説明

充填装置

【課題】粘性の高い液状の被充填物を例えば大径部の先端に小径部が接続された異径筒形状の容器に、気泡を混入させることなく充填することができる充填装置と充填方法を提供する。
【解決手段】充填工程において、接着剤Wは隙間71を通ってバルブケース31の内部空間57、ノズル9の内部空間23を通ってノズル孔21から容器3の内部空間4内に小径部7側から充填されて行く。吸引工程において容器3の内部空間4の空気が吸引されて空気吸引経路15を通って排出され、容器3内はほぼ真空となっているので、接着剤Wは空気を巻き込むことなく小径部7を含めて、内部空間4に充填される。従って、容器4には気泡が全く混入しない状態に接着剤Wが充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液状の被充填物を定量ずつ容器内に充填する場合に使用される充填装置に係り、特に粘性の高い液状の被充填物内に気泡が混入するのを防止できる充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ある種の合成樹脂のように粘性が高い液状を為していて、空気に晒されると、酸化したり固化したりして変質してしまうものがある。従って、この種の合成樹脂を容器に充填する場合には気泡を含まないように充填する必要がある。ところが従来の充填装置では、容器に充填される合成樹脂が容器内に存在する空気を巻き込み合成樹脂にどうしても気泡が混入してしまう。合成樹脂の粘性がかなり高い場合は、混入した気泡だけを除去することは不可能であるため、合成樹脂の一部を気泡と共に外部に排出することによって気泡を取り除いている。
特に、大径部の先端に小径部が接続された異径筒形状の容器では、小径部に充填された合成樹脂に気泡が混入するのを防ぐことは殆ど不可能であるとされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一旦、充填した合成樹脂の一部を排出すると、排出した分だけ合成樹脂が無駄になるばかりか、合成樹脂の一部を気泡と共に取り除くための工程が必要となり、生産効率が悪くなってしまうという問題がある。
本発明は上記の背景技術が抱える問題点の存在を踏まえてなされたものであって、粘性の高い被充填物を例えば大径部の先端に小径部が接続された異径筒形状の容器に、気泡を混入させることなく充填することができる充填装置と充填方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、液状の被充填物を硬質の容器内に充填する場合に使用される充填装置において、充填物の経路となる充填経路と、前記充填経路に被充填物を供給する充填手段と、前記充填経路に基端部が接続され、先端部が容器内へ入り込むノズルと、前記容器の開口部を閉鎖するように密着する閉鎖部材と、容器内の空気を吸引する空気吸引手段とを備えていることを特徴とする充填装置である。
【0005】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した充填装置において、ノズルは容器の先端部近傍に達する作用長を有していることを特徴とする充填装置である。
【0006】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した充填装置において、ノズルを保持するノズルホルダが設けられ、前記ノズルホルダに空気吸引経路が形成されていることを特徴とする充填装置である。
【0007】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した充填装置において、前記空気吸引経路は前記ノズルの外周面とノズルホルダとの間に形成される空隙部と、前記空隙部とノズルホルダの外部に連通する接続口とから構成されていることを備えていることを特徴とする充填装置である。
【0008】
請求項5に記載した発明は、請求項1から4のいずれかに記載した充填装置を用いた充填方法において、閉鎖部材を容器の開口部を閉鎖するように密着させて容器の開口部を閉鎖する閉鎖工程と、前記閉鎖工程後、空気吸引手段によって容器内の空気を吸引し、容器内をほぼ真空とする吸引工程と、前記吸引工程後、充填手段によって被充填物を充填経路に供給し、更にノズルから被充填物を容器内へ供給する充填工程とから成ることを特徴とする充填方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粘性の高い被充填物を例えば大径部の先端に小径部が接続された異径筒形状の容器に、気泡を混入させることなく充填することができる。従って、被充填物の一部を気泡と共に外部に排出する工程が不要で、被充填物を無駄にせず、しかも生産効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の充填装置を実施するための最良の形態として図示の実施の形態を例に採って具体的に説明する。
本実施の形態おいて、被充填物は粘性流体であり、粘性の高い液状の合成樹脂から成る接着剤Wである。この接着材Wの粘度は、100,000CPS程度である。
また、容器3として大径部5の先端部に小径部7が接続された硬質の異径筒形状の容器を適用した。硬質の容器3を用いるのは、後述するように内部空間4がほぼ真空となるため、これに容器3が変形しないように耐えるものであることが必要だからである。
この容器3の中心には図5に示すように接着剤Wの充填空間となる段差状の内部空間4が形成されており、内部空間4の大径部5側の開口を閉塞する止栓蓋6と、内部空間4の小径部7側の開口を閉塞するキャップ8とが取り付けられる。
【0011】
本発明の充填装置1は、容器3の先端部近傍に達することができる作用長Lを有するノズル9と、このノズル9の基端部11を保持し内部に接着剤Wの充填経路13と空気吸引経路15とが形成されているホルダ部17とを有している。更に充填装置1は、充填経路13の途中に設けられる逆止弁19と、充填経路13に接続され、充填経路13内に接着剤Wを供給する充填手段としての図示しない被充填物圧送装置と、空気吸引経路15に接続された空気吸引手段としての図示しない空気吸引装置とを有している。
【0012】
ノズル9は、その直径が3.5mm、ホルダ部17から突出している作用長Lが60mm程度の小径長尺のパイプ状の部材である。ノズル9の先端面には直径1mm程度のノズル孔21が形成されており、ノズル9内に供給された接着剤Wはノズル9内に形成されている内部空間23を通ってノズル孔21から流出し、容器3内に充填されるようになっている。
【0013】
ホルダ部17は支持部材25に対して固定されるホルダベース27と、ノズル9の基端部11の周囲に設けられるノズルホルダ29と、ホルダベース27とノズルホルダ29とを接続するバルブケース31とを備えることによって構成されている。
ホルダベース27は略円板状の部材で側周面には支持部材25を受け入れる係合溝33が形成されている。ホルダベース27の側周面の一部を垂直に切断した側端面には、テーパネジが切られた取付穴37が刻設されている。取付穴37には図示しない被充填物圧送装置から延びるホースジョイント35が取り付けられる。ホルダベース27の支持部材25に対する固定は図1、2に示す2つの固定ノブ26を使用して行われる。
【0014】
ホルダベース27の内部には、フランジ部38にかけて垂直に内部空間39が形成されており、この内部空間39は取付穴37と連通している。内部空間39には、後述する逆止弁19の弁体41を常時閉弁方向Cに付勢するための圧縮コイルバネ43と、圧縮コイルバネ43のバネ受座を兼ねた弁座45と、バルブケース31の大径筒部47とが収容されている。
【0015】
バルブケース31は大径筒部47と、フランジ部49と、小径筒部51とを一体に備えたジョイント部材である。大径筒部47の周囲にはリング状の周溝53が形成されており、この周溝53にはホルダベース27とバルブケース31との密閉性を確保するためのOリング55が外嵌めされている。
フランジ部49はホルダベース27のフランジ部38に対して密着状態で取り付けられる部分であり、図示しない固定ボルト等を使用して固定される。
【0016】
小径筒部51の外側にはノズルホルダ29が取り付けられ、内側には上記ノズル9の基端部11が取り付けられている。
バルブケース31の中心には上下に貫通する内部空間57が形成されており、この内部空間57は先端側が窄まっている。そして内部空間57には逆止弁19の弁体41が収容されている。
弁体41は球状をしており、弁体41には上方へ突出する係止ボルト59が取り付けられている。また係止ボルト59には2つのナット61が取り付けられており、これら2つのナット61を利用して圧縮コイルバネ43の一端が係止されている。
【0017】
ノズルホルダ29の中心には、バルブケース31の小径筒部51と、ノズル9の基端部11とを受け入れる段差状の受入穴部63が形成されている。また受入穴部63の途中には接続口65が設けられており、この接続口65はノズルホルダ29の外部に連通している。接続口65にはホルダ部17の側方へ向けて延長形成された雌ネジが切られており、この雌ネジに螺合される接続具66には図示しないエアホースの一端が接続されている。更にエアホースの他端には図示しない空気吸引手段としての空気吸引装置が接続されている。
ノズル9の基端部11側の外周面とノズルホルダ29との間には空隙部67が形成されており、この空隙部67は前記接続口65と連通している。これら空隙部67と接続口65とによって空気吸引経路15が構成されている。
このように、ノズル9を保持するノズルホルダ29に空気吸引経路15を設けたので、部品点数が増加せず、コストを最小限に抑えることができる。
【0018】
充填経路13は取付穴37、ホルダベース27の内部空間39、バルブケース31の内部空間57及びノズル9の内部空間23とから構成されている。
ノズルホルダ29の下面には容器3の上端部に密着して、上側の開口部3aを閉鎖する閉鎖部材としての吸着パット69が設けられている。
【0019】
次にこのようにして構成される本発明の充填装置1の動作を(1)閉鎖工程、(2)吸引工程、(3)充填工程に分けて説明する。
(1)閉鎖工程(図3参照)
本発明の充填装置1を使用して接着剤Wの充填を開始する場合には、容器3の小径部7にキャップ8を嵌め、内部空間4の小径部7側の開口を閉塞しておく。そして容器3の大径部5の上部に吸着パット69を密着させ、容器3の上側の開口3aを閉鎖する。
【0020】
(2)吸引工程(図3参照)
閉鎖工程後、図示しない空気吸引装置を作動させる。これにより容器3の内部空間4の空気が吸引されて空気吸引経路15、更に接続具66とエアホースを通って排出され、容器3内はほぼ真空状態となる。
充填装置1は、ノズル9とノズルホルダ29との隙間を空隙部67としているので簡単な構造で空気吸引経路15を確保することができる。即ち、吸着パット69に孔を空けてホースを接続する等、吸着パット69に特別な加工を施す必要がないので、簡単な構造で空気吸引経路15を確保することができ、更に吸着パット69に加工を施さないので、吸着パット69が変形するおそれがなくて、吸着パット69は容器3の大径部5の上部に確実に密着して、容器3の上側の開口部3aを隙間のない状態に閉鎖することができる。
【0021】
(3)充填工程
吸引工程後、図示しない被充填物圧送装置を作動させて、ホースジョイント35を経由して、接着剤Wを充填経路13内に送る。充填経路13とノズル9は予め接着剤Wに満たされており、空気は混入していない。充填経路13内に流入した接着剤Wは、逆止弁19の弁体41を圧縮コイルバネ43の付勢力に抗して押し下げ、弁体41と弁座45との間に隙間71を形成する。
そして接着剤Wは隙間71を通ってバルブケース31の内部空間57を経て、更にノズル9の内部空間23を通ってノズル孔21から容器3の内部空間4内に小径部7側から充填されて行く。
前述のように容器3内はほぼ真空となっているので、接着座Wは空気を巻き込むことなく小径部7を含めて、内部空間4に充填される。従って、容器3には気泡が全く混入しない状態に接着剤Wが充填される。
【0022】
そして所定量の接着剤Wが充填されたところで図示しない被充填物圧送装置と空気吸引装置の作動を停止して吸着パット69から容器3を取り外し、大径部5側の内部空間4の開口を止栓蓋6によって閉塞する。
【0023】
(4)作動停止時(図3参照)
図示しない被充填物圧送装置と空気吸引装置の作動を停止すると、逆止弁19の弁体41は圧縮コイルバネ43の付勢力によって図示のように閉弁方向Cに移動する。そして弁体41は弁座45に当接した状態になり、逆止弁19は閉弁状態になる。
【0024】
以上、本発明を実施するための最良の形態として図示の実施の形態を例に採って詳述してきたが、本発明の具体的構成は図示の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、本発明の充填装置1はホルダ部17とノズル9が1組ずつ配置される他、複数組のホルダ部17とノズル9とが並列状態で配置されるように構成することも可能である。また吸着パット69の形状や大きさ、ノズル9の直径や作用長Lは容器3の形状や大きさに併せて適宜変更することが可能である。
また、上記実施の形態では被充填物として粘度が100,000CPS程度の液状の接着剤を示したが、本発明はこれに限定されず、粘度100,00CPS〜120,000CPSの範囲の液状の被充填物を気泡の含有しない状態に充填することが可能である。更に、接着剤に限らず、化粧品、食品、薬品及びこれらの材料等、上記の粘度を有する液状の被充填物であれば如何なるものでも適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は被充填物を定量ずつ容器内に充填する場合に使用される充填装置の製造、使用分野等で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る充填装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る充填装置を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る充填装置の動作を説明するための側断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る充填装置の動作を説明するための側断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る充填装置の充填対象である容器を分解して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 充填装置 3 容器
4 内部空間 5 大径部
6 止栓蓋 7 小径部
8 キャップ 9 ノズル
11 基端部 13 充填経路
15 空気吸引経路 17 ホルダ部
19 逆止弁 21 ノズル孔
23 内部空間 25 支持部材
26 固定ノブ 27 ホルダベース
29 ノズルホルダ 31 バルブケース
33 係合溝 35 ホースジョイント
37 取付穴 38 フランジ部
39 内部空間 41 弁体
43 圧縮コイルバネ 45 弁座
47 大径筒部 49 フランジ部
51 小径筒部 53 周溝
55 Oリング 57 内部空間
59 係止ボルト 61 ナット
63 受入穴部 65 接続口
66 接続具 67 空隙部
69 吸着パット 71 隙間
W 接着剤 A 空気
C 閉弁方向 L 作用長
3a 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の被充填物を硬質の容器内に充填する場合に使用される充填装置において、充填物の経路となる充填経路と、前記充填経路に被充填物を供給する充填手段と、前記充填経路に基端部が接続され、先端部が容器内へ入り込むノズルと、前記容器の開口部を閉鎖するように密着する閉鎖部材と、容器内の空気を吸引する空気吸引手段とを備えていることを特徴とする充填装置。
【請求項2】
請求項1に記載した充填装置において、ノズルは容器の先端部近傍に達する作用長を有していることを特徴とする充填装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した充填装置において、ノズルを保持するノズルホルダが設けられ、前記ノズルホルダに空気吸引経路が形成されていることを特徴とする充填装置。
【請求項4】
請求項3に記載した充填装置において、前記空気吸引経路は前記ノズルの外周面とノズルホルダとの間に形成される空隙部と、前記空隙部とノズルホルダの外部に連通する接続口とから構成されていることを備えていることを特徴とする充填装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した充填装置を用いた充填方法において、閉鎖部材を容器の開口部を閉鎖するように密着させて容器の開口部を閉鎖する閉鎖工程と、前記閉鎖工程後、空気吸引手段によって容器内の空気を吸引し、容器内をほぼ真空とする吸引工程と、前記吸引工程後、充填手段によって被充填物を充填経路に供給し、更にノズルから被充填物を容器内へ供給する充填工程とから成ることを特徴とする充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−94462(P2008−94462A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280628(P2006−280628)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(591046397)株式会社トップ (3)
【Fターム(参考)】