説明

充填された凹部領域を用いた音響共振器の性能向上

【課題】音響共振器の性能を改善すること
【解決手段】音響共振器は、基板、第1の電極、圧電材料の層、第2の電極、及び充填領域を含む。第1の電極は基板に隣接し、第1の電極は外側周辺部を有する。圧電層は、第1の電極に隣接する。第2の電極は圧電層に隣接し、第2の電極は外側周辺部を有する。充填領域は、第1及び第2の電極の一方にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響共振器に関する。
【0002】
関連出願に対する相互参照
本特許出願は、本発明と同じ譲受人に譲渡され、2004年6月14に出願され、「ACOUSTIC RESONATOR PERFORMANCE ENHANCEMENT USING SELECTIVE METAL ETCH」と題する米国特許出願第10/867,540号(代理人整理番号第10040878−1号)に関連する。
【背景技術】
【0003】
電子装置のコストとサイズを低減する必要性によって、より小さな単一のフィルリング素子の必要性が生じた。圧電薄膜共振器(Thin-Film Bulk Acoustic Resonator(FBAR))及び積層型圧電薄膜共振器(Stacked Thin-Film Bulk Wave Acoustic Resonator(SBAR))は、これらの必要性を満たす可能性を有する1つの部類のフィルタ素子に相当する。これらのフィルタは、総称してFBARと呼ばれ得る。FBARは、薄膜の圧電(PZ)材料においてバルク縦方向超音波を使用する音響共振器である。一般に、FBARは、2つの金属電極間に挟まれたPZ材料の層を含む。PZ材料と電極との組み合わせ体は、その周辺部の周りでその組み合わせ体を支持することにより空気中に浮かされるか、又は音響ミラー上に配置される。
【0004】
2つの電極間に電界が生成される場合、PZ材料は、電気エネルギの一部を音波の形態の機械的エネルギに変換する。音波は一般に、電界と同じ方向に伝播し、共振周波数を含む何らかの周波数で、電極/空気、又は電極/音響ミラーの共有領域(interface:界面)から反射する。共振周波数において、デバイスは電子共振器として使用され得る。それぞれがRFフィルタの素子であるように、複数のFBARを組み合わせることができる。
【0005】
理想的には、フィルタ素子の共振エネルギは、共振器中に完全に「トラップ」される。しかしながら、実際には、分散モードが存在する。これらのモードは、フィルタのQ(quality factor)の低減をもたらす可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの、及び他の理由のために、本発明が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、基板、第1の電極、圧電材料の層、第2の電極、及び充填領域を含む音響共振器を提供する。第1の電極は基板に隣接し、第1の電極は外側周辺部を有する。圧電層は、第1の電極に隣接する。第2の電極は圧電層に隣接し、第2の電極は外側周辺部を有する。充填領域は、第1及び第2の電極の一方にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、音響共振器の性能が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の詳細な説明において、明細書の一部を形成し、本発明が実施され得る例示的な特定の実施形態として示される添付図面を参照する。この点に関して、「上側」、「下側」、「正面」、「背面」、「前部」、「後部」等のような方向性の用語は、記載された図面の向きを基準として使用される。本発明の実施形態のコンポーネントが多数の異なる向きで配置され得るので、方向性の用語は例示のために使用され、決して制限しない。理解されるべきは、他の実施形態を利用することができ、構造的又は論理的な変更が、本発明の範囲から逸脱せずに行われ得ることである。従って、以下の詳細な説明は、制限する意味に解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0010】
図1及び図2はそれぞれ、FBAR10の平面図及び断面図を示す。FBAR10は、基板12、くぼみ14、第1の電極16、圧電(PZ)層18、及び第2の電極20を含む。図1において、PZ層18、及びくぼみ14は視界から隠されている。第2の電極20は、図1に五角形として示され、エッジ20a、20b、20c、20d、及び20eを備える周辺部を有する。2つのエッジ20bと20eが、図2の断面図に示される。一般に、コンタクト(図示せず)が第1の電極16、及び第2の電極20に結合され、パッシベーション層(図示せず)が電極20の上面を覆うことができる。コンタクトは、第1及び第2の電極16、20を電圧源に接続することを容易にする。
【0011】
第1の電極16、PZ層18、及び第2の電極20は、トータルでFBAR膜を形成する。FBAR膜は基板12に隣接し、くぼみ14の上に浮かされて、電極/空気の共有領域を提供する。一実施形態において、くぼみ14は、基板12の一部をエッチングによって除去することにより形成される。くぼみ14は、十分な電極/空気の共有領域がFBAR膜の下に形成されるように十分に深い。
【0012】
代替の実施形態において、FBAR膜は、基板12内に形成された音響ミラー(図1と図2には示されない)に隣接して配置され得る。このように、電極/音響ミラーの共有領域が形成される。かくして、形成された共振器は、SMR(Solid Mounted Resonator)型である。
【0013】
一実施形態において、基板12はシリコン(Si)から作成され、PZ層18は窒化アルミニウム(AlN)から作成される。代案として、PZ層18に他の圧電材料を使用することができる。一実施形態において、第1及び第2の電極16、20は、モリブデン(Mo)から作成され得る。代案として、電極に他の材料を使用することができる。一実施形態において、コンタクトは金(Au)から作成され得る。代案として、コンタクトに他の材料を使用することができる。
【0014】
図1と図2に示されたFBAR10は、PZ層18において、縦方向に又は剪断するように伝播する音波を使用するように構成される。印加された電圧によって、第1の電極16と第2の電極20との間に電界が生成される場合、PZ層18の圧電材料は、電気エネルギの一部を音波の形態の機械的エネルギに変換する。そのように構成される場合、FBAR10は、FBAR10のQ(quality factor)の損失をもたらす分散モードを呈する。
【0015】
図3は、本発明の一実施形態によるFBAR40の断面図を示す。FBAR40は、基板42、くぼみ44、第1の電極46、圧電(PZ)層48、第2の電極50、及び充填領域60を含む。一般に、コンタクト(図3に示されず)が第1及び第2の電極46、50に結合され、パッシベーション層が第2の電極を覆う(同様に図3に示されない)。コンタクトは、第1及び第2の電極46、50を電圧源に接続することを容易にする。第1の電極46、PZ層48、及び第2の電極50は、トータルでFBAR膜を形成し、上述したようにFBAR膜は、くぼみ44の上に、又は音響ミラーの上に配置され得る。FBAR膜は図示されるように、基板42に隣接して、くぼみ44の上に浮かされて、電極/空気の共有領域を提供する。先の実施形態と同様に、本発明に従って、SMR設計を用いて電極/音響ミラーの共有領域を得ることもできる。
【0016】
第2の電極50、及びFBAR膜の他の層は、種々の構成からなることができる周辺部を有する。例えば、それぞれの周辺部は、上記のFBAR10と同様に、五角形とすることができる。また、それらは、任意の種々の多角形形状、円形、又は種々の不揃いな形とすることができる。図3に示された断面図は、第2の電極50の周辺部に沿った2つの場所、エッジ50bと50eを示す。一実施形態において、PZ層48のエッジは、図3に示されるように、FBAR40の垂直方向において第2の電極50のエッジ50bと概して揃えられる。
【0017】
図3に示されたFBAR40において、充填領域60は、第2の電極50のエッジ50bに隣接して、及びエッジ50eの近く(例えば、エッジから数十マイクロメートル離れて)で第2の電極50内へ付加されている。一実施形態において、充填領域60は、くぼみ44の周辺部の直ぐ外側に配置される。このように、くぼみ44の周辺部、又は外径が、(図3の図面の中に向けられるような)垂直方向に延びる場合、充填領域60はくぼみ44の周辺部の直ぐ「外側」にある。
【0018】
他の実施形態において、充填領域60は、充填領域60の一部がくぼみ44の周辺部の「内側」にあり、且つ一部が「外側」にあるように、くぼみ44の周辺部に重なる。更に他の実施形態では、充填領域60は、くぼみ44の周辺部の「内側」に完全に位置する。
【0019】
充填領域60は、FBAR40の性能を改善し、結果としてFBAR40の挿入損失の改善、及び共振器のQの改善がもたらされる。FBAR40の全体的なQは、Rと呼ばれる抵抗のパラメータに比例して依存する。FBAR40において、Rは充填領域60によって改善され得る。
【0020】
印加された電圧によって、電界が第1の電極46と第2の電極50との間に生成される。PZ層48の圧電材料は、電気エネルギの一部を音波の形態の機械的エネルギに変換する。FBAR40の音波の一部は、任意のモードタイプの縦音波であるが、他の部分は、圧縮モードタイプ、剪断モードタイプ、又はドラムモードタイプの横音波である。FBAR40は、所望の共振器モードとして、PZ層48において厚さの伸長方向に伝播する縦音波を使用するように設計される。しかしながら、充填領域60を設けるFBAR40は、エネルギ損失を低減、又は抑制し、それによりフィルタのQが改善される。一実施形態において、充填領域60は、FBAR40の横方向モードからエネルギをトラップするのに役立つ。
【0021】
一実施形態において、充填領域60は、第2の電極50に使用される材料とは異なる材料で充填される。その場合、充填領域60の材料は、1つの場合にMoである、第2の電極50の残りの材料とは異なる分散特性を有する。異なる分散特性を有するこの材料を加えることにより、挿入損失が改善され、FBAR40の共振器のQが改善され得る。一実施形態において、充填領域60の材料は、エッジにおいてFBAR膜の剛性を増加させる。1つの場合に、充填領域60の材料は、充填領域60の音響インピーダンスをFBAR膜の中心部における音響インピーダンスに対して増加させるようになっている。係る材料は、電極材料より高密度とすることができる。例えば、充填領域60の材料は、Wとすることができる一方で、第2の電極50はMoから作成され得る。他の実施形態において、第1及び第2の電極46、50は、Pt、W、Cu、Al、Au、又はAgなどの金属とすることができる。代替の実施形態において、充填領域60の材料は、ポリイミド、BCB、SiO、Si、又は他の誘電体、AlN、ZnO、LiNbO、PZT、LiTaO、Al、又は他の圧電材料、Pt、W、Cu、Al、Au、Ag、又は他の金属、又は金属の合金などの材料からも作成され得る。
【0022】
一実施形態において、充填領域60は、数百〜数千オングストロームのオーダである、第2の電極50における深さ、及び1マイクロメートル〜数十マイクロメートル以下のオーダの幅、又は更に大きく、くぼみ44の周辺部を超えて又はその周辺部の外側に延びる第2の電極50の幅の部分までの幅を有する。一実施形態において、第2の電極50は選択的にエッチングされて凹部要素を形成し、次いで凹部要素は、充填領域60を形成するように材料で充填される。一実施形態において、第2の電極50は、充填領域60を形成するために材料で充填される凹部要素を形成するために、リフトオフ技術を用いて構成される。
【0023】
図4と図5は、本発明の代替の実施形態に従って、図3のFBAR40の平面図を示す。図4と図5に示されるように、FBAR40は、基板42、第1の電極46、及び第2の電極50を含む。図4と図5において、圧電(PZ)層48とくぼみ44は視界から隠されている。一般に、コンタクト(図面に示されない)が第1及び第2の電極46、50に結合され、パッシベーション層(同様に図面に示されない)が第2の電極50を覆う。
【0024】
図4と図5において、充填領域60は、第2の電極50の周辺部に隣接して延在しているように示される。図面において、第2の電極50の周辺部は、5つの比較的直線のエッジ(50a、50b、50c、50d、及び50e)を有する概して五角形であるが、本質的に任意の多角形、円形とすることもでき、又は任意の他の滑らかな又は不揃いの形状を有することもできる。
【0025】
図5において、充填領域60は、五角形の電極の5つの全エッジに沿って、即ちエッジ50a、50b、50c、50d、及び50eに隣接して第2の電極50の周辺部に隣接して延在するように示される。図4は、FBAR40の代替の実施形態を示し、この場合、充填領域60は、五角形の電極の5つのエッジのうち4つに沿って、即ちエッジ50b、50c、50d、及び50eに隣接して第2の電極50の周辺部に隣接して延在する。一実施形態において、コンタクトが第2の電極50の5番目のエッジ50aに取り付けられ、そのため充填領域60はその実施形態において、そのエッジに沿って延在しない。
【0026】
当業者には理解されるように、本発明による第2の電極50のエッジに隣接して、任意の数の代替の充填領域60を設けることができる。充填領域60は、図示されるように、第2の電極50のいくつかのエッジ又は全エッジに沿って連続的に延在することができ、充填領域60はエッジに沿って連続していない小さなセグメントを有することができ、及び充填領域60の他の形状と構成を用いることができ、特にこの場合、第2の電極50は五角形以外の形状である。
【0027】
図6は、スミスチャート上にプロットされた2つの例示的なFBARのQの円を示し、1つのFBARにおいてRの改善、それ故にQの改善を示す。当該技術で知られているように、スミスチャートは、複素インピーダンスの極図表である(拡散パラメータs11とs22の測定値を示すために図6で使用される)。これらのs11とs12の拡散パラメータは、後進波と前進波の複素振幅の比を表す。スミスチャートは、反射係数をインピーダンスに変換する助けになり、それは、配置されたインピーダンスの部分を単位円にマッピングする。FBAR40の改善された性能は、図6に示されたQの円により実証される。図6は、充填領域60を備えるFBAR40のような、例示的な充填デバイスのSパラメータの測定値を示す。図示されるように、充填領域60を備えるFBAR40の充填デバイス(実線で表記されたs11)は、チャートの上側半分において、図2に示されたような対照デバイス(波線で表記されたs22)と対比してより改善されたRを有する。
【0028】
一般に、単位円を通過する水平軸は、実インピーダンスを表し、その軸の上の領域は誘導性リアクタンスを表し、下の領域は容量性リアクタンスを表す。リアクタンスのゼロにおけるチャートの左側部分は、直列共振周波数(fs)を表し、Qの円がスミスチャートの左側で実軸を横切る場所で生じる。また、チャートの左側部分は、抵抗Rのパラメータも示す。リアクタンスのゼロにおけるチャートの右側部分は、並列共振周波数(fp)を表し、Qの円がスミスチャートの右側で実軸を横切る場所で生じる。また、チャートの右側部分は、抵抗Rのパラメータも示す。スミスチャート上でFBARフィルタの特性のプロットがスミスチャートの周辺部に対してより接近すればするほど、そのFBARのQはより高くなる。また、曲線が滑らかになればなるほど、FBARのノイズはより低くなる。
【0029】
図6において、フィルタとしてのFBAR40の性能は、実線のQの円s11によって示され、電極に充填領域を備えていない従来技術のFBARの性能は、波線のQの円s22によって示される。明らかなように、FBAR40は、周波数fpの近くでフィルタの品質を改善する。FBAR40はQの円s11によって示され、そのQの円s11が単位円の上側半分において単位円にいっそう厳密に似ており、その領域において損失の少ないデバイスを表しており、それによりフィルタで使用される場合にFBAR40の性能が改善される。
【0030】
また、図6は、単位円の左下側、即ち「南西」の象限で示されるように、フィルタとして使用されるFBAR40が、直列共振周波数fs未満でスプリアスモードを実際に高めることも示す。この周波数領域のノイズの増加がデバイスの性能を損なわない用途で、FBAR40が使用される場合、単位円の他の領域で示された改善を利用することができる。例えば、いくつかの実施形態において、FBAR40は、ハーフラダーのトポロジーを使用するフィルタ用途において共振器として使用される。フィルタの性能は、改善されたRから恩恵を受け、増加したスプリアスモードによってもたらされる任意のノイズは、フィルタの通過帯域の外側にある。
【0031】
図7は、本発明の代替の実施形態によるFBAR40の断面図を示す。FBAR40は、本質的に図3に示されたものと同様であり、基板42、くぼみ44、第1の電極46、圧電(PZ)層48、第2の電極50、及び充填領域60を含む。また、第2の電極50の周辺部の2つのエッジ50bと50eも示される。また、図7に示されたFBAR40は充填領域60を有するが、その充填領域60は、図3において充填領域60が形成された表面とは反対側にある、第2の電極50の表面に形成されている。FBAR40が図3に示される場合には、充填領域60は第2の電極50の「上側」表面にあり、それに対してFBAR40が図7に示される場合には、充填領域60は第2の電極50の「下側」表面にある。また、一実施形態において、図7に示された充填領域60は、くぼみ44の周辺部のエッジの外側にある。代替の実施形態において、充填領域60はくぼみ44の周辺部に部分的に重なり、他の実施形態において、充填領域60はくぼみ44の周辺部の内側に完全に位置する。
【0032】
一実施形態において、図7に示されたようなFBAR40の性能は、図3に示されたようなFBAR40に関して上述したようなことと本質的に同様である。第2の電極50の「下側」表面の充填領域60は、当業者により知られている種々の態様で達成され得る。例えば、図7に示された構造は、圧電物質の堆積の後にリフロオフプロセス(即ち、マスク、材料の堆積、そしてリフトオフ)、その後に上部電極材料の堆積を用いることにより、構成され得る。
【0033】
図8と図9は、本発明の代替の実施形態によるFBAR70の断面図を示す。FBAR70は、基板72、くぼみ74、第1の電極76、圧電(PZ)層78、第2の電極80、及び充填材料(充填領域)90を含む。一般に、コンタクト(図面に示されない)が第1及び第2の電極76、80に結合される。また、任意のパッシベーション層(図面に示されない)を用いて、第2の電極80が覆われてもよい。コンタクトは、第1及び第2の電極76、80を電圧源に接続することを容易にする。第1の電極76、PZ層78、及び第2の電極80は、トータルでFBAR膜を形成し、上述したようにFBAR膜は、くぼみ74の上に配置されるか、又は音響ミラーの上に配置され得る。FBAR膜は図示されるように、基板72に隣接し、くぼみ74の上に浮かされて、電極/空気の共有領域を提供する。また、先の実施形態と同様に、本発明の実施形態に従ってSMR設計を用いて、電極/音響ミラーの共有領域を得ることもできる。
【0034】
FBAR70は、図3に示されたFBAR30に類似しているが、FBAR70は、上述したように第2の電極にではなくて、第1の電極76に挿入された充填領域90を有する。また、第1の電極76に挿入された充填領域90は、FBAR70の性能も改善し、結果としてFBAR70の挿入損失の改善、及び共振器のQ(quality factor)の改善をもたらす。図8において、充填領域90は第1の電極76の「上側表面」に隣接して示され、図9において、充填領域90は第1の電極76の「下側表面」に隣接して示される。それぞれの場合に、充填領域90は、くぼみ74の周辺部の直ぐ外側に示される。このように、くぼみ74の周辺部、又は外径が、(図8と図9の図面の中に向けられるような)垂直方向に延びる場合、充填領域90は、くぼみ74の周辺部の直ぐ「外側」にある。代替の実施形態において、充填領域90は、くぼみ74の周辺部に部分的に重なり、他の実施形態において、充填領域90は、くぼみ74の周辺部の内側に完全に位置する。FBAR40に関して前述した充填領域60と同様に、充填領域90はFBAR70の性能を改善し、結果としてFBAR70のノイズ低減の改善、及び共振器のQ(quality factor)の改善をもたらす。
【0035】
上記の実施形態と同様に、充填領域90は、第2の電極80に使用される材料とは異なる材料で充填される。その場合、充填領域90の材料は、1つの場合にMoである、第2の電極80の残りの材料とは異なる分散特性を有する。異なる分散特性を有するこの材料を加えることにより、FBAR70の挿入損失、及び共振器のQ(quality factor)を改善することができる。一実施形態において、充填領域90の材料は、そのエッジにおいてFBAR膜の剛性を増加させる。1つの場合に、充填領域90の材料は、充填領域90の音響インピーダンスをFBAR膜の中心部における音響インピーダンスに対して増加させるようになっている。係る材料は、電極材料より高密度とすることができる。例えば、充填領域90の材料は、Wとすることができる一方で、第2の電極80はMoから作成され得る。他の実施形態において、第1及び第2の電極76、80は、Pt、W、Cu、Al、Au、又はAgなどの金属とすることができる。代替の実施形態において、充填領域90の材料は、ポリイミド、BCB、SiO、Si、又は他の誘電体、AlN、ZnO、LiNbO、PZT、LiTaO、Al、又は他の圧電材料、Pt、W、Cu、Al、Au、Ag、又は他の金属、又は金属の合金などの材料からも作成され得る。
【0036】
FBAR40、70は、本発明に従って、種々の態様で製造され得る。一実施形態において、例えば、凹部領域は、所望の厚さよりもわずかに少ない厚さまで電極金属を最初に堆積することにより、上側電極に形成される。次いで、フォトマスクを用いて、共振器の中央領域をパターニングする。次いで、残りの厚さの電極金属が堆積され、リフトオフプロセスを用いて、凹部領域に残ったレジストが除去される。次いで、追加のフォトマスクを用いて充填領域をパターニングする。充填材料が充填領域に堆積されて、マスク及び充填領域の外側の充填材料がリフトオフプロセスで除去される。別の実施形態において、凹部領域は、電極金属を所望の厚さまで最初に堆積し、電極をフォトマスクでパターニングし、凹部領域をエッチングすることにより作成され得る。別の実施形態において、充填領域は、充填材料を最初に堆積し、充填領域をフォトマスクでパターニングし、充填領域の外側の充填材料をエッチングにより除去することによって、作成され得る。
【0037】
図10A〜図10Fは、本発明の一実施形態によるFBAR100の製造に関する種々の中間的な段階を示す断面図である。FBAR100は、図3〜図9に示されたものと類似しており、基板102、くぼみ104、第1の電極106、圧電(PZ)層108、及び第2の電極110を含み、第1の電極106、圧電(PZ)層108、及び第2の電極110は、トータルでFBAR膜を形成する。図10Aは、充填領域120(図10Fに示され、上述した充填領域60と90に類似する)を形成する前のFBAR100を示す。
【0038】
図10Bは、フォトマスク109がFBAR膜の上に堆積された状態のFBAR100を示す。フォトマスク109を用いて、リフトオフプロセスを使用する凹部領域をパターニングする。図10Cは、追加の電極材料の金属110が堆積された後であるが、リフトオフプロセスの前の状態である、図10BのFBAR100を示す。図10Dは、リフトオフプロセス後のFBAR100を示す。リフトオフプロセスは、フォトマスク109、及びフォトマスク109上にある全ての金属110を除去する。このように、リフトオフプロセスは、凹部領域111を画定する。
【0039】
次に、図10Eは、フォトマスク113がFBAR膜の上に堆積されて、充填領域がパターニングされた状態のFBAR100を示す。図10Fは、充填材料120が堆積された後であるが、リフトオフプロセスの前の状態である、図10EのFBAR100を示す。リフトオフプロセスの後は、図3のFBAR40が結果としての構造を示す。いくつかの実施形態において、FBARは更に、少なくとも1つのパッシベーション層を利用することができる。
【0040】
下側電極上の充填された凹部領域は、同様に作成され得る。更に、充填領域の上部は、充填領域が上側電極、又は下側電極に存在するか否かに関わらず、必ずしも電極の表面と揃えられる必要はない。FBARの凹部は、リフトオフプロセスによって生じることができるが、エッチング工程でもって作成されてもよい。充填材料は、フォトマスクで最初にマスキングすることにより凹部領域にパターニングされ、メタライゼーションを堆積し、次いでリフトオフを用いて凹部領域に充填材料が残される。また、充填材料は、最初に金属堆積を使用し、後にフォトマスクとエッチングが続くことにより、追加され得る。
【0041】
本明細書において、特定の実施形態が例示されて説明されたが、当業者には認識されるように、種々の代案、及び/又は等価な具現化形態が、本発明の範囲から逸脱せずに、図示され説明された特定の実施形態に置き換えられ得る。本出願は、本明細書に説明された特定の実施形態の任意の改作形態、又は変形形態を網羅するように意図されている。従って、本発明は、特許請求の範囲、及びその等価物によってのみ制限されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】FBARの平面図を示す図である。
【図2】FBARの断面図を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態によるFBARの断面図を示す図である。
【図4】図3に示されたFBARの一実施形態の平面図を示す図である。
【図5】図3に示されたFBARの代替の実施形態の平面図を示す図である。
【図6】スミスチャート上にプロットされた2つの例示的なFBARのQの円を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態によるFBARの断面図を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態によるFBARの断面図を示す図である。
【図9】本発明の別の実施形態によるFBARの断面図を示す図である。
【図10A】本発明の別の実施形態によるFBARの製造の種々の段階を示す断面図である。
【図10B】本発明の別の実施形態によるFBARの製造の種々の段階を示す断面図である。
【図10C】本発明の別の実施形態によるFBARの製造の種々の段階を示す断面図である。
【図10D】本発明の別の実施形態によるFBARの製造の種々の段階を示す断面図である。
【図10E】本発明の別の実施形態によるFBARの製造の種々の段階を示す断面図である。
【図10F】本発明の別の実施形態によるFBARの製造の種々の段階を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
40、70 FBAR
42、72、102 基板
44、74、104 くぼみ
46、76、106 第1の電極
48、78、108 圧電(PZ)層
50、80 第2の電極
60、90 充填領域
109、113 フォトマスク
110 電極材料
111 凹部領域
120 充填材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に隣接し、外側周辺部を有する第1の電極と、
前記第1の電極に隣接する圧電層と、
前記圧電層に隣接し、外側周辺部を有する第2の電極と、及び
前記第1の電極、及び前記第2の電極のうちの一方にある充填領域とを含む、音響共振器。
【請求項2】
くぼみが前記基板に形成され、前記くぼみが、くぼみ周辺部を有する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項3】
音響ミラーが前記基板に形成され、前記第1の電極が前記音響ミラーにまたがる、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項4】
前記第2の電極に隣接するパッシベーション層を更に含み、前記パッシベーション層が、第1の平面にほぼ平行である第2の平面内に位置する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項5】
前記第1の電極、及び前記第2の電極のうちの一方にある前記充填領域が、前記くぼみ周辺部の外側にある、請求項2に記載の音響共振器。
【請求項6】
前記第1の電極、及び前記第2の電極のうちの一方にある前記充填領域が、前記くぼみ周辺部の内側にある、請求項2に記載の音響共振器。
【請求項7】
前記第1の電極、及び前記第2の電極のうちの一方にある前記充填領域が、前記くぼみ周辺部に部分的に重なる、請求項2に記載の音響共振器。
【請求項8】
前記第1の電極、及び前記第2の電極のうちの一方にある前記充填領域が、前記外側周辺部に隣接する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項9】
前記第1及び第2の電極の少なくとも1つが、前記充填領域の材料とは異なる材料からなる、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項10】
前記充填材料が、誘電体、金属、金属合金、圧電物質、Mo、Pt、Al、Cu、W、Au、Ag、ポリイミド、BCB、SiO、Si、AlN、ZnO、LiNbO、PZT、LiTaO、及びAlからなるグループから選択された材料である、請求項8に記載の音響共振器。
【請求項11】
前記充填領域が、前記第1の電極、及び前記第2の電極のうちの一方の外側周辺部の大部分の周りに延在する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項12】
前記充填領域が、前記第1の電極、及び前記第2の電極のうちの一方において、数百〜数千オングストロームのオーダである深さ、及び1マイクロメートル〜数十マイクロメートル以下のオーダの幅を有する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項13】
前記充填領域が、前記第1及び第2の電極の一方の外側周辺部から、ゼロ〜数十マイクロメートルだけオフセットしている、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項14】
第1の表面を有する基板と、
前記基板の前記第1の表面に隣接する第1の電極と、
前記第1の電極に隣接する圧電材料の層と、
前記圧電材料の層に隣接し、第1の平面内に位置する第2の電極と、及び
前記第2の電極に構成された充填領域とを含む、音響共振器。
【請求項15】
くぼみ周辺部を有するくぼみが、前記基板の第1の表面に形成され、前記第1の電極が前記くぼみにまたがっている、請求項14に記載の音響共振器。
【請求項16】
音響ミラーが前記基板の第1の表面に形成され、前記第1の電極が前記音響ミラーにまたがっている、請求項14に記載の音響共振器。
【請求項17】
前記第2の電極の前記充填領域が、前記くぼみ周辺部の外側にある、請求項15に記載の音響共振器。
【請求項18】
前記第2の電極の前記充填領域が、前記くぼみ周辺部の内側にある、請求項15に記載の音響共振器。
【請求項19】
前記第2の電極の前記充填領域が、前記くぼみ周辺部に部分的に重なる、請求項15に記載の音響共振器。
【請求項20】
前記第2の電極が、前記充填領域の材料とは異なる材料からなる、請求項14に記載の音響共振器。
【請求項21】
前記充填材料は、前記音響共振器の中心部における音響インピーダンスに比べて前記充填領域の音響インピーダンスを増加させるように、電極材料より高密度である、請求項14に記載の音響共振器。
【請求項22】
基板と、
前記基板に隣接する第1の電極と、
前記第1の電極に隣接する圧電材料の層と、
前記圧電材料の層に隣接する第2の電極であって、前記第1の電極、前記圧電材料の層、及び前記第2の電極が合わさって、外側エッジと中心部を有する音響膜を形成する、第2の電極と、及び
前記音響膜の中心部における音響インピーダンスに比べて、前記音響膜の外側エッジの音響インピーダンスを増加させるための手段とを含む、音響共振器。
【請求項23】
前記第2の電極が、前記第2の電極の材料とは異なる材料を有する充填領域を含む、請求項22に記載の音響共振器。
【請求項24】
基板を準備し、
前記基板に隣接する第1の電極を製造し、
前記第1の電極に隣接する圧電層を製造し、
前記圧電層に隣接し、第1の厚さまでの第2の電極を形成するように、電極材料を堆積し、
前記第2の電極の上に第1のフォトマスクを堆積し、
第2の厚さまでの前記第2の電極を形成するように、追加の電極材料を堆積し、
前記フォトマスクを除去して、前記第2の電極に凹部領域を露呈し、及び
前記凹部領域を充填材料で充填することを含む、音響共振器を製造するための方法。
【請求項25】
前記凹部領域を充填する前に、前記第2の電極の上に第2のフォトマスクを堆積することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記基板にくぼみを形成することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記凹部領域を、前記電極材料とは異なる材料で充填することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記凹部領域を充填することが、誘電体、金属、金属合金、圧電物質、Mo、Pt、Al、Cu、W、Au、Ag、ポリイミド、BCB、SiO、Si、AlN、ZnO、LiNbO、PZT、LiTaO、及びAlからなるグループから選択された材料で充填することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
基板を準備し、
前記基板に隣接する第1の電極を製造し、
前記第1の電極に隣接する圧電層を製造し、
第2の電極を形成するために電極材料を堆積し、
前記第2の電極の上に第1のフォトマスクを堆積し、
前記第2の電極に凹部領域を形成するために、前記第2の電極をエッチングし、及び
前記凹部領域を充填材料で充填することを含む、音響共振器を製造するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【公開番号】特開2006−295924(P2006−295924A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103882(P2006−103882)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(506076606)アバゴ・テクノロジーズ・ジェネラル・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (129)
【Fターム(参考)】