からなるグループから選択される請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物が、約30重量%までの多価溶媒、すなわち、ジオール、トリオール、および、これらの混合物からなるグループから選択される多価溶媒をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が、約30重量%までのヒドロトロープをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が、0.1重量%〜約5重量%のゲル化剤をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記ゲル化剤が、天然ガム、合成ポリマー、粘土、油脂、ワックス、または、これらの混合物を含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記組成物が、0.1重量%〜約5重量%の界面活性剤をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記界面活性剤が、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、または、両性界面活性剤、または、これらの混合物を含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記皮膚が、S. aureusに関する測定で認められた、30秒間の接触の後に、グラム陽性細菌に対して少なくとも2の対数的減少を示す請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記皮膚が、E. coliに関する測定で認められた、30秒間の接触の後に、グラム陰性細菌に対して少なくとも2.5の対数的減少を示す請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記皮膚が、接触して30秒後に、酸不耐性ウィルスに対して少なくとも4の対数的減少を示す請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記皮膚が、化合物または組成物と接触して5時間後に、酸不耐性ウィルスに対して少なくとも3の対数的減少を示す請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記皮膚が、化合物または組成物と接触して8時間後に、酸不耐性ウィルスに対して少なくとも2の対数的減少を示す請求項1に記載の方法。
【請求項51】
表面上に存在する細菌およびウィルスの集団を減少させる方法であって、S. aureusに対して少なくとも2の対数的減少、E. coliに対して少なくとも2.5の対数的減少、および、酸不耐性ウィルスに対して少なくとも4の対数的減少を達成するために、30秒間、表面pHを4未満にまで低減することができる化合物または組成物と表面とを接触せしめることを含む方法。
【請求項52】
前記酸不耐性ウィルスが、ライノウィルス血清型を含む請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記組成物を表面から濯ぐ工程をさらに含む請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記表面が、哺乳動物の皮膚である請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記表面が、硬質の無生物の表面である請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記表面が、約6時間にまで及ぶ持続的な抗ウィルス活性を有する請求項51に記載の方法。
【請求項57】
約8時間にも及んで表面に存在するウィルスを不活性化する方法であって、そのような処置を必要とする表面に対して、表面pHを4未満にまで低減することができる化合物または組成物を局所的に適用する工程を含む方法。
【請求項58】
前記ウィルスが、約6時間にも及んで不活性化される請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記表面が、生物の表面である請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記表面が、無生物の表面である請求項57に記載の方法。
【請求項61】
ライノウィルス、ピコルナウィルス、アデノウィルス、およびロタウィルスを不活性化する請求項57に記載の方法。
【請求項62】
酸不耐性ウィルスを不活性化する請求項57に記載の方法。
【請求項63】
ピコルナウィルスを不活性化する請求項57に記載の方法。
【請求項64】
ライノウィルスを不活性化する請求項57に記載の方法。
【請求項65】
ウィルスおよび細菌への曝露を控えることによって、哺乳動物の全般的な健康度を改善する方法であって、以下の工程、すなわち;
(a) ウィルスおよび/または細菌による汚染を受けやすい哺乳動物の体表面に対して、表面pHを4未満にまで低減することができる化合物または組成物を局所的に適用し、
および、
(b) 当該表面を乾燥する、工程を含む方法。
【請求項66】
ライノウィルスによる感染から個体を保護する方法であって、皮膚pHを4未満にまで低減することができる化合物または組成物を、ライノウィルスを根絶するに十分な量でもってして、当該個体の手指に適用する工程を含む方法。
【請求項67】
前記化合物または組成物を、ライノウィルスに曝される以前に個体に対して塗布する請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記化合物または組成物を、24時間以内に複数回にわたって塗布する請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記化合物または組成物を、手指から濯ぐ請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記化合物または組成物を、乾燥して、手指上に残存させる請求項66に記載の方法。

【公表番号】特表2008−523064(P2008−523064A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545531(P2007−545531)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/043794
【国際公開番号】WO2006/062857
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(506174946)ザ ダイアル コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】