説明

充填方法及び充填装置

【課題】高さの異なる容器に簡単な構造の充填バルブで対応でき、かつ充填装置を高さの異なる容器に対応させるために要する作業を簡略化できるとともにその作業時間を短縮可能な充填方法を提供する。
【解決手段】所定の搬送経路に沿って容器100を搬送しつつ充填バルブ20にて容器100内にビールを充填する充填装置1に適用され、高さの異なる容器100A、100Bに充填装置1でビールを充填する充填方法において、充填工程の前にノンシールガッシング工程S1が設けられ、容器100内に挿入されるベントチューブ22の長さは、最も高さの低い容器100Aに適した長さに設定され、ノンシールガッシング工程S1を行うべく容器100とバルブ本体21との間隔Tを容器100とバルブ本体21との間に隙間が設けられるとともにベントチューブ22が容器100内に挿入される間隔に維持する非接触期間の長さを容器100の高さに応じて変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さの異なる容器に共通の充填装置で液体を充填する充填方法、及びその充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
壜などの肩部を有するボトル型の容器とトップオープン缶のように大きい開口を有する肩部のない容器とに兼用可能な兼用型充填装置において、ボトル型の容器の口径に対応する小径の第1パッキンと缶型の容器の口径に対応する大径の第2パッキンとが設けられた充填バルブを備えた充填装置が知られている(特許文献1参照)。また、容器が載置される容器プレートを昇降させるエアリフタと、バルブボディの外周に昇降可能に嵌装した筒状の昇降部材を昇降させるエアシリンダとを備え、ボトル型の容器の場合はエアリフタを動作させて容器の口部と充填バルブのパッキンとを圧着させ、缶型の容器の場合はエアシリンダを動作させて容器の口部と充填バルブのパッキンとを圧着させる兼用型充填装置が知られている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−370797号公報
【特許文献2】特開2002−225986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
壜などの肩部を有し、口部の開口が小さい容器に液体を充填する充填装置として容器内にベントチューブを挿入し、そのベントチューブを介して種々の気体及び液体を容器に導く装置が知られている。このような装置において、液体を充填する前に容器内の空気を置換ガスに置換すべくベントチューブを容器内に挿入し、かつ充填バルブの本体と容器との間に隙間がある状態で容器内に置換ガスを導入し、これにより容器内の空気を隙間から溢出させる処理であるノンシールガッシング処理を行うものがある。この充填装置によって高さの異なる容器に液体を充填する場合、いずれの高さの容器においても容器と充填バルブとを密着させたときにベントチューブの先端と容器の底面との距離が所定の距離になるように容器の高さに応じてベントチューブを取り替えている。この場合、新たに取り付けたベントチューブなど容器内に充填する液体と接する部品を洗浄する必要があるため、充填装置の洗浄(CIP(Cleaning In Place)洗浄)を行っている。そのため、充填装置を高さの異なる容器に対応させるために手間及び時間がかかる。上述した特許文献1の充填装置では、高さの異なるボトル型の容器と缶型の容器とにおいて兼用可能なように充填バルブが構成されているが、充填バルブの機構が複雑である。また、特許文献2の充填装置では、昇降させる対象を相違させて高さの異なる容器に対応させているが、制御が複雑になる。
【0005】
そこで、本発明は、高さの異なる容器に簡単な構造の充填バルブで対応でき、かつ充填装置を高さの異なる容器に対応させるために要する作業を簡略化できるとともにその作業時間を短縮可能な充填方法及び充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の充填方法は、所定の搬送経路に沿って充填対象の容器(100A、100B)を搬送しつつ充填バルブ(20)の本体(21)に設けられる筒部材(22)を前記充填対象の容器内に挿入するとともに前記充填対象の容器と前記充填バルブとを密着させて前記充填対象の容器内に液体を充填する充填装置(1)に適用され、高さの異なる容器に前記充填装置で液体を充填する充填方法において、前記充填対象の容器と前記充填バルブとを密着させて前記充填対象の容器内に液体を充填する充填工程の前に、前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間に隙間が設けられるとともに前記筒部材が前記充填対象の容器内に挿入されるように前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔(T)を変更し、かつ前記筒部材を介して前記充填対象の容器内に置換ガスを導入して前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間の隙間から前記充填対象の容器内に導入した置換ガスにて置換されたガスを排出するノンシールガッシング工程(S1)が設けられ、前記筒部材の長さは、前記充填装置で液体が充填される容器のうち最も高さの低い容器の底面と前記筒部材の先端とが前記充填工程時に離間状態に維持される長さに設定され、前記ノンシールガッシング工程を行うべく前記充填工程の前に前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔(T)を前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間に隙間が設けられるとともに前記筒部材が前記充填対象の容器内に挿入される間隔に維持する非接触期間の長さを前記充填対象の容器の高さに応じて変更することにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明の充填方法によれば、筒部材の長さを充填装置で液体が充填される容器のうち最も高さの低い容器(以下、最低高容器と呼ぶこともある。)に対応させた長さに設定したので、この筒部材によって最低高容器に対して適切に液体を充填することができる。一方、この最低高容器よりも高さが高い容器では、ノンシールガッシング工程を行うべくその容器と充填バルブの本体との間に隙間が設けられるとともに筒部材が容器内に挿入されるように充填バルブの本体と容器との間隔を設定した場合、筒部材の先端と容器の底部との距離が遠くなるが、容器と充填バルブの本体との間隔がその状態に維持される非接触期間の長さを変更できるので、容器の高さに応じて非接触期間の長さを適切に設定することにより、容器内の空気を置換ガスで十分に置換することができる。そのため、最低高容器よりも高さが高い容器に対してもこの長さの筒部材で適切に液体を充填することができる。このように高さの異なる容器に適用させるための部分を充填バルブに設ける必要がないため、簡単な構造の充填バルブで高さの異なる容器に対応できる。また、筒部材を取り替えることなく充填装置を高さの異なる容器に対応させることができるので、筒部材の洗浄が不要となる。そのため、この際の作業を簡略化できるとともに作業時間を短縮できる。
【0008】
本発明の充填方法の一形態において、前記充填対象の容器の高さが高いほど前記非接触期間が長く設定されてもよい。容器の高さが高いほどノンシールガッシング工程時などに容器内に挿入される筒部材の長さが短くなる。そのため、容器内の空気を置換ガスに十分に置換するために必要な時間が長くなる。この形態によれば、容器の高さが高いほど非接触期間が長く設定されるので、容器内を置換ガスで十分に置換することができる。
【0009】
本発明の充填装置は、所定の搬送経路に沿って容器(100A、100B)を搬送する搬送手段(4)と、筒部材(22)が設けられる本体(21)を有する充填バルブ(20)と、前記搬送手段にて搬送されている充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔(T)を変更する間隔変更手段(10)と、を備え、前記充填対象の容器内に前記筒部材が挿入されるとともに前記充填対象の容器と前記充填バルブとが密着するように前記間隔変更手段にて前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔を変更して前記充填対象の容器内に液体を充填する充填装置(1)において、前記筒部材の長さは、前記充填対象の容器と前記充填バルブとを密着させた場合に前記充填装置にて液体が充填される容器のうち最も高さの低い容器の底面と前記筒部材の先端とが離間状態に維持される長さに設定され、前記間隔変更手段は、前記充填対象の容器と前記充填バルブとを密着させる前に、前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔を前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間に隙間が設けられるとともに前記筒部材が前記充填対象の容器内に挿入される所定間隔に維持し、かつ前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔を前記所定間隔に維持する非接触期間の長さを変更できることにより、上述した課題を解決する。
【0010】
本発明の充填装置によれば、間隔変更手段は非接触期間の長さを変更できるので、充填対象の容器の高さに応じて非接触期間の長さを適切に変更することにより、上述した充填方法と同様に筒部材を取り替えることなく高さの異なる容器に適切に液体を充填することができる。そのため、簡単な構造の充填バルブで高さの異なる容器に対応でき、かつ充填装置を高さの異なる容器に対応させるために要する作業を簡略化できるとともにその作業時間を短縮できる。
【0011】
本発明の充填装置の一形態において、前記間隔変更手段は、前記所定の搬送経路に沿ってカム面(12a)が配置されるカム板部材(12)と、前記充填対象の容器が載置されるプレート部材(15)を有するとともに前記カム面に沿って移動することにより前記プレート部材に載置された容器と前記充填バルブの本体との間隔を変更するリフタ部材(13)と、を備え、前記非接触期間の長さの変更は、前記カム板部材のカム面の形状を変更することにより行われてもよい。この場合、カム面の形状変更によって充填装置を高さの異なる容器に対応させることができる。カム面は容器内に充填する液体と直接接触する部分ではないため、充填装置を高さの異なる容器に対応させる場合に充填装置の洗浄が不要となる。したがって、充填装置を高さの異なる容器に対応させるために要する作業を簡略化できるとともにその作業時間を短縮できる。
【0012】
本発明の充填装置の一形態において、前記充填バルブは、前記筒部材に沿って移動するように前記筒部材に設けられ、前記間隔変更手段によって前記充填対象の容器と前記充填バルブとを密着させた場合に前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間に挟まれるスペーサ部材(24)を備えていてもよい。この場合、充填対象の容器と充填バルブとを密着させた際に容器内に挿入される筒部材の長さをスペーサ部材の厚さによって変更できる。そのため、充填装置にて液体が充填される最低高容器の高さが変更されても、スペーサ部材の厚さを変更することにより、充填装置を変更後の最低高容器の高さに容易に対応させることができる。
【0013】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明によれば、筒部材の長さを最低高容器に適した長さに固定し、充填対象の容器と充填バルブとを密着させる前に充填対象の容器と充填バルブの本体との間隔を充填対象の容器と充填バルブの本体との間に隙間が設けられるとともに筒部材が充填対象の容器内に挿入される間隔に維持する非接触期間の長さを充填対象の容器の高さに応じて変更するので、簡単な構造の充填バルブで高さの異なる容器に対応できる。また、容器内に充填する液体と接触する部分である筒部材を取り替える必要がないため、充填装置を高さの異なる容器に対応させるために要する作業を簡略化できるとともにその作業時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1及び図2を参照して本発明の一形態に係る充填装置について説明する。図1は、充填装置1の上面図を、図2は充填装置1を図1の矢印S方向から見た側面図を示している。図1の充填装置1は、図3に一例を示した各種の容器100A、100Bに液体としてビールを充填する装置である。容器100A、100Bは、その内部にビールが充填され、その後、口部101A、101Bがキャップなどで密封される周知の容器でよいため、詳細な説明は省略する。図3に示したように容器100A、100Bは、その高さha、hbがそれぞれ異なる。このように充填装置1では、高さha、hbが異なる種々の容器に液体が充填される。なお、本形態の充填装置1では、図3の容器100Aが充填装置1にてビールが充填される容器で最も高さが低い容器(最低高容器)として設定される。図3には直径が同じ2種類の容器を示したが、充填装置1では直径の異なる容器にビールを充填することもできる。なお、以下では各容器100A、100Bを特に区別する必要がない場合、単に容器100と称する。
【0016】
本発明の充填装置1は、容器100を搬送するために搬送経路の上流から順にスクリューコンベア2、容器供給スターホイール3、搬送手段としてのメインスターホイール4、及び転送スターホイール5を備えている。なお、スクリューコンベア2は、各容器100が容器供給スターホイール3の各ポケットに適切に移動するように容器100の間隔を調整する周知のコンベアでよい。また、各スターホイール3、4、5は搬送ホイールの外周に設けられた複数のポケットに容器100を取り込み、所定の搬送経路に沿って容器100を搬送する周知のものでよい。そのため、これらに関する詳細な説明は省略する。図2に示したようにメインスターホイール4では、容器100がメインスターホイール4のポケットに取り込まれるとともに容器100を図2の上下方向に昇降させることが可能な間隔変更手段としてのリフタ機構10上に載置され、この状態で搬送される。また、図2に示したようにメインスターホイール4の上方には、メインスターホイール4とともに回転し、メインスターホイール4にて搬送される容器100の口部101と密着させて容器100内に液体を充填するための複数の充填バルブ20が設けられている。
【0017】
図2に示したようにリフタ機構10は、メインスターホイール4とともに回転する本体11と、メインスターホイール4による容器100の搬送経路に沿ってカム面12aが配置されるようにメインスターホイール4の下方に設けられるカム板12と、メインスターホイール4の各ポケットとそれぞれ対応するように本体11に設けられた複数の孔11aに図2の上下方向に移動可能に取り付けられるリフタ部材としての複数のリフタ13とを備えている。リフタ13は、支柱14と、支柱14の上端に設けられてメインスターホイール4のポケットに取り込まれた容器100が載置される搬送プレート15と、支柱13の下端に設けられてカム面12aに沿って移動するカムフォロア16とを備えている。また、各リフタ13は、不図示の付勢機構によって図2の上方向に付勢されている。このようにリフタ13を上方向に付勢することによりリフタ13のカムフォロア16をカム板12のカム面12aに沿って移動させることができる。
【0018】
図4は、充填バルブ20を拡大して示した図である。図4に示したように充填バルブ20は、バルブ本体21と、容器100内に挿入される筒部材としてのベントチューブ22と、容器100の中心をビール充填時に適切な位置に調整するためのセンタリングベル23と、スペーサ24とを備えている。ノズル本体21は、ベントチューブ22を介してその先端22aから置換ガス及びビールなどを噴出させることが可能な周知のものでよいため、詳細な説明は省略する。図4に示したようにノズル本体21には、ベントチューブ22の先端22aから噴出させる置換ガス及びビールをノズル本体21に供給するための供給ライン25、26が接続されている。センタリングベル23及びスペーサ24は、ベントチューブ22に沿ってそれぞれ上下動可能なようにベントチューブ22に設けられている。ベントチューブ22の先端22aは、これらセンタリングベル23及びスペーサ24が落下しないように広がっている。図4に示したようにセンタリングベル23のうち容器100の口部101と接する部分には、図2の上下方向に貫通する通路23aが設けられている。また、スペーサ24にも同様に図2の上下方向に貫通し、センタリングベル23の通路23aと連通する通路24aが設けられている。
【0019】
スペーサ24の厚さLは、最低高容器である容器100A内にベントチューブ22が挿入され、かつ容器100Aと充填バルブ20とを密着させた状態においてベントチューブ22の先端22aが容器100Aの底面から所定の高さで停止するように設定される。このようにスペーサ24の厚さLを設定することにより、ベントチューブ22の長さを容器100A内にベントチューブ22が挿入され、かつ容器100Aと充填バルブ20とを密着させた場合にベントチューブ22の先端22aと容器100Aの底面とが離間状態に維持される長さに設定できる。なお、所定の高さとしては、容器100A内に置換ガス及びビールを供給する際にこれらを適切に供給可能な高さが設定される。
【0020】
次に図1及び図2を参照して充填装置1にて容器100Aにビールを充填する場合のビール充填方法について説明する。充填装置1には、図1の矢印A方向から容器100Aが順次送り込まれる。充填装置1に送り込まれた容器100Aは、まずスクリューコンベア2で矢印B方向に搬送されて各容器100A間の距離が揃えられる。次に容器100Aは、スクリューコンベア2から供給スターホイール3に送られ、その後メインスターホイール4に送られる。
【0021】
図2に示したようにメインスターホイール4に搬送された容器100Aは、搬送プレート15上に載置され、矢印C方向に搬送される。メインスターホイール4では、容器100Aに対してまずノンシールガッシング工程S1が行われ、次にシールガッシング工程S2が行われる。その後、容器100A内にビールを充填する充填工程及び容器100Aをキャップで密封する密封工程が行われる。なお、充填工程及び密封工程は、容器にビールを充填する周知の充填方法と同様に行えばよいため、詳細な説明は省略する。
【0022】
図2を参照してノンシールガッシング工程S1及びシールガッシング工程S2について説明する。これらの工程S1、S2は、容器100内の空気を二酸化炭素などの置換ガスによって排出させ、容器100内の酸素濃度を低下させるために行う。ノンシールガッシング工程S1では、容器100Aとバルブ本体21との間に所定の隙間が設けられるとともにベントチューブ22が容器100A内に挿入されるように容器100Aとバルブ本体21との間隔Tを調整し、この状態でベントチューブ22の先端22aから二酸化炭素を容器100A内に導入して容器100A内の空気をセンタリングベル23の通路23a及びスペーサ24の通路24aを介して容器100Aとバルブ本体21との隙間から排出する。なお、ノンシールガッシング工程S1を行う際に容器100Aとバルブ本体21との間に設けられる所定の隙間は、容器100Aの容積、高さ、及び直径などに応じて容器100A内の酸素濃度を適切に低下させることが可能なように適宜設定される。シールガッシング工程S2では、容器100Aとバルブ本体21との間に隙間ができないように容器100Aがバルブ本体21に押し付けられ、この状態でベントチューブ22の先端22aから二酸化炭素を容器100A内に導入して容器100A内の空気をセンタリングベル23の通路23a、スペーサ24の通路24a及びバルブ本体21に設けられた通路(不図示)を介して外部に排出する。本発明では、このように容器100とバルブ本体21との間に隙間ができないように容器100をバルブ本体21に押し付けた状態を容器100と充填バルブ20とを密着させた状態と呼ぶ。
【0023】
メインスターホイール4では、まず容器100Aに対してノンシールガッシング工程S1を行うべく容器100Aを図2の上方向に、すなわち充填バルブ20と近付く方向に上昇させる。この容器100Aの上昇は、図2に示したようにカム板12の高さを位置P1から位置P2まで徐々に低くし、リフタ13を図2の上方向に移動させることによって行う。このように容器100Aを上方に移動させると、まずセンタリングベル23が容器100Aの口部101Aと接触し、センタリングベル23にて容器100Aの位置がベントチューブ22の挿入を容易に行うことが可能な位置に調整される。その後、容器100Aの上昇は、容器100Aとバルブ本体21との間隔Tがノンシールガッシング工程S1を行うのに適した間隔となるまで継続して行われる。この際、センタリングベル23及びスペーサ24は、容器100Aとともにベントチューブ22に沿って上方向に移動する。
【0024】
リフタ13がカム板12の位置P2に到達し、容器100Aとバルブ本体21との間隔Tがノンシールガッシング工程S1を行うのに適した間隔になると、カム板12の位置P2から位置P3までは容器100Aとバルブ本体21との間隔Tがその間隔に維持される。この間隔の維持は、図2に示したようにカム板12の位置P2から位置P3までカム板12の高さが一定の高さに維持されることによって行われる。ノンシールガッシング工程S1は、容器100Aとバルブ本体21との間隔Tがノンシールガッシング工程S1を行うのに適した間隔に維持される非接触期間、すなわちリフタ13がカム板12の位置P2から位置P3まで移動する間に行われる。
【0025】
リフタ13がカム板12の位置P3に到達すると、次に容器100Aに対してシールガッシング工程S2を行うべくカム板12の位置P3から位置P4まで容器100Aをさらに上方向に上昇させる。その後、リフタ13がカム板12の位置P4に達し、容器100Aと充填バルブ20とが密着するとシールガッシング工程S2が行われる。シールガッシング工程S2が終了すると容器100Aに対して充填工程及び密封工程が行われる。その後、容器100Aはメインスターホイール4から転送スターホイール5に搬出されて次の工程に送られる。
【0026】
次に図5及び図6を参照して充填装置1にて容器100Bにビールを充填する場合のビール充填方法について説明する。図5は、各容器100A、100Bに充填バルブ20を密着させたときに各容器100A、100B内に挿入されるベントチューブ22の長さを示している。図6は、容器100Bにビールを充填する場合における充填装置1のメインスターホイール4を図2と同様に矢印S方向から見た図を示している。なお、図5及び図6において図2及び図3と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。充填装置1では、容器100Bにビールを充填する場合でも容器100Aにビールを充填する場合に使用した充填バルブ20をそのまま使用する。そのため、図5の右側に示したように容器100Bと充填バルブ20とを密着させた場合におけるベントチューブ22の先端22aと容器100Bの底面との距離は、図5の左側に示したように容器100Aと充填バルブ20とを密着させた場合におけるベントチューブ22の先端22aと容器100Aの底面との距離よりも容器100Aの高さhaと容器100Bの高さhbとの差Δhの分長くなる。そのため、ノンシールガッシング工程S1において二酸化炭素を容器100B内に供給した場合、二酸化炭素が容器100Bの底部に吹き付けられる勢いが弱められ、容器100B内の酸素濃度を低下させるために必要な時間が長くなる。そこで、容器100Bに対してノンシールガッシング工程S1を行う期間を長くし、これにより容器100B内の酸素濃度を十分に低下させる。このようにノンシールガッシング工程S1の時間を長くするべく、図6に示したようにカム板12にカム延長部30を取り付け、カム板12のカム面12aの形状を変更する。なお、カム延長部30は、カム板12の位置P3から位置P5までのカム板12の高さがカム板12の位置P2から位置P3までの高さと同じ高さになるようにカム面12aの形状を変更する。充填装置1では、容器100Bにビールを充填する場合でも、ノンシールガッシング工程S1以外の工程は容器100Aにビールを充填する場合と同様に行われる。
【0027】
図6を参照してメインスターホイール4において容器100Bに行われるノンシールガッシング工程S1について説明する。メインスターホイール4においてリフタ13がカム板12の位置P3に到達するまでは、上述した容器100Aと同様の処理が容器100Bに対しても行われる。上述したように容器100Bにビールを充填する場合はカム板12にカム延長部30が取り付けられるので、容器100Aとバルブ本体21との間隔Tはカム板12の位置P3を通過しても位置P5までノンシールガッシング工程S1を行うのに適した間隔に維持できる。そこで、リフタ13がカム板12の位置P2から位置P5まで移動する間、容器100Bに対してノンシールガッシング工程S1を行う。
【0028】
リフタ13がカム板12の位置P5に到達すると、次に容器100Aに対してシールガッシング工程S2を行うべくカム板12の位置P5から位置P6まで容器100Bをさらに上方向に上昇させる。その後は、上述した容器100Aと同様に工程が進められる。
【0029】
なお、カム板12に取り付けられるカム延長部30の形状は、充填対象の容器100の高さ、直径、及び容量などに応じて、その容器100に対して適切にノンシールガッシング工程S1が行うことが可能なように適宜変更してよい。
【0030】
このように充填装置1では、ビールを充填する充填対象の容器を容器100Aから容器100Bに変更する場合でも、カム板12にカム延長部30を取り付けるだけでよく、ベントチューブ22など充填バルブ20をオペレータが触る必要がない。充填バルブ20をオペレータが触った場合は、充填バルブ20の洗浄が必要となるが、本発明の充填装置1ではそれが不要となる。そのため、充填装置1を高さの異なる容器100に対応させる場合の作業を簡略化できるとともに作業時間を短縮できる。また、高さの異なる容器100A、100Bに適用させるための部分を充填バルブ20に設ける必要がないため、簡単な構造の充填バルブ20で高さの異なる容器に対応できる。
【0031】
充填装置1においては、容器100Bに対して行うノンシールガッシング工程S1の期間を容器100Aに対して行うノンシールガッシング工程S1の期間よりも長くするので、ノンシールガッシング工程時に容器100内に挿入されるベントチューブ22の長さが短くても容器100内の空気を二酸化炭素で置換して容器100内の酸素濃度を十分に低下させることができる。
【0032】
充填装置1では、スペーサ24の厚さLによって容器100内に挿入されるベントチューブ22の長さを調整しているため、充填装置1でビールが充填される最低高容器の高さが変更になってもスペーサ24を変更することにより、この最低高容器の高さの変更に容易に対応することができる。
【0033】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、本発明の充填装置で容器に充填される液体はビールに限定されない。発泡酒や焼酎、ウオッカ、ジュースなど種々の飲料などの液体を充填してよい。
【0034】
上述した形態では、容器を充填バルブのバルブ本体に近付けさせて容器とバルブ本体との間隔を変更したが、バルブ本体を容器に近付かせて容器とバルブ本体との間隔を変更してもよい。また、この容器とバルブ本体との間隔を変更する間隔変更手段は、カム板に限定されない。アクチュエータなどによって容器とバルブ本体との間隔を変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一形態に係る充填装置を示す図。
【図2】充填装置を図1の矢印S方向から見た側面図。
【図3】充填装置にてビールが充填される容器を示す図。
【図4】充填バルブを拡大して示す図。
【図5】充填バルブと容器とを密着させたときに容器内に挿入されるベントチューブの長さを説明するための図。
【図6】カム板にカム延長部を取り付けた充填装置を図1の矢印A方向から見た側面図。
【符号の説明】
【0036】
1 充填装置
4 メインスターホイール(搬送手段)
10 リフタ機構(間隔変更手段)
12 カム板(カム板部材)
12a カム面
13 リフタ(リフタ部材)
15 搬送プレート(プレート部材)
20 充填バルブ
21 バルブ本体
22 ベントチューブ(筒部材)
24 スペーサ(スペーサ部材)
100A 容器
100B 容器
S1 ノンシールガッシング工程
T 容器とバルブ本体との間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送経路に沿って充填対象の容器を搬送しつつ充填バルブの本体に設けられる筒部材を前記充填対象の容器内に挿入するとともに前記充填対象の容器と前記充填バルブとを密着させて前記充填対象の容器内に液体を充填する充填装置に適用され、高さの異なる容器に前記充填装置で液体を充填する充填方法において、
前記充填対象の容器と前記充填バルブとを密着させて前記充填対象の容器内に液体を充填する充填工程の前に、前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間に隙間が設けられるとともに前記筒部材が前記充填対象の容器内に挿入されるように前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔を変更し、かつ前記筒部材を介して前記充填対象の容器内に置換ガスを導入して前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間の隙間から前記充填対象の容器内に導入した置換ガスにて置換されたガスを排出するノンシールガッシング工程が設けられ、
前記筒部材の長さは、前記充填装置で液体が充填される容器のうち最も高さの低い容器の底面と前記筒部材の先端とが前記充填工程時に離間状態に維持される長さに設定され、
前記ノンシールガッシング工程を行うべく前記充填工程の前に前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔を前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間に隙間が設けられるとともに前記筒部材が前記充填対象の容器内に挿入される間隔に維持する非接触期間の長さを前記充填対象の容器の高さに応じて変更することを特徴とする充填方法。
【請求項2】
前記充填対象の容器の高さが高いほど前記非接触期間が長く設定されることを特徴とする請求項1に記載の充填方法。
【請求項3】
所定の搬送経路に沿って容器を搬送する搬送手段と、筒部材が設けられる本体を有する充填バルブと、前記搬送手段にて搬送されている充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔を変更する間隔変更手段と、を備え、前記充填対象の容器内に前記筒部材が挿入されるとともに前記充填対象の容器と前記充填バルブとが密着するように前記間隔変更手段にて前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔を変更して前記充填対象の容器内に液体を充填する充填装置において、
前記筒部材の長さは、前記充填対象の容器と前記充填バルブとを密着させた場合に前記充填装置にて液体が充填される容器のうち最も高さの低い容器の底面と前記筒部材の先端とが離間状態に維持される長さに設定され、
前記間隔変更手段は、前記充填対象の容器と前記充填バルブとを密着させる前に、前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔を前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間に隙間が設けられるとともに前記筒部材が前記充填対象の容器内に挿入される所定間隔に維持し、かつ前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間隔を前記所定間隔に維持する非接触期間の長さを変更できることを特徴とする充填装置。
【請求項4】
前記間隔変更手段は、前記所定の搬送経路に沿ってカム面が配置されるカム板部材と、前記充填対象の容器が載置されるプレート部材を有するとともに前記カム面に沿って移動することにより前記プレート部材に載置された容器と前記充填バルブの本体との間隔を変更するリフタ部材と、を備え、
前記非接触期間の長さの変更は、前記カム板部材のカム面の形状を変更することにより行われることを特徴とする請求項3に記載の充填装置。
【請求項5】
前記充填バルブは、前記筒部材に沿って移動するように前記筒部材に設けられ、前記間隔変更手段によって前記充填対象の容器と前記充填バルブとを密着させた場合に前記充填対象の容器と前記充填バルブの本体との間に挟まれるスペーサ部材を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−155957(P2008−155957A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347041(P2006−347041)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】