説明

充水機能付きバタフライ弁

【課題】配管への充水時に流体を供給する充水機能付きバタフライ弁を提供する。
【解決手段】弁箱1の内周に形成された弁シール部20と、弁棒11を介して全閉状態で弁シール部20と摺接する弁体10とを有し、弁体10の周縁部10aが所定の角度、回転する間、摺動可能な延設部22が弁シール部20から延設してあり、弁体10の回転により延設部22に形成の通水孔25から充水を流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管への充水時に流体を供給する充水機能付きバタフライ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管の敷設時における初期充水時および再充水時においては、急激な充水によって満管状態にするとウォーターハンマー等によって配管が破損することがあるので、配管の途中に設けたバタフライ弁を小開度に開栓して小流量で下流側の管路に充水していた。
しかしながら、一般的なバタフライ弁は小開度における流量制御が困難であり、定流量供給することができず、充水開始から満管状態になるまでの必要時間を予め算出することは困難であった。
【0003】
この対策として、引用文献1には、弁体にディスクテール部を設け、そのディスクテール部に通水孔を形成し、弁体の開度と損失係数との関係において、通水孔から充水する際に、弁体の開度の変化に対して損失係数がほぼ一定値となる横這い領域が存在する充水機能付きバタフライ弁が開示してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-234071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記バタフライ弁は、充水するために、弁体に通水孔が形成してある構造であるため、弁体を加工する必要がある。
そこで、本願は、弁体を加工するのではなく、弁箱に通水孔を形成して、同じ機能を発揮する充水機能付きバタフライ弁を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の充水機能付きバタフライ弁は、弁箱の内周に形成された弁シール部と、弁棒を介して全閉状態で弁シール部と摺接する弁体とを有している。また、弁体の周縁部が、所定の角度、回転する間、摺動可能な延設部が前記弁シール部から弁体の回転方向に延設してある。又、その延設部には、通水孔が形成してあり、前記弁体の回転により前記通水孔から充水を流す。
又、請求項2の充水機能付きバタフライ弁は、請求項1の充水機能付きバタフライ弁であって、前記弁体の周縁部が、延設部の表面に摺動している間、通水孔による充水が通過する通過面積が一定であるので、通水孔を介して流れる充水量はほぼ同じである。
又、請求項3の充水機能付きバタフライ弁は、請求項1の充水機能付きバタフライ弁であって、通水孔の平面幅が延設部の先端部に向けて幅広に形成してあるあることによって、前記弁体の周縁部が先端部に向けて回転すると、通過面積からの充水量が増大する。
【発明の効果】
【0007】
本願の充水機能付きバタフライ弁は、弁箱の内周に通水孔が形成してあるので、簡便に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】充水機能付きバタフライ弁の正面断面図(図2のC〜C断面図)である。
【図2】充水機能付きバタフライ弁の平面断面図(図1のA〜A断面図)である。
【図3】弁体と弁シール部の拡大図である。
【図4】図2のB〜B断面図である。
【図5】充水機能付きバタフライ弁の作用を説明する弁体と弁シール部および延設部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を図面を参照して説明する。図1は正面断面図(図2のC〜C断面図)、図2は平面断面図(図1のA〜A断面図)、図3は弁体10と弁シール部20の拡大図、図4は図2のB〜B断面図、図5は作用を説明する弁体10と弁シール部20および延設部22の拡大図である。尚、図1における弁体は全開時であり、図2は弁体10が全閉状態である。又、図4は弁体がない状態の図であり、9、9は弁棒11を取り付ける貫通孔である。
【0010】
本願のバタフライ弁は適宜の材質で形成の弁箱1と弁体10で構成され、前記弁箱1は円筒状であり、その両端にフランジ2を備え、上流側の配管(図示略)と下流側の配管(図示略)に接続される。又、弁箱1の内部には、上流側から下流側に流れる流体を停止したり、流したりする円形状の弁体10が、弁棒11の軸心より偏心して回転自在に配置してある。
尚、前記弁棒11は弁箱1の下部に設けてあるパッキン12、軸受け体13、受けフランジ14等で構成の軸受け部で支持される一方、前記弁棒11は弁箱1に取り付けてあるパッキン6で嵌挿され、弁箱1に形成のフランジ5とフランジ7を介して、操作端として弁箱1から突出形成してある。
【0011】
円筒状の弁箱1の内周には、前記弁体10の周縁部10aと摺接して流れを全閉するゴム等の材質の弁シール部20が形成してある。
又、前記弁箱1の左右端において、弁シール部20から弁体10の回転方向に、即ち、片方は下流側方向に、もう一方は上流側方向に延設部22がそれぞれ延設してあり、その延設部22の表面22aは前記弁体10の周縁部10aと所定の角度、回転する間、摺動する。
又、それらの延設部22には、通水孔25が、中心線を挟んで上下対称位置に形成してあり、その通水孔25の形状は、平面視、延設部22の表面22aの形状と同じ湾曲状の側面部25aとで幅(W)の湾曲状の四角状であり(図3参照)、その高さ(H)(図1参照)、長さ(L)(図3参照)の直方体に形成してある。
従って、回転する弁体10の周縁部10aが長さ(L)の延設部22を摺動している間において、通水孔25を介して流れる通過面積(W×H)は一定であり、通水孔25は、その損失係数がほぼ一定になる横ばい領域として形成されている。
【0012】
次に、前記通水孔25を用いて、充水するときの作用について、図3、図5を参照して説明する。
弁体10の周縁部10aが弁シール部20と摺接すると、上流から下流に流れる流体が停止の全閉である(図3)。
その全閉状態から弁棒11を介して弁体10を開方向(時計方向)に操作すると、弁体10の周縁部10aは延設部22の表面22a(長さL)と摺動している間、通水孔25を介して通水する通過面積(W×H)は同じであるため、ほぼ同じ充水量が流れる。
【0013】
そして、更に、弁棒11を介して弁体10を開方向に操作すると、弁体10の周縁部10aは延設部22の先端部22bから離脱して、以後の操作は充水を実施するのではなく、通常の開閉弁として作用する。
【0014】
尚、前記通水孔25は左右に形成してあるが、片方のみに形成してもよい。
また、前記通水孔25の平面幅(W)は、弁体10の周縁部10aが延設部22の表面22a(長さL)と摺動している間、同じであるが、例えば、延設部22が弁シール部20から先端部22bに到るに従って、前記平面幅(W)を順次幅広に形成することによって、通水孔25を介して通水する通過面積(W×H)は順次大きくなり、充水量を順次増加させることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 弁箱
10 弁体
10a 周縁部
11 弁棒
20 弁シール部
22 延設部
22a 表面
25 通水孔
25a 側面部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱の内周に形成された弁シール部と、弁棒を介して全閉状態で弁シール部と摺接する弁体とを有し、
前記弁体の周縁部が、所定の角度、回転する間、摺動可能な延設部を前記弁シール部から弁体の回転方向に延設し、
前記延設部に通水孔を形成し、
前記弁体の回転により前記通水孔から充水を流すことを特徴とする充水機能付きバタフライ弁。
【請求項2】
請求項1の充水機能付きバタフライ弁であって、
前記弁体の周縁部が、延設部の表面に摺動している間、通水孔による充水が通過する通過面積が一定であることを特徴とする充水機能付きバタフライ弁。
【請求項3】
請求項1の充水機能付きバタフライ弁であって、
通水孔の平面幅が延設部の先端部に向けて幅広に形成してあるあることによって、前記弁体の周縁部が先端部に向けて回転すると、通過面積からの充水量が増大することを特徴とする充水機能付きバタフライ弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−82936(P2012−82936A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231386(P2010−231386)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(390017581)幡豆工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】