説明

充放電制御装置

【課題】車両の走行に必要な充電量を確保しつつ電力系統における電力消費のピークの平準化を図る。
【解決手段】本実施形態においては、外部系統2と負荷(AC負荷3及びDC負荷9)と車両EVrが給電路(交流給電路4A及び直流給電路4Bなど)で接続されてなる電力ネットワーク内における電力の時系列的なやりとりを時空間ネットワークを用いて表現し、外部系統2から供給される電力のピーク値が最小となる目的関数を設定し、決定変数の最適解を求めることで充放電スケジュールを生成している。その結果、車両EVの走行に必要な充電量を確保しつつ電力系統2における電力消費のピークの平準化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車などの車両に搭載される蓄電池の充電と、当該蓄電池から車両外の負荷への放電とを制御する充放電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電池とモータを搭載した電気自動車やプラグインハイブリッド自動車などの車両が普及しつつある。そして、集合住宅や事業所などにおいては、多数の車両が同時に充電されるため、他の電気機器と合わせた電力消費のピークが特定の時間帯(例えば、夕方)で大幅に増えてしまう虞がある。
【0003】
これに対して特許文献1に記載されている従来例では、商用の電力系統(電力会社)の電気料金が相対的に安価になる時間帯(深夜電力時間帯)において、複数の車両の充電開始時刻を分散させることで電力消費のピークを平準化するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−80071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、充電済の車両が使用されていない場合、当該車両の蓄電池に蓄えられている電力を放電して負荷に供給すれば、電力系統の電力消費のピークを平準化することに寄与することができる。ただし、車両が使用されるときには、走行に必要な電力が蓄電池に充電されていることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、車両の走行に必要な充電量を確保しつつ電力系統における電力消費のピークの平準化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の充放電制御装置は、電力系統から各車両に搭載された蓄電池への充電と当該蓄電池から車両外の負荷への放電のスケジュールを生成するスケジュール生成手段と、前記スケジュールに従って前記蓄電池の充電と放電を制御する制御手段とを備え、前記スケジュール生成手段は、前記電力系統から供給される電力のピークを低下させるようにスケジュールを生成することを特徴とする。
【0008】
この充放電制御装置において、前記スケジュール生成手段は、太陽電池や燃料電池などの発電設備から前記蓄電池の充電及び前記負荷への給電に使用される電力を考慮して前記スケジュールを生成することが好ましい。
【0009】
この充放電制御装置において、前記電力系統及び前記蓄電池から前記負荷に供給される電力が電力変換装置によって電力変換される場合、前記スケジュール生成手段は、前記電力変換装置における電力変換の損失を考慮して前記スケジュールを生成することが好ましい。
【0010】
この充放電制御装置において、前記スケジュール生成手段は、前記車両が使用されるときに必要とされる前記蓄電池の要求充電量に対して、当該蓄電池への充電量が大きくなるように前記スケジュールを生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の充放電制御装置は、車両の走行に必要な充電量を確保しつつ電力系統における電力消費のピークの平準化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る充放電制御装置の実施形態を含む充放電システムのシステム構成図である。
【図2】同上におけるスケジュール生成に使用されるパラメータや決定変数の説明図である。
【図3】同上におけるスケジュール生成に使用される目的関数及び制約条件の説明図である。
【図4】同上におけるスケジュール生成に使用されるパラメータや目的関数、制約条件の説明図である。
【図5】同上において、発電設備の発電量やDC/DCコンバータの損失を考慮したスケジュール生成に使用されるパラメータや目的関数、制約条件の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の充放電制御装置1を含む充放電システムのシステム構成を図1に示す。この充放電システムは、集合住宅や事業所などの建物において、複数台の車両(電気自動車やプラグインハイブリッド自動車など)EVr(r=1,2,…,n)にそれぞれ搭載されている蓄電池(図示せず)を充電するとともに当該蓄電池から建物内の負荷へ放電(給電)するためのものである。ここで、本実施形態における車両EVrは、蓄電池、外部(車両外)から供給される電力(直流電力)で当該蓄電池を充電する充電器、当該蓄電池から放電される直流電力を外部に出力する放電器、充放電制御装置1からの指令に応じて充電器及び放電器を制御する制御装置(ECU)などが搭載されている。
【0014】
建物においては、商用の電力系統(以下、外部系統と呼ぶ。)2から交流負荷(AC負荷)3へ交流給電路4Aを介して交流電力が供給される。また、交流給電路4AにはDC/ACインバータ(電力変換装置)5とAC/DCコンバータ(電力変換装置)6が接続されている。AC/DCコンバータ6は外部系統2から供給される交流電力を直流電力に変換してDC/DCコンバータ(電力変換装置)7に出力する。DC/ACインバータ6は、DC/DCコンバータ7から出力される直流電力を交流電力に変換して交流給電路4Aへ出力する。
【0015】
DC/DCコンバータ7は、太陽電池や燃料電池などの発電設備8から供給される直流電力やAC/DCコンバータ5から出力される直流電力を所望の直流電力に変換して直流給電路4Bへ出力する。直流給電路4Bには直流負荷(DC負荷)9とともに1乃至複数台の車両EVrが接続され、DC/DCコンバータ7から出力される直流電力が直流給電路4Bを介して直流負荷9と車両EVrにそれぞれ供給される。また、車両EVrの蓄電池から放電される直流電力が直流給電路4Bを介してDC負荷9やDC/DCコンバータ7に供給される。そして、DC/DCコンバータ7は、車両EVrの蓄電池から放電される直流電力を所望の直流電力に変換してDC/ACインバータ6に出力する。
【0016】
充放電制御装置1は、スケジュール生成部10、制御部13、電力計測部12、記憶部11、操作入力受付部14を備えている。電力計測部12は、外部系統2から交流給電路4Aを介して供給される電力(交流電力)及び発電設備8から直流給電路4Bを介して供給される電力(直流電力)を計測する。但し、電力計測部12の計測結果はスケジュール生成部10を通じて記憶部11に記憶される。
【0017】
記憶部11は、フラッシュメモリなどの電気的に書換可能な不揮発性の半導体メモリからなり、電力計測部12の計測結果の他にも、後述するスケジュールや車両EVrに関する種々の情報などを記憶している。操作入力受付部14は、キーボードやタッチパネル、あるいはICカードリーダなどの入力デバイスを有し、当該入力デバイスによって入力される種々の操作入力を受け付けてスケジュール生成部10に渡すものである。なお、各車両EVr毎の使用予定に関する情報、例えば、入庫時刻や出庫時刻、充電の要求量、走行距離など(以下、予約情報と呼ぶ。)の操作入力が操作入力受付部14で受け付けられて記憶部11に記憶される。
【0018】
スケジュール生成部10は、記憶部11に記憶される種々の情報に基づき、複数の車両EVrの蓄電池を充電し且つ当該蓄電池から負荷(AC負荷3又はDC負荷9)に放電(給電)するためのスケジュールを作成する。なお、スケジュール生成部10がスケジュール生成に利用する情報とは、前記予約情報の他、電力供給時に種々の電力変換装置(AC/DCコンバータ5、DC/ACインバータ6、DC/DCコンバータ7)で発生する損失や、車両EVrに搭載されている蓄電池の充電容量及び充放電能力、負荷(AC負荷3及びDC負荷9)の消費電力などである。ただし、スケジュールの生成時点以降の負荷の消費電力は本来不明であるので、スケジュール生成部10は、消費電力の過去の実績や季節、天候などに基づき、単位時間毎(例えば、30分〜1時間毎)の消費電力を予測し、その予測結果を用いてスケジュールを生成する。
【0019】
制御部13は、スケジュール生成部10で生成されたスケジュールに従い、各車両EVrの制御装置(ECU)に指令を与えて蓄電池の充電及び放電を行わせる。また制御部13は、各車両EVrと直流給電路4Bとの接続状態を検出する機能も有しており、各車両EVrの接続状態の検出結果をスケジュール生成部10に渡している。さらに、各車両EVrを使用する使用者に固有の識別符号(使用者ID)が割り当てられ、スケジュール生成部10は、使用者IDによって各車両EVrを識別する。使用者IDのID番号(1,2,…)は充放電制御装置1の記憶部11に記憶(登録)されている。なお、スケジュール生成部10と制御部13と電力計測部12は、CPU(中央演算処理装置)やメモリなどのハードウェアと、各部1〜3の処理を行うためのソフトウェア(プログラム)とで構成されている。
【0020】
次に、スケジュール生成部10による具体的なスケジュール生成方法について説明する。ただし、説明を簡単にするため、発電設備8の発電量とDC/DCコンバータ7における損失については省略する。
【0021】
本実施形態においては、外部系統2と負荷(AC負荷3及びDC負荷9)と車両EVrが給電路(交流給電路4A及び直流給電路4Bなど)で接続されてなる電力ネットワーク内における電力の時系列的なやりとりを時空間ネットワークを用いて表現し、外部系統2から供給される電力のピーク値が最小となる目的関数を設定し、決定変数の最適解を求めることで充放電スケジュールを生成している。
【0022】
例えば、各種のパラメータと決定変数が図2のように定義される。なお、図2における「AC系統」は交流給電路4A、「DC系統」は直流給電路4Bをそれぞれ表している。また、車両EVrは1日のうちに2回出庫する場合があると仮定する。
【0023】
一方、目的関数は、ピーク時間帯における外部系統2からの受電量平均値μと、ピーク時間帯における外部系統2からの受電量の偏差σを用いて、μ+kσ(kは定数)と設定される(図3の式(1)参照)。また、目的関数を最小とする最適解を求めるための制約条件が、図3の式(2)〜(10)のように設定される。式(2)は車両EVrの充電容量に関する制約条件を示し、式(3)は車両EVrの要求充電量を満たすための制約条件を示している。なお、要求充電量は、次回の出庫時刻において車両EVrが必要とする充電量であり、予約情報や蓄電池の容量などから算出される。
【0024】
式(4)は外部系統2からAC系統及びDC系統への電力の割り当てを入力量(供給量)以内にするための制約条件を示している。式(5)は、同一の車両EVrにおいて充電と放電が同じ時間に重複しないようにするための制約条件を示している。式(6)及び式(7)は、それぞれAC系統及びDC系統内での流量保存則を満たすための制約条件を示し、式(8)は、車両EVrの充電に関する流量保存則を満たすための制約条件を示している。式(9)は、車両EVrの初期状態、式(10)は車両EVrの走行による使用量をそれぞれ示している。
【0025】
而して、スケジュール生成部10が上述した制約条件(式(1)〜(10))の元で目的関数(μ+kσ)を最小とする最適解を求めてスケジュールを生成すれば、車両EVの走行に必要な充電量を確保しつつ電力系統2における電力消費のピークの平準化を図るスケジュールを生成することができる。さらに、発電設備8の発電量及びDC/DCコンバータ7における損失のパラメータ及び制約条件を追加することにより、発電設備8の発電量や電力変換装置の損失が考慮されたスケジュールが生成可能となる。
【0026】
例えば、図5に示すように発電設備8の発電量やDC/DCコンバータ7の減衰率に関するパラメータや発電設備からAC系統及びDC系統への電力の流量を表す変数を追加すればよい。さらに、制約条件では、AC系統及びDC系統に発電設備8からの発電量が流入するため、発電設備8の発電量まで考慮した流量保存則にするため、図3の式(6)(7)を書き換え、発電設備8が発電した電力と電力消費量の一致や、発電量の範囲などを定義する式を追加すればよい。
【0027】
ここで、スケジュール生成部10は、車両EVrが使用されるときに必要とされる蓄電池の要求充電量に対して、蓄電池への充電量が大きくなるようにスケジュールを生成することが好ましい。すなわち、車両EVの使用に関する不確実性、例えば、予定の出庫時刻よりも早く出庫したり、予定の走行距離よりも長い距離を走行する可能性に対して、ロバスト性の高いスケジュールの生成が可能となり、早めの出庫や走行距離の増大にも対応可能となる。
【0028】
例えば、スケジュール生成部10において、図3に示した目的関数及び制約条件から最適解を導き出した後、要求充電量を超える余分な充電量αtsができるだけ大きくなるとともに、先に導き出された最適解との差を最小とする最適解を求めてスケジュールを生成すればよい。具体的には、図4に示すようなパラメータ、目的関数、制約条件が設定され、制約条件の元で目的関数を最大とする最適解が求められる。なお、図4に示す制約条件では、図3の式(3)がgrytr+Crutrtr=Dtrに変更され、μ+kσ+β=F1が追加されている。
【符号の説明】
【0029】
1 充放電制御装置
10 スケジュール生成部(スケジュール生成手段)
11 記憶部
12 電力計測部
13 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から各車両に搭載された蓄電池への充電と当該蓄電池から車両外の負荷への放電のスケジュールを生成するスケジュール生成手段と、前記スケジュールに従って前記蓄電池の充電と放電を制御する制御手段とを備え、前記スケジュール生成手段は、前記電力系統から供給される電力のピークを低下させるようにスケジュールを生成することを特徴とする充放電制御装置。
【請求項2】
前記スケジュール生成手段は、太陽電池や燃料電池などの発電設備から前記蓄電池の充電及び前記負荷への給電に使用される電力を考慮して前記スケジュールを生成することを特徴とする請求項1記載の充放電制御装置。
【請求項3】
前記電力系統及び前記蓄電池から前記負荷に供給される電力が電力変換装置によって電力変換される場合、前記スケジュール生成手段は、前記電力変換装置における電力変換の損失を考慮して前記スケジュールを生成することを特徴とする請求項1又は2記載の充放電制御装置。
【請求項4】
前記スケジュール生成手段は、前記車両が使用されるときに必要とされる前記蓄電池の要求充電量に対して、当該蓄電池への充電量が大きくなるように前記スケジュールを生成することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の充放電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−175722(P2012−175722A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32005(P2011−32005)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】