説明

優れた衝撃強度及び剥離特性を有するキャリアテープ

ポリプロピレン、ポリスチレン及びスチレン−ブタジエンコポリマーを含む高分子材料を用いることにより製造されたキャリアテープを開示する。キャリアテープは優れた衝撃強度、優れた寸法安定性及び低表面エネルギーを有し、従って輸送される機材を容易に脱離することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた衝撃強度及び寸法安定性を有し、その低表面エネルギーのために、輸送される機材を容易に脱離することを可能にするキャリアテープに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、キャリアテープとは、電子的構成要素を回路又は基板上に実装するための、電子的構成要素を回路又は基板への輸送に供給するテープを意味する。より具体的には、キャリアテープは、レジスタ、コンデンサ、インダクタ、コンダクタ等のような電子的構成要素を、自動組立装置内の所望の位置に輸送する機能を有する。本明細書では、組立の各処理工程において、キャリアテープによって輸送された構成要素は、キャリアテープから分離され、次いで組立のために用いられる。上記のように使用されるキャリアテープは、均一な距離で互いに離間する、輸送される機材を収容するための一連の凹部(ポケット部)であって、電子的構成要素がそれに密接に付着し、その内部に収容される方式で形成されるポケット部を含むストリップ様構造である。
【0003】
さらに、ストリップ様構造を動かすために、並びにポケット部をキャリアテープに沿った組立装置の正確な位置に配置するために、インデックスとして機能する開口部及びキャリアテープを移動させるための穴は、キャリアテープの外側面上に形成され、均一な距離で互いに離間する。
【0004】
一般に、キャリアテープは、キャリアテープを移動させるための穴が吊るされたリールの回転により、所望の位置に移動する。例えば、キャリアテープが電気製品の組立過程で用いられる場合、構成要素供給元から供給される電子的構成要素は、キャリアテープ内の、輸送される機材を収容するための凹部(ポケット部)に装填される。次に、構成要素を固定するために、電子的構成要素を収容するポケット部にカバーストリップを付着させる(図6aを参照)、又は構成要素を底面に付着及び固定させるために、ポケット部の底面に接着剤を塗布する(図4を参照)。次いで、キャリアテープのポケット部に収容された構成要素が、組立装置内の所望の位置に移動するように、リールを回転させる。かかるキャリアテープ内に、輸送される機材を収容するための凹部(ポケット部)又はキャリアテープを移動させるための穴を形成するために、ストリップ材料上で熱成形プロセス又は打ち抜きプロセスを実施してよい。
【0005】
一方、キャリアテープにより輸送される機材(電子的構成要素)が、材料を収容するためのポケット部に付着されている場合、組立装置内で使用される前にキャリアテープから構成要素を分離すべきである。かかる分離作業を実施するために、一般に、構成要素が付着されているポケット部の底部に衝撃を与えることにより、構成要素を付着させるために使用した接着剤から構成要素を分離する。しかしながら、この場合、かかる衝撃の適用は構成要素に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、構成要素に亀裂が入る可能性がある。
【0006】
ポケット部に付着された電子的構成要素の分離を促進するために、低表面エネルギーを有する高分子フィルムを用いてキャリアテープを製造する試みが行われている。例えば、ポリプロピレンフィルムを用いてキャリアテープを製造している。しかしながら、ポリプロピレンフィルムで製造されたキャリアテープは、キャリアテープの外側面にしわが寄る、又は曲がる可能性があり、反りが発生する可能性もあるという問題がある場合がある。図5a及び5bに図示するように、反りとは、平面物品に発生した非平面性を指す。キャリアテープ内で過剰に反りが発生した場合、ポケット部間の距離は不規則になり、それは構成要素の輸送時の問題の一因となる。また、このように寸法安定性が乏しいことは変形の原因となり、特に小さなキャリアテープの場合、それにより組立の自動化が妨げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故に、安定した形物、高衝撃強度及び優れた寸法安定性を有し、その低表面エネルギーにより、付着した機材を容易に分離できるキャリアテープに対する切迫した要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それ故、本発明は上述の問題を考慮して製造されている。本発明の少なくとも一実施形態の目的は、形物を安定に維持し、高衝撃強度及び優れた寸法安定性を有し、容易に分離するように機材をそれに付着させることが可能であるキャリアテープを提供することである。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態の別の目的は、機材を安全且つ安定な方式で移動させるように、優れた衝撃強度を有するキャリアテープを提供することである。
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態のさらに別の目的は、低表面エネルギー、高衝撃強度及び優れた寸法安定性を有するキャリアテープを提供することである。
【0011】
本発明の態様によって、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)及びスチレン−ブタジエンコポリマーを含む高分子材料で形成された高分子フィルム形物を有し、輸送される機材を収容するための凹部であるポケット部及びキャリアテープを移動させるための穴を有するキャリアテープが提供される。
【0012】
本発明の態様によるキャリアテープの外形は、高分子フィルム基材で形成された高分子ストリップ形物を有し、かかる高分子フィルムは、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)及びスチレン−ブタジエンコポリマーを含むコポリマー組成物をブレンドすることにより調製できる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によって、高分子フィルムは約5〜40重量%のポリプロピレン、約50〜90重量%のポリスチレン及び約5〜40重量%のスチレン−ブタジエンコポリマーを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明によるキャリアテープは、輸送される機材を収容するための凹部であるポケット部及びキャリアテープを移動させるための穴を有し、ポケット部及び穴は均一な間隔で配置してよい。かかる配置は自動化プロセスに有利である。
【0015】
上記高分子テープを使用することにより製造されたキャリアテープにより、機材がキャリアテープにより輸送される/キャリアテープから分離する際、電子的構成要素のような、輸送される機材上に亀裂が発生するのを防ぐことが可能である。また、キャリアテープの外側面における湾曲及び反りの発生を防ぐことが可能である。それ故、キャリアテープの三次元安定性を保証することが可能である。
【0016】
以下、本発明を、キャリアテープに用いられる高分子フィルムの構成上の要素に関してより詳細に説明する。
【0017】
ポリプロピレン(PP)
一般に、プロピレンは、石油化学工場におけるナフサ分裂法からエチレンとともに生成される。一方、ポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンを重合することにより調製できる。上記のように調製されたポリプロピレンはアイソタクチック構造を有し、その中でメチル基は同方向に整列し、それは実質的に炭素原子及び水素原子から構成される。ポリプロピレンは包装用フィルム、配向テープ(oriented tape)、繊維、パイプ、一般財、玩具、工業部品、容器等に広く用いられる。
【0018】
ポリプロピレンを含むキャリアテープは低表面エネルギーを有し、従ってポケット部に付着した電子的構成要素を容易に分離することが可能になる。しかしながら、かかるPP系キャリアテープは、外側面にしわが寄る、又は曲がる可能性があり、反りも発生するという問題がある場合がある。それ故に、本発明は、ポリプロピレンと、ポリスチレン及びスチレン−ブタジエンコポリマーをブレンドし、ブレンドした高分子樹脂を使用してキャリアテープを製造することにより上記問題を解決した。
【0019】
本発明の好ましい実施形態により、ポリプロピレンは、キャリアテープ用の総高分子フィルム重量を基準として5〜40重量%の量用いられる。
【0020】
本発明の別の実施形態に従って、ゴムのような特性を有し、ポリプロピレンの重合中少量のエチレンモノマーを導入することにより調製されたポリプロピレンを用いてよい。上記ポリプロピレンのように、約2〜20重量%のエチレン含量を有するブロックコポリマー型又はランダムコポリマー型ポリプロピレンを使用してよい。
【0021】
ポリスチレン(PS)
ポリスチレンは無色透明であり、低比重を有し、優れた電気的性質を示す。また、ポリスチレンは高光安定性を有し、従って放射線に対して最も強い耐性を有するプラスチック材料である。ポリスチレンは軟化している又はエッセンス類、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素等のような有機溶媒に溶解しているが、それは酸類、アルカリ類、塩類、鉱油類、有機酸類、低級アルコール類等に対して優れた耐性を有する。ポリスチレンは、溶解している場合、優れた熱安定性及び流動性を有するため、優れた成形性を有する。具体的には、ポリスチレンは射出成形に好適であり、成形過程中の収縮が少ないため成形後優れた寸法安定性を有し、費用効率が高い。ポリスチレンは上記利点を有するが、比較的低軟化温度を有し、不十分な硬度を示す。
【0022】
本発明に従って、上記特性を有するポリスチレンは、ポリプロピレンとともに用いられ、両方の材料の不利点を補い、両方の材料の利点を最大化する。
【0023】
換言すれば、ポリスチレンの利点(即ち、優れた寸法安定性、成形性及び熱安定性)と、ポリプロピレンの利点(即ち、低表面エネルギー)との組み合わせを通して、先行技術によるポリプロピレンフィルムに起因する問題を解決することが可能である。即ち、ポリプロピレンとポリスチレンの組み合わせにより、キャリアテープの調製中の、ポリプロピレンフィルムの外側面における湾曲の発生及び反りの発生、楕円形物の湾曲のような、ポリプロピレンを単独で用いることの問題を克服することができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態に従って、ポリスチレンは、高分子フィルム又はキャリアテープの総重量を基準として約50〜90重量%(好ましくは、約55〜80重量%)の量用いられる。
【0025】
本発明で用いてよいポリスチレンの具体的な例としては、汎用ポリスチレンが挙げられる。換言すれば、任意の市販のポリスチレンを本発明で用いてよい。多くの種類のポリスチレン樹脂が存在し、種々の等級のポリスチレン樹脂が市販されている。それ故、特定の用途に最適なポリスチレンを選択し、使用してよい。本発明の別の実施形態に従って、押出成形用等級のポリスチレン製品をポリスチレンとして用いてよい。
【0026】
スチレン−ブタジエンコポリマー
本発明によるキャリアテープのための高分子フィルムにおいて、スチレン−ブタジエンコポリマーは、ポリプロピレンとポリスチレンの間の混和性を増大させる相溶剤として機能し、それにより衝撃強度を増大させる。換言すれば、スチレン−ブタジエンコポリマーでは、ポリプロピレンとポリスチレンの間の混和性が増大し得るように、スチレン部分はポリスチレンに結合し、ブタジエン部分はポリプロピレンに結合する。
【0027】
本発明の好ましい実施形態に従って、スチレン−ブタジエンコポリマーは、キャリアテープ用の高分子フィルムの総重量を基準として約5〜40重量%の量使用される。
【0028】
本発明で用いてよいスチレン−ブタジエンコポリマーの具体的な例としては、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー等が挙げられる。本発明で用いてよいスチレン−ブタジエンコポリマーの好ましい例は、約5〜60重量%のスチレン含量及び約40〜95重量%のブタジエン含量を有する。
【0029】
キャリアテープ用高分子フィルム
本発明によるキャリアテープ用の高分子フィルムは、約5〜40重量%のポリプロピレンと、約50〜90重量%のポリスチレンと、約5〜40重量%のスチレン−ブタジエンコポリマーとを含む高分子材料のコポリマー組成物をブレンドすることにより調製できる。より具体的には、スチレン−ブタジエンコポリマーとして、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー及びスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーから成る群から選択される少なくとも1種のコポリマーを使用してよい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態に従って、キャリアテープの高分子フィルムは、キャリアテープを提供するように、約0.15〜0.30mmの厚さを有する。
【0031】
キャリアテープ
本発明によるキャリアテープは、高分子フィルムの形態で製造できる。
【0032】
本発明の実施形態では、キャリアテープは、ポリスチレン(PP)、ポリスチレン(PS)及びスチレン−ブタジエンコポリマーを含むコポリマー組成物をブレンドすることにより得られる高分子フィルムに、輸送される機材を収容するための凹部であるポケット部及びキャリアテープを移動させるための穴を形成することにより製造できる。輸送される機材を収容するための凹部であるポケット部及びキャリアテープを移動させるための穴は、高分子フィルムを打ち抜くことにより形成できる。換言すれば、キャリアフィルムを移動させるための穴は、高分子フィルムが穿孔されるように、高分子フィルムを打ち抜くことにより形成できる。一方、輸送される機材を収容するための凹部は、高分子フィルムは穿孔されないがポケット状凹部を備える方式で高分子フィルムを打ち抜くことにより形成できる。
【0033】
本発明の別の実施形態では、キャリアテープは、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)及びスチレン−ブタジエンコポリマーを含む高分子材料のコポリマー組成物をブレンドし、輸送される機材を収容するための凹部であるポケット部及びキャリアテープを移動させるための穴を形成しながらそれを押し出すことにより製造できる。例えば、押出過程では、溶融フィルムの状態で押出成形された、ブレンドした高分子材料のコポリマー組成物を、ポケット形物を有する円形用具に巻き付け、輸送される機材を収容するための凹部であるポケット部を形成することができ、数秒後(3〜5秒後)、その外側部を打ち抜き、キャリアテープを移動させるための穴を形成することができる。この場合、ポケット部及びキャリアテープを移動させるための穴の形成は、フィルムの押出と同時に実施され、プロセスは単純になり、生産性が増大する可能性がある。
【0034】
所望に応じて、輸送される機材を収容するための凹部であるポケット部及びキャリアテープを移動させるための穴の寸法又は間隔は、当業者により制御できる。本発明の好ましい実施形態に従って、キャリアテープの高分子フィルムは約0.15〜0.30mmの厚さを有してよい。キャリアテープは、所望により当業者によって決定される長さ及び幅を有してよい。
【0035】
キャリアテープの製造方法及び打ち抜き方法は、当業者に周知である。本発明に従ってキャリアテープを製造するために、かかる方法を上記高分子フィルムに適用してよい。本発明によるキャリアテープは、輸送される機材を収容するための凹部であるポケット部及びキャリアテープを移動させるための穴に加えて、他の構成上の要素をさらに含んでよい。
【0036】
キャリアテープの好ましい実施形態としては、図1、2A及び2Bに図示したようなキャリアテープが挙げられる。図1は、本発明のキャリアテープの斜視図である。図2A及び2Bは、それぞれ、本発明の実施形態のキャリアテープ及び個々のポケットの寸法を図示する。Aはポケットの幅であり、Bはポケットの長さであり、Kはポケットの高さであり、Pはスプロケット穴間のピッチであり、Pはスプロケット穴とポケット穴の間のピッチである。Dは、加工ラインを通してキャリアテープを移動させる、即ち、動かすためのスプロケット穴である。Eは、キャリアテープの縁部からスプロケット穴の中心までの間の距離である。Wは、キャリアテープの幅である。
【0037】
図3A及び3Bは、本発明のキャリアテープ内に、輸送される材料を定置する過程を図示している。図示した過程に従って、キャリアテープ10は、方向Xにリール12から供給される。キャリアテープが巻取リール14の方へ移動する際、位置Yでポケット16に機材18が充填される。続いて、カバーテープ20が、封止頭部22によりキャリアテープ10に適用される。
【0038】
図4は、キャリアテープを用いて、絶縁された製品を形成及び輸送する過程を図示する。工程1は、コーティング34の適用された、キャリアテープ32のポケット30を図示する。工程2は、ポケット30に分配される絶縁材36を図示する。工程3は、絶縁材36に入れられた装置38を図示する。工程4は、硬化した装置40を形成するための、コーティング34/絶縁材36/装置38の紫外線硬化を図示する。工程5は、硬化した装置40を取り除くために、器具42で打たれたポケット30の底部を図示する。工程6は、輸送のためにキャリアテープ44内に上向きに定置された、コーティング34を備える硬化した装置40を図示する。
【0039】
図5Aは、反りの概念を図示し、ここで反りは一般に一定の長さのアーチ状表面の高さHとして表される。図5Bは、本発明によるキャリアテープにおける反りAの許容可能な範囲を図示し、ここで均等巻きの場合は250mm(長さ)当たり反りが2mm以下であることが好ましく、平面巻きの場合は250mm(長さ)当たり反りが1mm以下であることが好ましい。
【0040】
図6は、ポケット部3、スプロケット穴4、カバーテープ11及びベーステープ12を示す、先行技術によるキャリアテープ1を示す概略図である。
【0041】
図7は、キャリアテープ基材1a、ポケット部3、スプロケット穴4、ポケット部3を形成するために用いられるパンチ5、及びキャリアテープ内に輸送された装置6を示す先行技術による別のキャリアテープの断面図を示す概略図である。
【0042】
具体的には、本発明によるキャリアテープは、コイルインダクタ、コイルコンダクタ等のような電子的構成要素を輸送するために有用である。キャリアテープを用いて他の電子的構成要素及びアセンブリユニットを輸送できることは当然である。
【0043】
本発明によるキャリアテープは、ポリプロピレン由来の低表面エネルギー、並びにポリスチレン由来の優れた寸法安定性、成形性及び熱安定性の利点を有する。換言すれば、キャリアテープはポリプロピレン由来の低表面エネルギーを有するため、キャリアテープにより輸送された機材をキャリアテープから容易に分離することが可能である。さらに、ポリプロピレンとポリスチレンの併用により、ポリプロピレンフィルムの外側面における湾曲及び反りの発生(図5a及び5b参照)のような、ポリプロピレンフィルムを単独で用いた従来のキャリアテープで発生する問題を解決することもできる。それ故、キャリアテープの製造中及び輸送中の精度を保証することが可能である。
【0044】
さらに、本発明によるキャリアテープでは、スチレン−ブタジエンコポリマーは、ポリプロピレン及びポリスチレンの間の混和性を増大させるように相溶剤として機能し、従って衝撃強度を増大させる。さらに、高分子材料をブレンドすることにより、キャリアテープの作業性を向上させることが可能である。
【0045】
本発明による上記高分子材料を用いることによりキャリアテープを製造する場合、キャリアテープにより輸送された機材を分離するために、キャリアテープに過剰な衝撃を適用する必要がない。それ故、材料に亀裂が入るのを防ぐことが可能である。さらに、キャリアテープのための高分子フィルムが、外側面において湾曲する及び反りが発生するのを防ぐことが可能である。それ故、キャリアフィルムの三次元安定性を保証することが可能である。
【実施例】
【0046】
以下の例は、説明するためだけのものであり、本発明の範囲を制限するものではないことを理解されたい。
【0047】
(実施例1)
以下の表1に示したような高分子材料を使用することにより、高分子フィルムを製造した。
【0048】
【表1】

【0049】
表1で、MIはメルト・インデックスを意味する。
【0050】
ポリプロピレンとして、ゴムのような特性を有し、ポリプロピレンの重合中約7重量%のエチレンモノマーを添加することにより調製した、ブロックコポリマー型ポリプロピレンを用いた。
【0051】
ポリスチレンとして、メルト・インデックスが3である押出用汎用ポリスチレン(GPPS)を用いた。
【0052】
スチレン−ブタジエンコポリマーとして、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)コポリマーを用いた。
【0053】
キャリアテープを製造するための押出用ホッパーにポリプロピレン、ポリスチレン及びSEBSを入れ、ブレンドし、次いで押出成形した。押出成形過程で、押出成形された溶融ポリマーは、ポケット状の円形用具に巻き付けることにより成形し、その外側面を打ち抜き、キャリアテープを移動させるための穴を形成した。次いで、成形及び打ち抜いた製品を、リールに巻き付けて、図2a及び2bに示したようなキャリアテープを提供した。
【0054】
図2a及び2bに示したようなパラメータを参照して、得られたキャリアテープが、Aが0.86〜0.96mm、Bが1.51〜1.61mm、及びPが1.95〜2.05mmに対応する寸法を有する方式で、キャリアテープを製造するための設備を設計した。各パラメータの測定結果を表3に示す。
【0055】
一方、反りは、250mmの長さに対するアーチ状表面の角度として定義した。各ポケットは、0.86〜0.96mmの深さを有するよう設計した。
【0056】
(実施例2)
実施例1で記載したのと同様の方式で、以下の表2に示したような高分子材料を使用することにより、高分子フィルムを製造した。次いで、実施例1で記載したのと同一寸法のキャリアテープを製造した。
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示したように、SBC(スチレン−ブタジエンコポリマー)をスチレン−ブタジエンブロックコポリマーとして用いた。
【0059】
比較例1
ポリプロピレンを単独で用いることにより、実施例1で記載したのと同一寸法のキャリアテープを製造した。
【0060】
実験的実施例1−寸法安定性
実施例1〜2及び比較例1によるキャリアテープの寸法及び反りを測定した。結果を以下の表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
表3の結果から見られるように、本発明によるキャリアテープは、理論上の範囲の中央値に近い寸法が測定されたことにより示されたように、優れた寸法安定性を示す。さらに、反り値が低いことが好ましい。実施例1〜2によるキャリアテープは、比較例1に比べて著しく低い反り値を有する。
【0063】
実験的実施例2−表面エネルギー及び衝撃強度
実施例1〜2及び比較例1によるキャリアテープの表面エネルギー及び衝撃強度を測定した。
【0064】
表面エネルギーは、ダイン溶液試験(ASTM D−2578;2004年8月発行)に従って測定し、衝撃強度は0.3175cm(0.125インチ)の試料を用いてノッチド・アイゾッド衝撃強度(ASTM D256;2004年11月発行)に従って測定した。結果を以下の表4に示す。
【0065】
【表4】

【0066】
上記に見られるように、本発明のキャリアテープは優れた寸法安定性及び衝撃強度を有する。さらに、それは比較的低表面エネルギーを有し、従って表面エネルギーが顕著に増加することなく、優れた寸法安定性及び衝撃強度を達成することができる。それ故、本発明のキャリアテープは、自動装置内に構成要素を輸送するのに用いることができるが、誤操作及び加工性の悪化を引き起こさない。
【0067】
前述から見られるように、本発明によるポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)及びスチレン−ブタジエンコポリマーを含む混合された高分子材料を用いることにより製造されたキャリアテープは、優れた衝撃強度及び低表面エネルギーを有し、従ってキャリアテープによって輸送された機材を亀裂なく容易に分離することを可能にする。また、キャリアテープの外側面における湾曲及び反りの発生を防ぐことが可能であり、従って、キャリアテープは優れた寸法安定性を有し、自動装置内で実施されるプロセスに好適である。具体的には、キャリアテープは、電気製品の組み立て中構成要素を輸送するのに有用である。
【0068】
本発明は、現在最も実用的且つ好ましい実施形態であると考えられるものに関連して記載されているが、本発明が、開示した実施形態及び図面に制限されるものではないことを理解されたい。反対に、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内のさまざまな修正及び変形を含むことが意図される。
【0069】
本発明の先述の及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面と関連づけられる以下の詳細な説明から、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるキャリアテープを示す概略図であり、ここで各ポケット部当たりキャリアテープを移動させるための穴が1つ形成される。
【図2A】本発明の別の好ましい実施形態によるキャリアテープを示す概略図であり、各構成上の要素の寸法は特定のパラメータにより表され、各ポケット部当たりキャリアテープを移動させるための穴が2つ形成される。
【図2B】図2Aに示したようなキャリアテープにおいて、輸送される機材を収容するための凹部であるポケット部及びキャリアテープを移動させるための穴を示す概略図。
【図3A】カバーテープをキャリアテープに付着させ、このテープをフレームに巻き付ける、本発明の好ましい実施形態によるキャリアテープ内に、輸送される材料を定置する過程を示す図。
【図3B】輸送される材料を収容する、図3Aに示したキャリアテープのポケットの拡大図を示す図。
【図4】キャリアテープにより絶縁製品を輸送する過程を示す図。
【図5A】反りの概念を示す図であり、ここで反りは一般に特定の長さに対するアーチ状表面の高さとして表される。
【図5B】本発明によるキャリアテープにおいて許容可能な反りの範囲を示す図であり、均等巻きの場合は250mm(長さ)当たり反りが2mm以下であることが好ましいが、平面巻きの場合は250mm(長さ)当たり反りが1mm以下であることが好ましい。
【図6】先行技術によるキャリアテープを示す概略図。
【図7】先行技術による別のキャリアテープの断面図を示す概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン、ポリスチレン、及びスチレン−ブタジエンコポリマーを含む高分子フィルム材料で形成される高分子フィルム形物を有し、輸送される機材を収容するための凹部であるポケット部とキャリアテープを移動させるための穴を有するキャリアテープ。
【請求項2】
前記高分子フィルムが、ポリプロピレン、ポリスチレン及びスチレン−ブタジエンコポリマーを含む、混合された高分子材料のコポリマー組成物をブレンドすることにより調製される、請求項1に記載のキャリアテープ。
【請求項3】
前記高分子フィルムが、5〜40重量%のポリプロピレン、50〜90重量%のポリスチレン及び5〜40重量%のスチレン−ブタジエンコポリマーを含む、請求項2に記載のキャリアテープ。
【請求項4】
前記ポリプロピレンが2〜20重量%のエチレンを含む、請求項1に記載のキャリアテープ。
【請求項5】
前記スチレン−ブタジエンブロックコポリマーが、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、及びスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載のキャリアテープ。
【請求項6】
5〜40重量%のポリプロピレン、50〜90重量%のポリスチレン及び5〜40重量%のスチレン−ブタジエンコポリマーを含む高分子材料をブレンドする工程と、
輸送される機材を収容するための凹部であるポケット部及びキャリアテープを移動させるための穴を形成しながら、ブレンドした高分子材料を押出成形する工程とを含む、キャリアテープの製造方法。
【請求項7】
前記スチレン−ブタジエンブロックコポリマーが、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、及びスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーから成る群から選択される、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−530191(P2009−530191A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500397(P2009−500397)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/006087
【国際公開番号】WO2007/108965
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】