説明

光イメージング装置

【課題】散乱体の深部を可視化する光イメージング装置を提供する。
【解決手段】光コヒーレンストモグラフィと同様な光学系を用いて得た信号のうち、検査対象の表面反射光及び表層の一回散乱光に起因する信号を取り除き、多重散乱光に起因する信号を抽出し、画像化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体光イメージング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体の断層像を得る技術として Optical coherence tomography (OCT) が広く受け入れられている(非特許文献1参照)。OCTは深さ方向に1~10mm程度の空間分解能を持つ形態情報を非侵襲、無被爆かつin vivo提供できる強力な技術である。
【0003】
OCTでは生体試料内にて反射された光、もしくは一回散乱光が検出される。この検出にはマイケルソン干渉計構成が用いられ、生体から戻ってきた光(以降、検査光と呼ぶ)と参照光との干渉成分が信号として用いられる。検査光と参照光の相対遅延時間が光源の可干渉時間内である場合、安定した干渉信号が得られる。OCTではこの安定した干渉信号が利用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Huang et al., Science, vol. 254, p. 1178 (1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようにOCTは非常に魅力的な技術ではあるものの、観察可能な進達度が生体試料の表面から1~2mm程度と非常に限定的だという特徴がある。これは生体が強い光散乱体であることに起因している。生体中を1~2mm伝搬する間にほとんどの光は多重散乱を受ける。多重散乱を受けた検査光は参照光と安定した干渉信号を生成することができないため、OCTでは検出することができない。
【0006】
生体深部の血管、神経やリンパの位置・状態把握や癌の浸潤度診断など、非侵襲、無被爆かつin vivo で生体深部の状態を知りたいという強いニーズはあるものの、上述の特徴によりOCTではこれらのニーズに応えることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する第1の観点に係る光イメージング装置の発明は、
光を出射する光発生手段と、
前記光発生手段からの光を検査光と参照光とに分波して、前記検査光を検査対象に導き、前記参照光を光反射部に導くとともに、前記検査光が前記検査対象で反射・散乱されて得られる反射検査光と、前記参照光が前記光反射部で反射されて得られる反射参照光とを合波して干渉光を生成する光分合波手段と、
前記検査光を前記検査対象上にて走査する走査手段と、
前記光分合波手段で生成された干渉光を受光して光電変換する光電変換手段と、
前記光電変換手段のアナログ出力信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換手段と、
前記アナログ−デジタル変換手段の出力信号から、前記検査対象の反射光及び一回散乱光に起因する信号を取り除き、前記検査対象中における多重散乱光に起因する信号を抽出し積算する信号処理手段と、
前記信号処理手段からの出力信号と前記走査手段の走査情報から前記検査対象の画像を生成する画像処理手段と、
を有することを特徴とするものである。
【0008】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る光イメージング装置において、
前記光発生手段が波長掃引レーザであることを特徴とするものである。
【0009】
第3の観点に係る発明は、第2の観点に係る光イメージング装置において、
前記信号処理手段が、
前記アナログ−デジタル変換手段からの出力信号をフーリエ変換し、前記検査対象中の位置に対する信号強度分布を表す信号を出力する信号変換手段と、
前記信号変換手段の出力信号から、前記検査対象中における多重散乱光に起因する信号を抽出する信号抽出手段と、
前記信号抽出手段からの出力信号の積算値を計算し、出力する積算手段と、
からなることを特徴とするものである。
【0010】
第4の観点に係る発明は、第1の観点に係る光イメージング装置において、
前記光発生手段が、
スーパールミネッセントダイオードもしくはパルス光源であって、
前記光反射部が前記検査光と前記参照光の相対遅延時間を掃引するように駆動されていること、
を特徴とするものである。
【0011】
第5の観点に係る発明は、第4の観点に係る光イメージング装置において、
前記信号処理手段が、
前記アナログ−デジタル変換手段からの出力信号を包絡線検波する包絡線検波手段と、
前記包絡線検波手段の出力信号から、前記検査対象中における多重散乱光に起因する信号を抽出する信号抽出手段と、
前記信号抽出手段からの出力信号の積算値を計算し、出力する積算手段と、
からなることを特徴とするものである。
【0012】
第6の観点に係る発明は、第3もしくは第5の観点に係る光イメージング装置において、
前記信号抽出手段が、
前記信号変換手段の出力信号中において、最も強度の高い前記検査対象上の位置から前記検査対象の深部方向に物理長で1.5mm以上離れた位置の信号を抽出すること、
を特徴とするものである。
【0013】
第7の観点に係る発明は、第1の観点に係る光イメージング装置において、
前記光発生手段が、
スーパールミネッセントダイオードもしくはパルス光発生であって、
前記参照光と前記多重散乱光の相対遅延時間が一致するように前記光反射部が設定されていること、
を特徴とするものである。
【0014】
第8の観点に係る発明は、第7の観点に係る光イメージング装置において、
前記信号処理手段が、
前記アナログ−デジタル変換手段の出力信号を包絡線検波する包絡線検波手段と、
前記包絡線検波手段の出力信号の積算値を計算し、出力する包絡線検波出力積算手段と、
からなることを特徴とするものである。
【0015】
第9の観点に係る発明は、第1の観点に係る光イメージング装置において、
前記光電変換手段が、
バランスド検出を行う
ことを特徴とするものである。
【0016】
さらに、上記目的を達成する第10の観点に係る光イメージング方法の発明は、
光を出射する光発生ステップと、
前記光発生ステップからの光を検査光と参照光とに分波して、前記検査光を検査対象に導き、前記参照光を光反射部に導くとともに、前記検査光が前記検査対象で反射・散乱されて得られる反射検査光と、前記参照光が前記光反射部で反射されて得られる反射参照光とを合波して干渉光を生成する光分合波ステップと、
前記検査光を前記検査対象上にて走査する走査ステップと、
前記光分合波ステップで生成された干渉光を受光して光電変換する光電変換ステップと、
前記光電変換ステップのアナログ出力信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換ステップと、
前記アナログ−デジタル変換ステップの出力信号から、前記検査対象の反射光及び一回散乱光に起因する信号を取り除き、前記検査対象中における多重散乱光に起因する信号を抽出し積算する信号処理ステップと、
前記信号処理ステップからの出力信号と前記走査ステップの走査情報から前記検査対象の画像を生成する画像処理ステップと、
を有することを特徴とするものである。
【0017】
さらに、上記目的を達成する第11の観点に係る内視鏡の発明は、
体腔内からの被検出光を検出して、前記体腔内を観察する内視鏡であって、
請求項1乃至9の少なくともいずれか一項に記載の光イメージング装置を有し、
前記体腔内からの前記被検出光を前記光イメージング装置により画像化できるように構成したことを特徴とするものである。
【0018】
さらに、上記目的を達成する第12の観点に係る顕微鏡の発明は、
観察試料からの被検出光を検出する顕微鏡であって、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光イメージング装置を有し、
前記観察試料からの前記被検出光を前記光イメージング装置により画像化できるように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
反射光や一回散乱光を取り除き、かつ多重散乱光を検出し、画像化するので、生体深部の状態を非侵襲、無被爆かつ in vivo で可視化することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る光イメージング装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した光イメージング装置の信号処理の基本的構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した信号処理の動作を説明する模式図である。
【図4】本発明の第2実施の形態に係る光イメージング装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示した光イメージング装置の信号処理の基本的構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示した信号処理の動作を説明する模式図である。
【図7】本発明の第3実施の形態に係る光イメージング装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示した光イメージング装置の信号処理の基本的構成を示すブロック図である。
【図9】図8に示した信号処理の動作を説明する模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0022】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る光イメージング装置の構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施の形態では、波長掃引レーザ10は、中心波長1030nm、掃引波長幅0.4nm、平均光強度5mW、掃引周波数50kHzのものを用いる。これは周波数領域モード同期レーザ(Fourier domain mode locked laser: FDML)を用いて実現できる(米国特許第2006/0187537号参照)。この際、波長掃引レーザ10の出力時間波形がパルス状にならないように用いられる。
【0024】
波長掃引レーザ10の出力端は、第1ポート11a~第3ポート11cを有する光サーキュレータ11の第1ポート11aに接続する。光サーキュレータ11は、第1ポート11aから入力された光を、第2ポート11bへ出力し、第2ポート11bに入力された光を第3ポート11cから出力する。
【0025】
光サーキュレータ11の第2ポート11bは、第1ポート12a〜第4ポート12dを有する光カプラ12の第1ポート12aに接続して、該第1ポート12aに入力された光を、光カプラ12により、第3ポート12cおよび第4ポート12dにそれぞれ強度比50:50で分波する。ここで、光カプラ12は、光発生手段からの光を検査光と参照光とに分波して、検査光を検査対象に導く一方、参照光を光反射部に導いて、さらに検査光については検査対象で反射・散乱されて得られる反射検査光として、参照光が前記光反射部で反射されて得られる反射参照光と合波して干渉光を生成するための、光分合波手段として機能するものである。かかる光分合波手段は、光カプラ12のように同一の構成で実現する手段である必要はなく、場合によっては分波と合波とを別々の光カプラ部材で構成してもよい。
【0026】
光カプラ12の第3ポート12cから出力される光は参照光として用いられる。この光カプラ12の第3ポート12cから出力された光は、レンズ50により平行光に変換され、空気中に射出される。その射出された参照光を、光減衰器15で所望の光強度に減衰した後、反射鏡14で反射させる。この反射鏡14で反射された参照光は、反射参照光として、再び光減衰器15およびレンズ50を介して光カプラ12の第3ポート12cに入力される。
【0027】
一方、光カプラ12の第4ポート12dは、検査光として用いられる。この光カプラ12の第4ポート12dから出力された光は、レンズ51により平行光に変換され、空気中に射出される。その射出された検査光を、X-Yガルバノスキャナミラー15で、伝搬方向を二次元的にスキャンして、レンズ52により生体等の検査対象16上に集光させる。
【0028】
なお、X-Yガルバノスキャナミラー15は、コンピュータ19からの信号に従って制御されている。検査対象16の表面および内部で反射・散乱された検査光は、反射検査光として、再びレンズ52、X-Yガルバノスキャナミラー15及びレンズ51を介して、光カプラ12の第4ポート12dに入力される。
【0029】
光カプラ12の第3ポート12cに入力する反射参照光および第4ポート12dに入力する反射検査光は、光カプラ12において干渉し、干渉光として第1ポート12aおよび第2ポート12bから出力される。ここで、第1ポート12aから出力される干渉光と、第2ポート12bから出力される干渉光とは、逆位相となる。
【0030】
光カプラ12の第1ポート12aから出力される干渉光は、光サーキュレータ11の第2ポート11bおよび第3ポート11cを経て、光電変換部としてのバランスドレシーバ17の第1ポート17aに入力される。また、光カプラ12の第2ポート12bから出力される干渉光は、バランスドレシーバ17の第2ポート17bに入力する。これにより、バランスドレシーバ17で、第1ポート17aおよび第2ポート17bにそれぞれ入力する干渉光を光電変換して、直流成分をキャンセルした、干渉成分(交流成分)のみのアナログ信号を得る。バランスドレシーバ17は、InGaAsフォトダイオード二つと差動増幅器を含んだもので、電気応答帯域が、例えば80MHzのものを用いる。
【0031】
バランスドレシーバ17から出力されるアナログ信号は、アナログ-デジタル(Analog-to-digital: AD)変換器18に入力してデジタル信号に変換される。なおAD変換器18は、例えば14bit、125MS/sのものを用いる。そして、AD変換器18のデジタル出力信号は、コンピュータ19に入力される。コンピュータ19では、AD変換器18からの信号とX-Yガルバノスキャナミラー15の位置情報から画像を生成する演算がなされ、その結果がモニタ20に表示される。
【0032】
図2は、コンピュータ19で行われる信号処理を示す機能ブロック図である。図2中のa~e点における信号の例を図3 a~eに示し、コンピュータ19で行われる信号処理を以下で説明する。
【0033】
コンピュータ19で行われる信号処理は、信号変換手段(波長掃引)21、信号抽出手段22、積算手段23及び画像処理手段24を行う。信号変換手段(波長掃引)21は、AD変換器18からのデジタル出力信号(図3 a)をフーリエ変換して電力スペクトルを算出し、その周波数を波長掃引レーザ10の波長掃引速度から検査対象16の深さ方向の空間的距離に変換し、電力を検査対象16中の各深度における反射・散乱光強度に変換し出力する(図3 b)。信号変換手段(波長掃引)21の出力信号は信号抽出手段22に入力される。信号抽出手段22では、検査対象16からの反射光及び一回散乱光に起因する信号を取り除き、検査対象16中にて多重散乱された光に起因する信号(図3 c 斜線部分)が抽出される(図3 c)。検査対象16が生体の場合、具体的には、信号変換手段21の出力信号のうち、最も強度の高い位置から深部方向に約1.5mm以上離れた部分を抽出する操作が行われる。信号抽出手段22の出力は積算手段23に入力される。積算手段23では、信号抽出手段22から受けた信号を位置に関して積分する操作が行われ、出力される(図3 d)。積算手段23の出力信号は画像処理手段24に入力される。画像処理手段24では、X-Yガルバノスキャナミラー15の設定値毎、すなわち検査対象16への検査光の照射位置毎に、積算手段23からの出力値を割り当て、検査対象16の深部情報画像を生成する(図3 e)。画像処理手段24の出力はモニタ20に入力され、モニタ20上に検査対象16の深部情報画像が表示される。こうすることで生体深部のトポグラフィック画像が得られる。
【0034】
このように、本実施の形態では、AD変換器18の出力信号から、前記検査対象の反射光及び一回散乱光に起因する信号を取り除き、前記検査対象中における多重散乱光に起因する信号を取り出し積算するようにしたため、検査対象16の深部からの情報を効率よく画像化できるようになった。
【0035】
さらに本実施の形態では、波長掃引レーザ10の光スペクトル帯域を波長幅0.4nmと、通常のOCTの場合よりも非常に狭く設定してある。これは多重散乱光の検出のためには、波長掃引レーザ10の波長帯域は狭い方が検出感度の向上が見込めるからである。従って、検査対象16の表層部分(生体深さ1.5mm程度以下)と深部(生体深さ1.5mm以上)を分離できる程度の空間分解能を持つ範囲で、波長掃引レーザ10の光スペクトル幅を狭くしている。こうすることで、検出感度の最適化が可能になる。
【0036】
また、本実施の形態において、検査光を導波する光ファイバ部分(光カプラ12の第4ポート12bに接続される光ファイバ)を内視鏡中に用いることも可能である。内視鏡構成をとることで、癌の浸潤度診断や、脂肪などに覆われた血管・神経・リンパ管の可視化などの外科手術支援が可能になる。
【0037】
(第2実施の形態)
図4は、本発明の第2実施の形態に係る光イメージング装置の構成を示すブロック図である。図1と図4は類似しているが、図4では、スーパールミネッセントダイオード(Super luminescent diode: SLD)25及び可動反射鏡26が用いられる。SLD 25 は波長帯域1045nm-1055nm、平均光出力10mWのものを用いる。可動反射光 26 は、検査光と参照光の相対遅延時間を掃引するようにコンピュータ19からの信号に従って制御される。その他の構成は図1と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0038】
図4のコンピュータ19で行われる信号処理を図5に記す。図2と図5は類似しているが、図5では、信号変換手段(時間)27を用いる。図5中のa~e点における信号の例を図6 a~eに示し、コンピュータ19で行われる信号処理を以下で説明する。
【0039】
図4の構成を用いた場合、図5中の信号変換手段(時間)27は、AD変換器18からのデジタル出力信号(図6 a)を包絡線検波し、その振幅信号をさらに電力信号に変換する。その際、時間は、検査光と参照光の相対遅延時間と掃引反射鏡26の掃引速度から検査対象16の深さ方向の空間的距離に変換され、出力される(図6 b)。その他の手段は図2及び図3と同様であるので、同一手段要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0040】
このように、本実施の形態を用いることで、SLDなどの非常に安価な光源を用いることができるため、さらに低コストに光イメージング装置を実現できるようになる。
【0041】
(第3実施の形態)
図7は、本発明の第3実施の形態に係る光イメージング装置の構成を示すブロック図である。図4と図7は類似しているが、図7では反射鏡14が用いられる。反射鏡14は、検査対象16中にて多重散乱された検査光と参照光の相対遅延時間が一致するように固定されている。その他の構成は図4と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0042】
図7のコンピュータ19で行われる信号処理を図8に記す。図8中のa~d点における信号の例を図9 a~dに示し、コンピュータ19で行われる信号処理を以下で説明する。
【0043】
コンピュータ19では、包絡線検波手段28、積算手段29及び画像処理手段30の信号処理が行われる。包絡線検波手段28は、AD変換器18からのデジタル出力信号(図9 a)を包絡線検波する(図9 b)。包絡線検波手段28の出力は積算手段29に入力される。積算手段29では、包絡線検波手段28の出力を積分する操作が行われ(図9 b 斜線部)、出力される(図9 c)。積算手段29の出力信号は画像処理手段30に入力される。画像処理手段30では、X-Yガルバノスキャナミラー15の設定値毎、すなわち検査対象16への検査光の照射位置毎に、積算手段29からの出力値を割り当て、検査対象16の深部情報画像を生成する(図9 d)。画像処理手段30の出力はモニタ20に入力され、モニタ20上に検査対象16の深部情報画像が表示される。
【0044】
このように、本実施の形態では、SLDなどの非常に安価な光源を利用できることや参照光の光路上の反射鏡を掃引する必要が無いことから、低コストな光イメージング装置が実現できる。さらに、検査対象からの反射・散乱光強度分布を作成する必要がないため、信号処理の負荷を軽減することができる。これにより、高速な画像取得を実現できるようになる。
【0045】
なお、ここでは全てマイケルソン干渉計構成を用いた光イメージング装置について述べたが、マッハツェンダ干渉計構成を用いた二軸共焦点顕微鏡などにも当然適用可能であり、同様な効果が得られる(Wang et al., Optics Letters, vol. 28, p. 1915 (2003)参照)。
【符号の説明】
【0046】
10波長掃引レーザ
11光サーキュレータ
12光カプラ
13光減衰器
14反射鏡
15X-Yガルバノスキャナミラー
16検査対象
17バランスドレシーバ
18アナログ-デジタル変換器
19コンピュータ
20モニタ
21信号変換手段(波長掃引)
22信号抽出手段
23積算手段
24画像処理手段
25スーパールミネッセントダイオード
26可動反射鏡
27信号変換手段(時間)
28包絡線検波手段
29積算手段
30画像処理手段
50,51,52 レンズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光発生手段と、
前記光発生手段からの光を検査光と参照光とに分波して、前記検査光を検査対象に導き、前記参照光を光反射部に導くとともに、前記検査光が前記検査対象で反射・散乱されて得られる反射検査光と、前記参照光が前記光反射部で反射されて得られる反射参照光とを合波して干渉光を生成する光分合波手段と、
前記検査光を前記検査対象上にて走査する走査手段と、
前記光分合波手段で生成された干渉光を受光して光電変換する光電変換手段と、
前記光電変換手段のアナログ出力信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換手段と、
前記アナログ−デジタル変換手段の出力信号から、前記検査対象の反射光及び一回散乱光に起因する信号を取り除き、前記検査対象中における多重散乱光に起因する信号を抽出し積算する信号処理手段と、
前記信号処理手段からの出力信号と前記走査手段の走査情報から前記検査対象の画像を生成する画像処理手段と、
を有することを特徴とする光イメージング装置。
【請求項2】
前記光発生手段が波長掃引レーザであること
を特徴とする請求項1に記載の光イメージング装置。
【請求項3】
前記信号処理手段が、
前記アナログ−デジタル変換手段からの出力信号をフーリエ変換し、前記検査対象中の位置に対する信号強度分布を表す信号を出力する信号変換手段と、
前記信号変換手段の出力信号から、前記検査対象中における多重散乱光に起因する信号を抽出する信号抽出手段と、
前記信号抽出手段からの出力信号の積算値を計算し、出力する積算手段と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の光イメージング装置。
【請求項4】
前記光発生手段が、
スーパールミネッセントダイオードもしくはパルス光源であって、
前記光反射部が前記検査光と前記参照光の相対遅延時間を掃引するように駆動されていること、
を特徴とする請求項1に記載の光イメージング装置。
【請求項5】
前記信号処理手段が、
前記アナログ−デジタル変換手段からの出力信号を包絡線検波する包絡線検波手段と、
前記包絡線検波手段の出力信号から、前記検査対象中における多重散乱光に起因する信号を抽出する信号抽出手段と、
前記信号抽出手段からの出力信号の積算値を計算し、出力する積算手段と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の光イメージング装置。
【請求項6】
前記信号抽出手段が、
前記信号変換手段の出力信号中において、最も強度の高い前記検査対象上の位置から前記検査対象の深部方向に物理長で1.5mm以上離れた位置の信号を抽出すること、
を特徴とする請求項3もしくは5に記載の光イメージング装置。
【請求項7】
前記光発生手段が、
スーパールミネッセントダイオードもしくはパルス光発生であって、
前記参照光と前記多重散乱光の相対遅延時間が一致するように前記光反射部が設定されていること、
を特徴とする請求項1に記載の光イメージング装置。
【請求項8】
前記信号処理手段が、
前記アナログ−デジタル変換手段の出力信号を包絡線検波する包絡線検波手段と、
前記包絡線検波手段の出力信号の積算値を計算し、出力する包絡線検波出力積算手段と、
を備えることを特徴とする請求項7に記載の光イメージング装置。
【請求項9】
前記光電変換手段が、
バランスド検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の光イメージング装置。
【請求項10】
光源からの光を検査光と参照光とに分波して、前記検査光を検査対象に導き、前記参照光を光反射部に導くとともに、前記検査光が前記検査対象で反射・散乱されて得られる反射検査光と、前記参照光が前記光反射部で反射されて得られる反射参照光とを合波して干渉光を生成する光分合波ステップと、
前記検査光を前記検査対象上にて走査する走査ステップと、
前記光分合波ステップで生成された干渉光を受光して光電変換する光電変換ステップと、
前記光電変換ステップのアナログ出力信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換ステップと、
前記アナログ−デジタル変換ステップの出力信号から、前記検査対象の反射光及び一回散乱光に起因する信号を取り除き、前記検査対象中における多重散乱光に起因する信号を抽出し積算する信号処理ステップと、
前記信号処理ステップからの出力信号と前記走査ステップの走査情報から前記検査対象の画像を生成する画像処理ステップと、
を有することを特徴とする光イメージング方法。
【請求項11】
体腔内からの被検出光を検出して、前記体腔内を観察する内視鏡であって、
請求項1乃至9の少なくともいずれか一項に記載の光イメージング装置を有し、
前記体腔内からの前記被検出光を前記光イメージング装置により画像化できるように構成したことを特徴とする内視鏡。
【請求項12】
観察試料からの被検出光を検出する顕微鏡であって、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光イメージング装置を有し、
前記観察試料からの前記被検出光を前記光イメージング装置により画像化できるように構成したことを特徴とする顕微鏡。


【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−58020(P2012−58020A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199995(P2010−199995)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】