説明

充電式バッテリ用の水酸化ニッケル電極

【解決手段】水酸化ニッケル電極用の水酸化ニッケル粒子は過硫酸ナトリウム又はカリウムのような強酸化剤のアルカリ性溶液を使用して処理し、表面の水酸化ニッケル構成を変性させてよい。結果として変化された表面構成は水酸化ニッケルから形成された電極に種々の面で有益であると発見されている。水酸化ニッケル粒子表面のコバルト化合物が参加する結果、ここに記述されるようなニッケル電極の高度の信頼性および容量使用率に重要な役割を果たす高度に導電性のコバルト化合物が得られるものと信じられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[他の出願との関係]
本出願は米国特許法U.S.C. 119(e)により、2008年2月7日に提出され、米国特許仮出願61/065,079号に基づいて優先権を主張するものであり、2009年2月4日に提出され、Mingming Geng et al.を発明者とする米国特許出願12/365,658号の一部継続出願として2009年4月29日に“NICKEL HYDROXIDE ELECTRODE FOR RECHARGEABLE BATTERIES"の題で出願された米国特許出願12/432,639号を基に優先権を主張するものである。上記の文献はその内容の全体をすべての目的に於いて本願に合同されるものとする。
【背景技術】
【0002】
本発明は一般的に充電式バッテリに関し、殊にニッケル陽極の構成及び製法に関する。
【0003】
近年における経済界の動向は、殊に電気自動車やパワー用具への応用のために、高パワー高エネルギー密度の充電式バッテリの要求度が高まって居ることを示唆している。水酸化ニッケル電極を使用するある種の水性バッテリはこのような要求に応じる適宜な高エネルギ密度及び更に高パワーを供給することが可能かも知れない。水酸化ニッケル電極はニッケル金属水素化物バッテリ、ニッケル−カドミウムバッテリ及びニッケル−亜鉛バッテリ内での陽極として使用されて来た。電極には典型的に水酸化ニッケル(その酸化された形態であるオキシ水酸化物を含む)、ニッケル粉末、及び結合物質が含まれる。ニッケル電極の導電性を増加させるためにコバルト金属及び/又はコバルト化合物が含まれることもある。不幸にして、コバルトはある条件のもとでは陰極に移動し、殊に高パワーのニッケル−亜鉛バッテリの場合、水素の発生とかそれに関係する問題を引き起こす。
【0004】
高パワー高エネルギー密度への要求度が増加するにつれ、水酸化ニッケル電極の構成及び関連する製造方法はその性能について重要なものとなる。
【発明の概要】
【0005】
発明のある実施形態において、水酸化ニッケル電極には水酸化ニッケル粒子、コバルト又はコバルト化合物、及びニッケル粉末が含まれる。水酸化ニッケル粒子には一つ以上の原子価(II及び/又はIII)の酸化物及び/又は水酸化物が含まれてもよい。水酸化ニッケル粒子は酸化及び/又は水酸化コバルトの薄膜でコーティングされる場合もある。これらにはある量の酸化亜鉛が含まれてもよい。ここに記載されるある実施形態において、水酸化ニッケル粒子(コバルト化合物の存在の有無に拘わらず)の表面層は、水酸化ニッケルの表面組織を変化するように、ナトリウム又はカリウムの過硫酸塩のような強酸化剤のアルカリ溶液を使用して処理される。その結果として変性された表面組織は、水酸化ニッケルから形成された電極に有益であることが知られている。変性された表面組織は陽極内の水酸化ニッケルとコバルト金属及び/又はコバルト化合物の表面間反応を容易にし、電解質と接触の間にコバルトが陽極から去ることを抑制するものと信じられる。この点において、水酸化ニッケル粒子内のコバルト(及び亜鉛)化合物が高温においてアルカリ性のバッテリ電解質に溶解するのを抑制するのかも知れない。更に、水酸化ニッケル粒子の表面におけるコバルト化合物の結果、ここに記載される如く、ニッケル電極の高度の信頼性、高度の安定度及び高度の容量利用において重要な役割を果たす高伝導度のコバルト化合物が得られると信じられる。
【0006】
此処に記載される陽極は、セルの製造、浸潤、及びサイクリングの過程において、最小限のコバルトの溶解を示す。充電式ニッケル−亜鉛バッテリにおいて、陽極から亜鉛電極へのコバルトの移動が減少すれば、自己放電が著しく減少し、従って信頼性が増加する。本発明を使用するニッケル−亜鉛バッテリも、サイクリングに当たって容量の残存に著しい改善を示す。
【0007】
一面において、本発明はバッテリ用の陽極の製法に関するものであり、この方法は以下の工程によって特徴付けされる:(a)水酸化物溶液と強酸化剤とを最低約90℃の温度で水酸化ニッケルと混合して変性水酸化ニッケルを生成する工程;(b)この変性水酸化ニッケルを(a)の結果として得られる混合物から分離する工程;(c)この変性水酸化ニッケルから成る電極混合物を準備する工程;及び(d)この電極混合物を陽極に合同させる工程。ある実施形態において、この強酸化剤とは過マンガン酸化合物、過塩素酸化合物、過硫酸化合物、及び/又はオゾンである。ある実施形態において、(a)の工程は約90℃から150℃の温度で行われ、叉、ある場合には約5分から200分行われる。
【0008】
ある場合において、水酸化ニッケルは、酸化コバルト、水酸化コバルト、 及び/又はオキシ水酸化コバルトのようなコバルト化合物で覆われた水酸化ニッケル粒子から成る粉末である。このコバルト化合物は約1重量%まで水酸化ニッケル粉末から成るものでよい。コバルトで覆われたこのような粒子は、水酸化ニッケルを水酸化アルカリ金属とコバルト塩溶液に混合して生成されてよい。コーティングは約40℃と約60℃の間の温度で実施されてよい。
【0009】
分離の工程は(a)変性水酸化ニッケルを洗浄する工程;及び(b)この 変性水酸化ニッケルを乾燥する工程を含むものでよい。ある実施形態における分離の工程は(a)変性水酸化ニッケルを濾過する工程;及び(b)濾過された変性水酸化ニッケルを洗浄する工程を含むものである。
【0010】
上記の工程で得られる陽極は、種々の実施形態において、変性水酸化ニッケルを重量で約60から90%、及びコバルト金属及び/又はコバルト化合物を約10%まで含むものでよい。特別な一例において、このコバルト化合物は酸化コバルト、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト及び/又はこれらの組み合わせである。
【0011】
別の一面において、本発明は以下の要素で特徴付けられるガルバニ電池に関するものである :(a)陰極;(b)水酸化ニッケルの陽極;(c)陽極と陰極の間に設置され、両者間の接触を防止するセパレータ;及び(d)陰極、陽極、及びセパレータと接触する電解質。水酸化ニッケルの陽極は(i)平均として粒子のバルクに存在するより高度の酸化状態にあるニッケルから成る変性表面を有する水酸化ニッケル粒子;及び(ii)コバルト金属及び/又はコバルト化合物とを含むものでよい。種々の実施形態において、このコバルト化合物は酸化コバルト、水酸化コバルト、及び/又はオキシ水酸化コバルトである。ある場合において、この水酸化ニッケル粒子はコバルト化合物で覆われたものであり、このコーティングの中のコバルト化合物は重量で少なくとも約90%は高度に酸化されたコバルトである。
【0012】
ある実施形態において、水酸化ニッケルの陽極には変性表面を有する水酸化ニッケル粒子が約60から95重量%含まれる。陽極の中に、コバルト金属及び/又はコバルト化合物は各々約10重量%のレベルまで存在してよい。更なる実施形態においては、陽極にはニッケル金属粉末、Y23,Ca(OH)2,及び結合剤の中の一種以上が含まれる。
【0013】
ある好ましい実施形態において、陰極は酸化亜鉛電極であり、結果として得られるセルは放電レート約5C以上でサイクル寿命少なくとも約500サイクルが達成される。酸化亜鉛陰極はコバルトを約10ppm以下含むことが好ましい。コバルトのこの低レベルは、此処に記載される変性陽極を使用することで達成され得る。ある場合において、陽極は電解質がアルカリ電解質であり、室温において電解質への溶解度が有意義的な程度でないことで特徴付けされる。
【0014】
これら、及びその他の特徴及び利点については、以下図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】典型的なニッケル−亜鉛セルにおいて観察される亜鉛及び水酸化ニッケル電極の充電効率のミスマッチを示す充電効率図である。
【図2】種々の実施形態における水酸化ニッケル安定化工程のフロー図である。
【図3A】本発明の実施に適当なニッケル−亜鉛バッテリセルの分解立体図である。
【図3B】本発明の実施に適当な組み立てられたニッケル−亜鉛バッテリセルの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による陰極−セパレータ−陽極のサンドイッチ構成の各層を示すものである。
【図5】此処に記述されるように酸化された水酸化ニッケルが存在するとしない場合のセルの形成曲線である。
【図6】図5のセルの充電図である。
【図7】図5のセルを10Aで放電する場合の放電容量を示す図である。
【図8】図5のセルを30Aで放電する場合の放電容量を示す図である。
【図9】陽極の膨張をセルサイクルの関数で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
此処に記述される本発明の実施形態はあるタイプのニッケル含有バッテリセルの陽極に関する。以下示される詳細な説明が例示の為であって開示される陽極の応用の範囲を限定する為のものでないことは、当業者に理解されることであろう。例えば、この電極とは、ニッケル−亜鉛、ニッケル−カドミウム、及びニッケル−金属水素化物を含む種々のバッテリ化学組成に使用可能である。
【0017】
[概論]
種々の実施形態において、陽極は高度に酸化された表面を有する水酸化ニッケル粒子を含むものである。このような表面は水酸化ニッケル粒子を強酸化剤で処理して生成できる。此処に記載されるような水酸化ニッケル粒子を有する陽極を使用して製作された充電式セルは、以下の特徴の中の一つ以上を有することが知られて居る:長期間の貯蔵寿命、中から大容量において長期間のサイクル寿命、低インピーダンス、高パワー密度、及び高レート応用への適性。
【0018】
従来例のニッケル陽極には、コバルトをコバルト金属及び/又は酸化コバルトとして含むものもある。このコバルトは電極及びセルの低インピーダンスを維持する導電性マトリクスの一部としての役を果たすものである。特に 水酸化ニッケル粒子の表面におけるオキシ水酸化コバルトは電極の使用及びレート能力を改善する導電性マトリクスを提供するものである。溶解されたコバルトは一回目の充電又は形成工程の前、あるいはその期間中陽極から移動するのかも知れないとされて居る。コバルトのかような運動は有用的な材料の陽極からの損失、それに関する出費及び/又はインピーダンスの増加を意味するのみか、陰極のようなその他のセルの部品の性能に抵触することになりかねない。
【0019】
ニッケル−亜鉛セルは、陽極から陰極へのコバルトの運動の影響が殊に著しいセルタイプの一つである。ニッケル−亜鉛バッテリはニッケル−カドミウムバッテリに変わって高エネルギー密度及び高パワーを供給するものである。このセルはニッケル−カドミウムバッテリの理想的な代用物として推進されて居る。これは環境に優しく、ニッケル−カドミウムバッテリより性能が優秀であり、更に、同じ製造ラインで製造可能である。
【0020】
充電式亜鉛電極は歴史的に亜鉛の樹枝状成長、亜鉛電極の変形、亜鉛電極の膨張など、充放電サイクル数を限定する問題を抱えて居る。最近の進歩によると、最良のニッケル−カドミウム及びニッケル金属水素化物技術に競合的なサイクル寿命、例えば1000以上の高レート充放電サイクルが密閉円筒形態で達成されている。
【0021】
可溶性コバルト種はこのタイプのバッテリに殊に有害なことがある。陽極から亜鉛陰極へとの可溶性コバルト種の移動で陽極内のコバルトの量が減少し、導電性マトリクスが劣化する。導電性マトリクス内での減少の結果、バッテリのインピーダンスは増加する。コバルトが陽極から移動する更なる結果としてコバルトが亜鉛電極に合同され、ここでバッテリの使用及び保存期間において水素発生のレートを増進させることになる。この結果複数セルのバッテリにおけるインバランス、樹枝状短絡の促進などとなる。
【0022】
ニッケル−亜鉛電気化学セルの1.74V開回路高電位は水素発生の問題の原因の一部である。これが有意義的な技術的有利を齎すことは勿論である。電位への要求を満たすために必要なセルの数が減少するので、高電位バッテリパックのサイズが減少可能である。開回路高電位は亜鉛電極の負の酸化還元電位の結果であるが、この電位での運行は電極の腐敗作用による水素発生の可能性を増加する。その為、亜鉛陰極の良好な作用にはコバルトのような水素発生を促進する汚染物質の排除がかかって居る。セルの製造にあたっては、充電や放電が行われる前に陽極と陰極が電解質と接触する。数時間かかることもあるこの初回の「浸潤」の段階において、陽極からのコバルト種のいくらかは電解質に溶解し、陰極を汚染することがある。初回の「形成」充電において、正の水酸化ニッケル内のコバルト金属又はコバルト化合物はアルカリ性電解質に比較的不溶性の導電性オキシ水酸化コバルトに変化する。このオキシ水酸化コバルトは陽極が充電する電位を低下させて充電効率を促進し、それによって発生酸素の量及び充電の間に起こり得るその他の寄生的反応をも減少させる。このオキシ水酸化コバルトは過放電の時には不幸にして還元して水酸化コバルトになり、これは電解質に溶解し亜鉛電極に入り込むことがある。此処に記載の構成及び製造方法によると陽極内のコバルトの溶解する傾向が減少する。従って、本発明は充電効率、容量、及びサイクリング能力を向上させる。
【0023】
アルカリ性電解質は亜鉛樹枝状成長を最小化する目的で発展されたものであるが、その効果は亜鉛電極内のコバルト汚染によって減少されるかもしれないことに留意されるべきである。これらアルカリ性電解質のあるものは"Electrolyte Composition For Nickel?Zinc Batteries"と題するJeffrey Phillipsの米国特許公開US2006/0127761号に開示されて居り、これはそのすべてをあらゆる目的において本願に参照して合同するものとする。その他の有用なセルのデザインの特徴は"Method of Manufacturing Nickel Zinc Batteries"と題するJeffrey Phillips et al.の米国特許公開US2006/0207084号(2006年3月1日出願の出願番号11/367,028)及び"Nickel Zinc Battery Design"と題するJeffrey Phillips et al.の米国特許公開US2006/0240317A1号(2005年4月26日出願の出願番号11/116,113)に記述されて居り、これらはそのすべてをあらゆる目的において本願に参照して合同するものとする。
【0024】
アルカリ性セル内の水酸化ニッケルの充電反応は以下の如くである:
Ni(OH)2+OH-←→NiOOH+H2O+e- (1)
充電効率又はニッケル陽極の利用は酸素発生作用に影響されるが、これは以下の反応で制御される:
4OH-→2H2O+O2+4e- (2)
【0025】
充電作用の期間中、充電作用の目的で電気化学セルに与えられた電流の一部は寄生的酸素発生反応の消費されてしまう。この酸素発生反応は通常電気化学セルが約50−75%充電された時点で開始し、セルがフルに充電されるに近づくにつれて、充電電流のより多くの部分に相当することになる。ニッケル電極の充電効率は温度の増加と共に低下し、高温において酸素発生が増加する。
【0026】
ニッケル電極の充電効率及びサイクリング能力はコバルト薄膜の無欠陥性や充放電時に起こる拡張や収縮による水酸化ニッケル粒子の割れ防止に依存する。これらの要因は両方とも表面の水酸化ニッケル及びコバルト被覆層の反応の性質に影響される。
【0027】
充電式亜鉛陰極において、最初の電気化学的活性物質は酸化亜鉛粉末又は亜鉛と酸化亜鉛の混合粉末である。酸化亜鉛はアルカリ性電解質の中に溶解して亜鉛酸塩(Zn(OH)42-)を生成し、これは充電作用の時に亜鉛金属に還元される。亜鉛電極におけるこの亜鉛酸塩反応は以下に示すものである:
ZnO+2OH-+H2O→Zn(OH)42- (3)
充電反応は以下のように示される:
Zn(OH)42-+2e-→Zn+4OH- (4)
【0028】
そして、ニッケル−亜鉛バッテリ反応は以下のように示される:
Zn+2NiOOH+H2O=ZnO+2Ni(OH)2 (5)
【0029】
通常のデザインでは亜鉛電極が電量的過剰の状態で存在するので、ニッケル−亜鉛バッテリの過充電の結果として水酸化ニッケル電極の過充電となる。亜鉛が過剰に存在するのは、内部で発生する酸素を亜鉛電極内で容易に消費するためである。ニッケル−亜鉛バッテリの内部でのガス圧の原因は通常陽極に置ける緩慢な再結合による亜鉛の腐食の時に発生する水素の蓄積とされる。陽極における酸素又は陰極における水素の過剰発生は共にセルを損傷する可能性がある。酸素の過剰な局所的再結合及び急速な腐食で活性亜鉛物質は分離し、亜鉛を可溶化し、セルの電気化学的バランスを妨げることになることがある。アルカリ性電解質内での亜鉛腐食反応は以下のように示される:
【0030】
2Zn+2KOH+2H2O→K2Zn(OH)4+H2 (6)
バッテリの充電過程中の水酸化ニッケル電極における酸素の発生も亜鉛の腐食を加速する。この場合、亜鉛腐食の反応は以下のように示される:
2Zn+4KOH+2H2O+O2→2K2Zn(OH)4 (7)
【0031】
このように、ニッケル−亜鉛バッテリの陽極内で酸素が発生すると局地的な亜鉛の分解度が増加する。充電工程の時、陰極においては対応する亜鉛酸塩の還元が進行するが、これら両方の工程は異なる領域で起こることが出来る。
【0032】
商業的使用のための密閉されたニッケル−亜鉛セルは、極端な乱用の場合を例外としてセルの通気がないよう内圧の発生は最低限にとどめるべきものである。極端な温度(例えば60℃)で一ヶ月かそれ以上の期間貯蔵しても過剰な内圧が発生して安全用通風孔を開けるものであってはならない。デザインが良好な水酸化ニッケル電極はバッテリの内部水素を消費して内圧を最低にする。過硫酸ナトリウム(又はカリウム)で処理されたコバルトで被覆された水酸化ニッケル電極は効率的にバッテリのガッシングを減少することが出来る。
【0033】
ニッケル−亜鉛バッテリにおいて亜鉛電極は水酸化ニッケル電極に較べて導電性が良好であり、活性化分極が少ない。図1は典型的なバッテリ電極内部DC抵抗を0.2C放電電流(0.5Cパルス電流を5秒間)の充電のサブCバッテリ状態の関数として示すものである。ここに示されるように、水酸化ニッケル陽極のDC抵抗の値は放電に亘って略倍加する。放電の終わりに当たって、陽極のDC抵抗は殊に陰極に比較して急速に増加する。このように、ニッケル−亜鉛バッテリの高レートの充放電性能は主としてニッケル電極の作用及び導電性によって決定される。その結果、水酸化ニッケル金属を使用する多くの商業的応用においてフルに近い点まで充電あるいは放電することは出来ない。そのようにすると、サイクル寿命を劇的なほどに損なうことになる。
【0034】
此処に記載されるある実施形態においては、水酸化ニッケル又はコバルトで被覆された水酸化ニッケル粒子の表面構造及び構成を変化させることで水酸化ニッケル電極の高レート充電及び放電能力が改善される。殊に、此処に記載されるセルは高電荷アクセプタンスとなる。更にある実施形態において、此処に記載されるセルは相当する水酸化ニッケル電極を使用する従来例のセルより高利用度で運行が可能である。この観点にあって、本発明はハイブリッドの発明の使用に有意義であり、非常に高レベルの電荷入力と出力を必要とするハイブリッド電気自動車のパワー源としての役を果たすこが出来る。
【0035】
ある実施形態において、此処に記載されるニッケル−亜鉛セルは改善されたサイクル寿命及び電気的サービス性能を供するものである。例えば、これらのセルはより高いバッテリ放電電位、より高い放電容量、より低い内部抵抗、及びより高レートの放電機能を発揮する。ある実施形態において、開示されるセルは例えば約15Cの高レート放電電流で長いサイクル寿命(少なくとも約250サイクル)を有する。この改善された性能を実現する一方法では水酸化ニッケル粒子が高温の場合であっても水酸化カリウムのアルカリ性電解質に露出される時これらの粒子の格子の中でのコバルトの溶解度が減少する。ある実施形態でのその他の直接的利点は、亜鉛腐食の減少とバッテリガッシング特性の低下である。ある場合において、此処に記載されるセルは過充電条件に対しての耐久力が改善されて居る。
【0036】
[水酸化ニッケル粒子]
既に指摘されたように、此処に記載される陽極は特種な表面条件を有する水酸化ニッケル粒子を使用するものである。一般的に、かような粒子は一次水酸化ニッケルから成るものであるが、原料や製造工程によっては、例えばオキシ水酸化ニッケルや酸化ニッケルのようなその他のニッケル化合物がある限定された範囲内の量で含まれて居てもよい。此処に記載される工程の開始物質として使用されるニッケル材料には任意の量の水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、酸化ニッケルのようなものが含まれてよい。往々、開始物質には、一次水酸化ニッケルと共に、例えば約5重量%以下でより多くの場合約1重量%以下の少量の他のニッケル化合物が含まれて居る。このように一次水酸化ニッケルを含み、酸化物及びオキシ水酸化物のようなその他のニッケル化合物を少量含む材料を、此処では水酸化ニッケル、又は水酸化ニッケル粒子と言及することにする。
【0037】
此処に記載されるように変性された水酸化ニッケル又は同様な化合物には、処理の方法に依存して、総量に対して約3から10重量%含まれてよい。変性された物質は通常水酸化ニッケル粒子の表面に位置して居る。通常のセル運行の場合、水酸化ニッケルは充電によってオキシ水酸化ニッケルに変換され、オキシ水酸化物は放電によって水酸化物に変換される。本発明において水酸化ニッケル電極は種々な充電状態におかれる。特筆しない限り、此処で記載される電極密度とは電極が製造された時点のものである。
【0038】
ある実施形態において、水酸化ニッケル開始物質には酸化あるいは水酸化コバルト及び/又は酸化又は水酸化亜鉛が有限量含まれ居る。特種実施形態において、此処に記載される電極内に使用される水酸化ニッケル物質には格子内に約0から5重量%の亜鉛化合物、更に特種な場合には約3から4重量%(例えば約3.5重量%)の亜鉛化合物が含まれる。更に、特別な実施形態において、水酸化ニッケル物質は格子内に約0から5重量%のコバルト化合物、更に特種な場合には約1から3重量%のコバルト化合物(例えば約2重量%のコバルト)が含まれる。
【0039】
ある実施形態において、開始物質の水酸化ニッケル粒子は酸化コバルト又は水酸化コバルトで被覆されて居る。このようなコーティングは上記のように埋め込まれ又は引きずられるコバルト化合物に追加的に供されるものである。かようなコーティングは種々の実施形態で有利であるが、場合によっては此処に記載の処理によって下地の水酸化ニッケルマトリクスが効率的に酸化されるように限定された量のみ存在すべきものである。ある例の場合、コバルト化合物のコーティングの平均厚さは約1マイクロメートル以下であり、典型的には0.1から0.7マイクロメートルである。更に、コバルト化合物のコーティングは粒子内に約0.01から3重量%、更に特別には約0.1から1重量%の割合で存在するものでよい。一例において、コバルト化合物のコーティングはオキシ水酸化コバルトであって、約0.5重量%の割合で存在する。
【0040】
コバルト化合物で被覆された水酸化ニッケル粒子(及びコーティングされて居ない粒子)は例えばChangsha Research Institute (CRI)(P.R.China)及び Kelong Power Sources Co.Ltd.(P.R.China)などの業者から入手可能である。酸化又は水酸化コバルトのコーティングは、硫酸コバルトのようなコバルト塩と水酸化アルカリ金属の水酸化ニッケル粉末との化学反応、又は水酸化ニッケル粒子の表面における水酸化アルカリ金属の水溶液内での溶解したコバルトイオン(Co(OH)42-)の反応のような種々の技術によって適用可能である。此処に記載される一実施形態においては、コバルト化合物の薄層が水酸化ニッケル粒子の上に、硫酸コバルトのような適当なコバルト化合物のアルカリ性溶液をこれらの粒子に接触させることで形成される。
【0041】
ある実施形態においては、少なくともある量の酸化亜鉛及び酸化コバルトが化学的混合物の中に水酸化ニッケルと共に供され、個々の粒子が酸化亜鉛及び酸化コバルトと共に水酸化ニッケルを含んで居る。このように予備的に混合された物質は個々の成分の共沈殿によっても得られ、叉International Nickel Corporation及びTanakaのような公知の売り手から入手することが出来る。かような物質は酸化物を不溶性の水酸化ニッケルマトリクス内に固着することで酸化コバルトや酸化亜鉛の浸出に抵抗する。共沈殿は陽極材料を通して導電性チャンネルを生成して電荷の効率的移動を助長するもとと思われる。好適な実施形態において、酸化亜鉛と酸化コバルトは夫々亜鉛は約2−3重量%の濃度で、酸化コバルトは2−6重量%で共沈殿した物質内に存在する。酸化コバルトの代わりに(又はそれに追加的に)他の物質が使用されてもよい。それには水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)、酸化バリウム(BaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、Fe34、フッ化カルシウム(CaF2)、及び酸化イットリウム(Y23)が含まれる。上記のいずれも、化学的に均一的な成分として与えられ、又は水酸化ニッケルと共沈殿され、又は他の方法で水酸化ニッケルマトリクス内に固着されてよい。
【0042】
水酸化ニッケル粒子は、粉末、粒子など種々な形態で供されてよい。ある実施形態において、本発明に使用される水酸化ニッケル粒子の平均サイズ(直径又は最長の次元)は約0.1mmから20mmであり、特種の実施形態で約0.5mmから12mmである。
【0043】
水酸化ニッケル粒子はコバルト化合物で被覆されて居ると居ないとに拘らず、その表面は従来例又は商業用の水酸化ニッケルと粒子内部に存在する化学的及び/又は物理的状態が相違するものである。この相違する状態を此処で「変性」と言及することにする。この状態は典型的には水酸化ニッケル粒子の表面領域に限定されるものであるが、そうである必要はなく、ある実施形態においてはこの状態は粒子の内部まで継続し、場合によっては粒子全体を通じるものである。
【0044】
「変性」表面状態は下記の一つ以上で特徴付けされる:水酸化ニッケル粒子の表面層におけるより高い酸化状態;例えば約3重量%に及ぶ(往々約1から3重量%)粒子の乾燥重量の増加;表面における水酸化ニッケル格子モルホロジーの変化;及び外部マトリクスへのアルカリ金属イオンの導入。酸化状態が高くなることは、開始物質と比較して達成される。例えば、もし開始物質が全部水酸化ニッケル(II)である場合、変性された結果は平均的に酸化状態が2以上であろう。ある実施形態においては変性された外部領域の酸化状態は2.1以上となり、更なる実施形態では約3以上となる。ある場合には約3と3.25の間になる。重量の増加は開始物質と最終物質の乾燥重量の相違に基づくものである。アルカリ金属イオンは酸化剤の中で使用されるカチオン及び/又は下記のように粒子を処理するのに使用されるアルカリ金属の水酸化物からの結果でよい。更に、この水酸化ニッケル粒子は黒色であり、これは数ヶ月又はそれ以上の長期間安定したものである。水酸化ニッケル粒子の表面にかような変性状態を生成する適当な工程は以下記述される。ニッケル化合物の粒子がコバルト化合物でコーティングされる限り、このコバルト化合物は、ニッケルと同様、例えば3以上であり、場合によっては約3から3.25に亘る範囲の高度な酸化状態で存在可能である。
【0045】
変性水酸化ニッケル又は水酸化コバルトは水酸化ニッケル格子内のコバルト及び亜鉛がアルカリ性の電界質に溶解するのを抑制するものと思われる。このことはコバルト粉末を4重量%追加した未形成のペースティングされたニッケル電極を使用して証明された。この物質は30重量%の水酸化カリウムに一ヶ月間室温で浸潤されたが、水酸化カリウム電解質の中にコバルトは目視されなかった。処理することなく(又は積極性のない処理で)、電解質に青みが現れると、それはコバルトイオンの存在を示す。水酸化ニッケルの表面におけるコバルト化合物は酸化され、水酸化ニッケル粒子の表面における水酸化ニッケルの層構成は変性状態に有意義的に変化したと信じられる。ある場合においては変性水酸化ニッケルがオキシ水酸化ニッケルを含むものかも知れない。ある実施形態では、変性工程において水酸化ニッケル粒子が収縮する。
【0046】
[水酸化ニッケル変性工程]
コバルト化合物の薄いコーティングの有無に拘らず、水酸化ニッケル粒子はアルカリ性条件のもと、強酸化剤によって高温で処理される。これによって、上記の如く、水酸化ニッケルの変性され無秩序の表面が生成される。この高温処理は約90から150℃で実施され、特種実施形態では約100から130℃、叉ある実施形態では120から125℃の範囲で行われる。水酸化物濃度のレベルは約5重量%から30重量%の範囲であり、特別な実施形態では約10重量%から15重量%の範囲である。強酸化剤は、例えば過硫酸化合物、過マンガン酸化合物の水溶液のような無機又は有機剤である。高温における強酸化剤による処理により、水酸化ニッケル粒子の表面層における表面構成及び酸化状態を生成する。ある実施形態において、上記の如く、水酸化ニッケル粒子の処理により、物質の重量は乾燥粒子の約3重量%(例えば約1から3重量%)増加する。水酸化ニッケル格子構成が変性し、及び/又は外部マトリクスにアルカリ金属イオンが存在するものと信じられる。
【0047】
ある実施形態において、混合の工程は100と150℃の間で約5から200分間継続される。混合工程は攪拌その他の適宜な工程によって達成される。反応の完了後、酸化した粒子を液体溶液から分離することが必要かも知れない。このような分離には複数の工程が含まれることがある。一実施形態において、反応生成物は先ず蒸留水で洗浄される。過剰の水分は混合容器からデカントされてもよい。結果として得られる水酸化ニッケルは実際に陽極ペースト作業で使用する前に更に乾燥されてもよい。別の実施形態において、この混合物は蒸留水又はその他の適宜な洗浄液で洗浄する前に濾過されることもある。
【0048】
ある実施形態の場合、水酸化ニッケル又はコバルトで被覆された水酸化ニッケルは図2で示される一般工程201も従って処理されてもよい。まず、選択的工程203において水酸化ニッケル粒子は酸化コバルト又は他のコバルト化合物の薄層で被覆される。ある実施形態の場合、予備的に被覆された水酸化ニッケル粒子が入手可能であり、工程203は不必要となる。その他の場合、水酸化ニッケル変性工程はコーティングされて居ない水酸化ニッケル粒子に対して行われ、この場合工程203は明らかに必要である。
【0049】
示されて居る工程の場合、水酸化ニッケル粒子は例えば硫酸コバルト及び水酸化ナトリウムと約60℃でpHが約10−10.5の条件で接触することにより、水酸化コバルトで被覆される。特種の実施形態において、水酸化コバルトで被覆された水酸化ニッケルは濃縮アルカリ性溶液(例えば温度100℃の10−20重量%水酸化ナトリウム)で処理される。これにはブロック205を参照。水酸化コバルト層のアルカリ処理により、水酸化コバルトと水酸化ニッケルとの間の結合が強化するように思える。図示の実施形態においては、この処理の後水酸化アルカリ金属溶液と強酸化剤が加えられる(ブロック207を参照)。その結果得られる水酸化ニッケル粒子と酸化剤との混合物は積極的な条件(例えば高温で例えば100−130Cで5分から3時間)で処理される、ブロック209を参照。
【0050】
反応物質(水酸化物、酸化剤、及び水酸化ニッケル)はどの順序で加えられてもよい。上記の如く、水酸化ニッケル粒子はコバルト又は酸化コバルトでコーティングされて居ても、居なくてもよい。これらには、ある量の水酸化ニッケルが含まれて居てもよい。
【0051】
ある特種の実施形態の場合、例示の目的として、水酸化ニッケル粒子は水酸化コバルトでコーティングされ、更に積極的に下記の工程によって酸化された。
1. 1000gの水酸化ニッケルが1500gの水と共に反応容器に入れられる;
2. 10−40gの硫酸コバルトが140gの水に溶解される;
3. 3−11gの水酸化ニッケルが140gの水に溶解される;
4. 硫酸コバルト溶液と水酸化ニッケル溶液とがpH約10、温度40−60℃で反応容器に加えられ、コーティングされた水酸化ニッケル粒子が得られる;
5. 400gの10重量%水酸化ナトリウム水溶液が加えられ、温度が90−100℃に上昇される;
6. 50−150gの過硫酸ナトリウムが加えられ、コバルトで被覆された水酸化ニッケルと90−130℃の温度で反応する;
7. 反応混合物が120℃で2時間保持される;及び
8. 結果得られる水酸化ニッケルが洗浄され水酸化ニッケルのペースト内での使用に準備される。
【0052】
一例において、上記のコバルト被覆工程と強酸化工程とは同一の容器内で実施される。1000gの水酸化ニッケルは1500gの水と共に反応容器に投入された。次いで20gの硫酸コバルトが140gの水に溶解され、5.5gの水酸化ナトリウムが140gの水に溶解された。硫酸コバルト溶液と水酸化ナトリウム溶液とは低速で反応容器に投入され、pHは約10に、温度は40−60℃に維持された。これにより、水酸化コバルトでコーティングされた水酸化ニッケル粒子が製造されると信じられる。硫酸コバルト以外のコバルト塩も使用可能であろう。その例には硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルトが含まれる。もしアニオンが例えば塩化物の場合のように陽極の作用に有害であるならば、電極に仕込む前に材料を十分に洗浄する注意が必要である。
【0053】
水酸化コバルトで覆われた物質が生成された後、400gの10重量%水酸化ナトリウム水溶液が容器に投入され、90−100℃の温度に到達した。最後に100gの過硫酸ナトリウムが加えられ、コバルトで被覆された水酸化ニッケルと120℃で2時間の反応が行われた。一般的に約90−130℃の間の温度が使用されてよい。
【0054】
一実施形態の場合、水酸化ニッケル又はコバルトで被覆された水酸化ニッケルの開始物質は濃縮水酸化物と結合され、水酸化ニッケルが懸濁するまで攪拌される。容器は次いで100℃又はそれ以上まで時々攪拌しながら加温される。次いで混合物を攪拌しながら過硫酸ナトリウムが徐々に加温された混合物に投入される。攪拌は例えば約30分継続される。混合物のpHは反応の間監視されてよい。攪拌は周期的に例えば1.5時間継続される。
【0055】
酸化反応の完了後、混合物は室温まで温度を下げ、例えば蒸留水を使用してpHが約8になるまで洗浄してもよい。洗浄工程の間、容器は数回、例えば3−6回デカントされてもよい。可能な限りの量の水分を混合物から乾燥することなしに除去する。その量は計測され、総水分が計算される。処理された混合物の中の計算による水分は次いで陽極ペーストレシピから差し引かれてよい。処理された混合物は次いで陽極用の活性材料ペーストの製作に使用される。
【0056】
この工程は変性水酸化ニッケルの高容量製造に好適にスケイリングされてよい。一実施形態の場合、水酸化コバルトの適用に水酸化ナトリウムと硫酸コバルト溶液を反応容器に移動するのにダイヤフラムポンプを使用して行う。反応容器は、反応溶液のアルカリ度を連続的に監視するために、pH計を使用してポンピングの速度を制御してもよい。過硫酸ナトリウムは固体又は液体の条件で反応容器に投入されてよい。当業者には大量の水酸化ニッケルの開始物資を製造するのに、種々の方法が使用可能であることが理解できよう。
【0057】
上記の例では過硫酸ナトリウムが使用されたが、その他の強酸化剤も使用可能である。上記の如く、そのような強酸化剤の例には、過塩酸塩、過マンガン酸塩、オゾン、その他がある。上記の工程の利点の一つとして、不要な反応生成物(例えば硫酸ナトリウム)が溶液の中にあり、流出されてしまうことに留意されたい。分離工程は反応の進行とともに減少するpHを監視することで容易に監視が可能である。水酸化ニッケルを反応生成物から分離するのは難しいので、沈殿する反応生成物を形成する酸化剤は望ましくなかろう。物質の相対的な量は選択された物質及び望まれて居る製品の量に基づいて上下に調節されてよい、例として示した攪拌の時間は例のみの目的であり、この工程が如何に実施されるべきか限定するものではない。より長時間あるいは短時間の攪拌、又は異なる攪拌の方法が実施されてもよい。尚、処置の後に得られる水酸化ニッケルは濡れて居る場合も乾燥して居る場合もある。製造の目的からして、濡れた製品は活性物質ペーストに合同が容易であるが、もし凝集されない形態が可能であるならば、乾燥状態の処理された水酸化ニッケルは活性物質ペーストに使用可能である。
【0058】
上記のように積極的に水酸化ニッケル粒子を高温(例えば約120℃)で処理すると水酸化ニッケルの表面に変性構成が生成され、それがセルの運行に当たって高温においてコバルト及び亜鉛のアルカリ性電解質への移動を緩慢にすると信じられる。
【0059】
水酸化ニッケルと水酸化アルカリ金属溶液との反応の結果、水酸化ニッケル又はコバルトに被覆された水酸化ニッケルの粒子の表面がアルカリ性となる。水酸化アルカリ金蔵とは例えば水溶液中のナトリウム、カリウム、又はリチウムの水酸化物である。従って、水酸化ニッケル粒子の表面はカリウム、ナトリウム、又はリチウムのアルカリ金属と合体して居る。強酸化剤は次いで温度を約100−150℃に維持しながら投入される。酸化剤は、例えば過硫酸塩、過塩酸塩、過マンガン酸塩、オゾンなどである。塩は典型的にナトリウム塩又はカリウム塩であるが、それに限定されるものではない。混合物の典型的な濃度は過硫酸ナトリウムの場合約5重量%と15重量%の間であり、水酸化ナトリウムの場合約5重量%と20重量%の間である。
【0060】
過硫酸ナトリウムと水酸化ナトリウムに関する典型的な反応は以下に示すものである:
Na228+2Ni(OH)2+2NaOH → 2Na2SO4+2NiOOH+2H2O (7)
Na228+2Co(OH)2+2NaOH → 2Na2SO4+2CoOOH +2H2O (8)
【0061】
過硫酸ナトリウムと水酸化ナトリウムは水酸化ニッケルの上のコバルト又はコーティングされて居ない水酸化ニッケルに合同されたコバルトと反応して硫酸ナトリウム及び酸化された水酸化コバルト又は水酸化ニッケルを生成する。典型的に市場で入手できるような水酸化ニッケルの上のコバルトコーティング(又は水酸化ニッケルマトリクスに合同されたコバルト)の原子価は約3であると信じられる。理論で束縛されることは欲しないが、過硫酸ナトリウムのような強酸化剤での処理の後、水酸化ニッケルの中のすべてのコバルト又はニッケルの酸化状態は少なくとも3、恐らく3以上に増加すると信じられる。処理の後の酸化状態は約3から3.5、例えば約3.2又は3.0でコバルトの大部分はアルカリ性媒体の中で不溶性となる。更に、上記の如く、水酸化ニッケル粒子の表面の積極的な酸化によって水酸化ニッケルの変性形態が生成されると信じられる。
【0062】
[ニッケル陽極の成分]
陽極には電気化学的に活性の酸化ニッケル又は此処に記載されるタイプの水酸化ニッケルが含まれて居る。更に、製造、電子運動、濡れ、機械的性能などを容易化するために、一種以上の添加剤が含まれる。例えば陽極の組織には上記のコバルト安定化過程からの処理された水酸化ニッケル粒子、酸化亜鉛、酸化コバルト(CoO)、コバルト金属、ニッケル金属、及びカルボキシメチルセルローズ(CMC)のような流動制御剤などが含まれてよい。ニッケル及びコバルト金属とは元素金属又は合金であり得ることに留意されたい。既に説明された如く、酸化された酸化ニッケル粒子及び関連する酸化又は水酸化コバルトは、例えば共沈殿工程又は酸化ニッケル粒子上へのコバルトの沈殿によって、同一の粒子上に形成されてよい。ある実施形態の場合、陽極は従来例のニッケルーカドミウムバッテリ又は従来例のニッケルー水素化金属バッテリのニッケル電極の製造に使用されると同様な構成を有する。
【0063】
陽極には他の物質が供されてもよい。放電効率の改善可能な物質の例には水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)、酸化バリウム(BaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、Fe34、フッ化カルシウム(CaF2)、及び酸化イットリウム(Y23)がある。酸化イットリウム及びカルシウム化合物の添加は高温での電荷アクセプタンスに有利であることは既知である。The Electrochamical Society Proceedings Volume 94?27 (Hydrogen and Metal Hydride Batatereies edited by T. Sakai and P.D. Bennett)に発行のK. Ohta, K.Hyashi, H. Matsuda, Y. Yoyoguchi and Mikomaによる"Nickel Hydroxide Elelctrode: Improvement of Charge Efficiency At High Temperature"を参照されたい。これはすべての目的のために本願に参照して合同されるものとする。
【0064】
ある実施形態の場合、完成した陽極は約0−10重量%のコバルト金属粉末、約0−10重量%の酸化コバルト、水酸化コバルト、又はオコシ水酸化コバルトのようなコバルト化合物、約0−10重量%のニッケル粉末、約0−3重量%の酸化亜鉛、0−1重量%のカドミウム、イットリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、スカンジウム、ランタン、ビスマス、マンガン、マグネシウム、のいずれかの酸化物及び/又は水酸化物を含む。更に、電極は少量の、約1重量%以下の濃度のカルボキシメチルセルローズ(CMC)のような流動制御剤及び/又は約0.1−2重量%の濃度のTeflona(通常PTFEのようなフッ素化されたポリオレフィン)のような結合剤を含んでよい。陽極物質の残りは此処に記述される変性水酸化ニッケル(又は他の変性ニッケル化合物)である。ある実施形態の場合、水酸化ニッケルは約60−95重量%の量で存在する。
【0065】
特別な一実施形態において、ペーストされた水酸化ニッケル電極成分は約4重量%のコバルト粉末、約0.4重量%のナトリウムカルボキシメチルセルローズ(CMC)を伴う約10重量%のNi210粉末、及び約0.1−1重量%のポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)から成るものである。その残りは酸化された表面を持つ水酸化ニッケル粉末である。
【0066】
少数の典型的な陽極構成が以下の文献に開示されて居り、これらの文献はすべて本願に参照して合同されるものとする:
PCT Publication No. WO 02/039534 (著者:J.Phillips)"Co?precipitated Ni(OH)2, CoO and Finely Divided Cobalt Metal“;
2004年7月26日出願のJ.Phillipsの米国特許公開2005/0003270;
2002年3月15日出願の"Fluoride Additives"と題する J.Phillipsの米国特許公開2002/0192547。
【0067】
水酸化ニッケル電極は通常例えばニッケルの泡状マトリクスのような導電性下地層の上に設置されるが、箔、穿孔シート、拡張金属のような他の下地形態であってもよい。一実施形態においてはInco社の泡状ニッケルが使用される。ある実施形態において、泡状物質の厚さは約15から60ミルの間である。特別な一実施形態において、陽極は電気化学的活性及びその他の電極材料で充填された泡状ニッケルから成り、その厚さは約16から24ミルの範囲である。殊に好適な実施形態において、陽極の厚さは約20ミルである。
【0068】
特種な実施形態において、密度が約300−500g/m2の範囲にある泡状ニッケルが使用される。更に好適な範囲は約350−500g/m2 である。殊に好適な実施形態の場合、密度が約350g/m2の泡状ニッケルが使用される。電極層の幅が短縮されるにつれ、ボイド空間が十分あるように、泡状体の密度も減少させてよい。特別な一実施形態において、密度が約350g/m2で厚さが約16−18ミルの泡状ニッケルが使用される。
【0069】
本発明の陽極の製法には湿式と乾式とがある。 湿式の製法は2004年8月17日に出願された米国特許出願10/921,062号に記載されてあり、これは本願に参照して合同されるものとする。例えば、ペーストされた水酸化ニッケル電極は、本発明の安定化された水酸化ニッケル粉末と他の陽極成分(例えばコバルト粉末、ニッケル粉末、CMC、及びPTFE)をペーストの中に使用して製作されてよい。活性物質のペーストは泡状ニッケルの中に強制的に押し込まれてニッケル電極板が製造される。他の実施形態では水又はその他の液体を使用しない乾式製法で陽極が製造される。例えば、本願に参照して合同されるものとする2006年3月1日に出願された米国特許出願号を参照されたい。水酸化ニッケルの成分物質、ニッケル及びコバルト粉末は適当な結合剤と共に乾式で混合され、ホッパ内に投入される。連続的泡状ニッケル片が、回転ブラシで物質を泡状体の孔に押し込みながら、粉末を通して引き出される。圧縮ローラによって穿孔度を適当なものとする。
【0070】
[ニッケルバッテリとバッテリ成分]
図3A及び3Bは本発明の実施形態による円筒形パワーセルの成分を示す図であり、図3Aはセルの断面図である。電極と電解質の交互の層が円筒形の構造体301(ジェリイロールとも呼称される)の中に供される。円筒形構造体又はジェリイロール301は缶313又はその他の容器の中におかれる。陰性のコレクタ円板303及び陽性のコレクタ円板305が円筒形構造体301の反対側の隅部に付けられている。陰性及び陽性のコレクタ円板は内部端子として機能するものであり、陰性コレクタ円板は電気的に陰極と接続され、陽性コレクタ円板は電気的に陽極と接続されて居る。キャップ309と缶313は外部端子として機能する。図示された実施形態において、陰性コレクタ円板303には陰性コレクタ円板303をキャップ309に接続させる為のタブ307がある。陽性コレクタ円板305は溶接その他の方法で缶313に電気的に接続されて居る。他の実施形態においては陰性コレクタ円板が缶と接続され、陽性コレクタ円板がキャップに接続される。
【0071】
陰性及び陽性のコレクタ円板303及び305は穿孔されて居り、これはジェリイロールとの結合やセルの一部から他の部分へとの電解質の移動を容易にする。他の実施形態の場合、円板はスロット(径方向又は周方向)、溝、又はその他の構造体によって結合及び/又は電解質の分布を容易にする。
【0072】
可撓性なガスケット311がキャップ309の近辺において缶313の上部の周辺に沿った周辺ビーズ315の上に設置されて居る。このガスケット311はキャップ309を缶313から電気的に隔離する役を果たすものである。ある実施形態において、ガスケット311を載せるビーズ315は重合体で被覆されて居る。ガスケットはキャップ及び缶から電気的に隔離できるなら、如何なる物質によってもよい。好適な例としてこの物質は高温で変形の少ないものであり、ナイロンはその一例である。他の実施形態の場合、比較的疎水性の物質を使用してアルカリ性の電解質を染み込ませ、最終的に継ぎ目その他の出口からセルの外部へ漏れ出させる駆動力を減少させるのが望ましい。濡れ性の少ない物質の例としてポリプロピレンがある。
【0073】
缶又はその他の容器が電解質で充填された後、図3Bに示される如く、電極や電解質を環境から隔離するように、容器が密閉される。ガスケットは典型的にクリンピング工程によって密閉される。ある実施形態においては、漏れを防止するのに密閉剤が使用される。適当な密閉剤の例として、瀝性質の密閉剤、タール、Cognis of Cincinnati,OHから入手可能であるVERSAMIDOなどがある。
【0074】
ある実施形態において、セルは電解質「欠乏」状態で運行されるように構成されて居る。更なる実施形態において、本発明のニッケル−亜鉛セルは電解質欠乏方式を使用するものである。そのようなセルは活性電極物質に較べて比較的少量の電解質を有するものである。これらはセルの内部領域に自由な液体電解質を有する浸水型セルから容易に区別可能である。此処に参照して合同されるものである、2005年4月26日に出願された"Nickel Zinc Battery Design"と題する米国特許出願11/116,113号に記載されて居るように、セルは種々の理由により、欠乏状態で運行することが望ましいのかも知れない。欠乏セルとは一般にセルの電極スタック内の総ボイド空間がフルに電解質で充填されて居ないことと解釈されて居る。典型的な例として、電解質充填後の欠乏セルのボイド容積は充填前の総ボイド容積の少なくとも約10%である。
【0075】
本発明のバッテリセルの形状及びサイズは如何なるものであってもよい。例えば、本発明の円筒形セルは従来例のAAAセル、AAセル、Aセル、Cセルの径や長さでよい。ある応用例においては、従来例のセルデザインが適当である。特別な一実施形態において、セルサイズは直径が22mmで長さが43mmのサブCセルサイズである。本発明は比較的小型のプリズム型セル方式でも、種々の非携帯用のより大型な方式にでも応用可能であることに留意されたい。パワー具、芝刈機などの為のバッテリパックのプロファイルがバッテリセルのサイズや形状を支配する場合が多い。本発明は本発明のニッケル−亜鉛バッテリセルを一個以上入れるバッテリパックや、電気機械の充電や放電用のケーシング、接触子、導電線などにも関するするものである。
【0076】
図3A及び3Bに示される実施形態はキャップが陰性であり缶が陽性であり、従来例のニッケル−カドミウムセルと極性が逆であることに留意されたい。従来例のパワーセルの極性では、キャップが陽性で缶が陰性である。即ち、セル集成体の陽極は電気的にキャップと接続し、セル集成体の陰極は電気的にセル集声体を納める缶と接続して居る。図3A及び3Bに示されるものを含め、本発明のある実施形態では、セルの極性は従来例のセルの極性の逆である。従って、陰極はキャップと電気的に接続し、陽極は缶と電気的に接続して居る。本発明のある実施形態においては陽性のキャップとする従来例のデザインと極性を同じくすることに留意されたい。
【0077】
缶とは最終的のセルの外部ハウジング即ちケイシングの役を果たす容器のことである。缶を陰性端子とする従来例のセルの場合、これは典型的にニッケルでメッキされたスチールである。上記の如く、本発明の缶は陰性でも陽性でもあり得る。缶が陰性である実施形態の場合、缶の材料は亜鉛電極の電位と適合性のある別の物質でコーティングされて居る限り、例えばスチールのように、従来例のニッケル−カドミウムバッテリで使用されるのと同様のものでよい。例えば、陰性の缶は銅のような腐食を防止する物質でコーティングされてよい。缶が陽性でキャップが陰性である実施形態の場合、缶は典型的にニッケルでメッキされたスチールのように、従来例のニッケル−カドミウムセルで使用されるものと同様でよい。
【0078】
ある実施形態の場合、缶の内部は水素の再結合を援助するための物質でコーティングされてよい。水素再結合の触媒となるものなら、如何なる物質でもよい。そのような物質の例には酸化銀がある。
【0079】
通気キャップ:
セルは通常環境から密閉されるものであるが、充電や放電に際して発生するガスをバッテリから放出させてもよい。典型的なニッケル−カドミウムセルは約200ポンド/平方インチ(PSI)の圧力で通気させる。ある実施形態のニッケル−亜鉛セルは通気口なしで、この程度の圧力、又はそれ以上(例えば約300PSIまで)の圧力で運行するように設計されたものである。これではセル内で発生された酸素や水素の再結合が促進される。ある実施形態のセルは約450PSIまで、更には約600PSIまでの内圧が保持されるように構成されて居る。他の実施形態のニッケル−亜鉛セルは比較的低圧で通気するように設計されて居る。これはセルの内部で再結合することなく水素及び/又は酸素の制御された通気を促進する設計の場合に好適である。
【0080】
通気キャップ及び円板、キャリヤ下地層そのものなどの詳細な構造は以下の特許文献に記載されて居り、これらは本願にすべての目的に参照して合同されるものとする:2006年4月25日に出願されたPCT/US2006/015807;2004年8月17日に出願されたPCT/US2004/026859(公開WO2005/020353A3)。
【0081】
電極及びセパレータ構成:
図4はジェリイロール又はプリズム型セル構成に使用可能な陰極−陽極−セパレータのサンドイッチ構成の層を示すものである。セパレータ405は電極間のイオン流を許容する一方、陰極(401、403)を陽極(407、409)から機械的及び電気的に隔離するものである。陰極には電気化学的活性層401及び電極下地層403が含まれる。亜鉛電極の電気化学的活性層401には典型的に酸化亜鉛及び/又は亜鉛金属が電気化学的活性物質として含まれる。この層401には、他の添加剤又は例えば亜鉛酸カルシウム、酸化ビスマス、酸化アルミニウム、酸化インジウム、ハイドキシエチルセルローズ、及び分散剤のような電気化学的活性成分が含まれてよい。
【0082】
電極下地層403は陰極物質401と電気化学的に適合性でなくてはならない。上記の如く、電極下地層は穿孔性の金属シート、拡張金属、金属泡体、又はパタン状の連続的金属シートなどの構成でよい。
【0083】
陽極は陰極にたいしてセパレータ405の向かい側にある。陽極にも電気化学的活性層407及び電極下地層409が含まれる。陽極の層407には水酸化ニッケル、酸化ニッケル、及び/又はオキシ水酸化ニッケルが電気化学的活性物質として、種々の添加剤と共に含まれてよい。これらはすべて上記の如くである。電極下地層409は例えばニッケル泡状マトリクス、又はニッケル金属シートであってよい。ニッケル泡状マトリクスが使用される場合、層907は一つの連続的電極となることに留意されたい。
【0084】
陰極:
ニッケル−亜鉛セルの場合に応用された如く、陰極には一つ以上の亜鉛又は亜鉛酸イオンの電気的活性源、及び任意的に下記の導電度増加物質、防腐剤、浸潤剤などの一つ以上の追加的物質を含む。電極が製造される時、これは例えばクーロム容量、活性亜鉛の化学的構成、多孔度、彎曲度、などのような、ある物理的、化学的及び形態学的特性で特徴付けされる。
【0085】
ある実施形態の場合、電気化学的活性亜鉛源は以下のものの中の一種であってよい:酸化亜鉛、亜鉛酸カルシウム、亜鉛金属、及び種々の亜鉛合金。これらの物質はいずれも製造過程において供され、及び/又は通常のセルサイクリングの際に生成されてもよい。特別な実施形態の場合、例えば酸化カルシウム及び酸化亜鉛を含むペースト又はスラリぱら製造可能な亜鉛酸カルシウムが考えられる。
【0086】
亜鉛合金が使用される場合、ある実施形態ではビスマス及び/又はインジウムが含まれる。ある実施形態の場合、100万部の鉛に対して20部以下含まれてよい。この構成条件を満たす市売の亜鉛合金としてカナダのNoranda Corporationから供給されるPG101がある。
【0087】
亜鉛活性物質は粉末、粒子状化合物などの形態で存在する。亜鉛電極ペースト方式に使用される成分は夫々比較的小さい粒子サイズであることが好ましい。これは粒子が陽極と陰極の間のセパレータを貫通したり、その他の様相で毀損する可能性を減少するためである。
【0088】
電気化学的活性亜鉛成分(及び他の粒子状電極成分)を殊に考えるに当たり、これらの成分は約40又は50マイクロメートル以下の粒子サイズであることが好ましい。ある実施形態の場合、この物質はその粒子の約1%以下の主サイズ(例えば直径あるいは主軸)が約50マイクロメートル以上であることで特徴付けされてよい。このような物質は、例えば亜鉛粒子を篩い分け又はその他の処理によって大きい粒子を除去することで生成可能である。ここに記載のサイズ条件は亜鉛金属粉末のみならず、酸化亜鉛や亜鉛合金にも適応されることに留意されたい。
【0089】
電気化学的活性亜鉛成分に加えて、陰極には例えばイオンの移送,電子の移送(例えば導電性の向上)、浸潤性、多孔度、完全性(例えば結合)、ガッシング、活性物質溶解性、バリヤ特性(例えば電極を離れる亜鉛の量の減少)、腐食防止などのような電極内のある工程を容易にしたり、影響を及ぼす一種以上の追加的物質が含まれてよい。
【0090】
例えば、ある実施形態において、陰極には酸化ビスマス、酸化インジウム 及び/又は酸化アルミニウムのような酸化物が含まれる。酸化ビスマスと酸化インジウムとは亜鉛と反応して電極におけるガッシングを減少することがある、酸化ビスマスは乾式陰極方式の約1から10重量%の範囲の濃度で供されてよい。これは水素と酸素の再結合を容易にするかもしれない。酸化インジウムは乾式陰極方式の約0.05から10重量%の範囲の濃度で供されてよい。酸化アルミニウムは乾式陰極方式の約1から5重量%の範囲の濃度で供されてよい。
【0091】
ある実施形態の場合、亜鉛電気化学活性物質の腐食抵抗を改善して貯蔵寿命を延長するために、一種以上の添加剤を含ませてよい。貯蔵寿命はバッテリセルの商業的成功不成功にとって重要なものである。バッテリが本来化学的に不安定な装置であることを意識して、陰極をも含むバッテリの諸成分を化学的に有用な形態に維持する努力がなされてよい。電極物質が数週間あるいは数ヶ月間使用されずに有意義的な程度に腐食したり変質したりすると、それらの価値は短い貯蔵寿命によって限定されてしまう。
【0092】
電解質内での亜鉛の溶解度を減らす為に加えられるアニオンの例として、燐酸塩、フッ酸塩、ホウ酸塩、珪酸塩、ステアリン酸塩などがある。一般的にこれらのアニオンは乾燥状陰極構成に対し重量で約5%以内の濃度で陰極内に存在してよい。これらのアニオンの中、少なくともあるものはセル周期の間に溶液中に入り、亜鉛の溶解度を減少させるものと思われて居る。これらの材料を含んだ電極構成の例は以下の特許及び特許出願に記載されて居り、これらは総て、あらゆる目的に対して参照して本願に合同するものとする:
米国特許6797433号("Negative Electrode Formulation for a Low Toxicity Zinc Electrode Having Additives with Redox Potentials Negative to Zinc Potential"、発明者 Jeffrey Phillips, 2004年9月28日発行);
米国特許6835499("Negative Electrode Formulation for a Low Toxicity Zinc Electrode Having Additives with Redox Potentials Positive to Zinc Potential", 発明者 Jeffrey Phillips, 2004年12月28日発行);
米国特許6818350("Alkaline Cells Having Low Toxicity Rechargeable Zinc Electrodes", 発明者Jeffrey Phillips, 2004年11月16日発行);
PCT特許出願PCT/NZ02/00036(公開番号WO02/075830号、発明者 Hall,et al.2002年3月15日出願)。
【0093】
浸潤性の向上の為に陰極に添加されてよい物質の例には酸化チタン、アルミナ、シリカなどがある。
【0094】
一般的に、これらは乾燥状陰極構成に対して重量で約10%以内の濃度で付与される。かような物質については米国特許6811926号("Formulation of Zinc Negative Electrode for Rechargeable Cells Having an Alkaline Electrolyte" 、発明者 Jeffrey Phillips, 2004年11月2日発行)に記載されてあり、この特許は本願に全体としてあらゆる目的に対して参照して合同するものとする。
【0095】
導電性向上の為に陰極に添加されてよい物質の例には固有の高い導電性を持ち、陰極と互換性を有する物質が挙げられる。その例としては、酸化チタンなどがある。一般的に、これらは乾燥状陰極構成に対して重量で約10%以内の濃度で付与される。厳密には、この濃度は勿論添加物の種類によって異なる。
【0096】
結合、分散、及び/あるいは隔離層の代用物であることの目的として陰極には種々の有機物が添加され得る。その例として、ヒドロキシルエチルセルローズ(HEC)、カルボキシメチルセルローズ(CMC)、遊離酸の形態のカルボキシメチルセルローズ(HCMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレンスルフォネート(PSS)、ポリビニルアルコール(PVA)、nopcosperse分散剤(京都のSan Nopco Ltd.より入手可能)などがある。
【0097】
ある実施例においては、セパレータを毀損する恐れのあるような、尖ったり大きい粒子を埋め込むために、PSS又はPVAのような重合体物質がペースト物質に(コーティングの代わりに)混合されてもよい。
【0098】
此処において電極構成を定義する場合、これは通常形成サイクリング期間中又はその後又は例えばセルが携帯用ツールにパワーを供給するなどに使用されて放電充電の1サイクル以上を行う期間中又はその後のみならず、製造過程に生成される組織(例えばペースト、スラリ、又は乾燥製造組織)に応用可能なものと理解される。
【0099】
本発明の範囲内の種々の陽極構成は以下の文献に記載されて居り、これらの文献はすべてあらゆる目的に対して参照して本願に合同されるものとする:
PCT公開WO02/39517(J.Phillips);
PCT公開WO02/39520(J.Phillips );
PCT公開WO02/39521;
PCT公開WO02/39534(J.Phillips );
米国特許公開2002/182501号。
上記文献に於ける陰極添加剤の例として、シリカ、各種アルカリ土金属のフッ化物、遷移金属、貴金属がある。
【0100】
最終的に留意さるべきことは、種々の物質がある特別な特性を得るために陰極に添加されてよいものであるが、これらの物質や特性は陰極以外のバッテリ成分によって供されてもよいと言うことである。例えば、電解質の中の亜鉛の可溶性を減少する物質は電解質又はセパレータを通して(同時に陰極にも供されるか否かを問わず)供されてもよい。そのような物質の例にはリン酸塩、フッ化物、ホウ酸塩、亜鉛酸塩、珪酸塩、ステアリン酸塩などがある。電解質及び/又はセパレータに供されてよいその他の上記物質の例には界面活性剤、インジウムのイオン、ビスマス、鉛、錫、カルシウムなどがある。
【0101】
セパレータ:
典型的に、セパレータは小さい孔を有するものである。此処に記載されるいくつかの実施形態に於いて、セパレータは複数の層から成るものである。孔の存在及び/あるいは層状構成により、亜鉛の樹状突起に曲がりくねった通路を供することになり、従って効果的に貫通することと、短絡とを防止することになる。好ましくは、多孔性セパレータのくねり度は約1.5−10の範囲であり、より好ましくは約2−5である。孔の平均直径は好ましくは大きくとも約0.2ミクロンで、更に好ましくは、約0.02−0.1ミクロンの間である。孔のサイズはセパレータの内部に於いて均一であることが好ましい。特別な実施形態に於いて、セパレータは多孔率が約35−55%の間であり、多孔率が45%で孔のサイズが0.1ミクロンの好ましい材料を有するものとする。
【0102】
ある実施形態によれば、セパレータは亜鉛の貫通を防止するバリヤ層とセルを電解質と共に浸潤状態に保ってイオン交換を可能にする浸潤層の少なくとも二層から成る(更に好ましくは只二層のみから成る)ものである。これは互いに隣接する電極間に唯一の隔離材料を使用するニッケル−カドミウムセルに於いて通常のことではない。
【0103】
セルの作用は出来るだけ陽極を浸潤させ、陰極を比較的乾燥状態に保てば向上する。従って、ある実施例に於いては、バリヤ層が陰極に隣接し、浸潤層が陽極に隣接するように位置される。この配置により、電解層を陽極に密接させ、セルの作用が向上する。
【0104】
その他の実施形態に於いては、浸潤層が陰極に隣接し、バリヤ層が陽極に隣接して位置される。この配置は酸素の電解質を通って陰極への移行を容易にし、陰極での酸素の再結合に役立つ。
【0105】
バリヤ層は典型的に微小な孔を有する多孔性の膜である。導イオン性の微小な孔を持つ多孔性の膜ならば、いずれのものでも使用可能である。多孔率が30−80%の間のポリオレフィンがしばしば使用されるが、孔の平均径が約0.005−0.3ミクロンの間であることが好適である。好ましい実施形態では、バリヤ層は微小な孔を持つ多孔性のポリプロピレンである。バリヤ層は典型的に厚さが約0.5−4ミルで、より好ましくは約1.5−4ミルの間である。
【0106】
バリヤ層は典型的に微小な孔を有する多孔性の膜である。導イオン性の微小な孔を持つ多孔性の膜ならば、いずれのものでも使用可能である。多孔率が30−80%の間のポリオレフィンがしばしば使用されるが、孔の平均径が約0.005−0.3ミクロンの間であることが好適である。好ましい実施形態では、バリヤ層は微小な孔を持つ多孔性のポリプロピレンである。バリヤ層は典型的に厚さが約0.5−4ミルで、より好ましくは約1.5−4ミルの間である。
【0107】
浸潤層は浸潤性が適当である如何なるセパレータ材料であってもよい。典型的に、セパレータの多孔率は比較的高く、例えば約50−85%の間である。例として、ナイロンを基にした浸潤性のあるポリエチレンやポリプロピレン材料のようなポリアミドが挙げられる。ある実施形態に於いては、浸潤層の厚さは約1−10ミルの間であり、好ましくは約3−6ミルの間である。セパレータ材料で、浸潤層材料として使用できるものの例としては、NKK VL100 (東京のNKK社製)、Freudenberg FS2213E、Scimat 650/45 (英国 Swindon の SciMAT Limited製)、及び Vilene FV4365 がある。
【0108】
当業者に周知のその他のセパレータ材料も使用可能である。上記の如く、ナイロンを基にした材料や、微小な孔を有する多孔性ポリオレフィン(例えばポリエチレン及びポロプロピレン)はしばしば非常に好適である。
【0109】
電極/セパレータのデザインについて更に考慮すべきことは、セパレータを電極や電流コレクタシートのように略同じ厚さの単一層として提供するか、あるいは片方あるいは両方の電極をセパレータの中につめるかと言うことである。後者の例でのセパレータは、電極シートの中の一枚用の「袋」として作用し、効果的に電極層を包み込むものである。ある実施形態に於いては、陰極をセパレータに包み込むことが、樹状突起の生成防止に役立つ。しかし、叉別の実施例では、電極を包み込まずに、バリヤ層を使用するだけで、樹状突起の貫通に対する保護に十分である。
【0110】
電解質:
ニッケル−亜鉛セルに関するある実施形態において、電解質構成は樹状突起の生成及び亜鉛電極内でのその他の物質の再分布を抑制する。好適な電解質の例はここに参照して合同されるものとする1993年6月1日にM.Eisenbergに発行された米国特許5,215,836号に記載されて居る。ある場合において、電解質には(1)水酸化アルカリ又はアルカリ土金属、(2)可溶性フッ化アルカリ又はアルカリ土金属、及び(3)ホウ素酸塩、ヒ素酸塩、及び/あるいはリン酸塩(例えば、ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、及び/あるいは燐酸ナトリウムあるいはカリウム)を含むものである。特別なある一実施例による電解質は、約4.5−10等量/リットルの間の水酸化カリウム、約2−6等量/リットルの間のホウ酸あるいはメタホウ酸ナトリウム、及び約0.01−1等量の間のフッ化カリウムから成るものである。高率の応用に特に好ましい電解質は約8.5等量/リットルの水酸化物、約4.5等量のホウ酸、及び約0.2等量のフッ化カリウムから成るものである。
【0111】
本発明は Eisenbergの特許に開示された電解質構成に限定されるものではない。一般論として、目的とする応用の為の標準条件を満たすものであれば、如何なる電解質構成であってもよい。高電力の応用が望まれる場合ならば、電解質は高い導電率でないといけない。サイクル寿命の長いことが望まれるなら、電解質は樹状突起の生成に抗するものでないといけない。本願に於いては、適当な隔離層と共にホウ酸塩及び/あるいはフッ化物を使用して樹状突起の生成を減少し、それによって、丈夫で長寿命のセルが達成される。
【0112】
特別な実施例による電解質構成は、約3−5等量/リットルの間の余剰の水酸化物(例えば KOH, NaOH, 及び/あるいは LiOH)を含むものである。これは、陰極が酸化亜鉛を基にした電極であるとの仮定に基づくものである。亜鉛酸カルシウム電極の場合、別の電解質構成の方が適当かも知れない。亜鉛酸カルシウムに好適な電解質組成の一例は、KOH が重量で約15−25%で、LiOH が重量で約0.5−5.0%である。
【0113】
種々の実施例に於いて、電解質は液体やゲルから成るものであり得る。ゲルの電解質はオハイオ州クリーブランドのNoveon から入手可能な CARBOPOL(登録商標)のような増粘剤を含んでも良い。好ましい実施例によれば、活性電解質構成の一部をゲルとする。ある特殊な実施例として、重量で電解質の約5−25%がゲル形体であり、ゲル構成が重量で約1−2%の CARBOPOLを含むものがある。
【0114】
場合によって、2006年2月1日に出願され、本願にあらゆる目的に対して参照して同合するものとする米国特許出願11/346861に記載されて居る如く、電解質は比較的高濃度の燐酸塩イオンを含んでも良い。
【0115】
[ニッケル電極及びバッテリの性能]
変性表面を有する変性水酸化ニッケル(又はその他のニッケル化合物)を含むニッケル電極を使用するバッテリセルは多くの面において優秀な性能を示すものである。例えば、パワーツール、芝刈り機、及び電気自動車(ハイブリッド電気自動車を含む)などの高レートの応用面に使用される場合、長いサイクル寿命が供される。ある実施形態において、このセルは一貫的に高レート(例えば最低約5Cの放電レートで約1Cの充電レート)で使用された場合、約250サイクル有用となる。場合によっては、同じ高レートの条件で使用された場合、最小約500サイクル(700サイクルからそれ以上)が供される。有用な供給とは、平均的に陽極が約250mAh/gram以上(又はある実施形態の場合約295mAh/gram以上)のレベルで使用されると言うことである。
【0116】
更に、陽極は、非常に高い充電レートで運行される場合、それ自身非常に高い充電効率を示すものである。例えば、ある実施形態においては、5C以上のレートで充電される場合、陽極は最低約90%、又は99%以上の充電効率を有するものである。
【0117】
更に、この陽極はサイクリングに当たって膨張が非常に少なく、これは変性なしの水酸化ニッケルの陽極からして劇的な改善である。比較例が図9に示されて居り、以下説明される。ある場合、陽極は100サイクルで約10%のサイズ増加を示し、又ある実施形態では少なくとも300サイクルの運行後においてサイクリングでのサイズ増加が約15%以下である。膨張率は陽極の厚さの増大で測定できる。膨張率の減少で達成される機械的安定で、サイクル数の増加と共に通常セルに現れる容量の衰弱が減少されやすい。
【0118】
[実験]
Changsha Research Institute及び中国のKelongから供給された市売の水酸化ニッケル粒子が水酸化コバルトでコーティングされ、又上記の工程で水酸化ニッケルを(硫酸コバルトと水酸化ナトリウム溶液を60℃とpH10−10.5の条件で)酸化処理して水酸化ニッケルの上にオキシ水酸化コバルトの表面層を生成した。水酸化ニッケル粒子の表面におけるオキシ水酸化コバルト層の約0.5重量%は水酸化ニッケル粒子であった。CoOOH格子を付けた水酸化ニッケルの格子構成は、水酸化ニッケル粒子の格子の中のコバルトや亜鉛がセルのアルカリ性電解質へと放散するのを抑制すべく、此処に記載のように積極的に酸化された。この水酸化ニッケル粒子(コーティング以前)は格子の中で3.5重量%が亜鉛であり、2重量%がコバルトであった。
【0119】
普通の水酸化ニッケル粉末及び酸化処理された水酸化ニッケルを夫々5グラムづつ、60℃で10グラムの30重量%水酸化カリウム溶液に投入した。表1は60℃で4日間貯蔵した後結晶から浸出したコバルトと亜鉛の量を示す。
【0120】
【表1】

【0121】
本発明のある利点は密閉螺旋型サブC方式のニッケル−亜鉛セルで示される。陽極、セパレータ、及び陰極は電界質の充填の前に巻かれてバッテリの缶の中に挿入された。陽極は缶に接続された。陰極はバッテリの通気キャップに接続された。最後に、電界質の充電後、キャップのクリンピングによってバッテリが密閉された。セパレータは濡れ性のポリプロピレン(PP)、又はポリエチレン(PE)の膜と配合された0.10−0.30mmの不織ナイロンであった。形成サイクルが適応された。
【0122】
陽極は以下のように記述されるものである。
(1) ニッケル泡体が陽極下地層として使用される。ニッケル泡体の厚さは予め0.77mmとカレンダ加工される。
(2) 球形の水酸化ニッケル粒子と導電性添加剤の混合物が陽極用のペーストの生成に使用された。陽性ペーストの混合物には4重量%のCo粉末、10重量%のNi210粉末、0.4重量%のCMC、及び0.2重量%のPTFEが含まれた。残りは水酸化ニッケル粉末であった。
(3) ペーストされた混合物はニッケル泡体の中に十分に塗り込まれた。100℃の乾燥温度が使用された。ローラプレスがニッケル電極の0.42mm−0.43mmへとのカレンダ加工に使用された。
(4) ニッケル電極板は幅33.5mm、長さ265mmに切断された。
【0123】
陰極は以下のように記述されるものである。
(1) 陰極の導電性下地層は厚さ0.1mmの錫メッキされた穿孔銅片であった。
(2) 亜鉛金属と酸化亜鉛粉末とが他の陰性添加剤と混合された。亜鉛金属合金粉末は腐食防止剤として作用するインジウム及びビスマスを含む。陰性ペースト用の添加剤にはZnO, Ca(OH)2, Bi23, Al23及び酸化インジウム、又は硫酸インジウムが含まれる。混合物の中で亜鉛金属粉末は10−15重量%であった。混合物の中で酸化亜鉛粉末は75−80重量%であった。 混合物の中でその他の添加物は5−10重量%であった。
(3) 結合剤はCMC及びPTFEであった。
(4) ペースト混合物は錫メッキされた銅下地層にペーストされた。乾燥温度は60℃であった。
(5) 陰極は更に有機物の除去のために250−300℃で焼成された。
(6) 陰極はローラプレスで0.32mmの厚さにカレンダ加工された。電解質成分は760gのH2O、1220gの水酸化カリウム溶液、84.7gのリン酸ナトリウム(Na3PO4 ・12H2O)、59gの水酸化ナトリウム、16.8gの水酸化リチウム、及び3.2gの酸化亜鉛(ZnO)であった。
【0124】
上記の如く、観察されたセルの作用上の利点には充電効率の向上、配電パワー容量の増加、自己放電の減少、水素ガッシングの減少、インピダンスの低下、バッテリサイクルの改善、使用寿命、及びセル間の一様性などがある。
【0125】
比較の目的で、此処に記載された酸化処理の有る場合と無い場合のニッケル陽極を使用した異なるタイプのバッテリセルを製作した。これらのセルは製造され形成された後(形成サイクル終了後)、種々の試験に供された。これらのセルはすべて10Aと30Aの放電流において容量が1.90Ahであった。すべてのセルは電解質と亜鉛電極成分が同一であり、同じレシピと工程で製作されたものである。これらのセルの形成前の「浸潤」時間は1時間であった。電解質浸潤時間とはセルを電解質で充填してから初回の充電電流までの時間である。コバルトでコーティングされた水酸化ニッケルは水酸化ニッケル粒子の表面の上に約1%のコバルトを含んだものであった。
【0126】
セルAは以下のように製作された。処理されて居ない普通の水酸化ニッケルが陽極物質として使用された。陽極は4重量%のコバルト粉末、9重量%のニッケル粉末、0.4重量%のCMC、及び0.2重量%のPTFEを使用してペーストされた。
【0127】
セルBは以下のように製作された。水酸化ニッケル粉末が120℃のアルカリ性過硫酸塩を使用して2時間の混合時間で処理された。水酸化ナトリウムと過硫酸ナトリウムの濃度は両方とも15重量%であった。陽極は4重量%のコバルト粉末、9重量%のニッケル粉末、0.4重量%のCMC、及び0.2重量%のPTFEを使用してペーストされた。「浸潤」時間は1時間であった。
【0128】
上記のセルの形成はすべて図5に示されるように実施された。上記のように、セルの形成とは初回の充電のことである。セルAとセルBの充電電位レスポンスも図5に示されて居る。明らかに示されて居るように、酸化処理された水酸化ニッケルを使用するバッテリの充電電位曲線は普通の水酸化ニッケル電極を使用したバッテリのものと同様である。酸化処理の間に水酸化ニッケルの原子価が増加されて居ないことが示されて居る。主な変化は水酸化ニッケル粒子の性能の向上である。表面処理によってペーストされた電極上の追加されたコバルト粉末が水酸化ニッケル粒子を包み込めるようになり、溶解されたコバルト化合物が陰極に移動するのを抑制すると信じられる。ニッケルの表面活性の向上は水酸化ニッケル電極の高レート充放電性能に有利である。最初の約100−300分において電位の増加速度が落ちて曲線に肩が現れることに注目される。この肩を越えると(「コバルト波形」と呼ばれることもある)、電位は約1.85Vまで急速に増加する。この「肩」はコバルトIII へとのコバルトIIの酸化を現す。コバルトIIが全部コバルトIII に転換すると、化学式(1)の主電気化学反応が継続する。
【0129】
此処に記述された実験において、セルAとBは10A(5.3Cの充電レート)で充電された。充電曲線は図6に示される通りである。処理されない水酸化ニッケルを使用するセルAは時間と共に急速に増加する電位を示す。充電条件が約50%となった後、酸素発生によって電荷アクセプタンスが低下する。酸素発生により、バッテリの過電位となり、充電時間と共に電荷アクセプタンスが低下する。対照的に、酸化処理された水酸化ニッケルを使用するセル(セルB)はより高い充電効率を示す。充電条件が90%を超すと、充電時間と共に充電電位は増加する。これは酸素発生は電極が約90%の充電状態に達した時に開始することを意味する。高レートの充電電流における電荷アクセプタンスの高いことはハイブリッド電気自動車(HEV)への応用に重要な利点を齎すかも知れない。
【0130】
バッテリは1.90Vへの2Aの定常電流充電と90mAの充電終末電流への定常電位充電との充電体制でサイクリングが実施された。放電電流は10Aであった。サイクリング曲線に現れる一時的下降は20Aの放電サイクル、それに続く10番目のサイクルの24時間の休止、その後50番目のサイクルごとに休止しながら連続的サイクリングを続行するのに相当する。セルの放電容量は図7に示されて居る。これらのセルは30Aの放電電流においても放電された。30Aの放電の放電容量は図8にサイクル数の関数として示されて居る。此処で観察されるように、セルBの容量はサイクルの数の増加と共に少々劣化する。セルBが30Aの放電電流(放電レート15.8C)において殊に優良な特性(セルAと比較して)を示すことは注目に値する。
【0131】
水酸化ニッケル電極の厚さは放電ごとに増加し、次いで次回の充電で縮小する。放電と充電の結果である拡張と収縮は可逆的であり、大きさは通常5%以下である。しかし、別のタイプの非可逆的な拡張もあり、これは漸進的で通常何サイクルにも亘る陽極の連続的な拡張となる。この非可逆的拡張は種々の弊害を齎し、最小化されるべきものである。図9に示されるデータで例示されるように、拡張は典型的にサイクル数と共に増加する。しかし、処理された水酸化ニッケル電極は、処理されない水酸化ニッケル電極に比して、サイクル数の増加と共に相対的に拡張が小さい。図9は非可逆的拡張をサイクル数の関数として示して居る。製造された時点で、この例で使用される水酸化ニッケル電極は約0.42mmの厚さである。バッテリが形成される時、電極の厚さは約5−10%拡張する。図9に示されるデータは形成の後であるが正式なサイクリングの開始前の電極の厚さに基づいたものである。しかし、形成の期間中、処理された電極が約5%しか拡張しなかったのに、処理されなかった電極は約12%拡張したことに留意されたい。電極の厚さは放電された状態で測定された。
【0132】
一般的に、過充電の期間中の陽極内での酸素発生はペーストされたニッケル電極の拡張を加速する。水酸化ニッケルの酸化処理はニッケル電極の電荷アクセプタンスを改善するのであるから、酸素の発生を最小化するものと信じられる。
【0133】
[結論]
明瞭化の目的で種々の詳細は省略されて居るが、種々の代行的デザインは実施可能である。従って、此処に開示された実施形態は例示のたまえであって、発明は此処に供された詳細に限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ用の陽極を製造する方法であって、
(a)水酸化物溶液と強酸化剤とを水酸化ニッケルに少なくとも約90℃の温度で混合して変性水酸化ニッケルを生成する工程;
(b)この変性水酸化ニッケルを工程(a)で得られた混合物から分離する工程;
(c)この変性水酸化ニッケルから成る電極混合物を準備する工程;及び
(d)この電極混合物を陽極に合同させる工程;
とから成る方法。
【請求項2】
水酸化ニッケルがコバルト化合物でコーティングされた水酸化ニッケル粒子から成る粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の前に、水酸化ニッケルを水酸化物及びコバルト塩溶液と混合してコバルト化合物によってコーティングされた水酸化ニッケル粒子を生成する工程を更に有する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水酸化ニッケルと金属及びコバルト塩との混合が約40℃と約60℃の温度で実施されるものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水酸化ニッケルが約1重量%までのコバルト化合物から成るものである請求項2に記載の方法。
【請求項6】
強酸化剤が過マンガン酸塩化合物、過塩素酸化合物、過硫酸化合物、及びオゾンから成るグループから選択されるものである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
強酸化剤が過硫酸塩であり、水酸化物がアルカリ金属水酸化物である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
電極混合物がペースト状である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分離する工程が
(a)変性水酸化ニッケルを洗浄する工程;及び
(b)変性水酸化ニッケルを乾燥する工程
とから成るものである
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
分離する工程が
(a)変性水酸化ニッケルを濾過する工程;及び
(b)濾過された変性水酸化ニッケルを洗浄する工程
とから成るものである
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)が約90℃と150℃の間の温度で実施されるものである請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)が約5分と200分の間の時間実施されるものである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
陽極が約60−95重量%の変性水酸化ニッケル、及び約10重量%以下のコバルト金属及び/又はコバルト化合物から成るものである請求項1に記載の方法。
【請求項14】
コバルト化合物が酸化コバルト、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト、又はこれらの結合である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(a)陰極;
(b)粒子のバルク内に存在するより高度に酸化された状態にあるニッケルから成る変性表面を有する水酸化ニッケル粒子と、コバルト金属及び/又はコバルト化合物とから成る水酸化ニッケル陽極;
(c)陽極と陰極の間に位置してその間の電気的接触を防止するセパレータ;及び
(d)陰極、陽極、及びセパレータと接触する電解質
とから成る
ガルバニセル。
【請求項16】
陽極が酸化コバルト、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト、又はこれらの結合から成るグループから選択されるコバルト化合物から成るものである請求項15に記載のセル。
【請求項17】
陰極が酸化亜鉛陰極である請求項15に記載のセル。
【請求項18】
セルが約5C以上の放電レートで少なくとも約500サイクルのサイクル寿命を達成するものである請求項17に記載のセル。
【請求項19】
酸化亜鉛陰極がコバルトを10ppm以下含むものである請求項17に記載のセル。
【請求項20】
水酸化ニッケル陽極が更にニッケル金属粉末、Y23、Ca(OH)2、及び結合剤から成るものである請求項15に記載のセル。
【請求項21】
水酸化ニッケル粒子がコバルト化合物のコーティングを有し、このコーティング内のコバルト化合物の少なくとも約90重量%が高度に酸化されたコバルトである請求項15に記載のセル。
【請求項22】
水酸化ニッケル陽極内のコバルト化合物が室温において有意義的には電解質に可溶性でなく、電解質がアルカリ性の電解質である請求項15に記載のセル。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−525688(P2012−525688A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508746(P2012−508746)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/033023
【国際公開番号】WO2010/127153
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511262359)パワージェニックス・システムズ・インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】POWERGENIX SYSTEMS, INCORPORATED
【Fターム(参考)】