説明

充電装置、雷サージ発生器、雷サージ試験機および充電装置の制御方法

【課題】雷サージ試験の試験時間を短縮する。
【解決手段】サージ電流を供給する充電装置1において、第1の電圧Vchまでキャパシタ19を充電するための充電装置11であって、第1の電流値Imの電力を出力可能な定電圧電源21と、定電圧電源21とキャパシタ19との間に直列に接続された、第1の抵抗値r1の抵抗素子22と、定電圧電源21の出力電圧Voutを制御可能なコントローラ15とを有する。コントローラ15は、出力電圧Voutを充電開始電圧V0にセットして充電を開始する第1の機能25と、出力電圧Voutが第1の電圧Vchに達するまで、キャパシタ19の充電電圧Vcに、第1の電流値Imおよび第1の抵抗値r1の積を最大とする電圧Vaddを追加した次の電圧Vnに、出力電圧Voutを連続的に、または段階的に増加させる第2の機能とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷サージ発生器の放電用キャパシタを充電する装置、雷サージ発生器、雷サージ試験機および充電装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雷サージ試験機は、高電圧大容量のキャパシタへ充電した電荷を、放電回路を介して試験対象の半導体装置(例えば、サージ防護サイリスタ。)や電子機器(電話、ファクシミリ、パソコン、TV。)に放電することによって、半導体装置や電子機器の試験・選別を行うための装置である。
【0003】
特許文献1には、雷サージ試験用のインパルス試験器であって、電圧および電流を制御する制御回路部と、充電高圧発生回路部と、制御回路部からのタイミングによってサージ出力を発生するサージ発生回路部とを備えるものが開示されている。そして、サージ出力を所定の繰り返し間隔で発生させる繰り返し数設定部と、サージ出力の電圧を設定するサージ電圧設定部と、サージ出力の発生間隔を設定するサージ出力発生間隔設定部を設け、1秒以下の間隔を含む複数の発生間隔を設定可能とし、その設定された間隔で所定電圧のサージ出力を繰り返し発生できるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−260218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
雷サージ試験機においては、半導体装置や電子機器の試験・選別を従来よりも高い生産性で行いたいという要求がある。そのためには、サージ出力の発生間隔を、さらに短くすることが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1の電圧までキャパシタを充電するための充電装置である。この充電装置は、第1の電流値の電力を出力可能な定電圧電源部と、定電圧電源部とキャパシタとの間に直列に接続された、第1の抵抗値の抵抗素子と、定電圧電源部の出力電圧を制御可能なコントロール部とを有する。コントロール部は、出力電圧を充電開始電圧にセットして充電を開始する第1の機能と、出力電圧が第1の電圧に達するまで、キャパシタの充電電圧に、第1の電流値および第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した次の電圧に、出力電圧を連続的に、または段階的に増加させる第2の機能とを含む。
【0007】
第1の電流値の電力を出力可能な定電圧電源を用いて充電する場合、充電初期に第1の電流値の電力を、抵抗素子を介してキャパシタに供給できるが、その後、抵抗素子を流れる電流は減少する。これに対し、出力電圧がプログラマブルな定電圧電源を用い、充電開始電圧を低く抑え、第1の電流値および第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した次の電圧に、出力電圧を連続的に、または段階的に増加させることにより、充電開始初期のみならず、充電途中において、第1の電流値の電力を、抵抗素子を介してキャパシタに提供できる。すなわち、最大電流が決まっている定電圧電源を利用して、定電流に近い状況を充電中に実現する。したがって、充電時間を短縮でき、その結果、試験対象の半導体装置や電子機器に短い周期でサージ波形を供給することが可能となる。このため、半導体装置や電子機器の試験・選別を従来よりも高い生産性で行うことが可能となる。
【0008】
第1の機能は、充電開始電圧を第1の電流値および第1の抵抗値の積の電圧にセットする。出力電圧を連続的に、または段階的に増加させる方式を採用することにより、キャパシタの充電電圧であり、定電圧電源の最大出力電圧となる第1の電圧に対して、充電回路の制限抵抗となる第1の抵抗値を小さくすることができる。したがって、抵抗素子による充電中のロスを低減できる。充電中の抵抗素子によるロスを最小限にしながら充電時間を短縮するためには、初期に第1の電流値を流すことが望ましく、充電開始電圧を第1の電流値および第1の抵抗値の積の電圧にセットすることが望ましい。
【0009】
第2の機能は、出力電圧が第1の電圧に達するまで、所定の時間が経過したときのキャパシタの予想充電電圧に、第1の電流値および第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した次の電圧に、出力電圧を段階的に増加させることが望ましい。たとえば、第2の機能は、出力電圧が第1の電圧に達するまで、充電開始時から抵抗素子およびキャパシタの時定数が経過する都度、時定数が経過したときのキャパシタの予想充電電圧に、所定の電圧を足した電圧に出力電圧を段階的に増加させることができる。
【0010】
第2の機能は、出力電圧が第1の電圧に達するまで、キャパシタの充電電圧をモニタし、モニタした充電電圧に、第1の電流値および第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した次の電圧に、出力電圧を段階的に増加させてもよい。
【0011】
本発明の他の態様の1つは、上記の充電装置と、充電装置により充電されるキャパシタと、キャパシタに充電された電荷を放電し、被試験体にサージ電圧および電流を印加する放電回路とを有する雷サージ発生器である。キャパシタの充電時間を短縮でき、充電中の損失も削減できるので、雷サージの発生効率の高い雷サージ発生器を提供できる。
【0012】
本発明のさらに他の態様の1つは、上記の雷サージ発生器を有する、雷サージ試験機である。キャパシタの充電時間を短縮でき、充電中の損失も削減できるので、試験効率のさらに高い雷サージ試験機を提供できる。
【0013】
雷サージ試験機の1つは、被試験体に過電圧を継続して印加する回路を有するものであり、雷サージ試験の1つであるインパルスリセットを、さらに効率良く行うことができる。
【0014】
本発明のさらに異なる態様は、第1の電圧までキャパシタを充電するための充電装置の制御方法である。充電装置は、第1の電流値の電力を出力可能な定電圧電源部と、定電圧電源部とキャパシタとの間に直列に接続された、第1の抵抗値の抵抗素子とを有する。制御方法は、定電圧電源部の出力電圧を充電開始電圧にセットして充電を開始する第1の工程と、出力電圧が第1の電圧に達するまで、キャパシタの充電電圧に、第1の電流値および第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した次の電圧に、出力電圧を連続的に、または段階的に増加させる第2の工程とを含む。キャパシタの充電時間を短縮でき、充電中のロスを低減できるので、キャパシタの充電効率を向上できる。
【0015】
第1の工程は、充電開始電圧を第1の電流値および第1の抵抗値の積の電圧にセットすることを含む。第2の工程は、出力電圧が第1の電圧に達するまで、所定の時間が経過したときのキャパシタの予想充電電圧に、第1の電流値および第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した次の電圧に、出力電圧を段階的に増加させることを含む。第2の工程は、出力電圧が第1の電圧に達するまで、キャパシタの充電電圧をモニタし、モニタした充電電圧に、第1の電流値および第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した次の電圧に、出力電圧を段階的に増加させることを含んでもよい。
【0016】
キャパシタの充電時間を短縮できるので、この充電装置を含む雷サージ試験機の制御方法、試験方法および、雷サージ試験機を用いた試験工程を含む半導体装置や電子機器の製造方法において、上記第1および第2の工程を含むことにより、短い周期でサージ波形を供給することが可能となる。このため、半導体装置や電子機器の試験・選別を従来よりも高い生産性で行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、雷サージ試験機の概要を示す図である。この雷サージ試験機1は、インパルスリセット試験を行うものである。インパルスリセット試験は、たとえば、北米保安器規格GR974に規定されている。雷サージ試験機1は、被試験体(DUT)9にサージ電圧およびサージ電流を印加するための雷サージ発生器10と、DUT9に短絡電流および開放電圧を継続して印加するための直流電源装置(続流回路電源)8とを含む。雷サージ試験機1は、DUT9と並列に接続され、DUT9のリセット時間などを観察するための測定装置、典型的にはオシロスコープ7を含む。雷サージ試験機1は、DUT9に並列に接続され、回路特性を調整するための回路素子6を含み、この例では、調整用の回路素子6は、直列に接続された抵抗R2およびコンデンサC2を含む。さらに、雷サージ試験機1は、DUT9と続流回路電源8との間に接続された、分離用のダイオードD3と保護抵抗(制限抵抗)R3とを含む。また、雷サージ試験機1は、雷サージ発生器10とDUT9との間に接続された、分離用のダイオードD1と保護抵抗(制限抵抗)R1とを含む。
【0018】
雷サージ発生器10は、充放電用の大容量キャパシタ19と、キャパシタ19を規定の電圧Vchまで充電するための充電装置11と、キャパシタ19に充電された電荷を放電するための放電回路12と、これらを制御するコントローラ15とを含む。放電回路12は、コントローラ15により制御されるスイッチング素子(サイリスタ)16と、コイル17とを含む。充電装置11は、第1の電流値Imの電力を出力可能な定電圧電源21と、定電圧電源21とキャパシタ19との間に直列に接続された、制限用の第1の抵抗値r1の抵抗素子(制限抵抗)22と、定電圧電源21とキャパシタ19とを遮断するためのスイッチング素子23とを含む。
【0019】
定電圧電源21は出力電圧Voutが、たとえば、PWM制御などの公知の方法により制御できるプログラマブルな電源装置である。コントローラ15は、定電圧電源21の出力電圧Voutを制御可能であり、出力電圧Voutを充電開始電圧V0にセットして充電を開始する第1の機能25と、出力電圧Voutが第1の電圧Vchに達するまで、キャパシタ19の充電電圧Vcに、第1の電流値Imおよび第1の抵抗値r1の積を最大とする電圧Vaddを追加した次の電圧Vnに、出力電圧Voutを連続的に、または段階的に増加させる第2の機能26とを含む。さらに、コントローラ15は、キャパシタ19が所定の電圧Vchまで充電されると、遮断用のスイッチ23をオフ(開いて)、スイッチング素子(サイリスタ)16をオンにして放電する第3の機能27を含む。
【0020】
図2は、インパルスリセット試験の工程を示す図である。この試験は、「製品がサージを防護し、さらに自動復帰するか」を確認するという測定(試験)である。まず、製品(被試験体、DUT)9を回路に接続する(ステップ51)。この例においてDUT9としてセットされる製品は、典型的には、電流制御型シリコンサージ防御素子(TSS)である。この製品(TSS)は、シリコン2方向性2端子サイリスタと呼ばれる複合型サイリスタの一種であるサイダック(登録商標)をベースに開発された電流制御型のシリコンサージ防護デバイスであり、高度情報通信機器、端末機器などの雷サージ防護に適用されている。
【0021】
次に、DUT9を続流回路電源8に接続し、たとえば、開放電圧52.5Vを印加する(ステップ52)。その後、遮断スイッチ23を閉じて(オン)、サージ発生器10のキャパシタ19の充電を開始する(ステップ53)。この段階で、DUT9の電圧は52.5Vとなり、DUT9には固有の漏れ電流が流れる。
【0022】
図3は、インパルスリセット試験の波形を示す図である。図3(a)は良品の場合の波形を示し、図3(b)は不良品の場合の波形を示す。図3においては、横軸が時間tを示し、縦軸がDUT9に加わる電圧(製品電圧)Vdと、DUT9に流れる電流(製品通電電流)Idとを示す。ステップ53の段階(たとえば、時刻t1)では、製品電圧Vdは開放電圧を示し、製品通電電流Idは漏れ電流を示す。
【0023】
キャパシタ19の充電電圧Vcが所定の電圧Vchに達したら、遮断スイッチ23を開く(オフ)。その後、時刻t2にスイッチング素子(サイリスタ)16を閉じ(オン)、DUT9にサージ通電を行う(ステップ54)。図3(a)および(b)に示すように、製品電圧Vdは、VCLと呼ばれる製品固有の最大電圧まで上昇後、数ボルト程度のオン電圧に移行する。また、DUT9には、「サージ電流」と、「続流回路の短絡電流」とをプラスした電流Idが流れる。
【0024】
その後、ステップ55で、製品電圧Vdが復帰するか否かを確認する。すなわち、DUT9が良品の場合は、サージ電流が徐々に小さくなり、サージ通電開始から30msec以内の時刻t3に製品電圧Vdがサージ通電前の状態に復帰する(図3(a)参照)。逆に製品電圧Vdが復帰しない場合、DUT9は不良となる(図3(b)参照)。DUT9が不良の場合、製品電圧Vdは数ボルト程度のままで推移する。電流Idは続流回路電源8の短絡電流(例えば、約260mA)が流れたままになる。この測定の定義は、規定時間30msec以内に復帰するか、というものであるが、実際には「製品固有の保持電流値」が、「続流回路の短絡電流値」より大きいか小さいかを確認していることになる。
【0025】
図4は、キャパシタの充電過程を示す図である。図4は、充電装置11の制御をフローチャートにより示している。図2に示した試験工程において、キャパシタ19の充電を開始するステップ53になると、ステップ61において、コントローラ15は第1の機能25により、定電圧電源21の出力電圧Voutを開始電圧V0にセットする。典型的には、開始電圧V0は以下の式(1)、すなわち、定電圧電源21の最大出力電流(第1の電流値)Imと制限抵抗22の抵抗値r1との積で定義される。
【0026】
V0=Im×r1 ・・・(1)
その後、ステップ62において、キャパシタ19の充電電圧(端子電圧)Vcが規定値Vchに達したら、キャパシタ19の充電を終了する。一方、充電電圧Vcが規定値Vchに達するまでは、コントローラ15は第2の機能26により、ステップ63において、定電圧電源21の出力電圧Voutが規定値Vchに達しておらず、出力電圧Voutをステップアップできる状況か否かを判断する。定電圧電源21の出力電圧Voutをステップアップできるときは、ステップ64において、そのときの充電電圧Vcに電圧Vaddを足した(追加した)次の電圧Vn(nは整数)までステップアップする。典型的には、追加電圧Vaddは以下の式(2)、すなわち、定電圧電源21の最大出力電流(第1の電流値)Imと制限抵抗22の抵抗値r1との積で定義される。
【0027】
Vadd=Im×r1 ・・・(2)
キャパシタ19の充電電圧Vcおよび充電電流Irは、コントローラ15において測定することができる。キャパシタ19の充電電圧Vcおよび充電電流Irを予想することも可能である。典型的には、以下の式(3)により予想充電電圧Vcp、予想充電電流Irpを求めることができる。
【0028】
Vcp=Vn(1−exp(−tn/(r1・C)))+Vcn
Irp=(Vn/r1)(1−exp(−tn/(r1・C))) ・・・(3)
容量Cはキャパシタ19の容量であり、時間tnは、出力電圧Voutを次の電圧Vnにステップアップしたときからの経過時間である。また、充電電圧Vcnは、次の電圧Vnにステップアップしたときのキャパシタ19の充電電圧である。
【0029】
図5は、一例として、定電圧電源21の初期電圧V0を規定の電圧Vchに設定してキャパシタ19を充電したときの経過(図5(a))と、定電圧電源21の出力電圧Voutを次の電圧Vnにステップアップしながらキャパシタ19を充電したときの経過(図5(b))とを示す図である。
【0030】
図5(b)では、初期電圧V0を式(2)の電圧Vaddにセットし、その後、時定数τ(τ=r1×C)が経過する都度、電圧Vaddを足した次の電圧Vnを出力電圧Voutにセットしている。図5(a)および(b)において、時刻t11およびt21において、初期電圧V0をセットし、時刻t12およびt22において、遮断スイッチ23をオンにしてキャパシタ19の充電を開始する。図5(b)では、出力電圧Voutを段階的に、規定電圧Vchまでステップアップする。そして、時刻t13およびt23において、充電電圧Vcが規定電圧Vchに達すると、時刻t14およびt24で、放電回路12を用いてキャパシタ19に充電された電荷を放電する(サージ通電)。
【0031】
図5(b)に示すように、出力電圧Voutを段階的に、規定電圧Vchまでステップアップすることにより、キャパシタ19の充電時間が短縮でき、充電開始からサージ通電までの時間を短縮できる。このため、DUT9に短い周期でサージ波形を供給することが可能となる。したがって、雷サージ試験機1を用いてインパルスリセット試験を従来よりも高い生産性で行うことが可能となる。なお、この例では、出力電圧Voutを段階的に増加しているが、連続的に増加しても良い。さらに、出力電圧Voutを増加するタイミングは、時定数が経過した後に限られず、さらに短いインターバルで行っても良く、さらに長いインターバルで行っても良い。
【0032】
図6は、図5の具体例を示す図である。図6(a)は、定電圧で充電した例を示し、図6(b)は段階的に電圧を上昇させた例を示す。
【0033】
図6(a)は、キャパシタ19として40μFの容量を有する高電圧大容量キャパシタを採用し、出力電圧Voutを規定電圧Vch(1000V)、抵抗22の抵抗値r1を2kΩに設定している。最大電流Imは0.5A(500mA)である。この例では、充電時間は0.4秒程度となる。
【0034】
図6(b)は、同じ高圧大容量キャパシタ19を採用し、抵抗22の抵抗値r1を600Ωに設定している。したがって、最大電流Imは、上記と同様に500mAである。そして、初期電圧V0を300Vにセットして充電を開始する。時定数(0.024秒)が経過した直後に、充電電圧Vc(Vcn)は、約190V(0.632×300V)になる(なると予想できる)ので、追加電圧Vadd(300V)を追加した次の電圧Vn(490V)を出力電圧Voutにセットして充電を行う。出力電圧Voutをこのようにステップアップすることにより、その直後の充電電流Irは500mA((490V−190V)/600Ω)に増加する。
【0035】
さらに0.024秒が経過したのち、すなわち、充電開始から0.048秒後には、キャパシタ電圧Vcは約380V(190V+0.632×300V)になる(なると予想できる)ので、追加電圧Vadd(300V)を追加した次の電圧Vn(680V)を出力電圧Voutにセットして充電を行う。出力電圧Voutをこのようにステップアップすることにより、その直後の充電電流Irは500mA((680V−380V)/600Ω)に増加する。このような処理を繰り返すことにより、0.18秒程度で、充電電圧Vcが規定電圧Vchに達する。したがって、充電時間をほぼ半分にすることができる。さらに、制限抵抗22で熱として消費される電力が減るので、キャパシタ19の充電に要する電力を削減でき、消費電力も低減できる。
【0036】
このように、本発明に係る雷サージ発生器11を搭載した雷サージ試験機1を用いることにより、処理能力が増加し、例えば上記の例では2倍になる。このため、この雷サージ試験機1による雷サージ試験が製造工程の一部となっている半導体装置あるいは回路素子については、半導体装置あるいは回路素子(回路デバイス)の製造能力を向上でき、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】雷サージ試験機の概要を示す図である。
【図2】インパルスリセット試験の工程を示す図である。
【図3】インパルスリセット試験の波形を示す図である。
【図4】キャパシタの充電過程を示す図である。
【図5】一例として、定電圧電源21の初期電圧V0を規定の電圧Vchに設定してキャパシタ19を充電したときの経過と、定電圧電源21の出力電圧Voutを次の電圧Vnにステップアップしながらキャパシタ19を充電したときの経過とを示す図である。
【図6】図5の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 雷サージ試験機、 9 DUT(被試験体)、 10 雷サージ発生器
11 充電装置、 12 放電回路、 15 コントローラ、 19 キャパシタ
21 定電圧電源装置、 25 第1の機能、 26 第2の機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電圧までキャパシタを充電するための充電装置であって、
第1の電流値の電力を出力可能な定電圧電源部と、
前記定電圧電源部と前記キャパシタとの間に直列に接続された、第1の抵抗値の抵抗素子と、
前記定電圧電源部の出力電圧を制御可能なコントロール部とを有し、
前記コントロール部は、前記出力電圧を充電開始電圧にセットして充電を開始する第1の機能と、
前記出力電圧が前記第1の電圧に達するまで、前記キャパシタの充電電圧に、前記第1の電流値および前記第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した次の電圧に、前記出力電圧を連続的に、または段階的に増加させる第2の機能とを含む、充電装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の機能は、前記充電開始電圧を前記第1の電流値および前記第1の抵抗値の積の電圧にセットする、充電装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第2の機能は、前記出力電圧が前記第1の電圧に達するまで、所定の時間が経過したときの前記キャパシタの予想充電電圧に、前記第1の電流値および前記第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した前記次の電圧に、前記出力電圧を段階的に増加させる、充電装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記第2の機能は、前記出力電圧が前記第1の電圧に達するまで、前記キャパシタの充電電圧をモニタし、モニタした充電電圧に、前記第1の電流値および前記第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した前記次の電圧に、前記出力電圧を段階的に増加させる、充電装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の充電装置と、
前記充電装置により充電されるキャパシタと、
前記キャパシタに充電された電荷を放電し、被試験体にサージ電圧および電流を印加する放電回路とを有する雷サージ発生器。
【請求項6】
請求項5に記載の雷サージ発生器を有する、雷サージ試験機。
【請求項7】
請求項6において、さらに、前記被試験体に過電圧を継続して印加する回路を有する、雷サージ試験機。
【請求項8】
第1の電圧までキャパシタを充電するための充電装置の制御方法であって、
前記充電装置は、第1の電流値の電力を出力可能な定電圧電源部と、
前記定電圧電源部と前記キャパシタとの間に直列に接続された、第1の抵抗値の抵抗素子とを有し、
当該制御方法は、
前記定電圧電源部の出力電圧を充電開始電圧にセットして充電を開始する第1の工程と、
前記出力電圧が前記第1の電圧に達するまで、前記キャパシタの充電電圧に、前記第1の電流値および前記第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した次の電圧に、前記出力電圧を連続的に、または段階的に増加させる第2の工程とを含む、制御方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記第1の工程は、前記充電開始電圧を前記第1の電流値および前記第1の抵抗値の積の電圧にセットすることを含む、制御方法。
【請求項10】
請求項8または9において、
前記第2の工程は、前記出力電圧が前記第1の電圧に達するまで、所定の時間が経過したときの前記キャパシタの予想充電電圧に、前記第1の電流値および前記第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した前記次の電圧に、前記出力電圧を段階的に増加させることを含む、制御方法。
【請求項11】
請求項8または9において、
前記第2の工程は、前記出力電圧が前記第1の電圧に達するまで、前記キャパシタの充電電圧をモニタし、モニタした充電電圧に、前記第1の電流値および前記第1の抵抗値の積を最大とする電圧を追加した前記次の電圧に、前記出力電圧を段階的に増加させることを含む、制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−288203(P2009−288203A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143983(P2008−143983)
【出願日】平成20年5月31日(2008.5.31)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【出願人】(591132955)株式会社秋田新電元 (29)
【Fターム(参考)】