説明

充放電支援装置

【課題】 車両における各時刻の電力消費を把握して充放電制御を行う充放電支援装置を提供すること。
【解決手段】 充放電支援装置10の電子制御ユニット11は、データ入力部51、出発・到着時刻予測マップ生成部52、走行距離予測マップ生成部53、ルールカーブ作成部54、データ出力部55とからなる。入力部51は出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を入力する。予測マップ生成部52は今後の出発予想時刻マップと今後の到着予想時刻マップを作成する。予測マップ生成部53は、走行距離情報及び予測出発時刻情報を用いて出発時間帯における最長走行距離を予測する出発時間帯別予想走行距離マップを作成する。作成部54は、予想走行距離マップに基づき、各時間帯にて必要な電力量を決定してルールカーブを作成する。出力部55は、ルールカーブを用いて充電計画或いは放電計画を精度よく作成して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器に設けられたバッテリの充電又は放電を支援する充放電支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示されているような、充放電管理装置は知られている。この従来の充放電管理装置は、需要家の充放電行動により享受できる報奨及び充電・放電の実施に関する制約を定めた充放電報奨情報を充電管理中央サーバから受信する充放電報奨情報受信手段と、充放電報奨情報に基づいて報奨が最大となるようにある時間帯の充電量の合計及び放電量の合計と電気自動車の推定使用開始時刻とを含む充放電計画を作成する計算部と、充放電計画に従った充電・放電の開始・終了を電気自動車に指令する充放電指令送信手段と、充電・放電を監視する充放電量監視手段と、監視によって充電・放電の実施内容及び自身を識別する個体識別情報を含む充放電実施結果を充電管理中央サーバに送信する充放電実施結果送信手段とを有するようになっている。これにより、需要家の行動を踏まえつつ、電力系統全体のエネルギー消費性能及び社会環境性能を向上させるようになっている。
【0003】
又、従来から、例えば、下記特許文献2に示されているような、電気自動車充電システム及び電気自動車充電方法も知られている。この従来の電気自動車充電システム及び電気自動車充電方法は、電気自動車が駐車スペースに停車すると、制御装置10が切り替えスイッチ経由で電気自動車と通信して車ID、電池残量、運行情報等を取得し、ニューラルネット等の手法を用いて車IDから特定される客の滞在時間を予測し、電池残量及び充電器の充電速度により充電時間を計算し、その充電時間が滞在時間に収まるように充電スケジュールを作成するようになっている。又、この従来の電気自動車充電システム及び電気自動車充電方法では、計算した充電時間が滞在時間に収まらない場合には、運行情報から帰路に必要な充電量を計算して充電時間を再計算するようになっており、充電量が不十分となる場合には、その旨を示す警報、又は、出発時刻を延長するように促すメッセージを出力するようになっている。これにより、効率的に複数の電気自動車を充電することができるようになっている。
【0004】
更に、従来から、例えば、下記特許文献3に示される電力マネジメントシステムも知られている。この従来の電力マネジメントシステムは、確保電力量演算部を備えており、この確保電力量演算部は、走行履歴取得装置が取得した1トリップの消費電力量を学習して通常走行における必要基本電力量を求め、更に、天候情報検出部からの天候情報に基づいて空調機等の使用のための必要電力を加算して確保電力量を決定するようになっている。これにより、車載バッテリに走行環境に対応した電力を確保することができ、急な外出にも対応できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−81722号公報
【特許文献2】特開2011−83165号公報
【特許文献3】特許第4164996号公報
【発明の概要】
【0006】
ところで、上記特許文献1〜3に示された従来の装置やシステムにおいては、過去の電力需要から走行開始時刻や走行開始距離を予測するようになっている。しかしながら、ユーザがより利便性及び確実性を有してバッテリを備えた車両を含む機器を利用しようとする場合には、ユーザが車両を走行させる(機器を作動させる)ために必要な電力を必要な時刻(時間帯)までにバッテリへの充電を完了する、或いは、ユーザが車両を走行させる(機器を作動させる)時刻(時間帯)までにバッテリからの放電を完了しておくことが必要である。このためには、より精度よく車両の利用状況、言い換えれば、ユーザのライフスタイルを予測し、車両の利用状況を反映した充放電計画を立てる必要がある。
【0007】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的は、車両における各時刻の電力消費を把握して充放電制御を行う充放電支援装置を提供することにある。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、機器に設けられたバッテリの充電又は放電を支援するための制御手段を備えた充放電支援装置において、前記制御手段は、前記機器における過去の前記バッテリの電力消費に関する情報を取得し、この取得した前記機器における過去の前記バッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブを作成し、前記作成したルールカーブを用いて前記バッテリへの充電開始時刻又は前記バッテリからの放電停止時刻を推定して決定し、前記推定して決定した前記充電開始時刻又は前記放電停止時刻を出力することにある。尚、この場合、前記制御手段が、前記機器における過去の前記バッテリの電力消費に関する情報を取得して入力する入力手段と、前記入力手段によって入力された前記機器における過去の前記バッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブを作成するルールカーブ作成手段と、前記ルールカーブ作成手段によって作成されたルールカーブを用いて前記バッテリへの充電開始時刻又は前記バッテリからの放電停止時刻を推定して決定し、前記推定して決定した前記充電開始時刻又は前記放電停止時刻を出力する出力手段とを備えることも可能である。
【0009】
この場合、前記制御手段は、例えば、前記作成したルールカーブを用いて、前記ルールカーブにおける局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記バッテリへの充電開始時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅充電開始時刻、又は、前記バッテリからの放電停止時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅放電停止時刻を推定して決定することもできる。尚、この場合、前記出力手段は、前記ルールカーブ作成手段によって作成されたルールカーブを用いて、前記ルールカーブにおける局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記バッテリへの充電開始時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅充電開始時刻、又は、前記バッテリからの放電停止時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅放電停止時刻を推定して決定することもできる。
【0010】
そして、この場合、前記制御手段は、例えば、前記作成したルールカーブに複数の局所最大値が存在するとき、各局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定し、各線分によって推定して決定される各最遅充電開始時刻のうちの最も早い時刻となる最遅充電開始時刻、又は、各線分によって推定して決定される各最遅放電停止時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅放電停止時刻を推定して決定することができる。尚、この場合、前記出力手段は、前記ルールカーブ作成手段によって作成されたルールカーブに複数の局所最大値が存在するとき、各局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定し、各線分によって推定して決定される各最遅充電開始時刻のうちの最も早い時刻となる最遅充電開始時刻、又は、各線分によって推定して決定される各最遅放電停止時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅放電停止時刻を推定して決定することができる。
【0011】
これらの場合、前記制御手段は、例えば、前記作成したルールカーブによって表される推定消費電力量が前記バッテリにおけるバッテリ容量の上限を超えるときには、前記推定必要電力量が前記バッテリ容量の上限と一致する点を通か又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記最遅充電開始時刻、又は、前記点を通か又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記最遅放電停止時刻を推定して決定することもできる。尚、この場合、前記出力手段は、前記ルールカーブ作成手段によって作成されたルールカーブによって表される推定消費電力量が前記バッテリにおけるバッテリ容量の上限を超えるときには、前記推定必要電力量が前記バッテリ容量の上限と一致する点を通か又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記最遅充電開始時刻、又は、前記点を通か又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記最遅放電停止時刻を推定して決定することもできる。
【0012】
更に、これらの場合には、前記制御手段は、前記最遅充電開始時刻を推定して決定するための前記線分を、前記バッテリへの充電可能量、前記バッテリの充電時における予想気温、前記バッテリに供給する充電電圧及び前記バッテリに供給する充電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定し、又は、前記最遅放電停止時刻を推定して決定するための前記線分を、前記バッテリによる放電可能量、前記バッテリの充電時における予想気温、前記バッテリから供給する放電電圧及び前記バッテリから供給する放電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定することができる。尚、この場合には、前記出力手段は、前記最遅充電開始時刻を推定して決定するための前記線分を、前記バッテリへの充電可能量、前記バッテリの充電時における予想気温、前記バッテリに供給する充電電圧及び前記バッテリに供給する充電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定し、又は、前記最遅放電停止時刻を推定して決定するための前記線分を、前記バッテリによる放電可能量、前記バッテリの充電時における予想気温、前記バッテリから供給する放電電圧及び前記バッテリから供給する放電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定することができる。
【0013】
又、本発明の他の特徴は、前記機器は外部電源からバッテリを充電するプラグイン式電気車両であり、前記制御手段は、前記プラグイン式電気車両における過去の前記バッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブを作成することにもある。尚、この場合、前記ルールカーブ作成手段が、外部電源からバッテリを充電するプラグイン式電気車両における過去の前記バッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブを作成することができる。
【0014】
そして、この場合、前記プラグイン式電気車両における過去の前記バッテリの電力消費に関する情報は、例えば、前記プラグイン式電気車両が所定の駐車位置から出発した時刻を表す出発時刻情報及び前記プラグイン式電気車両が前記所定の駐車位置に到着した時刻を表す到着時刻情報と、前記出発時刻情報によって表される出発時刻に前記プラグイン式電気車両が前記所定の駐車位置を出発してからの走行距離を表す走行距離情報のうちのいずれかとすることができる。
【0015】
更に、本発明の他の特徴は、前記制御手段は、複数の前記機器におけるそれぞれの過去の前記バッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブをそれぞれ作成し、前記複数の機器を使用するときの優先度に応じて、前記作成したそれぞれのルールカーブを用いて前記バッテリへの充電開始時刻又は前記バッテリからの放電停止時刻を推定して決定し、前記推定して決定した前記充電開始時刻又は前記放電停止時刻を出力することにもある。この場合、前記制御手段は、前記作成した各ルールカーブにおける局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を前記複数の機器の優先度に応じて設定して、前記最遅充電開始時刻、又は、前記最遅放電停止時刻を推定して決定することができる。尚、この場合、前記ルールカーブ作成手段は、複数の前記機器におけるそれぞれの過去の前記バッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブをそれぞれ作成し、前記出力手段は、前記複数の機器を使用するときの優先度に応じて、前記ルールカーブ作成手段によって作成されたそれぞれのルールカーブを用いて前記バッテリへの充電開始時刻又は前記バッテリからの放電停止時刻を推定して決定し、前記推定して決定した前記充電開始時刻又は前記放電停止時刻を出力することができる。そして、この場合、前記ルールカーブ作成手段は、前記作成した各ルールカーブにおける局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を前記複数の機器の優先度に応じて設定して、前記最遅充電開始時刻、又は、前記最遅放電停止時刻を推定して決定することができる。
【0016】
これらによれば、充放電支援装置の制御手段(ルールカーブ作成手段)は、外部電源からバッテリを充電するプラグイン式電気車両を含む機器の過去の電力消費に関する情報に基づいて各時刻に対する推定必要電力量の関係を示すルールカーブを精度よく推定して決定することができる。そして、充放電支援装置の制御手段(出力手段)は、精度よく推定されて作成されたルールカーブに基づいて、例えば、機器を作動させる(車両を走行させる)ために必要となる推定必要電力量が最大となる時間帯(時刻)までにバッテリへの充電を完了させることができる充電開始時刻を決定して出力することができる。又、充放電支援装置の制御手段(出力手段)は、精度よく推定されて作成されたルールカーブに基づいて、例えば、機器(車両)のバッテリが余剰電力を有しているときにバッテリから放電させることができる放電停止時刻を決定して出力することができる。これにより、ユーザは、極めて正確な情報を把握して確実に車両を充放電制御することができる。従って、このような充放電支援の対象となる機器(車両)を利用するユーザは、良好なバッテリの充電状態で機器(車両)を確実に利用することができて、極めて良好な利便性を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る充放電支援装置の適用可能なシステムの構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る充放電支援装置の構成を示す概略図である。
【図3】図2の電子制御ユニット内にてコンピュータプログラム処理により実現される機能を表す機能ブロック図である。
【図4】図3の出発・到着時刻予測マップ生成部によって作成される出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを説明するための図である。
【図5】図3の走行距離予測マップ生成部によって作成される出発時間帯別予想走行距離マップを説明するための図である。
【図6】ワイブル分布で近似した各時間帯別の走行距離累積度数分布を説明するための図である。
【図7】図3のルールカーブ作成部によって作成されるルールカーブを示す概略図である。
【図8】図3のデータ出力部による推定最遅充電開始時刻及び推定最遅放電停止時刻の決定を説明するための図である。
【図9】本発明の第1変形例に係り、複数の局所最大値を有するルールカーブを用いて、データ出力部が最遅充電開始時刻及び推定最遅放電停止時刻を決定することを説明するための図である。
【図10】本発明の第2変形例に係り、推定電力量がバッテリ容量の上限を超えるルールカーブを用いて、データ出力部が最遅充電開始時刻及び推定最遅放電停止時刻を決定することを説明するための図である。
【図11】本発明の第3変形例に係り、複数のルールカーブ及び機器の優先度を用いて、データ出力部が最遅充電開始時刻を決定することを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る充放電支援装置について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、充放電支援装置の適用可能なシステムの概略構成を示している。このシステムを構成する車両10は、バッテリ11を搭載しており、外部電源からバッテリ11に充電できるようにしたプラグイン電気車両、例えば、バッテリ11の電力で走行する電気自動車(EV)や、更に内燃機関を備えたプラグインハイブリッド車(PHV)、或いは、電動自転車、アシスト自転車、電動バイク等の二輪車である。ここで、車両10の構成自体は、周知の構成を採用することができ、又、本発明に直接関係しないため、以下に簡単に説明しておく。
【0020】
車両10は、図1に示すように、走行駆動系として、バッテリ11から出力される直流電力を三相交流電力に変換するインバータ12と、インバータ12から出力される三相交流電力により駆動されて車輪Wを回転させる走行用モータ13と、インバータ12の出力を制御するモータ制御ユニット14とを備えている。これにより、車両10は、モータ制御ユニット14がインバータ12を介してバッテリ11から走行用モータ13に供給される電力を制御することによって走行することができる。
【0021】
又、車両10は、バッテリ11を充電する又はバッテリ11から放電するための充放電システム20を備えている。充放電システム20は、図1に示すように、充放電用接続ケーブルKのプラグK1が接続可能に設けられた受給電コネクタ21と、受給電コネクタ21に供給される交流電力を直流電力に変換してバッテリ11に直流電力を出力する、及び、バッテリ11に充電されている直流電力を交流電力に変換して受給電コネクタ21から充放電用接続ケーブルKに出力するAC/DC変換器22と、バッテリ11の充電及び放電を制御する車両側充放電制御ユニット23(以下、単に「車両側充放電ECU23」と称呼する。)とを備えている。車両側充放電ECU23は、CPU、ROM、RAM等を主要構成部品とするマイクロコンピュータであり、図1に示すように、充放電支援装置30と通信アンテナを介して通信できるようになっている。又、充放電システム20においては、受給電コネクタ21とAC/DC変換器22との間の電源ラインに、充放電制御スイッチ24が設けられている。この充放電制御スイッチ24は、車両側充放電ECU23からの制御信号によりオン状態とオフ状態とに切り替え可能となっている。さらに、充放電システム20においては、バッテリ11に設けられてバッテリの充電状態を示す値(電力量或いはバッテリ残量)であるSOC(State Of Charge)を検出するSOC検出部25が設けられている。SOC検出部25は、SOCを表す信号を車両側充放電ECU23に出力する。
【0022】
そして、このような充電システム20を備えた車両10においては、ユーザの自宅或いは共用する駐車場等の所定の駐車位置に設置された充放電施設としての充放電スタンド40の充放電用コンセント41と電気的に接続されることによって、バッテリ11に電力が供給されて充電され、又、バッテリ11の電力が充放電スタンド40に放電される。これにより、車両10のバッテリ11を充電する、又は、車両10のバッテリ11から放電する場合には、充放電用接続ケーブルKのプラグK2を充放電用コンセント41に差し込むとともに、上述したように充放電用接続ケーブルKのプラグK1を受給電コネクタ21に差し込む。これにより、バッテリ11を充電するときには、充放電用コンセント41から車両10のバッテリ11に電力が供給される。一方、バッテリ11から放電するときには、車両10のバッテリ11から充放電用コンセント41に電力が供給される。
【0023】
ここで、充放電スタンド40は、電力受給制御ユニット42(以下、「電力受給ECU42」と称呼する。)を備えている。電力受給制御ECU42は、CPU、ROM、RAM等を主要構成部品とするマイクロコンピュータであり、図1に示すように、充放電システム20の車両側充放電ECU23と通信アンテナを介して互いに近距離無線通信することにより、適切な量の電力を受給するようになっている。すなわち、電力受給制御ECU42は、車両側充放電ECU23とは、互いに所定の周期により、種々の情報(例えば、充電におけるリクエストコードやレスポンスコード、車両10(すなわち、ユーザ)を特定するID情報、バッテリ11のSOC等)を送受信することにより、適切な量の電力を受給する、言い換えれば、適切にバッテリ11を充電するとともにバッテリ11から放電させるようになっている。
【0024】
充放電支援装置30(以下、単に「本装置30」とも称呼する。)は、車両10について、車両10が駐車される所定の駐車位置からの出発時刻及び所定の駐車位置への到着時刻と、所定の駐車位置を出発してから所定の駐車位置に到着する(戻る)までに車両10が走行した走行距離とを、車両10を用いた日々の行動パターン(ライフスタイル)として収集して蓄積し、蓄積した車両10の行動パターンから日々の利用状況(より具体的には、曜日毎の利用状況)を精度よく予測する。そして、充放電支援装置30は、このように予測した車両10の利用状況に基づいて各時刻(又は時間帯毎)に対する推定必要電力量(バッテリ残量)を表すルールカーブを作成し、このルールカーブに基づいて最適な充電開始時間又は放電停止時間を決定するようになっている。
【0025】
このため、本装置30は、図2に概略的に示すように、互いに通信可能に接続された電子制御ユニット31、通信ユニット32及び記憶ユニット33を必要最小限の構成として備えている。従って、本装置30の利用態様(設置態様)に応じてその構成を適宜変更することは可能であり、例えば、図2に示すように、本装置30が入力ユニット34及び液晶表示ユニット35を備えるように構成して実施することも可能である。
【0026】
電子制御ユニット31は、CPU,ROM、RAM等を主要構成部品とするマイクロコンピュータであり、各種のプログラムを実行することにより、本装置30の作動を統括的に制御する。通信ユニット32は、無線(又は有線)によって、少なくとも、車両側充放電ECU23と通信するものである。尚、本装置30の利用態様(設置態様)に関し、車両10を駐車する所定の駐車位置が、例えば、自宅であり、本装置30が自宅で利用される場合、すなわち、本装置30が車両10に比較的近い位置にて利用される場合には、通信ユニット32が近距離無線通信(又は有線通信)によって直接的に車両側充放電ECU23と通信できるようになっており、所定の駐車位置から遠方に本装置30が設置されて利用されう場合には、通信ユニット32が、例えば、インターネット通信網(公衆回線網)や専用回線網を介した無線通信(又は有線通信)により、車両側充放電ECU23と通信できるようになっている。
【0027】
記憶ユニット33は、ハードディスクや半導体メモリ等の記憶媒体及び同記憶媒体のドライブ装置を含むものであり、電子制御ユニット31が本装置30の作動を統括的に制御するにあたって必要なプログラム及びデータを予め記憶している。そして、記憶ユニット33内には車両10の過去の電力消費に関する情報である車両10の走行履歴を検索可能に記憶する車両走行履歴データベース33aが構築されている。尚、記憶ユニット33内には、必要に応じて、例えば、車両10を識別するためのID情報(車両ID情報)として、例えば、車両登録番号や車台番号等を検索可能に記憶する車両IDデータベースを構築したり、車両10のユーザを識別するためのID情報(ユーザID情報)を検索可能に記憶するユーザIDデータベースを構築したりすることができる。
【0028】
入力ユニット34は、液晶表示ユニット35の近傍に設けられた操作スイッチ、液晶表示ユニット35内に組み込まれて表示パネルのタッチ操作を検出するパネルタッチスイッチ等からなり、ユーザによる各種入力を可能とするものである。液晶表示ユニット35は、文字、図形等を表示パネル上に表示するものである。
【0029】
次に、上記のように構成した本装置30の動作について、電子制御ユニット31内にてコンピュータプログラム処理により実現される機能を表す図3の機能ブロック図を用いて説明する。本実施形態における本装置30の電子制御ユニット31は、データ入力部51、出発・到着時刻予測マップ生成部52、走行距離予測マップ生成部53、ルールカーブ作成部54、データ出力部55とからなる。
【0030】
尚、本実施形態においては、本装置30は、充放電支援の対象となる車両10のルールカーブを作成するにあたり、車両10の走行履歴を利用する。このため、本実施形態の車両10においては、充放電に利用可能な充放電スタンド40が設置された所定の駐車位置(例えば、自宅)を起点とし、この所定の駐車位置から出発する出発時間及びこの駐車位置に到着する(戻る)到着時間を検出可能であり、この駐車位置を出発してから戻るまでに(到着するまでに)走行した走行距離が検出可能であるとする。この場合、これらの出発時間、到着時間及び走行距離の検出については、如何なる方法をも採用可能であるが、例えば、車両10が周知のナビゲーションユニットを搭載しており、このナビゲーションユニットが車両の現在位置を検出することにより、前記所定の駐車位置を起点として、出発時刻、到着時刻及び走行距離を検出するとよい。或いは、本装置30が車両10の現在位置を通信を介して直接的に取得することにより、車両10の出発時間、到着時間及び走行距離を検出(取得)するようにすることも可能である。
【0031】
そして、ユーザが車両10を所定の駐車位置から走行を開始する(出発する)と、例えば、車両10に搭載されたナビゲーションユニットは、検出している車両10の現在位置の変化に基づき車両10が所定の駐車位置から出発したことを検知し、この出発を検知した時刻(すなわち、出発時刻)を表す出発時刻情報を所定の記憶手段に車両IDとともに記憶する。又、車両10に搭載されたナビゲーションユニットは、検出している車両10の現在位置の変化に基づき車両10が出発してからの走行距離を算出し、最終的に、ユーザによって車両10が所定の駐車位置に到着する(戻る)までの走行距離を表す走行距離情報を所定の記憶手段に車両ID及び出発時刻情報とともに記憶する。又、車両10に搭載されたナビゲーションユニットは、検出している車両10の現在位置の変化に基づき車両10が所定の駐車位置に到着したことを検知し、この到着を検知した時刻(すなわち、到着時刻)を表す到着時刻情報を所定の記憶手段に車両ID、出発時刻情報及び走行距離情報とともに記憶する。更に、車両10における充放電システム20の車両側充放電ECU23は、ナビゲーションユニットと協働して、例えば、今回の走行に伴い、バッテリ11に充電されている単位電力量当たりの走行距離、所謂、電費を表す電費情報を所定の記憶手段に車両IDとともに記憶する。そして、車両10においては、所定の駐車位置に駐車されると、充電システム20の車両側充放電ECU23が記憶手段に記憶している車両ID、出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を本装置30に出力するとともに、電費情報を本装置30に出力する。
【0032】
本装置30においては、電子制御ユニット31が通信ユニット32を介して、走行を終えた車両10から出力された車両ID、出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報と電費情報とを受信する。そして、電子制御ユニット31は、出力された車両IDを用いて車両10を特定する。続いて、電子制御ユニット31は、出力された出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を走行履歴データベース33aに記憶する。このとき、電子制御ユニット31は、走行履歴データベース33a内に予め車両10に対応して形成された記憶位置にて、例えば、曜日別に出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報を検索可能に蓄積して記憶するとともに、これらの情報に合わせて電費情報を記憶する。
【0033】
このように、記憶ユニット33の走行履歴データベース33aに対して、車両10に関して、曜日別に出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報と電費情報とが記憶された状態において、電子制御ユニット31を構成するデータ入力部51は、走行履歴データベース33aから出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報と電費情報とを入力する。具体的に例示して説明すると、データ入力部51は、走行履歴データベース33aに蓄積されている車両10の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報と電費情報のうち、例えば、平日である月曜日〜金曜日の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報と電費情報とを選択的に入力することができる。或いは、データ入力部51は、走行履歴データベース33aに蓄積されている車両10の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報と電費情報のうち、例えば、休日である土曜日と日曜日又は祭日の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報と電費情報とを選択的に入力することができる。
【0034】
そして、このように、車両10についての曜日別の出発時刻情報、到着時刻情報及び走行距離情報と電費情報とを入力すると、データ入力部51は、入力した各情報のうち、曜日別の出発時刻情報及び到着時刻情報を出発・到着時刻予測マップ生成部52に出力し、走行距離情報を走行距離予測マップ生成部53に出力し、電費情報をルールカーブ作成部54に出力する。
【0035】
出発・到着時刻予測マップ生成部52は、下記式1を用いて、車両10の平日と休日別の出発予想時刻マップを作成するとともに、車両10の平日と休日別の到着予想時刻マップを作成する。
【数1】

ただし、前記式1中のtjは、データ入力部51によって入力された出発時刻情報が表す出発時刻のうちの早い方からj番目の出発時刻を表すものであり、又、データ入力部51によって入力された到着時刻情報が表す到着時刻のうちの早い方からj番目の到着時刻を表すものである。そして、前記式1中のPtjは、出発時刻tj(j=0,…n)又は到着時刻tj(j=0,…n)の出現累積確率(安全確率)を表す。又、前記式1中のNtjは、出発時刻tj(j=0,…n)又は到着時刻tj(j=0,…n)における度数を表し、NAllは、出発時刻tj(j=0,…n)又は到着時刻tj(j=0,…n)における合計度数を表す。
【0036】
そして、前記式1に従って、例えば、車両10について予測した平日と休日の出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップは図4に示すようになる。この出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップによれば、実線により示す平日の車両10の出発時刻はある時間帯(例えば、8時台)に出発する確率が高いことが理解できる。又、この出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップによれば、破線により示す休日の車両10の出発時刻は大凡満遍なく出発していることが理解できる。このように、出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを作成すると、出発・到着時刻予測マップ生成部52は、作成した出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップのうち、作成した出発予想時刻マップから予測される出発時刻を表す予測出発時間時刻を走行距離予測マップ生成部53に供給する。
【0037】
走行距離予測マップ生成部53は、車両10について、データ入力部51から曜日別の走行距離情報を入力するとともに、出発・到着時刻予測マップ生成部52から予測出発時刻情報を入力する。そして、走行距離予測マップ生成部53は、走行距離情報及び予測出発時刻情報を用いて、下記式2に従って、出発時間帯(すなわち、出発時刻)における最長走行距離を予測する平日と休日別の出発時間帯別予想走行距離マップを作成する。
【数2】

ただし、前記式2中のPhdは、出発時間帯hと、この出発時間帯hにおける距離d(以下、「距離時間帯d」と称呼する。)の出現累積確率(安全確率)を表す。又、前記式2中のNhdは、出発時間帯hと距離時間帯dの度数を表し、Nhは、出発時間帯hの合計度数を表す。
【0038】
そして、前記式2に従って、例えば、車両10について予測した平日の出発時間帯別予想走行距離マップ(例えば、8時、9時、10時)は図5に示すようになる。この出発時間帯別予想走行距離マップによれば、例えば、平日の出発時刻帯である9時台及び10時台に着目してみると、車両10は長距離を走行する確率が存在することが理解できる。
【0039】
ここで、車両10について、出発・到着時刻予測マップ生成部52によって作成された図4に示した平日の出発予想時刻マップに従えば、上述したように、例えば、8時台に出発する確率が高い。すなわち、車両10に関しては、8時台までは距離時間帯dの度数すなわち走行距離情報によって表されるデータが多く収集され、9時台以降では距離時間帯dの度数すなわち走行距離情報が極端に少なくなる。この場合、前記式2に従って計算される出現累積確率(安全確率)Phdは、Nhdすなわち出発時間帯hと距離時間帯dの度数に依存するため、例えば、度数が極端に少なくなる(或いは度数が「0」)状況では、例えば、図5における9時台及び10時台のように、不自然な分布を有するマップが生成される場合がある。
【0040】
ところで、走行距離のような正の値を取る量の分布は、指数分布、ワイブル分布、ガンマ分布等指数分布族や対数正規分布で表されることが多い。又、このような分布を表す際には、混合正規分布等で表すことも有効である。このため、出発時間帯別予想走行距離マップを作成するにあたり、今、時刻tに出発して距離dだけ走行したことを記録したN個のデータ(t1,d1),(t2,d2),…,(tN,dN)が得られている場合を想定し、このデータから、時刻tと距離dの同時確率密度関数f(d,t)を作成することを検討する。尚、時刻tと距離dの同時確率密度関数f(d,t)は、時刻tに出発する確率密度f(t)と、時刻tに出発した場合に距離dを走行する条件付きの確率密度関数f(d|t)の積f(d,t)=f(d|t)f(t)としても表すことができる。そして、f(d,t)又はf(t)とf(d|t)をデータから決定する方法としては、以下に示すように、大きく分類して3種類の方法が考えられる。ここで、これらの方法を用いる場合には、例えば、曜日、季節、気温、天候等の環境変数を勘案して適切にデータを区分した後にそれぞれの分類について処理を行うことが効果的である。更に、これらの環境変数を質的変数として、例えば一般化線形モデル等を用いて種々の環境に対するパラメータをまとめて表すことも有効である。
【0041】
a.頻度法
頻度法は、ある時間ステップ(例えば、1時間)毎にデータを区切り、各時間帯の走行距離情報によって表されるデータの累積分布をテーブルで表すものである。この頻度法では、各時間帯の走行距離情報によって表されるデータの累積分布をテーブルで表すことができるため、計算負荷を小さくして任意の分布を保持できる点で有効である。ただし、データ数が少ないと、例えば、図5で示したように、階段状の粗い分布しか得られない、データが存在しない時間帯では分布が決められない、或いは、少数のパラメータに情報を集約することができないために他の分布との比較や集計が難しくなる等のデメリットも存在する。
【0042】
b.ノンパラメトリックな手法
上述したa.頻度法において、データ数が少ない場合に階段状の粗い分布が得られることを解消する方法として、母集団の分布型に対して一切の仮定を設けないノンパラメトリックな手法を採用することが可能である。この場合、例えば、カーネル密度推定などの特定の分布形を仮定しない方法を採用することにより、任意の分布を滑らかに求めることができる。ただし、このようなノンパラメトリックな手法を採用する場合であっても、少数のパラメータに情報を集約することができないために他の分布との比較や集計が難しくなる等のデメリットも存在する。
【0043】
c.パラメトリックな手法
b.ノンパラメトリックな手法に対して、予め母集団の分布型に対して何らかの仮定を設けるパラメトリックな手法を採用することが可能である。具体的に、このパラメトリックな手法においては、走行距離方向の分布f(d|t)を、指数分布、ワイブル分布、ガンマ分布等の指数分布族、対数正規分布、混合ガウス分布等のパラメトリックな確率分布で表し、そのパラメータを時間刻み毎(時間ステップ毎)に決定する。これにより、走行距離方向にて滑らかな分布が得られるようになる。尚、この場合、複数の分布の和として表すことも有効となる。そして、このパラメトリックな手法では、パラメータの事前分布を与えておくことにより、データ数が少ない或いは「0」(ゼロ)の場合であっても、事前分布に従ったパラメータを決定することができる。ここで、事前分布に関し、例えば、車両10に関するパラメータの情報が多く蓄積された場合、これらのパラメータの分布を事前分布とすることも可能である。これにより、所定の集団別にパラメータを集約することにより、未だデータが「0」(ゼロ)の新規の集団に対して、合理的なパラメータの事前分布を与えることができ、又、新規の集団におけるパラメータはその集団におけるデータが増えることによって緩やかに修正される。
【0044】
具体的に例示して説明すると、例えば、f(d|t)=g(d;at)となるように、パラメータ(ベクトル)atで表される分布を用いて時間帯を24時間に区分し各時間帯(1時間毎)のatを求める場合には、a0,…,a23の事前分布p(a0,…,a23)を考える。この場合において、このパラメータからN個のデータが観測される確率(尤度)Lは、下記式3により表すことができる。
【数3】

そして、前記式3をa0,…,a23について最大化することによって、例えば、図6に示すように、パラメータを決定することができる。
【0045】
又、隣り合う時間帯同士の走行距離分布が滑らかに変化するようにするには、隣り合う時間帯のパラメータの差Δat=at−at+1が「0」(ゼロ)に、又は、比Δat=at/at+1が「1」に近づくような事前分布P(Δat)を与えておけばよい。この場合、例えば、下記式4に示すように、「0」(ゼロ)を中心とする正規分布等を事前分布として与えることができる。
【数4】

【0046】
又、このパラメトリックな手法を採用した場合には、走行距離情報によって表されるデータが1つも存在しない時間帯のパラメータは事前分布のみで決まるようになる。このため、事前分布として、例えば、平均走行距離がほぼ「0」(ゼロ)となり、かつ、パラメータが確率最大となる分布を採用することにより、走行距離情報によって表されるデータ数が1つも存在しない時間帯では走行距離がほぼ「0」(ゼロ)となるように走行距離の分布が自然に選択されるようにすることができる。尚、このようにパラメータを決定するときには、例えば、忘却係数を導入しておき、古いデータほど重みを小さくすることによって偶然発生したデータを影響が長く残ることを排除することができる。
【0047】
更に、この場合、例えば、走行距離がほぼ「0」(ゼロ)となる分布の確率密度はデルタ関数で表わすことができるが、下記式5によって表されるワイブル分布において、尺度パラメータTを非常に小さい正の数に設定することにより、デルタ関数のように振る舞うようにすることができる。
【数5】

ただし、前記式5中のmはワイブル係数である。
【0048】
具体的に、尺度パラメータTの事前分布P(T)として、下記式6及び式7に示す分布を採用するとよい。
【数6】

【数7】

【0049】
ここで、図6を説明しておく。図6は、各時間帯別の走行距離累積度数分布をワイブル分布で近似したものであり、ワイブル分布におけるパラメータにガンマ分布による事前分布を与えた場合を示している。図6からも明らかなように、実線により示す実際の走行距離情報によって表されるデータと破線により示すワイブル分布による近似とを比較すると、ワイブル分布によって良好に近似されていることが理解できる。特に、走行距離情報によって表されるデータが1つも存在しない時間帯では、走行距離が「0」(ゼロ)付近で急激に累積度数が「1」に近付き、適切に、走行距離が「0」(ゼロ)であることを示している。又、9時台及び10時台は、長距離となる走行距離情報によって表されるデータが数点(1点又は2点)存在する場合を示しているが、事前分布によって走行距離が「0」(ゼロ)となるように制約しているため、累積分布としては、走行距離が「0」(ゼロ)付近で急激に増加し、その後緩やかに増加することが理解できる。
【0050】
このように、パラメトリックな手法を採用して、走行距離方向の分布f(d|t)を決定することができれば、この分布f(d|t)を走行距離方向にて積分することにより、出発時刻別の累積度数分布F(d|t)を求めることができる。そして、この出発時刻別の累積度数分布F(d|t)において、任意の所定の確率(以下、「所定の安全確率」と称呼する。)に等しくなる走行距離を出発時刻別に求めることにより、出発時刻別及び安全確率別の担保すべき走行距離を求めることができる。尚、平日と休日別の出発時間帯別予想走行距離マップを作成するにあたっては、上述したa〜cの各手法を組み合わせて実施可能であることは言うまでもない。そして、走行距離予測マップ生成部53は、走行距離情報及び予測出発時刻情報を用いて、平日と休日別の出発時間帯別予想走行距離マップを作成すると、出発時間帯別予想走行距離マップをルールカーブ作成部54に供給する。
【0051】
ルールカーブ作成部54においては、データ入力部51から車両10の電費情報を取得するとともに、走行距離予測マップ生成部53から平日と休日別の出発時間帯別予想走行距離マップを取得する。そして、ルールカーブ作成部54は、取得した出発時間帯別予想走行距離マップに基づき、各時間帯毎に予測されている走行距離を電費情報によって表される車両10の電費で除することによって各時間帯にて必要な電力量(充電量)を推定して決定することにより、図7に示すような、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブを作成する。このように、車両10に対応したルールカーブを作成すると、ルールカーブ作成部54は作成したルールカーブを表すルールカーブ情報をデータ出力部55に供給する。
【0052】
データ出力部55においては、ルールカーブ作成部54から供給されたルールカーブ情報を取得する。そして、データ出力部55は、ルールカーブ情報によって表されるルールカーブを用いて、車両10のバッテリ11を充電する充電計画或いは車両10のバッテリ11から電力を放電する放電計画を精度よく作成して出力する。具体的に、データ出力部55は、ルールカーブ情報によって表されるルールカーブにおいて、図8に示すように、精度よく予測されている推定必要電力量の局所最大値近傍の点(例えば、接点)から、下記式8により表される線分(例えば、接線)を想定し、最も電力が必要な時間帯、言い換えれば、最も車両10がバッテリ11の電力を消費して走行する時間帯までに適切な電力量の充電を完了させる推定最遅充電開始時刻を推定して決定する。尚、下記式9によって表される線分は、局所最大値近傍にてルールカーブに接するか又は常にルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分として設定される。
【数8】

ただし、前記式8の右辺θ(t)は時刻tにおけるバッテリ11への充電可能量を表し、前記式8中のT(t)は時刻tにおける予想気温を表し、前記式8中のVは充電電圧を表し、前記式8中のAは充電電流を表す。従って、データ出力部55は、例えば、本装置30に設けられた図示を省略する外気温センサによって検出される、又は、通信ユニット32による通信によって外部から取得される予想気温T(t)、充放電スタンド40によって車両10のバッテリ11に供給される充電電圧V及び充電電流Aを入力し、これら入力した各値のうちの少なくとも一つを用いて前記式8によって表される線分(例えば、接線)と所定のバッテリ残量との交点となる推定最遅充電開始時刻を決定する。尚、このように決定される推定最遅充電開始時刻は、ルールカーブにおける局所最大値となる時刻までに充電を完了させるときの最も遅い充電開始時刻として推定される。
【0053】
一方、図8に示すように、ルールカーブにおける局所最大値を超えた時間帯においては、走行に必要な推定必要電力量が小さくなる。このため、例えば、車両10のバッテリ11に走行に必要な電力以上の電力が充電されている、すなわち、余剰電力を有している場合には、この余剰電力を、例えば、家屋で利用する電力として放電することもできる。このように、バッテリ11から電力を放電する放電計画も、上述した充電計画と同様に、データ出力部55は、ルールカーブ情報によって表されるルールカーブに基づいて精度よく作成することができる。
【0054】
具体的に、データ出力部55は、ルールカーブ情報によって表されるルールカーブにおいて、図8に示すように、精度よく予測されている推定必要電力量の局所最大値近傍の点(例えば、接点)から、前記式8と同様に構成される下記式9により表される線分(例えば、接線)を想定し、余剰電力が存在する時間帯からの放電が完了する推定最遅放電停止時刻を推定して決定する。尚、下記式9によって表される線分は、局所最大値近傍にてルールカーブに接するか又は常にルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分として設定される。
【数9】

ただし、前記式9の右辺φ(t)は時刻tにおけるバッテリ11からの放電可能量を表す。従って、データ出力部55は、予想気温T(t)、バッテリ11からの放電電圧V及びバッテリ11からの放電電流Aを入力し、これら入力した各値のうちの少なくとも一つを用いて前記式9によって表される線分(例えば、接線)と所定のバッテリ残量との交点となる推定最遅放電停止時刻を決定する。
【0055】
このように、データ出力部55が充電計画における推定最遅充電開始時刻を決定するとともに、放電計画における推定最遅放電停止時刻を決定すると、データ出力部55は、決定した推定最遅充電開始時刻及び推定最遅放電停止時刻を、例えば、液晶表示ユニット35に出力する。これにより、ユーザは、車両10のバッテリ11の充電を開始する時刻と放電を開始する時刻とを極めて容易に確認することができる。従って、ユーザは、例えば、推定最遅充電開始時刻となるまでに車両10のバッテリ11と充放電スタンド40とを電気的に接続し、推定最遅充電開始時刻に充電を開始することによって車両10の走行距離が多くなる時間帯までに走行に必要な電力量のバッテリ11への充電を完了させることができ、走行における不安を覚えることなく確実に車両10を利用して行動することができる。一方、ユーザは、例えば、車両10を走行させた後に車両10のバッテリ11と充放電スタンド40とを電気的に接続しておくことにより、ルールカーブに従って推定最遅放電停止時刻までバッテリ11からの電力の放電を行うことができ、煩わしい操作が不要となる。
【0056】
尚、この場合、ユーザは、上述したように、データ出力部55が決定する充電計画及び放電計画(すなわち、推定最遅充電開始時刻及び推定最遅放電停止時刻の決定)を自動的に実施させることができる。具体的には、ユーザは、入力ユニット34を利用して、本装置30の電子制御ユニット31に対して、例えば、ルールカーブ作成部54によって作成されたルールカーブを表すルールカーブ情報と、データ出力部55によって決定されて出力された推定最遅充電開始時刻及び推定最遅放電停止時刻を表す時刻情報とを、車両10の充放電ユニット20の車両側充放電ECU23に供給(送信)することを指示することができる。この指示に従って、電子制御ユニット31は、通信ユニット32を利用して、ルールカーブ情報及び時刻情報を、充放電ユニット20の車両側充放電ECU23に送信する。
【0057】
車両側充放電ECU23においては、本装置30から送信(供給)されたルールカーブ情報及び時刻情報を取得する。そして、車両側充放電ECU23は、充放電スタンド40の電力受給ECU42に対して、近距離無線通信により、ルールカーブ情報及び時刻情報を送信する。これにより、例えば、自宅における所定の駐車位置に設置された充放電スタンド40の電力受給ECU42は、送信されたルールカーブ情報及び時刻情報を受信し、受信したルールカーブ情報によって表されるルールカーブ及び時刻情報によって表される推定最遅充電開始時刻に従い、電気的に接続された車両10のバッテリ11に対して推定最遅充電開始時刻なると自動的に充電を開始することができる。又、車両10が外出しており、例えば、外出先における所定の駐車位置に設置された充放電スタンド40の電力受給ECU42は、送信されたルールカーブ情報及び時刻情報を受信し、受信したルールカーブ情報によって表されるルールカーブ及び時刻情報によって表される推定最遅放電停止時刻に従い、電気的に接続された車両10のバッテリ11から推定最遅放電停止時刻なるまで自動的に放電を開始することができる。
【0058】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、本装置30の電子制御ユニット31、より詳しくは、ルールカーブ作成部54は、車両10の過去の電力消費に関する情報に基づいて時刻(時間帯)における推定必要電力量の関係を示すルールカーブを精度よく推定して決定することができる。そして、本装置30の電子制御ユニット31、より詳しくは、データ出力部55は、精度よく推定されて作成されたルールカーブに基づいて、車両10を走行させるために必要となる推定必要電力量が最大となる時間帯(時刻)までにバッテリ11への充電を完了させることができる推定最遅充電開始時刻を決定することができる。又、データ出力部55は、精度よく推定されて作成されたルールカーブに基づいて、車両10のバッテリ11が余剰電力を有しているときにバッテリ11から放電させることができる推定最遅放電停止時刻を決定することができる。これにより、ユーザは、極めて正確にかつ確実に車両10を充放電制御することができる。従って、このような充放電制御の対象となる車両10を利用するユーザは、良好なバッテリ11の充電状態で車両を確実に利用することができて、極めて良好な利便性を享受することができる。
【0059】
(1)第1変形例
上記実施形態においては、ルールカーブ作成部54が作成するルールカーブが、図7に示したように、1つの局所最大値を有する場合を説明した。この場合、車両10の走行履歴によっては、図9に示すように、ルールカーブ作成部54が作成するルールカーブが複数の局所最大値を有する場合がある。この場合においても、図9に示すように、データ出力部55は、上記実施形態と同様に、精度よく予測されている推定必要電力量の各局所最大値近傍の点(例えば、接点)から、前記式8により表される線分(例えば、接線)を想定し、最も電力が必要な時間帯、言い換えれば、最も車両がバッテリの電力を消費して走行する時間帯までに適切な電力量の充電を完了させる推定最遅充電開始時刻を推定して決定する。
【0060】
このように、この第1変形例においても、ユーザは、例えば、推定最遅充電開始時刻となるまでに車両10のバッテリ11と充放電スタンド40とを電気的に接続し、推定最遅充電開始時刻に充電を開始することによって車両10の走行距離が多くなる時間帯までに走行に必要な電力量のバッテリ11への充電を完了させることができ、走行における不安を覚えることなく確実に車両10を利用して行動することができる。又、この第1変形例においても、上記実施形態と同様に、所定の駐車位置に設置された充放電スタンド40の電力受給ECU42が、ルールカーブ情報及び時刻情報を受信することによって、推定最遅充電開始時刻になると電気的に接続された車両10のバッテリ11への充電を自動的に開始することができる。従って、この第1変形例においても、車両10を利用するユーザは、良好なバッテリ11の充電状態で車両を確実に利用することができて、極めて良好な利便性を享受することができる。
【0061】
又、ルールカーブに複数の局所最大値が存在する第1変形例においても、車両10バッテリ11が余剰電力を有する場合には、図9に示すように、バッテリ11から電力を放電することができる。ただし、この第1変形例においては、データ出力部55が、上記実施形態と同様に、精度よく予測されている推定必要電力量が最も多くなる局所最大値近傍の点(例えば、接点)から、前記式9により表される線分(例えば、接線)を想定するが、隣接する他の局所最大値近傍から前記式8に従う線分が存在する場合には、これらの交点に対応する時刻(推定放電停止時刻)にて放電を停止するようになる点で若干異なる。
【0062】
このように、この第1変形例においても、ユーザは、例えば、車両10を走行させた後に車両10のバッテリ11と充放電スタンド40とを電気的に接続しておくことにより、ルールカーブに従って推定放電停止時刻までバッテリ11からの電力の放電を行うことができ、煩わしい操作が不要となる。又、この第1変形例においても、上記実施形態と同様に、充放電スタンド40の電力受給ECU42がルールカーブ及び時刻情報によって表される推定放電停止時刻に従い、電気的に接続された車両10のバッテリ11から推定放電停止時刻なるまで自動的に放電を開始することができる。従って、この第1変形例においても、車両10を利用するユーザは、極めて良好な利便性を享受することができる。
【0063】
(2)第2変形例
上記実施形態及び第1変形例においては、ルールカーブ作成部54によって作成されるルールカーブの推定必要電力量が、車両10のバッテリ11のバッテリ容量の上限以下となる場合を想定して説明した。この場合、例えば、バッテリ11の経年劣化等の影響により、図10に示すように、車両10の過去の走行履歴に基づいて作成されるルールカーブにおける推定必要電力量がバッテリ容量の上限を超えてしまう可能性がある。尚、バッテリ容量の上限の変化については、周知の方法に従って推定されるとよい。
【0064】
従って、この第2変形例においては、図10に示すように、ルールカーブ作成部54によって作成されたルールカーブにおける局所最大値の推定必要電力量がバッテリ容量の上限を超えるとき、データ出力部55は、推定必要電力量がバッテリ容量の上限と一致する点から前記式8により表される線分(例えば、接線)を想定し、最も電力が必要な時間帯、言い換えれば、最も車両がバッテリの電力を消費して走行する時間帯までに適切な電力量の充電を完了させる推定最遅充電開始時刻を推定して決定する。又、図10にて図示を省略するが、データ出力部55は、推定必要電力量がバッテリ容量の上限と一致する点から前記式9により表される線分(例えば、接線)を想定し、余剰電力が存在する時間帯からの放電が完了する放電停止時刻を推定して決定する。
【0065】
このように、この第2変形例においても、上記実施形態及び第1変形例と同様に、ユーザは、例えば、推定最遅充電開始時刻となるまでに車両10のバッテリ11と充放電スタンド40とを電気的に接続し、推定最遅充電開始時刻に充電を開始することによって車両10の走行距離が多くなる時間帯までに走行に必要な電力量のバッテリ11への充電を完了させることができ、走行における不安を覚えることなく確実に車両10を利用して行動することができる。又、この第2変形例においても、上記実施形態及び第1変形例と同様に、ユーザは、例えば、車両10を走行させた後に車両10のバッテリ11と充放電スタンド40とを電気的に接続しておくことにより、ルールカーブに従って推定放電停止時刻までバッテリ11からの電力の放電を行うことができ、煩わしい操作が不要となる。又、この第2変形例においても、上記実施形態及び第1変形例と同様に、充放電スタンド40の電力受給ECU42がルールカーブ及び時刻情報によって表される推定最遅充電開始時刻又は推定放電停止時刻に従い、推定最遅充電開始時刻となると電気的に接続された車両10のバッテリ11に自動的に充電を開始したり、電気的に接続された車両10のバッテリ11から推定最遅放電停止時刻(推定放電停止時刻)なるまで自動的に放電を開始することができる。従って、この第2変形例においても、車両10を利用するユーザは、極めて良好な利便性を享受することができる。
【0066】
(3)第3変形例
上記実施形態、上記第1及び第2変形例においては、充放電制御対象が車両10のみである場合を説明した。ところで、例えば、車両10のようなプラグイン電気車両を複数台所有しておりこれらの車両を充電する場合や、契約電力によって商用電源の電力容量が限られる一般家庭では車両10の他に充電を要する家電製品等が存在する場合がある。すなわち、これらの場合においては、例えば、車両10と他の家電機器とを使用するときの優先度、言い換えれば、充電優先度に応じて、充電開始時刻が決定されることが好ましい。このため、この第3変形例においては、車両10を充電機器1とし、家電製品を充電機器2とし、充電機器1(車両10)と充電機器2(家電製品)との優先度の比を2:1に設定した場合を例示して説明する。尚、優先度の比については、ユーザが適宜設定することができることは言うまでもない。
【0067】
尚、この第3実施形態においては、ルールカーブ作成部54は、充電機器2である家電製品のルールカーブを作成する。この場合、ルールカーブ作成部54は、例えば、家電製品から出力される過去の電力の消費に関する情報等に基づいて時刻毎(時間帯)に対して推定される必要電力量の関係を表すルールカーブを生成するとよい。
【0068】
そして、この第3変形例においては、図11に示すように、データ出力部55は、充電機器1と充電機器2のそれぞれのルールカーブについて、推定最遅充電開始時刻を推定して決定する。具体的に説明すると、データ出力部55は、優先度の低い充電機器2のルールカーブの局所最大値近傍の点(例えば、接点)から、図11に示すように、前記式8により表される線分(例えば、接線)を設ける。そして、データ出力部55は、この設けた線分(例えば、接線)と、充電機器1のルールカーブにおける局所最大値となる時刻との交点Xを決定する。更に、データ出力部55は、この交点Xから、図11に示すように、優先度の比に従って前記式8のおける充電可能量θ(t)を1/3とした線分(例えば、接線)を設け、この線分(例えば、接線)と充電機器1のルールカーブにおける局所最大値となる推定必要電力量との交点Yを決定する。そして、データ出力部55は、図11に示すように、この交点Yとなる時刻を充電機器2の推定最遅充電開始時刻として決定する。
【0069】
一方、優先度の高い充電機器1に関しては、データ出力部55は、充電機器1のルールカーブの局所最大値近傍の点(例えば、接点)から、図11に示すように、優先度の比に従って前記式8のおける充電可能量θ(t)を2/3とした線分(例えば、接線)を設ける。そして、データ出力部55は、図11に示すように、この線分(例えば、接線)と充電機器2の推定最遅充電開始時刻との交点Zを決定し、この交点Zから前記式8により表される線分(例えば、接線)を設ける。これにより、データ出力部55は、前記式8によって表される線分(例えば、接線)と所定の最低バッテリ残量との交点が充電機器1の推定最遅充電開始時刻として決定する。尚、この第3変形例における推定最遅放電停止時刻については、上記優先度を考慮した推定最遅充電開始時刻の決定と同様に決定される。
【0070】
これにより、この第3変形例においては、充電を必要とする機器が複数存在し、これらの機器を充電する場合、機器の優先度に応じて、上記実施形態及び第1,2変形例と同様に、適切に充電を完了させることができる。その他の効果については、上記実施形態及び第1,2変形例と同様の効果が期待できる。
【0071】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態及び各変形例においては、ルールカーブ作成部54が生成するルールカーブは、走行距離予測マップ生成部53が、出発・到着時刻予測マップ生成部52によって前記式1に従って作成された出発予想時刻マップと車両10の走行距離とを用いて、例えば、統計処理により作成した出発時間帯別予想走行距離マップを用いて作成するように実施した。これにより、極めて精度よく予測された車両10の利用状況に基づくルールカーブを作成することができるため、データ出力部55によって決定される充放電計画も極めて精度よく決定することができるようにした。
【0073】
この場合、ルールカーブ作成部54が、例えば、出発・到着時刻予測マップ生成部52によって作成される出発予想時刻マップとデータ入力部51から供給された走行距離とを用いてルールカーブを生成するように実施可能であることは言うまでもない。この場合、走行距離情報によって表される走行距離のデータが存在すれば、若干精度が悪化するものの、ルールカーブを作成することができて、データ出力部55がこのルールカーブを利用して推定最遅充電開始時刻や推定最遅放電停止時刻を決定することができる。
【0074】
又、出発・到着時刻予測マップ生成部52によって作成される出発予想時刻マップ及び到着予想時刻マップを用いて、電気的に接続された車両のバッテリを充放電制御することも可能である。すなわち、この場合においては、データ出力部55は、精度よく予測されている到着予想時刻マップを用いて、充放電対象である車両10が所定の駐車位置に駐車されている可能性の高い時刻(すなわち、出現累積確率(安全確率)Pthが所定の安全確率(例えば、90%)以上となる時刻)を特定する。尚、所定の安全確率については、予め設定されるものであってもよいし、適宜変更されるものであってもよい。このように、車両10が所定の駐車位置に駐車されている可能性の高い時刻(時間帯)を特定することにより、データ出力部55は、この特定した時刻以降(時間帯)に車両10のバッテリ11に電力を供給して充電したり、車両10のバッテリ11から電力を放電させたりすることをユーザに提示することができる。
【0075】
一方で、データ出力部55は、精度よく予測されている出発予想時刻マップを用いて、充放電対象である車両10が所定の駐車位置から出発する可能性の高い時刻(すなわち、出現累積確率(安全確率)Pthが所定の安全確率(例えば、90%)以上となる時刻)を特定する。このように、車両10が所定の駐車位置から出発する可能性の高い時刻(時間帯)を特定することにより、データ出力部55は、この特定した時刻(時間帯)までに車両10のバッテリ11に電力を供給して充電したり、車両10のバッテリ11から電力を放電させたりすることをユーザに提示することができる。
【0076】
又、上記実施形態及び各変形例においては、データ出力部55によって推定最遅充電開始時刻や推定最遅放電停止時刻を決定されると、これら各時刻までに充放電スタンド40と車両10のバッテリ11とを電気的に接続しておき、推定最遅充電開始時刻や推定最遅放電停止時刻に充電が開始されたり放電が停止されるように実施した。この場合、何らかの事情により、ユーザ(或いは充放電スタンド40の電力受給制御ECU42)が、特に、決定された推定最遅充電開始時刻に充電を開始しない場合や推定最遅充電開始時刻よりも後に自ら充電開始時刻を設定する場合には、本装置30の電子制御ユニット31(より詳しくは、データ出力部55)は、液晶表示ユニット35を介して、バッテリ11に推定必要電力量となるまで十分に充電できない可能性があることを報知することができる。
【0077】
更に、この場合、本装置30の電子制御ユニット31(より詳しくは、データ出力部55)が液晶表示ユニット35を介して、バッテリ11に推定必要電力量となるまで十分に充電できない可能性があることを報知した後、ユーザ自らが充電開始時刻を設定できないように実施することも可能である。これにより、確実に、充電により、推定必要電力量を確保することができる。
【符号の説明】
【0078】
10…車両、11…バッテリ、12…インバータ、13…走行用モータ、14…モータ制御ユニット、20…充電システム、21…受給電コネクタ、22…AC/DC変換器、23…車両側充放電ECU、24…充放電制御スイッチ、25…SOC検出部、30…充放電支援装置、31…電子制御ユニット、32…通信ユニット、33…記憶ユニット、33a…車両走行履歴データベース、34…入力ユニット、35…液晶表示ユニット、40…充放電スタンド、41…充放電用コンセント、42…電力受給ECU、51…データ入力部、52…出発・到着時刻予測マップ生成部、53…走行距離予測マップ生成部、54…ルールカーブ作成部、55…データ出力部、K…充放電用接続ケーブル、K1,K2…プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に設けられたバッテリの充電又は放電を支援するための制御手段を備えた充放電支援装置において、
前記制御手段は、
前記機器における過去の前記バッテリの電力消費に関する情報を取得し、
この取得した前記機器における過去の前記バッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブを作成し、
前記作成したルールカーブを用いて前記バッテリへの充電開始時刻又は前記バッテリからの放電停止時刻を推定して決定し、
前記推定して決定した前記充電開始時刻又は前記放電停止時刻を出力することを特徴とする充放電支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載した充放電支援装置において、
前記制御手段は、
前記作成したルールカーブを用いて、前記ルールカーブにおける局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記バッテリへの充電開始時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅充電開始時刻、又は、前記バッテリからの放電停止時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅放電停止時刻を推定して決定することを特徴とする充放電支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載した充放電支援装置において、
前記制御手段は、
前記作成したルールカーブに複数の局所最大値が存在するとき、各局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定し、各線分によって推定して決定される各最遅充電開始時刻のうちの最も早い時刻となる最遅充電開始時刻、又は、各線分によって推定して決定される各最遅放電停止時刻のうちの最も遅い時刻となる最遅放電停止時刻を推定して決定することを特徴とする充放電支援装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載した充放電支援装置において、
前記制御手段は、
前記作成したルールカーブによって表される推定消費電力量が前記バッテリにおけるバッテリ容量の上限を超えるときには、前記推定必要電力量が前記バッテリ容量の上限と一致する点を通か又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記最遅充電開始時刻、又は、前記点を通か又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を設定して、前記最遅放電停止時刻を推定して決定することを特徴とする充放電支援装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のうちのいずれか一つに記載した充放電支援装置において、
前記制御手段は、
前記最遅充電開始時刻を推定して決定するための前記線分を、
前記バッテリへの充電可能量、前記バッテリの充電時における予想気温、前記バッテリに供給する充電電圧及び前記バッテリに供給する充電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定し、又は、
前記最遅放電停止時刻を推定して決定するための前記線分を、
前記バッテリによる放電可能量、前記バッテリの充電時における予想気温、前記バッテリから供給する放電電圧及び前記バッテリから供給する放電電流のうちの少なくとも一つを用いて設定することを特徴とする充放電支援装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか一つに記載した充放電支援装置において、
前記機器は外部電源からバッテリを充電するプラグイン式電気車両であり、
前記制御手段は、
前記プラグイン式電気車両における過去の前記バッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブを作成することを特徴とする充放電支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載した充放電支援装置において、
前記プラグイン式電気車両における過去の前記バッテリの電力消費に関する情報は、
前記プラグイン式電気車両が所定の駐車位置から出発した時刻を表す出発時刻情報及び前記プラグイン式電気車両が前記所定の駐車位置に到着した時刻を表す到着時刻情報と、前記出発時刻情報によって表される出発時刻に前記プラグイン式電気車両が前記所定の駐車位置を出発してからの走行距離を表す走行距離情報のうちのいずれかであることを特徴とする充放電支援装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか一つに記載した充放電支援装置において、
前記制御手段は、
複数の前記機器におけるそれぞれの過去の前記バッテリの電力消費に関する情報に基づいて、各時刻に対してその時刻までに担保が必要となる推定必要電力量の関係を表すルールカーブをそれぞれ作成し、
前記複数の機器を使用するときの優先度に応じて、前記作成したそれぞれのルールカーブを用いて前記バッテリへの充電開始時刻又は前記バッテリからの放電停止時刻を推定して決定し、
前記推定して決定した前記充電開始時刻又は前記放電停止時刻を出力することを特徴とする充放電支援装置。
【請求項9】
請求項8に記載した充放電支援装置において、
前記制御手段は、
前記作成した各ルールカーブにおける局所最大値近傍にて前記ルールカーブに接するか又は常に前記ルールカーブによる推定必要電力量よりも大きな値を有する線分を前記複数の機器の優先度に応じて設定して、前記最遅充電開始時刻、又は、前記最遅放電停止時刻を推定して決定することを特徴とする充放電支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−51851(P2013−51851A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189386(P2011−189386)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】